JP3107475B2 - 光学的ローパスフィルタ - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、色分離フィルタを有す
る撮像管や個体撮像素子などの空間的に離散的にサンプ
リングを行なう撮像素子を用いたビデオカメラ等の光学
系において、像面上の不要な空間周波数成分を除去ある
いは減衰させる光学的ローパスフィルタに関するもので
ある。

【０００２】

【従来の技術】一般的に、ビデオカメラ等の映像取り込
み装置では、撮像管や個体撮像素子等の撮像素子を用い
ており、画像情報を空間的に離散的にサンプリングする
ことで出力信号を得ている。撮像素子に入力される映像
に、撮像素子の持つナイキスト周波数よりも高い空間周
波数成分が含まれている場合、撮像素子から出力される
信号には、本来入力画像が持たない構造や色が現れ、モ
アレ縞、偽色等の偽信号が発生する。そこで、従来から
撮像系の一部にナイキスト周波数以上の空間周波数成分
を遮断あるいは減衰させるため、光学系の一部に光学的
ローパスフィルタを挿入している。この光学的ローパス
フィルタには、一般的に水晶フィルタが用いられている
が、水晶の持つ複屈折性を利用しているため、所望の遮
断周波数を得るためには、厚さを調整して構成する必要
がある。また、フィルタ特性として、遮断周波数を超え
た空間周波数領域で再び透過特性が高くなるので、性能
を向上させるためには、複数枚の水晶板を重ね合わせる
必要があり、フィルタ自体の厚みが大きくなって光学系
中に水晶光学的ローパスフィルタのために大きな空間を
確保しなければならなかった。また、水晶自体が高価な
材料である。そこで、最近では、安価で大きな空間を必
要としない位相格子光学的ローパスフィルタが用いられ
るようになってきた。

【０００３】上述の位相格子光学的ローパスフィルタを
実際に用いる場合、撮像素子は２次元的にサンプリング
が行われるため、撮像面上の２次元の各方向に対して好
適なローパス効果を有することが必要となる。しかし、
従来提案されている位相格子光学的ローパスフィルタで
は、２次元方向に対してローパス効果を得ることは困難
であった。この課題に対して、特願平４−２２９８５３
で解決の方法を得ている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特願平
４−２２９８５３記載の方法では、撮像素子の１つの画
素の形状が、水平方向と垂直方向がほぼ等しいことを前
提としているため、撮像素子の形状及び水平解像度、信
号方式が変化した場合、対応できない場合が発生する。

【０００５】この撮像素子の１つの画素における水平方
向の長さと垂直方向の長さが大きく異なる場合、それぞ
れの方向の遮断周波数もそれに対応して異なることにな
る。特願平４−２２９８５３で述べられている方法で
は、水平方向と垂直方向の遮断周波数がほぼ等しい場合
には有効な手段であるが、水平方向と垂直方向の大きさ
が異なる場合、位相格子の１周期の形状をそれぞれの長
さに比例倍して構成すると、矛盾した特性となってしま
う。例えば、画素の水平方向の長さが垂直方向の長さよ
りも長い場合、水平方向のサンプリング周期が垂直方向
に比べ粗くなるため、撮像素子のナイキスト周波数は水
平方向の方が垂直方向よりも低くなってしまう。ところ
が、撮像素子の画素の形状に合わせて位相格子光学的ロ
ーパスフィルタを構成した場合、水平方向の周期が垂直
方向の周期に比べ粗いため、水平方向の回折角の方が垂
直方向の回折角よりも小さくってしまう。すなわち、水
平方向の遮断周波数が垂直方向の遮断周波数よりも高く
なり、撮像素子の持つナイキスト周波数の傾向とは逆に
なってしまうという課題がある。

【０００６】また、位相格子光学的ローパスフィルタを
用いることによって、水晶光学的ローパスフィルタより
も薄く構成する場合であっても、一般に、赤外光を減衰
・除去させるフィルタは必須であり、削減することがで
きない。すなわち、水晶光学的ローパスフィルタのみを
削減したとしても、赤外吸収させるフィルタの厚さ分は
残留するため、光学系における小型化の妨げになるとい
う課題がある。

【０００７】本発明は、従来の光学的ローパスフィルタ
のこのような課題を考慮し、位相格子の１周期の形状の
水平方向と垂直方向の長さが異なる場合でも、２次元方
向に対して好適なローパス効果を得ることができ、ま
た、光学系の小型化が可能な光学的ローパスフィルタを
提供することを目的とするものである。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明は、一周期の形状
が、所定の方向の長さと、その方向と実質上直交する方
向の長さが異なる形状であって、独立した２種類以上の
位相差形状で形成され、長さが短い方の方向に、２つ以
上の周期にわたって、位相差形状のうち少なくとも１種
類の位相差形状が連続している光学的ローパスフィルタ
である。

【０００９】

【作用】本発明は、所定の方向の長さと、その方向と実
質上直交する方向の長さが異なる形状の長さが短い方の
方向に、２つ以上の周期にわたって、位相差形状のうち
少なくとも１種類の位相差形状が連続して一周期が形成
されているので、例えば水平方向と垂直方向とで異なる
空間遮断周波数を有する。

【００１０】

【実施例】以下に、本発明をその実施例を示す図面に基
づいて説明する。

【００１１】図１は、本発明にかかる第１の実施例の光
学的ローパスフィルタにおける１周期分の位相差部の底
面のパターンを示す図である。図１において、斜線の部
分が凹部に形成されたところであり、白色部分が凸部１
〜１１に形成されたところであり、これらにより位相差
を発生させる。本実施例では、水平方向（図面上、左右
方向とする）の位相差形状が垂直方向（図面上、上下方
向とする）に比べて細かく構成されている。例えば、本
パターン上に屈折率ｎｄが 1.5597 、アッベ数νｄが44
の樹脂材料を用いて、断面形状が放物線状で高さを約0.
6μmで位相差部を構成すると、図２に示すような伝達特
性が得られる。図２の特性図はそれぞれ白色光での伝達
特性を示すものであり、１２は水平方向（ 0゜）におけ
る特性、１３は水平方向に対して30゜方向における特
性、１４は水平方向に対して45゜方向における特性、１
５は水平方向に対して60゜方向における特性、１６は垂
直方向（90゜）における特性をそれぞれ示している。図
２より明らかなように、水平方向における遮断周波数
が、垂直方向における遮断周波数より低くなっており、
前述した水平方向におけるナイキスト周波数が、垂直方
向におけるナイキスト周波数より低い撮像素子の特性に
対応した光学的ローパスフィルタを実現できる。この光
学的ローパスフィルタは、上記の位相差形状による位相
差部を透明ガラス基板上に形成することにより作製でき
る。

【００１２】又、図３に第１の実施例の設計データとし
てのパターン形状の寸法比を示す。また、図４は、図３
のＡにおける断面形状を示し、図５は、図３のＢにおけ
る断面形状を示し、図６は、図３のＣにおける断面形状
を示している。ここで、位相格子は、そのピッチと像面
までの距離の積が一定であれば同等の効果を示す性質を
持っているため、必要に応じて寸法を変えれば、あらゆ
る光学系に対応させることができる。

【００１３】図７は、本発明にかかる第２の実施例の光
学的ローパスフィルタにおける１周期分の位相差部の底
面のパターンを示す図である。図７において、斜線部分
が凹部であり、白色部分が凸部１７〜２４になってお
り、位相差を発生させる部分である。本実施例では、垂
直方向における位相変化を第１の実施例に比べて少なく
しており、従って水平方向の位相変化も第１の実施例の
ように細かくする必要はない。ここで、第１の実施例と
同様の材料を用いて光学的ローパスフィルタを構成する
ことにより、第１の実施例と同等の伝達特性を得ること
ができる。又、第２の実施例は、第１の実施例に比べ１
周期内のパターンの細かさが緩和されており、その分撮
像面から離れた位置に配置することが必要となり、回折
効率が０次光付近に集中する。又、図８は、第２の実施
例の設計データとしての寸法比を示している。

【００１４】図９は、本発明にかかる一実施例の撮像素
子の断面形状を示す図である。すなわち、例えば上記の
第１又は第２の実施例の光学的ローパスフィルタ（以
下、位相格子光学的ローパスフィルタと呼ぶ）を用いて
構成した位相格子一体型の撮像素子の構成例の断面図を
示している。図９において、撮像素子のパッケージには
外枠３３が設けられ、その外枠３３の一端部にはカバー
ガラス２８が設けられている。そのカバーガラス２８と
反対側の端部には光学像が結像する撮像面３１が設けら
れ、その撮像面３１の前には色分離フィルタ３０が設け
られ、その色分離フィルタ３０の前、すなわちカバーガ
ラス２８と色分離フィルタ３０との間には、本発明にか
かる位相格子光学的ローパスフィルタ２９が設けられて
いる。この位相格子光学的ローパスフィルタ２９は、撮
像面３１から適当な距離だけ間隔をおいて設置する必要
があるため、スペーサー３２を用いて間隔を確保するよ
うに構成されている。本実施例において、位相格子光学
的ローパスフィルタ２９は、撮像面３１側に位相差部を
向けて構成されているが、撮像素子のサンプリング周波
数の関係上、位相格子光学的ローパスフィルタ２９と撮
像面３１の間隔を比較的大きくとらなければならないと
きは、位相格子光学的ローパスフィルタ２９の基板側を
撮像面３１側に向けることにより、ある程度の対処が可
能である。また、本実施例は基本的な構成であって、色
分離フィルタ３０と撮像面３１の間にオンチップレンズ
等の付加機能素子が挿入されても、逆に色分離フィルタ
が取り除かれた系であっても、光路長が保たれておれ
ば、性能に何等変化があるものではない。

【００１５】図１０は、図９に示した実施例の撮像素子
をレンズ光学系に用いた構成例を示す図である。位相格
子光学的ローパスフィルタを内部に配置した撮像素子４
０をレンズ光学系４１に用いることにより、レンズ光学
系４１中に位相格子光学的ローパスフィルタ用の特別な
空間を要しない撮像系を構成することができ、このレン
ズ光学系４１を、例えばビデオカメラ等に用いることに
より、映像取り込み装置のコンパクト化が可能である。

【００１６】なお、上記実施例では、いずれも位相格子
光学的ローパスフィルタの基板として透明ガラス基板を
用いたが、この基板を例えば赤外吸収ガラスにより構成
すれば、従来撮像素子の外部に配置され、光学系の短縮
に影響を及ぼしていた空間を削減することができ、より
光学系をコンパクトに構成することができる。あるいは
又、位相格子光学的ローパスフィルタ２９の基板は普通
の光学ガラスや樹脂で構成し、位相格子が形成された面
と反対側の面に赤外光を反射する機能を有する蒸着膜等
を付加することにより、同様に光学系を短縮することが
可能となる。

【００１７】また、上記実施例では、いずれも位相格子
光学的ローパスフィルタは、断面形状を放物線状とした
が、これに限らず、他の形状をしていても伝達特性を好
適に得ることは可能である。上記実施例では基本的な考
え方を述べるため、あえて実験的な作製上の都合で放物
断面を用いたに過ぎず、高次回折光の影響を抑えること
によって低域の伝達特性を向上させることができること
は容易に考えられる。又、実際に位相差形状を作製する
際、実施例にあげたパターンから多少形状ズレを起こし
ても基本特性に大きな影響を及ぼさない。すなわち、パ
ターンの角が丸くなっていたり、２つの位相差部が接す
るようにパターン部分が融合し、ある有限の幅を持って
つながったとしても、程度によっては、影響を及ぼさな
い。

【００１８】また、上記実施例では、いずれも斜線部分
を凹部とし、白色部分を凸部としたが、この関係は逆で
あっても、位相差としては同様に得られることは明かで
あり、性能に何等変化をもたらさない。

【００１９】また、上記実施例では、いずれも位相差部
の高さを一定として述べているが、作製上の関係で位相
差部の高さが局所的に変化することもあり、さらに、任
意に位相差部の高さを制御することによっても変化させ
ることも可能であり、それらの場合でも性能に影響する
ものではない。

【００２０】また、上記実施例では、いずれも位相差形
状の種類は３種類であったが、これに限らず、２種類以
上であれば何種類であってもよい。更に、位相差形状の
形状も図１又は図７に示したものに限定されるものでは
ない。

【００２１】

【発明の効果】以上述べたところから明らかなように本
発明は、位相格子の１周期の形状の水平方向と垂直方向
の長さが異なる場合でも、２次元方向に対して好適なロ
ーパス効果を得ることができ、また、光学系を小型化で
きるという長所を有する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明にかかる第１の実施例の光学的ローパス
フィルタにおける１周期分の位相差部の底面のパターン
を示す図である。

【図２】同実施例の位相格子の水平（０゜）、３０゜、
４５゜、６０゜、垂直（９０゜）方向の伝達関数を示す
図である。

【図３】同実施例の設計データを示す図である。

【図４】図３におけるＡでの断面形状を示す図である。

【図５】図３におけるＢでの断面形状を示す図である。

【図６】図３におけるＣでの断面形状を示す図である。

【図７】本発明にかかる第２の実施例の光学的ローパス
フィルタにおける１周期分の位相差部の底面のパターン
を示す図である。

【図８】同実施例の設計データを示す図である。

【図９】本発明にかかる一実施例の撮像素子の断面形状
を示す図である。

【図１０】同実施例の撮像素子をレンズ光学系に用いた
構成例を示す図である。

【符号の説明】

１〜１１ 凸部 １７〜２４ 凸部 ２９ 位相格子光学的ローパスフィルタ ３１ 撮像面 ４０ 撮像素子 ４１ 光学系

Claims (9)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 一周期の形状が、所定の方向の長さと、
   その方向と実質上直交する方向の長さが異なる形状であ
   って、独立した２種類以上の位相差形状が形成され、前
   記長さが短い方の方向に、２つ以上の周期にわたって、
   前記位相差形状のうち少なくとも１種類の位相差形状が
   連続していることを特徴とする光学的ローパスフィル
   タ。
2. 【請求項２】 位相差形状の１種類は、隣接する４つの
   周期にまたがって連続し、残りの位相差形状のうち少な
   くとも１種類は、隣接する２つの周期にまたがって連続
   していることを特徴とする請求項１記載の光学的ローパ
   スフィルタ。
3. 【請求項３】 位相差形状が形成される粗さが、前記一
   周期の所定の方向とその方向と実質上直交する方向とで
   異なっていることを特徴とする請求項１記載の光学的ロ
   ーパスフィルタ。
4. 【請求項４】 粗さの異なり方は、前記一周期の長い方
   の方向の方が、短い方向より細かいことを特徴とする請
   求項３記載の光学的ローパスフィルタ。
5. 【請求項５】 位相差形状は、透明ガラス基板上に形成
   されていることを特徴とする請求項１記載の光学的ロー
   パスフィルタ。
6. 【請求項６】 透明ガラス基板は、赤外光吸収材料であ
   ることを特徴とする請求項５記載の光学的ローパスフィ
   ルタ。
7. 【請求項７】 透明ガラス基板の、前記位相差形状が形
   成されていない面に赤外光を反射する赤外反射膜が形成
   されていることを特徴とする請求項５記載の光学的ロー
   パスフィルタ。
8. 【請求項８】 撮像面の前方に、請求項５、６、又は７
   記載の前記光学的ローパスフィルタが配置されているこ
   とを特徴とする撮像素子。
9. 【請求項９】 請求項８記載の前記撮像素子を備えたこ
   とを特徴とするビデオカメラ。