JP3075291B2 - 超音波プローブ - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、体腔内に挿入し、超音
波振動子を励振して超音波像を得る超音波プローブに関
する。

【０００２】

【従来の技術】従来、超音波プローブを体腔内に挿入
し、被検対象に超音波ビームを放射してエコーを受信す
ると、この受信信号を観測装置で処理してモニタに断層
像を画像表示する超音波診断装置がある。

【０００３】この超音波診断装置においては、観測装置
により超音波情報を得るための走査方式として電子式の
ものと機械式のものとがあり、機械式のものとしては、
特開平２−２７１８４４号公報に開示されているよう
に、超音波プローブを回転及び進退可能にし、ラジアル
走査とリニア走査とを組み合わせる方式がある。

【０００４】ところで、前記超音波プローブは、体腔内
への挿入性を向上させるためプローブ外径が細いことが
望ましく、例えば、実開平２−１４１４２１号公報に
は、超音波振動子ユニットを保持する部材（ハウジン
グ）をシース内径面と摺動可能に近接させ、プローブ外
径を細くした超音波プローブが開示されている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、超音波
振動子ユニットを保持するハウジングをシース内径面に
近接させてプローブ外径を細径化した前述の超音波プロ
ーブでは、超音波を伝達するための超音波伝達媒体がシ
ース内部に密閉された構造の場合、前記ハウジングがピ
ストンと同様の作用をし、プローブ先端と前記ハウジン
グとの間の超音波伝達媒体が前記ハウジングの長手方向
への移動を妨げてリニア走査性が悪化するという不具合
が生じる。

【０００６】この場合、超音波プローブの先端を開口し
た構造とすることにより、前述の不具合を回避すること
ができるが、先端を開口した超音波プローブでは、プロ
ーブ内部に体液が入り消毒性が悪くなる、超音波振動子
ユニット等のプローブ内部構造物と生体とが接触して電
気絶縁性が低下する等のおそれがある。

【０００７】本発明は上記事情に鑑みてなされたもの
で、超音波振動子ユニットを保持するハウジングのリニ
ア方向への動きを円滑なものとし、走査性を向上するこ
とのできる超音波プローブを提供することを目的として
いる。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明による超音波プロ
ーブは、円筒状のシースと、このシースの内部に接する
よう略円柱状に形成され、該シースに対して軸方向に摺
動可能、かつ軸周りに回動可能に配置されたハウジング
と、このハウジングに保持され、前記シースの外側に超
音波送受波面を向けた超音波振動子ユニットと、前記シ
ースの内周面もしくはハウジングの外周面に設けられ、
前記シース内に充填された超音波伝達媒体を前記ハウジ
ングの前後の位置で流動可能にする流路とを具備するこ
とを特徴とし、また、前記流路は、前記ハウジングの外
周面を切り欠くことで形成されることを特徴とし、更
に、前記流路は、前記シースの内周面に溝を設けること
で形成されることを特徴とする。

【０００９】

【作用】本発明の超音波プローブでは、超音波振動子ユ
ニットを保持するハウジングの長手方向への移動に際
し、超音波伝達媒体が流路を通ってハウジングの前後に
流動する。従って、ハウジングのリニア方向への移動が
円滑になって走査性が向上する。

【００１０】

【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例を説明
する。図１〜図４は本発明の第１実施例に係わり、図１
はシース軸に直交する方向の断面図、図２はシース軸方
向の断面図、図３は走査駆動系の概略構成図、図４はシ
ャフト連結部の構成を示す説明図である。

【００１１】図３に示すように、超音波プローブ１は、
超音波を透過する可撓性のシース２の先端に先枠３が固
設されて前記シース２内部が密閉状態にされており、先
端部に内蔵されたハウジング４の少なくとも全体が浸る
程度の量の流動パラフィン等の超音波伝達媒体５が封入
されている。前記ハウジング４は、後述する超音波振動
子ユニット２４を保持して前記シース２内径面と摺動可
能に近接させられ、端部に可撓性のフレキシブルシャフ
ト６が取り付けられている。

【００１２】尚、前記シース２は、前記ハウジング４が
最も前進したとき、前記ハウジング４と前記先枠３との
間に、例えば数mm程度の間隔が空くよう、予め長さが定
められており、前記シース２を曲げた場合に前記フレキ
シブルシャフト６の長さが相対的に前記シース２よりも
長くなり、前記先枠３と前記ハウジング４とが衝突する
ことを未然に回避するようになっている。

【００１３】また、前記フレキシブルシャフト６の後端
側にフロントシャフト７が取り付けられ、さらに、この
フロントシャフト７が走査駆動部８内に挿入され、例え
ばＯリング等の弾性を有する保持部材９により保持され
るとともに、ベアリング１０を介して前記走査駆動部８
内に設けられた支持部材１１に保持されている。

【００１４】前記支持部材１１はボールネジ１２に噛合
され、このボールネジ１２の後端側がリニア走査用のモ
ータ１３の軸に取り付けられている。また、前記支持部
材１１には、フォトカプラ（フォトインタラプタ）１５
をオン、オフするためのスイッチ用部材１４が取り付け
られており、このスイッチ用部材１４の両側に、前記ハ
ウジング４の進退動範囲すなわちリニア走査範囲を決定
するためのフォトカプラ１５が取り付けられている。

【００１５】前記フォトカプラ１５は、前記ボールネジ
１２に沿って平行に設けられた２つの長円形の取付孔１
６に、例えば裏側から２箇所でネジ止めすることにより
任意の位置に固定することができるようになっており、
リニア走査範囲を適切に設定することができる。

【００１６】尚、前記スイッチ用部材１４は、図中、破
線で示すように、前記取付孔１６方向に端部が折り曲げ
られており、この端部が前記フォトカプラ１５の発光部
と受光部との間に入ると、前記フォトカプラ１５から位
置検出信号が出力される。

【００１７】また、ラジアル走査用のモータ１７の回転
軸に、ベアリング２１（図３においては図示省略）によ
って支持された中空のリヤシャフト１８が連結され、こ
のリアシャフト１８に、前記フロントシャフト７が摺動
可能に挿通されている。図４に示すように、前記フロン
トシャフト７にはキー溝１９が設けられており、このキ
ー溝１９に前記リヤシャフト１８に取り付けられたキー
２０が噛み合い、前記ラジアル走査用のモータ１７の回
転が前記リアシャフト１８から前記フロントシャフト７
に伝達されるとともに、前記リニア走査用のモータ１３
により前記フロントシャフト７が前記リアシャフト１８
内を摺動して進退動されるようになっている。

【００１８】尚、前記フロントシャフト７及び前記リヤ
シャフト１８は、導電性材料で形成されて接地されてお
り、さらに、前記フロントシャフト７と前記リヤシャフ
ト１８の内部に、超音波振動子ユニット２４に接続され
る同軸ケーブル２２とグランド強化用ケーブル２３とが
挿通されている。前記グランド強化用ケーブル２３は、
両端が前記フロントシャフト７と前記リヤシャフト１８
とに半田付け等でそれぞれ接続されており、前記フロン
トシャフト７と前記リヤシャフト１８とを同電位に保っ
て接地を強化し、ノイズを低減するようになっている。

【００１９】一方、図２に示すように、前記ハウジング
４には、圧電素子、整合層、吸入層等を有し、励振させ
ることにより超音波を放射する超音波振動子ユニット２
４が内蔵保持されており、この超音波振動子ユニット２
４は、例えばステンレススチール等からなる前記ハウジ
ング４に、超音波放射面を外側に向けた状態で固定され
ている。

【００２０】また、前記超音波振動子ユニット２４に前
記同軸ケーブル２２が接続され、この同軸ケーブル２２
は、前記ハウジング４の端部に設けられた孔の中に接着
剤等で固定された前記フレキシブルシャフト６内部を挿
通され、さらに、前記フロントシャフト７及び前記リヤ
シャフト１８の内部を挿通されて端部が前記走査駆動部
８を介して図示しない超音波観測装置に接続されてい
る。

【００２１】また、図１に示すように、前記ハウジング
４は、その外径面が前記シース２の内径面に近接し、例
えば０．１mm程度の隙間を有する一方、前記超音波振動
子ユニット２４の超音波放射面と反対側が長手方向に切
り落とされ、これにより、超音波伝達媒体５を前記ハウ
ジング４の長手方向前後に流動させるための流路２５が
形成されるようになっている。

【００２２】以上の構成による超音波プローブ１では、
図示しない超音波観測装置から同軸ケーブル２２を介し
て、例えば数ＭＨｚから数十ＭＨｚの電力を供給するこ
とにより、超音波振動子ユニット２４を励振させ、超音
波を被検体に放射する。

【００２３】被検体で反射した超音波は前記超音波振動
子ユニット２４で受信され、この超音波振動子ユニット
２４からの信号が、図示しない超音波観測装置で処理さ
れて図示しないモニタに被検体の断層画像が表示され
る。

【００２４】尚、このとき、前記同軸ケーブル２２が挿
通されるフロントシャフト７及びリアシャフト１８の接
地がグランド強化用ケーブル２３により強化されている
ため、ノイズが大幅に低減される。

【００２５】ここで、ラジアル走査用のモータ１７を回
転させると、キー２０及びキー溝１９を介してリアシャ
フト１８からフロントシャフト７に回転が伝達され、フ
レキシブルシャフト６に固定されたハウジング４が回転
する。そして、ハウジング４によって保持された前記超
音波振動子ユニット２４から、シース２の軸に直交する
方向に超音波が放射され、ラジアル走査が行なわれる。

【００２６】また、リニア走査用のモータ１３を回転さ
せると、ボールネジ１２が回転し、このボールネジ１２
に噛合する支持部材１１が直進運動を行なう。その結
果、前記フロントシャフト７を介して前記ハウジング４
が前記シース２の軸方向に移動し、スイッチ用部材１４
の端部がフォトカプラ１５の発光部と受光部との間に入
って位置検出信号が出力されると、この位置検出信号に
より前記リニア走査用のモータ１３の回転方向が反転さ
れ、リニア走査範囲内で前記ハウジング４が進退動を繰
り返す。

【００２７】この際、超音波伝達媒体５が流路２５を通
ってハウジング４の前後に流動するため、ハウジング４
の動きを妨げることがなく、前記ハウジング４が滑らか
に移動してリニア走査性が大幅に向上する。さらに、前
記リニア走査用のモータ１３と前記ラジアル走査用のモ
ータ１７とを同時に回転させると、前記ハウジング４が
螺旋状に動いてスパイラル走査を実現でき、ラジアル走
査、リニア走査、スバイラル走査のいずれの走査を行な
う際にも、シース２とハウジング４との間に介在する超
音波伝達媒体５が潤滑剤となり、ハウジング４によって
保持された超音波振動子ユニット２４をシース２に対し
てブレることなく走査することができ、鮮明な超音波像
を得ることができる。

【００２８】図５は、本実施例の第２実施例に係わり、
シース軸に直交する方向の断面図である。尚、以下の実
施例において、前述の第１実施例と同様のものについて
は、同一の符号を付してその説明を省略する。

【００２９】本実施例の超音波プローブ２９は、図５に
示すように、前述の第１実施例におけるシース２を、内
周面に溝を形成したシース３０とし、この溝により超音
波伝達媒体５の流路３２を形成したものである。

【００３０】すなわち、シース３０内径面に、超音波振
動子ユニット２４を保持する円筒状のハウジング３１が
摺動可能に近接させられる一方、前記超音波振動子ユニ
ット２４の超音波放射面と反対側の前記シース３０の内
周面に溝が設けられ、この溝により超音波伝達媒体５の
流路３２が形成される。

【００３１】前記流路３２は、前記シース３０の長手方
向に、直線状、螺旋状、あるいは、蛇行状に適宜形成さ
れ、このような構成による本実施例においても、前述の
第１実施例と同様の作用・効果が得られることはいうま
でもない。

【００３２】また、図６は本発明の第３実施例に係わ
り、シース軸に直交する方向の断面図である。

【００３３】本実施例の超音波プローブ３９は、リニア
走査型の超音波プローブであり、この超音波プローブ３
９は、シース４０の軸方向に直交する方向の断面形状が
略四角形となっている。そして、前記シース４０内面に
略四角形の断面形状のハウジング４１が摺動可能に近接
され、超音波振動子ユニット２４が保持されている。前
記ハウジング４１には、前記超音波振動子ユニット２４
の超音波放射面と反対側に、前記ハウジング４１を貫通
する貫通孔が穿設され、この貫通孔により超音波伝達媒
体５の流路４２が形成されている。

【００３４】このような構成においては、ハウジング４
１のシース４０の軸方向の移動に際して超音波伝達媒体
５が流路４２を通って流動し、円滑なリニア走査が実現
できるばかりでなく、超音波振動子ユニット２４が回転
方向にずれることがないため、適確なリニア走査を実現
できる。

【００３５】尚、本実施例においては、図示しない他の
部材も、リニヤ走査に適合するようになっており、ま
た、シース４０及びハウジング４１は、略四角形に限ら
ず、多角形、楕円形等の回転方向へのずれを抑止できる
形状が適宣選択できる。さらに、超音波伝達媒体５の流
路４２も、円形に限らず、四角形、楕円形等の形状を適
宣選択できることはいうまでもない。

【００３６】

【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、超
音波プローブは、流路を設けることによってシース内に
おけるハウジングの軸方向の移動が円滑に行われ、更
に、円筒状のシースの内部に配置するハウジングを略円
柱状に形成することによってハウジング自身に軸受けの
機能を持たせている。よって、ハウジングの軸周りの回
動を支持するための軸受け機構を別途設ける必要がなく
なる、という顕著な効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１実施例に係わり、シース軸に直交
する方向の断面図

【図２】本発明の第１実施例に係わり、シース軸方向の
断面図

【図３】本発明の第１実施例に係わり、走査駆動系の概
略構成図

【図４】本発明の第１実施例に係わり、シャフト連結部
の構成を示す説明図

【図５】本発明の第２実施例に係わり、シース軸に直交
する方向の断面図

【図６】本発明の第３実施例に係わり、シース軸に直交
する方向の断面図

【符号の説明】

１ 超音波プローブ ２ シース ４ ハウジング ５ 超音波伝達媒体 ２４ 超音波振動子ユニット ２５ 流路

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 円筒状のシースと、このシースの内部に接するよう略円柱状に形成され、該
   シースに対して軸方向に摺動可能、かつ軸周りに回動可
   能に配置されたハウジングと 、このハウジングに保持され、前記シースの外側に超音波
   送受波面を向けた 超音波振動子ユニットと、前記シースの内周面もしくはハウジングの外周面に設け
   られ、前記シース内に充填された超音波伝達媒体を前記
   ハウジングの前後の位置で流動可能にする 流路と、を具備することを 特徴とする超音波プローブ。
2. 【請求項２】 前記流路は、前記ハウジングの外周面を
   切り欠くことで形成されることを特徴とする請求項１記
   載の超音波プローブ。
3. 【請求項３】 前記流路は、前記シースの内周面に溝を
   設けることで形成されることを特徴とする請求項１記載
   の超音波プローブ。