JP3074335B2 - 透湿性防水布帛及びその製造方法 - Google Patents
透湿性防水布帛及びその製造方法Info
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Description
量(水蒸気透過量)の変化する透湿性防水布帛及びその
製造方法に関するものである。
けれども水は透過させないものであり、スポーツ用衣料
やレインコートの生地として好適なものである。つま
り、外部からの雨水等は透過させないけれども、身体か
ら発生する汗は外部へ放出し、身体が雨水等で濡れるの
を防止すると共に身体の蒸れを防止できるからである。
従来より、このような透湿性防水布帛として、各種のタ
イプの布帛が使用されている。例えば、繊維布帛上に、
ウレタン系高分子フィルムを積層した透湿性防水布帛が
知られている。この透湿性防水布帛は、ウレタン系高分
子フィルムの存在によって水を透過させず、且つこのフ
ィルムを構成しているウレタン系高分子鎖間の間隙の存
在によって水蒸気を透過させるというものである。そし
て、この透湿性防水布帛は、外気温度が変化しても、そ
の透湿量は一定であった。
定である透湿性防水布帛は、それを衣料用生地として使
用した場合、身体にとって次のような欠点が生じる。即
ち、外気温度が高いときは、身体からの発汗量が多くな
るのであるから、透湿量も多くならなければ、身体が蒸
れるという欠点を生じる。逆に、外気温度が低いとき
は、身体からの発汗量が少なくなるのであるから、透湿
量も少なくならなければ、身体が冷えるという欠点を生
じる。
は、外気温度の変化によって、透湿性防水布帛の透湿量
を変化させることについて、種々研究を行なった。その
結果、ウレタン系高分子フィルムには、次のような性質
があることが判明した。即ち、ガラス転移温度を境とし
て透湿量が著しく変化することが判明したのである。本
発明は、ウレタン系高分子フィルムのこの性質を利用し
てなされたものであり、透湿性防水布帛の材料として、
ある一定のガラス転移温度を持つウレタン系高分子フィ
ルムを使用することにより、外気温度が高くなれば透湿
量が多くなり、外気温度が低くなれば透湿量が少なくな
るようにして、外気温度に拘らず、身体を快適な環境に
おこうとするものである。
帛の少なくとも片面にウレタン系高分子フィルムが積層
されてなり、該ウレタン系高分子フィルムのガラス転移
温度は0〜60℃の範囲内であり、且つ該ポリウレタン系
高分子の重量平均分子量は15000以上であることを特徴
とする透湿性防水布帛及びその製造方法に関するもので
ある。
の少なくとも片面にウレタン系高分子フィルムが積層さ
れてなるものである。本発明で使用するウレタン系高分
子フィルムの最大の特徴は、ガラス転移温度が0〜60℃
の範囲内にあることである。従来より使用されているウ
レタン系高分子フィルムは、そのガラス転移温度が−20
〜−60℃程度であり、この点で本発明で使用するウレタ
ン系高分子フィルムと決定的に相違する。ここで、ガラ
ス転移温度を0〜60℃の範囲内とした理由は、外気の温
度が概ねこの範囲内で変化するからである。従って、ウ
レタン系高分子フィルムのガラス転移温度は、外気の一
般的な温度範囲である10〜40℃であるのが好ましい。
子フィルムのガラス転移温度を20℃に設定したとする
と、外気の温度が20℃未満になると透湿量が少なくな
り、外気の温度が20℃以上になると透湿量が多くなる。
このウレタン系高分子フィルムを使用した透湿性防水布
帛は、それを衣料用生地に用いた場合、外気の温度が20
℃以上になると身体からの汗が外部へ放出され、逆に外
気の温度が20℃未満になると身体からの汗は外部へ放出
されにくくなる。従って、身体にとって非常に快適であ
る。これに対し、従来のウレタン系高分子フィルムを使
用した透湿性防水布帛は、そのガラス転移温度が−20℃
以下であるため、外気の温度(一般的に0℃以上)がガ
ラス転移温度以下になることはない。従って、透湿性防
水布帛の透湿量は一定であり、外気の温度に拘らず、身
体からの汗を外部へ放出する量も一定になる。従って、
身体が蒸れたり或いは身体にとって寒く感じるというこ
とが生じるのである。なお、本発明において、ウレタン
系高分子フィルムのガラス転移温度は、以下の方法によ
って測定されるものである。即ち、DSC法(差動走査
計熱量計)により、昇温速度20℃/minで且つ窒素ガス
雰囲気で、測定されるものである。
の重量平均分子量は、15000以上である。ウレタン系高
分子の重量平均分子量が15000未満になると、ウレタン
系高分子フィルムの強度が低下し、破断しやすくなった
り或いは亀裂が生じたりする。従って、得られる透湿性
防水布帛の防水性が低下し、好ましくない。なお、ウレ
タン系高分子の重量平均分子量は、以下の方法によって
測定する。即ち、ウレタン系高分子のジメチルホルムア
ミド溶液を試料とし、キャリア溶剤にはジメチルホルム
アミドを用い、検出器には屈折計を使用して、ゲルパー
メーションクロマトグラフ法(GPC法)により、測定
されるものである。
えば以下の如き方法で製造することができる。即ち、O
CNR1NCOで表わされるジイソシアネートと、HO
R2OHで表わされるジオールとを共重合させてウレタ
ンプレポリマーを得、このウレタンプレポリマーをHO
R3OHで表わされる鎖成長剤と反応させて、ウレタン
系高分子を得ることができる。このようにして得られた
ウレタン系高分子は、一般的に、OCN(R1NHCO
OR2OCONH)mR1NHCOOR3OCONH(R1
NHCOOR2OCONH)nR1NCO[但し、m及び
nは正の整数を表わし、特に1〜16である。]で表わさ
れる。このウレタン系高分子のガラス転移温度は、
R1,R2,R3の剛直性,分子量,分子容,極性等によ
って決まり、更にm及びnの数等によって決まる。従っ
て、本発明においては、ウレタン系高分子のガラス転移
温度が所望の値を取るように、これらを決定するのであ
る。一般的に、R2,R3の分子量が大きくなるほどガラ
ス転移温度が降下し、またR1,R2,R3の剛直性が増
すほど上昇する。
トルエンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジ
イソシアネート、カンボジイミド変性の4,4'-ジフェニ
ルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシア
ネート等を使用することができる。また、ジオールの具
体例としては、ポリプロピレングリコール、1,4-ブタン
グリコールアジペート、ポリテトラメチレングリコー
ル、ビスフェノール−A+プロピレンオキサイド等を使
用することができる。また、鎖延長剤の具体例として
は、エチレングリコール、1,4-ブタングリコール、ビス
(2-ハイドロキシエチル)ハイドロキノン、ビスフェノ
ール−A+エチレンオキサイド、ビスフェノール−A+
プロピレンオキサイド等を使用することができる。
る繊維布帛としては、木綿,麻等の天然セルロース繊
維、羊毛,絹等の天然タンパク質繊維、レーヨン,アセ
テート等の再生セルロース繊維、ポリエステル,ポリア
ミド,ポリアクリロニトリル等の合成繊維等の繊維、又
はこれらの繊維の二種以上の混用よりなる織物,編物,
不織布等が用いられる。
しては、以下に示す二つの方法が好ましい。第一には、
繊維布帛の少なくとも片面に、ウレタン系高分子溶液を
均一に塗布して塗布層を形成した後、該塗布層を乾燥し
てウレタン系高分子フィルムを生成させる方法である。
ウレタン系高分子溶液としては、ウレタン系高分子を溶
剤に溶解させた溶剤溶液、又はウレタン系高分子を水溶
液中に懸濁させた水系エマルジョンを使用することがで
きる。溶剤溶液を調整する場合には、ジメチルホルムア
ルデヒド,ジメチルアセトアミド,ジメチルスルホキシ
ド,メチルエチルケトン,2-ブタノン等の有機溶剤を溶
媒として、粘度2000〜50000cpsとするのが、好ましい。
粘度が2000cps未満であると、繊維布帛表面に塗布して
も、フィルムを形成しにくくなり、防水性を付与しにく
くなる傾向が生じる。また、粘度が50000cpsを超える
と、溶剤溶液の流動性が低下し、厚さの均一なフィルム
を形成しにくくなる傾向が生じる。ウレタン系高分子溶
液を繊維布帛表面に塗布するには、ナイフコーターやバ
ーコーター等の従来公知のコーティング設備を利用すれ
ばよい。また、ウレタン系高分子溶液として水系エマル
ジョンを使用する場合には、前記のコーティング設備の
他に、グラビア捺染機,ロータリー捺染機を利用するこ
ともできる。また、繊維布帛表面にウレタン系高分子溶
液を塗布する前に、予め繊維布帛表面をポリフッ化ビニ
ル樹脂等で加工しておくのが、好ましい。これは、繊維
布帛表面へのウレタン系高分子溶液の塗布を均一にで
き、したがって生成するフィルムが均一になりやすく、
更に得られる透湿性防水布帛の風合がソフトになりやす
いからである。また、同様の理由で、予め繊維布帛をカ
レンダー処理して、その表面を平坦にしておくことも、
好ましい。
子フィルムと繊維布帛とを準備しておき、両者を貼合す
る方法である。ウレタン系高分子フィルムを製造する方
法としては、ウレタン系高分子を融点以上で熱溶融して
巾広のスリットから押し出し成形する方法や、ウレタン
系高分子溶液を離型紙上に均一に塗布し乾燥する方法等
が挙げられる。ウレタン系高分子フィルムと繊維布帛と
を貼合する方法としては、繊維布帛表面又はウレタン系
高分子フィルム表面に、ポリウレタン系接着剤やポリア
クリル系接着剤等の接着剤を施しておき、この接着剤に
よって両者を貼合すればよい。また、熱溶融したウレタ
ン系高分子を押し出し成形してフィルムを形成しなが
ら、未だフィルムが軟化状態のときに繊維布帛と積層
し、フィルムの粘着力で両者を貼合してもよい(いわゆ
る押し出しラミネート法)。
湿性防水布帛は、一般的に、ガラス転移温度を境にして
透湿量が3〜5倍程度変化するものである。即ち、ウレ
タン系高分子フィルムのガラス転移温度以上における透
湿量は、ウレタン系高分子フィルムのガラス転移温度未
満における透湿量の約3〜5倍程度になるのである。そ
して、本発明に係る透湿性防水布帛は、ウレタン系高分
子フィルムのガラス転移温度が室温程度に設定されてい
るので、外気の温度変化によって透湿量が変化するので
ある。また、本発明に係る透湿性防水布帛は、ウレタン
系高分子フィルムよりなる層が存在するため、一般的
に、耐水圧が1000mmHg程度以上であり、防水性に優れた
ものである。従って、本発明に係る透湿性防水布帛は、
ウポーツウェアーの他に、レインコート,手術着,作業
服等に好適に使用しうるものである。
的に説明する。なお、実施例中における布帛の性能評価
は、下記の方法で行なった。 (1)透湿性 JIS L-1099(A-1法)により、所定の温度で透湿量を測
定した。単位は、水蒸気圧差を1atmとした時の透湿量と
した。 (2)耐水性 JIS L-1092(イ)静水圧法により、耐水度を測定した。
ムアミド溶液(三菱重工業株式会社製形状記憶ポリマ
ー、商品名「ダイアリティ」溶液タイプMS2500)を準備
した。このウレタン系高分子は、ジメチルホルムアミド
中で重合されたものであり、その濃度は30重量%であ
り、25℃における粘度は95000cpsであった。また、ウレ
タン系高分子のガラス転移温度は25℃であり、その重量
平均分子量は、25000であった。このジメチルホルムア
ミド溶液を、同量の1,1,1-トリクロロエタンで希釈し
て、粘度9000cpsのウレタン系高分子溶液を得た。
33、濃度3%)で撥水加工したナイロンタフタ(75d/48
f/3、120×85)に、ナイフコーターでウレタン系高分
子溶液を厚さ0.1mmとなるようにコーティングし、乾燥
した。以上のようにして得られた透湿性防水布帛は、ナ
イロンタフタにウレタン系高分子フィルムが積層されて
なるものであり、ウレタン系高分子フィルムのガラス転
移温度は25℃であった。また、この透湿性防水布帛の各
温度における透湿量及び耐水度を表1に示した。
タン系高分子を使用する以外は、実施例1と同様の方法
で透湿性防水布帛を得た。この透湿性防水布帛中のウレ
タン系高分子フィルムのガラス転移温度は、−40℃であ
った。この透湿性防水布帛の各温度における透湿量及び
耐水度を表1に示した。
ド溶液(三菱重工業株式会社製形状記憶ポリマー、商品
名「ダイアリティ」溶液タイプMS2000)を準備した。こ
のウレタン系高分子は、ジメチルホルムアミド中で重合
されたものであり、その濃度は45重量%であり、25℃に
おける粘度は95000cpsであった。また、ウレタン系高分
子のガラス転移温度は20℃であり、その重量平均分子量
は、25000であった。このウレタン系高分子溶液を、シ
リコーンフィルムをコートした離型紙上に塗布し、乾燥
して厚さ15μmのウレタン系高分子フィルムを形成し
た。このウレタン系高分子フィルムを、木綿100%のス
ムース生地(40番手、30inch、24G)にウレタン系接着
剤を介して積層し、両者を貼合した。このようにして得
られた透湿性防水布帛中のウレタン系高分子フィルムの
ガラス転移温度は、20℃であった。そして、この透湿性
防水布帛の各温度における透湿量及び耐水度を表2に示
した。
タン系高分子を使用する以外は、実施例2と同様の方法
で透湿性防水布帛を得た。この透湿性防水布帛中のウレ
タン系高分子フィルムのガラス転移温度は、−40℃であ
った。この透湿性防水布帛の各温度における透湿量及び
耐水度を表2に示した。
シアネート(三菱化成株式会社製、商品名「ダウイソシ
アネート125M」)を、ポリオール成分としてポリプロピ
レングリコール(三洋化成工業株式会社製、商品名「PP
-1000」)を、鎖延長剤として1,4-ブタンジオール(三
菱化成株式会社製)を使用して、ガラス転移温度25℃、
重量平均分子量25000のウレタン系高分子を得た。この
ウレタン系高分子を溶融状態とし、スリット巾0.2mmの
スリットダイより押し出しながら、ポリエステルトリコ
ット上に積層して、両者を貼合した。以上のようにして
得られた透湿性防水布帛は、ウレタン系高分子フィルム
の厚さが7μmであり、ガラス転移温度は25℃であっ
た。そして、この透湿性防水布帛の各温度における透湿
量及び耐水度を表3に示した。
は、実施例3と同様の方法で透湿性防水布帛を得た。こ
の透湿性防水布帛中のポリエチレンフィルムのガラス転
移温度は、−25℃であった。この透湿性防水布帛の各温
度における透湿量及び耐水度を表3に示した。
に係る透湿性防水布帛は、ガラス転移温度が室温程度の
ウレタン系高分子フィルムを備えているので、室温がガ
ラス転移温度未満になると透湿量が低下し、室温がガラ
ス転移温度以上になると透湿量が増大する。従って、外
気温度が上がると、透湿性防水布帛の透湿量が増大し、
身体から発生する汗を良好に外部に放出し、逆に外気温
度が下がると、透湿量が低下し身体からの汗を外部に放
出しにくくなる。依って、実施例に係る透湿性防水布帛
を衣料用の生地として使用すれば、外気温度の高低によ
らず、身体を快適な環境におくことができる。これに対
し、比較例に係る透湿性防水布帛は、外気温度の高低に
拘らず、透湿量がほぼ一定であるため、外気温度の高低
によって、身体が蒸れたり或いは冷えたりすることにな
る。
ン系高分子フィルムは、前記したようにガラス転移温度
を室温程度に設定したものである。そして、ガラス転移
温度を境として、その透湿量が著しく変化する。この透
湿量が変化する理由は、定かではないが、以下のように
考えられる。即ち、一般に高分子のガラス転移温度は、
高分子鎖中の一定長のセグメントの液体状運動の始点に
相当する。従って、ガラス転移温度以上では高分子鎖の
自由体積が、急激に増大する。自由体積が増大するとい
うことは、高分子鎖間における間隙が増大するというこ
とである。依って、この間隙を水分子が透過しやすくな
り、透湿量が増大するものと考えられるのである。
防水布帛は、ガラス転移温度が室温付近に設定されたウ
レタン系高分子フィルムを備えているため、ガラス転移
温度未満では透湿量が少なく、ガラス転移温度以上では
透湿量が著しく増大する。従って、本発明に係る透湿性
防水布帛を使用して衣料を作成すれば、外気温度が高く
なって身体からの発汗が多くなると、その汗を良好に外
部に放出し、逆に外気温度が低くなって身体からの発汗
が少なくなると、汗や体温等を外部に放出しにくくな
る。依って、外気温度の高いときには身体が涼しく感じ
られ、外気温度が低いときには身体が暖かく感じられ、
常に身体にとって快適な環境を提供するという効果を奏
するものである。また、本発明に係る透湿性防水布帛
は、ウレタン系高分子フィルムの層を備えているので、
これを使用して衣料を作成すれば、防水性に優れた衣料
を得ることができるという効果も奏する。
Claims (3)
- 【請求項1】 繊維布帛の少なくとも片面にウレタン系
高分子フィルムが積層されてなり、該ウレタン系高分子
フィルムのガラス転移温度は0〜60℃の範囲内であり、
且つ該ポリウレタン系高分子の重量平均分子量は15000
以上であることを特徴とする透湿性防水布帛。 - 【請求項2】 繊維布帛の少なくとも片面に、ウレタン
系高分子溶液を均一に塗布して塗布層を形成した後、該
塗布層を乾燥してウレタン系高分子フィルムを生成させ
ることを特徴とする請求項1記載の透湿性防水布帛の製
造方法。 - 【請求項3】 ウレタン系高分子フィルムを、繊維布帛
の少なくとも片面に貼合することを特徴とする請求項1
記載の透湿性防水布帛の製造方法。
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