しかしながら、第1の従来技術を用いた場合には、以下に示す問題を生じていた。すなわち、出力端子6から出力されるデジタル音声信号のパルスには、図3の6aに示したように、立ち上がりや立ち下がりにおいて、信号波形になまりが生じる。このことは、デジタル音声回路4から出力端子6までの信号経路の周波数特性が、高い周波数の側にまで充分に延びていないことを示している。しかし、ビーズコアL3のインダクタンス値や抵抗R9,R10の値、および、コンデンサC5の値については、抵抗R9と抵抗R10とを接続するパターン11や信号線12からの不要輻射を低減するという目的があるために、変更することは困難となっている。このため、トラップを省略した構成(破線92により囲まれたブロックにより示す構成)とすることが考えられている。図3の6bにより示す信号波形は、トラップを省略した場合の出力端子6の信号波形を示していて、波形なまりが充分に改善されたことを示している。
しかし、このときでは、信号経路の通過特性が、80MHzを超える帯域においても、大きな減衰を与える特性とはならない。このため、出力端子6から送出されるデジタル音声信号のスペクトル分布においては、図4の(A)に示したように、90〜108MHzの範囲において高レベルの高調波72bが生じることになる。また、170〜200MHz(商用放送の周波数帯域)の近傍においても、高レベルの高調波73bが生じることになる。その結果、出力端子6に接続される信号線からの不要輻射のレベルが規定値を満たさないという問題が生じていた。このような傾向は、インバータを用いて波形なまりの整形を行う場合には、より顕著となって、不要輻射のレベルが増大するため、インバータを用いて整形することは困難となっている。
また、第2の従来技術は、フィルタの通過特性として知られた事項であるに過ぎないため、第1の従来技術における問題点、すなわち、デジタル音声信号における波形なまりの改善や高調波の低減に対しては、示唆するものとはなっていない。
第3の従来技術は、ローパスフィルタの特性を、設計値に一致する特性とするために、ローパスフィルタの入力側から信号の入力側を見たときのインピーダンスを、ローパスフィルタの入力側のインピーダンスに一致させる技術となっている。すなわち、ローパスフィルタの特性を最も良好とするための技術となっている。このため、第1の従来技術における問題点、つまり、トラップを用いたときには、トラップの特性が設計値通りとなる場合であっても、信号経路の与える減衰が周波数の高い側で大きくなることから、信号波形になまりが生じ、なまりを解消する場合には高調波のレベルが高くなるという問題点を解決しようとする場合には、適用することが困難な技術となっている。
また、第4の従来技術も、第3の従来技術と同様であり、ローパスフィルタやバンドパスフィルタの特性を、設計値に一致する特性とするために、フィルタの入力側から信号の入力側を見たときのインピーダンスを、フィルタの入力側のインピーダンスに一致させる技術となっている。すなわち、フィルタの特性を最も良好とするための技術となっている。このため、第1の従来技術における問題点、つまり、トラップを用いたときには、トラップの特性が設計値通りとなる場合であっても、信号経路の与える減衰が周波数の高い側で大きくなることから、信号波形になまりが生じ、なまりを解消する場合には高調波のレベルが高くなるという問題点を解決しようとする場合には、適用することが困難な技術となっている。
本考案は、上記の問題点を解決するため、インダクタとコンデンサとからなるローパスフィルタを、ローパスフィルタの入力インピーダンスより低いインピーダンスで駆動するときには、ローパスフィルタの特性とバンドパスフィルタの特性とを併せ持つ特性となり、この特性をパルス信号の伝送経路に適用する場合には、パルス信号の伝送における波形のなまりの改善と、不要スペクトル成分の低減という、互いに反する2つの特性の双方を満たすことが可能であることに着目して創案されたものであり、その目的は、不要輻射のレベルを増加させることなく、デジタル音声信号の波形なまりを改善することのでき、且つ、デジタル音声信号の信号経路が、信号線を介して接続された2つのプリント配線基板の双方に渡るため、デジタル音声信号の信号源から信号線までの信号経路にローパス特性を与えることによって、前記信号線からの不要輻射を抑制することが不可欠となる構成の場合に、より好適となるパルス信号の波形なまり補正回路を提供することにある。
また本考案は、インダクタとコンデンサとからなるローパスフィルタを、ローパスフィルタの入力インピーダンスより低いインピーダンスで駆動するときには、ローパスフィルタの特性とバンドパスフィルタの特性とを併せ持つ特性となり、この特性をパルス信号の伝送経路に適用する場合には、パルス信号の伝送における波形のなまりの改善と、不要スペクトル成分の低減という、互いに反する2つの特性の双方を満たすことが可能であることに着目して創案されたものであり、その目的は、不要輻射のレベルを増加させることなく、デジタル音声信号の波形なまりを改善することのできるパルス信号の波形なまり補正回路を提供することにある。
また上記目的に加え、デジタル音声信号の信号経路が、信号線を介して接続された2つのプリント配線基板の双方に渡るため、デジタル音声信号の信号源から信号線までの信号経路にローパス特性を与えることによって、前記信号線からの不要輻射を抑制することが不可欠となる構成の場合に、より好適となるパルス信号の波形なまり補正回路を提供することにある。
上記の課題を解決するため、本考案に係るパルス信号の波形なまり補正回路は、デジタル音声信号を出力する信号処理ICとデジタル音声信号の高調波を低減する素子とが設けられた第1のプリント配線基板を有するDVD再生装置におけるデジタル音声信号の信号経路に設けられたパルス信号の波形なまり補正回路に適用している。そして、そのベースにはデジタル音声信号であるパルス信号が導かれ、エミッタからパルス信号を出力する第1のトランジスタと、第1のトランジスタのエミッタに一方の端子が接続されたフィルタ用インダクタと、フィルタ用インダクタの他方の端子と接地レベルとの間に接続されたフィルタ用コンデンサと、そのベースにはフィルタ用インダクタの他方の端子が接続された第2のトランジスタとを備え、フィルタ用インダクタの側から第1のトランジスタのエミッタを見たときのインピーダンスが、第1のトランジスタのエミッタの側からフィルタ用インダクタを見たときのインピーダンスより小さくされ、第1のトランジスタとフィルタ用インダクタとフィルタ用コンデンサと第2のトランジスタとは、第1のプリント配線基板にデジタル音声信号を伝送する信号線を介して接続された第2のプリント配線基板に設けられている。
すなわち、フィルタ用インダクタの側から第1のトランジスタのエミッタを見たときのインピーダンスを、第1のトランジスタのエミッタの側からフィルタ用インダクタを見たときのインピーダンスより小さくすると、フィルタ用インダクタとフィルタ用コンデンサとからなるフィルタの通過特性は、ローパスフィルタとしての特性と、並列共振回路としてのバンドパス特性とを併せて有する特性となる。従って、バンドパス特性の中心周波数を、デジタル音声信号の立ち上がりや立ち下がりの速度に強く関係する周波数帯域に一致させると、前記周波数帯域における信号の通過特性が良好となるので、デジタル音声信号の立ち上がりや立ち下がりの速度が速くなる。つまり、波形のなまりが解消される。また、ローパスフィルタとしての特性により、不要輻射が問題となる周波数帯域のスペクトル成分は低減される。また、デジタル音声信号の信号経路が、信号線を介して接続された第1および第2の2つのプリント配線基板の双方に渡るため、デジタル音声信号の信号源から信号線までの信号経路(第1のプリント配線基板に形成された信号経路)にローパス特性を与えることによって、前記信号線からの不要輻射を抑制することが不可欠となる場合には、デジタル音声信号に波形なまりが生じるので、波形なまりの防止は極めて効果的となる。
また本考案に係るパルス信号の波形なまり補正回路は、デジタル音声信号の信号経路に設けられたパルス信号の波形なまり補正回路に適用している。そして、そのベースにはデジタル音声信号であるパルス信号が導かれ、エミッタからパルス信号を出力する第1のトランジスタと、第1のトランジスタのエミッタに一方の端子が接続されたフィルタ用インダクタと、フィルタ用インダクタの他方の端子と接地レベルとの間に接続されたフィルタ用コンデンサと、そのベースにはフィルタ用インダクタの他方の端子が接続された第2のトランジスタとを備え、フィルタ用インダクタの側から第1のトランジスタのエミッタを見たときのインピーダンスが、第1のトランジスタのエミッタの側からフィルタ用インダクタを見たときのインピーダンスより小さくしている。
すなわち、フィルタ用インダクタの側から第1のトランジスタのエミッタを見たときのインピーダンスを、第1のトランジスタのエミッタの側からフィルタ用インダクタを見たときのインピーダンスより小さくすると、フィルタ用インダクタとフィルタ用コンデンサとからなるフィルタの通過特性は、ローパスフィルタとしての特性と、並列共振回路としてのバンドパス特性とを併せて有する特性となる。従って、バンドパス特性の中心周波数を、デジタル音声信号の立ち上がりや立ち下がりの速度に強く関係する周波数帯域に一致させると、前記周波数帯域における信号の通過特性が良好となるので、デジタル音声信号の立ち上がりや立ち下がりの速度が速くなる。つまり、波形のなまりが解消される。また、ローパスフィルタとしての特性により、不要輻射が問題となる周波数帯域のスペクトル成分は低減される。
また上記構成に加え、第1のトランジスタとフィルタ用インダクタとフィルタ用コンデンサと第2のトランジスタとは、デジタル音声信号を出力する信号処理ICとデジタル音声信号における高調波を低減する素子とが設けられた第1のプリント配線基板に、デジタル音声信号を伝送する信号線を介して接続された第2のプリント配線基板に設けられている。すなわち、デジタル音声信号の信号経路が、信号線を介して接続された第1および第2の2つのプリント配線基板の双方に渡るため、デジタル音声信号の信号源から信号線までの信号経路(第1のプリント配線基板における信号経路)にローパス特性を与えることによって、前記信号線からの不要輻射を抑制することが不可欠となる構成の場合には、デジタル音声信号に波形なまりが生じるので、波形なまりの防止は極めて効果的となる。
本考案によれば、デジタル音声信号を出力する信号処理ICとデジタル音声信号の高調波を低減する素子とが設けられた第1のプリント配線基板を有するDVD再生装置におけるデジタル音声信号の信号経路に設けられたパルス信号の波形なまり補正回路に適用されている。そして、エミッタからデジタル音声信号であるパルス信号を出力する第1のトランジスタと、第1のトランジスタのエミッタに一方の端子が接続されたフィルタ用インダクタと、フィルタ用インダクタの他方の端子と接地レベルとの間に接続されたフィルタ用コンデンサと、そのベースにはフィルタ用インダクタの他方の端子が接続された第2のトランジスタとを備え、フィルタ用インダクタの側から第1のトランジスタのエミッタを見たときのインピーダンスが、第1のトランジスタのエミッタの側からフィルタ用インダクタを見たときのインピーダンスより小さくしている。また、第1のトランジスタとフィルタ用インダクタとフィルタ用コンデンサと第2のトランジスタとは、第1のプリント配線基板にデジタル音声信号を伝送する信号線を介して接続された第2のプリント配線基板に設けられている。従って、フィルタ用インダクタとフィルタ用コンデンサとからなるフィルタの通過特性は、ローパスフィルタとしての特性と、並列共振回路としてのバンドパス特性とを併せて有する特性となる。そして、バンドパス特性は、デジタル音声信号の立ち上がりや立ち下がりの速度を速くする。また、ローパスフィルタとしての特性は、不要輻射が問題となる周波数帯域のスペクトル成分を低減する。また、デジタル音声信号の信号経路にローパス特性を与えることが不可欠となる場合には、デジタル音声信号に波形なまりが生じるので、波形なまりの防止は極めて効果的となる。このため、不要輻射のレベルを増加させることなく、デジタル音声信号の波形なまりを改善することができる。また、波形なまりの防止は、より好適なものとなる。
また本考案によれば、エミッタからパルス信号を出力する第1のトランジスタと、第1のトランジスタのエミッタに一方の端子が接続されたフィルタ用インダクタと、フィルタ用インダクタの他方の端子と接地レベルとの間に接続されたフィルタ用コンデンサと、そのベースにはフィルタ用インダクタの他方の端子が接続された第2のトランジスタとを備え、フィルタ用インダクタの側から第1のトランジスタのエミッタを見たときのインピーダンスを、第1のトランジスタのエミッタの側からフィルタ用インダクタを見たときのインピーダンスより小さくしている。従って、フィルタ用インダクタとフィルタ用コンデンサとからなるフィルタの通過特性は、ローパスフィルタとしての特性と、並列共振回路としてのバンドパス特性とを併せて有する特性となる。従って、バンドパス特性の中心周波数を、デジタル音声信号の立ち上がりや立ち下がりの速度に強く関係する周波数帯域に一致させると、前記周波数帯域における信号の通過特性が良好となるので、デジタル音声信号の立ち上がりや立ち下がりの速度が速くなる。また、ローパスフィルタとしての特性により、不要輻射が問題となる周波数帯域のスペクトル成分は低減される。このため、不要輻射のレベルを増加させることなく、デジタル音声信号の波形なまりを改善することができる。
またさらに、第1のトランジスタとフィルタ用インダクタとフィルタ用コンデンサと第2のトランジスタとは、デジタル音声信号を出力する信号処理ICとデジタル音声信号における高調波を低減する素子とが設けられた第1のプリント配線基板に、デジタル音声信号を伝送する信号線を介して接続された第2のプリント配線基板に設けられている。すなわち、デジタル音声信号の信号経路にローパス特性を与えることが不可欠となって、デジタル音声信号に波形なまりが生じる場合には、波形なまりの防止は、より好適なものとなる。
以下、本考案の実施の形態について図を参照して説明する。
図1は、本考案に係るパルス信号の波形なまり補正回路の一実施形態を有する光ディスク再生装置(DVD再生装置)のデジタル音声信号の経路の電気的接続を示す回路図であり、図5に示す従来技術と同一となるブロックには、図5における符号と同一符号を付与している。
大別すると、デジタル音声信号の経路は、第1のプリント配線基板(以下では、単に第1の基板と称する)1の側の経路と、第2のプリント配線基板(以下では、単に第2の基板と称する)2の側の経路とに分割されており、第1の基板1の側には、信号処理IC3、ビーズコアL3、抵抗R9,R10、コンデンサC5が設けられている。また、第2の基板2の側には、2つのトランジスタQ1,Q2、フィルタ用インダクタL1、コンデンサC1〜C3、抵抗R1〜R7が設けられている。
詳細には、信号処理IC3は、DVD等の光ディスクに記録された情報を読み取るピックアップからの信号を処理して得られたデジタル信号を復号化した後、エラー訂正を行うことによって、プログラムストリームを再生する。そして、再生したプログラムストリームのうちのオーディオストリームを、デジタル音声回路4を用いて伸長するとともに、伸長して得られたデジタル音声信号を、信号処理IC3の端子から出力する(外部のデジタル音声回路を用いるように設定された場合には、デジタル音声回路4からは、伸長しないデジタル音声信号が出力される)。
デジタル音声回路4から出力されたデジタル音声信号は、ビーズコアL3と抵抗R9、および、抵抗R10を介して、第1の基板1に設けられたコネクタの端子15に導かれている。また、抵抗R10の端子のうち、抵抗R9に接続された側の端子と接地レベルとの間には、コンデンサC5が接続されている。そして、端子15に導かれたデジタル音声信号は、信号線12を介して、第2の基板2に設けられたコネクタの端子16に導かれている。
なお、上記構成におけるビーズコアL3と抵抗R9とは、抵抗R9から抵抗R10までのプリント配線パターン(以下では、単にパターンと称する)11から放射される不要輻射を低減するための素子となっている。このため、ビーズコアL3および抵抗R9は、信号処理IC3の近傍位置に設けられている。また、また、抵抗R10とコンデンサC5とは、信号線12から放射される不要輻射の低減を行うための素子となっている。すなわち、コンデンサC5は、パターン11のインダクタンス成分と協働することによってローパスフィルタを形成する。また、抵抗R10は、ダンプ用の抵抗であり、伝送されるデジタル音声信号の波形の急峻な変化を緩和する。
コネクタの端子16に導かれたデジタル音声信号は、ベース抵抗R1を介して、第1のトランジスタQ1のベースに導かれている。また、ベース抵抗R1には、並列に、コンデンサC1が接続されている。そして、第1のトランジスタQ1のコレクタはプラス電源に接続されている。また、第1のトランジスタQ1のベースとプラス電源との間には抵抗R2が接続され、第1のトランジスタQ1のベースと接地レベルとの間には抵抗R3が接続されている。そして、第1のトランジスタQ1のエミッタは抵抗R4を介して接地されている。
また、第1のトランジスタQ1のエミッタには、フィルタ用インダクタL1の一方の端子が接続されており、フィルタ用インダクタL1の他方の端子と接地レベルとの間にはフィルタ用コンデンサC2が接続されている。また、フィルタ用インダクタL1の他方の端子には、第2のトランジスタQ2のベースが接続されている。
また、第2のトランジスタQ2のコレクタはプラス電源に接続されており、エミッタは抵抗R5を介して接地されている。また、第2のトランジスタQ2のエミッタは、コンデンサC3と抵抗R6とを介して、出力端子6における信号側接触子(以下では、単に出力端子6と称する)に導かれている。また、出力端子6と接地レベルとの間には抵抗R7が接続されている。
なお、第2の基板2に設けられた回路が、本考案に係るパルス信号の波形なまり補正回路の一実施形態に対応する部分となっている。
以下に、各素子の作用について説明すると、第1のトランジスタQ1は、導かれたデジタル音声信号を、低インピーダンスのデジタル音声信号にインピーダンス変換する。ベース抵抗R1は、第1のトランジスタQ1のベースからデジタル音声回路4の側を見たときのインピーダンスを所定の値に設定する。また、コンデンサC1は、第1のトランジスタQ1のベースに導かれるデジタル音声信号のレベルが下降するとき、第1のトランジスタQ1のベースに蓄積された電荷の放出を速める。
抵抗R2と抵抗R3とは、第1のトランジスタQ1に所定のベースバイアスを与える。また、抵抗R4は、第1のトランジスタQ1のエミッタ電流を設定する。第2のトランジスタQ2は、フィルタ用インダクタL1とフィルタ用コンデンサC2との接続点から出力されるデジタル音声信号を、高インピーダンスでもって受け取り、低インピーダンスの信号としてエミッタから出力する。抵抗R5は、第2のトランジスタQ2のエミッタ直流を設定する。コンデンサC3は直流成分を除去し、抵抗R6は、外部から見たときの出力端子6のインピーダンスを、所定値である75Ωに設定する。また、抵抗R7は、出力端子6の直流的なインピーダンスの上昇を抑制する。
フィルタ用インダクタL1とフィルタ用コンデンサC2とは、信号経路の周波数特性を補正することによって、出力端子6に接続された信号線からの不要輻射を抑制する。且つ、出力端子6から出力されるデジタル音声信号の立ち上がり、および、立ち下がりにおける波形なまりを補正する。このため、フィルタ用インダクタL1とフィルタ用コンデンサC2とにより形成されるフィルタを、第1のトランジスタQ1のエミッタ側から見たときのインピーダンスをZfとし、第1のトランジスタQ1のエミッタをフィルタ用インダクタL1の側から見たときのインピーダンスをZeとすると、(Ze<Zf)となるように設定されている。
すなわち、本実施形態においては、各素子の値は、R9=220Ω、R10=270Ω、R1=2.2kΩ、R2=2.2kΩ、R3=3.3kΩ、R4=1kΩ、R5=220Ω、R6=75Ω、R7=100kΩ、C1=15pF、C2=33pF、C3=1μF、L1=0.27μHとなっている。
このため、第1のトランジスタQ1のベースからデジタル音声回路4の側を見たときのインピーダンスは、バイアス用の抵抗R2,R3も含むため、約800Ωとなっている。従って、第1のトランジスタQ1のhfeを約80とすると、インピーダンスZeは約10Ωとなる。一方、インピーダンスZfは、フィルタ用インダクタL1とフィルタ用コンデンサC2とからなるフィルタの共振周波数である約55MHzにおいては、約180Ωとなる。
すなわち、フィルタ用インダクタL1の側から第1のトランジスタQ1のエミッタを見たときのインピーダンスZeは、第1のトランジスタQ1のエミッタの側からフィルタ用インダクタL1を見たときのインピーダンスZfに対して、約1/18となっている。このため、フィルタ用インダクタL1とフィルタ用コンデンサC2とからなるフィルタの通過特性は、ローパスフィルタとしての特性と、並列共振回路としてのバンドパス特性とを併せて含む特性となる。すなわち、図2(C)に示す通過特性となる。
上記構成からなる実施形態の作用について、以下に説明する。
既に述べたように、図5に示した2種の従来技術のうち、ブロック92に示す構成を用いた場合、出力端子6の信号波形は、図3の6bに示す形状となっている。一方、ブロック92に示す回路を用いる場合、端子16から出力端子6までの信号経路における通過特性は平坦であるので、端子16に導かれるデジタル音声信号の波形は、6bに示す形状に近似した形状になっていると見なすことができる。このため、以下では、図1に示す端子16に導かれる波形は、6bに示す形状になっているとして説明を行う。
フィルタ用インダクタL1とフィルタ用コンデンサC2とからなるフィルタ(以下では、補正用フィルタと称する)の共振周波数は、既に述べたように、約55MHzとなっている(図2のf0により示す)。そして、この共振周波数の55MHzは、デジタル音声信号の周波数(パルス間隔を周期と見なすときの周波数)の20倍〜30倍の周波数となっている。また、補正用フィルタの通過特性は、ローパスフィルタとしての特性と、バンドパスフィルタとしての特性との双方を併せ持った特性となっている。
以上のことから、共振周波数の近傍におけるスペクトル成分は増強される。また、共振周波数より周波数が高くなる側においては、スペクトル成分は抑制される。このため、以下に示す作用が生じることになる。
デジタル音声信号の周波数の20〜30倍の周波数範囲におけるスペクトル成分は、出力端子6から送出されるデジタル音声信号のパルスにおける立ち上がり速度や立ち下がり速度に強く関係する成分となっている。従って、補正用フィルタによって、デジタル音声信号の周波数の20〜30倍の周波数範囲におけるスペクトル成分が増強される(図4(A)の71bにより示したスペクトル成分が増強されて、(B)の71cにより示したスペクトル成分になる)と、出力端子6から送出されるパルスの立ち上がりや立ち下がりの特性が改善されることになる。このため、出力端子6から出力されるデジタル音声信号の波形は、図3の6cに示す形状となり、立ち上がり期間t1cは、端子16に入力されるデジタル音声信号の立ち上がり期間t1bより短くなる。また、同様に、デジタル音声信号6cにおける立ち下がり期間t2cは、端子16に入力されるデジタル音声信号の立ち下がり期間t2bより短くなる。
また、端子16に導かれたデジタル音声信号におけるオーバーシュート61bやアンダーシュート62bは、デジタル音声回路4の出力端子から端子16までの信号経路における通過特性が、デジタル音声信号の周波数の20〜30倍の周波数範囲において、減衰を与える特性となっている(通過特性が、周波数の高い側にまで充分に延びていない特性となっている)ために生じている。従って、デジタル音声信号の周波数の20〜30倍の周波数範囲におけるスペクトル成分が増強されると、オーバーシュートやアンダーシュートは、61c、62cに示したように、そのレベルが抑制されることになる。
また、共振周波数より周波数が高くなる側においては、スペクトル成分は抑制されるので、出力端子6から送出されるデジタル音声信号のスペクトル成分の分布は、図4の(B)に示すようになる。すなわち、90〜108MHzの範囲におけるスペクトル成分は、補正用フィルタによって減衰される。従って、端子16に導かれた信号においては、レベルが強かった90〜108MHzの範囲のスペクトル成分72bは、補正用フィルタによって減衰を与えられ、72cに示すレベルまで低減する。また、170〜200MHzの近傍におけるスペクトル成分も、補正用フィルタによって減衰される。従って、端子16に導かれた信号においては、レベルが強かったスペクトル成分73bも、補正用フィルタによって減衰を与えられ、73cに示すレベルまで低減する。つまり、不要輻射のレベルが、規格値を充分に満たす値となる。
なお、本考案は上記実施形態に限定されず、ZeとZfとの関係については、ZfをZeの約18倍とした場合について説明したが、その他の関係として、ZfをZeの3倍〜30倍の範囲とするときでは、同様の効果を得ることができる。