JP3065898B2 - 産業廃棄物の脱塩化水素処理方法及び装置 - Google Patents

産業廃棄物の脱塩化水素処理方法及び装置

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JP3065898B2
JP3065898B2 JP6301472A JP30147294A JP3065898B2 JP 3065898 B2 JP3065898 B2 JP 3065898B2 JP 6301472 A JP6301472 A JP 6301472A JP 30147294 A JP30147294 A JP 30147294A JP 3065898 B2 JP3065898 B2 JP 3065898B2
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謙郎 元田
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は産業廃棄物の処理方法及
び装置に関し、より詳細には塩化ビニルやポリエチレン
等の樹脂系廃棄物、一般家庭用の生ゴミ、注射器やカテ
ーテル等の医療用廃棄物、及び使用済み紙オムツ等につ
いて、これらを熱分解することにより、脱水、脱臭、炭
化処理、とりわけ脱塩化水素処理を行なう産業廃棄物の
脱塩化水素処理方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】現在、各都市や工場、一般家庭、病院等
から廃棄される樹脂系廃棄物、生ゴミ、医療用廃棄物、
及び使用済み紙オムツ等の産業廃棄物の量は甚大なもの
となっている。そして、これ等の産業廃棄物の処理は、
各々以下のような方法にて行なわれている。まず第1に
焼却処理が挙げられる。これは、各産業廃棄物を燃焼炉
により摂氏1000度前後で焼却して処理する方法であ
り、最も一般的な処理方法である。また第2の処理方法
としては、投棄処理が挙げられる。これは、各産業廃棄
物を細かく粉砕したり、容器や袋等に収納して、港湾の
埋立地や山間部の空き地などに投棄したり、地下に埋蔵
するなどして処理する方法である。
【0003】一方、塩化ビニル等の塩素系高分子化合物
を含む産業廃棄物は、塩化ビニルの熱分解温度を超える
条件で処理を行なうと塩化水素ガスが発生し、これが公
害の原因となるため、熱分解温度以下の温度(150℃
以下)の条件で溶融固化処理が行なわれていた。また、
ポリプロピレン(融点180℃)やポリエチレンテレフ
タレート(融点250℃)など融点が塩化ビニル(12
0〜130℃)より高いものが混在している場合には、
これらの溶融点まで加熱しその時発生する塩化水素をカ
ルシュウム塩(消石灰など)を投入して回収することに
より処理を行なっていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記第
1の焼却処理の場合は、有害ガスや黒煙、粉塵が発生
し、焼却処理場周辺に公害を撒き散らすという問題があ
り、加えて、焼却による高温の熱やガスの発生のため、
焼却装置に大きな損傷を与えるという問題もあった。さ
らに、その残渣として有害物質が残されたり、飛灰や発
生ガス中に有害物質が含まれてしまうという問題もあっ
た。なお、この場合、発生するガスや粉塵を回収するた
め、排気ガスにシャワー状に水を散布する方法も用いら
れることがあるが、シャワー状に散水するという構成か
ら、減圧して当該処理を行なうことができず、散水施設
から臭気が漏れるという問題も生じていた。また、第2
の投棄処理の場合には、投棄地自体の自然破壊や廃棄物
による地下水の汚染等の二次的公害が発生するといった
問題があった。そして、特に塩化水素を含む産業廃棄物
の処理に際しては、ダイオキシンやポリ塩化ジベンゾフ
ラン等の猛毒かつ催奇形性、発ガン性の高い有機塩素化
合物が発生し、その生体への影響も問題となっていた。
【0005】本発明は、上記問題に鑑み、二次的公害を
発生させることなく、産業廃棄物を的確かつ効率良く処
理するための方法及び装置を提供することを目的とす
る。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
本発明の産業廃棄物の脱塩化水素処理方法は、(a)炉
内を大気圧以下の圧力に降圧する減圧過程と、(b)大
気圧以下の圧力を維持しつつ炉内を100℃以上の温度
に加熱して上記塩素系高分子化合物の水分を適宜蒸発さ
せる脱水過程と、(c)大気圧以下の圧力を維持しつつ
炉内を無酸素状態において上記塩素系高分子化合物の熱
分解点以上の温度に加熱して所定時間当該温度を保持す
る脱塩化水素過程と、(d)上記脱塩化水素過程により
生じるガスを水に導入して塩化水素を溶解、回収する塩
化水素回収過程と、(e)上記圧力を維持しつつ炉内を
340℃以上に加熱して所定時間当該温度を保持するタ
ール分除去過程とから構成されてなることを特徴として
いる。この場合、上記塩素系高分子化合物が塩化ビニル
であり、上記脱塩化水素過程の温度が273℃以上であ
っても良い。さらに、上記脱水過程の温度が100℃〜
160℃であっても良い。
【0007】また、上記目的を達成するため本発明の産
業廃棄物の脱塩化水素処理装置は、大気圧以下の圧力及
び所定温度下において塩素系高分子化合物を含む産業廃
棄物の脱水及び該産業廃棄物中の塩素系高分子化合物の
熱分解を行なう加熱炉と、該加熱炉から得られる生成ガ
スを導入し該生成ガス中の水溶性成分を溶解除去するガ
ス拡散装置とを備えてなることを特徴としている。ま
た、好ましくは、該ガス拡散装置に接続され生成ガス中
の非水溶性成分を回収するタール分回収装置を備えた構
成としても良い。
【0008】
【実施例】次に、本発明の実施例につき図面を参照して
説明する。図1は、本発明による産業廃棄物処理システ
ムの全体構成の概略を示す図である。図1において、1
は加熱炉、2はガス拡散装置、3は中和槽、7はタール
分回収装置、8は減圧用ポンプ、9は焼却炉を示し、そ
れぞれは配管4によって接続されている。そして、産業
廃棄物5を加熱炉1に投入して減圧用ポンプ8による負
圧下において産業廃棄物5を熱分解させ、その生成ガス
をガス拡散装置2や中和槽3、タール分回収装置7及び
焼却炉9を介して処理する構成となっている。
【0009】ここで、加熱炉1は、産業廃棄物を熱分解
させるためのもので、図2に示すような構造となってい
る。すなわち、その中心部には熱分解室11が配され、
ここに産業廃棄物5が投入される。また、熱分解室11
の外側には、炉の内部を二つの空間に分ける中間隔壁1
5が形成されている。さらに、この中間隔壁15の外側
及び内側にそれぞれガス流道12が構成され、これらは
中間隔壁15の上部に設けられた開口部16を介してつ
ながっている。従って、高温のガス流はガス流道12の
導入口17から炉中に導かれ、内側のガス流道12aを
通り熱分解室11の周囲を通過した後、開口部16から
外側のガス流道12bに入り、排気口18から炉外に排
出されることになる。この時のガス流の動きを図2中に
矢印として示す。なお、この高温ガスは、プロパンガス
や都市ガス、重油を燃焼させて発生させる。
【0010】炉内をこのような二重構造としたのは、従
来の高温ガスが熱分解室の周囲を通過して上部の排気口
から抜ける単一構造の炉では、熱分解室上部に排気口を
配した構造とするのが一般的であるため、高温のガスが
排気口からすぐに抜けてしまい、熱効率が良くないのみ
ならず、熱分解室を均一に加熱することが難しかったた
めである。その点本構造によれば、熱分解室を熱したガ
スは外側のガス流道において内側のガス流道にその熱エ
ネルギを与えることになるため、内側のガス流道内の温
度の均一化が図れる。また、温度の下がったガスは自然
に下へと流れ、その熱エネルギを十分に活用した上で無
理なく排気口18から炉外へ排出されることになる。
【0011】一方、加熱炉1の外側は外壁13によって
覆われており、その内部には熱反射板14が配されてい
る。この熱反射板14は、セラミックやステンレスなど
の耐熱性の板材を外壁13内に埋め込んだものであり、
炉内から伝わってくる熱をここで食い止める役割を果た
している。従って、この熱反射板を用いることにより、
外壁表面から放出される熱量を減少させ熱効率をさらに
高めることができると共に、外壁表面が手で触れても差
し支えない温度に保たれるという効果がある。なお、炉
の上部は高温となり易いため、この熱反射板を複数個設
置して断熱効果をさらに高めることができる。なお、加
熱炉1には、上記のような形態のものではなく、電気炉
を用いても良い。
【0012】次に、ガス拡散装置2は、加熱炉1におい
て発生したガス中の所定の成分を所定溶液に溶解させる
ための装置である。本実施例においては、加熱炉1にお
ける塩素系高分子化合物(本実施例では塩化ビニルを想
定する)の熱分解によって生じた塩化水素を水に溶解さ
せて塩酸として回収する役割、及びタール分回収装置7
と共に脱塩化水素後に残るタール分を回収する役割を担
っている。
【0013】このガス拡散装置2の構成を図3に示す。
本ガス拡散装置2は、大きく分けて溶液槽20と攪拌装
置21とから構成されている。溶液槽20には、水(H
O)22が満たされており、ガス流入口24から導入
された加熱炉1のガスが水22を通ってガス流出口26
に排出されるようになっている。また、溶液槽20には
排水口25が設けられており、溶液槽20の水22をバ
ルブ25bの操作により配管25aを介して排水槽6に
適宜排出できるようになっている。なお、図面右側の部
分にはタール分回収装置7が接続される。一方、攪拌装
置21は、回転子23と、モータ27、回転軸28、軸
受29及び回転翼30とから構成されており、水22中
において回転子23と回転翼30が回転する構成となっ
ている。この場合、回転子23には多数の気孔23aが
開けられており、ガス流入口24から入ったガス(気
体)は回転翼30によって攪拌されると共に回転子23
の気孔23aを通って上昇する。
【0014】このような構成からなるガス拡散装置2に
おいては、ガス流入口24から入った気体は回転翼30
に攪拌された後回転子23の気孔23aから細かい気泡
となって水面に到達する。このとき回転子23が回転し
ていることから、気孔23aから出る気泡は、回転子2
3の回転に伴い剪断されつつ気孔23aから出て行くこ
とになる。すなわち、気泡は回転子23の上面におい
て、水22に擦り付けられるかの如くに攪拌を受けるこ
とになる。このため、気泡内に含まれている水溶性の気
体は、気孔23aによって微細な気泡にされ、かつ、か
かる攪拌を受けるため、回転翼30による攪拌による溶
解と相まって、きわめて容易に水22に溶解することに
なる。
【0015】また、このように気体の水溶性成分、本実
施例の場合には塩化水素が水22に溶け込むと、水22
は次第に酸性となってくる。また、塩化水素発生前にお
いては水蒸気が水22に導入されることから、水の量も
徐々に増してくる。さらに、水22は、気体の持つ熱エ
ネルギをも吸収するため次第にその温度も上昇してく
る。そこで、このガス拡散装置2では、水22の温度や
phを測定し、それらがある一定値以上となった時、バ
ルブ25bを操作して中の水22を抜き、水22の入れ
替えを行なうようにしている。従って、これにより、加
熱炉1のガスに含まれる塩化水素及びその熱エネルギを
際限なく吸収することができることになる。なお、この
水の入れ替え操作は、水22の温度やphの管理により
自動制御によって行なう。また、予め産業廃棄物の量や
加熱時間と温度、phとの関係を求めておき、産業廃棄
物の量に応じてプログラム制御することも勿論可能であ
る。
【0016】一方、中和槽3は、ガス拡散装置2の後段
に設けられ、ガス拡散装置2から発生する霧状のガスに
含まれる残存塩化水素の吸収を行なうものであり、例え
ば、中に水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を満たし
ておきガス拡散装置2で取りきれなかった塩化水素を吸
収させることができる。なお、図1では中和槽3を1段
の構成としたが複数段これを設けても良く、その場合に
は、中の溶液の種類を変えることにより種々の気体を各
段において吸収することができる。また、この中和槽3
ではなくガス拡散装置2を複数段接続する構成とするこ
とも勿論可能である。但し、中和槽3の方が設備として
は簡便であり安価である。
【0017】さらに、減圧用ポンプ8は、加熱炉1やガ
ス拡散装置2、中和槽3等を吸引して負圧下において産
業廃棄物の脱塩化水素処理を行わしめるためものであ
る。この場合、この減圧用ポンプ8は、加熱炉1におけ
る負圧を200mmaq確保し、各装置における吸引抵
抗や落差抵抗を考慮して、例えば1200mmaqにて
システムを吸引する。また、焼却炉9は、加熱炉1の生
成ガスのうちガス拡散装置2や中和槽3において吸収さ
れずに残っている成分を焼却して無臭・無毒化する装置
である。ここでは、加熱炉1において生成された、メタ
ンガス、エタンガスをバーナにより点火して自己燃焼さ
せると共に、その熱により臭気成分の焼却処理を行う。
なお、この焼却炉9は高温にさらされるためセラミック
等の耐熱構造となっている。
【0018】次に、本システムにおける産業廃棄物の脱
塩化水素処理過程について説明する。図4は、本システ
ムにおける産業廃棄物の脱塩化水素処理過程の流れを示
す図である。本システムにおける処理過程は、加熱炉1
中を減圧する減圧過程S1、産業廃棄物中の水分を蒸発
させる脱水過程S2、産業廃棄物から塩化水素を取り除
く脱塩化水素過程S3、取り出した塩化水素を回収する
塩化水素回収過程S4、残りの成分を分解処理するター
ル分除去過程S5の5つの過程から構成されている。本
発明は、塩化ビニルの熱分解に基づき、上記5つの過程
により、塩化ビニルを含む産業廃棄物を安全かつ確実に
処理するというものである。この場合、タール分除去過
程S5においても塩化水素は発生・回収されており、脱
塩化水素過程S3及び塩化水素回収過程S4とタール分
除去過程S5は同時に進行され得るものである。なお、
本システムにより280kgの塩化ビニル単体を処理し
た場合の全過程に要する所要時間は約390分であっ
た。
【0019】また、図5は、各種プラスチックの熱分解
の様子を示すグラフである。このグラフからわかるよう
に、塩化ビニル(PVC)は、その熱分解点である27
3℃においてほぼその重量の60%が失われている。こ
れは、熱分解点までに、その重量の60%を占める塩化
水素(Cl/CH=CHCl→35.5/62.5→
56.8%)が失われたと考えて良く、熱分解点に加熱
保持すれば加熱炉1からは主として塩化水素ガスが発生
することになる。
【0020】本実施例においては、先ず炉内を負圧にす
べく加熱炉1を大気圧以下に減圧する減圧過程S1を実
施する。そして、大気圧以下の圧力を保持しつつ温度を
上昇させて行く。このように炉内を負圧とするのは、発
生するガスを効率良く回収することに加え、装置周囲に
毒性のあるガスが流出したり悪臭が漂ったりすることを
防止するためである。なお、本実施例においては炉内を
まず200mmaqに減圧して処理を行なう。この場
合、炉内の圧力は大気圧以下の圧力とする必要があり、
特に、200mmaqとしたのは、200mmaqとい
う圧力が、ガス回収効率やガス流出防止、そして炉の機
械的強度を考慮した上で最適な圧力であるからである。
【0021】次に、脱水過程S2を行なう。すなわち、
炉内を100℃以上に加熱して産業廃棄物5中の水分を
蒸発させる。この場合、その加熱時間は、炉の大きさや
産業廃棄物の量及びその水分含有量によって異なる。ま
た、温度も、塩化水素発生が少なくかつ水分を十分に蒸
発し得る100℃〜160℃が好ましい。一方、加熱時
間は、加熱炉1から発生するガスの量や温度を測定して
自動制御を行なう。特に、水は比熱が高いことから、水
蒸気による熱エネルギの伝達がなくなり後段のガス拡散
装置2中の水22の温度上昇が鈍ってきた場合は、産業
廃棄物中の水分の蒸発は終了したと判断することがで
き、その時点で次の過程に進むようにする。また、この
場合にも、産業廃棄物の量に基づきプログラム制御が可
能である。
【0022】なお、ガス拡散装置2においては、水蒸気
の熱エネルギを吸収してガス拡散装置2内の水が熱水と
なる。そこで、この熱水を適宜排水槽6に受け、この熱
水を他の加熱炉やガス拡散装置を予熱することに用いる
こともできる。すなわち、水蒸気の持つ熱エネルギをも
回収して再利用を図ることができる。
【0023】このように、水分を蒸発させた後に脱塩化
水素過程S3を行なう。この場合、ダイオキシン等の有
機塩素化合物の発生を防止するため、少なくとも本過程
は無酸素状態にして行う必要がある。この脱塩化水素過
程は、図5に示した上述の塩化ビニルの熱分解に基づく
ものであり、炉内を熱分解点である273℃以上に加熱
して行なう。但し、図5からもわかるように、塩化水素
ガスの発生は熱分解点以下でも起こることから、必ずし
も炉内を熱分解点以上の温度にする必要はないが、含ま
れる塩化水素を完全に取り出すためには熱分解点以上の
温度とすることが好ましい。従って、本実施例では、2
80℃に加熱して塩化水素の大部分を取り除くようにし
ている。この脱塩化水素過程に要する時間も産業廃棄物
の量、とりわけその中に含まれる塩化ビニルの量によっ
て大きく異なる。
【0024】一方、塩化水素回収過程S4は、ガス拡散
装置2によって上記脱塩化水素過程S3と並行して行な
われる。ガス拡散装置2においては、上述のように、加
熱炉1で発生したガスが水22の中に導かれ、塩化水素
が水に溶解する。すなわち、ガス拡散装置2中の水はい
わゆる塩酸となる。そこで、ガス拡散装置2の水22を
適宜交換して炭酸カルシウム等の中和剤が投入された排
水槽6に取り出すことにより、ガス中の塩化水素は塩化
カルシウム等として回収されることになる。そして、水
22のphがもはや酸性を示さないようになった時、塩
化水素の回収は終了したものと判断し次の過程に進むこ
とになる。なお、塩化水素以外の成分、特に水溶性でな
い成分は、中和槽3に他の溶媒を用いることにより回収
したり、焼却炉9において自己燃焼させたり、熱分解し
て処理する。本実施例では、ガスの残りの成分として
は、メタン、エタン等の炭化水素や種々の臭気成分が含
まれており、炭化水素を燃焼させ、併せてその燃焼熱に
より約700℃の高温を得て臭気成分を熱分解させる。
なお、炭化水素分は、一旦点火するとそれ以後は自己燃
焼し続けるため、点火後はバーナ等の点火手段は停止す
る。なお、この高温の燃焼ガスは、加熱炉1に投入した
り、排水槽6を加熱して塩化カルシウム固体を取り出し
たりする等、その持っている熱エネルギを無駄なく活用
することが望ましい。
【0025】この塩化水素回収過程S4が概ね終了し、
塩化水素の発生が少なくなったところで続いてタール分
除去過程S5を行なう。このタール分除去過程S5は、
加熱炉1内の温度をさらに上昇させて行なう。なお、こ
のタール分除去過程S5中においても塩化水素の発生は
続いており、先の脱塩化水素過程S3や塩化水素回収過
程S4も同時に進行している。従って、加熱炉1では塩
化水素を含む炭化水素等の分解ガスが生成されている。
本実施例にあっては、炉内を340℃に上昇させる。こ
れによって、脱塩化水素後に炉内に残っていたタール分
が分解されガス化し、そのガスがガス拡散装置2に導入
される。そして、ガス拡散装置2及び中和槽3を通った
後、残りのガスは焼却炉9において燃焼または熱分解さ
れる。なお、このタール分除去過程S5における炉内の
温度を低くするとタール分が多く発生する。一方、温度
を高くすると炉に生成されるタール分は少なくなり、当
初からガス分が多く発生する。従って、タール分の発生
を少なくしたい場合には炉内の温度を高くする。
【0026】なお、上述のように本実施例では、炉内の
温度は、最高でも340℃である。これは、鉄やステン
レスでは不動体を形成する温度であり、従って、熱分解
室の素材として、高価で扱いにくいセラミックや耐火煉
瓦などを使わずに、鉄やステンレスをそのまま使用する
ことができる。また、タール分を除去した後には炉内に
は炭素が残る。この炭素の利用を図る場合にはそれをそ
のまま炉から取り出せば良いが、炉内に酸素を投入して
この炭素を燃焼させて処理することもできる。
【0027】ところで、タール分除去過程S5のタール
分回収は、タール分回収装置7において次のようにして
行なわれる。先ず、タール分回収装置7の構成について
説明する。図6は、その構成を示す図である。図6に示
すように、タール分回収装置7は、大きく分けて補助槽
71とタール分回収槽72の二槽から構成されており、
各槽の液面の高さの差を利用してタール分のみを回収し
ようとするものである。
【0028】補助槽71は、ガス拡散装置2と連絡管7
3、74により接続されている。この場合、上にある連
絡管73は、ガス拡散装置2の回転子23が回転してい
ない時には、ガス拡散装置2の破線で示す通常時の水面
より上に位置している。また、下の連絡管74は、常に
ガス拡散装置2の水面下にある。従って、この補助槽7
1の水面は、常にガス拡散装置2の通常時の水面高さと
同じ位置(破線の位置と同じ高さ)にあることになる。
次に、回転子23が回転している場合について考える。
回転子23が回転すると、水面は遠心力により外側の方
が高くなる。そして、その高さがついに上の連絡管73
の位置に達するようになる。この状態を示したのが図6
である。ここで、ガス化したタール分はガス拡散装置2
に導入されそこで冷やされて再びタール状となる。とこ
ろが、このタール分は水より比重が軽いため水面上に浮
かんでくる。このとき水面は上述のように上の連絡管7
3の位置にある。従って、水に浮かんだタール分は連絡
管73を伝って補助槽71の方へ流れ出ることになる。
【0029】一方、補助槽71には、タール分排出管7
5が、水面より若干上に設けられており、その先にター
ル分回収槽72が接続されている。ここで、ガス拡散装
置2から連絡管73を伝ってきたタール分は、補助槽7
1に流出すると共にその水面上に浮かんで溜る。ところ
が、この補助槽71の水面より若干上にはタール分排出
管75があるため、この水面上のタール分はタール分排
出管75を伝ってタール分回収槽72側へ流れ出ること
になる。これにより、タール分がタール分回収槽72に
溜ることになる。従って、特殊な溶液や処理方法を用い
るまでもなく、機械的な方法によりタール分を確実に回
収できることになる。なお、ここで回収したタール分を
加熱炉1に再投入してガス化して処理することも可能で
ある。
【0030】本実施例では、上述のように塩化ビニルを
含む産業廃棄物を対象として話を進めてきたが、塩素系
の高分子化合物を含む産業廃棄物であれば上記の方法を
応用してその処理を行なうことができる。例えば、塩化
ビニリデンについても、脱塩化水素過程の温度を、その
熱分解点以上に設定することにより本方法を適用するこ
とができる。
【0031】また、塩素系の樹脂のみならず、各種樹脂
の混合物であっても、図5に示されたその熱分解点の相
違を利用して上記実施例と同様の処理を行なうこともで
きる。例えば、280℃で塩化ビニルを、350℃でポ
リウレタンを、そして380℃でユリア樹脂を、という
ように各樹脂の熱分解温度の差異を利用して次々に樹脂
を分解して行くという方法も採ることができる。この場
合には、各樹脂の熱分解の進行及び終了を、排出される
ガスの温度を測定することにより判断する。従って、こ
のような処理を的確に行うには該当する樹脂成分のみを
熱分解させるための温度維持管理というきめ細かな温度
管理が必要となる。
【0032】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の産業廃棄
物の脱塩化水素処理方法によれば、塩素系高分子化合物
を含む産業廃棄物を、無酸素状態において塩素系高分子
化合物の熱分解点以上の温度に加熱し、その生成ガスを
ガス拡散装置に導入して塩化水素を取り除く構成とした
ことにより、ダイオキシン等の有機塩素化合物を生じさ
せることなく塩素系高分子化合物の脱塩化水素処理を達
成できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による産業廃棄物処理システムの全体
構成の概略を示す図である。
【図2】 加熱炉の構成を示す図である。
【図3】 ガス拡散装置の構成を示す図である。
【図4】 本システムにおける産業廃棄物の脱塩化水素
処理過程の流れを示す図である。
【図5】 各種プラスチックの熱分解の様子を示すグラ
フである。
【図6】 タール分回収装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
1 加熱炉 2 ガス拡散装置 3 中和槽 4 配管 5 産業廃棄物 6 排水槽 7 タール分回収装置 8 減圧ポンプ 9 焼却炉 S1 減圧過程 S2 脱水過程 S3 脱塩化水素過程 S4 塩化水素回収過程 S5 タール分除去過程
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08J 11/12 CEV C10J 3/00 B09B 3/00 302 WPI(DIALOG)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記過程からなることを特徴とする塩素
    系高分子化合物を含む産業廃棄物の脱塩化水素処理方
    法。 (a)炉内を大気圧以下の圧力に降圧する減圧過程。 (b)大気圧以下の圧力を維持しつつ炉内を100℃以
    上の温度に加熱して上記塩素系高分子化合物の水分を適
    宜蒸発させる脱水過程。 (c)大気圧以下の圧力を維持しつつ炉内を無酸素状態
    において上記塩素系高分子化合物の熱分解点以上の温度
    に加熱して所定時間当該温度を保持する脱塩化水素過
    程。 (d)上記脱塩化水素過程により生じるガスを水に導入
    して塩化水素を溶解、回収する塩化水素回収過程。 (e)上記圧力を維持しつつ炉内を340℃以上に加熱
    して所定時間当該温度を保持するタール分除去過程。
  2. 【請求項2】 上記塩素系高分子化合物が塩化ビニルで
    あり、上記脱塩化水素過程の温度が273℃以上である
    ことを特徴とする請求項1に記載の脱塩化水素処理方
    法。
  3. 【請求項3】 上記脱水過程の温度が100℃〜160
    ℃であることを特徴とする請求項1に記載の脱塩化水素
    処理方法。
  4. 【請求項4】 大気圧以下の圧力及び所定温度下におい
    て塩素系高分子化合物を含む産業廃棄物の脱水及び該産
    業廃棄物中の塩素系高分子化合物の熱分解を行なう加熱
    炉と、該加熱炉から得られる生成ガスを導入し該生成ガ
    ス中の水溶性成分を溶解除去するガス拡散装置とを備え
    てなることを特徴とする産業廃棄物の脱塩化水素処理装
    置。
  5. 【請求項5】 上記ガス拡散装置に接続され生成ガス中
    の非水溶性成分を回収するタール分回収装置を備えたこ
    とを特徴とする請求項5に記載の産業廃棄物の脱塩化水
    素処理装置。
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