JP3061058B2 - 電気粘性流体 - Google Patents

電気粘性流体

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は電気粘性流体に関するものである。
電気粘性流体とは、印加電圧の作用(OFF、ON、電圧
の変化)によってその見掛けの粘度が迅速かつ可逆的に
変化する、いわゆる電気粘性効果を示す流体である。
[従来の技術] 従来、電気粘性流体の1つとして、電気絶縁性液体、
イオンを吸着ないしは含有する微粒子および少量の水を
強力撹拌して得られたものが知られている。
上記流体における電気粘性効果は次のように考えられ
る。すなわち、強力撹拌処理によって水が微粒子中に移
行して電解質溶液を生ぜしめ、電圧を印加した際には、
こうして得られた電解質溶液中のイオンが微粒子中を移
動・偏在し、当該粒子は分極する。各微粒子は、上記分
極に基づく静電気引力によりに互いに凝集し、その結果
として、電気粘性効果が発現される。ところで、上記の
ような粘性流体における微粒子は、安定した分散状態を
維持しうるかぎり特に制限はなく、無機、有機のいずれ
の微粒子も使用可能である。
そして、従来より、無機微粒子としては、簡便なこと
から、粉砕シリカ粒子が使用されている。
[従来技術の課題点] 電気粘性流体を利用したクラッチ、水圧弁、防振装
置、バイブレ−タ等々においては該流体が電界を印加す
るための電極間の間隙を通過する際の粘度変化を利用す
ることが一般的である。従って分散相である粒子と装置
の壁との摩耗が問題となる。
この点、分散相として粉砕シリカ粒子を用いた電気粘
性流体では、該シリカの鋭利なエッジにより上記摩耗の
問題が大きく、その改良が望まれている。
また、電気粘性流体は電極間に電圧を印加したとき粒
子が架橋構造を形成する。従って粉砕粒子の場合は鋭利
なエッジ部で粒子同士が接触することになり絶縁耐圧が
低くなる欠点があった。
[課題を解決するための手段] 本発明は上記の問題点を改良した電気粘性流体を提供
することを目的とするものであり、この目的は、電気絶
縁性液体とこれに分散された微粒子からなり、当該微粒
子が、金属アルコキサイド又はその誘導体を加水分解・
重縮合して得られた、電解質溶液を含有する球体粒子を
もちいた電気粘性流体によって容易に達成される。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明にかかわる電
気粘性流体は、絶縁性液体に分散させる粒子として、金
属アルコキサイドまたはその誘導体を加水分解、重縮合
させることによって得られる平均粒径系が0.05〜2μm
の球状粒子を使用したものである。
金属アルコキサイドとしては、「Metal Alkoxides
(D.C.Bradley,R.C.Mehrotra,D.P.Gaur 共著)Academi
c Press1978」に記述されている種々のアルコキサイド
が、可能であるが、代表的なものとしてはSi、Ti、Zr等
のアルコキサイドやBa−Ti、Sr−Ti、Pb−Ti、Pb−Ti−
Zr、Li−Nb等の複合アルコキサイドが挙げられる。
金属アルコキサイドの加水分解は、一般に、アルコキ
サイドを溶解したアルコ−ル溶液とアルコ−ル水溶液と
を混合することによって行われるが、加水分解速度を適
宜調整することによって、金属酸化物の非晶質体を実質
的に球状の粒子として析出させることができる。加水分
解速度は、通常、反応系内のアルコキサイドと水のモル
比、濃度および必要に応じて加えられる加水分解の触媒
(アルカリまたは酸等)の量等によって調整される。球
状粒子を得るための条件はアルコキサイドの種類によっ
て異なるため一概には決定できないが、例えばSi(OC2H
5、Ti(OC2H5、Zr(OC2H5の場合は、通
常、[H2O]/[アルコキサイド]モル比が1〜150、よ
り好ましくは1〜100、アルコキサイドの濃度(mol/
)が0.05〜10、より好ましくは0.05〜5、水の濃度
(mol/)が0.1〜20、より好ましくは0.1〜10の範囲が
好ましい。
第1図は、実施例1においてSi(OC2H5の加水分
解で得られたシリカの球状粒子の走査電子顕微鏡写真
(倍率10、000倍)であるが、同図から明らかなよう
に、各粒子は球状を呈しまたその粒径分布もシャ−プで
ある。
球状シリカは、アルコ−ル溶液中から固定分を濾過ま
たは遠心沈降分離により分離し、ロ−タリ−エボポレー
タなどにより乾燥することによって得られ、平均粒径は
0.05〜2μmの範囲である。そして、上記球状粒子は電
解質溶液を含有したものであればよく、当該溶液中のイ
オンにより、前述の原理に基づいて電気粘性効果が発現
される。電解質溶液を構成する電界質としては、水等極
性溶媒中でイオンに解離するものであれば特に制限はな
く、例えば、NH3、NaOH、NaCl、LiCl、B2O3、CaO、MgSO
4、Fe(NO3等の無機化合物や、スルホン酸ソーダ、
カルボン酸ソーダ、アルキルベンゼンスルホン酸ソー
ダ、ポリスチレンスルホン酸ソーダ、脂肪酸カルシウム
塩、ナフタリンスルホン酸のホリマリン縮合物などのイ
オン性界面活性剤等が挙げられる。
電解質溶液を構成する溶媒としては、使用する電解質
を十分溶解しうるものであれば何れの極性溶媒をも使用
できる。
電解質溶液の濃度および含有量は、電界を印加した際
に導通を起こさない範囲から適宜選択されるが、濃度
は、通常0.1〜90重量%、好ましくは5〜50重量%の範
囲から選択され、含有量は、0.1〜20重量%、好ましく
は1〜10重量%の範囲から選択される。
金属アルコキサイドの加水分解・重縮合は、前述のよ
うに、NH3等の触媒の存在下に実施し得るので、かかる
場合は、当該触媒をそのまま電解質として利用すること
ができる。すなわち、金属アルコキサイドの加水分解・
重縮合の後、球状シリカは、アルコール溶液から分離さ
れ、乾燥されるが、この乾燥を完全に行なうことなく、
空気中で20℃まで加熱した場合の加熱重量減少が0.1〜2
0重量%、好ましくは1〜10重量%に成るように乾燥す
れば、上記範囲の電解質溶液を含有する球状粒子が得ら
れる。なお、上記の加熱重量減少は、10℃/分の昇温速
度における示差熱分析における値である。
勿論、上記乾燥、あるいは、その前の水洗を完全に実
施し、その後に、電解質溶液を含有させることも可能で
ある。このような場合、電解質溶液を構成する極性溶媒
として、水よりも高沸点の溶媒を使用するのが好まし
い。すなわち、水などの低沸点溶媒を使用した電気粘性
流体は、高温や高剪断力のために発熱するような環境に
おいて長期間に亘って使用すると、溶媒が揮発、飛散
し、その結果、十分な電気粘性効果が発現されなくなる
という問題があるが、高沸点溶媒の使用によってこのよ
うな問題は一挙に解決し得る。上記目的のために使用さ
れる高沸点極性溶媒としては、グリコール、エタノール
アミンなどが挙げられるが、そのなかでもエチレングリ
コールが好適に用いられる。この際、電解質溶液の含浸
の仕方としては、球状粒子、電解質、極性溶媒、及び電
気絶縁性液体をボ−ルミル等で数時間混合する、又は球
状粒子を電解質溶液に含浸する等いずれの方法でも行う
ことができる。
電気絶縁性液体は球状粒子を安定に分散でき、かつ、
絶縁抵抗が高く、電解質溶液を溶解しないものが使用さ
れ、具体的には、シリコ−ンオイル、トランスオイル、
エンジンオイル、エルテルやパラフィン、オレフィンま
たは芳香族炭化水素等から適宜選ばれる。
電気絶縁性液体に対する球状粒子の使用量は、通常5
〜50体積%が用いられ、好ましくは10〜40体積%とされ
る。
分散方法はボ−ルミルや超音波分散で代表される一般
的な混合分散機が使用できる。
電気粘性効果の測定は、共軸二重円筒型回転粘度計を
使用し、内外円筒間に電圧を印加したときの同一剪断速
度(162sec-1)における剪断応力の増加量を求め、これ
を粘性変化に換算する方法によって行なうことができ
る。
電気粘性流体は印加する電圧により流動特性を制御で
きるので、今後コンピュ−タ制御のメカトロニクス分野
への展開が期待される。具体的な応用例について幾つか
の例を上げる。自転車産業においてはクラッチ、トルク
コンバ−タ、バルブ、ショックアブソバ−、ブレ−キシ
ステム、パワーステアリング等の応用部品が考えられて
いる。また産業用ロボットの分野においても、各種アク
チュエ−タに応用されつつある。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本
発明はその要旨を越えないかぎり、以下の実施例に限定
されるものではない。
実施例1 Si(OC2H5(試薬特級)186.0gをエチルアルコ−
ル(試薬特級)670.7gに溶解したA液と28重量%NH4OH
水溶液223.6g、水173.9gを同じくエチルアルコール199
9.5gに溶解したB液を混合し、直径0.56μmのシリカ粒
子を析出させた。粒子直径の標準偏差は1.05であった。
このスラリ−から常法に従い粒子を分離し、100℃、1
時間、真空乾燥して粉末状態の粒子を得た。この粒子は
NH3(1.3重量%)、水(4.1重量%)、エタノ−ル(0.6
重量%)を含んでおり、200℃で空気中加熱したときの
重量減少は6%であった。次にこの粒子30.1gをシリコ
−ンオイル(東レシリコ−ンSH200、10cs)32.8gに加
え、ボ−ルミルにて12時間、分散混合した。
こうして得られた本発明の電気粘性流体について、共
軸二重円筒型回転粘度計を使用し、内外円筒間に電圧を
印加したときの同一剪断速度(162sec-1)における剪断
応力を測定した(電極間距離1mm,温度25℃)。得られた
結果を第2図に示す。初期粘度1.7ポイズガ2kv/mmの電
界強度を印加すると28ポイズに増加していることが分か
る。尚、この液体を室温に静置し10日後に再度測定した
ところ特性の変化は認められなかった。
実施例2 実施例1において用いた球状シリカを予め250℃、16
時間加熱して充分にNH3,水、エタノールを取り除いた粒
子40gに対して5.5重量%NaOH水溶液48gを加えた後、100
℃、1時間、真空乾燥して粉末状態の粒子を得た。この
粒子はNaOH(5.2重量%)、水(9.7重量%)を含んでお
り、200℃で空気加熱したときの重量減少は9.7%であっ
た。つぎに、この粒子30.1gをシリコーンオイル(東レ
シリコーンSH200、10cs)32.8gに加え、ボールミルで12
時間、分散混合した。こうして得られた流体の初期粘性
は1.5ポイズであり、2kV/mmの電界を印加すると16ポイ
ズ(162sec-1)に増大した。
実施例3 実施例1において用いた球状シリカを予め250℃、16
時間加熱して充分にNH3、水、エタノールを取り除いた
粒子10.0gとアンモニア水(NH3濃度25重量%)0.9gをシ
リコーンオイル(東レシリコーン SH200、10cs)18.7g
に加え、ボールミルで12時間、分散混合した。こうして
得られた流体の初期粘度は0.2ポイズであり、1,8kV/mm
の電界を印加すると22ポイズ(162sec-1)に増大した。
実施例4 実施例1において用いた球状シリカを予め250℃、16
時間加熱して充分にNH3、水、エタノールを取り除いた
粒子10.0gとNaOH水溶液(NaOH濃度44重量%)1.3gをシ
リコーンオイル(東レシリコーンSH200、10cs)18.7gに
加え、ボールミルで12時間、分散混合した。こうして得
られた流体の初期粘度は0.3ポイズであり、2kV/mmの電
界を印加すると16ポイズ(162sec-1)に増大した。
実施例5 実施例1において用いた球状シリカを予め250℃、16
時間加熱して充分にNH3、水、エタノールを取り除いた
粒子10.0gとNaOHをあらかじめエチレンングリコ−ルに
溶かした溶液(NaOH濃度1.8重量%)0.7gをシリコーン
オイル(東レシシコーンSH200、10cs)18.7gに加え、ボ
ールミルで12時間、分散混合した。こうして得られた流
体の初期粘度は0.8ポイズであり、2kV/mmの電界を印加
すると17ポイズ(162sec-1)に増大した。
実施例6 実施例1において用いた球状シリカ20.0gをジオクチ
ルアジペート(C8H17OOC−(CH24COOC8H17)37.1gに
加え、ボールミルで12時間、分散混合した。こうして得
られた流体の初期粘度は0.6ポイズであり、2kV/mmの電
界を印加すると25ポイズ(162sec-1)に増大した。
実施例7 実施例1において用いた球状シリカ20.0gをジオクチ
ルフタレート 39.4gに加え、ボールミルで12時間、分散混合した。こ
うして得られた流体の初期粘度は1.1ポイズであり、2kV
/mmの電界を印加すると37ポイズ(162sec-1)に増大し
た。
実施例8 実施例1において用いた球状シリカ20.0gを炭化水素
系低粘度鉱油(三菱石油RO−2、2cs)7.0gとシリコー
ンオイル(東レシリコーンSH200、5cs)33.4gの混合溶
液に加え、ボールミルで12時間、分散混合した。こうし
て得られた流体の初期粘度は0.2ポイズであり、2kV/mm
の電界を印加すると11ポイズ(162sec-1)に増大した。
比較例1 実施例1において用いた球状シリカを予め250℃、16
時間加熱して充分にNH3、水、エタノールを取り除いた1
0.0gをシリコーンオイル(東レシリコーンSH200、10c
s)18.7gに加え、ボールミルで12時間、分散混合した。
こうして得られた流体について電気粘性効果を測定した
結果、全く粘度増加を示さなかった。
比較例2 実施例1において用いた球状シリカを予め250℃、16
時間加熱して充分にNH3、水、エタノールを取り除いた
粒子10.0gに対して蒸留水10.0gを加えた後、真空乾燥し
て含水量6.8重量%の粒子を得た。次にこの粒子10.0gを
シリコーンオイル(東レシリコーンSH200、10cs)18.7g
に加え、ボールミルで12時間、分散混合した。こうして
得られた流体について電気粘性効果を測定した結果、全
く粘度増加を示さなかった。
比較例3 実施例3において球状シリカ粒子の代りに粉砕したシ
リカゲルを使用し電気粘性効果を測定したところ、0.5k
V/mmの電界を印加したところで放電し、以後の測定がで
きなかった。
[発明の効果] 本発明は上述のごとく、従来の先行技術で開示されて
いる組成物にくらべて、より安定性の高い電気粘性流体
を与える。
【図面の簡単な説明】
第1図は実施例にて得られた球状シリカ粒子の粒子構造
を示す走査電子顕微鏡写真である。 第2図は実施例1の電気粘性流体の印加電界に対する増
粘効果を示すグラフであり、横軸は印加電界(kV/m
m)、縦軸は粘度(poise)である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C10M 169/04 C10M 169/04 (C10M 169/04 107:50 155:00) C10N 10:02 10:04 10:08 10:10 20:06 40:06 40:08 40:16 50:08

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】電気絶縁性液体とこれに分散された球状微
    粒子からなり、当該球状微粒子が、金属アルコキサイド
    を加水分解・重縮合して得られた、電解質溶液を含有す
    る球状粒子であることを特徴とする電気粘性流体。
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