JP2004275718A - バイオ人工膵臓用モジュール及びバイオ人工膵臓 - Google Patents

バイオ人工膵臓用モジュール及びバイオ人工膵臓 Download PDF

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Abstract

【課題】血糖値変化に応答してインスリン分泌細胞から分泌されたインスリンの血液中への安定供給を可能にする、バイオ人工膵臓用モジュール、並びにそれを用いたバイオ人工膵臓を提供すること。
【解決手段】高分子半透膜を介して分画された血液流路と細胞収容部とを少なくとも備えたバイオ人工膵臓用モジュールであって、該高分子半透膜がインスリン親和率30%以下の材料、接触角40度以下の材料、含水率13%以上の材料、又はエチレン−ビニルアルコール系共重合体からなる、バイオ人工膵臓用モジュール、並びに前記バイオ人工膵臓用モジュールの細胞収容部にインスリン分泌細胞を収容してなるバイオ人工膵臓。
【選択図】なし

Description

本発明は、バイオ人工膵臓用モジュール及びバイオ人工膵臓に関する。
糖尿病は、血液中の血糖値が異常な高値に持続される疾患であり、それによって血管合併症を誘発することが大きな問題となっている。そして、糖尿病は主に血糖値を制御するインスリンの量的な不足あるいは作用の不足により引き起こされることが知られており、その発症機序の違いによりI型糖尿病とII型糖尿病に大別される。
通常、健常人においては、食事などに伴って変動する血糖値に対し、膵β細胞が素早く反応してインスリンが適量分泌される。しかし、糖尿病患者、特にI型糖尿病および症状の進行したII型糖尿病の患者は、その機能が十分に働かないため、その治療にあたってはインスリン製剤の投与が不可欠となる。この糖尿病患者へのインスリン製剤の投与に関しては、患者自身が携帯型血糖値測定器で測定した血糖値に応じてインスリンを皮下注射する、いわゆる強化インスリン療法が一般に行われている。
従来、この強化インスリン療法を行っている患者の血糖値は、ある一定レベルを下回って意識喪失など社会生活において極めて困難な状況を引き起こさないようにするため、通常、健常人よりもやや高いレベルに維持されていた。しかし、近年、高血糖と糖尿病性血管合併症との関係が明らかになるにつれ、糖尿病性血管合併症の進行を抑制するには、血糖値を健常人と同レベルに制御することが必要になってきた。
糖尿病患者の血糖値を健常人と同レベルに制御する方法として、膵臓または膵島そのものを利用する膵臓移植や膵島移植が試みられ、膵島移植については優れた治療成績も報告されている(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、これらの方法は心臓移植、肝臓移植など他の臓器移植と同様に、ドナーからの臓器提供が不可欠であり、脳死者からの臓器移植はその先進国である欧米においてもドナー不足が深刻な問題となっている。脳死者からの臓器移植が極めて少ない我が国においてはなおさら多くの患者に恩恵を与える治療法となる見込みが小さい。
そのような中、近年、生きているインスリン分泌細胞を用いた、いわゆるバイオ人工膵臓が注目されてきている。
バイオ人工膵臓は、インスリン分泌細胞と人工材料とを組み合わせたものであるため、ハイブリッド型人工膵臓と呼ばれることもある。バイオ人工膵臓においては、インスリン分泌細胞に血糖値の検出機能とインスリン分泌機能とを担わせ、人工材料にそれ以外の機能を担わせるように設計される。
該人工材料が担うべき機能としては、インスリン分泌細胞が安定して生存できる物理的空間を確保する収容機能、インスリン分泌細胞を患者の免疫系による攻撃から防ぐ免疫隔離機能、インスリン分泌細胞が長期間生存するために必要な栄養分や酸素などを供給するための透過機能、血糖値に対応して素早くインスリンを分泌するためにグルコースとインスリンとを透過させる透過機能などが挙げられる。
バイオ人工膵臓においてインスリン分泌細胞を隔離する方法として、(1)インスリン分泌細胞を高分子ゲル内に封じ込める方法(包括固定化法あるいはカプセル化と呼ぶ研究者もいる)や、(2)インスリン分泌細胞を高分子半透膜で隔離する方法、さらに(3)インスリン分泌細胞を高分子ゲル内に封じ込め、さらにその高分子ゲルを高分子半透膜で隔離する方法、すなわち(1)と(2)を組み合わせた方法が試みられている。このように、バイオ人工膵臓においては、一般にインスリン分泌細胞は隔離された状態にあり、血液と該細胞とは高分子半透膜等を介して分離されている。
インスリン分泌細胞を高分子ゲル内に封じ込める方法として、例えば、アルギン酸のアルカリ金属塩やゼラチンなどのゲルに封じ込める方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、アガロース分解物から得られるカプセルに封入する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。また、光架橋性ポリビニルアルコールの光架橋体ゲルに封入する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。また、アガロース濃度が7〜30重量%のアガロースゲルに封入する方法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。また、アセタール化されたアガロースゲルに封入する方法が提案されている(例えば、特許文献5参照)。また、熱架橋されたアガロースゲルに封入する方法が提案されている(例えば、特許文献6参照)。
また、インスリン分泌細胞を高分子ゲル内に封じ込める方法として、Sunらはアルギン酸とポリリジンからなる材料で封入する方法を報告している(例えば、非特許文献2参照)。また、岩田らはアガロース分解物に封入する方法を報告している(例えば、非特許文献3参照)。
一方、インスリン分泌細胞を高分子半透膜で隔離する方法として、例えば、限外濾過膜を用いるハイブリッド人工臓器または腺が提案されている(例えば、特許文献7参照)。また、多孔質膜を用いるハイブリッド型人工膵臓装置が提案されている(例えば、特許文献8参照)。また、塩化ポリビニル・アクリル共重合体等の半透性中空繊維膜からなるカプセルで隔離する方法が提案されている(例えば、特許文献9参照)。また、半透膜に封入した生存性組織が提案されている(例えば、特許文献10参照)。また、生存可能な組織または細胞をゲルを形成できる物質に含有させ、さらにそれを半透性容器内に収容する方法が提案されている(例えば、特許文献11参照)。
また、インスリン分泌細胞を高分子半透膜で隔離する方法として、Chickらは、ハイブリッド人工膵臓用の半透膜としてAmicon社のXM−50 acrylic copolymer filterを評価している(例えば、非特許文献4参照)。また、Iwataらは、Costar社のNucleopore polycarbonate filterとAmicon社のDiaflo Ultrafilter XM−50をバイオ人工膵臓用の半透膜として評価している(例えば、非特許文献5参照)。また、岩田は、1990年中頃までにバイオ人工膵臓に用いる膜として研究者に検討されてきた膜としてはAmicon社のXM−50限外濾過膜にほぼ限られていたと述べている(例えば、非特許文献6参照)。
インスリン分泌細胞を高分子ゲル内に封じ込め、さらにその高分子ゲルを高分子半透膜で隔離する方法としては、例えば、生存可能な組織または細胞を、ゲルを形成できる物質に含有させ、さらにそれを半透性容器内に収容する方法が提案されている(例えば、特許文献12参照)。また、寒天ゲルでカプセル化され、生きたランゲルハンス島細胞を半透性膜の中に含む人工膵臓が提案されている(例えば、特許文献13参照)。
しかしながら、以上のようないずれのバイオ人工膵臓によっても、血糖値変化に応じたインスリンの安定供給は未だ実現されるに至っていない。
A.M.Shapiro、et.al.,New England Journal of Medicine、343巻、230〜238ページ、2000年 G.M.O‘Shea and A.M.Sun、Diabetes、35巻、943〜946ページ、1986年 岩田博夫、他、人工臓器、16巻、1263〜1266ページ、1987年 W.L.Chick、et.al.,Trans.Amer.Soc.Artif.Organs、XXI巻、8〜15ページ、1975年 H.Iwata、et.al.,Tissue Engineering、2巻、289〜298ページ、1996年 岩田博夫、人工臓器、27巻、739〜744ページ、1998年 筏義人、バイオマテリアル、215ページ、日刊工業新聞社、昭和63年 特開昭55−157502号公報 特開昭62−215530号公報 特開平3−184555号公報 特開平5−337176号公報 特開平6−157326号公報 特開平6−312018号公報 特開昭58−83965号公報 特開昭59−139273号公報 特開昭60−123422号公報 特開昭62−281801号公報 特表平11−503170号公報 特表平11−503170号公報 特表平11−508477号公報
本発明の課題は、血糖値変化に応答してインスリン分泌細胞から分泌されたインスリンの血液中への安定供給を可能にする、バイオ人工膵臓用モジュール、並びにそれを用いたバイオ人工膵臓を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、インスリン分泌細胞が分泌するインスリンを高分子半透膜を介して血液中へ安定供給するには、高分子半透膜のポアサイズの制御のみならず、該膜を特定の性質を有する材料により構成する必要があることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、
(1) 高分子半透膜を介して分画された血液流路と細胞収容部とを少なくとも備えたバイオ人工膵臓用モジュールであって、該高分子半透膜がインスリン親和率30%以下の材料からなるバイオ人工膵臓用モジュール、
(2) 高分子半透膜を介して分画された血液流路と細胞収容部とを少なくとも備えたバイオ人工膵臓用モジュールであって、該高分子半透膜が接触角40度以下の材料からなるバイオ人工膵臓用モジュール、
(3) 高分子半透膜を介して分画された血液流路と細胞収容部とを少なくとも備えたバイオ人工膵臓用モジュールであって、該高分子半透膜が含水率13%以上の材料からなるバイオ人工膵臓用モジュール、
(4) 高分子半透膜を介して分画された血液流路と細胞収容部とを少なくとも備えたバイオ人工膵臓用モジュールであって、該高分子半透膜がエチレン−ビニルアルコール系共重合体からなるバイオ人工膵臓用モジュール、並びに
(5) 前記(1)〜(4)いずれかに記載のバイオ人工膵臓用モジュールの細胞収容部にインスリン分泌細胞を収容してなるバイオ人工膵臓、
に関する。
本発明により、血糖値変化に応答してインスリン分泌細胞から分泌されたインスリンの血液中への安定供給を可能にする、バイオ人工膵臓用モジュール、並びにそれを用いたバイオ人工膵臓が提供される。該人工膵臓は、例えば、糖尿病患者の治療具として好適に使用することができる。
以下に、本発明の好ましい実施の形態を説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではない。
なお、本明細書において、インスリンとは、生体内において少なくとも血糖値を低下させる働きを示しうるホルモン若しくはホルモン様の物質をいう。一般にインスリンとは、51残基のアミノ酸からなる分子量約6000のポリペプチドであって、膵臓のランゲルハンス島にあるβ細胞から分泌され、血漿中に極めて微少な濃度で存在するホルモンの一種と定義されるが、本発明に使用されるインスリンは、かかる定義のもののみに限定されるものではない。本発明に使用されるインスリンとしては、例えば、ヒト型のインスリンでも良いし、ブタ型のインスリンでも良い。また、遺伝子組み換えの方法により作製されたインスリンでも良く(例えば、門脇孝編:糖尿病ナビゲーター、270〜271頁、田尾健、岡芳和「現在と将来のインスリン製剤」、メディカルレビュー社、2002年参照)、Cペプチドの代わりに短鎖ペプチドでA鎖とB鎖とを結合したインスリン類似体であっても良い(例えば、H.C.Lee,J.W.Yoon,et al.,Nature、第408巻、483〜488頁、2000年参照)。
血液の語は、血液、血漿、血清、毛細血管からの滲出液等の意を含めて用いられる。
生体とは、血糖値の恒常性維持機能を有する動物、特にウシ、ブタ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ヒト等の哺乳動物、中でもヒトをいう。
インスリン分泌細胞とは、血糖値変化に応答してインスリンを分泌しうる細胞若しくは細胞群をいう。本発明に使用するインスリン分泌細胞としては、特に限定されるものではなく、例えば、膵臓のランゲルハンス島に存在する膵β細胞を挙げることができる。かかる膵β細胞としては、ヒトの膵β細胞でも良いし、ブタ、マウスなどの膵β細胞であっても良い。また、インスリン分泌細胞としては、ヒト幹細胞から誘導された細胞(例えば、宮崎純一、再生医療、第1巻、第2号、57〜61頁、2002年参照)、或いは小腸上皮幹細胞から誘導された細胞(例えば、藤宮峯子ら、再生医療、第1巻、第2号、63〜68頁、2002年参照)であっても良く、インスリンをコードする遺伝子を組み込んだ、インスリン分泌性の細胞であっても良い(例えば、H.C.Lee,J.W.Yoon,et al.,Nature、第4巻、483〜488頁、2000年参照)。さらに、膵臓のランゲルハンス島(以下、膵島という)であっても良い(例えば、堀洋、井上一知、再生医療、第1巻、第2号、69〜77頁、2002年参照)。本発明に使用するインスリン分泌細胞としては、血糖値に応じてインスリン分泌量を厳密に制御できるという点、並びに現実の臨床応用を考慮すると、膵β細胞又は膵島が好ましい。また、その由来はヒトであるのが好ましい。
本発明のバイオ人工膵臓用モジュール(以下、モジュールという)は、高分子半透膜を介して分画された血液流路と細胞収容部とを少なくとも備えてなり、該半透膜が、少なくとも、i)インスリン親和率30%以下の材料からなるか、ii)接触角40度以下の材料からなるか、iii)含水率13%以上の材料からなるか、又はiv)エチレン−ビニルアルコール系共重合体からなるものであることを大きな特徴の1つとする。このような材料から構成される該半透膜は、意外にも極めて高いインスリン透過性を有しており、該半透膜がそのような優れた性質を有することは本発明において初めて見出されたことである。
本発明のモジュールはバイオ人工膵臓(以下、人工膵臓という)の製造に使用されるものであり、人工膵臓は、該モジュールの細胞収容部にインスリン分泌細胞を収容することにより容易に作製することができる。かかる人工膵臓においては、血液流路とインスリン分泌細胞とが、前記材料から構成される高分子半透膜を介して分離されており、細胞は免疫的に隔離された状態で血液と極めて近い位置に存在することになる。それにより、該細胞は生体の免疫系による攻撃を避けることができ、また、該細胞の生存に必要な酸素や栄養素、血液中のグルコースやインスリン分泌細胞から分泌されるインスリンの大きな拡散速度が得られ、該細胞は比較的長期に渡って生存することができ、また、血糖値変化に対して鋭敏に応答することができ、該細胞が分泌するインスリンの血液中への安定供給が維持されうる。
本発明のモジュールは、体内用(体内に埋め込む)若しくは体外用(体外に装着する)人工膵臓の製造に使用することができる。
本発明のモジュールの形態の一例(態様1)としては、シリコーンリングの上下に選択的透過(免疫隔離)膜(高分子半透膜)をコロナ処理にて接着させた太鼓型の容器(拡散チャンバー)或いはバッグ中に、膵β細胞或いは膵島を細胞の機能維持が保てるような細胞培養床(基質)と共に封入又は包埋し、これを血液非接触的に皮下等の体内に移植するものを挙げることができる(例えば、大河原久子、蛋白質核酸酵素、第45巻、2307〜2312頁、2000年参照)。なお、通常、該容器或いはバッグに用いられる選択的透過膜は力学的に弱いため、例えば、透過膜の外側を網状構造にした生体適合性プラスチック等で覆うことによって補強してもよい。
また、該モジュールの形態の別の一例(態様2)としては、血液流路が高分子半透膜によりなる中空糸により形成され、その外周に不織布等の細胞固定基材が配置されており、当該血液流路及び細胞固定基材が容器により覆われてなるものを挙げることができる。該中空糸の一端は血液導入口に、他端は血液導出口に接続されている。また、該容器には、細胞収容部を占める細胞固定基材にインスリン分泌細胞を播種するための細胞導入口が少なくとも1つ、好ましくは2つ設けられている。
例えば、態様2の具体例としては、図1に示すようなモジュールを挙げることができる。
以下、説明の容易性の観点から、図1のモジュールに基づいて本発明のモジュールを説明する。
図1のモジュールは、チャンバー1、血液流路2、細胞固定基材(細胞収容部)3、血液導入口4、血液導出口5、細胞導入口6及び細胞導入口6’を備えたものである。
なお、本発明のモジュールは、主として人体に使用される人工膵臓の製造に用いられるものであることから、該モジュールの材料としては、安全性(非毒性、非溶出性、耐滅菌性等)並びに血液適合性(特に血液と直接接触する部分)に優れたものであるのが好ましい。材料の血液適合性を得る観点から、材料として、抗血栓性材料を用いるか、又は抗血栓性材料によりコーティングされた材料を用いるのが好ましい。抗血栓性材料としては、例えば、ポリ−2−ヒドロキシエチルメタアクリレート、ポリメトキシエチルアクリレート等を挙げることができる。また、該モジュールの材料としては、数週間にわたる使用に耐えられる程度の力学的強度を有するものが好ましい。
チャンバー1は既存の適当な高分子材料から作られるが、内部が観察可能な程度の透明性を有するのが好ましい。当該高分子材料としては、例えば、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
図1では、血液流路2は複数の高分子半透膜からなる中空糸により形成される。一方、血液とインスリン分泌細胞とを分離し得、かつ血液流路を形成しうるものであれば、血液流路は、その他平膜(重層して容器に収容される)や管状膜(長い一本の管状の膜からなり、途中、適宜、曲げられて容器中に収容される)等により形成されてもよい。中空糸の管内径としては、特に限定されるものではないが、例えば、20〜500μmが適当である。
血液流路2を構成する高分子半透膜は、インスリン分泌細胞と血液とを分離し、インスリン分泌細胞を生体の免疫系から防御すると共に、細胞から分泌されたインスリンを透過し血液中に供給する機能を有する。該高分子半透膜は前記性質を有する材料からなる。
高分子半透膜の材料のインスリン親和率とは、材料とインスリンとの親和性(例えば、吸着性)をいい、その測定方法としては、以下の方法を用いる。
なお、各測定方法は、任意の形状の材料を用いて実施することができるが、以下の説明では、特に中空糸の形状を有する材料の場合について説明する。
(インスリン親和率)
内表面と外表面の面積の合計が75.6cmとなる分量の中空糸を用意し、その両端が丸く開口するように鋭利な刃物で約25mmの長さのものに適宜切断する。得られた中空糸の断片を、内径15.4mm、長さ100mmのガラス製試験管に入れ、これに蒸留水10mLを加え、3000rpmで10分間遠心して断片内側の脱気を行う。その状態で室温(23±5℃)下に一晩水中に浸漬し、膨潤させる。一方、試験液としてウシ胎児血清(FBS、シグマ社製)10%を含む生理食塩水に濃度が450μU/mLになるようにインスリン(ノボラピッド注:ノボノルディスクファーマ(株)製)を添加したものを調製する。試験管内で一晩水に浸漬させた断片について、試験管内の水を捨て、試験液5mLを加え、37℃で1時間振とうする。振とう後、試験液中のインスリンの濃度(μU/mL)を測定する(試験群)。断片が無い状態で同様の試験を行い、試験液中のインスリンの濃度を測定する(対照群)。インスリンの親和率を次式:
インスリン親和率(%)=
〔1−(試験群でのインスリン濃度/対照群でのインスリン濃度)〕×100
により算出する。なお、インスリン濃度の測定は、例えば、酵素免疫測定法(グラザイムInsulin−EIA TEST(発売元:和光純薬工業(株)))により行なうことができる。
高分子半透膜を構成する材料のインスリン親和率は30%以下であり、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下である。該材料のインスリン親和率が30%を超えると、インスリン分泌細胞から分泌されたインスリンの血液への供給が十分になされず好ましくない。
高分子半透膜の材料の接触角とは、湿潤状態にある材料の接触角をいい、その測定方法としては、以下の方法を用いる。
(接触角)
中空糸をいったん溶剤に溶解して平板状にキャスト乾燥したものを室温の生理食塩水に一晩浸すことによって湿潤状態の材料表面を作製する。例えば、後述するエチレン−ビニルアルコール系共重合体からなる場合、中空糸をDMSO(ジメチルスルホキシド)中に溶解して5%(w/v)溶液とし、これをガラス板上にキャストし、室温で一晩真空乾燥してガラス板上に透明なフィルムを得、それを室温の生理食塩水に一晩浸すことによって湿潤状態の材料表面を作製する。次いで、この表面の接触角を、(株)エルマ社製のゴニオメーター式接触角測定器G−1を用いて室温下に測定する。なお、材料が平板状である場合は、直接室温の生理食塩水に一晩浸漬すればよい。
高分子半透膜を構成する材料の接触角は40度以下であり、好ましくは38度以下、より好ましくは36度以下である。該材料の接触角が40度より大きいと、インスリン分泌細胞から分泌されたインスリンの血液への供給が十分になされず好ましくない。
高分子半透膜の材料の含水率とは、一定条件下で該材料が含みうる水量を、水を含んだ状態の材料の重量に対する割合として表したものであり、その測定方法としては、以下の方法を用いる。
(含水率)
中空糸を前記と同様に平板状にキャスト乾燥し、その重量を測定し乾燥重量(g)とする。次に、材料を室温の蒸留水に浸漬し、毎日蒸留水を交換しながら1週間浸漬する。1週間浸漬後、材料の表面に付着している水を拭き取った後(肉眼で観察される水滴が存在しない程度)、直ちに重量を測定し湿潤重量(g)とする。含水率を次式:
含水率(%)=〔(湿潤重量−乾燥重量)/湿潤重量〕×100
により算出する。
高分子半透膜を構成する材料の含水率は13%以上であり、好ましくは15%以上、より好ましくは19%以上である。該材料の含水率が13%未満であると、インスリン分泌細胞から分泌されたインスリンの血液への供給が十分になされず好ましくない。なお、含水率の上限としては、通常、80%程度である。
高分子半透膜の材料としては、前記するような性質のいずれかを少なくとも有するものであれば特に限定されるものではない。該材料としては、例えば、再生セルロース、セルロースジアセテート、エチレン−ビニルアルコール系共重合体等の公知の樹脂を挙げることができる。中でも、エチレン−ビニルアルコール系共重合体からなるものが好適に使用される。
高分子半透膜の材料の前記性質についての調整は、例えば、材料を構成する樹脂中の親水性モノマー単位の含有量を適宜調節することにより行うことができる。また、該材料には、細胞の生存に必要な栄養素や、グルコース、インスリンの透過性が要求される一方、生体の細胞性免疫を担う免疫担当細胞、好ましくは免疫担当細胞に加え、液性免疫を担う抗体や補体の非透過性が要求されることから、特定範囲のポアサイズの小孔を有するのが好ましい。かかる小孔のポアサイズは厳密なものではないが、通常、人工腎臓用透析膜、血漿成分分離膜又は血漿分離膜が有する小孔と同程度のポアサイズであるのが好ましい。材料のポアサイズの調整は、例えば、人工腎臓用透析膜、血漿成分分離膜又は血漿分離膜を作製する際の製膜条件に準じて適宜調節することにより行うことができる。
前記中空糸は、かかる材料を公知の方法により適宜加工することで得られる。中空糸の膜厚としては、例えば、血糖値の変化に対する細胞の応答性を高める観点から、可能な限り薄いのが好ましい。膜厚としては、通常、人工腎臓用透析膜、血漿成分分離膜又は血漿分離膜と同程度であるのが好適である。また、血液の流れの確認の容易性の観点から、可能な限り透明であるのが好ましい。なお、平膜、管状膜等も同様にして適宜作製することができる。
なお、態様1においては、選択的透過膜を補強する網状構造の空隙部分を周辺の毛細血管から出てきた滲出液が出入りすることになるが、当該部分のサイズや空隙率としては、該滲出液が通過することができる程度であれば特に限定されるものではない。
細胞固定基材3は、図1のモジュールの細胞収容部を占める。該基材の材料としては、例えば、公知の粒状担体、不織布等が使用される。
該基材の材料として用いる粒状担体としては特に限定されないが、例えば、細胞接着性ペプチド固定化粒状担体(例えば、N.Kobayashi,et al.,Cell Transplantation,第10巻、387〜392頁、2001年参照)のように細胞を安定に固定化し、良好な生育環境を提供するものが好ましい。
一方、該基材の材料として用いる不織布としては特に限定されないが、例えば、アミノ化ウレタンコート不織布(例えば、芝良昭、児玉亮ら、化学工学論文集、第27巻、134〜136頁、2001年参照)やコラーゲンコート不織布(例えば、大河原久子、蛋白質核酸酵素、第45巻、2007〜2312頁、2000年参照)のように細胞を安定に固定化し、良好な生育環境を提供するものが好ましい。
図1のモジュールでは、細胞固定基材3として不織布を用い、例えば、長方形(10cm×15cm)に広げた該不織布の上に15cm程度の前記中空糸を複数並べ、中空糸の長さ方向に対して垂直方向の該不織布の末端から該不織布を巻き、中空糸の周囲を不織布により取り巻いたものを作製し、それをチャンバー1に収容し、チャンバー1の両端にポリウレタン等の樹脂を流し込んで固定化した後、固定化部分をカットすることによって容易に有効長10cm程度の、血液流路及び細胞収容部(細胞固定基材)とを備えた円柱体を作製することができる。
血液導入口4及び血液導出口5の材料は特に限定されるものではなく、公知の任意の樹脂を用いて形成することができる。例えば、チャンバー1と同様の材料を用いて形成するのが好適である。血液導入口4及び血液導出口5は、容器内に細胞固定基材3を入れる必要がある場合には、少なくともいずれか一方が開口可能に形成される。例えば、一方のみが開口可能に形成されていれば、他方はチャンバー1と一体として形成されていてもよい。血液流路2は、適宜、血液導入口4及び血液導出口5に接続される。
細胞導入口6及び6’は、チャンバー1と一体として形成されていてもよく、チャンバー1に、適宜、所望の位置に穴を開け、そこに公知の任意の樹脂を用いて形成された管を固定することにより形成してもよい。後者の場合、その材料としては特に限定されるものではないが、例えば、チャンバー1と同様の材料を用いて形成するのが好適である。
以上の各部を所望の材料により形成し、例えば、中空糸を使用した人工腎臓、血漿分離器等の作製方法として広く知られた方法に準じて、血液、細胞等が漏れないように各部を所定位置に固定することにより、図1に示すような本発明のモジュールを得ることができる。本明細書において、固定は、例えば、公知の任意の接着材料を用いて接着して行うのが好ましい。
モジュール各部のサイズは特に限定されるものではなく、例えば、必要量のインスリンを分泌する細胞(量)を収容するのに必要な容量等に応じて、適宜、決定することができる。
本発明の人工膵臓は、本発明のモジュールの細胞収容部にインスリン分泌細胞を収容してなるものである。
モジュールへの細胞の収容は、例えば、以下のようにして行うことができる。例えば、図1に示すモジュールを使用する場合について説明する。
インスリン分泌細胞は、用いる細胞の性質にもよるが、例えば、平板培地の上で培養した細胞をトリプシンを含有する培養液で処理して細胞を浮遊させ、これを遠心分離して該培養液を除去し、さらにトリプシンを含まない培養液で洗浄する、という処理を行った後、得られた細胞懸濁液をモジュールの細胞収容部に細胞導入口6及び6’を介して播種するのが好ましい。例えば、膵β細胞であれば、細胞懸濁液を注射用シリンジを用いて無菌的に注入するのが好適であり、膵島であれば、分離した膵島を培養液に懸濁し、同様に注入するのが好適である。細胞を播種する際の細胞密度は特に限定されるものではなく、所望により適宜調節すればよい。
一方、細胞を導入するモジュールは予め滅菌しておくことが望ましい。滅菌法としては公知の滅菌法、例えば、エチレンオキサイドガス滅菌法、高圧蒸気滅菌法、ガンマ線滅菌法等を挙げることができる。
図1のモジュールを人工膵臓の作製に使用する場合、生理食塩水を細胞収容部および血液流路2に充填し、血液導入口4、血液導出口5及び細胞導入口6及び6’を栓により密封し滅菌する。次いで、滅菌されたモジュールの細胞収容部にインスリン分泌細胞を細胞導入口6及び6’より播種する。このようにして本発明の人工膵臓を得ることができる。モジュール内の細胞密度が不足するような場合には、細胞を細胞収容部に播種した後、チャンバー1の内部等が汚染されないようにして、用いる細胞に応じた培養条件でチャンバーのまま適宜培養し、所望の細胞密度となるまで細胞を増やしてもよい。
得られた人工膵臓は、血液導入口4と血液導出口5を、例えば、血液回路を介して生体の動静脈に接続して用いられる。血液導入口4から血液が血液流路2に導入されると、血液に含まれるグルコースが血液流路2を形成する高分子半透膜を通過して細胞収容部を占める細胞固定基材3に固定化されたインスリン分泌細胞に到達し、そのグルコース濃度に応答してインスリン分泌細胞がインスリンを分泌する。分泌されたインスリンは血液流路2を形成する高分子半透膜を通過し、該流路を流れる血液に供給され、当該血液は血液導出口5から導出され、再び、生体内に戻ることになる。このようにして、血糖値の変化に応じた適切な量のインスリンが生体内に供給され、生体は血糖値の恒常性を維持することができる。従って、本発明の人工膵臓は、例えば、糖尿病患者の治療具として好適に使用することができる。
なお、態様1に示されるモジュールも、態様2のものとその使い方は異なるものの同様の効果を発揮しうる。
以下、本発明を実施例等により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。
参考例1
エチレン−ビニルアルコール系共重合体(以下、EVAという)中空糸が充填された人工腎臓ホローファイバーダイアライザーKF−15C(クラレメディカル(株))から中空糸を取り出し、前記する方法により、そのインスリン親和率、接触角及び含水率を調べた。結果を表1に示す。
参考例2
セルロースジアセテートを素材とする中空糸が充填されている人工腎臓ダイアライザー(DIACEPAL16)より中空糸を取り出し、参考例1と同様の操作を行い、そのインスリン親和率、接触角及び含水率を調べた。結果を表1に示す。
比較参考例1
特開平6−165926号公報の実施例1に記載されているポリビニルピロリドンを含むポリスルホンを素材とする中空糸を用いて参考例1と同様の操作を行い、そのインスリン親和率、接触角及び含水率を調べた。結果を表1に示す。
比較参考例2
ポリスルホンを素材とする中空糸が充填された持続緩徐型濾過器PS−CF(クラレメディカル(株))から取り出した中空糸を用いて参考例1と同様の操作を行い、そのインスリン親和率、接触角及び含水率を調べた。結果を表1に示す。
比較参考例3
特開平11−169693号公報の実施例2に記載されているポリビニルピロリドンを含むポリスルホンを素材とする血漿分離用の中空糸を用いて参考例1と同様の操作を行い、そのインスリン親和率、接触角及び含水率を調べた。結果を表1に示す。
Figure 2004275718
表1に示されるように、接触角が40度を超える高分子材料を素材とする中空糸(高分子半透膜)のインスリン親和率は66%以上と高く、高分子半透膜にインスリンが吸着され、人工膵臓に用いる高分子半透膜として適さないことが明らかである。一方、接触角が40度以下の高分子素材からなる中空糸(高分子半透膜)はインスリン親和率が7%以下であり、インスリンをほとんど吸着しないことから人工膵臓に用いる高分子半透膜として好適であることが明らかである。
また、表1より、含水率が13%未満の高分子材料を素材とする中空糸(高分子半透膜)のインスリン親和率は66%以上と高く、高分子半透膜にインスリンが吸着され、人工膵臓に用いる高分子半透膜として適さないことが明らかである。一方、含水率が13%以上の高分子素材からなる高分子半透膜はインスリン親和率が7%以下であり、インスリンをほとんど吸着しないことから人工膵臓に用いる高分子半透膜として好適であることが明らかである。
実施例1
EVA中空糸が充填された血漿成分分離膜エバフラックス5A(クラレメディカル(株))より取り出した中空糸500本を用いて中空糸の有効長が10cmの人工腎臓と同様の形態(図1に示すモジュールと同様の形態)を有する小型モジュールを作製した。この小型モジュールを生理食塩水でプライミング処理した後、人工腎臓の場合に透析液が潅流される中空糸外の空間にインスリン4000μU/mLを含む10%FBS添加DMEM培地を充填封入した。この小型モジュールの中空糸内に、ヘパリンで抗凝固し、ヘマトクリット38%、総タンパク質濃度6.5g/dLに調整したウシ血液を血液入口ポートより導入し、流速10mL/分にてワンパスで潅流した。そのとき中空糸の血液入口側と血液出口側の間に約30mmHgの圧力損失を生じた。この圧力損失による濾過作用と、中空糸膜を通した拡散作用により、中空糸外空間のインスリンが中空糸内の血液に移動した。小型モジュールの血液出口ポートから導出される血液を所定時間毎に採取し、インスリン濃度を測定した。血液出口ポートから導出されるインスリン濃度は血液の潅流時間とともに低下するが、0分から50分の間では約450〜50μU/mLであり、ヒトの血漿中のインスリン濃度とほぼ同レベルになるような実験となっていた。50分間血液を潅流後、中空糸外空間の溶液のインスリン濃度(μU/mL)を測定した。なお、インスリン濃度の測定は、「グラザイムInsulin−EIA TEST」(発売元:和光純薬工業(株))を用いて行なった。中空糸外より中空糸内に通過したインスリンの通過率を次式:
インスリン通過率(%)=
〔1−(50分後の中空糸外液のインスリン濃度/初めの中空糸外液中のインスリン濃度)〕×100
により算出した。
比較例1
比較参考例1の中空糸を用いて実施例1と同様の操作を行った。
実施例1及び比較例1で使用した中空糸の接触角及び含水率、並びにインスリン通過率を表2に示す。
Figure 2004275718
表2に示されるように、接触角が40度を超える高分子材料を素材とする中空糸(高分子半透膜)を用いた小型モジュールのインスリン通過率は非常に低く、人工膵臓に用いる高分子半透膜として適さないことが明らかである。一方、接触角が40度以下の高分子素材からなる中空糸(高分子半透膜)を用いた小型モジュールではインスリン通過率が90%と非常に高く、人工膵臓に用いる高分子半透膜として好適であることが明らかである。
また、表2より、含水率が13%未満の高分子材料を素材とする中空糸(高分子半透膜)を用いた小型モジュールはインスリン通過率が非常に低く、人工膵臓に用いる高分子半透膜として適さないことが明らかである。一方、含水率が13%以上の高分子素材からなる中空糸(高分子半透膜)を用いた小型モジュールはインスリン通過率が90%と非常に高く、人工膵臓に用いる高分子半透膜として好適であることが明らかである。
実施例2
実施例1で作製した小型モジュールに生理食塩水を充填しガンマ線滅菌により滅菌を行う。ブタの膵臓からコラゲナーゼ処理法により分離した膵臓ランゲルハンス島約0.5mLを10%ウシ胎児血清(シグマ社製)添加DMEM培地(ギブコ社製)中に懸濁して、中空糸外スペースである細胞収容部に充填し人工膵臓を作製する。グルコース濃度を500mg/dLに調製したACD液で抗凝固したウシ血液500mLを、温度37℃でペリスタポンプを用いて人工膵臓の中空糸に流速10mL/分で循環する。循環開始前のウシ血液と3時間循環後のウシ血液を採取しブタインスリン濃度をブタインスリン測定キット(Mercodia Porcine Insulin ELISA(販売元:フナコシ))を用いて測定する。それにより、本発明の人工膵臓によりブタインスリンがウシ血液中に供給されることが確認される。
実施例3
実施例1と同様の小型モジュールを作製した。なお、細胞固定基材として、アミノ化ウレタンコート不織布を用いた。かかる小型モジュールに注射用蒸留水を充填しガンマ線滅菌により滅菌を行った。この小型モジュールの中空糸外スペースである細胞収容部に10%牛胎児血清添加DMEM培地中に懸濁したマウスインスリノーマ細胞(MIN6細胞)約10mL(4.8×10cells)を充填し、バイオ人工膵臓とした。被験動物として体重6kg、生後4週間のLandrace種のブタを使用し、膵臓を全摘出した後5日経過した糖尿病モデルブタを作製した。該モジュールを介した血液の循環開始前にワンショットで1000IU、循環開始後は300IU/時間でヘパリン投与し、被験動物の抗凝固処理を行った。頚動脈より、ペリスタポンプを用いてバイオ人工膵臓の中空糸に10mL/分で血液を流し、頚静脈へ返血し、13時間体外循環を行った。グルコース負荷前血糖値は160mg/dLであった。50%(w/v)グルコース糖液(大塚製薬社製)6mL負荷後、血糖値は319mg/dLまで上昇したが、バイオ人工膵臓装着後、約3時間でグルコース負荷前血糖値である161mg/dLまで低下した。血糖値低下後、50%グルコース糖液9mLの再負荷を行ったところ、血糖値は367mg/dLまで上昇した。その後、約6時間で血糖値が80mg/dL以下まで低下することを確認した。その後、バイオ人工膵臓を脱着し、50%グルコース糖液6mLの再負荷を行ったところ、血糖値は183mg/dLまで上昇した。その後、血糖値の低下は認められなかった。なお、血糖値は、プレシジョンQ・I・D用血糖測定電極「メディセンス・プレシジョンプラス(登録商標)」(販売元:アボットジャパン(株))を用いて測定した。
本実施例と並行して糖尿病モデルブタの血液中のインスリン濃度を測定した結果、モジュールの装着前のブタインスリン濃度は検出感度以下であり、モジュール装着後のマウスインスリン濃度は1.6ng/mLまで上昇し、モジュールを脱着後のマウスインスリン濃度は検出限界以下に低下していた。なお、ブタインスリン濃度は実施例2と同様にして測定し、マウスインスリン濃度はマウスインスリン測定キット(Mercodia Ultrasensitive Mouse Insulin ELISA(販売元:フナコシ))を用いて測定した。
実施例4
実施例3と同様の小型モジュールを作製した。かかる小型モジュールに注射用蒸留水を充填しガンマ線滅菌により滅菌を行った。この小型モジュールの中空糸外スペースである細胞収容部に、体重約500kgの雄ブタより膵臓を摘出、分離して調製し、10%牛胎児血清添加DMEM培地中に懸濁した膵島(純度≒70%、Viability≒97%)約10mL(1.25×10islets)を充填し、バイオ人工膵臓とした。被験動物として体重5kg、生後4週間のLandrace種のブタを使用し、膵臓を全摘出した後5日経過した糖尿病モデルブタを作製した。該モジュールを介した血液の循環開始前にワンショットで1000IU、循環開始後は300IU/時間でヘパリン投与し、被験動物の抗凝固処理を行った。頚動脈より、ペリスタポンプを用いてバイオ人工膵臓の中空糸に10mL/分で血液を流し、頚静脈へ返血し、18時間体外循環を行った。グルコース負荷前血糖値は298mg/dLであった。50%グルコース糖液5mL負荷後、血糖値は441mg/dLまで上昇したが、バイオ人工膵臓装着後、正常域の80mg/dLまで、約6時間で低下した。その後、血糖値は40〜60mg/dLで保たれた。約2時間血糖値が正常域でコントロールされていることを確認後、50%グルコース糖液5mLの再負荷を行ったところ、血糖値は229mg/dLまで上昇した。血糖値は、正常域の80mg/dL以下まで約2時間で低下した。その後、血糖値は40〜60mg/dLで保たれた。その後、バイオ人工膵臓を脱着し、50%グルコース糖液5mLの再負荷を行ったところ、血糖値は273mg/dLまで上昇した。その後、血糖値の低下は認められなかった。なお、血糖値は実施例3と同様にして測定した。
本実施例と並行して糖尿病モデルブタの血液中のブタインスリン濃度を実施例2と同様の方法で測定した結果、モジュールの装着前は検出感度以下であり、モジュール装着後は5ng/mLまで上昇し、モジュールを脱着後は検出限界以下に低下していた。
本発明により、例えば、糖尿病患者の治療具として好適に使用することができるバイオ人工膵臓用モジュール並びにバイオ人工膵臓が提供される。
図1は、本発明のバイオ人工膵臓用モジュールの一例を示す模式図である。
符号の説明
1 チャンバー
2 血液流路
3 細胞固定基材(細胞収容部)
4 血液導入口
5 血液導出口
6、6’ 細胞導入口

Claims (5)

  1. 高分子半透膜を介して分画された血液流路と細胞収容部とを少なくとも備えたバイオ人工膵臓用モジュールであって、該高分子半透膜がインスリン親和率30%以下の材料からなるバイオ人工膵臓用モジュール。
  2. 高分子半透膜を介して分画された血液流路と細胞収容部とを少なくとも備えたバイオ人工膵臓用モジュールであって、該高分子半透膜が接触角40度以下の材料からなるバイオ人工膵臓用モジュール。
  3. 高分子半透膜を介して分画された血液流路と細胞収容部とを少なくとも備えたバイオ人工膵臓用モジュールであって、該高分子半透膜が含水率13%以上の材料からなるバイオ人工膵臓用モジュール。
  4. 高分子半透膜を介して分画された血液流路と細胞収容部とを少なくとも備えたバイオ人工膵臓用モジュールであって、該高分子半透膜がエチレン−ビニルアルコール系共重合体からなるバイオ人工膵臓用モジュール。
  5. 請求項1〜4いずれかに記載のバイオ人工膵臓用モジュールの細胞収容部にインスリン分泌細胞を収容してなるバイオ人工膵臓。
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