JPWO2008120741A1 - 塩基性線維芽細胞増殖因子の徐放性製剤 - Google Patents

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Abstract

本発明は、塩基性線維芽細胞増殖因子及び/又はその同族体を担持させたアガロースハイドロゲルを含有してなる徐放性製剤を提供する。好ましい徐放性製剤は、アガロースハイドロゲルがアガロースのみから調製されるもの、又は粒子状である。本発明はまた、前記徐放性製剤を製造するための、塩基性線維芽細胞増殖因子及び/又はその同族体とアガロースハイドロゲルの使用、並びに前記徐放性製剤及び当該徐放性製剤を血管新生促進又は組織再生に使用することができること又は使用すべきであることを記載した当該徐放性製剤に関する記載物を含む商業パッケージを提供する。

Description

本発明は、塩基性線維芽細胞増殖因子の徐放性製剤に関する。詳しくは、アガロースを用いる塩基性線維芽細胞増殖因子の徐放性製剤及びその血管閉塞性疾患の治療又は再生医療分野における用途に関する。
動脈硬化、血栓形成、動脈炎、外傷など各種原因に基づく慢性的な血管閉塞性状態が持続すると、閉塞部位の周辺及び下流の支配組織に血行不全に基づく虚血状態を来たし、終末的には組織の壊死に至ることがある。このような血管閉塞の治療には、近年、血管外科領域における手術手技の進歩や、各種インターベーション技術の開発により、重症の虚血症に対しても良好な予後が期待できるようになった。しかし、広範囲にわたる閉塞例や糖尿病に合併しやすい末梢型閉塞例など血行再建が不可能な症例も依然残されており、治療に難渋することが少なくない。これらの症例に対する治療は薬物療法が主体となるが、その効果には限界がある。
最近、新しい治療法として、治療的血管新生(Therapeutic angiogenesis)が注目を集めている。この治療法は、虚血部位に血管新生を誘導し、側副血行路を発達させて血行を改善するというものである。具体的には、血管新生を誘導する増殖因子を投与する方法があげられる。増殖因子の投与は、増殖因子タンパクの投与、増殖因子遺伝子の投与及びex vivoで増殖因子遺伝子を導入した細胞の投与に大別される。
増殖因子タンパクの投与方法については、既に各種増殖因子の経カテーテル的動脈内投与が試みられ、動物モデルでは良好な成績が報告されている(非特許文献1)。しかし、タンパク質薬剤は半減期が短いので、当該薬剤の作用効果を持続させるために、徐放性製剤が開発されている。これまでに、アルギン酸、ゼラチン、アガロース等の天然高分子を材料としてゲルマトリックスを調製し、マイクロビーズ、カプセルなどが放出担体として開発されてきた。
アルギン酸は、海藻から単離される酸性多糖である。アルギン酸カルシウムがゲルの調製に通常用いられ、架橋したアルギン酸ゲル製剤が塩基性線維芽細胞増殖因子の徐放性製剤として研究されている(非特許文献2、3)。
塩基性線維芽細胞増殖因子(塩基性線維芽細胞成長因子ともいう。以下、「bFGF」と省略する場合もある。)は、組織再生又は血管新生の用途が期待されている増殖因子の1つである。bFGFは、創傷治療に用いられており、治療的血管新生への臨床応用も実施されている。bFGF製剤としては、特許文献1には、骨疾患治療に有用なbFGFを含有する架橋ゼラチンゲル製剤が、特許文献2には、bFGFが優れた軟骨組織新生ないし再生促進効果を有し、軟骨組織修復に有用であることが記載されている。特許文献3には、bFGFを含有する歯周疾患治療剤が開示されている。さらに、特許文献4には、歯周病の処置に有用なbFGFを含有する歯科用粘稠製剤が開示されている。
ゼラチン、すなわち変性コラーゲンは、動物由来の生分解性材料であり、bFGFの徐放性製剤にも使用されている。特許文献5には、各種の血管閉塞性疾患の治療に有用な、bFGFを含有する酸性ゼラチンハイドロゲル粒子が記載されている。また、上述したように、特許文献1には、骨疾患治療に有用なbFGFを含有する架橋ゼラチンゲル製剤が記載されている。酸性ゼラチンを用いて、bFGF以外の増殖因子のハイドロゲル担体も調製されている(非特許文献4〜6)。
特許文献5は、bFGFの徐放性担体として生体内分解性の酸性ゼラチンハイドロゲル粒子を用いる薬物送達システムを開示している。酸性ゼラチンは、bFGFとイオン性相互作用により結合する。酸性ゼラチンハイドロゲルは、例えば、牛の骨のコラーゲンを水酸化カルシウムで処理して得た酸性ゼラチンに、グルタルアルデヒドなどの架橋剤を加えて重合・ゲル化することによって調製される。当該薬物送達システムは、ゼラチン粒子が所定の期間、生分解を受けながらbFGFを放出し、血流を顕著に改善し得るものである。
アガロースは、紅藻類(テングサ)から単離、精製される中性多糖である。アガロースマイクロ粒子は、抗癌治療の徐放薬に使用されてきた(非特許文献7)。血管新生因子への利用としては、アガロースとヒアルロン酸からなるハイドロゲルに血管新生因子を添加し、組織中に埋め込んで毛細血管が豊富な空隙を形成させる用具が開示されている(特許文献6、特に実施例1、3)。アガロースハイドロゲル粒子は、生体内で低分解性である。アガロースは電荷を持っていないので、bFGFを取り込んだアガロース粒子は不安定であると考えられる。これまで、薬物送達システムとして、アガロース単独からなる担体を用いてbFGFの効果を報告した文献はほとんどない。
国際公開第94/27630号パンフレット 特開平7−233085号公報 特開平7−17876号公報 国際公開第03/082321号パンフレット 特開2005-104910号公報 特開2000-178180号公報 Takeshita S, Zheng LP, Brogi E, Kearney M et al: J Clin Invest, 1994, 93: 662-670 Tanihara M, Suzuki Y, Yamamoto E, Noguchi A, Mizushima Y: J Biomed. Mater. Res, 2001, 56: 216-221 Suzuki Y, Nishimura Y, Tanihara M, Suzuki K, Nakamura T, Shimizu Y, Yamawaki Y, Kakimaru Y: J Biomed. Mater. Res, 1998, 39: 317-322 Kawai K, Suzuki S, Tabata Y, Ikada Y, Nishimura Y: Biomaterials, 2000, 21: 489-499 Yamamoto M, Tabata Y, Kawasaki H, Ikada Y: J. Mater. Sci. Mater. Med., 2000, 11: 213-218 Yamamoto M, Takahashi Y, Tabata Y: Biomaterials, 2003, 24:4375-4383 Liu J, Li L: Eur J Pharm Sci. 2005, 25(2-3):237-244
bFGFの徐放性担体として酸性ゼラチンを用いることは、bFGFと担体との親和性及び担体としての生分解性に優れるものの、動物由来の原料は、例えば、牛海綿状脳症(BSE)が発生した場合の原料供給の不安定性、タンパク成分ゼラチンに対する免疫反応などのリスクも考えられる。本発明の目的は、非動物由来の原料を用いて、酸性ゼラチン徐放性製剤に匹敵する新たなbFGFの徐放性製剤を提供することにある。
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意検討したところ、意外にもアガロースゲルがbFGFの徐放性担体として優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のものを提供する。
〔1〕塩基性線維芽細胞増殖因子及び/又はその同族体を担持させたアガロースハイドロゲルを含有してなる徐放性製剤。
〔2〕アガロースハイドロゲルがアガロースのみから調製されるものである、前記〔1〕記載の製剤。
〔3〕アガロースハイドロゲルが粒子状である前記〔1〕又は〔2〕に記載の製剤。
〔4〕吸水したときの粒子の平均粒子径が1.0〜1000μmである、前記〔3〕に記載の製剤。
〔5〕アガロースハイドロゲルの乾燥重量1mg当り、0.1μg〜10mgの塩基性線維芽細胞増殖因子及び/又はその同族体が担持されたものである、前記〔1〕〜〔4〕いずれか1つに記載の製剤。
〔6〕血管新生促進又は組織再生に用いられる、前記〔1〕〜〔5〕いずれか1つに記載の製剤。
〔7〕前記〔1〕〜〔6〕のいずれか1つに記載の徐放性製剤を製造するための、塩基性線維芽細胞増殖因子及び/又はその同族体とアガロースハイドロゲルの使用。
〔8〕前記〔1〕〜〔6〕のいずれか1つに記載の徐放性製剤、及び当該徐放性製剤を血管新生促進又は組織再生に使用することができること又は使用すべきであることを記載した当該徐放性製剤に関する記載物を含む商業パッケージ。
本発明の徐放性製剤は、bFGFの担持性、徐放性、血管新生作用に優れるものである。かかる効果は、生分解性のゼラチンを用いた徐放性製剤と同等である。また、本発明の徐放性製剤は、アガロースを原料としていることから、ゲル化の工程が1工程で完了し、ゼラチンを原料とする場合の架橋処理が不要である点で、製造上有利である。
粒子状アガロースハイドロゲルの製造工程を示す模式図である。 粒子状アガロースハイドロゲルの特徴を示す図である。図2Aは凍結乾燥後のアガロース粒子の形状を、図2Bは水に分散後のアガロース粒子の形状を、図2Cは粒子径の分布を示す。 アガロースハイドロゲルディスク及びアガロースハイドロゲル粒子中のbFGFの保持率を示すグラフである。図中、×はアガロースハイドロゲルディスクの結果を、○はアガロースハイドロゲル粒子の結果を示す。 アガロースハイドロゲル粒子またはゼラチンハイドロゲル粒子中のbFGFの保持率を示すグラフである。図中、●はアガロースハイドロゲル粒子(bFGF50μg)の結果を、○はアガロースハイドロゲル粒子(bFGF2μg)の結果を、黒塗三角はゼラチンハイドロゲル粒子(bFGF50μg)の結果を示す。バーは平均±S.D.を示す。 レーザードップラー式血流画像化により、虚血肢モデルにおける血流の回復を定量化したグラフである。 bFGFを担持したアガロースハイドロゲル粒子の注射後3週間の虚血肢筋肉のPCNA免疫染色を示す写真である。図6AはbFGFを担持したアガロースハイドロゲル粒子の結果を、図6BはbFGFを担持しないアガロースハイドロゲル粒子の結果を示す。
本発明の徐放性製剤は、bFGF及び/又はその同族体を担持させたアガロースハイドロゲルを含有することを特徴とする。本発明において「徐放性製剤」とは、徐放性担体としてアガロースハイドロゲルを用いてbFGF及び/又はその同族体を長期間に亘って放出可能な製剤をいう。
bFGF及びその同族体は、天然に存在するものであってもよく、遺伝子組換え技術により微生物もしくは培養細胞に産生させたものから単離精製することにより、又はそれらを化学的修飾もしくは生物的修飾することにより得られたものであってもよい。
天然のbFGFとしては、哺乳動物由来のものがあげられる。哺乳動物としては、ヒト、サル、イヌ、ブタ、ヒツジ、ウシ、ウマ等があげられる。bFGFはこれら哺乳動物から公知の方法により得ることができ、また、市販のものを用いることもできる。本発明で用いるbFGFとしては特にヒトbFGF又はその同族体が好ましい。
また本発明の徐放性製剤においては、有効成分としてbFGFの同族体を用いてもよい。ここで、bFGFの同族体とは、下記〔I〕又は〔II〕のポリペプチドを意味する。
〔I〕特定の哺乳動物で産生されるbFGFと実質的に同一のアミノ酸配列からなるポリペプチド。実質的に同一のアミノ酸配列とは、アミノ酸配列中の1〜6個のアミノ酸が別種のアミノ酸により置換されたものでbFGFの生物活性を有するものを意味する。
〔II〕特定の哺乳動物で産生されるbFGFのN末端及び/又はC末端、あるいは上記〔I〕のポリペプチドのN末端及び/又はC末端に、追加のアミノ酸セグメントが付加されたポリペプチド。追加のアミノ酸セグメントとは、1〜12個のアミノ酸からなり、bFGFの生物活性又は上記〔I〕のポリペプチドの生物活性を損なわないものを意味する。
ヒトbFGFはアミノ酸146個のポリペプチドであるが、本発明の徐放性製剤においては、ヒトbFGFの同族体(前記〔I〕の同族体)として、例えば特表平2−504468号公報に記載のアミノ酸146個のポリペプチドを用いてもよい。このポリペプチドは、ヒトbFGFのアミノ酸配列を構成する69位のシステイン(Cys)及び87位のシステイン(Cys)がそれぞれセリン(Ser)により置換されたものである。
また、前記〔II〕の同族体として、例えば特表昭63−500843号公報に記載のアミノ酸155個のポリペプチドを用いてもよい。このポリペプチドは、ヒトbFGFのN末端にアミノ酸9個のセグメントが付加されたものである。
また、N末端にメチオニン(Met)が付加されたアミノ酸147個のポリペプチドや、特表昭63−501953号公報に記載のN末端にアミノ酸11個からなるセグメントが付加されたアミノ酸157個のポリペプチドを用いてもよい。
特に好ましいbFGFとしては、トラフェルミン(遺伝子組換え)(科研製薬製)があげられる。
本発明の徐放性製剤においては、一種類のbFGFを単独で使用してもよいし、複数種を併用してもよい。さらに、前述したように、bFGFの同族体は複数種あるが、これらの同族体についても、それぞれを単独で使用してもよいし、併用してもよい。
なお、生体内におけるbFGFの存在量は極微量であるため、本発明の徐放性製剤を商業的に安定して供給するためには、遺伝子組換え技術により大腸菌等の微生物又は培養細胞に産生させたbFGF又はその同族体を使用することが特に好ましい。bFGF又はその同族体(この場合は一般に前記〔I〕のポリペプチド)を産生させるための遺伝子を微生物又は培養細胞に組み込んだ場合、この微生物又は培養細胞から産生されるものは、一般に、bFGFのN末端及び/又はC末端、又は上記〔I〕のポリペプチドのN末端及び/又はC末端に、追加のアミノ酸セグメントが付加したもの、すなわち前述した〔II〕のポリペプチドである。
本発明において「アガロースハイドロゲル」とは、アガロースを原料とし、水分を多量に含む性質を有するゲルをいう。
アガロースハイドロゲルは、bFGF又はその同族体の保持性及び放出特性が良好なことから、アガロースのみから調製されるものが好ましい。
アガロースとは、1,3位で結合したβ-d-ガラクトピラノース及び1,4位で結合した3,6-アンヒドロ-α-l-ガラクトピラノースの繰り返し構造からなる多糖をいい、β-d-ガラクトピラノースの2位及び6位に少量のスルホン酸エステル、硫酸エステル、ピルビン酸ケタール、カルボキシル基などが存在するといわれている(Electrophoresis 1999, 20, 1455-1461)。本発明においては、市販のアガロースを好適に使用することができる。
アガロースハイドロゲルの形状は特に制限はなく、例えば、円柱(ディスク)状、角柱状、シート状、粒子状、ペースト状などがあげられる。注入可能な製剤として用いる場合には、粒子状が好ましい。
アガロースハイドロゲルの大きさは、投与する部位に適合するように任意に設定することができる。前記形状が粒子状の場合、アガロースハイドロゲルが吸水したときの粒子の平均粒子径は、通常1.0〜1000μmであり、注射投与の観点から、1〜100μmが好ましく、10〜100μmがより好ましい。
吸水したアガロースハイドロゲルの粒子径分布および平均粒子径は、各種微粒子50mgを蒸留水10mL中に分散させ、1時間経過後に日機装株式会社製 MICROTRAC Full Range Analyzer (FRAR)により測定した値である。
本発明の徐放性製剤に含まれるbFGF及び/又はその同族体の量は、bFGFをその薬効が発揮される限度で目的の組織に長期に亘って供給可能な量であればよく、治療目的、対象とする組織の大きさ等により適宜設定することができる。例えば、ヒトの下肢の血管新生を目的とする場合、本発明の徐放性製剤に担体として含まれるアガロースハイドロゲルの乾燥重量1mg当り、0.1μg〜10mg、好ましくは0.2〜100μgが例示される。
本発明の徐放性製剤は、bFGF及び/又はその同族体を担持させたアガロースハイドロゲルそのものであってもよい。この場合、本発明の徐放性製剤は、減圧乾燥製剤又は凍結乾燥製剤であることが好ましい。
あるいは、本発明の徐放性製剤は、さらに医薬上許容されうる担体を含有するものであってもよい。医薬上許容されうる担体としては、本発明の徐放性製剤が注入可能な製剤である場合には、注射用精製水、生理食塩水、緩衝液(例、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液)などの媒体があげられ、さらに必要に応じ、分散剤、界面活性剤、等張化剤、pH調整剤、無痛化剤、安定化剤、保存剤、着色剤などを用いてもよい。
また、本発明の徐放性製剤は、bFGF及び/又はその同族体を担持させたアガロースハイドロゲルと、医薬上許容されうる担体とを別々の容器に格納したキットの形式であってもよい。
本発明の徐放性製剤は、生体内に投与した場合、有効成分であるbFGF及び/又はその同族体が長期に亘って持続的に放出されるものであることから、bFGFの作用効果が期待される様々な治療用途に用いられうる。治療用途としては、bFGFの公知の用途が限定なくあげられ、例えば、血管新生促進、組織再生、創傷、骨疾患、歯周疾患、軟骨疾患が例示されるが、ゼラチン徐放性製剤と同等の効果が発揮される血管新生促進又は組織再生が好ましい。
本発明において、血管新生促進及び/又は組織再生により症状が改善されることが期待される疾患としては、血管閉塞性疾患及び該血管閉塞に伴う虚血性疾患全般であり、具体的には、慢性動脈閉塞性疾患一般であり、例えば、閉塞性動脈硬化症、バージャー病、糖尿病性壊疽、心筋梗塞、狭心症などが挙げられる。
また、本発明の徐放性製剤は、当該徐放性製剤を血管新生促進又は組織再生に使用することができること又は使用すべきであることを記載した当該徐放性製剤に関する記載物を共に含む商業パッケージとしても提供することができる。
本発明の徐放性製剤の製造方法は、塩基性線維芽細胞増殖因子及び/又はその同族体とアガロースハイドロゲルを使用することを特徴とする。以下、製造方法について詳述する。
アガロースハイドロゲルの調製方法
アガロースハイドロゲルは、一般的には、アガロースと水を混合し、加熱してアガロースを溶解した後、成型、冷却することによって調製される。アガロースの濃度は、溶液がゲル化する濃度以上であって、ゲルからのbFGFの放出速度を制御しうる濃度であればよく、通常、0.5〜10w/v%であり、好ましくは1〜5w/v%である。加熱条件は、通常90〜120℃程度であり、常圧下で加熱又は高圧蒸気滅菌により行うことができる。加熱時間はアガロースが完全に溶解するまでの時間であれば特に限定されない。
溶解したアガロースの成型及び冷却は、アガロース水溶液を所望の形状の鋳型に流し込み、室温で一定時間放置するか、0〜10℃程度の冷蔵庫内又は氷上にて冷却することによりゲル化され、鋳型の形状に応じて成型される。成型されたゲルをさらに、所定の大きさに切断することも可能である。ペースト状のアガロースハイドロゲルも同様の方法で調製することができる。
粒子状のアガロースハイドロゲルの調製方法
粒子状のゲルの調製法としては、例えば、Emulsification/internal gelation法、すなわち、上記のようにして溶解したアガロース溶液を加温した油相に加え、攪拌してW/Oエマルションとする方法などが挙げられる。
用いられる油としては、ヒマシ油、オリーブ油、大豆油、綿実油、テレビン油などがあげられる。油の加温条件としては、通常、40〜80℃である。80℃を超えると、ゲルの凝集が起こりやすくなる。攪拌条件としては、200〜2000rpmが例示され、ゲルの粒子サイズの微調整が可能なことから、1200〜1800rpm程度が好ましい。また、油の粘度と得られるゲルの平均粒子径との関係は、ヒマシ油等の粘度が高い油を用いると平均粒子径の小さいゲルが得られ、テレビン油等の粘度が低い油を用いると平均粒子径の大きいゲルが得られる傾向がある。また、油の粘度を約10〜20mPa・s(60℃で、E型回転粘度計を用いて測定した値)の範囲に設定した場合、攪拌条件の影響を受けずに数十μmの平均粒子径のゲルを安定して得ることができる。また、アガロース溶液の粘度と油の粘度との差もゲルの平均粒子径に影響する。
その後、ゲル溶液の分散状態を保つため、攪拌を続けながらエマルションを冷却する。アセトン、エタノール、酢酸エチル等の有機溶媒を加えて粘度を下げた後に吸引ろ過により油相から粒子を分離し、アセトン、エタノール、酢酸エチル等の有機溶媒で洗浄してゲル粒子を採取する。
上記のようにして得られたアガロースハイドロゲルは減圧乾燥又は凍結乾燥させることができる。凍結乾燥は、風乾させたゲルを−20℃で1時間凍結させた後に凍結乾燥機で1〜3日間乾燥させることにより行う。
上記のようにして調製したアガロースハイドロゲルにbFGFを担持させるには、bFGF水溶液をアガロースハイドロゲルに滴下して含浸させるか、アガロースハイドロゲルをbFGF水溶液中に懸濁して再吸水させる。
アガロースハイドロゲルに担持させることができるbFGFの量は、アガロースハイドロゲル乾燥重量1mg当たり0.1μg〜10mgであり、0.2〜100μgが好ましい。
なお、徐放期間、bFGFの放出量等は、アガロースハイドロゲルの含水率、用いたアガロースの物性、製剤に担持されるbFGFの量、投与される部位などの種々の条件により異なるが、当業者であれば、本発明に開示された記載を考慮して適宜条件設定をすることができる。
上記のようにして得られた本発明の徐放性製剤は、凍結乾燥することもできる。凍結乾燥する場合には、例えば、液体窒素中で30分以上又は80℃で1時間以上凍結させた後に、凍結乾燥機で1〜3日間乾燥させることにより行う。
本発明の徐放性製剤を注入可能な製剤とする場合には、注射用精製水、生理食塩水、緩衝液などの媒体に適宜懸濁する。緩衝液としては、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液などがあげられる。さらに必要に応じ、注射可能な製剤の製造に通常使用される、分散剤、界面活性剤、等張化剤、pH調整剤、無痛化剤、安定化剤、保存剤、着色剤などを適宜配合することができる。
本発明の徐放性製剤は、ヒトのみならずその他の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、サル等)にも投与可能である。
本発明の徐放性製剤の投与方法は、特に限定されないが、治療対象部位への局所投与が好ましい。例えば、18〜27G程度の太さの注射針を取り付けた注射筒で本発明の徐放性製剤を適量取り、治療対象部位へ筋肉内投与、皮下投与、静脈内投与する方法等があげられる。また、簡易型注射器具のようなキット製品のリザーバー部分に予め本発明の徐放性製剤を充填しておき、投与することも可能である。
本発明の徐放性製剤の投与量は、対象や重症度、対象の体重や年齢等により適宜変更することができるが、一般的には、ヒトの場合には、bFGF及び/又はその同族体量で1箇所の処置部位に対して1回の処置あたり、10μg〜10mgが例示される。投与回数は症例、1回の処置あたりの投与量にもよるが、通常1〜2回程度から数回が好ましい。
以下に実施例を用いて本発明を詳述するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
すべての定量データは、平均±標準誤差(SEM)で表わした。統計学的解析は、SPSSバージョン10.0 (SPSS Inc)を用いる片側Student's t-検定により行った。p<0.05の値を有する差を有意とみなした。
実施例1 bFGFを担持した円柱状アガロースハイドロゲルの調製
アガロースハイドロゲルは、以下のようにして調製した。アガロース(Agarose 1500、和光純薬製)0.3gを水9.7mLに混合し、30分間室温で撹拌した。撹拌後、90℃に加熱し完全に溶解した。得られたアガロース溶液1gを型(1.5mLのマイクロチューブ)に注ぎ、室温まで冷却してゲルを調製した。得られたゲルを、24時間凍結乾燥した。凍結乾燥したアガロースゲルを、直径5mm、高さ7mm、重さ約10mgに切断し、bFGF(トラフェルミン(遺伝子組換え)、科研製薬製)の水溶液(0.1mg/mL)20μLを加えて混合することで、bFGFを担持した円柱状アガロースハイドロゲルを得た。
実施例2 粒子状アガロースハイドロゲルの調製
粒子状アガロースハイドロゲルは、Emulsification/internal gelation法に基づき図1に示した方法で調製した。アガロース0.3gに水を加えて10gとし、115℃の油浴中で加熱して完全に溶解し、3%アガロース溶液を調製した。得られたアガロース溶液を予め60℃に加温した油相200mL中に加え、メカニカルスターラーを用いて10分間攪拌しw/oエマルションを調製した。ゲル溶液の分散状態を保つために攪拌を続けながらエマルションを氷浴中で冷却し、ゲル粒子を得た。アセトンを加えて粘度を下げた後に吸引ろ過により油相からゲル粒子を分離し、アセトンで洗浄してゲル粒子を採取し、凍結乾燥を行うことにより溶媒を完全に除去した。
凍結乾燥後のアガロース粒子の形状を図2Aに、水に分散後のアガロース粒子の形状を図2Bに、粒子径の分布を図2Cにそれぞれ示した。水和前後のアガロース粒子は滑らかな表面を持つ球状であった(図2A、B)。水和後のアガロース粒子の平均サイズは、47.0μmであり、注射製剤として使用可能である。実際、当該アガロース粒子の懸濁液は、29G針を容易に通過した。
比較例1 粒子状ゼラチンゲルの調製
40℃に加温したオリーブ油250mLに予め調製した10%ゼラチン水溶液25gを加え、10分間攪拌しw/oエマルションを調製した。ゲル溶液の分散状態を保ちながらエマルションを氷浴中で冷却してゲル化させ、吸引ろ過により油相から粒子を分離した。アセトンで洗浄し、風乾させて乾燥粒子を得た。得られた乾燥粒子を篩過し、粒子径が32〜75μmのものを用いて、次に示すように架橋を行った。Tween80を0.1%含む2%グルタルアルデヒド水溶液に乾燥粒子を分散させ氷浴中で1時間攪拌した後、4℃で23時間静置した。続いて遠心分離により得た粒子を10mMグリシン水溶液中で1時間攪拌して未反応のグルタルアルデヒドを除去した。得られた架橋粒子を0.1%Tween80水溶液で2回洗浄した後、凍結乾燥して架橋ゼラチン粒子を得た。
製造例1 各種微粒子担体へのbFGFの封入
実施例2及び比較例1で調製した粒子状凍結乾燥ハイドロゲルをそれぞれ、マイクロチューブに2mg(乾燥重量)量り取り、2.5mg/mL(又は0.1mg/mL)のbFGF(科研製薬製)水溶液20μLを滴下し、25℃で1時間静置させることによりbFGFを50μg(又は2μg)各種微粒子担体に封入した。
試験例1 bFGF保持性
実施例1で得られた円柱状アガロースゲル10mg(bFGFを2μg担持)及び製造例1で得られた粒子状アガロースゲル2mg(bFGFを2μg担持)について、bFGFの保持性を検討したところ、いずれも98%前後の高い保持性を示した(図3)。これにより、bFGFの吸着後、bFGFはアガロース粒子中に安定して保持されることが示された。
また、粒子状アガロースゲル2mgに対しbFGFを2μg又は50μg封入して保持性を検討したところ、初期放出率に違いは見られるもののその後の放出はいずれにおいても殆どなく、24時間後においても95%以上という高い保持率を示した(図4)。本実施例で用いたアガロースは、1,3位で結合したβ-d-ガラクトピラノース及び1,4位で結合した3,6-アンヒドロ-α-l-ガラクトピラノースの繰り返し構造からなるが、β-d-ガラクトピラノースの2位及び6位に少量のスルホン酸エステル、硫酸エステル、ピルビン酸ケタール、カルボキシル基などが存在するためにアガロースハイドロゲルはごく弱く陰性を帯びている。このことから、初期放出はうまくアガロース微粒子担体に吸着又は取り込まれなかったbFGFの放出によると考えられ、残りのbFGF分子は電気的相互作用によりアガロース微粒子担体に強く保持されているのではないかと推察された。また、アガロース微粒子担体とゼラチン微粒子担体のbFGFの保持性を比較したところ、両者とも95%以上の保持率を示した。in vivoでは、注入されるハイドロゲルの懸濁液の量は、可能な限り小さいほうがよい。95%以上というbFGFの保持量は、他に報告された実験例に比べ高く、in vivoにおいて許容されやすいであろう。
(アガロース粒子の粒径に作用する因子)
アガロース粒子の粒径に作用し得るパラメーターとしては、回転速度、油の温度及び粘度があげられる。回転速度及び冷却前の油温度の、平均粒子径に対する影響の結果を表1に示す。
回転数を1200rpmから1800rpmに増加すると、平均粒子径は減少した。攪拌中に油温度を40℃から80℃に変化しても、平均粒子径に影響はなかった。温度が80℃を超えると、水中のアガロース粒子の湿潤性が低下し、凝集することもあった。温度が高くなると、アガロース分子の疎水性部がアガロース粒子の表面に現れるようである。
平均粒子径への油粘度の作用を表2に示す。ハイドロゲル粒子の調製に用いた油の粘度の測定は、RE80U(東機産業株式会社)粘度計で行った。測定はすべて60℃で行った。使用したずり速度は、200s-1 (ヒマシ油)及び383s-1(その他)であった。
粘度が1.0mPa・s未満のテレビン油を用いると、アガロース粒子の粒径は600μmより大きくなった。該粒子は、球状ではなく塊であった。粘度が他の油よりも大きいヒマシ油を用いた場合、最も小さいアガロース粒子が得られた。しかしながら、粘度が16.5から19.2mPa・sの範囲であるオリーブ油、大豆油及び綿実油では、粘度と粒径との間に明確な関係性は見られなかった。油相と水相の間の粘度の違いが大きいほど、ミクロスフェア径が大きくなるということが知られているため、粘度差も表2に示す。しかし、粘度差と平均粒子径との間に明確な関係は観測されなかった。
以上の結果より、油とアガロース溶液の粘度は粒径に大いに作用することが示された。以前に報告されたように、ゲル化工程中の位相体積と界面張力における変化に加え、粘度の連続した変化も、粒径を予測することを困難にしている。
試験例2 慢性虚血肢モデルでの徐放性製剤の効果
以下に虚血モデルとして慢性虚血肢のマウスモデルを使用した試験例を示して詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定されるものではない。本発明者らは、bFGF封入アガロース粒子の治療の有効性をbFGF封入ゼラチン粒子の有効性と比較した。
実験動物を用いる研究は、千葉大学動物管理利用委員会で許可され、国立衛生研究所(NIH)ガイドラインを遵守した。
(実験手法)
動物モデルとして、体重15〜18gの生後6週齢の雌性C57BL/6Jマウス(日本SLC)を用いた。ペントバルビタールナトリウム(60mg/kg腹腔内投与)で麻酔し、皮膚の切開後、左大腿動脈とその分枝を6−0絹縫合糸(直径約0.08mm)で結紮した。次いで、外腸骨動脈と前記の全動脈を結紮した。左大腿動脈を、外腸骨動脈の分岐としてその近位源から膝窩動脈と伏在動脈に分岐する位置まで切除した。
動物モデルでの成功にも関わらず、ヒトの無作為化臨床試験ではいくつかの血管新生因子の成功率が低かった。ヒトでの成功に至らなかったことは、多元的要因があると思われるが、1つの理由は、現在の実験モデルが正確にヒトの慢性的動脈硬化による動脈の閉塞、換言すれば、慢性の虚血を反映していないためであると思われる。現在使用されている肢虚血の実験モデルは、急性の虚血モデルである。本発明者らは、慢性後肢虚血モデルは急性後肢虚血と比較すると、より多数の側副動脈、より多くの血流、より少ない壊死と炎症を発現しているであろうと仮定した。そこで、本発明者らは、虚血処理後2週間放置したマウスを慢性の虚血肢モデルとして使用した。
手術後14日の虚血肢マウスを無作為に以下の7群に分けた:処理なしの対照群(o0)、50μgのbFGFを含有するか、もしくは含有しない生理食塩水を筋肉内投与した群(n50、n0)、50μgのbFGFを担持するか、もしくは担持しないゼラチンハイドロゲル粒子を筋肉内投与した群(g50、g0)、50μgのbFGFを担持するか、もしくは担持しないアガロース粒子を筋肉内投与した群(a50、a0)。
(レーザードップラー式血流計(LDPI)による測定)
血管新生の効果を評価するために、レーザードップラー式血流画像化(LDPI)装置(Moor Instruments製)を用いてマウス虚血肢モデルの皮下の血流を測定した。光及び温度等の影響を最小にするため、LDPI指数を右肢血流(非虚血)に対する左肢血流(虚血)の比として表した。図5は、bFGF封入ハイドロゲル粒子の虚血肢への筋肉注射後のレーザードップラーによる血流量の測定を示す。生理食塩水群(n50)では、肢の血流に著しい増加は見られなかった。ゼラチン群(g50)では、術後35日目に明らかな増加が観測された。アガロース群(a50)では、bFGFを含まない群との比較において、顕著な肢血流の増加が観測された。
(毛細血管密度及び細動脈密度の評価)
処置後3週間(手術後35日目)、すべてのマウスを犠牲死させた。虚血肢検体を回収し、ホルマリンで固定し、パラフィンに包埋して4μmの厚さの切片を作製した。組織切片をヘマトキシリン−エオジンで染色し、組織学的に解析した。毛細血管密度及び細動脈密度の評価のため、組織切片を、内皮細胞マーカーである抗フォン・ヴィレブランド因子(vWF)抗体(DAKO Corp製)、及び平滑筋マーカーである抗α平滑筋アクチン(αSMC)抗体(Sigma Aldrich製)でそれぞれ染色した。結果を表3に示す。
また、前記切片を、加湿したチャンバー内で室温で一晩、抗核内増殖抗原(PCNA)(1:100 希釈、サンタクルーズバイオテクノロジー社)で染色した。細胞増殖活性は、手術後35日目でのPCNA免疫染色により評価した。結果を図6に示す。
表3より、50μgのbFGFを含有する群(n50、g50及びa50)とbFGFを含有しない群との比較において、毛細血管密度の顕著な増加が見られた。これは、αSMA免疫染色での細動脈密度の定量化においても確認された。a50群の虚血領域でのαSMA免疫染色ポジティブ細動脈の数は、n50群におけるよりも多かった。
図6Aに示すように、bFGFを担持するアガロースハイドロゲル粒子は、多数のPCNA陽性紡錘型細胞に取り囲まれていた。前記細胞は、筋肉繊維内に移動していた。このことは、アガロースハイドロゲル粒子から成長可能なbFGFが放出され、細胞増殖していることを示唆する。一方では、図6Bに示すように、bFGFを担持しないアガロースハイドロゲル粒子は、小さい炎症型細胞に取り囲まれ、単に筋肉繊維に移動するだけの小数のPCNA陽性紡錘型細胞に取り囲まれていた。このことは、アガロースハイドロゲル単独では細胞増殖活性が非常に低いことを示唆する。
これらの結果により、50μgのbFGFを含有するアガロース粒子は、50μgのbFGFを含有するゼラチンハイドロゲル粒子と同等以上に血管新生を促進することが示された。
アガロースはゼラチンのように生分解され得ないので、bFGF放出機構は異なるであろうが、bFGF担持アガロース粒子の治療効果は、bFGF担持ゼラチンハイドロゲル粒子に匹敵する。また、アガロース粒子の調製は、ゼラチン粒子の調製におけるグルタルアルデヒド等での架橋工程を要さないため、製造工程上有利である。アガロースハイドロゲル粒子は、臨床に用いられ得るbFGFの担体候補である。
本発明の徐放性製剤は、ゼラチン製剤と同等のbFGFの担持性および徐放性、並びに血管新生作用を示し、かつ植物由来で安全性に優れているので、血管新生促進、組織再生をはじめとして、bFGFが治療効果を有する疾患の治療剤として極めて有用である。
本出願は、日本で出願された特願2007−094703(出願日:平成19年3月30日)を基礎としており、その内容はすべて本明細書に包含されるものとする。また、本明細書中であげられた特許明細書を含む全ての刊行物に記載された内容は、本明細書での引用により、その全てが明示されたと同程度に本明細書に組み込まれるものである。

Claims (8)

  1. 塩基性線維芽細胞増殖因子及び/又はその同族体を担持させたアガロースハイドロゲルを含有してなる徐放性製剤。
  2. アガロースハイドロゲルがアガロースのみから調製されるものである、請求項1記載の製剤。
  3. アガロースハイドロゲルが粒子状である請求項1又は2に記載の製剤。
  4. 吸水したときの粒子の平均粒子径が1.0〜1000μmである、請求項3に記載の製剤。
  5. アガロースハイドロゲルの乾燥重量1mg当り、0.1μg〜10mgの塩基性線維芽細胞増殖因子及び/又はその同族体が担持されたものである、請求項1〜4いずれか1項に記載の製剤。
  6. 血管新生促進又は組織再生に用いられる、請求項1〜5いずれか1項に記載の製剤。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の徐放性製剤を製造するための、塩基性線維芽細胞増殖因子及び/又はその同族体とアガロースハイドロゲルの使用。
  8. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の徐放性製剤、及び当該徐放性製剤を血管新生促進又は組織再生に使用することができること又は使用すべきであることを記載した当該徐放性製剤に関する記載物を含む商業パッケージ。
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