JP3089299B2 - 生体内に毛細血管が豊富な組織を作成するのに用いる新生血管床形成用用具 - Google Patents
生体内に毛細血管が豊富な組織を作成するのに用いる新生血管床形成用用具Info
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Description
に細胞を移植する部位を患者の体内に作製るるため及び
/または生体内分子の濃度変化をモニターするセンサー
を埋め込む部位を患者の体内に作製するために用いる用
具に関し、さらに詳しくは、細胞を移植するための空間
の確保及び/またはセンサーを埋め込むための空間の確
保と、空間周囲の組織に細胞に酸素や栄養を供給するた
めに、及び/またはセンサーにより血液中の分子の濃度
変化を感度よく観測するために、空間周囲の組織に豊富
な毛細血管床を形成させるための新生血管誘導因子を徐
放するのに用いる用具に関する。
で起こる疾患を治療、特に、内分泌疾患の治療は、従来
は相当するホルモンや因子の合成物や精製物を注射する
ことで行われてきた。しかし、それらの生体内寿命が短
いため、高価な薬物を頻回に投与する必要があったり、
さらに、注射による投与では生体内濃度が生理的に制御
でないため、治療効果があまり見られないことや、種々
の合併症を発症するなどの問題があった。また、これら
のホルモンや因子が市販されていないため、投与さえ行
われず対症療法のみが行われてきた疾患も多い。
ルモンや因子を分泌する細胞を移植する実験的研究、さ
らにそれの臨床応用が行われてきた。ホルモンは一度血
液循環に入り、作用部位へは血流により運ばれるため、
ホルモン分泌細胞では移植部位の制限があまりない。し
かし、細胞は十分な酸素と栄養の供給がないと生きてい
けないため、細胞移植部位として毛細血管が多数ある部
位、例えば、腎臓の被膜下、肝臓内や脾臓内が用いられ
てきた。また、腹腔内は毛細血管が多数あるとはいえな
いが、細胞密度を低く移植し移植細胞間で酸素の奪い合
いをなくすことができるため、腹腔内も細胞移植部位と
して用いられてきた。
のような方法では、移植に使える部位が限られているた
め種々の問題、例えば、多量の細胞が移植できず、ま
た、再々にわたる移植が困難であった。また、いずれも
体内の深い部位にあるため細胞移植といえども大きな手
術が必要である等の問題があった。また、サイトカイン
などの因子を分泌する細胞では、その作用部位の近傍に
移植する必要があるが、その部位近傍に毛細血管が密な
部位がないため、細胞移植の治療効果が限られていた研
究例も多い。さらに、移植した細胞が患者に悪影響を及
ぼした場合は移植細胞を摘出する必要があるが、体の深
い部位に移植した場合には摘出に再度の大手術が必要で
あり、腹腔内に細胞をばらまいて移植した場合や肝臓な
どの臓器に移植した場合には移植細胞の除去自体が不可
能である。
種々試みられてきた。例えば、埋め込み型グルコースセ
ンサーでは、センサー上で体内分子グルコースの酸化反
応を行いこのときに消費される酸素の濃度変化を測定し
たり、あるいは、生成される過酸化水素を測定してい
る。皮下にセンサーを埋め込む場合、皮下は酸素濃度が
低く、酸素の供給量が制限されるためセンサー感度が十
分でないことが多かった。また、血液中の所与の分子の
濃度の変化を経時的に測定するためには、直接血管内へ
センサーを埋め込む必要が有るが、現在優れた抗血栓性
材料がないため、長期間連続使用にたえる血液中分子濃
度変化の測定が可能なセンサーはないのが現状である。
ーを埋め込む際の困難を解決するために、従来の研究例
では、移植部位の毛細血管密度を高くするために細胞移
植あるいはセンサーを埋め込み、それと同時に塩基性繊
維芽細胞増殖因子などの新生血管を誘導する因子を投与
したり、あるいは、細胞移植等と同時に塩基性繊維芽細
胞増殖因子の徐放システムを埋め込むことが試みられ
た。しかし、これらの方法では、移植の直後は毛細血管
床が豊富でないため、移植細胞は低酸素にさらされ、多
くの移植細胞は死滅してしまい、当初の目的は達成され
なかった。細胞移植による治療を行うためには、細胞を
簡便に移植でき、かつ移植細胞の除去が必要なときに簡
便に除去できる移植部位を患者の体に新たに作製するこ
とが強く望まれていた。
る試みは現在まで行われていない。センサーを豊富な毛
細血管周囲で囲まれた状態に埋め込むことで、血液中生
理物質をモニタリングできれば、センサーを直接血管内
に埋め込む必要がなくなり、センサーの感度の向上、ま
た、長期使用も可能になる。従って、本発明の課題は、
上記の従来の問題点を解決し、細胞を簡便に移植でき、
移植細胞の除去が必要なときに簡便に除去できる毛細血
管で覆われた空隙部位、また、センサー埋め込み可能な
毛細血管で覆われた空隙部位を新たに体内に作製するこ
とに用いる、用具を提供することにある。
胞を用いた治療法、いわゆるTissueEngineering(組織
工学)の重要な基礎技術的要素となると予想される。即
ち、従来は生理活性物質の単なる投与だけでは効果のな
かった疾患の治療のためや、さらに一度の治療行為で永
続的な治療効果を目ざして、組織工学の研究が行われて
いるが、未だ組織工学は研究されて歴史が浅い分野であ
るため、細胞の移植法に未解決な問題が多い。本発明は
これらの問題を解決する一助となるものである。また、
体内埋め込みセンサーの研究の歴史は古いが、未だ長期
間臨床で使用できる技術は開発されていないが、本発明
によるとセンサー埋め込み部の環境を改良することです
でに開発されてきたセンサーを用いても高感度・長寿命
の体内計測が可能になる。
に、本発明者らは鋭意研究したところ、組織中に埋め込
まれる新生血管床形成用用具であって、埋め込まれた際
に新生血管床形成用用具の周囲に毛細血管の豊富な組織
を作成することが可能な新生血管床形成用用具を発明し
た。本発明に係る新生血管床形成用用具は、前記新生血
管床形成用用具は、用具基体と毛細血管を豊富に作製す
ることが可能な新生血管誘導因子(「新生血管誘導物
質」の概念も含む)とを有し、新生血管誘導因子を必要
な期間放出されるようになっている。新生血管の誘導を
促進する物質を内包する用具基体からなる新生血管床形
成用用具を体の所望部位に移植し、この部位に基体から
血管新生誘導物質を徐放させることで、新たな血管床を
誘導することが出来る。新生血管床形成用用具を組織非
接着性とすることによって、新生血管床形成用用具の周
囲に新たな血管床を誘導・形成後に、周囲の細胞・組織
に損傷を与えること無く新生血管床形成用用具を除去し
て形成される空間に細胞の移植、センサー等の埋め込み
をすることが出来る。また、中空の新生血管床形成用用
具を用いることで、毛細血管の豊富な組織を誘導後に、
中空部に細胞の移植、センサー等の埋め込みをすること
が出来る。なお、徐放とは、必要な期間に渡り必要な
量、速度で新生血管誘導物質を徐々に放出することを云
う。用具基体は、例えば、後に詳述するように種々材料
より作製したハイドロゲルまたはバッグから形成するこ
とが出来る。
富な組織を作成するのにもちいる新生血管床形成用用
具〉本発明の組織中に毛細血管の豊富な組織を作成する
のに用いる新生血管床形成用用具は、好ましくは、組織
非接着性の材料より作製された、例えば、薄い平板状ま
たは円柱状形状のもの、または、生体毒性のない材料か
ら作製された中空の薄い平板状または円柱状形状のもの
で、その壁また内部に新生血管誘導因子が含有されてい
る。
のに用いる本発明の新生血管床形成用用具としては、例
えば、図1に示されるものが例示できる。図1Aに例示
した新生血管床形成用用具は、平板状または円柱状の組
織非接着性のハイドロゲルからなり、ハイドロゲルそれ
自体に新生血管誘導物質が含まれ、適度な速度で新生血
管誘導物質が放出されるように設計されている。
に用いる本発明の他の新生血管床形成用用具としては、
例えば、図1Bに示されるものが例示できる。図1Bに
例示した用具は生体毒性のない高分子また無機材料から
なる平板袋状または円筒状の中空形状を有し、その壁ま
た内部に新生血管誘導物質を含み、適度な速度で新生血
管誘導物質を放出するように設計されている。
イドロゲルからの、新生血管誘導物質の放出速度のコン
トロールは、ハイドロゲルの密度を高くして拡散速度を
コントロールすることによって行うか、または、ハイド
ロゲル自体と新生血管誘導物質との間の相互作用によ
り、または、ハイドロゲルに新生血管誘導物質と相互作
用する物質を含ませそれとの相互作用を通して行う。
中空物は、ハイドロゲルか、または、細胞が浸入出来な
い大きさの孔を有する多孔質膜から作製される。新生血
管誘導物質の放出速度のコントロールは、中空物を構成
する高分子膜また無機材料膜の透過性を変化させること
によって行うこともでき、また、中空部内に含ませた新
生血管誘導物質と相互作用する物質との相互作用によっ
ても行うことができる。
しては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリド
ン、ポリエチレングリコール、ポリ-2- ヒドロキシエチ
ルメタクリレート、ポリ-2- ヒドロキシエチルアクリレ
ート、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリメタ
クリル酸などの合成高分子の化学架橋体や放射照射によ
る架橋体、さらに、上記高分子を構成するモノマーの共
重合体の架橋体など、ハイドロゲルを形成することので
きる各種合成高分子材料を挙げることができる。また、
天然高分子であるアガロース、アルギン酸、デキストラ
ン、セルロースなどの多糖やその誘導体、また、ゼラチ
ンやアルブミンなどのタンパクやその誘導体の架橋体な
ども用いることができる。
中空物を作製するのに用いる材料としては、ハイドロゲ
ルを膜として使用する場合には、上記した平板状または
円柱状のハイドロゲルを作製するのに用いるのと同様の
材料を、ハイドロゲルでない膜の場合には従来から各種
工業用また実験室用の膜を作製するのに用いられてきた
材料、例えば、セルロースや酢酸セルロースなどのその
誘導体、ポリビニルアルコールとその誘導体、ポリスル
ホン、ポリカーボネート、テフロン、(登録商標)フッ
化ビニリデン、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体
などの高分子材料を用いることができる。無機材料とし
ては、アルミナ、ジルコニア、水酸化アパタイトなどの
セラミックやステンレス鋼やチタン合金など従来生体材
料として使用されてきたものを挙げることができる。ま
た、現在市販されている精密濾過膜また限外濾過膜の中
にも本目的に使用できるものがある。
増殖因子(VEGF)、塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)、酸
性繊維芽細胞増殖因子(aFGF)、血小板由来増殖因子(PDG
F)、トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β) 、オ
ステオネクチン(Osteonectin) 、アンギオポイエチン1
(Ang1)やアンギオポイエチン2(Ang2)などの細胞増殖因
子があり、また、その効果は大きくはないがヘパリンや
ヒアルロン酸なども同様の作用がある物質として使用で
きる。
イドロゲル内に新生血管誘導因子を担持させる方法とし
ては、ハイドロゲルに単純に含浸させるだけの方法、静
電的相互作用や疎水相互作用などの物理化学的相互作用
で担持させる方法、新生血管誘導物質との生物学的な特
異的相互作用を有する物質をハイドロゲルに含ませそれ
との相互作用を利用して担持させる方法などが考えられ
る。ハイドロゲルに単純に含浸させる場合には、新生血
管誘導因子の放出速度をコントロールするために、ハイ
ドロゲルの分子網目密度を調節する必要がある。静電的
相互作用や疎水相互作用などの物理化学的相互作用で担
持させる場合には、生体内での新生血管誘導因子の物理
化学的状態を十分考慮して担持せる必要がある。例えば
血管内皮細胞増殖因子や塩基性繊維芽細胞増殖因子は、
生体内で分子全体として正に荷電しているため、アクリ
ル酸やメタクリル酸から作製されたハイドロゲルのよう
にハイドロゲル自体が負に荷電していれば静電的相互作
用で担持でき放出速度もコントロール出来る。生物学的
な特異的相互作用を利用する場合には、新生血管誘導因
子と生物学的な特異的相互作用することの出来る物質を
前もってハイドロゲルに担持させておくく必要がある。
例えば、血管内皮細胞増殖因子や塩基性繊維芽細胞増殖
因子はヘパリンやヘパラン硫酸等のムコ多糖と生物学的
な特異的相互作用をするため、ヘパリンなどのムコ多糖
を担持させたゲルを作製しこれに増殖因子を含浸させる
ことで目的を達することが出来る。ハイドロゲル作製に
用いる材料によっては、3者を同時に混合して目的のハ
イドロゲルを作製する事もできる。
中空物に新生血管誘導物質を担持させる方法としては、
中空物内に単純に封入する方法とか、また封入時に新生
血管誘導因子と静電的相互作用や疎水相互作用などの物
理化学的相互作用する物質、または新生血管誘導因子と
の生物学的な特異的相互する物質と混合した後、封入す
る方法がある。また、上記した新生血管誘導因子とハイ
ドロゲルの複合体を中空物内に封入する方法もある。ま
た、図1Bに例示した平板袋状または円筒状の中空物を
ハイドロゲルから作製する場合は、図1Aに例示した平
板状または円柱状のハイドロゲル内に新生血管誘導因子
を担持させる方法を用いることが出来る。
る新生血管誘導因子の放出、血管の新生を促進、形成さ
れた毛細血管の豊富な組織に、細胞を移植する工程をし
めすフロー図である。新生血管床形成用用具を埋め込む
ことで、周囲に毛細血管の豊富な組織形成させる。その
後、新生血管床形成用用具を除去した空隙、または、中
空新生血管床形成用用具の内部空間に細胞を移植する
か、センサーを埋め込む。移植された細胞は豊富の毛細
血管から酸素と栄養の供給を受けで生存し、また、細胞
から分泌されたホルモンなどの生理活性物質は毛細血管
内に入っていく。埋め込まれたセンサーは毛細血管から
出てくる生体内分子を感度よく測定できる。
た細胞移植用血管新生用具を作製した。20デニールのポ
リエステル糸からなる 150メッシュの網を14×14 mm に
切り出し、2枚の網を合わせて、この三辺をポリウレタ
ンシートをバインダーとして高周波融着機を用いて融着
させてバッグの骨組みを作製した。このバッグの骨組み
の内側に厚さ 100μm 、9×2.5 mmのポリエチレンフィ
ルムを挿入した後、濃度3%ポリビニルアルコール(重
合度8800)、0.14%グルタルアルデヒドと0.04N 塩酸の
混合溶液中に浸し、十分網中にポリビニルアルコール溶
液を浸透させた。これををポリビニルアルコール溶液か
ら引き上げ、室温下、空気中にてポリビニルアルコール
とグルタルアルデヒドとの反応を進行させゲル化させる
ことでポリエステル網目にポリビニルアルコールゲルを
付着させた。ポリビニルアルコールゲルを付着させたポ
リエステル網目バッグを高圧蒸気滅菌した。一方、2.5
%アガロースと 1.0%ヒアルロン酸のリン酸緩衝生理食
塩水溶液を高圧蒸気滅菌した後、37℃の恒温水槽に試験
管ごと10分間浸して、溶液温度を37℃にした。この溶液
100μl に10μg の塩基性繊維芽細胞増殖因子を添加
し、これを上記で作製したバッグ内に 100μl 注入した
後、氷上に放置することで、アガロースをゲル化させ
た。以上の工程により細胞移植用血管新生用具の作成を
行った。
与により糖尿病にした Lewis系ラット背部皮下に清潔下
に埋め込んだ。一週間経過後にバッグを除去することで
背部皮下に形成された空隙を膵ランゲルハンス島の移植
部位として用いた。一方、Lewis 系ラットの膵臓組織か
らの膵ランゲルハンス島の分離を常法通りにコラゲナー
ゼ法により行い、移植に必要な膵ランゲルハンス島の確
保を行った。分離した膵ランゲルハンス島 5,000個をラ
ット背部に形成された細胞移植部位に移植した。移植さ
れたラットは、自由に飲食できる状態で飼育した。膵ラ
ンゲルハンス島の移植による糖尿病治療効果の判定は、
移植前と、移植後は一週に2回、ラットの血糖値を測定
することにより判定した。いずれのラットも移植前は、
ストレプトゾトシンの投与により自己膵臓内の膵ランゲ
ルハンス島が破壊されインスリンが分泌されないため、
血糖値は400mg/dl以上の高値を示し、明らかに糖尿病状
態であった。膵ランゲルハンス島を背部皮下に形成され
た細胞移植部位に移植したところ、非空腹時血糖値は経
日的に低下した。移植した5例で、血糖値の正常化に要
した移植後の日数はそれぞれ、13日、1日、21日、7
日、6日であった。いずれのラットにおいても、血糖値
正常化後の 100日以上の経過観察期間の間には再び高血
糖値に戻ることはなかった。
した5匹の Lewisラットの背部皮下に、他の Lewisラッ
トから分離した膵ランゲルハンス島 5,000個を移植し
た。移植されたラットを自由に飲食できる状態で維持し
た。膵ランゲルハンス島の移植による糖尿病治療効果の
判定は、移植前と、移植後は一週に2回、ラットの血糖
値を測定することにより判定した。5匹のラットいずれ
においても、膵ランゲルハンス島移植後も非空腹時血糖
値は400 mg/dl 以上であり、血糖値の正常は見られず、
糖尿病状態は改善されなかった。
をコーティングしたバッグに、塩基性繊維芽細胞成長因
子を含まないアガロース溶液を注入し、氷上で放置する
ことで、アガロース溶液をバッグ内でゲル化させた。実
施例1と同様に、ストレプトゾトシンで糖尿病にした L
ewisラット皮下に埋め込み、一週間経過した後にバッグ
を除去した。背部皮下に形成された空隙に、他の Lewis
ラットより分離した膵ランゲルハンス島 5,000個を移植
した。移植されたラットを自由に飲食できる状態で飼育
した状態で、血糖値の変動を観察したところ、5匹いず
れのラットにおいても、血糖値は移植前の値よりはわず
かに低下するものの、いずれも高値を示し、糖尿病状態
はさほど改善されなかった。この5匹のラットを12時間
絶食下においた後、血糖値を測定したところ、5匹中2
匹の血糖値は 200 mg/dl前後まで低下したが、他は高血
糖値のままであった。このように塩基性繊維芽細胞を含
まないバッグを背部皮下に埋め込むことで形成される空
隙に膵ランゲルハンス島を移植することでも、多少ラ島
の生着が望めるものの、膵ランゲルハンス島の生着効率
は低く、糖尿病の治療にはいたらなかった。
血管に赤血球が存在し、その組織はヘモグロビンを多く
含む。このため、組織中のヘモグロビン量を測定するこ
とで、組織中の毛細血管の量を推定できると考えられる
ので以下の実験を行った。実施例1と同様にして作製し
た塩基性繊維芽細胞を含むバッグを5匹のLewis ラット
背部皮下に埋め込んだ。埋め込み後一週間目に、埋め込
んだバッグを取り除いた後、形成された空隙の周囲の組
織を取り出した。また、バッグ埋め込み部位から3cm
離れた部位の組織を取り出した。これら組織を別々に3
mlの蒸留水につけた後組織粉砕機を用いて組織を微少な
組織片になるまで分散させた。この組織分散液を 3,000
回転/分で5分間遠心を行うことで上清と組織片に分離
し、上清を回収した。再度3mlの蒸留水を加えて分散さ
せ、これを 3,000回転/分で遠心することで上清と組織
片にわけて、再度上清を回収した。1回目の上清と2回
目の上清を加え混合した。この上清混合物中に含まれる
ヘモグロビン量を測定し、単位組織重量中のヘモグロビ
ン量を決定した。バッグに接していた部位の組織と3c
m離れた部位の組織中のヘモグロビン量を比較したとこ
ろ、前者が、後者の34倍ものヘモグロビンを含んでい
た。以上のことから、塩基性繊維芽細胞を含むバッグを
一週間埋め込むことで、皮下に高密度に毛細血管を誘導
できることがわかる。
ン酸緩衝生理食塩水溶液を高圧蒸気滅菌した後、37℃の
恒温水槽に試験管ごと10分間浸して、溶液温度を37℃に
した。この溶液 160μl に20μg の血管内皮細胞増殖因
子を添加した後、氷上のガラス板上にキャストし、直径
1cm、厚さ0.2cmのハイドロゲル板を作製した。このハイ
ドロゲル板を5匹のLewis ラット背部皮下に埋め込ん
だ。一週間目に、埋め込んだハイドロゲル板を取り除い
た後、形成された空隙の周囲と埋め込み部位から3cm
離れた部位の皮下組織を取り出し、実施例2と同様にし
て組織中のヘモグロビン量を測定した。ハイドロゲル接
していた部位の組織と3cm離れた部位の組織中のヘモ
グロビン量を比較したところ、前者が、後者の46倍もの
ヘモグロビンを含んでいた。以上のことから、塩基性繊
維芽細胞を含むハイドロゲルを一週間埋め込むことで、
皮下に高密度に毛細血管を誘導できることがわかる。
ことで、例えば皮下に毛細血管床と空隙を形成でき、従
来細胞移植が困難であるか不可能であるとされていた皮
下への細胞移植を可能にすることが出来る。皮下への細
胞移植は患者の侵襲が小さく、また、移植細胞を除去し
なければならない時も容易に除去でき、さらに、再移植
も容易である。また、従来細胞移植が行われていた部位
でも、細胞移植直後に酸素不足から移植細胞のかなりの
ものが死滅するとされていた。本発明の新生血管床形成
用用具を用いてこれらの部位に毛細血管床を形成させた
後移植すれば、移植直後の移植細胞の脱落を小さく抑え
られる。このことは、移植細胞を確保するためのドナー
を少なくすることができ、現在の移植医療で問題となっ
ているドナー不足を解消する一助になる。
空隙内にセンサーを埋め込むことで、酸化還元型のセン
サーの感度の向上、また、毛細血管からの浸出液モニタ
ーすることで血流中へセンサーを留置することなく血液
中の生理物質濃度を測定出来ることから、センサーの長
寿命化と安全性を格段に向上させることが出来る。
なる細胞移植用血管新生用具であり、Bは、平板袋状ま
たは円筒状の中空物からなる細胞移植用血管新生用具で
ある。
出、血管の新生を促進、ハイドロゲルを除去し、細胞を
移植する工程をしめすフロー図である。図2Aは細胞移
植用血管新生用具を除去した空隙に細胞を移植、図2B
は平板袋状または円筒状の中空物の細胞移植用血管新生
用具の内部に細胞を移植する。
Claims (8)
- 【請求項1】 組織中埋め込まれ、埋め込まれた際に細
胞移植またセンサーの埋め込みが可能な毛細血管が豊富
な組織が周囲にある空隙を作成するための新生血管床形
成用用具であって、 該新生血管床形成用用具は、用具基体と毛細血管を豊富
に作製することが可能な新生血管誘導因子とを有し、新
生血管誘導因子が徐放されるようになっていることを特
徴とする新生血管床形成用用具。 - 【請求項2】 用具基体がハイドロゲルからなっている
請求項1に記載した新生血管床形成用用具。 - 【請求項3】 用具基体が高分子膜また無機材料から作
製されたバッグからなっている請求項1に記載した新生
血管床形成用用具。 - 【請求項4】 新生血管誘導因子と相互作用して、新生
血管誘導因子の放出速度をコントロールすることの出来
る請求項1乃至3のいずれかに記載した新生血管床形成
用用具。 - 【請求項5】 新生血管誘導因子が、溶液、新生血管誘
導因子と高分子との複合体、新生血管誘導因子と水溶性
高分子ゲルとの複合体、新生血管誘導因子と無機材料と
の複合体の形態の少なくとも1つの形態をとり、それに
よって新生血管誘導因子の放出速度をコントロールする
ようになっている請求項1乃至4のいずれかに記載した
新生血管床形成用用具。 - 【請求項6】 新生血管誘導因子が、血管内皮細胞増殖
因子(VEGF)、塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)、酸性繊
維芽細胞増殖因子(aFGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、
トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β) 、オステ
オネクチン(Osteonectin) 、アンギオポイエチン1(Ang
1)及びアンギオポイエチン2(Ang2)からなる群から選ば
れた少なくとも1種類の新生血管誘導因子である請求項
1乃至5のいずれかに記載した新生血管床形成用用具。 - 【請求項7】 新生血管誘導因子が、請求項6に記した
新生血管誘導因子の複数の組み合わせである請求項1乃
至5のいずれかに記載した新生血管床形成用用具。 - 【請求項8】 組織非接着となっている請求項1乃至7
のいずれかに記載した新生血管床形成用用具。
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