JP3062448B2 - キレート樹脂を用いたウランと不純物の分離・回収方法 - Google Patents

キレート樹脂を用いたウランと不純物の分離・回収方法

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JP3062448B2
JP3062448B2 JP9052689A JP5268997A JP3062448B2 JP 3062448 B2 JP3062448 B2 JP 3062448B2 JP 9052689 A JP9052689 A JP 9052689A JP 5268997 A JP5268997 A JP 5268997A JP 3062448 B2 JP3062448 B2 JP 3062448B2
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  • Solid-Sorbent Or Filter-Aiding Compositions (AREA)
  • Manufacture And Refinement Of Metals (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、ウラン鉱石から
硫酸浸出法によりウランを浸出させる際に、硫酸浸出液
中に含まれるウランと不純物とを分離する方法に関し、
さらに詳しくは、硫酸浸出液に含まれる不純物中の有価
金属も分離・回収することができる方法に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】ウラン鉱石からウランを浸出させる方法
としては、経済性及び操作の容易性から硫酸浸出法がー
般的に採用されている。硫酸液に浸出されたウランは、
溶媒抽出法あるいはイオン交換樹脂法によってウラン以
外の不純物、例えばニッケル、砒素、モリブデン、鉄、
アルミニウム等と分離され、ウラン濃度を高めたのちに
イエローケーキとして回収される。ウランを分離した廃
液中には、環境汚染物質を含むが、これらは消石灰など
を用いる凝集沈殿法により固液分離され、環境汚染物質
を含む沈殿物は、鉱滓ダムヘ送られ環境保全のために管
理されている。
【0003】一般にウラン鉱石には環境汚染物質のみな
らず有価金属も含まれているが、ウランとの分離技術が
確立されていないことならびに分離の経済性の観点か
ら、廃棄保管されているのが実情である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特に不
整合関連型ウラン鉱床のウラン鉱石は、ウラン品位も高
いが砒素、ニッケル及びモリブデンなどの含有率も高
い。従って、これらの鉱石からウラン、ニッケルならび
にモリブデンなどの分離技術を開発することは、資源の
有効利用ならびに環境保全の両面から重要であるが、実
用的分離プロセスは開発されるに至っていない。
【0005】そこでこの発明は、ウラン鉱石の硫酸浸出
液中に含まれるウランを不純物から選択的に分離回収で
きるとともに、不純物中の有価金属を選択的に分離回収
することができる方法を提供することを目的としてなさ
れたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、金属イオ
ンの分離法としてキレート樹脂に吸着させる方法が、イ
オン選択性が高いほか微量成分を分離、回収、濃縮する
のに適した方法であること、特にウランの溶媒抽出など
で従来から広く利用されているホスホン酸系抽出試薬と
類似した構造の官能基が多孔性の高分子基体に共有結合
した構造を有する多孔性メチレンホスホン酸型キレート
樹脂を用いることにより、従来の溶媒抽出とほぼ同等の
イオン選択性を実現できる分離回収が可能となることに
着目して、この発明を完成させたものである。
【0007】すなわちこの発明は、ウランの他にモリブ
デン、ニッケルおよび砒素を不純物として含有するウラ
ン鉱石の硫酸浸出液を多孔性のメチレンホスホン酸型キ
レート樹脂と接触させて、ウランおよびモリブデンを選
択的に吸着させる工程(a)と、ウランおよびモリブデ
ンを吸着した前記メチレンホスホン酸型キレート樹脂か
ら、酢酸ナトリウム水溶液を用いてモリブデンを溶離
し、次いで炭酸ナトリウム水溶液を用いてウランを溶離
する工程(b)とからなることを特徴とするキレート樹
脂を用いたウランと不純物の分離・回収方法である。
【0008】上記の(a)工程および(b)工程からな
るこの発明の方法には、さらに必要に応じて下記の
(c)工程、(d)工程、(e)工程あるいは(f)工
程を含ませることができる。
【0009】(c)工程:前記ウランおよびモリブデン
の溶離工程(b)でウランを溶離した後の前記メチレン
ホスホン酸型キレート樹脂を水洗し、次いで塩酸を用い
て他の吸着不純物を溶離させ、前記メチレンホスホン酸
型キレート樹脂を再生させる工程。
【0010】(d)工程:前記ウランおよびモリブデン
の溶離工程(b)で得られたモリブデン溶離液をアミノ
メチルホスホン酸型キレート樹脂と接触させることによ
って、モリブデン溶離液中に含まれる微量ウランを吸着
除去する工程。
【0011】(e)工程:前記ウランおよびモリブデン
の溶離工程(b)で得られたウラン溶離液にアンモニア
または過酸化水素を添加し、生成する沈殿を分離、乾燥
してイエローケーキを製造する工程。
【0012】(f)工程:前記ウランおよびモリブデン
の選択的吸着工程(a)でウランとモリブデンを除去さ
れた前記硫酸浸出液をpH4〜6に調整し、生成する沈
殿を除去した後、イミノ二酢酸型キレート樹脂と接触さ
せることによってイミノ二酢酸型キレート樹脂に吸着さ
れるニッケルと吸着されない砒素とを分離し、塩酸を用
いて前記イミノ二酢酸型キレート樹脂からニッケルを溶
離する工程。
【0013】
【発明の実施の形態】この発明の方法により処理される
ウラン鉱石の硫酸浸出液は、ウラン鉱石を粉砕したのち
硫酸中に浸漬して所定の浸出処理を施し、これを固液分
離して得られる浸出液である。この硫酸浸出液中にはウ
ランの他に、多量の砒素およびニッケルを含有し、さら
にはモリブデン、鉄、アルミニウムなども含有してい
る。ウラン鉱石の硫酸浸出液の主要な元素の化学分析値
の一例を表1に示す。なお“L”はリットルを表す。
【0014】 [表1] U 2616 (mg/L) Fe 878 (mg/L) As 8853 (mg/L) Al 544 (mg/L) Ni 5624 (mg/L) Mo 208 (mg/L) SO4 2- 0.52 (M)
【0015】以下にこの発明を工程を追って詳述する。 (a)工程:ウランとモリブデンの選択的吸着工程 この発明では、まずウラン、モリブデン、ニッケル、砒
素等を含む硫酸浸出液を、水素イオン形のメチレンホス
ホン酸型キレート樹脂と接触させる。メチレンホスホン
酸型キレート樹脂は、例えば“CRP−200”(三菱
化学(株)製商品名)が市販品として入手可能である
が、下記の方法により合成することもできる。すなわ
ち、スチレンジビニルベンゼン球状共重合体5gに、ク
ロロメチルエーテル31.4mLを加え、30分間放置
する。これに 1, 1, 2, 2 −テトラクロロエタン3.1
mLを加えて0〜5℃に冷却し、使用直前に粉砕した無
水塩化アルミニルム13.3gを約1時間かけて加え、
さらに2時間反応させる。反応後得られた樹脂を十分に
水洗し、アセトンに一夜浸漬し風乾してスチレンジビニ
ルベンゼン球状共重合体のクロロメチル化体を得る。こ
のクロロメチル化体と三塩化リンとを反応させて加水分
解することによりメチレンホスホン酸型キレート樹脂が
得られる(Hiroaki EGAWA, Takamasa NONAKA and Masan
ori IKARI; Journal of Applied Polymer Science, Vo
l. 29, No. 6, June 1984, pp.2045-2055, "Preparatio
n of Macroreticular Chelating Resins Containing Di
hydroxyphosphino and/or Phosphono Groups and Their
Adsorption Ability for Uranium")。
【0016】キレート樹脂と液との接触は、両者を撹拌
下で混合するか、あるいはキレート樹脂を充填したカラ
ムに通液することにより実施することができるが、作業
性や吸着効率の観点からカラム方式が好ましい。図1に
示したフローシートにおいては、メチレンホスホン酸型
キレート樹脂を充填したカラムに硫酸浸出液を空間速度
5〜10h-1で通液させている。この通液操作により、
硫酸浸出液中のウランとモリブデンが選択的に吸着さ
れ、若干の鉄も吸着されるが、ニッケル、砒素等は吸着
されずにカラムを通過する。
【0017】(b)および(c)工程:ウランとモリブ
デンの溶離ならびにキレート樹脂の再生工程 メチレンホスホン酸型キレート樹脂に吸着されたウラ
ン、モリブデンおよび鉄は、溶離液を選択することによ
りほぼ理想的に分離することができる。このメチレンホ
スホン酸型キレート樹脂を用いるウランとモリブデンの
選択的吸着工程と、溶離液の選択による両金属の分別溶
離がこの発明の骨格をなしている。
【0018】図2のフローシートに示したように、ウラ
ンとモリブデンの選択的吸着工程(a)を実施した後の
カラムに、溶離液として先ず1M−酢酸ナトリウム(N
aCH3CO2)水溶液を通液するとモリブデンが溶離
し、次いで溶離液として1M−炭酸ナトリウム(Na2
CO3)水溶液を通液するとウランが、それぞれ選択的
かつほぼ定量的に分別溶離される。かような操作による
ウランの溶離効率は極めて高く、ウラン溶離液の溶離最
大濃度は20g/L以上にも達する。
【0019】つづいてカラムを水洗して残存炭酸ナトリ
ウムを押し流した後、6M−塩酸(HCl)を通液する
と鉄が溶離されるとともに、キレート樹脂が水素イオン
形に再生される。選択的吸着工程(a)−溶離工程
(b)−樹脂再生工程(c)を繰り返し行うことによ
り、カラムの反復使用が可能となる。
【0020】ウランとモリブデンの溶離工程(b)にお
いては、溶離液として最初に酢酸ナトリウム水溶液を通
液し、次に炭酸ナトリウム水溶液を通液することが必要
である。最初に炭酸ナトリウム水溶液を通液すると、メ
チレンホスホン酸型キレート樹脂中の水素イオンと炭酸
ナトリウムとが反応して二酸化炭素ガスが発生するため
望ましくない。この発明におけるような溶離液の種類と
通液順序によって、二酸化炭素ガスの発生抑制、および
吸着されたウランとモリブデンとの効果的な分別溶離が
初めて可能となったものである。また特に溶離液とし
て、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水および塩酸を
この順で通液することによって、ウランとモリブデンと
鉄をほぼ理想的に分別溶離させることができる。
【0021】(d)工程:モリブデン溶離液からのモリ
ブデン回収工程 1M−酢酸ナトリウム水溶液でモリブデンを溶離したモ
リブデン溶離液には微量のウランが混入している。副産
物としてのモリブデンの有効利用を図るためには、微量
のウランを除去しておくことが望まれる。そこでこのモ
リブデン溶離液に水酸化ナトリウム水溶液を加えて弱ア
ルカリ性とした後、図1に示したようにアミノメチルホ
スホン酸型キレート樹脂、例えば“デュオライトC46
7”(ローム・アンド・ハース社製商品名)を充填した
カラムに通液して微量のウランを吸着除去する。かくし
て微量ウランを除去したモリブデン溶離液から、化学沈
殿法により沈殿を生成せしめ、この沈殿をろ過、乾燥す
ることによりモリブデン化合物を回収することができ
る。
【0022】微量ウラン除去後のモリブデン溶離液のモ
リブデン濃度が薄い場合には、イミノ二酢酸型キレート
樹脂(例えば“ユニセレックスUR−50”、ユニチカ
(株) 製商品名)等のモリブデンを選択的に吸着するキ
レート樹脂を用いて濃縮操作を行った後に、化学沈殿法
によりモリブデン化合物を回収してもよい。
【0023】(e)工程:ウラン溶離液からのイエロー
ケーキ製造工程 1M−炭酸ナトリウム水溶液でウランを溶離したウラン
溶離液に硫酸を添加して溶離液中に溶存している炭酸を
除去した後、図1に示したように過酸化水素あるいはア
ンモニア等を添加して沈殿を生成せしめ、これをろ過、
乾燥することにより、UF6 転換工場の受け入れ仕様を
充分満足し得るイエローケーキを製造することができ
る。
【0024】(f)工程:メチレンホスホン酸型キレー
ト樹脂カラムの流出液からのニッケルの分離・回収工程 メチレンホスホン酸型キレート樹脂充填カラムにウラン
鉱石の硫酸浸出液を通液すると、硫酸浸出液中のウラン
とモリブデンは選択的に吸着除去され、カラム流出液の
主成分はニッケルと砒素となる。図1に示したように、
このカラム流出液に炭酸水素ナトリウム等のpH調整剤
を添加してpH4〜6に調整することにより沈殿を生成
させ、この沈殿をろ過した後のろ液を、イミノ二酢酸型
キレート樹脂(例えば、“ダウエックスA1”、ダウ・
ケミカル社製商品名)充填カラムに通液すると、ニッケ
ルのみが選択的に樹脂に吸着され、砒素は吸着されずに
流出する。樹脂に吸着されたニッケルは3M−塩酸で溶
離でき、このニッケル溶離液より化学沈殿法により沈殿
を生成せしめ、この沈殿をろ過、乾燥することによりニ
ッケル化合物を回収することができる。
【0025】
【実施例】
(a)工程:ウランとモリブデンの選択的吸着工程 表1に示す組成を有するウラン鉱石の硫酸浸出溶液25
0mLを、水素イオン形のメチレンホスホン酸型キレー
ト樹脂10mLを充填したカラムに空間速度10h-1
室温で通液した。このときの各金属イオンの漏出曲線を
図3に示す。
【0026】図3の漏出曲線からわかるように、ウラン
およびモリブデンが吸着され、鉄、アルミニウムは少量
吸着されている。これに対して砒素およびニッケルは、
通液初期段階から漏出しておりほとんど吸着されずにカ
ラムを通過することがわかる。
【0027】(b)および(c)工程:ウランとモリブ
デンの溶離ならびにキレート樹脂の再生工程 上記(a)工程で吸着処理を施したメチレンホスホン酸
型キレート樹脂カラムに、1M−酢酸ナトリウム水溶液
10mL、1M−炭酸ナトリウム水溶液10mL、水1
0mLおよび6M−塩酸10mLをこの順に通液して吸
着金属を溶離せしめた。結果を図4に示す。溶離液はい
ずれも空間速度3h-1で通液した。
【0028】図4からわかるように、酢酸ナトリウム水
溶液によりほぼ100%のモリブデンと若干のアルミニ
ウムが溶離されるが、ウランと鉄は溶離されない。次の
炭酸ナトリウム水溶液によりほぼ100%のウランが溶
離され、溶離最大濃度は20g/L以上にも達してい
る。炭酸ナトリウム水溶液の溶離液では、両性金属であ
るアルミニウムも溶離される。最後に通液する塩酸によ
り鉄が溶離される。また残存するアルミニウムならびに
痕跡量のウランも溶離され、カラム内のキレート樹脂は
水素イオン形となり反復使用できる状態に再生される。
【0029】(d)工程:モリブデン溶離液からのモリ
ブデン回収工程 上記(b)工程で酢酸ナトリウム水溶液を用いて吸着モ
リブデンを溶離したモリブデン溶離液は、表2の組成を
有していた。
【0030】 [表2] U 3.9 (mg/L) As 105.9 (mg/L) Mo 673.6 (mg/L) Na 34244 (mg/L) Al 10.5 (mg/L) pH 6.0
【0031】上記組成のモリブデン溶離液にpH調整剤
として水酸化ナトリウム水溶液を添加して液のpΗを
8.6に調整した後、アミノメチルホスホン酸型キレー
ト樹脂“デュオライトC467”を充填したカラムに空
間速度3h-1で10L/L−樹脂通液した。このときの
ウランとモリブデンの漏出曲線を図5に示す。図5から
わかるように、微量のウランはそのほとんどが吸着除去
され、カラム流出液中のウラン濃度は25ppb以下で
あった。
【0032】(e)工程:ウラン溶離液からのイエロー
ケーキ製造工程 上記(b)工程で炭酸ナトリウム水溶液を用いて吸着ウ
ランを溶離したウラン溶離液は、表3の組成を有してい
た。
【0033】 [表3] U 15590 (mg/L) Ca 17.6 (mg/L) Mo 18.1 (mg/L) Na 24934 (mg/L) Ni 5.7 (mg/L) P 15.1 (mg/L) Fe 1.3 (mg/L) Ti 27.5 (mg/L) Al 20.1 (mg/L) Zr 19.4 (mg/L) As 28.8 (mg/L) Mg 0.7 (mg/L) K 6.1 (mg/L) Si 11.3 (mg/L)
【0034】上記組成のウラン溶離液に硫酸を加えて炭
酸を除去した後、pH調整剤として水酸化ナトリウム水
溶液を用いpΗ2に調整した後、過酸化水素水を添加し
て沈殿を生成せしめ、この沈殿をろ過して110℃で乾
燥することによりイエローケーキを製造した。得られた
イエローケーキの組成は、表4に示すように転換工場の
イエローケーキ受入れ仕様を充分満足するものであっ
た。
【0035】 [表4] U 69.5 % Na 0.168 % Mo 0.017 % P 0.139 % Fe 0.010 % Si 0.118 % As 0.03 % Ti 0.028 % K 0.009 % Zr 0.063 % Ca 0.086 % Mg 0.160 %
【0036】(f)工程:メチレンホスホン酸型キレー
ト樹脂カラムの流出液からのニッケルの分離・回収工程 上記(a)工程で得られたメチレンホスホン酸型キレー
ト樹脂カラムからの流出液は、表5の組成を有してい
た。 [表5] U 2.8 (mg/L) As 9336 (mg/L) Mo 1.4 (mg/L) Ni 6304 (mg/L) Al 235 (mg/L) Fe 223 (mg/L)
【0037】上記組成のカラム流出液に、pH調整剤と
して炭酸水素ナトリウム水溶液を添加してpΗ5に調整
し、生成した沈殿を濾過して表6の組成を有するろ液を
得た。 [表6] U 0 (mg/L) As 8141 (mg/L) Mo 0.13 (mg/L) Ni 5743 (mg/L) Al 4.0 (mg/L) Fe 78 (mg/L)
【0038】表5と表6を比較すると、沈殿の主成分は
水酸化アルミニウムと考えられ、鉄は35%残存してお
り、ニッケルと砒素も若干共沈していると考えられる。
【0039】表6に示す組成を有するろ液を、イミノ二
酢酸型キレート樹脂“ダウエックスA1”を充填したカ
ラムに空間速度5h-1で10L/L−樹脂通液した。こ
の時のニッケルと砒素の漏出曲線を図6に示す。図6か
らわかるように、ニッケルは吸着するが砒素は吸着され
ておらず、両元素の選択的な分離が可能である。
【0040】次いでこのカラムに、溶離液として3M−
塩酸を空間速度3h-1で10L/L−樹脂通液すること
によって、樹脂に吸着されているニッケルを溶離した。
このときのニッケルと砒素の溶離曲線を図7に示す。図
7からわかるように、ニッケルは、ほぼ100%近く溶
離しており、溶離最大濃度は約7g/Lに達している。
【0041】
【発明の効果】以上の説明からわかるように、(a)工
程および(b)工程からなるこの発明によれば、ウラン
の溶媒抽出などに従来から広く利用されていたホスホン
酸系抽出試薬と類似した構造の官能基が多孔性の高分子
基体に共有結合した構造を有するメチレンホスホン酸型
キレート樹脂と、ウラン鉱石の硫酸抽出液とを単に接触
させるだけの簡単な操作で、従来の溶媒抽出とほぼ同等
のイオン選択性をもたせてウランとモリブデンを選択的
にこのキレート樹脂に吸着させることができ、ウラン鉱
石硫酸浸出液中に含まれる他の多くの不純物と分離する
ことが可能となる。またこの分離操作においては、有機
溶媒を一切使用しないため、火災の発生、分離作業従事
者の健康への影響、有機溶媒による環境汚染などの問題
がない。
【0042】さらには、吸着されたモリブデンとウラン
は、溶離液として最初に酢酸ナトリウム水溶液を、次に
炭酸ナトリウム水溶液を順次通液することにより、二酸
化炭素ガスの発生を伴うことなく、モリブデンおよびウ
ランをほぼ100%分別溶離することができる。
【0043】かくして分別溶離したウラン溶離液は、ウ
ラン濃度が15〜20g/Lといった高濃度に達するた
め、(e)工程において、このウラン溶離液に過酸化水
素水やアンモニアを添加してイエローケーキを製造する
場合でも、転換工場の受入れ仕様を充分満足するイエロ
ーケーキを得ることができる。
【0044】また(d)工程を含めたこの発明によれ
ば、分別溶離したモリブデン溶離液中に混入している微
量ウランを、アミノメチルホスホン酸型キレート樹脂に
より効果的に吸着除去できる結果、ウラン混入のないモ
リブデン化合物の回収が可能となる。
【0045】さらにまた(f)工程を含めたこの発明に
よれば、メチレンホスホン酸型キレート樹脂でウランと
モリブデンを選択的に吸着除去した後のウラン鉱石硫酸
浸出液中に含まれるニッケルと砒素を、イミノ二酢酸型
キレート樹脂で処理することによりニッケルのみをこの
樹脂に選択的に吸着させることができ、吸着されたニッ
ケルは、溶離液として塩酸を用いることによりほぼ10
0%溶離回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の好ましい実施例を示すフローシート
である。
【図2】この発明の骨格となる工程を示すフローシート
である。
【図3】ウラン鉱石の硫酸浸出液をメチレンホスホン酸
型キレート樹脂カラムに通液したときの各種金属イオン
の漏出曲線を示すグラフである。
【図4】メチレンホスホン酸型キレート樹脂に吸着され
たモリブデン、ウランおよび鉄の各種溶離液による溶離
曲線を示すグラフである。
【図5】図4で得られたモリブデン溶離液をアミノメチ
ルホスホン酸型キレート樹脂カラムに通液したときのウ
ランおよびモリブデンの漏出曲線を示すグラフである。
【図6】ウラン鉱石の硫酸浸出液をメチレンホスホン酸
型キレート樹脂カラムに通液したときのカラム流出液を
pH調整し、生成する沈殿をろ過した後のろ液をイミノ
二酢酸型キレート樹脂カラムに通液したときのニッケル
および砒素の漏出曲線を示すグラフである。
【図7】図6でイミノ二酢酸型キレート樹脂に吸着させ
たニッケルを塩酸で溶離させたときの溶離曲線を示すグ
ラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭62−123016(JP,A) 特開 昭56−133319(JP,A) 特開 昭55−28373(JP,A) 特開 昭58−99122(JP,A) 特開 昭58−161926(JP,A) 特開 昭62−23945(JP,A) 特開 平6−346165(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22B 60/02 B01J 20/26 C22B 3/42

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ウランの他にモリブデン、ニッケルおよ
    び砒素を不純物として含有するウラン鉱石の硫酸浸出液
    を多孔性のメチレンホスホン酸型キレート樹脂と接触さ
    せて、ウランおよびモリブデンを選択的に吸着させる工
    程(a)と、ウランおよびモリブデンを吸着した前記メ
    チレンホスホン酸型キレート樹脂から、酢酸ナトリウム
    水溶液を用いてモリブデンを溶離し、次いで炭酸ナトリ
    ウム水溶液を用いてウランを溶離する工程(b)とから
    なることを特徴とするキレート樹脂を用いたウランと不
    純物の分離・回収方法。
  2. 【請求項2】 前記ウランおよびモリブデンの溶離工程
    (b)でウランを溶離した後の前記メチレンホスホン酸
    型キレート樹脂を水洗し、次いで塩酸を用いて他の吸着
    不純物を溶離させ、前記メチレンホスホン酸型キレート
    樹脂を再生させる工程(c)をさらに有することを特徴
    とする請求項1記載のウランと不純物の分離・回収方
    法。
  3. 【請求項3】 前記ウランおよびモリブデンの溶離工程
    (b)で得られたモリブデン溶離液をアミノメチルホス
    ホン酸型キレート樹脂と接触させることによって、モリ
    ブデン溶離液中に含まれる微量ウランを吸着除去する工
    程(d)をさらに有することを特徴とする請求項1記載
    のウランと不純物の分離・回収方法。
  4. 【請求項4】 前記ウランおよびモリブデンの溶離工程
    (b)で得られたウラン溶離液にアンモニアまたは過酸
    化水素を添加し、生成する沈殿を分離、乾燥してイエロ
    ーケーキを製造する工程(e)をさらに有することを特
    徴とする請求項1記載のウランと不純物の分離・回収方
    法。
  5. 【請求項5】 前記ウランおよびモリブデンの選択的吸
    着工程(a)でウランとモリブデンを除去された前記硫
    酸浸出液をpH4〜6に調整し、生成する沈殿を除去し
    た後、イミノ二酢酸型キレート樹脂と接触させることに
    よってイミノ二酢酸型キレート樹脂に吸着されるニッケ
    ルと吸着されない砒素とを分離し、塩酸を用いて前記イ
    ミノ二酢酸型キレート樹脂からニッケルを溶離する工程
    (f)をさらに有することを特徴とする請求項1記載の
    ウランと不純物の分離・回収方法。
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