JP3068867B2 - エンジンバルブ用耐熱鋼 - Google Patents
エンジンバルブ用耐熱鋼Info
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動車等の内燃機関に
用いられるエンジンバルブ用耐熱鋼に関するものであ
る。
用いられるエンジンバルブ用耐熱鋼に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】従来、排気バルブ鋼には、高温強度、ガ
ソリン中に含まれる鉛や硫黄に対する耐食性、および耐
酸化性が適度に優れ、しかも安価な利点を有する高Mn
系耐熱鋼として知られる21−4N鋼(0.55C-0.2Si-9
Mn-4Ni-21Cr-0.4N)が広く用いられてきた。しか
し、近年、ガソリンエンジンの高効率、高出力化による
燃焼温度の上昇に伴い、21−4N鋼より、さらに高温
強度の優れたバルブ用耐熱鋼に対する要求が高まり、こ
れまでに、いくつかの鋼が提案されている(特開昭60-77
964号、特開昭59-211557号、特開昭63-89645号、特開平
1-219147号)。
ソリン中に含まれる鉛や硫黄に対する耐食性、および耐
酸化性が適度に優れ、しかも安価な利点を有する高Mn
系耐熱鋼として知られる21−4N鋼(0.55C-0.2Si-9
Mn-4Ni-21Cr-0.4N)が広く用いられてきた。しか
し、近年、ガソリンエンジンの高効率、高出力化による
燃焼温度の上昇に伴い、21−4N鋼より、さらに高温
強度の優れたバルブ用耐熱鋼に対する要求が高まり、こ
れまでに、いくつかの鋼が提案されている(特開昭60-77
964号、特開昭59-211557号、特開昭63-89645号、特開平
1-219147号)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】21−4N鋼の高温強
度改良を目的とした、上述の鋼は、いずれも0.25%以上
のCを含み、またV,Nb,Mo,W等の合金元素の添加量
を増加させている。これらの公知鋼の合金元素は比較的
高いC量からも判るように、炭化物の析出強化を主な目
的として添加されている。しかしながら、このような炭
化物の析出強化は850℃以上の高温強度に対して、必ず
しも満足のいく強化機構ではなく、より優れた耐熱鋼の
開発が望まれていた。また、高温強度向上を目的として
添加されるV,Nb,Moといった合金元素はかえって21
−4N鋼より耐酸化性を低下させるといった問題点もあ
った。
度改良を目的とした、上述の鋼は、いずれも0.25%以上
のCを含み、またV,Nb,Mo,W等の合金元素の添加量
を増加させている。これらの公知鋼の合金元素は比較的
高いC量からも判るように、炭化物の析出強化を主な目
的として添加されている。しかしながら、このような炭
化物の析出強化は850℃以上の高温強度に対して、必ず
しも満足のいく強化機構ではなく、より優れた耐熱鋼の
開発が望まれていた。また、高温強度向上を目的として
添加されるV,Nb,Moといった合金元素はかえって21
−4N鋼より耐酸化性を低下させるといった問題点もあ
った。
【0004】さらに、従来、21−4N鋼より高級材料
として、排気エンジンバルブ用合金にNi基超耐熱合金
のインコネル751(INCONELは商標である)が使用されてき
た。インコネル751の問題点としては、析出強化元素
であるガンマプライム相(Ni3(Al,Ti,Nb))が、高温
長時間加熱中に粗大化してしまい、正規熱処理後に比
べ、高温強度の低下が大きすぎること、およびインコ
ネル751は、Ni含有量が高いために、Sを含む腐食環境
中での減量が大きい。という2つの問題点があった。本
発明の目的は、21−4N系の高Mn耐熱鋼を基本組成
とし、かつNi基超耐熱合金であるインコネル751合金に
限りなく近い、あるいは一部の特性がインコネル751を
越えるような優れた高温強度と耐食性、耐酸化性を兼備
するエンジンバルブ用耐熱鋼を提供することである。
として、排気エンジンバルブ用合金にNi基超耐熱合金
のインコネル751(INCONELは商標である)が使用されてき
た。インコネル751の問題点としては、析出強化元素
であるガンマプライム相(Ni3(Al,Ti,Nb))が、高温
長時間加熱中に粗大化してしまい、正規熱処理後に比
べ、高温強度の低下が大きすぎること、およびインコ
ネル751は、Ni含有量が高いために、Sを含む腐食環境
中での減量が大きい。という2つの問題点があった。本
発明の目的は、21−4N系の高Mn耐熱鋼を基本組成
とし、かつNi基超耐熱合金であるインコネル751合金に
限りなく近い、あるいは一部の特性がインコネル751を
越えるような優れた高温強度と耐食性、耐酸化性を兼備
するエンジンバルブ用耐熱鋼を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上述の問
題点を鑑み、エンジンバルブ用耐熱鋼の強化手段として
従来の炭化物の析出強化よりも、むしろ各種元素の固溶
強化による強化を試みた。その結果、本発明の第1の特
徴として、Cを必要最小限の添加にとどめ、固溶強化元
素として置換型固溶強化元素のうち、耐酸化性の劣化の
度合いが少なく、最もクリープ強度向上に効果のあった
Wと侵入型固溶強化元素であるNの相互作用を組合せた
強化機構により、良好な耐酸化性と高温強度を兼ね備え
た特性を有する鋼を新規に見出したものである。さらに
本発明者らは、第2の特徴として、21−4N系の高M
n耐熱鋼において、従来オーステナイト生成元素とし
て、有意な差が見出されていなかったNiとCoのうち、
Coの適度な添加は、高温疲労強度の向上に大いに役立
つことも明らかにした。さらに、本発明の耐熱鋼の第3
の特徴は、先に述べた21−4N鋼の改良鋼と異なり、
耐酸化性に対し有害な作用を及ぼす元素であるVやMo
を添加しない点にある。
題点を鑑み、エンジンバルブ用耐熱鋼の強化手段として
従来の炭化物の析出強化よりも、むしろ各種元素の固溶
強化による強化を試みた。その結果、本発明の第1の特
徴として、Cを必要最小限の添加にとどめ、固溶強化元
素として置換型固溶強化元素のうち、耐酸化性の劣化の
度合いが少なく、最もクリープ強度向上に効果のあった
Wと侵入型固溶強化元素であるNの相互作用を組合せた
強化機構により、良好な耐酸化性と高温強度を兼ね備え
た特性を有する鋼を新規に見出したものである。さらに
本発明者らは、第2の特徴として、21−4N系の高M
n耐熱鋼において、従来オーステナイト生成元素とし
て、有意な差が見出されていなかったNiとCoのうち、
Coの適度な添加は、高温疲労強度の向上に大いに役立
つことも明らかにした。さらに、本発明の耐熱鋼の第3
の特徴は、先に述べた21−4N鋼の改良鋼と異なり、
耐酸化性に対し有害な作用を及ぼす元素であるVやMo
を添加しない点にある。
【0006】すなわち、本発明のうちの第1発明は、重
量%で、C 0.02%以上0.20%未満、Si 0.05〜1.0%、Mn
8.0〜12.0%、Ni 9.0〜15.0%、Co 1.0〜5.0%、Cr 1
8.0〜24.0%、W 4.0〜8.0%、Nb 0.01〜0.30%、N 0.35
〜0.55%、B 0.02%以下、および不可避の不純物を含
み、残部Feの組成の鋼からなることを特徴とするエン
ジンバルブ用耐熱鋼であり、第2発明は大気中におい
て、1000℃で100時間保持したときの酸化減量が5.0mg/c
m2以下、850℃の疲労強度が17kgf/mm2以上、900℃にお
ける引張強さが24kgf/mm2以上、および900℃における6k
gf/mm2の応力負荷時のクリープ破断寿命が50時間以上で
ある第1発明に記載のエンジンバルブ用耐熱鋼であり、
第3発明は、900℃で300時間保持後の900℃における引
張強さが18kgf/mm2以上であることを特徴とする第1発
明に記載のエンジンバルブ用耐熱鋼である。
量%で、C 0.02%以上0.20%未満、Si 0.05〜1.0%、Mn
8.0〜12.0%、Ni 9.0〜15.0%、Co 1.0〜5.0%、Cr 1
8.0〜24.0%、W 4.0〜8.0%、Nb 0.01〜0.30%、N 0.35
〜0.55%、B 0.02%以下、および不可避の不純物を含
み、残部Feの組成の鋼からなることを特徴とするエン
ジンバルブ用耐熱鋼であり、第2発明は大気中におい
て、1000℃で100時間保持したときの酸化減量が5.0mg/c
m2以下、850℃の疲労強度が17kgf/mm2以上、900℃にお
ける引張強さが24kgf/mm2以上、および900℃における6k
gf/mm2の応力負荷時のクリープ破断寿命が50時間以上で
ある第1発明に記載のエンジンバルブ用耐熱鋼であり、
第3発明は、900℃で300時間保持後の900℃における引
張強さが18kgf/mm2以上であることを特徴とする第1発
明に記載のエンジンバルブ用耐熱鋼である。
【0007】
【作用】まず、本発明における数値の限定理由について
述べる。Cは極めて強いオーステナイト生成元素で、基
地をオーステナイトにし、強度を上げるために必要な元
素であるので、最低0.02%を必要とする。しかし、C量
が増加するにつれて炭化物の生成量が増加し、0.20%以
上になると添加合金元素の多くが炭化物を生成し、850
℃以上の温度での基地の強化に役立たない。また、高温
のクリープ強度向上に対しては、結晶粒が適度な大きさ
に成長することが望ましく、このような炭化物の増加は
粒成長を抑制し、クリープ強度に対し有効でない。さら
に、過度のCの添加は、本発明鋼の主要強化元素である
Nの固溶度を低下させることになるので、Cの範囲を0.
02%以上0.20%未満に限定する。バルブ用耐熱鋼にあっ
て、C量をこのように低く限定していることは本合金の
1つの大きな特徴である。
述べる。Cは極めて強いオーステナイト生成元素で、基
地をオーステナイトにし、強度を上げるために必要な元
素であるので、最低0.02%を必要とする。しかし、C量
が増加するにつれて炭化物の生成量が増加し、0.20%以
上になると添加合金元素の多くが炭化物を生成し、850
℃以上の温度での基地の強化に役立たない。また、高温
のクリープ強度向上に対しては、結晶粒が適度な大きさ
に成長することが望ましく、このような炭化物の増加は
粒成長を抑制し、クリープ強度に対し有効でない。さら
に、過度のCの添加は、本発明鋼の主要強化元素である
Nの固溶度を低下させることになるので、Cの範囲を0.
02%以上0.20%未満に限定する。バルブ用耐熱鋼にあっ
て、C量をこのように低く限定していることは本合金の
1つの大きな特徴である。
【0008】Siは、溶解時の脱酸剤、ならびに高温で
の耐酸化性を付与するのに有効な元素であり、最低0.05
%を必要とする。しかし、1.0%を越えるSiは高温強度に
対して有効でないので、Siの範囲は0.05〜1.0%とし
た。
の耐酸化性を付与するのに有効な元素であり、最低0.05
%を必要とする。しかし、1.0%を越えるSiは高温強度に
対して有効でないので、Siの範囲は0.05〜1.0%とし
た。
【0009】Mnは、基地のオーステナイトを安定化さ
せ、高価なNi、Coの代替元素として作用する。また、
MnはNの固溶度も高めるので、最低限8.0%必要であ
る。しかし、12.0%を越えると高温強度を低下させ、ま
た、Crとの相乗作用で有害なシグマ相を析出しやすく
なるので、Mnは8.0〜12.0%とする。
せ、高価なNi、Coの代替元素として作用する。また、
MnはNの固溶度も高めるので、最低限8.0%必要であ
る。しかし、12.0%を越えると高温強度を低下させ、ま
た、Crとの相乗作用で有害なシグマ相を析出しやすく
なるので、Mnは8.0〜12.0%とする。
【0010】Crはバルブ用耐熱鋼の耐食性、耐酸化性
向上に不可欠な元素で、最低18.0%を必要とする。しか
し、24%を越えるとシグマ相が析出しやすくなるのでCr
は18.0〜24.0%に限定する。
向上に不可欠な元素で、最低18.0%を必要とする。しか
し、24%を越えるとシグマ相が析出しやすくなるのでCr
は18.0〜24.0%に限定する。
【0011】Niは基地のオーステナイトを安定化する
ために必要な元素であり、強度、耐食性、耐酸化性を保
つために、9.0%以上必要である。しかし、15%を超える
Niの添加は、本発明鋼の主要強化元素であるNの固溶
度を減ずることと、鋼を高価にすることのために、Ni
は9.0〜15.0%に限定する。
ために必要な元素であり、強度、耐食性、耐酸化性を保
つために、9.0%以上必要である。しかし、15%を超える
Niの添加は、本発明鋼の主要強化元素であるNの固溶
度を減ずることと、鋼を高価にすることのために、Ni
は9.0〜15.0%に限定する。
【0012】Coは、従来21−4N系の高Mn耐熱鋼に
おいて、耐PbO性の改良以外に特にオーステナイト生
成元素であるNiとの差を明確にはされていなかった。
本発明者らは、Coの影響を十分検討した結果、Coは積
層欠陥エネルギーを低下させ、疲労強度向上に対し、明
らかに効果をもたらすことがわかった。そのために必要
なCoは最低1.0%であるが、5.0%を超える過度の添加
は、さほど疲労強度の向上に役立たず、Nの固溶度を低
下させることと、いたずらに鋼の価格を高めるためにC
oは1.0〜5.0%とする。
おいて、耐PbO性の改良以外に特にオーステナイト生
成元素であるNiとの差を明確にはされていなかった。
本発明者らは、Coの影響を十分検討した結果、Coは積
層欠陥エネルギーを低下させ、疲労強度向上に対し、明
らかに効果をもたらすことがわかった。そのために必要
なCoは最低1.0%であるが、5.0%を超える過度の添加
は、さほど疲労強度の向上に役立たず、Nの固溶度を低
下させることと、いたずらに鋼の価格を高めるためにC
oは1.0〜5.0%とする。
【0013】WはMoと同族の元素でMoと同様、基地に
置換型原子として固溶すると同時に、一部が炭化物を生
成して高温強度を保つ。しかし、WはMoの2倍の原子
量をもつがゆえに、高温における拡散速度が小さく、そ
の結果、クリープ破断強度を向上する効果が大きい。ま
た、置換型固溶強化元素であるWは侵入型固溶強化元素
であるNとの相互作用により、それぞれ単独の添加の場
合に比べ、より一層高温強度向上に役立つ。また、Wは
Moと異なり、鋼の耐酸化性をほとんど低下させない。
以上の理由により、Wは本発明鋼の必須添加元素であ
り、4.0%未満では十分な高温強度が得られず、また、8.
0%を越えるWの添加はWの窒化物を生成し、固溶強度に
対し十分な効果をもたらさず、いたずらに鋼の比重と価
格を高めるだけなので、Wは4.0〜8.0%に限定する。同
族元素であるWとMoの差を明確にし、合金元素として
Wのみを含有することもまた、本発明の1つの特徴であ
る。
置換型原子として固溶すると同時に、一部が炭化物を生
成して高温強度を保つ。しかし、WはMoの2倍の原子
量をもつがゆえに、高温における拡散速度が小さく、そ
の結果、クリープ破断強度を向上する効果が大きい。ま
た、置換型固溶強化元素であるWは侵入型固溶強化元素
であるNとの相互作用により、それぞれ単独の添加の場
合に比べ、より一層高温強度向上に役立つ。また、Wは
Moと異なり、鋼の耐酸化性をほとんど低下させない。
以上の理由により、Wは本発明鋼の必須添加元素であ
り、4.0%未満では十分な高温強度が得られず、また、8.
0%を越えるWの添加はWの窒化物を生成し、固溶強度に
対し十分な効果をもたらさず、いたずらに鋼の比重と価
格を高めるだけなので、Wは4.0〜8.0%に限定する。同
族元素であるWとMoの差を明確にし、合金元素として
Wのみを含有することもまた、本発明の1つの特徴であ
る。
【0014】Nbは高温まで安定な微細一次炭化物を生
成し、オーステナイトの結晶粒粗大化を防止して、適度
な結晶粒径が得られ、その結果、良好な高温引張強度
と、クリープ破断強度が得られる。そのために、必要な
Nb量は0.01%以上であるが、0.30%を越える添加は耐酸
化性を著しく低下させるので、Nbの含有量は0.01〜0.3
0%とする。
成し、オーステナイトの結晶粒粗大化を防止して、適度
な結晶粒径が得られ、その結果、良好な高温引張強度
と、クリープ破断強度が得られる。そのために、必要な
Nb量は0.01%以上であるが、0.30%を越える添加は耐酸
化性を著しく低下させるので、Nbの含有量は0.01〜0.3
0%とする。
【0015】NはCと並ぶ強いオーステナイト生成元素
であるが、本発明鋼においてはCと異なってNb、W、
Cr等の合金元素とほとんど化合物を作らず、侵入型固
溶強化元素として働く。そのために、本発明鋼が目的と
する850℃以上の高温強度向上に対し上述の置換型固溶
強化元素とともに非常に有効に働く。より詳しくは、固
溶化処理+時効処理後の固溶窒素は、高温で長時間加熱
すると基地中に微細な窒化物を生成するが、その析出量
と成長速度が小さいために長時間高温に曝されても特性
の低下は比較的少ない。これに対して高級材料としてバ
ルブに使用されるインコネル751は正規の熱処理直後の
高温強度は本発明鋼より優れているものの、高温で長時
間加熱すると析出強化相であるガンマプライム相が凝集
する結果、本発明鋼を高温に長時間曝した後の高温強度
と同等になる。本発明鋼にこのような効果を付与するた
めに、Nは最低0.35%以上を必要とするが、本発明鋼の
組成範囲では、Nの固溶度は最大0.55%であるので、N
は0.35〜0.55%に限定する。
であるが、本発明鋼においてはCと異なってNb、W、
Cr等の合金元素とほとんど化合物を作らず、侵入型固
溶強化元素として働く。そのために、本発明鋼が目的と
する850℃以上の高温強度向上に対し上述の置換型固溶
強化元素とともに非常に有効に働く。より詳しくは、固
溶化処理+時効処理後の固溶窒素は、高温で長時間加熱
すると基地中に微細な窒化物を生成するが、その析出量
と成長速度が小さいために長時間高温に曝されても特性
の低下は比較的少ない。これに対して高級材料としてバ
ルブに使用されるインコネル751は正規の熱処理直後の
高温強度は本発明鋼より優れているものの、高温で長時
間加熱すると析出強化相であるガンマプライム相が凝集
する結果、本発明鋼を高温に長時間曝した後の高温強度
と同等になる。本発明鋼にこのような効果を付与するた
めに、Nは最低0.35%以上を必要とするが、本発明鋼の
組成範囲では、Nの固溶度は最大0.55%であるので、N
は0.35〜0.55%に限定する。
【0016】Bは微量添加により、結晶粒界に偏析し、
クリープ破断強度と熱間加工性改善に役立つが、そのた
めに有効な量は0.02%以下である。本発明に係わるエン
ジンバルブ用耐熱鋼は、上記した主要元素と、下記に示
す不可避の不純物と残部Feから構成される鉄基の合金
である。 P≦0.04% V≦0.1% Ca≦0.02% S≦0.03% Ta≦0.1% Cu≦0.30% Mg≦0.02%
クリープ破断強度と熱間加工性改善に役立つが、そのた
めに有効な量は0.02%以下である。本発明に係わるエン
ジンバルブ用耐熱鋼は、上記した主要元素と、下記に示
す不可避の不純物と残部Feから構成される鉄基の合金
である。 P≦0.04% V≦0.1% Ca≦0.02% S≦0.03% Ta≦0.1% Cu≦0.30% Mg≦0.02%
【0017】次に、本発明の第2発明の数値限定理由に
ついて解説する。本発明は前記組成の鋼を、溶解精錬
後、造塊し、鍛造または圧延等で所望の形状に成形す
る。次いで、21−4N鋼の標準的な溶体化処理温度で
ある1050〜1150℃の温度範囲で15〜60分の溶体化処理
後、急冷する。そして再び加熱して750℃前後にて1〜4
時間の時効処理をして、使用する。
ついて解説する。本発明は前記組成の鋼を、溶解精錬
後、造塊し、鍛造または圧延等で所望の形状に成形す
る。次いで、21−4N鋼の標準的な溶体化処理温度で
ある1050〜1150℃の温度範囲で15〜60分の溶体化処理
後、急冷する。そして再び加熱して750℃前後にて1〜4
時間の時効処理をして、使用する。
【0018】このようにして得られたエンジンバルブ用
耐熱鋼は、21−4N鋼以上の耐酸化性と、上述の21
−4N改良鋼以上の高温強度とを兼備させるために、以
下に示す特性を同時に満足することが望ましい。すなわ
ち、本発明鋼は大気中において、1000℃で100時間保持
したときの酸化減量が5.0mg/cm2以下、850℃の疲労強度
が17kgf/mm2以上、900℃における引張強さが24kgf/mm2
以上および900℃における6kgf/mm2の応力負荷時のクリ
ープ破断寿命が50時間以上とする。上記高温特性のうち
のひとつでも未達の場合には、エンジンバルブ用耐熱鋼
として不十分なため、それぞれの値を5.0mg/cm2以下、1
7kgf/mm2以上、24kgf/mm2以上および50時間以上に限定
する。さらに、本発明の第3発明の数値限定について解
説する。本発明鋼は、前述の21−4N鋼の標準的な溶
体化処理および時効処理を施した状態の特性だけでな
く、前記熱処理の後、高温に長時間曝した後の高温強度
が高いことが望ましい。具体的には、Ni基のエンジン
バルブ用合金として知られているインコネル751を正規
の熱処理後に900℃で300時間保持後の900℃における引
張強さとほぼ同等である18kgf/mm2以上の強度が望まし
い。したがって、本発明においては、900℃で300時間保
持後の900℃における引張強さが18kgf/mm2以上に限定す
る。
耐熱鋼は、21−4N鋼以上の耐酸化性と、上述の21
−4N改良鋼以上の高温強度とを兼備させるために、以
下に示す特性を同時に満足することが望ましい。すなわ
ち、本発明鋼は大気中において、1000℃で100時間保持
したときの酸化減量が5.0mg/cm2以下、850℃の疲労強度
が17kgf/mm2以上、900℃における引張強さが24kgf/mm2
以上および900℃における6kgf/mm2の応力負荷時のクリ
ープ破断寿命が50時間以上とする。上記高温特性のうち
のひとつでも未達の場合には、エンジンバルブ用耐熱鋼
として不十分なため、それぞれの値を5.0mg/cm2以下、1
7kgf/mm2以上、24kgf/mm2以上および50時間以上に限定
する。さらに、本発明の第3発明の数値限定について解
説する。本発明鋼は、前述の21−4N鋼の標準的な溶
体化処理および時効処理を施した状態の特性だけでな
く、前記熱処理の後、高温に長時間曝した後の高温強度
が高いことが望ましい。具体的には、Ni基のエンジン
バルブ用合金として知られているインコネル751を正規
の熱処理後に900℃で300時間保持後の900℃における引
張強さとほぼ同等である18kgf/mm2以上の強度が望まし
い。したがって、本発明においては、900℃で300時間保
持後の900℃における引張強さが18kgf/mm2以上に限定す
る。
【0019】
【実施例】本発明鋼、比較鋼および従来合金は、大気誘
導炉にて溶製し、10kgのインゴットにした後、1100℃加
熱で30mm角の棒材に鍛伸した本発明鋼および比較鋼の固
溶化処理は、1150℃で30分保持後、空冷とし、従来合金
の固溶化処理は1050℃で30分保持後空冷とした。さらに
本発明鋼、比較鋼および従来合金は750℃で4時間保持
後、空冷の時効処理を行なった。その後、所定の試験片
形状に加工し、実験に供した。確性試験項目は、850℃
−107回の回転曲げ疲労強度、900℃の引張強さ、900℃
−6kgf/mm2におけるクリープ破断寿命および1000℃×10
0時間(h)加熱(大気中)後の酸化減量である。さらに、本
発明鋼No.2と従来合金No.22については、55重量%Ca
SO4+30重量%BaSO4+10重量%Na2SO4+5重量%C
の混合腐食剤中で870℃×80時間(h)の腐食試験後の腐食
減量と、900℃×300時間(h)加熱後の900℃における引張
強さの測定を実施した。各試料の組成を表1に、また実
験結果を表2および表3に示す。
導炉にて溶製し、10kgのインゴットにした後、1100℃加
熱で30mm角の棒材に鍛伸した本発明鋼および比較鋼の固
溶化処理は、1150℃で30分保持後、空冷とし、従来合金
の固溶化処理は1050℃で30分保持後空冷とした。さらに
本発明鋼、比較鋼および従来合金は750℃で4時間保持
後、空冷の時効処理を行なった。その後、所定の試験片
形状に加工し、実験に供した。確性試験項目は、850℃
−107回の回転曲げ疲労強度、900℃の引張強さ、900℃
−6kgf/mm2におけるクリープ破断寿命および1000℃×10
0時間(h)加熱(大気中)後の酸化減量である。さらに、本
発明鋼No.2と従来合金No.22については、55重量%Ca
SO4+30重量%BaSO4+10重量%Na2SO4+5重量%C
の混合腐食剤中で870℃×80時間(h)の腐食試験後の腐食
減量と、900℃×300時間(h)加熱後の900℃における引張
強さの測定を実施した。各試料の組成を表1に、また実
験結果を表2および表3に示す。
【0020】
【表1】
【0021】
【表2】
【0022】
【表3】
【0023】試料No.1〜6は本発明鋼、No.11〜16は比
較鋼、No.21,22は従来合金である。従来合金のうち、
No.21は21−4N鋼であり、No.22はインコネル751
である。表3より、本発明鋼は、いずれも第3発明に記
載の限定値を全て満足する。それに対し、比較鋼No.11
と12は、それぞれNとCが低いために、疲労強度と引張
強さが本発明鋼に劣る。また、No.13のように、Cが高
くなりすぎても、高温強度は全て本発明鋼に劣るように
なる。また、比較鋼No.14は本発明鋼No.2のCoをNi
で置換した組成を持つが、両者を比べると比較鋼No.14
の疲労強度は明らかに低く、本発明鋼における疲労強度
の向上にCoがいかに貢献しているかが明らかである。
また、比較鋼No.15は、本発明鋼No.1のWの一部をMo
で置換した鋼であるが、この鋼もNo.1に比べると高温
強度は全て低く、特にクリープ破断寿命の差が大きい。
これは明らかに、WとMoの拡散速度に起因するもので
ある。また、No.15の酸化減量は、No.1に比べて大き
く、Moは本発明鋼の耐酸化性を劣化させることがわか
る。また、比較鋼No.16のような高Nb含有鋼は、高温
強度こそ本発明鋼並みの値を示すが、耐酸化性が著しく
悪いことがわかる。
較鋼、No.21,22は従来合金である。従来合金のうち、
No.21は21−4N鋼であり、No.22はインコネル751
である。表3より、本発明鋼は、いずれも第3発明に記
載の限定値を全て満足する。それに対し、比較鋼No.11
と12は、それぞれNとCが低いために、疲労強度と引張
強さが本発明鋼に劣る。また、No.13のように、Cが高
くなりすぎても、高温強度は全て本発明鋼に劣るように
なる。また、比較鋼No.14は本発明鋼No.2のCoをNi
で置換した組成を持つが、両者を比べると比較鋼No.14
の疲労強度は明らかに低く、本発明鋼における疲労強度
の向上にCoがいかに貢献しているかが明らかである。
また、比較鋼No.15は、本発明鋼No.1のWの一部をMo
で置換した鋼であるが、この鋼もNo.1に比べると高温
強度は全て低く、特にクリープ破断寿命の差が大きい。
これは明らかに、WとMoの拡散速度に起因するもので
ある。また、No.15の酸化減量は、No.1に比べて大き
く、Moは本発明鋼の耐酸化性を劣化させることがわか
る。また、比較鋼No.16のような高Nb含有鋼は、高温
強度こそ本発明鋼並みの値を示すが、耐酸化性が著しく
悪いことがわかる。
【0024】本発明鋼と従来合金のNo.21(21−4N
鋼)とを比較すると全ての点において本発明鋼がNo.21
を上回る特性を示すことがわかる。また、本発明鋼は従
来合金のNo.22(インコネル751)と比較しても、本発明
鋼のクリープ破断寿命はNo.22を上回るほどであり、そ
の他の特性においても従来の21−4N改良鋼の特性を
上回り、インコネル751にかなり近づいていることがわ
かる。表3より、本発明鋼No.2の腐食減量は、No.22
の1/5以下であり、Sを含む腐食環境中においては、イ
ンコネル751よりもはるかに耐食性に優れている。ま
た、900℃×300時間保持後の900℃における引張強さに
は、両者の差はほとんど見られず、本発明鋼がいかに高
温長時間の安定性に優れた鋼であるかがわかる。
鋼)とを比較すると全ての点において本発明鋼がNo.21
を上回る特性を示すことがわかる。また、本発明鋼は従
来合金のNo.22(インコネル751)と比較しても、本発明
鋼のクリープ破断寿命はNo.22を上回るほどであり、そ
の他の特性においても従来の21−4N改良鋼の特性を
上回り、インコネル751にかなり近づいていることがわ
かる。表3より、本発明鋼No.2の腐食減量は、No.22
の1/5以下であり、Sを含む腐食環境中においては、イ
ンコネル751よりもはるかに耐食性に優れている。ま
た、900℃×300時間保持後の900℃における引張強さに
は、両者の差はほとんど見られず、本発明鋼がいかに高
温長時間の安定性に優れた鋼であるかがわかる。
【0025】
【発明の効果】本発明によれば、従来の21−4N系の
高Mn耐熱鋼より飛躍的に優れた高温強度と耐酸化性を
有する鋼を提供することができる。しかも、本発明鋼の
長時間加熱後の高温強度はNi基超耐熱合金であるイン
コネル751並みとなる。したがって、本発明鋼を用いれ
ば、従来の21−4N系に比べて自動車エンジンバルブ
の使用温度を上昇させることができ、その結果、高出力
・高効率のエンジンが製造可能となる。
高Mn耐熱鋼より飛躍的に優れた高温強度と耐酸化性を
有する鋼を提供することができる。しかも、本発明鋼の
長時間加熱後の高温強度はNi基超耐熱合金であるイン
コネル751並みとなる。したがって、本発明鋼を用いれ
ば、従来の21−4N系に比べて自動車エンジンバルブ
の使用温度を上昇させることができ、その結果、高出力
・高効率のエンジンが製造可能となる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 柴田 新次 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (72)発明者 前田 千芳利 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (56)参考文献 特開 昭63−210260(JP,A) 特開 昭56−84445(JP,A) 特開 昭60−77964(JP,A) 特開 平1−219147(JP,A) 特開 昭51−40321(JP,A) 特開 平3−166342(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 302 C22C 38/58 F01L 3/02
Claims (3)
- 【請求項1】 重量%で、C 0.02%以上0.20%未満、Si
0.05〜1.0%、Mn 8.0〜12.0%、Ni 9.0〜15.0%、Co 1.
0〜5.0%、Cr 18.0〜24.0%、W 4.0〜8.0%、Nb 0.01〜
0.30%、N 0.35〜0.55%、B 0.02%以下、および不可避
の不純物を含み、残部Feの組成の鋼からなることを特
徴とするエンジンバルブ用耐熱鋼。 - 【請求項2】 大気中において、1000℃で100時間保持
したときの酸化減量が5.0mg/cm2以下、850℃の疲労強度
が17kgf/mm2以上、900℃における引張強さが24kgf/mm2
以上、および900℃における6kgf/mm2の応力負荷時のク
リープ破断寿命が50時間以上である請求項1に記載のエ
ンジンバルブ用耐熱鋼。 - 【請求項3】 900℃で300時間保持後の900℃における
引張強さが18kgf/mm2以上であることを特徴とする請求
項1に記載のエンジンバルブ用耐熱鋼。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP3025726A JP3068867B2 (ja) | 1991-01-25 | 1991-01-25 | エンジンバルブ用耐熱鋼 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP3025726A JP3068867B2 (ja) | 1991-01-25 | 1991-01-25 | エンジンバルブ用耐熱鋼 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH04247853A JPH04247853A (ja) | 1992-09-03 |
JP3068867B2 true JP3068867B2 (ja) | 2000-07-24 |
Family
ID=12173807
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP3025726A Expired - Fee Related JP3068867B2 (ja) | 1991-01-25 | 1991-01-25 | エンジンバルブ用耐熱鋼 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3068867B2 (ja) |
-
1991
- 1991-01-25 JP JP3025726A patent/JP3068867B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH04247853A (ja) | 1992-09-03 |
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