JP2016087456A - 移植部位形成剤、移植部位形成デバイス、血管新生誘導剤及び血管新生誘導デバイス - Google Patents

移植部位形成剤、移植部位形成デバイス、血管新生誘導剤及び血管新生誘導デバイス Download PDF

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令 ▲桑▼原
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Abstract

【課題】移植材料の生着性に優れる移植部位形成剤及び移植部位形成デバイス、血管新生の誘導作用に優れる血管新生誘導剤及び血管新生誘導デバイス並びに移植材料の生着に適した血管新生の誘導作用に優れる血管新生誘導剤及び血管新生誘導デバイスを提供する。
【解決手段】SEK−1005を含む移植部位形成剤、移植部位形成デバイス、血管新生誘導剤及び血管新生誘導デバイス。
【選択図】なし

Description

本発明は、移植部位形成剤、移植部位形成デバイス、血管新生誘導剤、血管新生誘導デバイス及び、以下の効果を得るのに適した血管新生を誘導するための血管新生誘導剤、血管新生誘導デバイスに関する。:移植部位の形成;移植材料の移植;移植材料の移植部位における生着促進;糖尿病の治療;血糖値の制御;及び血漿インスリン濃度の制御。
また本発明は、本発明の移植部位形成剤または移植部位形成デバイスの、移植部位を形成するための使用、血管新生を誘導するための使用、移植材料を移植するための使用、移植材料の移植部位への生着を促進するための使用、糖尿病の治療のための使用、血糖値を制御するための使用、及び血漿インスリン濃度を制御するための使用に関する。
また、本発明は、本発明の血管新生誘導剤または血管新生誘導デバイスの、血管新生を誘導するための使用、および、以下の効果(以下、移植部位の形成等とも称する)を得るのに適した血管新生を誘導するための使用に関する。:移植部位の形成;移植材料の移植;移植材料の移植部位における生着促進;糖尿病の治療;血糖値の制御;及び血漿インスリン濃度の制御。
さらに本発明は、本発明の移植部位形成剤または移植部位形成デバイスを用いた、移植部位の形成方法、血管新生の誘導方法、移植材料の移植方法、移植材料の移植部位への生着促進方法、糖尿病の治療方法、血糖値の制御方法、及び血漿インスリン濃度の制御方法に関する。
さらに本発明は、本発明の血管新生誘導剤または血管新生誘導デバイスを用いた、血管新生の誘導方法、および、以下の効果を得るのに適した血管新生の誘導方法に関する。:移植材料の移植;移植材料の移植部位への生着促進;糖尿病の治療;血糖値の制御;及び血漿インスリン濃度の制御。
糖尿病の治療方法として、インスリンを分泌して血液中のブドウ糖の濃度を調節する役割を果たすランゲルハンス氏島(膵島)を患者の体内に移植する方法がある。この方法では一般に肝臓内に膵島組織を移植するが、より侵襲性が小さく、かつ何らかの異変が生じた際に移植した膵島を除去しやすい方法として、患者の皮下に膵島を移植する方法が検討されている。本明細書において、移植材料として特にインスリン産生能を有するランゲルハンス氏島移植片(islet graft)は、単に膵島と記載することがある。
膵島などの組織を皮下に移植する場合、皮下組織における小口径の血管の発達が充分でないために酸素や栄養の供給力が乏しく、移植した組織の生着率が低いという問題がある。この問題を解決するための手段として、皮下に埋め込まれると周囲の組織内に小口径の血管の形成を促すデバイスが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、血管新生を誘導する物質として塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)を含むデバイスを糖尿病ラットの皮下に埋め込んだところ小口径の血管の新生が観察され、デバイスを取り出した後の部位に膵島を移植したところ血液中のブドウ糖の濃度が長期にわたって正常化したとの報告がされている(例えば、非特許文献1参照)。
特許第3089299号明細書
American Journal of Transplantation, Volume 14, Issue 7, pp.1533-1542 July 2014
移植後の移植材料の生着性に優れる移植部位の形成に適した物質、血管新生の誘導作用及び移植部位の形成等に適した血管新生の誘導作用に優れる物質を数多く見出すことは、多様な移植技術の開発に有益である。また、将来iPS細胞等の人工多能性幹細胞やES細胞等の胚性幹細胞からの移植材料の作製が実現した場合、作製した移植材料を体内に移植するにあたっては、万一、何らかの不都合が生じた場合に、安全性の観点から移植した移植材料を容易に除去できることが望ましいと考えられる。従って、皮下への移植材料の移植が治療方法の選択肢としての重要性を増すことが予想され、このような方法に適した物質を数多く見出すことが重要である。
本発明は上記状況に鑑み、移植材料の生着性に優れる移植部位形成剤及び移植部位形成デバイス、血管新生の誘導作用に優れる血管新生誘導剤及び血管新生誘導デバイス、並びに移植部位の形成等に適した血管新生の誘導作用に優れる血管新生誘導剤及び血管新生誘導デバイスを提供することを目的とする。
上述した目的を達成するための具体的な手段は、以下の通りである。
<1>SEK−1005(構造式;C457013 : 名称;Ser,3−hydroxy−N−[2−hydroxy−1−oxo−2−tetrahydro−2−hydroxy−6−methyl−5−(2−methylpropyl)−2H−pyran−2−yl−propyl]−Leu−Pip(hexahydro−3−pyridazinecarbonyl)−N−hydroxy−Ala−N−methyl−Phe−Pip−rho−lactone、Ser,3−ヒドロキシ−N−[2−ヒドロキシ−1−オキソ−2−テトラヒドロ−2−ヒドロキシ−6−メチル−5−(2−メチルプロピル)−2H−ピラン−2−イル−プロピル]−Leu−Pip(ヘキサヒドロ−3−ピリダジンカルボニル)−N−ヒドロキシ−Ala−N−メチル−Phe−Pip−rho−ラクトン)を含む、移植部位形成剤。
<2>皮下組織中に移植部位を形成するための、<1>に記載の移植部位形成剤。
<3>前記移植部位に、細胞もしくは組織、または、胚性幹細胞もしくは人工多能性幹細胞から分化誘導した細胞もしくは組織である移植材料が移植される、<2>に記載の移植部位形成剤。
<4>前記移植部位に、生理活性物質を分泌する移植材料が移植される、<3>に記載の移植部位形成剤。
<5>前記生理活性物質を分泌する移植材料は、ホルモン、サイトカイン、神経伝達物質および酵素からなる群より選択される少なくとも1種の生理活性物質を分泌する組織または細胞である、<4>に記載の移植部位形成剤。
<6>前記生理活性物質を分泌する移植材料は、膵島、肝細胞、副腎、上皮小体、エリスロポエチンを産生する細胞(尿細管間質細胞など)、成長ホルモンを産生する細胞(脳下垂体前葉のGH分泌細胞など)、体性幹細胞から作製した移植材料、人工多能性幹細胞から作製した移植材料、または胚性幹細胞から作製した移植材料である、<4>に記載の移植部位形成剤。
<7>前記生理活性物質を分泌する移植材料は、膵島である、<4>〜<6>のいずれか1項に記載の移植部位形成剤。
<8>前記膵島を移植した後の個体の血漿インスリン濃度が移植前の血漿インスリン濃度よりも高くなる、<7>に記載の移植部位形成剤。
<9>前記膵島を移植した後の個体の血漿インスリン濃度が移植前の血漿インスリン濃度の2倍以上である、<8>に記載の移植部位形成剤。
<10>前記膵島を移植した後の個体の血漿インスリン濃度が移植前の血漿インスリン濃度よりも高い状態が10日以上継続する、<8>または<9>に記載の移植部位形成剤。
<11>前記膵島を移植した後の個体の血糖値が移植前の血糖値よりも低くなる、<7>〜<10>のいずれか1項に記載の移植部位形成剤。
<12>前記膵島を移植した後の個体の血糖値が移植前の血糖値よりも低い状態が10日以上継続する、<11>に記載の移植部位形成剤。
<13>前記移植部位は、皮下組織中における血管新生を誘導することによって形成される、<2>〜<12>のいずれか1項に記載の移植部位形成剤。
<14>SEK−1005または<1>〜<13>のいずれか1項に記載の移植部位形成剤と、SEK−1005または前記移植部位形成剤を保持する基体と、を含む、移植部位形成デバイス。
<15>前記基体はハイドロゲル、ハイドロゲルの乾燥物、スポンジ、多孔質体高分子ブロック、多孔質体、多孔質シート及び多孔質膜からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる、<14>に記載の移植部位形成デバイス。
<16>前記基体は生体適合性を有する材料からなる、<14>または<15>に記載の移植部位形成デバイス。
<17>個体の皮下に埋め込み、前記移植部位形成剤を放出して周辺の組織中に血管新生を誘導する、<14>〜<16>のいずれか1項に記載の移植部位形成デバイス。
<18>前記血管新生が誘導された後に摘出される、または摘出されない、<17>に記載の移植部位形成デバイス。
<19>SEK−1005を含む、血管新生誘導剤。
<20>皮下組織中における血管新生を誘導するための、<18>または<19>に記載の血管新生誘導剤。
<21>前記皮下組織中の血管新生の誘導により、皮下組織中のヘモグロビン量が2倍以上に増加する、<20>に記載の血管新生誘導剤。
<22>前記皮下組織中のヘモグロビン量が2倍以上に増加するまでの期間が5日〜20日である、<21>に記載の血管新生誘導剤。
<23>前記皮下組織は移植材料を移植するための移植部位である、<20>〜<22>のいずれか1項に記載の血管新生誘導剤。
<24>前記移植部位は、生理活性物質を分泌する移植材料を移植するためのものである、<23>に記載の血管新生誘導剤。
<25>前記生理活性物質を分泌する移植材料は、ホルモン、サイトカイン、神経伝達物質および酵素からなる群より選択される少なくとも1種の生理活性物質を分泌する組織または細胞である、<24>に記載の血管新生誘導剤。
<26>前記生理活性物質を分泌する移植材料は、膵島、肝細胞、副腎、上皮小体、エリスロポエチンを産生する細胞(尿細管間質細胞など)、成長ホルモンを産生する細胞(脳下垂体前葉のGH分泌細胞など)、体性幹細胞から作製した移植材料、人工多能性幹細胞から作製した移植材料、または胚性幹細胞から作製した移植材料である、<24>に記載の血管新生誘導剤。
<27>前記生理活性物質を分泌する移植材料は、膵島である、<24>〜<26>のいずれか1項に記載の血管新生誘導剤。
<28>前記膵島を移植した後の個体の血漿インスリン濃度が移植前の血漿インスリン濃度よりも高くなる、<27>に記載の血管新生誘導剤。
<29>前記膵島を移植した後の個体の血漿インスリン濃度が移植前の血漿インスリン濃度の2倍以上である、<28>に記載の血管新生誘導剤。
<30>前記膵島を移植した後の個体の血漿インスリン濃度が移植前の血漿インスリン濃度よりも高い状態が10日以上継続する、<28>または<29>に記載の血管新生誘導剤。
<31>前記膵島を移植した後の個体の血糖値が移植前の血糖値よりも低くなる、<27>〜<30>のいずれか1項に記載の血管新生誘導剤。
<32>前記膵島を移植した後の個体の血糖値が移植前の血糖値よりも低い状態が10日以上継続する、<31>に記載の血管新生誘導剤。
<33>移植部位の形成等に適した、<19>〜<32>のいずれか1項に記載の血管新生誘導剤。
<34>SEK−1005または<19>〜<33>のいずれか1項に記載の血管新生誘導剤と、SEK−1005または前記血管新生誘導剤を保持する基体と、を含む、血管新生誘導デバイス。
<35>前記基体はハイドロゲル、ハイドロゲルの乾燥物、スポンジ、多孔質体高分子ブロック、多孔質体、多孔質シート及び多孔質膜からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる、<34>に記載の血管新生誘導デバイス。
<36>前記基体は生体適合性を有する材料からなる、<34>または<35>に記載の血管新生誘導デバイス。
<37>個体の皮下に埋め込み、前記血管新生誘導剤を放出して周辺の組織中における血管新生を誘導するための、<34>〜<36>のいずれか1項に記載の血管新生誘導デバイス。
<38>前記血管新生が誘導された後に摘出される、または摘出されない、<37>に記載の血管新生誘導デバイス。
<39>SEK−1005を含む移植部位形成剤または移植部位形成デバイスの、移植部位を形成するための使用、血管新生を誘導するための使用、移植材料を移植するための使用、移植材料の移植部位への生着を促進するための使用、糖尿病の治療のための使用、血糖値を制御するための使用、または血漿インスリン濃度を制御するための使用。
<40>SEK−1005を含む血管新生誘導剤または血管新生誘導デバイスの、血管新生を誘導するための使用、および、以下の効果(移植部位の形成等)を得るのに適した血管新生を誘導するための使用。:移植部位の形成;移植材料の移植;移植材料の移植部位における生着促進;糖尿病の治療;血糖値の制御;または血漿インスリン濃度の制御。
<41>SEK−1005を含む移植部位形成剤または移植部位形成デバイスを体組織に接触させる工程を含む、移植部位の形成方法。
<42>SEK−1005を含む血管新生誘導剤または血管新生誘導デバイスを体組織に接触させる工程を含む、血管新生の誘導方法、または移植部位の形成等に適した血管新生の誘導方法。
<43>SEK−1005を含む移植部位形成剤または移植部位形成デバイスを体組織に接触させて移植部位を形成する工程と、前記移植部位に移植材料を移植する工程と、を含む、移植材料の移植方法、または移植材料の移植部位への生着促進方法。
<44>SEK−1005を含む血管新生誘導剤または血管新生誘導デバイスを体組織に接触させて、移植部位形成に適した血管新生を誘導する工程を含む、<43>に記載の移植材料の移植方法、または移植材料の移植部位への生着促進方法。
<45>SEK−1005を含む移植部位形成剤または移植部位形成デバイスを体組織に接触させて移植部位を形成する工程と、膵島を前記移植部位に移植する工程と、を含む、糖尿病の治療方法、血糖値の制御方法または血漿インスリン濃度の制御方法。
<46>SEK−1005を含む血管新生誘導剤または血管新生誘導デバイスを体組織に接触させて、移植部位形成に適した血管新生を誘導する工程を含む、<45>に記載の糖尿病の治療方法、血糖値の制御方法または血漿インスリン濃度の制御方法。
本発明によれば、移植材料の生着性に優れる移植部位形成剤及び移植部位形成デバイス、血管新生の誘導作用に優れる血管新生誘導剤及び血管新生誘導デバイス、並びに移植材料の生着性に優れる移植部位の形成等に適した血管新生の誘導作用に優れる血管新生誘導剤及び血管新生誘導デバイスを提供することができる。
糖尿病ラットの背部の皮下に埋め込んだアガロースロッドを取り出した後の周辺組織の写真である。 アガロースロッドとの接触部における皮下組織の薄片のヘマトキシリン・エオジン(HE)染色像である。 アガロースロッドとの接触部における皮下組織中のヘモグロビン量の測定結果である。 SEK−1005を含有するアガロースロッドを取り出した後に膵島を移植した後のレシピエントの血糖値の測定結果である。 SEK−1005を含有しないアガロースロッドを取り出した後に膵島を移植した後のレシピエントの血糖値の測定結果である。 膵島移植後のレシピエントの血漿インスリン濃度の測定結果である。 膵島移植後のレシピエントに対して、移植後50〜55日または100〜105日に行ったグルコース負荷試験の結果である。 移植後106日の膵島移植部位の組織切片のHE染色像及び免疫蛍光染色像である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、以下の説明によって本発明の範囲が制限されるものではない。
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。「血管新生誘導」との用語は、体組織中における血管新生を誘導することを意味する。より具体的には、本発明の血管新生誘導剤又は血管新生誘導デバイスを体組織に接触させた場合における血管の存在量を、本発明の血管新生誘導剤又は血管新生誘導デバイスを体組織に接触させない場合における血管の存在量よりも増加させることを意味する。「治療」との用語には、症状を消失させることのほか、重症化の抑制、症状の軽減、合併症の治療または予防なども含まれる。「移植部位」は移植材料を移植するための対象となる体組織の部位を意味する。
<移植部位形成剤>
本発明の移植部位形成剤は、SEK−1005を含む。SEK−1005(Ser,3−ヒドロキシ−N−[2−ヒドロキシ−1−オキソ−2−テトラヒドロ−2−ヒドロキシ−6−メチル−5−(2−メチルプロピル)−2H−ピラン−2−イル−プロピル]−Leu−Pip(ヘキサヒドロ−3−ピリダジンカルボニル)−N−ヒドロキシ−Ala−N−メチル−Phe−Pip−rho−ラクトン)は、下記構造式で示される化合物であり、放線菌ストレプトマイセス・ノビリスの培養液またはその乾固物から単離された環状ペプチドである。本発明の移植部位形成剤によれば、移植した組織の生着性に優れる移植部位を形成することができる。
SEK−1005を得るための放線菌ストレプトマイセス・ノビリスは、公的保存機関から入手可能である。例えば、理化学研究所においてJCM4274として、米国においてATCC19252として、オランダにおいてCBS198.65として保存されている菌を使用することができる。SEK−1005を得る方法は特に制限されず、放線菌ストレプトマイセス・ノビリスその他の天然物から得てもよく、生物工学的方法または有機化学的方法によって合成してもよい。放線菌ストレプトマイセス・ノビリスからSEK−1005を得る具体的な方法としては、国際公開第WO96/12732号などを参照することができる。
SEK−1005は、本発明の効果が達成される限りにおいてアミノ酸残基の一部が欠落していたり、他のアミノ酸残基が付加されていたり、アミノ酸残基の一部が他のアミノ酸残基に置き替わっていてもよく、このような化合物も本発明の範囲に包含される。さらに、SEK−1005は、本発明の効果が達成される限りにおいて塩を形成していても、分子中に種々の改変が施されてもよく、このような化合物も本発明の範囲に包含される。改変の例としては、糖鎖、アミノ基、カルボキシ基、チオール基、水酸基、スルホニル基、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、D−アミノ酸等の付加などが挙げられる。
SEK−1005の薬理的作用、薬剤としての利用等については種々の報告がされている。例えば、特開平10−259134号公報にはSEK−1005を含む創傷治癒促進剤が記載されている。しかしながら、SEK−1005を移植部位の形成、血管新生誘導並びに移植部位の形成に適した血管新生誘導のために利用する試みはこれまで報告されておらず、本発明者らが初めて見出したものである。
本発明の移植部位形成剤を用いて形成される移植部位が、移植した移植材料の生着性に優れる理由について、本発明者らは以下のように推測している。本発明の移植部位形成剤に含まれるSEK−1005を体組織に接触させると、当該体組織内において血管の新生が誘導される。この誘導された血管の新生が、移植材料の生着に適しており、その結果、移植材料の生着に必要な移植部位を形成することができると考えられる。
SEK−1005を含む本発明の移植部位形成剤を接触させる体組織の部位は特に制限されないが、例えば、皮下組織等が挙げられる。移植部位形成剤を皮下組織に接触させる場合の場所は特に制限されず、皮下組織の表面(真皮との境界部分)であっても、皮下組織の内部であってもよい。
移植部位形成剤を用いて形成される血管の増加分を定量する方法としては、移植部位形成剤を接触させる前後の体組織中のヘモグロビン量を比較する方法を挙げることができる。本発明の移植部位形成剤は、SEK−1005の含有量、体組織の部位、体組織への接触方法等にも左右されるが、皮下組織に接触させた場合、接触前の皮下組織中のヘモグロビン量の2倍以上、または3倍以上、または4倍以上にヘモグロビン量を増加させることができる。
移植した組織の生着性に優れる移植部位を形成するために適した移植部位形成剤の使用量または配合量は、特に限定されないが、ヘモグロビン量に換算して2mg/g組織〜50mg/g組織の血管新生を誘導可能な量であることが好ましく、ヘモグロビン量に換算して3mg/g組織〜40mg/g組織の血管新生を誘導可能な量であることがより好ましく、ヘモグロビン量に換算して4mg/g組織〜30mg/g組織の血管新生を誘導可能な量であることがさらに好ましく、5mg/g組織〜25mg/g組織の血管新生を誘導可能な量であることが特に好ましい。
また、移植部位形成デバイスにおけるSEK−1005または移植部位形成剤の配合量は、特に限定されないが、ヘモグロビン量に換算して、本発明の移植部位形成デバイスの皮下組織への10日の埋め込みにより、埋込前の皮下組織中のヘモグロビン量の5倍〜150倍にヘモグロビン量を増加させることができる量であることが好ましく、10倍〜100倍にヘモグロビン量を増加させることができる量であることがより好ましく、15倍〜70倍にヘモグロビン量を増加させることができる量であることがさらに好ましい。
また、移植部位形成デバイスにおけるSEK−1005または移植部位形成剤の配合量は、各因子により異なり、特に限定されないが、ヘモグロビン量に換算して、本発明の移植部位形成デバイスの皮下組織への10日の埋め込みにより、SEK−1005または移植部位形成剤を含まないデバイスを同じ条件で埋め込んだ場合のヘモグロビン量の2倍〜15倍にヘモグロビン量を増加させることができる量であることが好ましく、2倍〜10倍にヘモグロビン量を増加させることができる量であることがより好ましく、2倍〜5倍にヘモグロビン量を増加させることができる量であることがさらに好ましい。
移植部位形成剤を体組織に接触させる方法は特に制限されない。例えば、他の材料とともに体内に埋め込んで放出させる方法、定期的に注射等により投与する方法などが挙げられる。移植部位形成剤と体組織との接触時間を確保しやすいという観点からは、他の材料とともに体内に埋め込んで放出させる方法が好ましい。またこの方法は、移植部位形成剤を取り除いた後に移植材料を移植できる空隙を確保できるという点でも好ましい。移植部位形成剤を接触させる体組織の大きさ(面積等)は特に制限されず、治療方法等に応じて選択できる。
移植部位形成剤を体組織に接触させる回数は特に制限されず、1回の接触で所望の移植部位を形成しても、複数回の接触で所望の移植部位を形成してもよい。また、移植部位形成剤を体組織に接触させる時間は特に制限されない。体組織の部位や移植部位形成剤の量、体組織への接触方法等の要因にも左右されるが、例えば、5日〜20日程度である。本発明のある実施態様では、移植部位形成剤を皮下組織に接触させた場合、皮下組織中のヘモグロビン量が、接触前の皮下組織中のヘモグロビン量の2倍以上に増加するまでの期間が5日〜20日である。
移植部位形成剤は、SEK−1005のみからなっていてもよく、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、界面活性剤、溶解補助剤、安定化剤、等張化剤、懸濁化剤、乳化剤、緩衝剤、溶剤等を挙げることができる。移植部位形成剤がSEK−1005以外の成分を含む場合、SEK−1005の移植部位形成剤中の含有率は、SEK−1005が移植部位形成剤の有効成分としてその効果を発揮できる程度であれば特に制限されない。
本発明の移植部位形成剤を用いて形成される移植部位は、種々の移植材料の移植に用いることができる。特に、その機能を発揮するのに移植の場所が制限されない移植材料の移植に好適である。このような移植材料としては、ホルモン、サイトカイン、神経伝達物質、酵素等の、生理活性物質を分泌する組織または細胞が挙げられる。具体的には、膵島、肝細胞、副腎、上皮小体、エリスロポエチンを産生する細胞(尿細管間質細胞など)、成長ホルモンを産生する細胞(脳下垂体前葉のGH分泌細胞など)等が挙げられる。さらには体性幹細胞、iPS細胞等の人工多能性幹細胞、ES細胞等の胚性幹細胞などから分化誘導して作製した移植材料の移植にも用いることができる。
本発明の移植部位形成剤を用いて形成される移植部位に移植される移植材料としては、移植部位に生着可能な組織(臓器を含む)、細胞等が挙げられ、生体由来のものであっても、人為的に作製したものであってもよい。ここで、前記移植材料としては、同種細胞または組織ないし同種微小組織または細胞のみならず、異種細胞または組織ないし異種微小組織または細胞のいずれも使用することができる。同種細胞または組織を使用する場合、同種同系組織または細胞、同種同系微小組織または細胞のみならず、同種異系組織または細胞、同種異系微小組織または細胞のいずれも使用することができる。なお、「同種」は種が同じであること、「異種」は種が異なること、「同種同系」、「種が同じで、遺伝的組成が共通すること」「同種異系」は、「種が同じで、遺伝的組成が異なる」ことを意味する。
本発明の移植部位形成剤を用いて形成される移植部位に組織を移植することは、種々の疾患の治療に有用である。特に、常時血糖値の変動に応じてインスリンの分泌を制御する必要があるインスリン依存性糖尿病は、他の内分泌疾患に比べて移植による症状の軽減効果や生活の質の改善効果が大きい。従って、本発明の移植部位形成剤は、インスリン依存性糖尿病の治療のための膵島移植部位の形成に用いられる場合にその有用性が特に大きい。
このような糖尿病の主な症例は、I型糖尿病である。しかし、II型糖尿病の治療においても有用である。すなわち、II型糖尿病が進行すると膵β細胞の容積が低下し、現状の治療法としてはインスリンを投与することになるが、このようなケースでも、本発明の移植部位形成剤を用いることで、治療することが可能となる。さらに、II型糖尿病については、膵臓におけるインスリン産生能よりも体のインスリン抵抗性が大きくなることで糖尿病になっていくと考えると、インスリン投与が必要になる前の段階から予防的な意味合いでの移植も有効である。
さらに、本発明の移植部位形成剤によれば、他人の組織を移植可能な移植部位を形成することができる。
本発明のある実施形態では、本発明の移植部位形成剤は皮下組織中に膵島を移植するための移植部位を形成するために使用される。移植部位形成剤を用いて形成した皮下組織には、移植した膵島が生着するのに充分な量の小口径の血管が形成されている。本発明の移植部位形成剤を用いて形成した移植部位では、移植後の膵島が血糖値をコントロールするのに充分なインスリンを分泌することができ、膵島を移植した後の個体の血漿インスリン濃度を移植前の血漿インスリン濃度よりも高くすることができる。その結果、膵島を移植した後の個体の血糖値を移植前の血糖値よりも低くすることができる。例えば、膵島を移植した後の個体の血漿インスリン濃度を移植前の血漿インスリン濃度の2倍以上、または3倍以上、または4倍以上とすることができる。また、例えば、膵島を移植した後の個体の血糖値を正常範囲に近づけたり、血糖値の変動態様を健常個体の正常動態に近づけることができる。
本発明のある実施形態では、本発明の移植部位形成剤を用いて形成した移植部位に移植した膵島は、継続して血糖値をコントロールするのに充分なインスリンを分泌することができ、継続して移植後の個体の血糖値を制御することができる。例えば、膵島を移植した後の個体の血漿インスリン濃度が移植前の血漿インスリン濃度よりも高い状態、または、膵島を移植した後の個体の血糖値が移植前の血糖値よりも低い状態を10日以上、20日以上、30日以上、60日以上、90日以上、100日以上、110日以上、または120日以上継続させることができる。
本発明のある実施形態では、本発明の移植部位形成剤を用いて形成した移植部位に移植した移植材料が、前記移植部位に生着する。これは、移植部位形成剤に含まれるSEK−1005が、適切な移植部位を形成するように機能しているためと推測される。ここで「生着」とは、移植した移植材料が所望の機能を発揮している状態を意味し、以下も同様である。
<移植部位形成デバイス>
本発明の移植部位形成デバイスは、SEK−1005または前記移植部位形成剤と、SEK−1005または前記移植部位形成剤を保持する基体と、を含む。本発明の移植部位形成デバイスを体組織に接触させると、体組織に接触した状態の移植部位形成デバイスの内部から移植部位形成剤が放出されて体組織に作用し、これによって移植後の移植材料の生着率が高い移植部位を形成することができる。本発明の移植部位形成デバイスに含まれる移植部位形成剤の詳細は、上述したとおりである。
移植部位形成デバイスに含まれる基体は、例えば、棒状、平板状、シート状、筒状、ロッド状、液状などの、種々の形状の生体適合性を有する材料からなる。生体適合性を有する材料は、移植部位形成剤を移植部位形成デバイスから放出させることができるものであれば特に制限はない。例えば、ハイドロゲル、ハイドロゲルの乾燥物、スポンジ、多孔質体高分子ブロック、多孔質体、多孔質シート、多孔質膜などから構成される。基体の材料として具体的には、天然高分子、合成高分子等の有機材料、金属、金属酸化物、セラミックス等の無機材料などが挙げられる。天然高分子として具体的には、アガロース、寒天、セルロース、ハイドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)、ハイドロキシエチルセルロース(HEC)などのセルロース誘導体、アルギン酸、デンプン、デキストラン、プルラン、ペクチン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、キチン、キトサン等の多糖類及びその誘導体、ゼラチン、アルブミン、コラーゲン、フィブリン等のタンパク質及びその誘導体などが挙げられる。合成高分子として具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリ−2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリ−2−ヒドロキシエチルアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリイソプロピルアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、これらの高分子を構成するモノマーの共重合体などが挙げられる。その他、ポリアニオンとポリ−L−リジン等のポリカチオンとのポリイオンコンプレックスなども用いることができる。無機材料としては、ステンレス鋼、チタン合金、金、金合金、白金、白金合金、アルミナ、ジルコニア、水酸化アパタイト、炭酸カルシウム、燐酸カルシウムなどが挙げられる。これらの材料は1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。基体は生体適合性を有する材料からなることが好ましい。
移植部位形成デバイスの構造は、移植部位形成剤がデバイスの内部から外部に放出されるような構造であれば特に制限はない。例えば、上述した材料からなるハイドロゲル、ハイドロゲルの乾燥物、スポンジ、多孔質体高分子ブロック、多孔質体、多孔質シート、多孔質膜等の基体に移植部位形成剤が含浸、塗布等の方法で担持された構造や、上述した材料からなる袋、筒等の基体に移植部位形成剤が内包された構造を挙げることができる。移植部位形成デバイスの構造は、移植部位形成剤の移植部位形成デバイスの内部からの放出速度、移植部位形成デバイスを使用する体組織の部位等を考慮して選択できる。
移植部位形成デバイスの大きさや形状は特に制限されず、使用方法や使用部位によって選択できる。移植部位形成デバイスは、当該デバイスを生体内に導入後、血管新生が誘導された後に摘出しても、摘出しなくてもよい。血管新生が誘導された体組織を移植材料の移植部位として用いる場合であって、血管新生が誘導された後に移植部位形成デバイスを摘出する場合は、移植部位形成デバイスを摘出した後の空間に移植材料を配置してもよい。この場合は、移植用組織の種類、量等に応じて移植部位形成デバイスの大きさや形状を選択することが好ましい。当該デバイスを生体内に導入後、移植部位が形成された後に移植部位形成デバイスを摘出しない場合、移植部位形成デバイスはその内部に移植材料を配置でき、かつその内部に周辺組織から形成された血管が侵入可能なまたは不可能な構造を有していてもよい。移植部位形成デバイスは、基体が体内で分解する性質を有する材料からなり、当該デバイスを生体内に導入後、血管新生が誘導された後にその全部又は一部が消失する構造を有していてもよい。
移植部位形成デバイスの製造方法は、移植部位形成剤が内部から外部に放出されるような構造を有する移植部位形成デバイスを形成可能な方法であれば特に制限されない。
<血管新生誘導剤>
本発明の血管新生誘導剤は、SEK−1005を含む。本発明の血管新生誘導剤を体組織に接触させると、当該体組織内において血管新生が誘導される。SEK−1005の有する生理活性作用に関し、例えば、特開平10−259134号公報にはSEK−1005が白血球または骨髄細胞を賦活する刺激剤として作用することで肉芽組織が増殖されると記載されている。しかしながら、SEK−1005が血管新生を誘導するという知見は示されておらず、創傷治癒過程における血管の生成または再生に関するデータも示されていない。SEK−1005が血管新生を誘導するという知見や、SEK−1005の血管新生誘導剤としての有用性は、本発明によりはじめて見出されたものである。
さらに、本発明者らはSEK−1005を接触させた体組織中に本来存在する血管の量を大きく上回る量の血管が新生されることを見出した。SEK−1005のこのような作用を利用して、例えば、血管の存在量がもともと少ない体組織中に作為的に所望の量の血管を存在させることができる。また、本発明者らは、SEK−1005を接触させた体組織で形成された血管を含む場が、組織移植のために非常に適していることを見出した。
上述のような、SEK−1005の血管新生誘導作用に関する知見はこれまで明らかにされてこなかった。従って、SEK−1005を含む血管新生誘導剤を移植部位の形成等に利用するという発想に到るのは、本発明者らが新たに見出した知見なくしては困難であったといえる。
SEK−1005を含む本発明の血管新生誘導剤を接触させる体組織の部位は特に制限されない。本発明の血管新生誘導剤は、血管の存在量が少なかったり、血管が殆ど存在しない部位であっても作為的に血管新生を誘導することができる。血管の存在量が比較的少ない体組織では、本発明の効果がより顕著に達成される。このような体組織としては、皮下組織等が挙げられる。血管新生誘導剤を皮下組織に接触させる場合の場所は特に制限されず、皮下組織の表面(真皮との境界部分)であっても、皮下組織の内部であってもよい。
血管新生誘導剤を用いて形成される血管の増加分を定量する方法としては、血管新生誘導剤を接触させる前後の体組織中のヘモグロビン量を比較する方法を挙げることができる。本発明の血管新生誘導剤は、SEK−1005の含有量、体組織の部位、体組織への接触方法等にも左右されるが、皮下組織に接触させた場合、接触前の皮下組織中のヘモグロビン量の2倍以上、または3倍以上、または4倍以上にヘモグロビン量を増加させることができる。
血管新生誘導剤の使用量または配合量は、特に限定されないが、例えば、移植材料の生着性に優れる移植部位を形成する場合には、ヘモグロビン量に換算して2mg/g組織〜50mg/g組織の血管新生を誘導可能な量であることが好ましく、ヘモグロビン量に換算して3mg/g組織〜40mg/g組織の血管新生を誘導可能な量であることがより好ましく、ヘモグロビン量に換算して4mg/g組織〜30mg/g組織の血管新生を誘導可能な量であることがさらに好ましく、5mg/g組織〜25mg/g組織の血管新生を誘導可能な量であることが特に好ましい。
また、血管新生誘導デバイスにおけるSEK−1005または血管新生誘導剤の配合量は、特に限定されないが、ヘモグロビン量に換算して、本発明のデバイスの皮下組織への10日の埋め込みにより、埋込前の皮下組織中のヘモグロビン量の5倍〜150倍にヘモグロビン量を増加させることができる量であることが好ましく、10倍〜100倍にヘモグロビン量を増加させることができる量であることがより好ましく、15倍〜70倍にヘモグロビン量を増加させることができる量であることがさらに好ましい。
また、血管新生誘導デバイスにおけるSEK−1005または血管新生誘導剤の配合量は、各因子により異なり、特に限定されないが、ヘモグロビン量に換算して、本発明の血管新生誘導デバイスの皮下組織への10日の埋め込みにより、SEK−1005または血管新生誘導剤を含まないデバイスを同じ条件で埋め込んだ場合のヘモグロビン量の2倍〜15倍にヘモグロビン量を増加させることができる量であることが好ましく、2倍〜10倍にヘモグロビン量を増加させることができる量であることがより好ましく、2倍〜5倍にヘモグロビン量を増加させることができる量であることがさらに好ましい。血管新生誘導剤の使用量または配合量は、例えば、長さ25mm、直径4mmの4.5%アガロースゲルロッド基体中50μg〜1mg程度であることが、好ましい。
血管新生誘導剤を体組織に接触させる方法は特に制限されない。例えば、他の材料とともに体内に埋め込んで放出させる方法、定期的に注射等により投与する方法などが挙げられる。血管新生誘導剤と体組織との接触時間を確保しやすいという観点からは、他の材料とともに体内に埋め込んで放出させる方法が好ましい。またこの方法は、血管新生誘導剤を取り除いた後に移植材料を移植できる空隙を確保できるという点でも好ましい。血管新生誘導剤を接触させる体組織の大きさ(面積等)は特に制限されず、使用目的、治療方法等に応じて選択できる。
血管新生誘導剤を体組織に接触させる回数は特に制限されず、一回の接触で所望の移植部位を形成しても、複数回の接触で所望の移植部位を形成してもよい。また、血管新生誘導剤を体組織に接触させる時間は特に制限されない。体組織の部位や血管新生誘導剤の量、体組織への接触方法等の要因にも左右されるが、通常は5〜10日程度で体組織内に血管の新生が認められる。本発明のある実施態様では、血管新生誘導剤を皮下組織に接触させた場合、皮下組織中のヘモグロビン量が接触前の皮下組織中のヘモグロビン量の2倍以上に増加するまでの期間が、5日〜20日である。
血管新生誘導剤は、SEK−1005のみからなっていてもよく、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、界面活性剤、溶解補助剤、安定化剤、等張化剤、懸濁化剤、乳化剤、緩衝剤、溶剤等を挙げることができる。血管新生誘導剤がSEK−1005以外の成分を含む場合、SEK−1005の血管新生誘導剤中の含有率は、SEK−1005が血管新生誘導剤の有効成分としてその効果を発揮できる程度であれば特に制限されない。
血管新生誘導剤を用いて血管新生が誘導された体組織は、例えば、移植材料の移植に適しており、その生着率を向上させることができる。
血管新生誘導剤を用いて血管新生が誘導された体組織を移植部位として利用する場合の移植部位の詳細及び具体的な態様については上述の移植部位形成剤に関する詳細及び具体的な態様を、移植材料の詳細及び具体的な態様については上述の移植材料に関する詳細及び具体的な態様を、それぞれ参照することができる。
本発明のある実施形態では、本発明の血管新生誘導剤は、皮下組織中に膵島を移植するための移植部位を形成するために使用される。本発明の血管新生誘導剤を用いて血管新生を誘導した皮下組織には、移植した膵島が生着するのに充分な量の小口径の血管が形成されており、膵島細胞の移植に非常に適している。そのため、移植後の膵島が生着して血糖値をコントロールするのに充分なインスリンを分泌することができ、膵島を移植した後の個体の血漿インスリン濃度を移植前の血漿インスリン濃度よりも高くすることができる。その結果、膵島を移植した後の個体の血糖値を移植前の血糖値よりも低くすることができる。例えば、膵島を移植した後の個体の血漿インスリン濃度を移植前の血漿インスリン濃度の2倍以上、または3倍以上、または4倍以上とすることができる。また、例えば、膵島を移植した後の個体の血糖値を健常個体の正常範囲に近づけたり、血糖値の変動態様を健常個体の正常動態に近づけることができる。なお、ここでいう「血漿インスリン濃度」及び「血糖値」はそれぞれ随時の測定値を意味する。
本発明のある実施形態では、本発明の血管新生誘導剤を用いて血管新生を誘導した皮下組織に移植した膵島は、継続して血糖値をコントロールするのに充分なインスリンを分泌することができ、継続して移植後の個体の血糖値を制御することができる。例えば、膵島を移植した後の個体の血漿インスリン濃度が移植前の血漿インスリン濃度よりも高い状態、または、膵島を移植した後の個体の血糖値が移植前の血糖値よりも低い状態を10日以上、20日以上、30日以上、60日以上、90日以上、100日以上、110日以上、または120日以上継続させることができる。
本発明のある実施形態では、本発明の血管新生誘導剤を用いて形成した移植部位に移植した移植材料が、前記移植部位に生着する。これは、血管新生誘導剤に含まれるSEK−1005が血管新生を誘導するように機能するとともに、適切な移植部位を形成するように機能しているためと推測される。本発明の血管新生誘導剤によれば、移植材料のドナーとレシピエントが異なる個体であっても移植材料を生着させることができる。
<血管新生誘導デバイス>
本発明の血管新生誘導デバイスは、SEK−1005または本発明の血管新生誘導剤と、SEK−1005または前記血管新生誘導剤を保持する基体と、を含む。本発明の血管新生誘導デバイスを体組織に接触させると、当該体組織内において血管新生が誘導される。より具体的には、体組織に接触した状態の血管新生誘導デバイスの内部から血管新生誘導剤が放出されて体組織に作用し、これによって血管新生が誘導される。本発明の血管新生誘導デバイスにより血管新生が誘導された体組織は、細胞、臓器等の組織の移植部位として特に適している。本発明の血管新生誘導デバイスに含まれる血管新生誘導剤の詳細は、上述したとおりである。また、本発明の血管新生誘導デバイスに含まれる基体の種類、構造、血管新生誘導デバイスの使用方法などの詳細及び具体的な態様については、本発明の移植部位形成デバイスについて記載した事項を参照することができる。
<移植部位形成剤等の用途>
本発明の移植部位形成剤、移植部位形成デバイス、血管新生誘導剤または血管新生誘導デバイス(以下、移植部位形成剤等とも称する)の用途は特に制限されない。例えば、移植部位を形成するための使用、血管新生を誘導するための使用、移植材料を移植するための使用、移植材料を皮下で生着させるための使用、糖尿病の治療のための使用、血糖値を制御するための使用、血漿インスリン濃度を制御するための使用などが挙げられる。
<移植部位の形成方法または血管新生の誘導方法>
本発明の移植部位の形成方法は、本発明の移植部位形成剤または移植部位形成デバイスを体組織に接触させる工程を含む。これにより、本発明の移植部位形成剤または移植部位形成デバイスに含まれるSEK−1005が体組織中に放出して移植部位が形成される。
本発明の血管新生の誘導方法は、本発明の血管新生誘導剤または血管新生誘導デバイスを体組織に接触させる工程を含む。これにより、本発明の血管新生誘導剤または血管新生誘導デバイスに含まれるSEK−1005が体組織中に放出して血管新生が誘導される。
移植部位を形成する場所または血管新生を誘導する場所は特に制限されない。本発明の移植部位の形成方法または血管新生の誘導方法は、例えば、皮下組織等の血管の存在量が比較的少ない体組織への移植部位の形成方法または血管新生の誘導方法として、適している。皮下組織に移植部位を形成するまたは血管新生を誘導する場合、本発明の移植部位形成剤等を接触させる場所は皮下組織の表面(真皮との境界部分)であっても、皮下組織の内部であってもよい。
本発明の移植部位形成剤等を体組織に接触させる方法は特に制限されず、移植部位の場所または血管新生を誘導する場所に応じて選択できる。皮下組織に接触させる場合は、通常の方法にて移植部位形成剤等を埋め込み、所望の量の血管が形成されるまでの間放置する。効率的に血管新生を誘導するためには、一度埋め込んだ移植部位形成剤等からSEK−1005が体組織中に放出されるような構成とすることが好ましい。移植部位形成剤等を埋め込んだ後に放置する時間は、好ましくは1日〜35日、より好ましくは2日〜28日、更に好ましくは3日〜21日、特に好ましくは4〜14日である。
本発明の移植部位形成剤等を体組織に接触させて所望の移植部位が形成された後、または所望の程度に血管新生が誘導された後は、移植部位形成剤等を摘出しても、摘出しなくてもよい。移植部位形成剤等を摘出する場合は、摘出後に生じる空間を移植用空間として利用することができる。移植部位の形状、大きさ等は特に制限されず、移植材料の種類、量等に応じて設定できる。
本発明の移植部位形成剤等を用いて形成された移植部位に移植材料を移植した後は、数日程度で移植材料が生着し、機能し始める。移植材料を移植した後の移植部位には、追加的にSEK−1005を注射等の方法で投与してもよい。また、必要に応じて他の薬剤、免疫抑制剤等を併用してもよい。なお、本発明の移植部位形成剤等を用いて形成された移植部位は、別の個体から採取した移植材料を移植しても生着状態が維持される。
前記方法において、移植部位の詳細及び具体的な態様については上述の移植部位形成剤等に関する詳細及び具体的な態様を、移植材料の詳細及び具体的な態様については上述の移植材料に関する詳細及び具体的な態様を、それぞれ参照することができる。
<移植材料の移植方法または移植材料の移植部位への生着促進方法>
本発明の移植材料の移植方法または移植材料の移植部位への生着促進方法は、本発明の移植部位形成剤等を体組織に接触させて移植部位を形成する工程と、前記移植部位に移植材料を移植する工程と、を含む。前記移植部位に移植材料を移植する工程は、前記移植部位に同種細胞及び同種微小組織ならびに異種細胞および異種微小組織からなる群から選ばれる移植材料を移植する工程を含んでよい。前記方法によれば、移植材料の生着性に優れる移植部位を、体内の所望の部位に形成することができる。さらに前記方法では、別の個体に由来する移植材料を移植する場合にも生着状態が維持される。
上記移植部位形成工程は、SEK−1005を含む血管新生誘導剤または血管新生誘導デバイスを体組織に接触させて、移植部位形成に適した血管新生を誘導する工程を含んでよい。
前記方法のある実施態様では、移植材料は生理活性物質を分泌する移植材料である。 前記方法のある実施態様では、生理活性物質を分泌する移植材料は膵島である。前記方法のある実施態様では、移植部位は皮下組織である。前記方法において、移植部位の詳細及び具体的な態様については上述の移植部位形成剤等における詳細及び具体的な態様を、移植材料の詳細については上述の移植材料に関する詳細及び具体的な態様を、それぞれ参照することができる。
<糖尿病の治療方法、血糖値の制御方法または血漿インスリン濃度の制御方法>
本発明の糖尿病の治療方法、血糖値の制御方法または血漿インスリン濃度の制御方法は、本発明の移植部位形成剤等を体組織に接触させて移植部位を形成する工程と、前記移植部位に膵島を移植する工程と、を含む。前記方法によれば、膵島の生着性に優れる移植部位を、体内の所望の部位に形成することができる。さらに前記方法では、他人に由来する膵島を移植する場合にもその生着状態が維持される。
上記移植部位形成工程は、SEK−1005を含む血管新生誘導剤または血管新生誘導デバイスを体組織に接触させて、移植部位形成に適した血管新生を誘導する工程を含んでよい。
前記方法の治療対象となる糖尿病は、前記方法が症状の治療に有効であれば特に限られず、インスリン依存型糖尿病(I型糖尿病)及びインスリン非依存型糖尿病(II型糖尿病)のいずれも治療対象に含まれ、糖尿病に関連する種々の合併症も治療対象に含まれる。
前記方法において、移植部位の詳細及び具体的な態様については上述の移植部位形成剤等に関する詳細及び具体的な態様を、移植材料としての膵島の詳細については上述の移植部位形成剤等における移植材料に関する詳細及び具体的な態様を、それぞれ参照することができる。
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
<実施例1 血管新生誘導作用の評価>
ストレプトゾシン(STZ)をACIラット(8週令オス)の腹腔内に投与し、糖尿病ラットを作製した。血糖値を測定して2日連続して400mg/dLを超えた場合に糖尿病が誘導されたと判断した。長さ25mm、直径4mmの4.5%アガロースゲルからなるロッド状の基体に、アルコールに溶解したSEK−1005 100μgを含浸させた。アルコールを十分揮発させた後、生理食塩水を含浸させた。このアガロースロッドを、糖尿病ラットの背骨を挟んで左右2箇所の皮下に埋め込んだ。対照として、SEK−1005を含有しない、生理食塩水を含浸させたアガロースロッドを糖尿病ラットの背骨を挟んで左右2箇所の皮下にそれぞれ埋め込んだ。
10日後にアガロースロッドを取り出し、周辺組織の様子を観察した。結果を図1に示す。図1に示すように、SEK−1005を含有するアガロースロッドが埋め込まれていた部分の周辺組織(破線で表示)では、SEK−1005を含有しないアガロースロッドが埋め込まれていた部分の周辺組織に比べて小口径の血管がより発達している様子が観察された。
アガロースロッドとの接触部における皮下組織の薄片をHE染色した結果を図2に示す。図2に示すように、SEK−1005を含有するアガロースロッドと接触していた皮下組織では、SEK−1005を含有しないアガロースロッドと接触していた皮下組織に比べて小口径の細血管がより発達している様子(破線で表示)が観察された。
アガロースロッドとの接触部における皮下組織中のヘモグロビン量を測定した結果を図3に示す。図3中のデータは、アガロースロッドを埋め込まなかった糖尿病ACIラット、SEK−1005を含有しないアガロースロッドを埋め込んだ糖尿病ラット、SEK−1005を10μg含有するアガロースロッドを埋め込んだ糖尿病ラット、SEK−1005を100μg含有するアガロースロッドを埋め込んだ糖尿病ラットについて、アガロースロッドを埋め込んでから10日後に取り出した後のヘモグロビン量の測定結果である。図3に示す結果より、SEK−1005と接触することにより、皮下組織中のヘモグロビン量が増加することがわかった。図中のエラーバーはそれぞれ、標準偏差(非処置;n=3、SEK−1005 0μg;n=3、SEK−1005 10μg;n=3、SEK−1005 100μg;n=5)である。
<実施例2 血糖値制御作用の評価>
上述の糖尿病ACIラットをレシピエントとし、F344ラットをドナーとして、膵島を分離し、その膵島移植後の血糖値の変化を調べた。具体的には、上記と同じ方法で作製したSEK−1005を含有するアガロースロッドをレシピエントの背骨を挟んで左右2箇所の皮下に埋め込み、10日後にアガロースロッドを取り出した後の空間に、F344ラットから分離した膵島を1500個ずつ(計3000個)移植した。対照として、SEK−1005を含有しないアガロースロッドをレシピエントの背骨を挟んで左右2箇所の皮下に埋め込み、10日後にアガロースロッドを取り出した後の空間に、F344ラットから分離した膵島を左右に1500個ずつ(計3000個)移植した。
SEK−1005を含有するアガロースロッドを取り出した後に膵島を移植した後のレシピエントの血糖値を、移植後2週間は毎日、それ以降は1〜3日おきに測定した結果を図4に示す。図4に示すように、6匹中4匹のレシピエントの血糖値が100日にわたって正常化し、1匹のレシピエントが、血糖値は正常化したが、60日目に事故死した。測定した血糖値は、随時血糖値である。
SEK−1005を含有しないアガロースロッドを取り出した後に膵島を移植した後のレシピエントの血糖値を、移植後2週間は毎日、それ以降は2〜3日おきに測定した結果を図5に示す。図5に示すように、5匹中4匹のレシピエントの血糖値は一度も正常域にまで低下することがなく、400mg/dLを越えていた。5匹中1匹のレシピエントは、いったん血糖値が正常域にまで低下したが、10日ほどで再び400mg/dLを超える値に戻ってしまった。
膵島移植後のレシピエントの血漿インスリン濃度を測定した結果を図6に示す。図6に示すように、SEK−1005を含有するアガロースロッドを取り出した後に膵島を移植してから40日後および90日後のレシピエントの血漿インスリン濃度は、膵島を移植していない糖尿病ラットの血漿インスリン濃度よりも著しく高い値を示した。さらに、膵島移植から40日後および90日後のレシピエントの血漿インスリン濃度は、健常ラットの血漿インスリン濃度と有意な差は無く、同程度の値が維持されていた。図中のエラーバーは標準偏差(健常;n=4、糖尿病;n=3、移植後40日;n=4、移植後90日;n=4)である。測定した血漿インスリン濃度は、随時のものである。
膵島移植後のレシピエントに対して、移植後50〜55日または100〜105日にグルコース負荷試験を行った結果を図7に示す。図7に示すように、膵島移植後50〜55日目のレシピエントにブドウ糖(60mg/kg)を腹腔内に投与した後の血糖値の変化を調べたところ、健常ラットと同じ程度に血糖値が制御されていた。さらに、膵島移植後100〜105日目のレシピエントに同じ条件でブドウ糖を投与した後の血糖値の変化を調べた。その結果、膵島移植後50〜55日目のレシピエントよりも血糖値の低下幅が小さい傾向がみられるものの、全体としては同等と評価できる程度に血糖値が制御されていた。これに対し、糖尿病ラットでは、血糖値は500mg/dL前後という高値を維持したままであった。図中のエラーバーは標準偏差(健常;n=4、糖尿病;n=3、移植後40日;n=4、移植後90日;n=4)である。
膵島移植後106日目の血糖値が正常化していたレシピエントから摘出した膵島移植部位の組織切片のHE染色像(図8上段)を観察したところ、膵島と思われる細胞集塊が多数存在し(破線で表示)、これらの内部を多くの小口径の血管が貫通していた。さらに、ほぼ同じ部位のインスリンの免疫蛍光染色切片を蛍光顕微鏡で観察した(図8下段)ところ、HE染色像における膵島と思われる細胞集塊に相当する位置にインスリン陽性の細胞が存在していた。
以上の結果より、本発明によれば、移植材料の生着性に優れる移植を行うことができることがわかる。

Claims (20)

  1. SEK−1005(Ser,3−ヒドロキシ−N−[2−ヒドロキシ−1−オキソ−2−テトラヒドロ−2−ヒドロキシ−6−メチル−5−(2−メチルプロピル)−2H−ピラン−2−イル−プロピル]−Leu−Pip(ヘキサヒドロ−3−ピリダジンカルボニル)−N−ヒドロキシ−Ala−N−メチル−Phe−Pip−rho−ラクトン)を含む、移植部位形成剤。
  2. 皮下組織中に移植部位を形成するための、請求項1に記載の移植部位形成剤。
  3. 前記移植部位に、細胞もしくは組織、または、胚性幹細胞もしくは人工多能性幹細胞から分化誘導した細胞もしくは組織である移植材料が移植される、請求項2に記載の移植部位形成剤。
  4. 前記移植部位に、生理活性物質を分泌する移植材料が移植される、請求項2または請求項3に記載の移植部位形成剤。
  5. 前記生理活性物質を分泌する移植材料は、膵島、肝細胞、副腎、上皮小体、エリスロポエチンを産生する細胞、成長ホルモンを産生する細胞、体性幹細胞から作製した移植材料、人工多能性幹細胞から作製した移植材料、または胚性幹細胞から作製した移植材料である、請求項4に記載の移植部位形成剤。
  6. 前記生理活性物質を分泌する移植材料は、膵島である、請求項5に記載の移植部位形成剤。
  7. 前記膵島を移植した後の個体の血漿インスリン濃度が移植前の血漿インスリン濃度よりも高くなる、請求項6に記載の移植部位形成剤。
  8. 前記膵島を移植した後の個体の血漿インスリン濃度が移植前の血漿インスリン濃度の2倍以上である、請求項7に記載の移植部位形成剤。
  9. 前記膵島を移植した後の個体の血漿インスリン濃度が移植前の血漿インスリン濃度よりも高い状態が10日以上継続する、請求項7または請求項8に記載の移植部位形成剤。
  10. 前記膵島を移植した後の個体の血糖値が移植前の血糖値よりも低くなる、請求項6〜請求項9のいずれか1項に記載の移植部位形成剤。
  11. 前記膵島を移植した後の個体の血糖値が移植前の血糖値よりも低い状態が10日以上継続する、請求項10に記載の移植部位形成剤。
  12. 前記移植部位は、皮下組織中における血管新生を誘導することによって形成される、請求項2〜11のいずれか1項に記載の移植部位形成剤。
  13. SEK−1005または請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の移植部位形成剤と、SEK−1005または前記移植部位形成剤を保持する基体と、を含む、移植部位形成デバイス。
  14. 前記基体は、ハイドロゲル、ハイドロゲルの乾燥物、スポンジ、多孔質体高分子ブロック、多孔質体、多孔質シート及び多孔質膜からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる、請求項13に記載の移植部位形成デバイス。
  15. 前記基体は生体適合性を有する材料からなる、請求項13または請求項14に記載の移植部位形成デバイス。
  16. 個体の皮下に埋め込み、前記移植部位形成剤を放出して周辺の組織中に移植部位を形成するための、請求項13〜請求項15のいずれか1項に記載の移植部位形成デバイス。
  17. 前記移植部位が形成された後に摘出される、または摘出されない、請求項16に記載の移植部位形成デバイス。
  18. SEK−1005(Ser,3−ヒドロキシ−N−[2−ヒドロキシ−1−オキソ−2−テトラヒドロ−2−ヒドロキシ−6−メチル−5−(2−メチルプロピル)−2H−ピラン−2−イル−プロピル]−Leu−Pip(ヘキサヒドロ−3−ピリダジンカルボニル)−N−ヒドロキシ−Ala−N−メチル−Phe−Pip−rho−ラクトン)を含む、血管新生誘導剤。
  19. 移植部位を形成するための、請求項18に記載の血管新生誘導剤。
  20. SEK−1005または請求項18または請求項19に記載の血管新生誘導剤と、SEK−1005または前記血管新生誘導剤を保持する基体と、を含む、血管新生誘導デバイス。
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