JP3078185B2 - 塩化ビニル系樹脂の懸濁重合方法 - Google Patents

塩化ビニル系樹脂の懸濁重合方法

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JP3078185B2
JP3078185B2 JP06263536A JP26353694A JP3078185B2 JP 3078185 B2 JP3078185 B2 JP 3078185B2 JP 06263536 A JP06263536 A JP 06263536A JP 26353694 A JP26353694 A JP 26353694A JP 3078185 B2 JP3078185 B2 JP 3078185B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、塩化ビニル系樹脂の懸
濁重合方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、塩化ビニル系樹脂は機械的強
度、耐候性、耐薬品性の優れた材料として多くの用途に
用いられている。しかしながら、塩化ビニル系樹脂は加
工性が良好とはいえず、より一層の改良が要望されてい
る。一般に、塩化ビニル系樹脂の成形加工性を評価する
方法としては、可塑剤吸収量の測定、プラストミルによ
るトルク、ゲル化時間の測定等が行われている。可塑剤
吸収性に関しては短時間で塩化ビニル系樹脂の内部まで
浸透するものが要望され、プラストミルに関しては最大
トルクが低く、かつゲル化時間の短いものほど加工性が
良好とされている。
【0003】このような加工特性の優れた塩化ビニル系
樹脂の粒子構造としては、表面のスキン部分が存在しな
いか、存在しても少ないこと、さらに内部の一次粒子間
の細孔が均一で大きいことが挙げられる。このような塩
化ビニル系樹脂の製造方法として、例えば、ソルビタン
高級脂肪酸エステルとポリオキシエチレンソルビタン高
級脂肪酸エステルとを併用する懸濁重合方法が開示され
ている(特公昭36−22445号公報)。しかしなが
ら、この重合方法では、得られる塩化ビニル系樹脂は多
孔性に乏しく、重合器内壁へポリマースケールが多量に
付着するという問題点があった。
【0004】上記問題点を解決するために、アルカリ性
化合物存在下で親油性ソルビタン高級脂肪酸エステルと
親水性のポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エス
テルを組み合わせた分散剤を使用し、塩化ビニル系樹脂
の重合転化率が5〜40%に達した時点で水溶性セルロ
ース誘導体を添加する方法が開示されている(特公昭5
3−13395号公報)。また、ソルビタン高級脂肪酸
エステルを分散剤として使用し、ファウドラー翼による
攪拌下で重合を開始し、その重合転化率が5〜40%に
達した時点で水溶性分散剤を添加する方法が開示されて
いる(特公平5−86408号公報)。
【0005】しかしながら、これらの方法は、重合工程
で重合器内壁にポリマースケールが付着するのを防止す
ることができ、多孔性に富み、粒度分布の狭い塩化ビニ
ル系樹脂が得られるが、その性能はまだ不十分であり、
ポリマースケールの付着防止のため分散剤を2段階に分
けて添加する必要があるため、操作が複雑になるという
問題点があった。
【0006】また、非イオン界面活性剤を利用した系と
して、既知の懸濁分散剤、低ケン化度の部分ケン化ポリ
酢酸ビニル及びソルビタンモノラウレート等の非イオン
界面活性剤を特定の比率で添加して重合を行う方法が開
示されている(特開平5−295008号公報)。しか
し、得られる塩化ビニル樹脂粒子は、表面のスキン部分
が少なくなるが、重合初期段階において攪拌所要動力を
調節する必要があるため重合操作が複雑になり、ゲル化
の効果が不十分であるという問題点があった。
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記問題点
を解決するためになされたものであり、その目的は、分
散剤の一括添加によって、多孔性に富み、粒度分布が狭
く、かつ加工性の優れた塩化ビニル系樹脂の得られる懸
濁重合方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】第1発明の塩化ビニル系
樹脂の懸濁重合方法は、塩化ビニル単量体を油溶性重合
開始剤の存在下で、水性媒体中で懸濁重合する際に、反
応系に部分ケン化ポリ酢酸ビニル(a)、ソルビタン高
級脂肪酸エステル(b)及び高級脂肪酸(c)を添加す
ることを特徴とする。
【0008】上記塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニ
ル単量体の単独重合体、塩化ビニル単量体と該塩化ビニ
ル単量体と共重合しうる塩化ビニル以外の単量体との共
重合体が挙げられる。上記塩化ビニル単量体と共重合し
うる塩化ビニル以外の単量体としては、酢酸ビニル等の
アルキルビニルエステル類;エチレン、プロピレン等の
α−モノオレフィン類;塩化ビニリデン;スチレン等が
挙げられるが、塩化ビニル単量体と共重合可能なもので
あれば特に制限はない。
【0009】上記部分ケン化ポリ酢酸ビニル(a)は、
懸濁分散剤として用いられる。上記部分ケン化ポリ酢酸
ビニル(a)のケン化度は、低くなると油溶性が強くな
って分散能力に欠けるため得られる樹脂は粗大粒子が多
くなり、高くなると保護コロイド性が強すぎるため樹脂
粒子に強いスキン層が形成されゲル化性能が悪くなるの
で、60〜90モル%に限定され、好ましくは70〜8
5モル%である。
【0010】上記部分ケン化ポリ酢酸ビニル(a)の平
均重合度は、低くなると分散能力に欠けるため樹脂が粗
大粒子やブロックとなり易く、高くなると樹脂粒子のス
キン層が厚くなると共に、多孔性が不足して成形加工性
が悪くなるので、500〜3,000が好ましく、より
好ましくは700〜1,500である。
【0011】上記部分ケン化ポリ酢酸ビニル(a)の添
加量は、少なくなると油滴が不安定なため樹脂はブロッ
ク状となり易く、多くなると樹脂表面のスキン層が厚く
なって成形加工性が悪くなるので、塩化ビニル単量体に
対して150〜2,000ppmが好ましい。
【0012】上記ソルビタン高級脂肪酸エステル(b)
のHLB値は、低くなると強い親油性を示すため水性媒
体中での分散能力が低くなって、得られる樹脂の粒度分
布は粗大粒子を含む幅広いものとなり、高くなると強い
親水性を示すため重合中の油滴が不安定となって、最終
的に樹脂粒子の凝集、合一を引き起こし、得られる樹脂
はブロック状または粗大粒子の集合体となるので、3〜
10に限定され、好ましくは4〜9である。
【0013】上記HLB(親水親油平衡)とは、W.C.Gr
iffin [J. Soc. Cosmetic Chem.,1巻,311 頁,(194
9)] によって提唱された非イオン性界面活性剤の親水基
と疎水基との釣り合いを意味し、この値が大きい程親水
性が大きくなり、小さい程疎水性が大きくなる。
【0014】上記HLB値を有するソルビタン高級脂肪
酸エステル(b)としては、ソルビタンモノラウレート
(HLB値8.6)、ソルビタンモノミリステート、ソ
ルビタンモノパルミテート(HLB値5.6)、ソルビ
タンモノステアレート(HLB値4.7)、ソルビタン
ジステアレート(HLB値4.4)等のソルビタン飽和
高級脂肪酸エステル;不飽和高級脂肪酸エステルが挙げ
られ、これらは単独で後いられてもよく、二種以上が併
用されてもよい。
【0015】上記ソルビタン高級脂肪酸エステル(b)
の添加量は、少なくなると得られる樹脂粒子のスキン層
が厚くなると共に多孔性が不足して成形加工性が向上せ
ず、多くなると得られる樹脂粒子の粒度分布が広くなる
と共に重合器内壁へのポリマースケールの付着量が多く
なるので、塩化ビニル単量体に対して500〜5,00
0ppmが好ましく、より好ましくは800〜2,50
0ppmである。
【0016】上記高級脂肪酸(c)の炭素数は、少なく
なると水溶性を帯びるため、重合中に油層に分配されず
ゲル化促進効果が発揮されず、多くなると融点が高くな
るため、成形時の高温においてゲル化効果が発揮されな
いので、8〜25に限定され、好ましくは11〜22で
ある。
【0017】上記高級脂肪酸(c)としては、直鎖型の
飽和脂肪酸が好ましく、例えば、ステアリン酸、イソス
テアリン酸、n−ヘプタデカン酸、パルミチン酸、n−
ペンタデカン酸、ミリスチン酸、アラギン酸、ノナデカ
ン酸、n−トリデカン酸、ラウリン酸、ウンデシル酸等
が挙げられ、これらは単独で使用されてもよく、二種以
上が併用されてもよい。
【0018】上記高級脂肪酸(c)の添加量は、少なく
なるとゲル化促進効果か発揮されず、多くなるとゲル化
時間が遅くなるので、塩化ビニル単量体に対して300
〜2,000ppmが好ましい。
【0019】上記油溶性重合開始剤としては、一般に塩
化ビニル系樹脂の重合に用いられている公知のものが使
用可能であり、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラ
ウロイルパーオキサイド、2−エチルヘキシルパーオキ
シジカーボネート等の有機過酸化物;アゾビスイソブチ
ロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等のアゾ系化
合物が挙げられ、好ましくは有機過酸化物である。ま
た、これらは単独で使用されてもよく、二種以上が併用
されてもよい。
【0020】第2発明の塩化ビニル系樹脂の懸濁重合方
法は、塩化ビニル単量体を油溶性重合開始剤の存在下
で、水性媒体中で懸濁重合する際に、反応系に部分ケン
化ポリ酢酸ビニル(a)、ソルビタン高級脂肪酸エステ
ル(b)、高級脂肪酸(c)及び増粘性添加剤(d)を
添加することを特徴とする。
【0021】上記部分ケン化ポリ酢酸ビニル(a)、ソ
ルビタン高級脂肪酸エステル(b)及び高級脂肪酸
(c)は、第1発明と同様な成分が、それぞれ好適に用
いられる。
【0022】上記増粘性添加剤(d)としては、0.1
重量%水溶液とした時のブルックフィールズ粘度が10
cps(10mPa・s)を超えるものであって、例え
ば、ポリエチレンオキサイド(重量平均分子量170万
〜550万、好ましくは430万〜480万)、ポリビ
ニルピロリドン、ポリアクリルアミド(重量平均分子量
800万〜1400万、好ましくは1200万〜140
0万)、ポリアクリルアミド共重合体、架橋型(メタ)
アクリル酸系ポリマー、メチルセルロースカルシウム、
澱粉グリコール酸ナトリウム、澱粉リン酸エステルナト
リウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレン
グリコールエステル、カルボキシメチルセルロースナト
リウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム等が挙
げられ、これらは単独で使用されてもよく、二種以上が
併用されてもよい。
【0023】上記増粘性添加剤(d)の添加量は、少な
くなると反応系内で十分な増粘効果が発揮されないため
流度分布が悪くなり、多くなると樹脂表面がスキンに覆
われてゲル化速度が遅くなるため、塩化ビニル単量体に
対して5〜2,000ppmが好ましく、より好ましく
は25〜900ppmである。
【0024】本発明の懸濁重合方法に使用される重合器
(耐圧オートクレーブ)の構造としては、特に制限はな
く、従来より塩化ビニルの重合に使用されているものが
用いられる。また、攪拌翼は、ファウドラー、パドル、
タービン等の汎用的に用いられているものでよく、邪魔
板との組み合わせも特に制限はない。
【0025】上記懸濁重合では、反応系へのイオン交換
水、懸濁分散剤、乳化剤、塩化ビニル単量体、その他の
単量体、添加剤等の仕込方法は、従来より行われている
方法と同様にすればよく、重合条件によって、重合調整
剤、連鎖移動剤、帯電防止剤、架橋剤、安定剤、充填
剤、スケール防止剤が添加されてもよい。
【0026】
【実施例】以下、本発明の実施例を説明する。 (実施例1〜3、比較例1〜6)内容積100リットル
の重合器(耐圧オートクレーブ)に脱イオン水50kg
を入れ、さらに塩化ビニル単量体に対して、表1に示す
ケン化度及び平均重合度を有する部分ケン化ポリ酢酸ビ
ニル500ppm、表1に示すHLB値を有するソルビ
タン高級脂肪酸エステル1500ppm、表1に示す炭
素数を有する高級脂肪酸1200ppmならびにt−ブ
チルパーオキシネオデカノエート500ppmを投入し
た。次いで、重合器内を45mmHgまで脱気した後、
塩化ビニル単量体33kgを仕込み攪拌を開始した。重
合器内を57℃に昇温し、重合反応終了までこの温度を
保った。重合転化率が90%になった時点で重合器内の
未反応単量体を回収した後、重合体をスラリー状で取り
出し、脱水乾燥して塩化ビニル系樹脂を得た。上記いず
れの実施例においても、重合器内壁へのポリマースケー
ルの付着は認められなかった。
【0027】上記実施例1〜3及び比較例1〜6で得ら
れた塩化ビニル系樹脂につき下記の性能評価を行い、そ
の結果を表1に示した。 (1)多孔性 可塑剤吸収性を多孔性の指標とし、ガラスフィルター
(目の粗さ:G2)に塩化ビニル系樹脂5gを秤り取
り、樹脂に対して過剰量のDOP(ジオクチルフタレー
ト)可塑剤を添加し、よく混合した後、遠心分離器(回
転数:6000rpm)で過剰のDOPを分離し、樹脂
100重量部に対するDOP吸収量(phr)を求め
た。
【0028】(2)粒度分布 JIS Z8801に準拠して、60、100及び20
0メッシュの篩を使用してふるい分けし通過量(重量
%)を算出した。
【0029】(3)加工性 プラストミル(東洋精機社製「ハーケレオコード9
0」)を使用して、樹脂組成物を下記の条件でゲル化時
間及び最高トルクを測定した。樹脂投入量60g、回転
数50rpmとし、投入温度120℃より5℃/分の割
合で昇温を行い、200℃まで測定を行った。尚、樹脂
組成物としては、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し
て、滑剤としてモンタン酸エステル(ヘキスト社製「W
AX OP」)0.5重量部及び安定剤としてジブチル
錫メルカプト(三共有機合成社製「JF−10B」)2
重量部をスーパーミキサー(三井三池社製)にて120
℃まで昇温、混合した後、40℃まで冷却したものを使
用した。
【0030】
【表1】
【0031】(実施例4〜6、比較例7)内容積100
リットルの重合器(耐圧オートクレーブ)に脱イオン水
50kgを入れ、さらに塩化ビニル単量体に対して、表
2に示すケン化度及び平均重合度を有する部分ケン化ポ
リ酢酸ビニル500ppm、表2に示すHLB値を有す
るソルビタン高級脂肪酸エステル1500ppm、表2
に示す炭素数を有する高級脂肪酸1400ppm、増粘
性添加剤300ppmならびにt−ブチルパーオキシネ
オデカノエート500ppmを投入した。次いで、重合
器内を45mmHgまで脱気した後、塩化ビニル単量体
33kgを仕込み攪拌を開始した。重合器内を57℃に
昇温し、重合反応終了までこの温度を保った。重合転化
率が90%になった時点で重合器内の未反応単量体を回
収した後、重合体をスラリー状で取り出し、脱水乾燥し
て塩化ビニル系樹脂を得た。上記いずれの実施例におい
ても、重合器内壁へのポリマースケールの付着は認めら
れなかった。
【0032】上記実施例4〜6及び比較例7で得られた
塩化ビニル系樹脂につき、実施例1と同様な性能評価を
行い、その結果を表2に示した。
【0033】
【表2】
【0034】
【発明の効果】本発明の塩化ビニル系樹脂の懸濁重合法
は、上述の通りであり、製造工程では分散剤を一括して
投入することができ、得られる塩化ビニル系樹脂は、多
孔性であるため可塑剤吸収性が優れ、粒度分布が狭く、
かつゲル化性能が良好である。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】塩化ビニル単量体を油溶性重合開始剤の存
    在下で、水性媒体中で懸濁重合する際に、反応系に
    (a)ケン化度60〜90モル%の部分ケン化ポリ酢酸
    ビニル、(b)HLB値3〜10のソルビタン高級脂肪
    酸エステル及び(c)炭素数8〜25の高級脂肪酸を添
    加することを特徴とする塩化ビニル系樹脂の懸濁重合方
    法。
  2. 【請求項2】塩化ビニル単量体を油溶性重合開始剤の存
    在下で、水性媒体中で懸濁重合する際に、反応系に
    (a)ケン化度60〜90モル%の部分ケン化ポリ酢酸
    ビニル、(b)HLB値3〜10のソルビタン高級脂肪
    酸エステル、(c)炭素数8〜25の高級脂肪酸及び
    (d)0.1重量%水溶液の粘度が10cpsを超える
    増粘性添加剤を添加することを特徴とする塩化ビニル系
    樹脂の懸濁重合方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2007518035A (ja) * 2004-01-14 2007-07-05 シンテック コープ. ガス調節/遮断バルブ及びこれを用いた温水自動循環装置

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