JP3072096U - 耐候光性試験装置 - Google Patents

耐候光性試験装置

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長市 須賀
哲也 木村
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 放電初期における放電の不安定化の要因を解
消し、ランプ乃至電極に過大な負荷を与えないようにし
てランプ寿命を延ばす手段の提供。 【解決手段】 規定値による放電電力制御を開始する前
の前駆点灯制御回路(10)として、起動回路(7)に
電源回路(3)を共働させて尖頭電圧を前記電極に印加
し、放電が開始された後に、第1の電力制御回路(4)
により所定の低い定電力で一定時間前記放電を持続さ
せ、前記一定時間経過後に、コンピュータ(9)と時間
制御回路(8)により、第2の電力制御回路(5)を付
勢して、規定値による放電電力と前記定電力との差分を
重畳させて、本来の試験条件である前記規定値による放
電電力での点灯状態へ切り替える手段とで構成。

Description

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
塗料、プラスチックなどの各種工業材料の有する諸材料特性のうち、耐候光性 について調べる試験装置において用いられる放電灯に関するものであり、より詳 細には、耐候光性試験が長時間に及ぶため、放電灯自体に長期耐久性が求められ ることから、放電灯点灯初期における電極の過負荷を防ぎ、その寿命を延ばすた めの工夫を、放電灯の点灯回路に求めた耐候光性試験装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
放電灯の主な構成要素は、図4に示すように、発光管、電極、及び発光管内の 封入物である。より詳細には、発光管の内部に一対の電極が封入され、各電極の 一端にリード棒が接続され、そのリード棒を包んで発光管内壁とを密着するモリ ブデン等の箔でシールして、発光管内部の封入物を外気と遮断する構造である。 前記電極には、トリウムタングステンなどの電子が放出されやすい材料が使用 され、或いは封入物としては、放電管の種類によって、キセノンガスであったり 、沃化鉄や、沃化錫などのハロゲン化金属とクリプトン、アルゴン等の希ガスで あったりする。
【0003】 殊に、前記ハロゲン化金属が封入されているメタルハライドランプにおいて、 一般の照明用のものでは、ハロゲン化物の蒸気圧を高くするために、発光管は同 一電力の水銀灯に比べ小形にして管壁負荷を大きくし、管壁温度を高くしている 。更に、発光管端部は酸化アルミニウムの粉末などの保温材料で被覆してある。
【0004】 これに対し、耐候光性試験装置用のメタルハライドランプは、定格電力が照明 用のものに比べ、大きく多種類であり、例えば、6kW定格の場合、電極間距離 即ち発光長が500mmにも及び、また、発光管容積も約200ccと大きくな る。従って、長時間に及ぶ耐候光性試験では、点灯継続が容易であり、電極に過 大な負荷を与えず、ランプ寿命が長いことが求められ、この点で一般の照明用の もの以上に、ハロゲン化物の蒸気圧を高くするための工夫が必要であった。
【0005】 このハロゲン化物の蒸気圧を高くするための工夫について、本考案人による特 許第2975564号がある。これによれば、放電灯の製造工程上において、通 常、ハロゲン化金属は、数種類の粒子状のメタルハライドとして封入されている が、それらは蒸気圧の高いものから低いものまであることから、蒸気圧の低いメ タルハライドは加熱して蒸気の形で封入することによって蒸気圧が均一化すると いうものである。しかし、これでも必ずしも充分ではなく、更なる工夫を点灯回 路に求めたのが本考案である。
【0006】
【考案が解決しようとする課題】
従来、この放電灯(以下ランプということがある)の点灯を制御するには、初 めに電源装置から放電灯に初期電圧が供給され、直ちに又は数秒後に尖頭電圧を 与えて後、放電が開始したことを自動に検知して、規定値の制御電圧に自動に切 り換え、点灯を継続していた。しかし、放電が開始してから、規定値の制御電圧 に切り換えるまでの間においては、放電灯の個々の特性から安定した放電が維持 できなかったり、立ち消えの危険があった。 即ち、放電灯毎に、放電灯内の封入物の種類の違い、ガス圧、或いは封入発光 物質の蒸気圧に差がある等によって、電圧、電流の制御が相違し、特に、放電開 始直後の電圧、電流の制御は各ランプの寿命にとって重要である。
【0007】 特に、数種類のハロゲン化金属と希ガスからなるメタルハライドランプにおい て、耐候光性試験装置に用いられるものは幾種類もの定格のランプが有り、それ ぞれ電極間距離も異なり、更に、空冷式のため発光管の容積も大きく発光管内の 封入物の各ハロゲン化金属の蒸発の均一さが放電初期の安定に大きく影響する。
【0008】 例えば、定格6kWのメタルハライドランプにおいては、前記初期電圧は約1 200Vが供給され、印加電圧が与えられた後、一旦、ランプ電圧はゼロ近くに なり、この時ランプには約60Aの電流が流れる。この電流によるジュール熱が 発生し、ランプ温度は徐々に上昇する。そして、これとともにランプのインピー ダンスが増加し、電圧が上昇する一方、電流は減少する。そして、規定値の制御 電圧へ切り換えて、点灯が開始される。ところが、この規定値の制御電圧への切 り換えた時点では、ランプの定常状態に必要とされるランプ温度に達していない 為、点灯が不安定になる状態が存在した。図2に破線で示したランプ電圧曲線が このような状態を示している。
【0009】 即ち、放電灯の前記構成要素のうち、第一に放電灯の発光管内の封入物につい てみると、規定値による制御電圧へ切り換えるまでの間に、発光物質を含む封入 物の蒸気圧が均一に保たれている必要が有り、そのためには、発光管温度が一定 温度に保持される必要がある。しかし、発光管内の封入物が数種類含まれるメタ ルハライドランプのような放電灯の場合には、その封入物の種類によって蒸気圧 が異なるから、完全に蒸発するのに時間差が生じ、或いは発光管壁の最冷部内表 面に封入物の一部が凝縮されていて、これが発光出力のバラツキ、減少、或いは 立ち消えの原因となったりする。従って、ランプ温度を上昇させて完全に蒸発さ せる必要があった。
【0010】 第二に、電極についてみると、前記電極先端に与えられた印加電圧により強電 界が発生し、電子、イオンを加速して電極先端より電子が取り出され、電子が封 入物中の発光物質を発光させ、両極間に電流が繋がるとランプ電圧は低下し、ア ーク放電に移行する。この陰極内部において、エミッタの供給は電極低温部から 先端部へと拡散移動してくるから、放電のたびに徐々に電極先端部に純タングス テンが被膜となって結晶し、始動電圧を押し上げるようになり、また、イグニッ ションを何度も行うことになる。これはジュール熱の発生を促す一方で、電極の 損傷を生じていた。
【0011】 従って、前記イグニッションを一度行って、両極間に放電を開始させ、規定値 による放電制御までの放電持続を確実に行って、この間にランプの温度の上昇を 促し、立ち消えによる再イグニッションを行うことなく、規定値の電力制御へつ なげる手段が必要とされた。
【0012】 前述したように、耐候光性試験装置に用いられる放電灯に求められる条件は、 安定した点灯状態を維持し、長時間の使用に耐えうることであるから、従来、放 電が開始され、放電が持続し、安定した点灯状態になるまでに、放電のふらつき 、ときには立ち消えなどの不安定な状態が生じることは、ランプ、及び電極に負 担となっていた。この放電初期における放電の不安定化の要因を解消するために 、ランプ温度の定常状態までの昇温を充分行い、ランプ乃至電極に過大な負荷を 与えないようにしてランプ寿命を延ばす手段の提供を課題とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための手段として、以下のように構成した。 耐候光性試験装置(1)の光源である放電灯(2)の点灯回路において、第1に 、起動回路(7)に電源回路(3)を共働させて尖頭電圧を前記電極に印加し、 放電が開始された後に、コンピュータ(9)と時間制御回路(8)が作動し、第 1の電力制御回路(4)により所定の低い定電力で一定時間前記放電を持続させ るように構成する。
【0014】 第2に、前記一定時間経過後に、コンピュータ(9)と時間制御回路(8)が 作動して、前記第2の電力制御回路(5)を付勢して、規定値による放電電力と 前記定電力との差分を重畳させて、本来の試験条件である前記規定値のよる放電 電力での点灯状態へ切り替えるように構成し、これを係合させた点灯回路を具備 したことを特徴とする耐候光性試験装置とした。
【0015】
【考案の実施の形態】
考案の実施の形態をブロックダイアグラムを参照して説明する。図1は、本考 案の点灯制御回路の構成ブロックダイアグラムである。図3は、従来の点灯回路 の構成を示すブロックダイアグラムである。従来は、図3に示すように、放電灯 (2)は起動回路(7)及びイグナイタ(6)と接続され、図示しないシーケン サからのイグニッション信号がリレーを介して前記起動回路(7)に送られ、イ グナイタによる尖頭電圧が放電灯内の電極に与えられる。
【0016】 これに対し、本考案は図1に示すように、前記尖頭電圧は、放電開始を確実に 行うために、電源回路(3)と第1の電力制御回路(4)とが共動して数万ボル トの高圧になるようにしてある。即ち、封入ガスの熱電子による電離のためには 、十分なエネルギーが必要とされるから、この尖頭電圧を従来より高くなるよう にしてある。しかし、その継続時間は、0.5秒以内であり、より好適には0. 1秒以下である。
【0017】 この尖頭電圧の印加による放電開始をCTトランス、トランスジューサで構成 する検知回路(図示しない)により検知し、直ちに第1の電力制御回路(4)に 自動に切り換えて、低い電力で一定時間放電を持続させる。
【0018】 具体的には、メタルハライドランプの場合、前述したような放電の特性がある 。従って、電極間に電流が流れはじめ、ランプ温度が上昇し、発光管内の封入物 の蒸気圧が均一化するまでに時間を要する。そこで、電流監視回路(15)によ り放電電流を監視し、電圧調整器(14)を用い、急激な電圧の上昇を抑えなが ら、第1の電力制御回路(4)のインピーダンスと、メタルハライドランプのイ ンピーダンスとが均衡した時の電圧を検知し、この時の初期電圧より低い電圧を 維持し、放電を持続させ計時する。この低い電圧による放電の持続時間は、ラン プ個々の特性に応じて、それぞれ一定時間を設けるようにする。図2はこの電圧 を抑制しながら、放電の持続と規定値による放電に至る電圧の変化を示す実施例 である。
【0019】 なお、耐候光性試験方法のなかには、明暗法即ち点灯と消灯を繰り返す方法が 有り、このような消灯時にランプ温度の降下が少ない場合は、再放電直後からラ ンプ両端の電流、電圧を演算し、電力が出ていることを判断し、あらかじめ設定 した低い電圧による放電を持続させる一定時間を設けることも可能である。
【0020】 更に、本考案の実施例では、前記したような過大な初期電圧を与えることは、 本来回路への負荷が大きく、また、経済的でもないことを考慮し、前記規定値に よる放電電圧へ切り換えるまでは、初期電圧自体を10%以上低く押さえ、前記 規定値による放電電圧への切り換え時に本来の定格の初期電圧に昇圧して放電を 継続させた。
【0021】 キセノンランプの場合も、前記初期電圧より低い電圧で放電を持続させ計時す るが、この場合の低い電圧は、第1の電力制御回路(4)のインピーダンスと、 キセノンランプの特性により決まる立ち消えしない程度の低い電圧であり、例え ば、7.5kWキセノンランプにおいては、約150Vで放電を持続させる。
【0022】 このような低い電力による一定時間の放電の持続により、ランプの温度が充分 に上がり、封入物の蒸気圧が均一になり、ランプの放電状態が規定値による放電 電力制御が可能な状態になって、SCR及びリアクトル(図示しない)で構成さ れる第2の電力制御回路(5)を付勢する。
【0023】 この第2の電力制御回路(5)の付勢は、コンピュータ(9)と前記時間制御 回路(8)とにより、規定値による放電電力との差分を演算し、前記第1の電力 制御回路(4)による低い電圧による放電電力に重畳させるものである。
【0024】
【考案の効果】
このように、点灯回路を構成したことによって、ランプの寿命が延び、耐候光 性試験が数千時間に及ぶような場合でも、試験の間中安定した放電が持続できる ようになった。即ち、耐候光性試験装置内には、多くの試料が装着され、且つ試 験時間が試料グループ毎に異なるため、試験継続途中にも一旦消灯し、特定試料 を取り出し、再び点灯することが頻繁に行われる。このような放電灯にとって過 酷な条件にもかかわらず、放電灯の電極の損耗を防ぎランプ寿命が延びたことは 、耐候光性試験の試験コストを低減することにもなり、その効果は顕著である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の前駆点灯回路の構成を示すブロックダ
イアグラム。
【図2】本考案によるランプ電圧の変化を示す実施例
【図3】従来の点灯回路の構成を示すブロックダイアグ
ラム。
【図4】放電灯の一例であるメタルハライドランプの要
部断面図。
【図5】耐候光性試験装置の例を示す要部側断面図。
【符号の説明】
1 耐候光性試験装置 2 放電灯 3 電源回路 4 第1の電力制御回路 5 第2の電力制御回路 5′ 電力制御回路 6 イグナイタ 7 起動回路 8 時間制御回路 9 コンピュータ 10 前駆点灯制御回路 11 発光管 12 電極 13 封入物

Claims (1)

    【実用新案登録請求の範囲】
  1. 【請求項1】 耐候光性試験装置(1)の光源である放
    電灯(2)の点灯回路に関し、放電灯点灯初期における
    電極の過負荷を防ぎ、放電灯寿命を延ばすために、起動
    回路(7)に電源回路(3)を共働させて尖頭電圧を前
    記電極に印加し、放電が開始された後に、時間制御回路
    (8)と、コンピュータ(9)が作動し、第1の電力制
    御回路(4)により所定の低い定電力で一定時間前記放
    電を持続させ、前記一定時間経過後に、前記時間制御回
    路(8)と、コンピュータ(9)が作動し、第2の電力
    制御回路(5)を付勢して、規定値による放電電力と前
    記定電力との差分を重畳させて、本来の試験条件である
    前記規定値による放電電力での点灯状態へ切り替えるよ
    うに構成した点灯回路を具備したことを特徴とする耐候
    光性試験装置。
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