JP3085980B2 - 光輝焼鈍仕上型内面高平滑ステンレス鋼管およびその製造方法 - Google Patents

光輝焼鈍仕上型内面高平滑ステンレス鋼管およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 技術分野 本発明は、半導体製造装置用のクリーンパイプなどと
して好適な光輝焼鈍仕上型(Bright Annealing仕上:BA
タイプ)の内面高平滑ステンレス鋼管およびその製造方
法に関する。
背景技術 クリーンパイプは、その製造方法により、冷間引抜き
で仕上げた後光輝熱処理する光輝焼鈍仕上型と、さらに
光輝焼鈍仕上された鋼管の内面を電気化学研磨で平滑に
仕上げる電解研摩仕上型(Electric Polishing仕上:EP
タイプ)などに分類される。
クリーンパイプの内面粗さは、管内面からの不純物、
微細パーティクルの発生や水分の放出の密接な関係があ
ることは周知であり、高いクリーン度が要求される装置
では、パーティクルや不純物の発生を低減するため、内
面粗さを小さく仕上げた高価な電解研摩仕上型のクリー
ンパイプが使用されている。
従来、内表面平滑管を製造する際には、管材を冷間で
プラグ引きする方法が用いられてきた。冷間プラグ引き
とは、図10に示すように円孔を有する固定ダイス86とプ
ラグ81で管材85の内外表面を拘束し、管材85の出側の一
端をチェック(図示せず)して冷間で引抜く加工法であ
る。工具(ダイス86とプラグ81)と管材85との間の潤滑
法には、主に化成処理潤滑と油潤滑があるが、高平滑な
内外表面を得る場合には潤滑被膜の薄い油潤滑が用いら
れる。
さらに高平滑な内表面が要求されるクリーンパイプな
どの管材に対しては、上記の方法で冷間プラグ引きした
管材に電気化学研磨などの高平滑化処理を施す。
代表的な冷間プラグ引抜き法には、図10に示すよう
に、用いるプラグが異なる2種類の方法がある。
図10(a)はプラグの外径が一定の円筒プラグ81を用
いる方式である。円筒プラグ81にはプラグ支持棒87が連
結されている。この方式は、比較的寸法の大きな管を製
造する場合に用いられている。
図10(b)はフローティングプラグ28を用いる方式で
あり、プラグ形状とプラグの支持方法に特徴がある。図
示するように、フローティングプラグ82はテーパを有
し、そのプラグテーパ角2βはダイス面角2αより小さ
い。
そのため、フローティングプラグ82に働く力として
は、引抜き方向への摩擦力の他に、プラグテーパ面に引
抜き方向と逆方向に押戻し力が付加されることになり、
これらの摩擦力と押戻し力が相殺されて均衡する。した
がって、図10(a)に示す円筒プラグ方式の場合のよう
なプラグ支持棒87が不要であり、もし作業性のために支
持棒をつけたとしても、支持棒にはほとんど力が作用し
ないことになる。
フローティングプラグは上記の特徴を有しているた
め、特に小径管の引抜きでは、このプラグを用いる方式
が一般的に使用されている。しかし、このプラグを用い
る場合、管材の内外表面に施した潤滑被膜の状態や引抜
き力によってプラグの釣合い位置が変化する。プラグの
釣合い位置の変化は管材の引抜き作業性を著しく阻害す
ることになるので、これらの改善に関する提案がなされ
ている。例えば、特開昭63−72419号公報には、引抜き
中にプラグの平行面に掛かる摩擦力とプラグテーパ面に
かかる押戻し力とをバランスさせて、プラグをダイスの
適正位置に保持する方法が開示されている。
図11は、上記管材の引抜きの際に用いられるプラグの
形状と引抜き方法を説明する縦断面図である。図示する
ように、プラグ111には一定の外径を有する平行面112
と、引抜き方向と反対方向に小径となる第1テーパー面
113と、これと連続して大径となる第2テーパー面114と
が形成されているので、引抜きによって平行面112にか
かる力と第2テーパー面114にかかる力とを釣り合わす
ことができて、プラグ111をダイス115の適正位置に保持
することができる。
上記の従来の冷間プラグ引きによる管内面粗さは、SU
S304の外径6mmφ×肉厚1mmのクリーンパイプを製造する
場合を例にとると、Rmaxで最小1.1μm程度が限界であ
り、それより小さくすることは困難である。また、特開
昭63−72419号公報で開示された方法であっても、プラ
グを適正位置に保持するには、第1テーパー面113での
入側と出側の外径差を10分の数mm程度とかなり大きくす
る必要がある。第1テーパー面113に大きな外径差があ
ると、通常の油潤滑では焼付きが発生するので、耐焼付
き性に優れた化成処理潤滑を施すことが必要となる。し
かし、後述するように、化成処理潤滑を施すと、その潤
滑被膜が厚いため引抜き後の管材の内面粗さが大きくな
り、しごき加工を加えても内面粗さをRmaxで1.0μm以
下にすることができない。したがって、内面粗さがRmax
で1.0μm以下を要求される管材を得るには、前述のよ
うに冷間プラグ引きの後、さらに電気化学研磨などの高
平滑化処理が必須である。そのために製品価格は極めて
高価となり、通常の冷間プラグ引き管の約4倍となる。
冷間プラグ引きの際に管内面に特殊な効果を与えるた
めに特定の形状のプラグを用いる方法として、いくつか
の公知技術がある。
例えば、特公昭62−7244号公報には、ステンレス鋼管
の水蒸気酸化対策を目的として、管内面に加工硬化層を
形成するために、特殊形状のプラグを用いて加工する方
法が示されている。
図12は、上記加工の際に用いる突起部を有するプラグ
の形状と、これを用いる引抜き方法を示す側面図および
縦断面図である。(a)および(b)は引抜加工の状況
を示す図、(c)はプラグの側面図である。これは、図
示するようなプラグ突起部94とプラグ支持棒97を備えた
プラグ91を用いて管材95の内径を拡げることで、管材95
の内面表層に加工硬化層を形成するものである。この方
法は加工硬化層の形成が目的であって、得られる内表面
粗さはRmaxで18〜25μmと極めて大きい。さらに、この
方法では管材95の外面を拘束せず加工するため、後述す
る実施例の一部と同様に、Rmaxで1μm以下の内面粗さ
を達成することは不可能である。
別の従来の加工方法として図13に示す方法も用いられ
ている。図13は、従来の管内径を拡大するためのプラグ
の形状と、これを用いる引抜方法を示す一部破断側面図
および縦断面図である。この方法は、シリンダ用鋼管等
の管内面の寸法精度(特に内径真円度)の向上を狙った
ものである。
図13に示すように、支持棒107を連結したプラグ101
に、その径の大きさが引抜き出側に向けて緩やかに大き
くなるようなテーパを付し、このプラグ101とダイス106
により管材105の内径を拡大するとともに、管材105の内
径真円度の向上を図るものである。しかし、この方法で
は内径拡大が緩やかに行われるため、後述する管材内表
面のしごき効果、すなわち内表面層の剪断塑性変形層の
形成が小さく、クリーンパイプに必要な高平滑の内面性
状は得られない。
図示するように、プラグ101は出側に向かい緩やかに
径が大きくなっているが、管材105の肉厚加工部分につ
いて言えば、図10(a)と図10(b)に示す従来の通常
のプラグにおける肉厚加工と大差がなく、この形状のプ
ラグでは内径真円度向上は達成できるものの、内面粗さ
の改善はできないのである。
発明の開示 本発明の目的は、管内面粗さがRmaxで1.0μm以下の
光輝焼鈍仕上型内面高平滑ステンレス鋼管とその製造方
法であって、冷間プラグ引きの後、さらに電気化学研磨
などの内面高平滑化処理を必要としない低コストの光輝
焼鈍仕上型内面高平滑ステンレス鋼管の製造方法を提供
することにある。
本発明の要旨は、次の(1)の光輝焼鈍仕上型内面高
平滑ステンレス鋼管と(2)〜(4)のその製造方法に
ある。
(1) 内面粗さがRmax1.0μm以下であることを特徴
とする光輝焼鈍仕上型内面高平滑ステンレス鋼管。
(2) ダイスと円筒プラグとによって管を冷間引抜き
した後、光輝熱処理してクリーンパイプを製造する方法
において、プラグ後部の仕上部の一部にリング状の突起
部を有する前記のプラグを用い、このリング状の突起部
の入り側段差部がダイスのベアリング部(仕上げ平行
部)の区間内に入る状態を維持しながら冷間引抜きし、
その後光輝熱処理することを特徴とする内面粗さがRmax
で1.0μm以下である光輝焼鈍仕上型内面高平滑ステン
レス鋼管の製造方法。
(3) ダイスとフローティングプラグとによって管を
冷間引抜きした後、光輝熱処理してクリーンパイプを製
造する方法において、プラグ後部の仕上部の非テーパー
部とこれに連続するリング状の突起部を有する前記のプ
ラグを用い、このリング状の突起部の入り側段差部がダ
イスのベアリング部(仕上げ平行部)の区間内に入る状
態を維持しながら冷間引抜きし、その後光輝熱処理する
ことを特徴とする内面粗さがRmaxで1.0μm以下である
光輝焼鈍仕上型内面高平滑ステンレス鋼管の製造方法。
(4) ダイスとフローティングプラグとによって管を
冷間引抜きした後、光輝熱処理してクリーンパイプを製
造する方法において、プラグのテーパ部の肉厚加工部に
リング状の凹部を有する前記のプラグを用いて冷間引抜
きし、その後光輝熱処理することを特徴とする内面粗さ
がRmaxで1.0μm以下である光輝焼鈍仕上型内面高平滑
ステンレス鋼管の製造方法。
図面の簡単な説明 図1は、突起部を有する段付き円筒プラグの形状と、
これを用いる引抜き方法を示す一部破断側面図および縦
断面図であり、図2は、突起部を有する段付きフローテ
ィングプラグの形状と、これを用いる引抜き方法を示す
一部破断側面図および縦断面図である。
図3は、突起部を有する段付きフローティングプラグ
を用いて引抜く場合の、内面粗さRmaxの推移を示す図で
ある。また、図4は、突起部を有する段付きフローティ
ングプラグを用いて引抜く場合の、管材内面がプラグか
ら離れたときの状態を示す縦断面図である。
図5は、凹部付きフローティングプラグの形状と、こ
れを用いる引抜方法を示す側面図および縦断面図であ
る。(a)は全体図、(b)はA部(凹部と肉厚加工
部)の拡大図である。図6は、凹部付きフローティング
プラグを用いて引抜く場合の、内面粗さRmaxの推移を示
す図である。
図7は、実施例で用いた突起部を有する段付き円筒プ
ラグの寸法と形状およびこれを用いる引抜方法を示す一
部破断側面図および縦断面図であり、図8は、実施例で
用いた突起部を有する段付きフローティングプラグの寸
法と形状およびこれを用いる引抜方法を示す一部破断側
面図および縦断面図である。一方、図9は、実施例で用
いた凹部付きフローティングプラグの寸法と形状を示す
側面図である。(a)は全体部、(b)はA部(凹部と
肉厚加工部)の拡大図である。
図10は、従来のプラグの形状と、これを用いる引抜方
法を示す一部破断側面図および縦断面図である。ここ
で、(a)は円筒プラグ、(b)はフローティングプラ
グである。また、図11は、従来の管材の引抜きに用いら
れたフローティングプラグの形状と引抜き方法を説明す
る縦断面図である。さらに、図12は、従来の突起部を有
するプラグの形状と、これを用いる引抜方法を示す側面
図および縦断面図である。ここで(a)および(b)は
引抜加工の状況、(c)はプラグの側面図である。
図13は、従来の管内径を拡大するためのプラグの形状
と、これを用いる引抜方法を示す一部破断側面図および
縦断面図である。
図14は、突起部を有する段付きプラグのうち円筒プラ
グを用いた場合の内面粗さを測定した結果を示す図であ
り、図15は、フローティングプラグを用いた場合の内面
粗さを測定した結果を示す図である。
図16は、突起部を有する段付フローティングプラグに
ついて、プラグ突起部の段差部の角度γが内面粗さに及
ぼす影響を調査した結果を示す図である。また、図17
は、突起部を有する段付円筒プラグと段付フローティン
グプラグとについて、プラグ突起部の平行部長さE2とプ
ラグコーティング有無の影響を調査した結果を示す図で
ある。
図18、図19は、凹部付きフローティングプラグを用い
る場合に凹部深さΔdとE3とを変化させたときの内面粗
さをで測定した結果を示す図である。また、図20は、凹
部付きフローティングプラグを用いる場合に角度θが内
面粗さに及ぼす影響を調査した結果を示す図である。
発明を実施するための最良の形態 加工された金属表面の粗さを小さくする方法として、
工具表面の粗さを小さくすること、および潤滑被膜の薄
い潤滑油を用いることは周知である。本発明者らは、上
記の周知技術に加えてさらに、表面の平滑な(粗さの小
さい)工具で、被加工材の表面、すなわち管材の内表面
層にしごき加工を与え、ここに剪断塑性変形を集中させ
ると、剪断塑性変形が被加工材の表層部に集中して被加
工材の表面が工具面になじみ、その結果表面粗さが一層
小さくなるという新知見を得て本発明をなした。
本発明の方法の狙いは、冷間引抜き加工のみで管内表
面の粗さを小さくすることである。そのためには、管内
表面層に剪断塑性変形を集中させるような「しごき加
工」を加えることが必要である。本発明方法における
「しごき加工」を加える方法には、第1の製造方法とし
て突起部を有する段付きプラグを用いる場合(前記
(2)および(3)に記載の製造方法)と、第2の製造
方法として凹部付きのフローティングプラグを用いる場
合(前記(4)に記載の製造方法)とがある。
以下に、本発明の内面高平滑ステンレス鋼管およびそ
の製造方法の作用効果を説明する。
1.光輝焼鈍仕上型内面高平滑ステンレス鋼管の内面粗さ 本発明の内面高平滑ステンレス鋼管の内面粗さを、Rm
axで1.0μm以下に限定した理由について説明する。
従来の引抜法では、内面粗さはRmaxで1.1μm程度が
限界であり、1.0μm以下に仕上げることは不可能であ
る。そのため、冷間引抜で仕上げたステンレス鋼管で
は、内面粗さがRmaxで1.0μm以下のものは存在しなか
った。現在の工業技術レベルではプラグ表面の粗さはRm
axで0.1μm程度が限界であり、理論的には管材の内面
粗さをこの程度まで向上させることができるが、実際に
は0.3μmが限界である。しかし、プラグ表面の粗さをR
maxで0.1μm以下に仕上げることが可能になれば、得ら
れる管材の内面粗さをさらに小さくすることができる。
一方、内面粗さが、Rmaxで1.0μmを超えると、所望の
微細パーティクルや不純物の低減が達成できない。
2.第1の製造方法(突起部を有する段付きプラグを用い
る場合) 図1は、突起部を有する段付き円筒プラグの形状と、
これを用いる引抜方法を示す一部破断側面図および縦断
面図である。
本発明の第1の製造方法では、冷間プラグ引きで管内
表面に剪断塑性変形を集中させるために、円筒プラグの
場合には図1のように、プラグ支持棒17を連結した円筒
プラグ11の後半に外径を大きくしたリング状の突起部
(以下、単に突起部という)14を設け、管材15の内表面
にしごき加工を与える。すなわち、ダイス16の仕上げ平
行部(ベアリング部)19の長さLの区間において、ダイ
ス16と円筒プラグ11とで肉厚加工ののち、さらに円筒プ
ラグ11の突起部14によって所定の肉厚加工量Δhを与え
る。
この時、管材15の内面に接し、肉厚加工量Δhを管材
15に与えるのは、突起部14の入側の段差部18である。こ
の段差部18が、引抜き中にダイス16の仕上げ平行部(ベ
アリング部)19の長さLの中に入っている状態、すなわ
ち管材15の外径が拘束された状態で肉厚加工量Δhを与
えることにより、剪断塑性変形を内表面に集中させ、内
表面粗さの改善効果を大きくすることができる。この結
果、内面粗さをRmaxで1.0μm以下とすることができ
る。
突起部14の段差部18がベアリング部19内にあると、管
材15の突起部14でしごき加工を受ける前に、管材15の外
径、肉厚がダイス16と円筒プラグ11により決定されるの
で、肉厚加工量Δhは母管の偏肉や真円度に影響を受け
ることなく一定となり、引抜き後の内面粗さのばらつき
が小さくなる。しごき加工後(段差部18より出側)で
は、管材15の内外径が一定に保たれ肉厚加工が行われな
いため、円筒プラグ11と管材15の内面の間の焼付きも発
生しない。
この段差部18がベアリング部19を外れ、出側に位置す
ると、管材15は外径が拘束されないため、肉厚加工量Δ
hの一部は管材15の外径拡がり等に吸収される。その結
果、内面粗さの改善効果が外径を拘束された場合よりも
大幅に小さくなり、Rmaxを1.0μm以下とすることがで
きない。また、肉厚加工量Δhを大きくして肉厚加工量
を増加させ、内面粗さの改善効果を上げようとすると、
円筒プラグ11と管材15の内面の間に焼付きが発生する。
段差部18がベアリング部19を外れ入側に位置すると、
管材15は段差部18でしごき加工を受けた後、さらにそれ
より出側でその外径がダイス16で縮径され、内径がプラ
グ11で一定に保たれることで、肉厚加工を受けることに
なる。段差部18でのしごき加工時には、プラグ11の表面
と管材15の内面との管の潤滑油量が減少し、潤滑油の膜
厚が薄くなりすぎて、部分的に油膜切れが生じる。この
ため、しごき加工後に管財15に肉厚加工を加えると焼付
きが発生する。上記の理由で、段差部18がベアリング部
19から入側に外れると、内面粗さをRmaxで1.0μm以下
とすることができない。
上記の突起部14のダイスベアリング部19に対する相対
位置は、円筒プラグ11の場合はプラグ支持棒17などの長
さ調整で設定することができる。
図2は、突起部を有する段付きフローティングプラグ
の形状と、これを用いる引抜方法を示す一部破断側面図
および縦断面図である。
本発明の第1の製造方法でフローティングプラグを用
いる場合は、図2のように、フローティングプラグ12の
仕上部13の非テーパー部13nに連続して外径を大きくし
た入側の段差部18を有する突起部14を設け、管材15の内
表面にしごき加工を与える。すなわち、ダイス16と仕上
部13の非テーパー部13nとで肉厚加工ののち、さらに仕
上部13の突起部14の入り側段差部18において、ダイス16
とフローティングプラグ12の突起部14によって所定の肉
厚加工量Δhを与える。
この場合も、突起部14の入側の段差部18が、引抜き中
にダイス16の仕上げ平行部(ベアリング部)19の長さL
の中に入っている状態、すなわち管材15の外径が拘束さ
れた状態で肉厚加工量Δhを与えるのである。
フローティングプラグを用いる方法における上記限定
理由は、前述の円筒プラグを用いる場合と同様である。
管材の引抜き中、フローティングプラグ12は、プラグ
テーパ部から仕上部13の平行部(非テーパー部)に移る
図2のa点が、ダイス16のテーパ部からダイスベアリン
グ部19に移る図2のb点との軸方向位置でほぼ一致する
ようにフロートする。そこで、図2に示すダイスベアリ
ング部Lの入り側端から突起部14の平行部開始位置まで
の距離E1がダイス16のベアリング長さLを超えると、突
起部14の入側段差部18はベアリング部19を外れるため、
E1≦Lになるように、フローティングプラグ12とダイス
16の寸法を決定する必要がある。
実際に管材15の内表面にしごき加工を加えるのは、突
起部14の平行部E2の手前にある段差部18であるため、突
起部の平行部の長さE2は引抜き後の内面粗さには基本的
に影響を及ぼさない。ただし、長すぎるとこの部分で管
材内面との焼付きが発生する。望ましい突起部の平行部
長さE2は3.0mm未満である。
本発明の第1の製造方法でフローティングプラグを用
いる場合の作用効果を図3により説明する。
図3は、突起部を有する段付きフローティングプラグ
を用いて引抜く場合の、内面粗さRmaxの推移の例を示す
図である。管材がダイスに当たる位置がB点、管内面が
プラグに当たる位置がC点、プラグのテーパ部から仕上
部の非テーパー部に移る位置がD点である。図示するよ
うに管内面の粗さは、内面がプラグに接触するより手前
の空引き領域(B→C)では増加し、プラグ当たり後の
肉厚加工領域(C→D)では減少し、非テーパー部での
加工ののち突起部の段差部でさらに減少し、加工後で
は、Rmaxで約0.5μmが安定して得られている。ここ
で、図3中の通常プラグとは突起部を有しない(Δh=
0)プラグであり、これを用いた場合のRmaxの推移を点
線で示す。すなわち、仕上部の非テーパー部での加工ま
までのRmaxの推移を示している。
このときの突起部の段差、すなわち肉厚加工量Δhの
影響は、Δhが大きくなるに従い、しごき加工量が大き
くなり、加工後の内面粗さも小さくなる。しかし、Δh
が大きすぎると表層加工が過酷になって焼付きが生じや
すく、また加工中に管材内面がプラグ面から離れ、しご
き加工量がΔhよりも小さくなる。望ましいΔhの範囲
は0.01〜0.08mmである。
図4は、突起部を有する段付きフローティングプラグ
を用いて引抜く場合の、管材内面がプラグから離れたと
きの状態を示す縦断面図である。図示するようにΔhを
大きく取りすぎると、加工中に管材35の内面がフローテ
ィングプラグ32のテーパー面および非テーパー面から離
れ、しごき加工時の肉厚加工量Δh′が、実際の突起部
段差Δhよりも小さくなる。したがって、内面粗さの改
善効果はΔh′で決定されるので、Δhを上記範囲の上
限を越えて大きくしても、その効果は向上しない。
このため、突起部の段差、すなわち肉厚加工量Δh
は、管材内面のプラグ面離れが始まる限界値以下に設定
するのが好ましい。
所定の肉厚加工量Δhを管材内面に加えた場合であっ
ても、図2に示す突起部の段差部が仕上部の非テーパー
面となす角度γの影響を考慮しなければならない。段差
部の角度γが小さすぎると、しごき加工時の肉厚加工が
緩やかに進み、十分なしごき効果が得られず、Rmaxで1.
0μm以下を達成することはできない。一方、段差部の
角度γが大きすぎると肉厚加工が急激になりすぎて、段
差部で焼付きを生じやすくなる。後述する実施例から、
望ましい段差部の角度γの範囲は10〜50゜である。
3.第2の製造方法(凹部付きフローティングプラグを用
いる場合) 図5は、凹部付きフローティングプラグの形状と、こ
れを用いる引抜方法を示す側面図および縦断面図であ
る。(a)は全体図、(b)はA部(凹部と肉厚加工
部)の拡大図である。
図示するように、フローティングプラグ41のテーパ部
の肉厚加工部の入側、すなわち、アプローチ部に凹部42
を設けた場合でも、管材45の内表面は凹部42の出側縁部
しごき加工点43とダイス46により、しごき加工を受け、
突起部を付けた場合と同様の効果があり、管材内面の粗
さが小さくなる。この結果、内面粗さはRmaxで1.0μm
以下を達成することができる。なお、図5(b)におい
て、Δdを便宜的に凹部深さという。Δhは肉厚加工量
(突起部の段差)、θは凹部42の出側縁部しごき加工点
43付近でのプラグ41の輪郭線とプラグテーパ面との間の
角度である。
この凹部42の管材内面の粗さの改善効果は、管材45の
内表面がプラグベアリング部(平行部)49に近づくほ
ど、しごき加工によって増加する。
さらに詳細に説明すると、この凹部42の開始位置は、
管材45の内表面がフローティングプラグ41に接触を開始
する点(後述図6のC)より、出側に設ける必要があ
る。すなわち、凹部41全体が、プラグテーパ部が管材45
の内表面と接触する肉厚加工領域(後述図6のC〜D)
に入っていなければならない。
この理由は次のとおりである。管材45の内表面がプラ
グ41と接触する以前(後述図6のB〜C)では内面粗さ
が大きく、ここで凹部42の出側縁部しごき加工点43(後
述図6のF)によりしごき加工を加えても内面粗さは減
少するが、Rmaxで1.0μmを達成することはでない。そ
して、しごき加工後では、この凹部42を有するプラグの
形状も、通常のフローティングプラグのそれと同様であ
るので、やはり内面粗さをRmaxで1.0μm以下に減少さ
せることはできない。そのため、管材45の内表面をいっ
たんプラグ41に接触させ、粗さを小さくした後に、しご
き加工を加えることで、内面粗さをRmaxで1.0μm以下
に仕上げることが可能となる。
図5に示すE5(プラグテーパ部の出側端から凹部出側
縁部しごき加工点までの距離)の設定にあたっては、母
管、ダイスおよび潤滑油などは同じにし、凹部なしでそ
の他の部分の寸法が等しい通常のフローティングプラグ
を用いて引抜加工し、そのとき管材がダイスを抜けきる
前に加工を中断し、加工中の部分を半割りするなどして
管材の内表面とプラグとの接触開始位置、肉厚加工領域
を確認し、その部分に凹部全体が入るようにE3の位置を
決定する。
具体的にはプラグテーパ部の肉厚加工領域の軸方向長
さをCLとすると、E3の範囲は下記式を満たすのが望ま
しい。
E3<〔CL−Δd/tanβ〕 ・・・ E3は、上記条件を満たした上で、小さいほど内面粗さ
の改善効果が大きくなる。よって、E3は下記式の条件
を満たすことが望ましい。
0≦E3<〔CL−Δd/tanβ〕 ・・・ 図6は、凹部付きフローティングプラグを用いて引抜
く場合の内面粗さRmaxの推移を示す図である。管材がダ
イスに当たる位置がB点、プラグに当たる位置がC点、
プラグ平行部に移る位置がD点、凹部の出側縁部でしご
き加工を受ける位置がF点である。管内面の粗さは、管
材がダイスに当たる手前の空引き領域(B→C)では増
加し、プラグに当たり後の肉厚加工領域(C→F→D)
では減少し、C〜D区間内のF点でしごき加工を受け急
激に減少し、加工後ではRmaxで約0.5μmが安定して得
られている。ここで、図6中の通常プラグとは、凹部を
有しない(Δd=0)プラグであり、これを用いた場合
のRmaxの推移を点線で示す。
凹部42の形状については、凹部深さΔdが増加する
と、しごき加工による肉厚加工量Δhが増加し、内面粗
さの改善効果が大きくなる。しかし、Δdの増加に伴い
自由表面も増加するので、その部分で内面粗さが大きく
なり、しごき加工による改善効果を低下させる。すなわ
ち、Δdが大きすぎると内面粗さの改善効果が打消さ
れ、また、管材内面とプラグとの焼付きが発生しやすく
なる。
ただし、焼付発生条件を決定するのはΔdではなく、
しごき加工時の肉厚加工量Δhである。Δhは、ダイス
内角2α、プラグテーパ角2βおよびΔdにより決定さ
れ、幾何学的に次式で与えられる。
Δh=〔Δd・sinβ・(tanα− tanβ)〕/(tanα・tanβ) ・・・ 望ましいΔhの範囲は、突起部を有する段付きフロー
ティングプラグの場合と同様に0.01〜0.08mmである。
図5に示す角度θが小さすぎると、しごき加工時の肉
厚加工が緩やかに進み、内面粗さの改善効果が小さくな
り、Rmaxで1.0μm以下を達成することはできない。一
方、大きすぎると肉厚加工が急激になりすぎ、管材内表
面とプラグとの焼付きが生ずる。望ましいθの範囲は10
〜50゜である。
4.工具材質、潤滑剤等 本発明方法(第1、第2の製造方法)のように、しご
き加工で管内表面に剪断塑性変形を集中させると、加工
硬化層が形成され、結晶粒が細粒化される。ステンレス
鋼管では、結晶粒が細粒化することにより耐食性も向上
する。
プラグの表面粗さは、必要な管材内面粗さよりも小さ
くする方がよい。プラグ表面粗さが目標の内面粗さより
も大きくなると、引抜き後の管材内面粗さも大きくなる
ので、プラグ表面の表面粗さは可能な限り小さく仕上げ
ておくのが望ましい。
ダイスおよびプラグの材質は、超硬合金のような硬度
の高いものがよい。管材が焼付きやすい材質である場合
は、TiCNなどの耐焼付き性に優れた材料で、ダイスとプ
ラグの表面をコーティングすることが望ましい。
引抜き加工時の潤滑剤としては、潤滑皮膜を薄くでき
るもの、例えば、硫化油脂と塩素化パラフィンの混合油
を用いることが望ましい。
冷間引抜き後に、脱脂を施し、常法で光輝熱処理を行
う。酸化雰囲気では酸化スケールが発生して管材の内面
粗さが増加する。さらに、内面に付着したスケール自体
がパーティクルとなり、クリーンパイプとしての性能が
劣化する。これらを防止するため、酸化スケールが発生
しない水素炉や真空加熱炉を用いる光輝焼鈍を行う。
その後、必要に応じて曲り取り等の処理を付加する。
しかし、本発明の光輝焼鈍仕上型内面高平滑ステンレス
鋼管とその製造方法では、高コストをもたらす電解化学
研磨などの高平滑化処理は不必要である。用途によって
Rmaxで0.3μm未満の更なる高平滑面を要する場合には
電気化学研磨などが必要となるが、研磨所要時間を大幅
に短縮することも可能である。
本発明方法の作用効果を具体的な実施例に基づいて説
明する。
〔突起部を有する段付きプラグを用いる場合〕
母管材質:SUS316L、母管寸法:外径11mmφ×肉厚1.3m
m、母管の管内面の粗さ:Rmaxで1.8μmを、円筒プラグ
とフローティングプラグの2種のプラグを用いて仕上寸
法:外径8.4mmφ×肉厚1.2mmに冷間引抜きした。
最初に、円筒プラグを用いた場合について説明する。
用いた円筒プラグの形状と寸法を図7に示す。突起部の
高さΔhは、0.005〜0.10mmの範囲とした。
ダイスとプラグの材質は、超硬合金(JIS V20相当)
とし、表面粗さはRmaxで0.1μmのものを用いた。
潤滑は油潤滑とし、潤滑油(硫化油脂と塩素化パラフ
ィンの混合油)を管内外面に塗布して冷間引抜きした。
図7に示すダイスベアリング部L(L:1.0mm)の入り
側端から突起部の平行部開始位置までの距離lが、0〜
3.0mmの範囲で変化するようにプラグ支持棒の長さを調
整して冷間引抜きし、内面粗さをRmaxで測定した。上記
の条件と結果を図14に示す。
図14に示すように、突起部の平行部開始位置がダイス
ベアリング部長さLを超え、すなわち突起部がダイスベ
アリング部長さを外れた出側に位置すると、内面粗さの
改善効果は小さくなり、Rmax:1.0μm以下を得ることは
不可能である。lがL:1.0mm以下になり、突起の平行部
開始位置がダイスベアリング部間にあると、安定したRm
axが得られており、lの違いによるRmaxの変化は少な
い。
段差Δhについてみると、0.005mmでは段差が小さす
ぎて、しごき加工による内表面の改善効果は小さく、Rm
ax:1.0μm以下を満たすことができない。一方、段差Δ
hが大きすぎて0.10mmになると焼付きが発生している。
よって、Δhは0.01〜0.08mmの範囲が好ましいことがわ
かる。
つぎに、フローティングプラグを用いた場合について
説明する。用いたフローティングプラグの形状と寸法を
全体図とA部拡大図で図8に示す。この場合も突起部の
高さΔhは、0.005〜0.10mmの範囲とした。また、ダイ
スとプラグの材質、ダイスとプラグの表面粗さおよび潤
滑油の条件は円筒プラグを用いた場合と同様とした。
図8に示すダイスベアリング部L(L:1.0mm)の入り
側端から突起部の平行部開始位置までの距離E1が、0.25
〜3.0mmの範囲で変化するような条件で冷間引抜きし、
内面粗さをRmaxで測定した。上記の条件と結果を図15に
示す。
図15に示すように、段差Δhが0.005mmでは小さすぎ
るため、円筒プラグと同様に改善効果が得られず、Rma
x:1.0μm以下を達成することができない。一方、段差
Δhが0.1mmでは焼付きが発生している。よって、段差
Δhの範囲は、0.01〜0.08mmが望ましいことがわかる。
E1がL:1.0mmを超え、すなわちダイスベアリング部長
さLを超えると、突起部がダイスベアリング部を外れて
ダイス出側に出てしまうため、内面粗さの改善効果が小
さくなり、Rmax:1.0μm以下を達成することができな
い。E1がダイスベアリング部長さ以下、すなわち突起部
がダイスベアリング部内に入ると、安定したRmaxの改善
効果が得られる。よって、E1はL以下とすることが望ま
しいことがわかる。
このように、突起部を有する段付円筒プラグ、段付フ
ローティングプラグともに、引抜き後の管内面粗さをRm
axで1.0μm以下に仕上げることが可能である。その
後、常法に従い光輝熱処理を施しても、内面粗さは変化
せず、上記のRmaxの内面粗さのBAタイプのクリーンパイ
プを製造することができる。
この実施例で用いたプラグの表面粗さは、前述の粗さ
程度が現状の経済的な工業技術で得られるレベルである
Rmaxで0.1μmとした。引抜き後の内面粗さは、プラグ
表面粗さよりも若干大きくなっているが、ほぼプラグ粗
さに近いレベルに達している。もし、表面粗さがさらに
小さいプラグを用いれば、さらなる管内面粗さの低減を
達成することが可能である。
更に、突起部を有する段付フローティングプラグにつ
いて、プラグ突起部の段差部の角度γが内面粗さの改善
に及ぼす影響を調査した。
用いたプラグとダイスの基本形状と寸法は図8に示す
ものと同じである。加工条件は段差Δhを0.04mm、E1E2
を0.5mmとし、角度γを5〜60゜に変化させて内面粗さ
を測定した。その結果を図16に示す。
図16から明らかなように、角度γが5゜の場合にRmax
が1.3μmとなり、しごき効果が小さく、角度γが60゜
の場合には肉厚加工が急激となって、段差部に焼付きが
発生している。したがって、角度γは10〜50゜の範囲に
するのが望ましい。突起部を有する段付円筒プラグにつ
いても同様の調査を行ったが、同じ結果であることを確
認している。
次に、突起部を有する段付円筒プラグと段付フローテ
ィングプラグとについて、プラグ突起部の平行部長さE2
とプラグコーティング有無の影響を調査する試験を行っ
た。
用いたプラグとダイスの基本形状と寸法は前記の図
7、図8に示すものと同じである。加工条件は上記試験
と同じとした。E2は、円筒プラグ、フローティングプラ
グともに0.5〜3.0mmの間で変え、Δhは0.04mm、E1は0.
5mmの一定とした。上記条件と結果を図17に示す。
図17に示すように、突起部の平行部長さE2は、引抜き
後の内面粗さには影響を及ぼしていないが、E2が3.0mm
の場合に、いずれのプラグも焼付きが発生した。従っ
て、突起部の平行部長さE2は3.0mm未満が望ましいこと
がわかる。
また、焼付対策として、管材と親和性の小さいTiCNコ
ーティングをプラグ表面に施した場合に試験も実施した
が、表1〜表4の上記コーティングなしのプラグで焼付
きが発生した引抜条件においても、焼付きは発生しなか
った。
〔凹部付きフローティングプラグを用いる場合〕
凹部付きフローティングプラグの場合も、母管、ダイ
スおよび潤滑油は、前述の突起部を有する段付プラグの
場合と同じとした。図9に用いたプラグの寸法と形状を
示す。
プラグの材質は超硬合金(JIS V20相当)とし、表面
にTiCNコーティングを施した表面粗さがRmaxで0.3μm
のものを用いた。
凹部深さΔdを0〜0.30mmの範囲(Δhに換算すると
Δhは0〜0.05mmの範囲、ただし、図9に示すE3:0.5mm
で一定)で、E2を0〜2.5mmの範囲(ただし、Δd:0.20m
mで一定、Δhに換算するとΔhは0.05mm)で、それぞ
れ変化させて冷間引抜きし内面粗さをRmaxで測定した。
その結果を図18と図19に示す。なお、図18と図19の引抜
きでは図9(b)に示す角度θは10度の一定とした。
図18に示すように、Δdが0.1mm以上(換算Δhが0.0
1mm以上)で安定した内面粗さを得ることが可能であ
り、焼付き等の発生はなかった。凹部のない通常のプラ
グに比較して、プラグの所定位置に凹部がある場合の内
面粗さの改善効果が認められる。Δdが大きくなるほど
内表面粗さは小さくなる傾向を示す。
この場合の引抜条件では、プラグテーパ部の肉厚加工
領域の軸方向長さCLは2.8mmとなる。また、Δd:0.20m
m、β:10.5度であるから、前述の条件式により凹部の
位置を決める距離E3を求めると、E3:1.72mmとなる。
図19に示すように、E3が1.72mmを超え、2.0mmおよび
2.5mmになると、内面粗さは改善されず、Rmaxで1.0μm
以下が達成されない。E3が1.72mm以下では、E3が小さく
なるほど、改善効果が大きくなり、得られる内面粗さが
小さくなっている。
次いで、図9(b)に示す角度θの影響を調査した。
基本的な加工条件は上記の図18と図19の場合と同じと
し、Δd:0.15mm、E3:0.5mmの一定条件で、θを0〜60゜
の範囲で変えて冷間引抜きし、焼付き発生の有無および
内面粗さを調査した。その結果を図20に示す。
図20に示すように、θが0゜ではプラグ形状が通常の
プラグと変わりなく、肉厚加工が緩やかになるため、内
面粗さがRmaxで1.0μm以下に達してない。θが60゜で
は肉厚加工が急激になりすぎ、焼付きが発生している。
上述の通り、突起部を有する段付プラグを用いる場合
および凹部付きフローティングプラグを用いる場合にお
いても、母管の潤滑には潤滑油(硫化油脂と塩素化パラ
フィンの混合油)を用いた。これと比較するために、ス
テンレス鋼管の引抜き加工で通常用いられている化成処
理潤滑(蓚酸第1鉄被膜)を施して、同条件で冷間引抜
きを行ったが、いずれも内面粗さがRmaxで1.0μm以下
という目標を達成することができなかった。したがっ
て、本発明方法の実施にあたっては、化成処理潤滑は不
適である。
実施例において、内面粗さの下限がRmaxで0.3μmと
なっているのは、現在の工業レベルで得られるプラグ表
面粗さがRmaxで0.1μm程度が限界であり、かつ潤滑油
の膜厚が影響しているからである。したがって、プラグ
表面粗さがRmaxで0.1μm以下に仕上げることが可能に
なれば、得られる管材の内面粗さもさらに小さくなる。
産業上の利用可能性 本発明によれば、半導体製造装置などの用途に好適な
内面粗さがRmaxで1.0μm以下の光輝焼鈍仕上型内面高
平滑ステンレス鋼管を、冷間引抜き、光輝熱処理のまま
で得ることができる。これにより、従来必須とされてい
た電気化学研磨などの処理を省略することもでき、製造
コストを大幅に低減させることが可能である。したがっ
て、本発明の光輝焼鈍仕上型内面高平滑ステンレス鋼管
は、半導体製造等の広範な分野において利用できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 丁場 源 神奈川県藤沢市川名1丁目14番1号 住 金ステンレス鋼管株式会社内 (56)参考文献 特開 平11−300411(JP,A) 特開 平1−254314(JP,A) 特開 昭61−88914(JP,A) 特開 昭63−97308(JP,A) 実開 昭50−142743(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B21C 1/00

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】内面粗さがRmaxで1.0μm以下であること
    を特徴とする光輝焼鈍仕上型内面高平滑ステンレス鋼
    管。
  2. 【請求項2】ダイスと円筒プラグとによって管を冷間引
    抜きした後、光輝熱処理してクリーンパイプを製造する
    方法において、プラグ後部の仕上部の一部にリング状の
    突起部を有する前記のプラグを用い、このリング状の突
    起部の入り側段差部がダイスのベアリング部(仕上げ平
    行部)の区間内に入る状態を維持しながら冷間引抜き
    し、その後光輝熱処理することを特徴とする内面粗さが
    Rmaxで1.0μm以下である光輝焼鈍仕上型内面高平滑ス
    テンレス鋼管の製造方法。
  3. 【請求項3】ダイスとフローティングプラグとによって
    管を冷間引抜きした後、光輝熱処理してクリーンパイプ
    を製造する方法において、プラグ後部の仕上部に非テー
    パー部とこれに連続するリング状の突起部を有する前記
    のプラグを用い、このリング状の突起部の入り側段差部
    がダイスのベアリング部(仕上げ平行部)の区間内に入
    る状態を維持しながら冷間引抜きし、その後光輝熱処理
    することを特徴とする内面粗さがRmaxで1.0μm以下で
    ある光輝焼鈍仕上型内面高平滑ステンレス鋼管の製造方
    法。
  4. 【請求項4】ダイスとフローティングプラグとによって
    管を冷間引抜きした後、光輝熱処理してクリーンパイプ
    を製造する方法において、プラグのテーパ部の肉厚加工
    部にリング状の凹部を有する前記のプラグを用いて冷間
    引抜きし、その後光輝熱処理することを特徴とする内面
    粗さがRmaxで1.0μm以下である光輝焼鈍仕上型内面高
    平滑ステンレス鋼管の製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003112218A (ja) * 2001-09-28 2003-04-15 Usui Internatl Ind Co Ltd 厚肉細径管の製造方法
CN112912992A (zh) * 2018-11-15 2021-06-04 株式会社Kelk 调温装置和调温装置的制造方法

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CN112912992B (zh) * 2018-11-15 2024-04-16 株式会社Kelk 调温装置和调温装置的制造方法

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