JP3090701B2 - 人工肺用複合膜、その製造方法およびそれを用いた複合膜型人工肺 - Google Patents

人工肺用複合膜、その製造方法およびそれを用いた複合膜型人工肺

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、人工肺用複合膜、その
製造方法およびそれを用いた複合膜型人工肺に関するも
のである。詳しく述べると、長期間使用に際して血漿漏
出がなくかつ充分なガス交換能を保持しており、しかも
抗血栓性に優れた人工肺用複合膜、その製造法およびそ
れを用いて複合膜型人工肺に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、開心術の補助手段等として、良好
なガス透過性を有するガス交換膜を介して、血液と酸素
含有ガスとを接触させてガス交換を行なう膜型人工肺が
用いられている。このガス交換膜には、良好なガス透過
性を有すること以外に、機械的強度が大きいこと、長期
間血液を循環しても血漿の漏洩が起こらないこと、さら
に血液に触れても血液に対する損傷、すなわち血液凝
固、微小血栓生成、血小板損失、血漿タンパクの変性、
溶血などを起こさないこと等の性能が要求される。現在
膜型人工肺に用いられるガス交換膜としては、均質膜と
多孔質膜の2種類があり、均質膜としては、主にシリコ
ーン膜が用いられており、一方多孔質膜としては、ポリ
エチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレ
ン、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタ
ン、ポリアミド等の種々の材質が用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、シリコ
ーン均質膜は、強度的に充分ではなく膜厚を100μm
以下にすることができずこのためガス透過に限界があ
り、特に炭酸ガスの透過が悪いものであり、また所望の
ガス交換能を達するために、例えば中空糸膜として数万
本束ねたときに装置が大型化しプライミング量の増大を
きたし、さらにコスト的にも高いものである。
【0004】一方、多孔質膜は膜厚方向に連通する多数
の微細孔を有するものであるが、前記膜が疎水性である
ことから、血漿が細孔を通過することなく、すなわち該
膜の血液流路側から他方のガス流路側への血漿洩れを生
ずることなく、ガス中の酸素を血液中に添加し、かつ血
液中の二酸化炭素をガス中に除去することを可能として
いる。しかしながら、多孔質膜は、水蒸気の透過性が高
いので結露水によって性能が低下するだけでなく長時間
血液を循環使用すると、実際には、血漿の漏出が生じる
ことがあった。このような現象は、人工肺の製造段階に
おいて水洩れ試験を行ない、異常のないことを確認した
ものについても認められるものであり、使用時に生じる
現象である。また多孔質膜は、用いられる材質において
血小板損失等の生体適合性の面から充分といえるものは
少なかった。また、必要な物性を付与するために多孔質
膜内面に機能性重合体を被覆することは行なわれている
が、該膜の支持面が多孔質でしかも疎水性であるために
被覆が均一に行なえず、かつ機能性重合体を被覆する際
に、多孔質膜の細孔内にも被覆され、親水化することか
ら血漿が漏出しやすくなるという問題れがあった。さら
に、膜面にヘパリンを固定化する際に、予め被覆される
重合体が剥離されやすいという問題があった。
【0005】したがって、本発明の目的は、新規な人工
肺用複合膜、その製造方法およびそれを用いた複合膜型
人工肺を提供することにある。本発明の他の目的は、長
期間使用に際して血漿漏出がなくかつ充分なガス交換能
を保持しており、しかも抗血栓性の優れた人工肺用複合
膜、その製造方法およびそれを用いた複合膜型人工肺を
提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】これらの諸目的は、多孔
質膜の細孔内面を、含水率30〜80重量%で膨潤比2
以上の水膨潤性高分子化合物により被覆してなる人工肺
用複合膜により達成される。
【0007】本発明はまた、多孔質膜が、肉厚5〜80
μm、空孔率20〜80%、細孔径0.01〜5μmお
よび内径100〜1,000μmを有する中空糸状多孔
質膜である人工肺用複合膜である。本発明はさらに、水
膨潤性高分子化合物が含水率30〜80重量%および膨
潤比2以上を有してなる人工肺用複合膜である。本発明
はまた、水膨潤性高分子化合物が(メタ)アクリル酸
系、ポリビニルアルコール系、(メタ)アクリルアミド
系、ポリアルキレンオキサイド系およびポリアルキレン
イミン系よりなる群から選ばれた少なくとも1種の水膨
潤性化合物である人工肺用複合膜である。本発明はさら
に、水膨潤性化合物が架橋された水溶性高分子化合物で
ある人工肺用複合膜である。本発明はまた、水溶性高分
子化合物がポリアルキレンイミンおよび(メタ)アクリ
ル酸塩よりなる群から選ばれた少なくとも1種のもので
ある人工肺用複合膜である。本発明はさらに、水膨潤性
化合物が0.01〜5μmの膜厚に被覆されてなる人工
肺用複合膜である。
【0008】これらの諸目的は、多孔質膜の表面に、水
溶性高分子化合物の溶液を塗布し、ついで該水溶性高分
子化合物被覆の架橋処理を行なうことを特徴とする人工
肺用複合膜の製造方法によっても達成される。
【0009】本発明はまた、多孔質膜の表面に、水溶性
高分子化合物の溶液を、0.2〜2.0Kg/cm 2 の圧力
で接触させかつ溶媒を細孔を通じて導出させることによ
り塗布するものである人工肺用複合膜の製造方法を示す
ものである。本発明はさらに、架橋処理は水溶性高分子
化合物被膜に架橋剤の液を接触させることにより行なわ
れる人工肺用複合膜の製造方法である。本発明はまた、
架橋処理は水溶性高分子化合物被膜に放射線を照射する
ことにより行なわれる人工肺用複合膜の製造方法であ
る。
【0010】これらの諸目的は、多孔質膜の表面に、水
溶性高分子化合物および架橋剤を含有してなる溶液を塗
布することを特徴とする人工肺用複合膜の製造方法によ
っても達成される。
【0011】これらの諸目的は、多孔質膜の細孔内面を
水膨潤性高分子化合物により被覆してなる複合膜をガス
交換膜として使用し、酸素流入口、酸素流出口、血液流
入口および血液流出口を備えたハウジング内に収納して
該複合膜を介して血液流路および酸素流路を形成してな
る複合膜型人工肺によっても達成される。
【0012】本発明はまた、該多孔質膜の少なくとも血
液を接触する面に、水膨潤性高分子化合物の溶液を接触
させたのち、該溶媒を除去し、さらに架橋処理を施して
なる複合膜型人工肺である。
【0013】
【作用】本発明で使用される多孔質膜は、中空糸膜およ
び平膜の形状を問わず種々の樹脂の多孔質膜であるが、
例えば中空糸膜について一例を挙げると、例えばポリプ
ロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン製膜であ
り、その肉厚は5〜80μ、好ましくは10〜60μ
m、空孔率は、20〜80%、好ましくは30〜60%
および平均細孔径は0.01〜5μm、好ましくは0.
01〜1.0μmであり、内径は100〜1,000μ
m、好ましくは100〜300μmである。
【0014】このような疎水性多孔質膜は、延伸法によ
り製造することもできるが、例えば特開昭61−90,
704号、特開昭61−90,705号、特開昭61−
90,707号、特開昭62−106,770号等に開
示されているように、ポリオレフィン、該ポリオレフィ
ンの溶融下で該ポリオレフィンに均一に分散しかつ使用
する抽出液に対して易溶性である有機充填剤および結晶
核形成剤を混練し、このようにして得られた混練物を溶
融状態でノズルより吐出させ、吐出させた溶融膜を冷却
用流体と接触させて冷却固化し、ついで冷却固化した平
膜を前記ポリオレフィンを溶融しない抽出液と接触させ
て前記有機充填剤を抽出除去することにより製造するこ
ともできる。
【0015】本発明による人工肺用複合膜その製造方法
および得られる人工肺を、中空糸膜を例にとって説明す
ると、つぎのとおりである。すなわち、図1は、本発明
の中空糸型の複合膜型人工肺の一実施態様である中空糸
膜型人工肺の組立状態を示すものである。すなわち該中
空糸膜型人工肺1は、ハウジング6を具備してなり、こ
のハウジング6は筒状本体7の両端部にそれぞれ環状の
雄ネジ付き取付カバー8,9が設けられ、ハウジング6
内には、全体が広がって多数の、例えば10,000〜
60,000本の上記したように細孔を有する中空糸状
の多孔質膜(ガス交換膜)2がハウジング6の長手方向
に沿って並列的な相互に離間配置されている。そして、
このガス交換膜2の両端部は、取付カバー8,9内にお
いてそれぞれの開口が閉塞されない状態で隔壁10,1
1により液密に支持されている。また、上記各隔室1
0,11は、ガス交換膜2外周と上記ハウジング6の内
面とともに第1の物質移動室である酸素室12を構成
し、これを閉塞し、かつ上記ガス交換膜2の内部に形成
される第2の物質移動流体用空間である血液流通用空間
(図示しない)と酸素室12を隔離するものである。
【0016】一方の取付カバー8には、第1の物質移動
流体である酸素を供給する導入口13が設けられてい
る。他方の取付カバー9には酸素を排出する導出口14
が設けられている。
【0017】上記ハウジング6の筒状本体7の内面に
は、軸方向の中央に位置して突出する絞り用拘束部15
を設けることが好ましい。すなわち、拘束部15は上記
筒状本体7の内面に筒状本体と一体に形成されていて、
筒状本体7内に挿通される多数のガス交換膜2からなる
中空糸束16の外周を締め付けるようになっている。こ
うして、上記中空糸束16は、図1で示すように軸方向
の中央において絞り込まれ、絞り部17を形成してい
る。したがって、ガス交換膜2の充填率は、軸方向に沿
う各部において異なり、中央部分において最も高くなっ
ている。なお、後述する理由により望ましい各部の充填
率は次の通りである。まず、中央の絞り部17における
充填率は、約60〜80%、その他筒状本体7内では約
30〜60%であり、中空糸束16の両端、つまり隔壁
10,11の外面における充填率では、約20〜40%
である。
【0018】次に、上記隔壁10,11の形成について
述べる。前述したように隔壁10,11は、ガス交換膜
2の内部と外部を隔離するという重要な機能を果たすも
のである。通常、この隔壁10,11は、極性の高い高
分子ポッティング材、たとえばポリウレタン、シリコー
ン、エポキシ樹脂等をハウシング6の両端内壁面に遠心
注入法を利用して流し込み、硬化させることにより作ら
れる。さらに詳述すれば、まず、ハウジング6の長さよ
り長い多数の中空糸膜2を用意し、この両開口端を粘度
の高い樹脂によって目止めをした後、ハウジング6の筒
状本体7内に並べて位置せしめる。この後、取付けカバ
ー8,9の径以上の大きさの型カバーで、ガス交換膜2
の各両端を完全に覆って、ハウシング6の中心軸を中心
にそのハウジング6を回転させながら両端部側から高分
子ポッティング材を流入する。流し終って樹脂が硬化す
れば、上記型カバーを外して樹脂の外側面部を鋭利な刃
物で切断してガス交換膜2の両開口端を表面に露出させ
る。かくして隔壁10,11は形成されることになる。
【0019】上記隔壁10,11の外面は、環状凸部を
有する流路形成部材18,19でそれぞれ覆われてい
る。この流路形成部材18,19はそれぞれ液分配部材
20,21およびネジリング22,23よりなり、この
液分配部材20,21の周縁部付近に設けられた環状凸
部として突条24,25の端面を前記隔壁10,11に
それぞれ当接させ、ネジリング22,23を取付けカバ
ー8,9にそれぞれ螺合することにより固定することに
より第2の物質移動流体である血液の流入室26および
流出室27がそれぞれ形成されている。この流路形成部
材18,19にはそれぞれ第2の物質移動流体である血
液入口28および出口29が形成されている。
【0020】この隔壁10,11と、流路形成部材1
8,19とにより形成される隔壁10,11の周縁部の
空隙部には、該空隙部に連通する少なくとも2個の孔3
2,33の一方より充填剤34,35を充填することに
より前記隔壁10,11と接触するようにシールされ
る。あるいはまた、Oリング(図示せず)を介してシー
ルされる。
【0021】このようにして形成された人工肺のモジュ
ールの第1の物質移動流体の導入口13または導出口1
4または第2の物質移動流体の入口28または出口29
より、水溶性高分子化合物の溶液を流入させることによ
り、ガス交換膜である多孔質膜の細孔内に充填する。
【0022】なお、この際、水溶性高分子化合物の溶液
の出口を絞る等して、当該溶液の多孔質膜への接触圧を
0.2〜2Kg/cm 2 に調整することにより、溶液中の溶
媒の一部を細孔内を通過させて導出することにより水溶
性高分子化合物の濃度が高まるので、効率良く充填、被
覆が行える。なお、予め高濃度の調整した溶液を使用す
ることも考えられるが、溶液の粘度が高まって、細孔内
に流入し難い。これに対し、接触圧を調整する方法によ
れば、流入させる溶液には比較的低濃度で粘度が低い溶
液を使用し、細孔内への流入を円滑に行い、さらに細孔
内に流入した後に、接触圧を調整して溶媒のみを通して
流出させて水溶性高分子化合物の濃度を高めることがで
きる。すなわち、このような方法によれば、充填作業を
繰り返し行う必要がなく、最少回数の充填操作にて、効
率良く被覆が行えるものである。本発明において使用さ
れる水膨潤性高分子化合物としては、架橋された水溶性
高分子化合物等がある。このような高分子化合物は、通
常、水溶性高分子化合物の溶液として前記として使用さ
れ、ついで架橋処理されて水不溶性の水膨潤性被膜が形
成される。架橋処理は、通常、水溶性高分子化合物溶液
を被覆したのちに行なわれる。このような架橋処理は、
例えば該水溶性高分子化合物に対して架橋反応を生じ得
る架橋剤の液(例えば溶液)と前記水溶性高分子化合物
の被覆とを接触させることにより行なわれる。また、前
記水溶性高分子化合物の被膜に、ガンマ線、β線等の放
射線、特にガンマ線を照射することによって架橋処理を
施すこともできる。
【0023】さらに、前記水溶性高分子化合物と架橋剤
とを含有する溶液を多孔質膜と接触させたのちに、余剰
の溶液を排出させ、加熱、その他の手段により架橋させ
てもよい。
【0024】水溶性高分子化合物としては、例えば、
(メタ)アクリル酸系、ポリビニルアルコール系、(メ
タ)アクリルアミド系、ポリアルキレンオキサイド系、
ポリアルキレンイミン系等がある。(メタ)アクリル酸
系高分子化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、
その塩、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イ
ソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、メチル
メタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピル
メタクリレート、ブチルメタクリレート、等の(メタ)
アクリル酸エステル等の単独ないしは共重合体等があ
る。ポリビニルアルコール系高分子化合物としては、例
えば重合度500以上、好ましくは1,700〜3,0
00で、ケン化度80モル%以上、好ましくは95モル
%以上のものがある。(メタ)アクリルアミド系高分子
化合物としては、重量平均分子量10万〜100万、好
ましくは20万〜30万の(メタ)アクリルアミド重合
体がある。ポリアルキレンオキサイド系高分子化合物と
しては、重量平均分子量400〜10,000、好まし
くは600〜5,000のポリエチレンオキサイド、ポ
リプロピレンオキサイド等がある。ポリアルキレンイミ
ン系高分子化合物としては、重量平均分子量4万〜10
万、好ましくは6万〜7万のポリエチレンイミン、ポリ
プロピレンイミン等がある。なお、これらの高分子化合
物は、前述のごとき加圧、被覆操作によって細孔を通じ
て導出されないような大きさを有するようなものが好ま
しい。
【0025】前記(メタ)アクリル酸系高分子化合物に
対する架橋剤としては、メラミン系化合物、グアナミン
系化合物、イソシアネート系化合物、ポリアミン系化合
物等がある。ポリビニルアルコール系高分子化合物に対
する架橋剤としては、メラミン系化合物、イソシアネー
ト系化合物、ポリアミン系化合物等がある。(メタ)ア
クリルアミド系高分子化合物に対する架橋剤としては、
N,N′−メチレンビスアクリルアミド等がある。ポリ
アルキレンオキサイド系高分子化合物に対する架橋剤と
しては、イソシアネート系化合物、ポリアミン系化合物
等がある。さらに、ポリアルキレンイミン系高分子化合
物に対する架橋剤としては、グルタルアルデヒド、ホル
ムアルデヒド等がある。
【0026】これら架橋剤の量は、多孔質膜の細孔内面
に形成される水不溶性の水膨潤性高分子化合物被膜に要
求される含水率および膨潤比に応じて変えられる。
【0027】このようにして得られる水不溶性の水膨潤
性高分子化合物の被膜は、含水率が30〜80重量%、
好ましくは40〜60重量%であり、また膨潤比が2以
上である。さらに、該被膜の膜厚は、0.01〜5μ
m、好ましくは0.01〜0.5μmである。
【0028】以上は、中空糸膜型人工肺の場合について
説明したが、積層式、1枚の膜をコイル状に巻いたも
の、ジグザグ状に折込んだもの等の平膜型人工肺につい
ても、用いられるガス交換膜の細孔が該細孔系よりも小
さな微粒子により閉塞され、また少なくとも血液接触面
が生体適合性疎水性樹脂によりコーティングされたもの
であれば、生体適合性が高く接触する血液の血小板等の
損傷が極めて少なく、またガス交換能に優れ、さらに長
期間使用しても血漿漏出の虞れない膜型人工肺が得られ
る。
【0029】
【実施例】以下、実施例を上げて本発明をさらに詳細に
説明する。
【0030】実施例1 内径200μm、肉厚25μm、空孔率38%、平均孔
径700オングストロームのポリプロピレン製中空糸膜
を用いて、膜面積0.8m2 の図1に示すような中空糸
膜型人工肺1を組立てた。ポリ(2−ヒドロキシエチル
メタクリレート)をエタノールで1.25w/v%溶液
に希釈し、この中へポリエチレンイミン(Polymin SN,BA
SF社製)を1.0w/v%となるように添加して被覆液
を調製した。調製された被覆液を上記膜型人工肺に充填
したのち、この溶液を排出して溶媒を除去し、ついで乾
燥を行ない、この浸漬、乾燥という操作を4〜6回繰返
したのち、さらに濃度1.0w/v%のグルタルアルデ
ヒドの水溶液を通過させたのち該溶液を除去し、37℃
に16〜20時間加熱して架橋ならびに乾燥を行なっ
た。
【0031】比較例1 内径200μm、肉厚25μm、空孔率38%、平均孔
径700オングストロームのポリプロピレン製中空糸膜
を用いて膜面積0.8m2 の図1に示すような中空糸膜
型人工肺を組立てた。
【0032】実施例2 実施例1および比較例1で得られる人工肺の含水率およ
び膨潤比を調べるために、つぎの実験を行なった。
【0033】ポリプロピレンのマイクロポーラス膜(ジ
ュラガード、ポリプラスチックス株式会社製)の平膜を
基材として用い、それぞれ実施例1および比較例1(未
処理)と同様な操作を行なった。得られた平膜を37℃
の水に2日間浸漬したのち、1昼夜風乾し、ついで室温
で真乾燥を1昼夜行ない、再び37℃の水中にて1日間
浸漬後に測定し、次式により含水率および膨潤比を測定
したところ、表1の結果が得られた。
【0034】
【数1】
【0035】
【表1】
【0036】実施例1で得られた膜型人工肺の空気透過
流量を測定したところ、850ml/min ・m2 ・mmHgで
あり、また比較例1で得られた膜型人工肺の空気透過流
量は1,000ml/min ・m2 ・mmHgであった。一方、
充填処理前の膜型人工肺(比較例2とする)の空気透過
流量が1,100ml/min ・m2 ・mmHgであることを比
較してそれぞれ低下していた。
【0037】さらに、これらの膜型人工肺のガス交換能
評価および血漿の漏出量をみるために、生体外(in vit
ro) 試験および動物試験を行なった。
【0038】(1)生体外(in vitro)試験 新鮮なヘパリン加牛血を用い、酸素ガス分圧35mmHg、
炭酸ガス分圧45mmHgとなる静脈血を作成し、これ
を人工肺の血液流路を流通させて性能評価を行なった。
なお、用いられる牛血のヘモグロビン含量は11.5g
/dlで、温度は37℃であった。酸素流量と血液流量
との比が1で、血液流量600ml/min のときの酸素
ガス添加能および炭酸ガス除去能との関係は、表2に示
すとおりであった。
【0039】
【表2】
【0040】(2)動物試験 雑犬を用いて実施例1および比較例1の膜型人工肺につ
いて、24時間のV−Aの部分体外循環試験を行なっ
た。循環時間と血漿漏出量との関係は、表3に示すとお
りであった。
【0041】
【表3】
【0042】 (3)ガスフラックス試験 温度37℃の蒸留水を用い、実施例1および比較例1の
人工肺の回路にプライミングを行ない、循環後、空気を
200リットル/minで30秒間吹送し、ついで空気
による乾燥(10リットル/min)を行なったところ、乾
燥時間とガラスフラックスとの関係は、表4に示すとお
りであった。以上により循環時には、被覆された高分子
化合物が細孔を閉塞しているものと推察された。
【0043】
【表4】
【0044】実施例3 内径200μm、肉厚25μm、空孔率38%、平均孔
径700オングストロームのポリプロピレン製中空糸膜
を用いて、膜面積0.8m2 の図1に示すような中空糸
膜型人工肺1を組立てた。血液入口よりポリ(2−ヒド
ロキシエチルメタクリレート)をエタノールで1.25
w/v%溶液に希釈し、この中へポリエチレンイミン(P
olymin SN,BASF社製)を1.0w/v%となるように添
加して被覆液を調製した。調製した被覆液を上記膜型人
工肺に流入させ流出口を絞り中空糸膜の内圧が1Kg/cm
2 程度となるように調節してエタノール1リットルを細
孔を通して排出させた。ついで乾燥を行ない、さらに濃
度1.0%のグルタルアルデヒドの水溶液を充填させ3
7℃で16〜20時間架橋させたのち該溶液を除去し、
乾燥を行った。このようにして作製された人工肺の含水
率と膨潤比を調べたところ実施例1の人工肺とほぼ同様
の結果を示した。また、この人工肺のガス交換能および
血漿の漏出量についても実施例1の人工肺とほぼ同様の
結果を示した。
【0045】
【発明の効果】以上に述べたように、本発明は、多孔質
膜の細孔内面を、含水率30〜80重量%で膨潤比2以
上の水膨潤性高分子化合物により被覆してなる人工肺用
複合膜ならびに該複合膜を用いてなる複合膜型人工肺で
あるから、体外血液循環時に該水膨潤性高分子化合物が
血液と接触して膨潤し、細孔を閉塞させるために、膨潤
膜を介して血液と酸素含有ガスとを接触させずにガス交
換を行なうため、血漿の漏出が全くない。また、プライ
ミングの際に、泡抜けは均質膜に比較して容易であり、
疎水性多孔質膜と同等である。このことは、プライミン
グ時には多孔質膜の循環時には、均質膜の利点が発揮で
きることを意味している。
【図面の簡単な説明】
【図1】は本発明による人工肺の一実施例を示す部分断
面図である。
【符号の説明】
1…膜型人工肺、 2…ガス交換膜、 3
…細孔、4…微粒子、 5…被膜、 6…ハ
ウジング、7…筒状本体、 10,11…隔壁、12
…第1の物質移動室、 13,14…第1の物質移動流
体導入出口、16…中空糸束、 28、29…
第2の物質移動流体導入出口。

Claims (13)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 多孔質膜の細孔内面を、含水率30〜8
    0重量%で膨潤比2以上の水膨潤高分子化合物により
    被覆してなる人工肺用複合膜。
  2. 【請求項2】 多孔質膜が肉厚5〜80μm、空孔率2
    0〜80%、細孔径0.01〜5μmおよび内径100
    〜1,000μmを有する中空糸状多孔質膜である請求
    項1に記載の人工肺用複合膜。
  3. 【請求項3】 水膨潤性高分子化合物が(メタ)アクリ
    ル酸系、ポリビニルアルコール系、(メタ)アクリルア
    ミド系、ポリアルキレンオキサイド系およびポリアルキ
    レンイミン系よりなる群から選ばれた少なくとも1種の
    水膨潤性化合物である請求項2に記載の人工肺用複合
    膜。
  4. 【請求項4】 水膨潤性高分子化合物が架橋された水溶
    性高分子化合物である請求項2に記載の人工肺用複合
    膜。
  5. 【請求項5】 水溶性高分子化合物がポリアルキレンイ
    ミンおよび(メタ)アクリル酸塩よりなる群から選ばれ
    た少なくとも1種のものである請求項4に記載の人工肺
    用複合膜。
  6. 【請求項6】 水膨潤性高分子化合物が0.01〜5μ
    mの膜厚に被覆されてなる請求項1〜5のいずれか一つ
    に記載の人工肺用複合膜。
  7. 【請求項7】 多孔質膜の表面に、水溶性高分子化合物
    の溶液を塗布し、ついで該水溶性高分子化合物被覆の架
    橋処理を行なうことを特徴とする人工肺用複合膜の製造
    方法。
  8. 【請求項8】 多孔質膜の表面に、水溶性高分子化合物
    の溶液を、0.2〜2.0Kg/cm 2 の圧力で接触させか
    つ溶媒を細孔を通じて導出させることにより塗布するも
    のである請求項7に記載の人工肺用複合膜の製造方法。
  9. 【請求項9】 架橋処理は水溶性高分子化合物被膜に架
    橋剤の液を接触させることにより行なわれる請求項7ま
    たは8に記載の人工肺用複合膜の製造方法。
  10. 【請求項10】 架橋処理は水溶性高分子化合物被膜に
    放射線を照射することにより行なわれる請求項7または
    8に記載の人工肺用複合膜の製造方法。
  11. 【請求項11】 多孔質膜の表面に、水溶性高分子化合
    物および架橋剤を含有してなる溶液を塗布することを特
    徴とする人工肺用複合膜の製造方法。
  12. 【請求項12】 多孔質膜の細孔内面を水膨潤性高分子
    化合物により被覆してなる複合膜をガス交換膜として使
    用し、酸素流入口、酸素流出口、血液流入口および血液
    流出口を備えたハウジング内に収納して該複合膜を介し
    て血液流路および酸素流路を形成してなる複合膜型人工
    肺。
  13. 【請求項13】 該多孔質膜の少なくとも血液を接触す
    る面に、水膨潤性高分子化合物の溶液を接触させたの
    ち、該溶媒を除去し、さらに架橋処理を施してなる請求
    項12に記載の複合膜型人工肺。
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