JP3098030B2 - 残渣油の品質改良方法 - Google Patents

残渣油の品質改良方法

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Description

【発明の詳細な説明】 発明の分野 本発明は、石油精製における残渣油のクラッキングに
より生じる生成物の品質改良方法、特に非接触水素化分
解残渣油の品質改良方法、および特に水素化分解残渣油
の水素化処理方法に関する。
従来の技術 現在、石油製品の中で、軽質で、清浄に燃焼する輸送
燃料が特に必要とされている。その様な燃料は、硫黄、
金属、窒素、および芳香族化合物の含有量を低くする必
要がある。最近ではディーゼル燃料中に存在し得る硫黄
の濃度を制限する必要があり、低煙点の必要性から、ジ
ェット燃料中に許容される芳香族化合物の総量も制限さ
れる。精油業者にとっては、原油からできるだけ価値の
高い、すべての関連規格に適合する軽質輸送燃料を製造
することが恒常的な課題である。
特に、残渣油、つまり原油の蒸留後にポット中に残さ
れる部分の処理が常に問題であるが、残渣油とは通常、
沸点が560℃(1050゜F)を超える部分として定義され
る。残渣油は重質で、石油の品質を低下させる物質、例
えば金属および硫黄、ならびに高分子量多核芳香族化合
物のほとんどを含んでいる。残渣油の少ない高品質の軽
質原油は世界中で益々乏しくなって来ており、残りの重
量原油は精製した時により多くの残渣油を生じる傾向が
ある。例えば、カナダのタールサンド、重量マヤ原油、
ベネズエラ原油、およびアラビア重質油はすべて処理の
際に大量の残渣油を生じる。その結果、精油業者は益
々、いかにしてより多くの残渣油を商業製品に品質改良
するかという問題に取り組まなければならなくなってい
る。できるだけ多くの残渣油をナフサ、ジェット燃料、
ディーゼルおよび他の軽質輸送燃料に変換することが重
要である。
残渣油を品質改良する一方法が、クレッチャマーらの
米国特許第4,851,107号に記載されている。この方法
は、残渣油画分の全体を接触的に水素化分解し、次いで
水素化分解生成物の大部分を過酷な条件下で水素化処理
することにより、燃料、例えばジェット燃料(沸騰範囲
150℃〜355℃(300゜F〜520゜F))を製造することを開
示している。水素化分解生成物の最重質部分はまったく
水素化処理されないが、処理したより軽質の部分と組み
合わされる。次いでこの組み合わせた物質を合成原油と
して精製し、燃料製品を製造する。
しかし、米国特許第4,851,107号に記載されている処
理には幾つかの問題点がある。第一に、水素化処理され
た画分の重質部分は水素化処理の際に過酷な条件下で分
解される傾向がある。これによって、原料の重質部分中
の軽質の硫黄、窒素および芳香族化合物が高濃度で軽沸
騰画分に含まれることになる。したがって、最終的に製
造されたジェット燃料は、芳香族含有量が20容量%以下
である高品質ジェット燃料規格に適合しなくなる。水素
化精製条件が十分に厳密なものであれば、高品質ジェッ
ト燃料規格に適合するであろうが、その代わりにナフサ
画分の硫黄および窒素含有量が多くなりすぎて、リホー
ミング原料には適さなくなる。リハーミング原料の硫黄
ならびに窒素の含有量は1ppm未満である必要がある。
第二に、水素化分解物は広範囲の分子量および沸点を
有する成分を含む。したがって、水素化分解物の様々な
成分の大部分を水素化処理するための条件を最適化する
ことは不可能である。そのため、水素化分解物原料の中
には「過剰に」処理され、望ましい成分が破壊される部
分もあれば、十分に処理されず、望ましい製品が製造さ
れない部分もある。その上、水素化分解物を品質改良し
て高品質ジェット燃料規格に適合させるのに必要な極め
て厳しい温度および圧力を得るには、一般的に経費がか
かるので、この方法はあまり経済的ではない。最後に、
水素化処理されていない画分を水素化処理された画分と
組み合わせることにより、最終製品に導入される芳香族
成分が多くなる傾向がある。
したがって、水素化分解された残渣油の全体を接触的
に水素化処理する方法には、多くの欠点がある。この方
法は経費がかかり、製造される製品は、ジェット燃料の
範囲内の沸点は有するが、高品質ジェット燃料の芳香族
成分に関する規格には適合しない。明らかに、残渣油か
らより高品質のジェット燃料を、より経済的に製造でき
る方法が必要とされている。
発明の概要 本発明は、一態様において、水素化分解された残渣油
を品質改良する装置であって、水素化分解残渣油を第一
画分および第二画分に分離する手段、この分離手段と流
体が連絡しており、水素の存在下、高圧および高温で第
一画分を接触的に水素化精製(hydrotreating)し、水
素化精製された画分を形成する手段、前記分離手段と流
体が連絡しており第二画分を真空蒸留して第三画分を形
成する手段、この真空蒸留手段と流体が連絡しており、
水素の存在下で第三画分を接触的に水素化処理(hydrop
rocessing)し、水素化処理された画分を形成する手
段、および前記第一画分を接触的に水素化精製する手段
および前記第三画分を接触的に水素化処理する手段と流
体が連絡しており、前記水素化精製した画分を前記水素
化処理した画分と合わせる手段を有して成る装置を提供
する。
本発明は、別の態様において、水素化分解された残渣
油を品質改良する方法であって、水素化分解残渣油を第
一画分および第二画分に分離する工程、第一画分を接触
的に水素化精製し、水素化精製された生成物を形成する
工程、第二画分を真空蒸留して第三画分および残渣油画
分を形成する工程、前記第三の画分を接触的に水素化処
理し、水素化処理画分を形成する工程、および前記水素
化精製処理した生成物を前記水素化処理した生成物と合
わせる工程を含んで成る方法を提供する。
本発明の残渣油の品質改良方法によれば、まず水素化
分解残渣油を蒸気画分と液体画分に分離する。蒸気画分
は水素化精製して水素化精製生成物を形成する。液体画
分は残渣油画分と軽質液体画分に分離する。この軽質液
体画分を水素化精製または水素化分解し、水素化処理さ
れた生成物を形成する。次いで前記水素化精製された生
成物と前記水素化処理された生成物とを合わせる。
本発明の方法により、水素化分解された残渣油、また
は類似の原料を品質改良し、例えば高品質ジェット燃料
(芳香族成分の含有量が20容量%以下と定義される)を
製造することができる。本発明の原料は分留されるの
で、各画分は比較的穏やかな条件下で水素化処理するこ
とができ、それらの画分のより重質の、高沸点部分が過
度に分解されるのを避けることができる。硫黄および窒
素の濃度は十分に低いので、生成物をリホーミングする
ことができる。したがって、本発明の生成物のジェット
燃料領域の部分は、一般的に、および好ましくは20容量
%を超える芳香族成分を含まない。その上、ナフサ部分
は、好適なリホーミング用原料のための硫黄および窒素
の規格に適合する。
前記2つの水素化処理された画分は、好ましくは、分
子量および沸点が比較的狭い範囲内にある成分を含む。
したがって、水素化処理条件を各画分に対して最適化
し、より多くの所望の製品成分を製造し、保存すること
ができる。
本発明の方法は比較的穏やかな条件を使用することが
できるので、便利で経済的である。本発明の方法は、高
品質ジェット燃料および好適なリホーミング用原料の両
方を好適に製造できる、経費のかからない方法である。
一般的に、本発明により精油業者は水素化分解された
残渣油を品質改良することができる。本発明の装置およ
び方法は、非接触的に水素化分解された残渣油原料を生
じる系または方法と容易に一体化することができる。本
発明の方法は、水素化分解残渣油の製造工程と実質的に
同じ圧力下で実行することができ、精油業者はそれでも
各水素化処理工程における条件を最適化し、2つの画分
を最も効率的に処理することができる。特に、精油業者
は異なった触媒、および触媒床中の異なった滞留時間お
よび温度を使用することができる。本発明は精油業者に
精製可能な合成原油製品を製造する方法を提供する。水
素化処理条件を最適化することにより、精油業者は、高
品質ナフサまたは中間留分製品を製造できる合成原油製
品を製造することができる。
図面の簡単な説明 図は、本発明の概略フロー図を示す。
発明の詳細な説明 本発明の原料は、水素化分解された真空または常圧蒸
留残渣油である。水素化分解された残渣油を製造するた
めの方法は接触的でも非接触的でもよい。通常、この製
法のための原料を製造するのに、a)通常の水素化処理
触媒、b)石炭または木炭粉塵、酸化鉄の粉塵または小
粒子、または他の小粒子の様な粒状材料の存在下で、あ
るいはc)触媒または粒子なしに、350〜750psia水素の
存在下で、残渣油を250℃〜500℃に加熱する。ハイドロ
ビスブレーキング法にかけた残渣油からは、触媒を含ま
ない容器中で750psiaを超える水素圧で450℃を超える温
度にさらした残渣油から得られる様な原料が得られる。
クレッチャマーらの米国特許第4,851,107号に記載され
ている「接触的」工程からは、別のその様な原料が得ら
れる。これらの原料は、広い温度範囲にわたって沸騰す
る成分を含み、その沸騰分布は、残渣油の性質および操
作条件の厳しさにより大きく左右される。一般的に、原
料は少なくとも5重量%の、多くの場合10重量%を超え
る、時として20重量%を超える、ただし通常は約30重量
%以下の、550℃(1050゜F)を超える温度で沸騰する成
分を含む。原料は、標準的には少なくとも10重量%の、
通常は20重量%以下の、ただし一般的に約30重量%以下
の、85℃(185゜F)未満の温度で沸騰する成分を含む。
約176℃(300゜F)未満で沸騰する成分の重量%は、無
論、85℃(185゜F)未満の温度で沸騰する成分の重量%
より幾分高く、その値は176℃(300゜F+)画分に対し
て一般的に少なくとも15重量%であり、少なくとも30重
量%であることが多いが、一般的に50重量%未満であ
る。また、原料は一般的に比較的高濃度の硫黄、窒素、
金属、アスファルテンおよび重質芳香族成分を含む。ア
スファルテン、金属、等は1050゜F+画分に濃縮される
傾向がある。
その様な原料は、商業的製品を製造するにはさらに精
製する必要がある。以下の明細書および請求項では、ナ
フサ画分とは176℃(350゜F)未満で沸騰するC5および
それより重い分子を含む画分であり、ジェット燃料画分
とは176〜260℃(350〜500゜F)で沸騰する画分であ
り、ディーゼル画分とは176〜343℃(350〜650゜F)で
沸騰する画分であり、軽油画分とは343℃(650゜F)を
超える温度で沸騰する画分である。
ライン10の原料は高温、高圧の、約295〜395℃(563
〜743゜F)、好ましくは約320〜395℃(608〜743゜
F)、最も好ましくは約330〜360℃(626〜680゜F)の分
離温度に維持された分留装置12に導入される。2つの画
分が形成される。蒸気画分は分離温度未満で沸騰し、約
35〜80容量%、好ましくは約50〜70容量%の分解された
残渣油生成物を含む。液体画分は分離温度より高い温度
で沸騰する。蒸気画分は分離装置の上部からライン14を
通って除去され、液体画分は分離容器の底からライン16
を通って抜き取られる。分留装置は内部に邪魔板がほと
んど無い、粗雑な構造のものでもよいが、その様な粗雑
な分留装置では、各画分に、正しくは他の画分に属すべ
き物質が濃縮することになる。
蒸気画分は、一般的に液体画分よりも低濃度の芳香族
成分を含む。例えば、蒸気画分は通常30容量%未満の、
好ましくは25容量%未満の、最も好ましくは20容量%未
満の芳香族成分を含む。分離温度650゜Fを想定した場合
の、代表的な蒸気画分の範囲、およびその成分を表1に
示す。
注:分留は比較的粗雑であり、蒸気画分中の650゜F+物
質の濃度が高くなる。
蒸気画分はさらに精製する必要が大いにある。その構
成画分は非常に低品質であり、商業的製品としてただち
に使用することはできない。一般的に、原料の蒸気画分
は、ジェット燃料範囲で沸騰する画分に含まれる芳香族
成分の濃度が高すぎてジェット燃料としては使用できな
い。しかし、高温の分離装置液体の中に残る、より重質
の蒸留成分を除去することにより、蒸気画分は、その重
質画分を除去しない場合よりも比較的穏やかな条件で水
素化精製することができ、硫黄、窒素、および芳香族成
分を除去し、高品質ジェット燃料規格に適合するジェッ
ト燃料を得ることができる。同時に、ナフサ領域物質中
の硫黄および窒素の量は、比較的厳しくない条件下で、
1ppmw未満に下げることができる。
蒸気画分は、好適な耐火性酸化物上に支持されたVIII
族およびVI B族の金属を含む触媒のような水素化精製触
媒を充填した接触反応器18に直接送られる。好ましいVI
II族金属にはニッケルおよびコバルトが含まれ、好まし
いVI B族金属にはモリブデンおよびタングステンが含ま
れる。好適な耐火性酸化物には、アルミナ、シリカ−ア
ルミナ、シリカ、チタニア、マグネシア、ジルコニア、
ベリリア、シリカ−マグネシア、シリカ−チタニア、そ
の他類似の組合わせがある。触媒は、予め成形した触媒
担体に含浸させるなどの通常の方法により製造すること
ができる。その他、触媒金属を触媒支持体と共に共ゲル
化、共粉砕、または沈殿させ、続いてか焼するなどの方
法がある。好ましい触媒はアルミナ上に支持されたニッ
ケルおよびモリブデンである。
蒸気画分は、約200〜600℃(430〜1112゜F)、好まし
くは約230〜480℃(446〜(896゜F)の温度で、圧力6.8
〜34.5MPa(1000〜5000psia)、好ましくは10.3〜20.7M
Pa(1500〜3000psia)、最も好ましくは12.1〜17.2MPa
(1750〜2500psia)の水素の存在下で触媒と接触させ
る。水素化精製の結果、有機硫黄は硫化水素に変換さ
れ、有機窒素はアンモニアに変換される。オレフィンの
一部および芳香族化合物の一部も水素化され、製品は高
品質ジェット燃料の芳香族成分規格に適合するのに必要
な範囲内に入る。水素化精製反応器中で水素化精製され
た生成物はライン20を通して抜き取られるが、その分析
結果を表2に示す。ジェット燃料画分は高品質ジェット
燃料規格に適合し、ナフサ画分は適格なリホーミング原
料の窒素規格に適合することを確認されたい。
ライン16は液体画分を、低圧、高温の液体/ガス分離
装置22に送り、そこで液体画分中に含まれるガスを除去
する。除去されたガスはライン24を通して精油所の何処
かにあるガス回収装置に送られる。脱気された液体画分
はライン26を通して分離装置22の底部から除去される。
ライン26は、脱気された画分を、圧力約1.67〜10.02K
Pa(0.5〜6インチHg)、好ましくは約3.38〜6.68KPa
(1〜2インチHg)、真空蒸留温度250〜500℃(482〜9
32゜F)、好ましくは300〜450℃(572〜842゜F)、最も
好ましくは約350〜400℃(662〜752゜F)に維持された
真空蒸留塔28に導入する。2つの画分、すなわち軽質液
体画分および残渣油画分を分離する。重質軽油と考えら
れる軽質液体画分は、分離温度と真空蒸留温度の間で沸
騰する画分であり、表3に示す分析値を有する。
注:分留は比較的粗雑であり、液体画分中の650゜F−物
質の濃度が高くなる。
軽質液体画分は好ましくは原料の15〜50容量%、より
好ましくは約25〜400容量%を形成する。軽質液体画分
は上からライン30を通して抜き取られ、残渣油画分は底
部からライン32を通して抜き取られる。
真空カラム28中で製造される残渣油画分は低品質であ
り、好ましくは燃料オイル、道路油、または類似の低価
値製品に使用する。この画分は一般的に本発明の非接触
水素化分解工程に循環させるための原料としては適して
いない。過剰のコークス形成を防ぐために、本発明の原
料製造に使用する非接触クラッキング法における残渣油
に添加剤を加えることが多い。コークス形成を防止する
添加剤を非接触水素化分解工程で使用する場合、できる
だけ多くの添加剤を回収するために、残渣油画分の全部
または一部を非接触水素化分解工程に循環させることが
できる。
蒸留塔28から得られる軽質液体画分は、表3に示す様
に、通常高濃度の芳香族成分を含む。軽質液体画分は反
応器34中で水素化処理にかける。水素化処理には水素化
精製、水素化分解、または以下に「一体化操作」と呼
ぶ、水素化精製とその後に続く水素化分解の組合わせが
含まれる。どれを選択するかは、精油業者の自由であ
る。精油業者がより多くのナフサおよび軽質製品、また
は中間留分、例えばジェット燃料またはディーゼル燃料
を必要とする場合、通常は軽質液体画分を水素化分解す
る。他のより重質な製品は、軽質液体画分を水素化精製
することにより製造できる。一体化操作により、軽質製
品および低濃度の芳香族成分を含む中間留分が得られ
る。特に、一体化操作には、軽質液体画分のクラッキン
グにより形成される軽質芳香族成分が排除されるという
利点がある。高品質ジェット燃料規格に適合する、芳香
族成分濃度の低い中間留分製品を得ることができる。
蒸留塔28から得られる液体画分を水素化精製する場
合、反応器34中、一般的に上記の条件下で第二の水素化
精製触媒と接触させる。むろん、特定の条件は反応器18
に関して前に記載した条件と異なるが、条件は上記の範
囲内に入る。軽質液体画分は、圧力6.8〜34.5MPa(986
〜5000psia)、好ましくは10.3〜20.7MPa(1500〜3000p
sia)、最も好ましくは12.1〜17.2MPa(1750〜2500psi
a)の水素の存在下で約230℃〜480℃(446゜F〜896゜
F)の温度に維持された触媒と接触させる。原料中のあ
る種のオレフィンおよびある種の芳香族化合物は飽和さ
れ、存在し得る有機硫黄は硫化水素に変換され、有機窒
素はアンモニアに変換される。水素化精製された軽質液
体画分の容量分析値を表4に示す。
表4で、製品の大部分は軽油であり、ほんの僅かな量
のより軽質の生成物が製造されることが分かる。軽油
は、主として流動接触分解(FCC)装置用の原料として
使用される。使用可能な原料になるためには、軽油は窒
素含有量が約5000ppmwを超えてはならず、好ましくは10
00ppmw未満である。本方法により製造される軽油はこの
規格に適合するが、先行技術の未処理軽油は、表3に示
す原料と同じ位多くの窒素を含むか、あるいは1.5重量
%もの窒素を含むので、明らかにこの規格には適合しな
い。
タービン燃料、ディーゼル燃料、その他の中間留分、
ならびにナフサおよびガソリンのような低沸点液体は、
反応器34中の軽質液体画分のような重質軽油を水素化分
解することにより製造できる。水素化分解反応器中の運
転条件は製品の収率に対してある程度の影響を及ぼす
が、水素化分解触媒が製品の収率を決定する上で第一の
ファクターである。しかし、本発明の実施において、選
択される水素化分解触媒は一般的に高活性水素化分解触
媒である。転化量は水素化分解触媒の温度を調製するこ
とにより制御する。しかし、特殊な必要性に対しては、
精油業者は、より活性の低い、ジェット燃料およびディ
ーゼル燃料の様な中間留分を選択的に製造する、より選
択性の高い水素化分解触媒を選ぶことができる。精油業
者がナフサを所望する場合、より軽質の製品、例えばナ
フサを選択的に製造する水素化分解触媒を選ぶ。軽質液
体画分は、高温高圧の条件下で、水素の存在下で好適な
水素化分解触媒と接触させ、精油業者が所望する炭化水
素物質の分布を含む製品を得る。
本発明により製造されるジェット燃料の量を最大にし
たい場合、軽質液体画分を水素化分解するのに好適な水
素化分解触媒を選択する。好適な触媒は、ここに参考と
して含める米国特許第4,062,809号および4,419,271号に
開示されている。これらの特許は2種類の非常に有効な
中間留分水素化分解触媒を開示している。米国特許第4,
062,809号の触媒は、ガンマアルミナ中に分散したシリ
カ−アルミナの担体上の、モリブデンおよび/またはタ
ングステンに加えてニッケルおよび/またはコバルトを
含む。米国特許第4,419,271号は、担体にアルミナケイ
酸塩ゼオライトを加え、それによってアルミノケイ酸塩
ゼオライト、好ましくはLZ−10と呼ばれる超疎水性ゼオ
ライトを、ガンマアルミナマトリックス中のシリカ−ア
ルミナ分散物と組み合わせた混合物上に担持されたモリ
ブデンおよび/またはタングステンおよびニッケルおよ
び/またはコバルトを含む触媒を製造することにより米
国特許第4,062,809号の触媒を品質改良できることを開
示している。この触媒中にゼオライトが存在することに
より、選択性に著しい影響を与えずに、触媒の活性が増
加する。水素化分解触媒により処理された軽質液体画分
に関する代表的な分析値を表5に示す。硫黄および窒素
の量は十分に低く、好適なリホーミング装置用の原料に
関する規格に適合していること、およびジェット燃料画
分の芳香族成分濃度は好ましい範囲内にあることに注意
されたい。
本発明により製造されるガソリンおよびナフサの量を
最大限にしたい場合、軽質液体画分を水素化分解するた
めに異なった水素化分解触媒を選択する。好適な触媒
は、ここに参考として含めるウォードの米国特許第3,92
9,672号に記載されている。米国特許第3,929,672号は、
アルミナ上に担持された、VIII族の金属、VI B族の金属
および水熱的に安定したYゼオライトを含む水素化分解
触媒を開示している。この触媒は、水素化処理反応器で
使用すると、ガソリンおよびナフサの製造を促進する。
蒸留塔28から得られる軽質液体画分を処理するための
第三の実施態様では、その画分を一体化操作に付すが、
そこでは反応器34が水素化精製触媒の床および水素化分
解触媒の床を含む。この実施態様では、第三の軽質液体
画分を最初に、最も一般的にアルミナからなり、ゼオラ
イトまたは分子篩を含まない、多孔質の無機耐火性酸化
物担体上の、VII族の金属成分およびVI B族の金属成分
の様な、上記の好適な水素化処理触媒と、高温で水素が
存在する好適な条件下で接触させる。例えば、好適な条
件には、圧力6.8〜34.5MPa(986〜5000psia)、好まし
くは10.3〜20.7MPa(1500〜3000psia)、最も好ましく
は12.1〜17.2MPa(1750〜2500psia)の水素の存在下で
の温度約200〜535℃(392〜995゜F)が含まれる。水素
化精製領域では、原料中に含まれる有機窒素成分はアン
モニアに変換され、有機硫黄成分は硫化水素に変換され
る。続いて、水素化精製領域から出る流体の全部が、高
温およびシステム圧の好適な条件下に維持され、所望の
生成物群を与える様に精油業者により予め決定された水
素化分解触媒を含む水素化分解領域で処理され、高沸点
原料成分を所望の製品成分に実質的に変換する。一体化
操作において、水素化精製および水素化分解領域は別の
反応容器中に保持することは可能であるが、本発明の方
法では、水素化精製触媒粒子の上部床および水素化分解
粒子の下部床を含む単一の、順流式反応容器を使用する
のが好ましい。一体化操作の好ましい例は、水素化分解
領域の後に第二の水素化精製領域を含む一体化操作の方
法を開示している、ウッドの米国特許第3,338,819号に
見ることができる。
第二接触反応器34は水素化処理された画分を製造し、
これがライン36を通して除去される。次いで、ライン20
中の水素化精製された生成物およびライン36中の水素化
処理された生成物が組み合わされ、ライン38中の合成粗
生成物を形成し、この粗生成物は、精油所で通常の原油
として処理することができる。合成粗生成物の特徴は、
表2、4および5に示す様に、硫黄、窒素および芳香族
成分が大幅に減少していることである。例えば、この粗
生成物は通常20容量%未満、好ましくは15容量%未満の
芳香族成分を含む。生成物中に含まれる各種のガスを除
去するために、高圧の、低温ガス/液体分離装置40を使
用するのが好ましい。例えば、生成物中に含まれること
がある硫化水素またはアンモニアが除去される。ガスは
ライン42を通して除去され、最終生成物はライン44を通
して除去され、精油所に送られる。
表5に示す、水素化分解により得られる被水素化処理
生成物のジェット燃料画分は、高品質ジェット燃料規格
にかろうじて適合しているだけであることが分かる。し
かし、この水素化処理された生成物は表2に示す水素化
精製された生成物と混合されるので、最終的に製造され
るライン44中のジェット燃料画分は高品質ジェット燃料
のための芳香族成分規格に容易に適合する。反対に、先
行技術で提案されている様にライン10中の原料全体をす
べて水素化分解すると、低品質の残渣油部分が分解さ
れ、ジェット燃料領域で沸騰する芳香族成分が大量に製
造されるであろう。この製品は芳香族成分規格には適合
し得ないであろう。
好ましい実施態様では、この方法の全高圧工程を同じ
圧力で行う。本発明の装置の全高圧容器の圧力は、通常
6.8〜34.5MPa(986〜5000psia)、好ましくは10.3〜20.
7MPa(1500〜3000psia)、最も好ましくは12.1〜17.2MP
a(1750〜2500psia)である。高温高圧分離装置12、接
触反応器18、第二接触反応器34の圧力は、好ましくは同
じ圧力である。ひとつの圧力だけを維持すればよいの
で、この製法は簡素化される。圧力低下はガス液体分離
装置22および真空蒸留塔28で起こるだけである。圧力は
系全体にわたって近似しており、触媒床を横切る際に通
常予想される圧力低下が起こる。
本発明は多くの変形および追加を含むことを意図して
いる。例えば、上記の好ましい実施態様は、ライン28か
ら硫化水素およびアンモニアを除去するために単一のガ
ス/液体分離装置を使用している。しかし、実施例1に
おける様に、各生成物ラインが組み合わされる前に、個
々の生成物についてそれぞれ別のガス/液体分離装置を
使用することもできる。
実施例 以下に実施例により本発明をさらに説明するが、これ
らの実施例は本発明の様々な特徴を説明するためであっ
て、請求項により規定される本発明の範囲を制限するも
のではない。
実施例1 この実施例では、560℃を超える温度で沸騰し、1.0重
量%を超える硫黄、1000ppmを超える窒素を含み、ペン
タン不溶成分が少なくとも50容量%である残渣油原料
を、水素の存在下で約550℃(1022゜F)に加熱すること
により水素化分解する。この非接触水素化分解工程の圧
力は13.6MPa(2000psia)である。分解された残渣油生
成物を分離装置中、非接触水素化分解圧で約345℃(653
゜F)に冷却する。蒸気画分を液体画分から分離する。
蒸気画分を、無定形アルミナ担体上にニッケル約3.7
〜4.5重量%(NiOとして測定)およびモリブデン約24.0
〜27.0重量%(MoO3として測定)を含む触媒(以下、
「触媒A」と呼ぶ)と接触させる。処理条件は370℃お
よび400℃(698゜Fおよび752゜F)、圧力約13.6MPa(20
00psia)、LHSVが0.4および0.7hr-1である。生じたアン
モニアおよび硫化水素をガス/液体分離装置を使用して
除去し、水素化精製された生成物を得る。
液体画分は低圧高温分離装置に送られ、そこで中に含
まれるガスを除去する。次いで脱気した液体画分を真空
蒸留塔で真空蒸留する。塔の圧力は約6.68KPa(2.0イン
チHg)で、温度は345℃(653゜F)である。軽質液体画
分を残渣油流から分離する。この残渣油流は廃棄する。
軽質液体画分は、380℃(716゜F)、圧力約13.6MPa
(2000psia)およびLHSV1.0hr-1で触媒Aと接触させる
ことにより水素化精製する。この反応により得られた水
素化精製物から、生じたアンモニアおよび硫化水素を、
ガス/液体分離装置を使用して除去する。
次いで、水素化精製された生成物および水素化処理さ
れた生成物を組み合わせて、さらに精製に付すべき合成
粗生成物を形成する。
実施例2 この実施例では、実施例1で得た軽質液体画分を、ア
ルミノゲルマトリックス中に分散したモリブデン15重量
%(最少、MoO3として測定)、ニッケル5重量%(NiO
として測定)、および水熱的に安定化させたYゼオライ
ト60重量%を含む触媒(実質的に米国特許第3,929,672
号、実施例18に記載されている触媒で、以下、「触媒
B」と呼ぶ)と接触させることにより、水素化精製の代
わりに水素化分解する。処理条件は345℃(653゜F)、
圧力約13.6MPa(2000psia)、2137.2ccH2/mlオイル(1
2,000SCF H2/bbl)、および空間速度2.0〜4.0kr-1LHSV
である。次いで、第二の水素化精製された生成物を除去
する。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C10G 65/12 C10G 45/08 EPAT(QUESTEL) WPI(DIALOG)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】水素化分解された残渣油を品質改良する方
    法であって、 水素化分解残渣油を295〜395℃にて分留し、第一画分
    (蒸気画分)および第二画分(液体画分)に分離する工
    程、 第一画分を接触的に水素化精製し、水素化精製された生
    成物を形成する工程、 第二画分を真空蒸留して第三画分および残渣油画分を形
    成する工程、 第三画分を接触的に水素化処理し、水素化処理された画
    分を形成する工程、および 前記水素化精製した生成物を前記水素化処理した生成物
    と合わせる工程 を含んで成ることを特徴とする方法。
  2. 【請求項2】水素化分解された残渣油を品質改良する方
    法であって、 水素化分解された残渣油を295〜395℃にて分留し、第一
    画分(蒸気画分)および第二画分(液体画分)に分離す
    る工程、 第一画分を接触的に水素化精製し、水素化精製された生
    成物を形成する工程、 第二画分を真空蒸留し、芳香族成分25〜50重量%を含む
    第三画分および残渣油画分を形成する工程、 第三画分を、150℃〜355℃(300゜F〜670゜F)で沸騰す
    るmidbarrel製品製造用のクラッキング触媒の存在下で
    接触的に水素化処理し、水素化処理された生成物を形成
    する工程、および 前記水素化精製した生成物を前記水素化処理した生成物
    と組み合わせ、175℃〜260℃(350゜F〜500゜F)で沸騰
    する燃料製品に精製できる成分20容量%以上および、芳
    香族成分20容量%以下を含む画分、および硫黄含有成分
    1ppmw以下および窒素含有成分1ppmw以下を含むナフサ画
    分を含む製品を製造する工程 を含んでなることを特徴とする方法。
  3. 【請求項3】接触水素化精製工程が、第一画分を、耐火
    性酸化物上に担持されたVIII族金属およびVI B族金属を
    含んで成る触媒と接触させることから成ることを特徴と
    する、請求項2に記載の方法。
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