JP3068385B2 - スクロール型圧縮機 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明はスクロール型圧縮機に関
する。

【０００２】

【従来の技術】従来、冷凍装置などに組込まれるスクロ
ール型圧縮機においては図３に示されるものがある。す
なわち、ハウジング１の上部には圧縮機構が設けられ、
下部には図示しないモータが設けられている。圧縮機構
は、固定スクロール２と旋回スクロール３を有してい
る。固定スクロール２は端板４と、その内面に直立され
た渦巻状のラップ５とを有し、旋回スクロール３は端板
６と、その内面に直立された渦巻状のラップ７とを有し
ている。固定スクロール２と旋回スクロール３は相互に
偏心するとともに、１８０度の角度で相互に組み合わさ
れて複数個の密閉空間８が形成されている。旋回スクロ
ール３はハウジング１に固定されたケーシング９に摺動
自在に支持され、モータにより旋回公転されるようにな
っている。固定スクロール２はケーシング９に浮上自在
に支持されている。

【０００３】また、ハウジング１の頭部には圧縮機構が
設けられた部分と、それより上側の部分とを仕切るディ
スチャージカバー１０が設けられ、このカバー１０と固
定スクロール２とで逆止弁１１が形作られている。この
逆止弁１１は圧縮機構から高圧空間側へのガスの移動を
許容し、高圧空間から圧縮機構へのガスの逆流を阻止し
てガスの逆流による旋回スクロール３の逆転、すなわち
旋回スクロール３が固定スクロール２との間の密閉空間
を広げる方向に回転することを防止するものである。

【０００４】逆止弁１１は、ディスチャージカバー１０
に形成された弁室１２と、この固定スクロール２に形成
されて弁室１２に連通する上流側吐出ポート１３と、カ
バー１０に形成されて弁室１２に連通する下流側吐出ポ
ート１４と、弁室１２の内部に上下移動自在に設けられ
上流側吐出ポート１３と下流側吐出ポート１４との圧力
差に応動して上流側吐出ポートを開閉する弁体１５とを
備えている、弁室１２は、弁体１５を囲んで弁体１５の
上下移動を案内する案内部１６と、弁体１５が上流側吐
出ポート１３を開放する向き、すなわち上昇移動した時
にこれを受ける受け部１６とを有している。

【０００５】このように構成された圧縮機において、圧
縮機構が駆動していない時は逆止弁１１の弁体１５は自
重により固定スクロール２の上面に載って上流側吐出ポ
ート１３を閉じている。

【０００６】そして、駆動時には、モータの駆動により
旋回スクロール３が駆動され、旋回スクロール３は公転
旋回運動をする。そうすると、ガスがハウジング１に設
けられた吸入管１８からハウジング１の内部を経て密閉
空間８に吸入される。旋回スクロール３の公転旋回運動
により密閉空間８の容積が減少してガスが圧縮され中央
部に至る。ここで、ガスは逆止弁１１の上流側吐出ポー
ト１３を通って弁体１５を押上げる。これにより上流側
吐出ポート１３が開放され、ガスは上流側吐出ポート１
３から弁室１２の内部を通過し、下流側吐出ポート１４
を通ってカバー１０とハウジング１の天板で仕切られた
空間部に入り、さらにハウジング１の天板部に設けられ
た吐出管１９から外部に吐出される。

【０００７】圧縮機構Ｃの駆動が停止すると、圧縮機構
Ｃ側が負圧となり、カバー１０とハウジング１の天板で
仕切られた空間部が高圧となり、弁体１５が上流側吐出
ポート１３を閉じてガスの逆流を阻止する。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】しかし、このような従
来のスクロール型圧縮機に設けられる逆止弁には次に述
べる問題がある。

【０００９】逆止弁１１では、圧縮されたガスが上流側
吐出ポート１３から弁室１２を通過する時に弁体１５を
押し上げると、弁体１５は上昇して弁室１２の受け部１
７の面に当り衝突音を発して騒音となる。そこで、この
現象を回避するために、弁室１２の受け部１７の位置を
高くして弁体１５の上昇距離（揚程）高くとり、弁体１
５が上昇して受け部１７に衝突する時の衝撃を弱め、こ
れにより衝突音を小さくすることが行われている。

【００１０】しかし、この場合弁体１５の外径が弁室１
２の案内部１６の内径に対して小さいと、図４に示すよ
うに弁体１５が上下方向に移動する時に傾いて吐出ポー
ト１３、１４に引っ掛かり移動できなくなる可能性があ
る。このため、弁体１５を安定して移動させるためにそ
の外径を弁室１２の案内部１６の内径に近い大きさにす
る必要がある。

【００１１】ところで、弁室１２では、案内部１６の面
と受け部１７の面とが交差する角部１２ａは製造面の関
係で円弧面となっている。ところが、前記のように弁体
１５の外径を大きくすると、図５に示すように弁体１５
が上昇した時に、弁体１５が受け部１７の面に当る前に
弁体１５の外周縁が案内部１６と受け部１７との角部１
２ａの円弧面に引っ掛かって弁体１５が支持されてしま
うことがある。この場合には、弁体１５がスピーカの振
動紙のように外周縁を中心として振動して異常音が発生
して騒音となる。

【００１２】本発明は前記事情に基づいてなされたもの
で、弁体が上昇移動した時に弁体の外周縁が案内部と受
け部との角部に引っ掛かることがなく、弁体による異常
音の発生を防止できる逆止弁を備えたスクロール型圧縮
機を提供することを目的とする。

【００１３】

【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に本発明のスクロール型圧縮機は、固定スクロールと旋
回スクロールとを互いに組合せて形成された密閉空間を
その面積を減少させながら前記両スクロールの中心側に
向けて移動してガスを圧縮し、このガスを逆止弁を介し
て外部に吐出するスクロール型圧縮機において、前記逆
止弁は、弁室と、この弁室に連通して前記圧縮ガスを通
す上流側吐出ポートと、前記弁室に連通して前記圧縮ガ
スを通す下流側吐出ポートと、前記弁室に移動自在に設
けられ前記上流側吐出ポートと前記下流側吐出ポートと
の圧力差に応動して前記上流側吐出ポートを開閉する弁
体とを備え、前記弁室は、前記弁体を囲んで前記弁体の
移動を案内する案内部と、前記弁体が前記上流側吐出ポ
ートを開放する向きに移動した時にこれを受ける受け部
とを有し、この受け部の面と前記案内部の面とが交差す
る角部は、前記受け部周方向全体にわたり前記受け部の
面側へ向けてほり込まれて、前記弁体が前記受け部に当
たった時に前記弁体の周縁が触れることがない大きさの
ほり込み部が形成されていることを特徴とする。

【００１４】

【作用】本発明によれば、逆止弁の弁室において受け部
の面と案内部の面とが交差する角部は、受け部周方向全
体にわたり前記受け部側へ向けてほり込まれて、弁体が
受け部に当たった時に弁体の周縁が触れることがない大
きさのほり込み部が形成されているので、弁体が上昇移
動した時に弁体の外周縁が案内部と受け部との角部に引
っ掛かることがなく、弁体による異常音の発生を防止で
きる。

【００１５】

【実施例】本発明の一実施例について図１および図２を
参照して説明する。

【００１６】図１はスクロール型圧縮機の全体を示して
いる。図１において、密閉ハウジング３１の内部はディ
スチャージカバー３２によって高圧空間３３と低圧空間
３４とに仕切られている。低圧空間３４の内部の上部に
はスクロール型圧縮機構Ｃが、下部には電動機Ｍが、さ
らに低圧空間３４の底部（密閉ハウジング３１の底部）
には油ポンプＰが夫々設けられ、これらはスクロール型
圧縮機構Ｃ、電動機Ｍおよび油ポンプＰは電動機Ｍに設
けられた回転軸３５によって連結されている。

【００１７】電動機Ｍは密閉ハウジング３１に固定され
た固定子３６と、この固定子３６の内部に組合された回
転子３７と、この回転子３７に挿通固着された回転軸３
５とを有し、回転軸３５は回転子３７の下側と上側に夫
々延出している。

【００１８】スクロール型圧縮機構Ｃは、固定スクロー
ル３８と旋回スクロール３９を有し、固定スクロール３
８は端板４０と渦巻状のラップ４１とを備えている。旋
回スクロール３９は端板４３と渦巻状のラップ４４とを
備え、端板４３の下面に設けられたボス４５の内部にブ
ッシュ４６が軸受４７を介して回転自在に嵌合され、こ
のブッシュ４６に回転軸３５の上端に設けられた偏心軸
４８がスライド可能に挿入されている。

【００１９】固定スクロール３８と旋回スクロール３９
とは端板４０と端板４３とが所定距離偏心するととも
に、ラップ４１とラップ４４が１８０度だけ角度をずら
せて相互に組合されている複数の密閉空間４９が形成さ
れている。旋回スクロール３９は密閉ハウジング３１の
内部に固定されたケーシング５０に摺動自在に支持さ
れ、旋回スクロール３９とケーシング５０との間には、
旋回スクロール３９の公転旋回運動を許容するが自転を
阻止する自転阻止機構５１が設けられている。

【００２０】固定スクロール３８の端板４０の外周はケ
ーシング５０に浮き上がり自在に支持され、固定スクロ
ール３８の端板４０の上面の外周部には円筒フランジ５
２が形成され、中央部に突部５３が同心状に形成されて
いる。

【００２１】これら円筒フランジ５２と突部５３との間
にはディスチャージカバー３２の下面に設けられた円筒
フランジ５４が封密摺動自在に嵌合されて背圧室５５が
形成されている。この背圧室５５は端板４０に設けられ
た孔５６を介してガスの圧縮途中にある密閉空間４９と
連通している。ここで、孔５６はラップ４１の内周側に
接した地点に位置され、背圧室５５の内周側には高圧側
となっており、外周側には低圧室５７が形成されてい
る。なお、密閉ハウジング３１の低圧空間３４の部分に
はガス吸入管５８が設けられ、高圧空間３５の部分には
ガス吐出管５９が設けられている。

【００２２】さらに、ディスチャージカバー３２と固定
スクロール２とで逆止弁７１が形作られている。

【００２３】逆止弁７１は、ディスチャージカバー１０
の中央部に形成された弁室７２と、固定スクロール３８
の端板４０の中央突部５３に形成されて密閉空間４９と
弁室７２とを連通する上流側吐出ポート７３と、ディス
チャージカバー３２に形成されて弁室７２と高圧空間３
３とを連通する下流側吐出ポート７４と、弁室７２の内
部に上下移動自在に設けられ上流側吐出ポート７３と下
流側吐出ポート７４との圧力差に応動して上流側吐出ポ
ート７３を開閉する円板状の弁体７５とを備えている、
弁室７２は、弁体７５を囲んで弁体７５の上下移動を案
内する円筒状の案内部７６と、弁体７５が上流側吐出ポ
ート７３を開放する向き、すなわち上昇移動した時に案
内部７６において弁体７５を受ける円形の受け部７７と
を有している。下流側吐出ポート７４は案内部７６およ
び受け部７７に夫々形成される。弁室７２の下端は固定
スクロール３８の端板４０で閉じられ、この端板４０に
は上流側吐出ポート７３が形成されている。そして、弁
体７５は弁室７２の案内部７６に囲まれた部分を上下方
向に移動する。

【００２４】ここで、図２に示すように弁室７２におけ
る受け部７７の面と案内部７６の面とが交差する角部は
受け部７７の面側に向けてほり込まれて円形のほり込み
部７８が形成されている。

【００２５】すなわち、受け部７７の円周方向全体にわ
たりほり込み部７８が形成されている。このほり込み部
７８は例えば機械加工により形成される。ほり込み部７
８の大きさは、弁体７５が受け部７７の面に当った時に
弁体７５の外周縁が触れることがない大きさである。

【００２６】このように構成されたスクロール型圧縮機
では、圧縮機構Ｃが駆動していない時は逆止弁７１の弁
体７５は自重により固定スクロール３８の端板４０の上
面に載って上流側吐出ポート７３を閉じている。

【００２７】そして、圧縮機構Ｃが駆動する時には、モ
ータＭの駆動によって回転軸３５が回転され、この回転
が偏心軸４８、ブッシュ４６およびボス４５を介して圧
縮機構Ｃの旋回スクロール３９に伝達される。旋回スク
ロール３９は自転阻止機構５１により自転を阻止されな
がら好転旋回半径を半径とする円軌道上で公転旋回運動
を行う。

【００２８】そうすると、ガスが吸入管５８を介して密
閉ハウジング３１の低圧空間３４に入り、図示省略の経
路を経て圧縮機構Ｃの密閉区間に吸入される。そして、
旋回スクロール３９の公転旋回運動によって密閉空間４
９の容積が減少するのに伴いガスが圧縮されながら中央
部に至る。

【００２９】さらに、ガスは中央部から逆止弁７１の上
流側吐出ポート７３に入る。ここで、上流側吐出ポート
７３内部の圧力が弁室７２内部の圧力に比較して大きく
なり、端板４０の上面に載って上流側吐出ポート７３を
閉じていた弁体７５を押し上げる。弁体７５はガスに押
し上げられて弁室７２の案内部７６で囲まれた部分を上
昇移動する。

【００３０】これにより上流側吐出ポート７３が開放さ
れ、ガスは上流側吐出ポート７３から弁室７２の内部に
入り、続いて下流側吐出ポート７４を通ってカバー１０
とハウジング１の天板部で仕切られた高圧空間３３に入
る。その後、ガスは高圧空間３３から吐出管５９を通っ
て外部に吐出される。

【００３１】なお、背圧室５５内のガス圧力によって固
定スクロール３８は旋回スクロール３９に押し付けられ
密閉空間４９内部からガスが漏出することを阻止する。
密閉空間４９内部に液体が吸入された時は、固定スクロ
ール３８が浮上してその液体を逃がすことにより圧縮機
構の損傷を防止する。

【００３２】また、ハウジング３１の内部の下部に組み
込まれ油ポンプＰは、回転軸３５に回転駆動されてハウ
ジング３１の内部の底部に溜められた潤滑油を吸い込ん
で、回転軸３５に形成された孔３５ａを通して圧縮機構
Ｃの摺動部に供給する。

【００３３】ここで、前述した逆止弁７１では、弁室７
２において、受け部の面と前記案内部の面とが交差する
角部は、前記受け部周方向全体にわたり前記受け部側へ
向けてほり込まれて、前記弁体が前記受け部に当たった
時に前記弁体の周縁が触れることがない大きさのほり込
み部が形成されている。このため、弁体７５が弁室７２
の内部で上昇移動した時に、弁体７５が受け部７７の面
に当る前に弁体７５の外周縁が案内部７６と受け部７６
との角部の円弧面に引っ掛かり弁体１５が支持されてし
まうことがなく、弁体７５が受け部７７の面に直接当
る。この時、弁体１５の外周縁はほり込み部７８の空間
部に対向していて何も触れていない。従って、弁体１５
が受け部７７から離れて支持されスピーカの振動紙のよ
うに振動して異常音が発生することがない。

【００３４】また、受け部７７の面に当った弁体７５は
円滑に下降移動する。

【００３５】そして、弁体７５の外径を案内部７６の内
径に近い大きな値に設定し、弁体７５を途中に引っ掛か
ることなく安定して移動させることができる。

【００３６】なお、圧縮機構Ｃの駆動が停止すると、圧
縮機構Ｃ側が負圧となり、高圧空間３３が高圧となるの
で、弁体７５が上流側吐出ポート７３を閉じてガスの逆
流を阻止する。

【００３７】なお、本願の発明は前述した実施例に限定
されずに、種々変形して実施することができる。

【００３８】

【発明の効果】以上説明したように本発明のスクロール
型圧縮機によれば、逆止弁の弁室における受け部の面と
案内部の面とが交差する角部は、受け部周方向全体にわ
たり受け部の面側へ向けてほり込まれて、弁体が受け部
に当たった時に弁体の周縁が触れることがない大きさの
ほり込み部が形成されているので、弁体が上昇移動した
時に弁体の外周縁が案内部と受け部との角部に引っ掛か
ることがなく、弁体による異常音の発生を防止できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例におけるスクロール型圧縮機
を示す断面図。

【図２】同実施例におけるスクロール型圧縮機に設ける
逆止弁を拡大して示す断面図。

【図３】従来のスクロール型圧縮機の一例を示す断面
図。

【図４】同従来例のスクロール型圧縮機に設ける逆止弁
を拡大して示す断面図。

【図５】同従来例のスクロール型圧縮機に設ける逆止弁
を拡大して示す断面図。

【符号の説明】

３１…ハウジング、 ３８…固定スクロール、 ３９…旋回スクロール、 ７１…逆止弁、 ７２…弁室、 ７３…吐出ポート、 ７４…吐出ポート、 ７５…弁体、 ７６…案内部、 ７７…受け部、 ７８…ほり込み部。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 佐藤 和弘 愛知県名古屋市中村区岩塚町字高道１番 地 三菱重工業株式会社名古屋研究所内 (56)参考文献 特開 平１−130082（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) F04C 18/02 311 F04C 29/00

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 固定スクロールと旋回スクロールとを互
   いに組合せて形成された密閉空間をその面積を減少させ
   ながら前記両スクロールの中心側に向けて移動してガス
   を圧縮し、このガスを逆止弁を介して外部に吐出するス
   クロール型圧縮機において、 前記逆止弁は、弁室と、この弁室に連通して前記圧縮ガ
   スを通す上流側吐出ポートと、前記弁室に連通して前記
   圧縮ガスを通す下流側吐出ポートと、前記弁室に移動自
   在に設けられ前記上流側吐出ポートと前記下流側吐出ポ
   ートとの圧力差に応動して前記上流側吐出ポートを開閉
   する弁体とを備え、前記弁室は、前記弁体を囲んで前記
   弁体の移動を案内する案内部と、前記弁体が前記上流側
   吐出ポートを開放する向きに移動した時にこれを受ける
   受け部とを有し、 この受け部の面と前記案内部の面とが交差する角部は、
   前記受け部周方向全体にわたり前記受け部の面側へ向け
   てほり込まれて、前記弁体が前記受け部に当たった時に
   前記弁体の周縁が触れることがない大きさのほり込み部
   が形成されていることを特徴とするスクロール型圧縮
   機。