JP3058715B2 - グリコシダーゼ触媒作用による複合糖質の合成法 - Google Patents

グリコシダーゼ触媒作用による複合糖質の合成法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】複合糖質(glyco conjugate)
(糖タンパク質、グリコスフィンゴ脂質、グリコホスホ
脂質)は腫瘍発生、細菌およびウイルス感染、細胞−細
胞認識、細胞成長および細胞分化のような生物学的認識
過程において中心的な役割を果たす。それらは血液型分
類の基準になりそして種々の巨大分子物質および医薬の
内部移行に関与している。すなわち、糖タンパク質利用
の重要な領域は例えば薬物の標的器官への選択的取り込
みおよびタンパク質加水分解による分解からの医薬保護
にある(H. Schachter, Clinical Biochemistry 17, (1
984)3;N. Sharon, Trends Biochem. Sci. 9(1984)1
98;S. Hakamori, Cancer Res. 45(1985)2405;S. Ha
kamori, Scientific American 254(1986)No. 5, 3
2)。
【0002】複合糖質の前記機能の背景を考慮すれば、
該複合糖質の合成は特に興味ある問題である。
【0003】
【従来の技術】糖タンパク質中のペプチドおよび炭水化
物部分は通常ともに共有結合で結合されている。多種の
構造にもかかわらず、結合部分は特徴的であって変化は
僅かであるにすぎない。性質上、結合には3つの主要な
型がある。すなわちN−アセチルグルコサミンとアスパ
ラギンのアミド官能基との間のグリコシド結合、N−ア
セチルガラクトサミンとセリンまたはスレオニンのヒド
ロキシル官能基との間のa−O−グリコシド結合および
種々のヒドロキシアミノ酸へのキシロースまたはガラク
トースのb−O−グリコシド結合である。
【0004】さらに、セリン様セラミド部分へのグルコ
ースのb−O−グリコシド結合はいくつかの興味深いグ
リコスフィンゴ脂質中に見出される。セラミドはスフィ
ンゴシン〔(2S,3R,4E)−2−アミノ−4−オクタ
デセン−1,3−ジオール〕、デヒドロスフィンゴシン
(スフィンガニン)またはフィトスフィンゴシン(4−
D−ヒドロキシスフィンガニン)からなり、それらは2
−アミノ基上において長鎖脂肪酸(C14〜C26)でアシ
ル化されている(Y.-T. Li,S.-C. Li, Adv. Carbohyd
r. Chem. Biochem. 40(1982)235)。
【0005】すなわち、複合糖質の化学合成における主
要な問題はオリゴ糖を得るための単糖単位の立体選択的
および位置選択的連続結合、アグリコンを得るためのグ
リコシド結合の立体選択的形成およびとりわけ、アグリ
コン例えばペプチドまたはセラミドの合成である。
【0006】これらの問題に対する解決には、たとえ比
較的小さなグリコペプチドの場合でさえ、炭水化物およ
びペプチド化学からの好適な保護基の組合せを用いた精
巧な合成手法が必要である。例えば化学的な糖タンパク
質合成は多段、時間浪費の反応であることが多く、保護
基全てが除去された目的物質は少量だけしか得られない
ことが多い〔H. Kunz, Angew. Chem. 99(1987)297−3
11;R.R. Schmidt, “Stereochemistry of Organic and
Bioorganic Transformations", W. Bartmannand K.B.
Sharpless, ed. p. 169, Verlag Chemie Weinheim(198
7);H.Paulsen et al. Starch/Staerke 40(1988)46
5−472〕。
【0007】これらの物質の合成には今日、オリゴ糖生
合成からの酵素がますます使用されている。これに関連
した高い立体−および位置選択性並びに複雑な保護基化
学の回避はしばしば多段の化学合成に比べて良好な収率
を可能にする。
【0008】ところで、化学酵素的な糖タンパク質合成
が最近になって初めて文献に記載された〔C. Auge, C.
Gautheron and H. Pora, Carbohydr, Res. 193, 288 (1
989);J. Thien and T. Wiemann, Angew. Chem. 102, 7
8(1990);C. Unverzagt, H. Kunz and J.C. Paulson,
J. Am. Chem. Soc. 112,9308(1990)〕。これらは炭
水化物部分での酵素によるグリコシド化、すなわちペプ
チドもしくはアミノ酸および糖の化学的に合成された複
合体の糖−糖結合を介しての延長を伴っている。
【0009】糖結合を形成するのに用いる酵素はグリコ
シルトランスフェラーゼである。これらはグリコシルド
ナーおよびその受容体に関して極めて特異的であるとみ
なされており、そしてグリコシド化のためには活性化糖
例えばUDP−グルコースを必要とする。しかし、グリ
コシルトランスフェラーゼおよび活性化糖を得ることが
困難であるためにインビトロでの広範な使用またはより
大規模な合成は不可能である。
【0010】単糖またはオリゴ糖とアミノ酸またはペプ
チドとの、酵素結合による糖ペプチド(複合糖質)の調
製的合成は、今日ではトランスフェラーゼまたはその他
の酵素のいずれかを用いた場合についても記載はない
〔G.M. Whitesides et al., Tetrahedron 45(1989),
5365−5422〕。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】グリコシダーゼは天然
系においてグリコシド結合の加水分解を触媒作用する。
最近グリコシダーゼはますます、加水分解反応の反転に
より、さらにまたグリコシドの調製的合成のために使用
されている(R. Wallenfels, R. Weil, “The Enzyme
s", 3. Ed.;Boyer, P.D. (Ed);Academic Press, New
York 1972, Vol. VII, p. 618;J.E.G. Barnett, Int.
J. Biochem. 6(1975)321−328;G.M. Whitesides et
al., Tetrahedron 45(1989)5365−5422;Kurt G. Ni
lsson, Trends in Biotechn. 1988, 256)。ヌクレオフ
ィルとして用いられるヒドロキシル化合物は、簡単な第
1または第2アルコール、いくつかの単糖類およびある
場合にはまたステロイド類でもある。これらの合成の主
要な不利点は低収量にありそして多くの場合には副生成
物の生成にある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明によればD−およ
びL−セリン並びにD−およびL−セリン誘導体が良好
なヌクレオフィルとして同様に作用しうることが見出さ
れた。これにより初めて、本来この種の生成物用に意図
されていない酵素を用いてヒドロキシアミノ酸またはそ
れらの誘導体と単糖類とのインビトロでのグリコシド結
合を行わせることが可能になる。すなわち、複合糖質が
グリコシダーゼを用いて糖類をD−およびL−セリン、
D−およびL−セリン誘導体並びにD−およびL−セリ
ンペプチドと直接結合させることにより合成されうるこ
とを初めて証明することができるようになった。これ
は、グリコシダーゼがN−含有単糖類似体例えば1−デ
オキシノジリマイシン〔N. Peyrieras et al., Embo J.
2, 823(1983)〕、二環式N−含有化合物例えばスワ
インソニン〔8α,β−インドリジジン−1α,2α,8
β−トリオール;R.T. Schwarz, R. Datema, Trends Bi
ochem. Sci. 9, 32(1984)〕により、しかしまたN−
含有アルコール例えばエタノールアミン〔R. Wallenfel
s, R. Weil. “The Enzymes", 3. Ed.;Boyer, P.D.(E
d);Academic Press, New York 1972, Vol. VII, p. 6
18〕により阻害されるので特に意外である。すなわち、
アミノ酸およびそれらの誘導体もまた阻害剤として作用
しうるかもしれなかった。
【0013】一部には、得られた化合物は部分的に保護
された天然の複合糖質に相当するか、または特に後者の
変形物を示しそしてより大きな複合体用の合成プレカー
サーとして使用されうる。
【0014】
【発明の構成】すなわち、本発明は式I
【化6】 の複合糖質の製造方法に関する。その方法はグリコシダ
ーゼの存在下で式II
【0015】
【化7】 (式中R1はフッ素、ヒドロキシル基、1〜5個の炭素
原子を有するアルコキシ基、2〜5個の炭素原子を有す
るアルケニルオキシ基、6〜10個の炭素原子を有する
アリールオキシ基であるか、または酸素原子を介して結
合されている炭水化物残基である)の化合物を式III
【0016】
【化8】 〔式中R2はアミノ保護基でありそしてR3はヒドロキシ
ル基;アルコキシまたはアルキルメルカプト基またはア
ルケニルオキシ基(これらの各々は1〜18個の炭素原
子を有しそしてハロゲンまたはシアノにより置換されう
る);アリールオキシ基(これは6〜10個の炭素原子
を有しそしてそれぞれ1〜5個の炭素原子を有するアル
キル、アルコキシ、アルキルメルカプト、およびニトロ
基により置換されうる);または −NHR4(ここでR
4は1〜5個の炭素原子を有するアルキル基であるかま
たは式IV
【0017】
【化9】 の基または式VまたはVI
【0018】
【化10】 のジ−またはトリペプチド残基であって、ここでR5
ヒドロキシル基、各場合1〜5個の炭素原子を有しそし
てハロゲンまたはシアノにより置換されうるアルコキ
シ、アルキルメルカプトまたはアルケニルオキシ基、ま
たは6〜10個の炭素原子を有しそして各場合に1〜5
個の炭素原子を有するアルキル、アルコキシ、アルキル
メルカプト、およびニトロ基により置換されうるアリー
ルオキシ基であり、そしてR6、R7およびR8は同一で
あるかまたは相異なっていて水素であるか、または1〜
10個の炭素原子を有しそしてハロゲン、ヒドロキシ
ル、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ア
リールまたはヘテロアリールにより置換されうる直鎖
状、分枝鎖状または環状のアルキルまたはアルケニル基
である)である〕の化合物とインキュベートすることか
らなる。
【0019】グルコース、ガラクトースおよびマンノー
スが式IIの化合物として可能でありかつ好ましい。式II
のR1位のアルコキシ基としてはメトキシ基を用いるの
が好ましいし、アルケニルオキシ基としてはアリルオキ
シまたはビニルオキシ基を用いるのが好ましい。アリー
ルオキシ基は電子求引性置換基例えばニトロまたはシア
ノ基、またはハロゲンにより置換されうる。フェノキ
シ、o−またはp−ニトロフェノキシまたはジニトロフ
ェノキシ基を用いるのが好ましい。R1位の炭水化物残
基により形成される糖はマルトースまたはラクトースで
あるのが好ましい。R1は特に好ましくはフッ素または
p−またはo−ニトロフェノキシ基である。
【0020】式IIIのR2位中の保護基としてはペプチド
および糖ペプチド化学で慣用のアミノ保護基例えばアシ
ル基例えば長鎖脂肪酸のアシル基およびアルキル−また
はアリールオキシカルボニル基を用いることが本質的に
可能である。使用できる保護基は例えばH. Hubbuch, Ko
ntakte 3/79, page 14, T.W. Greene, Protective Grou
ps in Organic Synthesis, John Wiley & Sons 1981, p
223ffまたはHouben-Weyl, Vol. 15/1 p. 46の論文中に
記載されている。用いるのに好ましいのはベンジルオキ
シカルボニル(Z)、アリルオキシカルボニル(Alo
c)および第三ブチルオキシカルボニル(Boc)並び
にトリクロロエトキシカルボニル、ホルミル、アセチ
ル、クロロアセチル、トリフルオロアセチル、フェナセ
チル、ベンゾイルまたは6〜24個の炭素原子を有する
長鎖脂肪酸のアシル基である。
【0021】R3位の基および式IV−VI中のR5はメトキ
シ、メトキシメチル、ベンジルオキシメチル、メチルメ
ルカプトメチル、エトキシ、クロロエトキシ、ブロモエ
トキシもしくはシアノエトキシ、およびビニルオキシ基
およびペプチド化学での慣用カルボキシル保護基(Houb
en-Weyl. Vol. 15/1, p. 315ff)例えばベンジルオキ
シ、トリクロロエトキシ、p−ニトロベンジルオキシ、
p−メトキシベンジルオキシ、ピペロニルオキシ、アリ
ルオキシまたは第三ブチルオキシおよび第三ブチルジメ
チルシリルオキシ基であるのが好ましい。
【0022】R3がアミノ基NHR4である場合には、R
4は式IVおよびVの基であるのが好ましい。式中R6およ
びR7は同一であるかまたは相異なっていて、水素であ
るかまたは1〜10個の炭素原子を有しそしてハロゲ
ン、ヒドロキシル、メルカプト、アルコキシ、アルキル
メルカプト、アリールまたはヘテロアリールにより置換
されうる直鎖、分枝鎖状または環状のアルキルまたはア
ルケニル基である。R6およびR7の置換基は本質的には
中性、脂肪族、芳香族または環状α−アミノ酸の側鎖で
ある。式IIIの化合物として使用されるのが特に好まし
いのはZ−Ser−Oアリル、Z−Ser−Ala−O
Me、Z−Ser−Leu−OMe、Aloc−Ser
−Gly−OEtCl、Boc−Ser−Oアリルおよ
びAloc−Ser−Phe−OMeである。式IIIの
化合物中のR2が6〜24個の炭素原子を有する長鎖脂
肪酸のアシル基でありそしてR3が6〜18個の炭素原
子を有するアルコキシ基である場合には、式IIIの化合
物はスフィンゴシンまたはスフィンガニンと構造上類似
している化合物であって、それはグリコシダーゼの触媒
作用による、グリコスフィンゴ脂質合成のためのモデル
物質として興味深い。
【0023】式IIおよびIIIの各基質は購入されうる
(例えばニトロフェニルグリコシド類)かまたはそれ自
体知られた手法によって容易に製造されうる(F. Miche
el, A.Klimer, Adv. Carbohydr. Chem. 16, 85(196
1);ドイツ国特許出願公開公報第3040805号および第34
32565号各明細書によるグリコシルフルオライド類;Hou
ben-Weyl, Volumes 15/Iおよび15/IIに記載の各手法
によるアミノ酸およびペプチド並びに保護された誘導
体)かのいずれかである。
【0024】式IIの化合物および式IIIの化合物は4:
1〜1:10、好ましくは3:2〜1:4の割合で用い
ることができる。グリコシルドナーIIIのミリモル当た
り4〜40単位の酵素を用いるのが好都合である。
【0025】反応はpH5.0〜8.0、有利にはpH6.0
〜7.5で行うことができる。使用しうる緩衝液はHE
PES、TRICIN、TAPS、MES、TESおよ
びMOPS、CHES、TRIS並びにりん酸カリウム
およびりん酸ナトリウム緩衝液である。モル濃度は0.
01〜1.0好ましくは0.01〜0.1であるべきであ
る。さらに、温度は約−30℃〜50℃好ましくは20
℃〜35℃で保持されるべきである。酵素は温度が50
℃以上に増加するにつれ、ますます不可逆的に不活化す
る。培養時間は1〜30時間であることができる。
【0026】使用するのに有利な酵素は酵母および甘扁
桃からのグルコシダーゼ、大腸菌、コーヒー豆、ウシの
精巣およびアスペルギルスニガー(Aspergillus nige
r)からのガラクトシダーゼ、アーモンド、タチナタマ
メおよびカタツムリアセトン粉末からのマンノシダー
ゼ、アスペルギルスオリゼ(Aspergillus oryzae)、バ
チルスズブチリス(Bacillus subtilis)およびブタの
膵臓からのアミラーゼ、アスペルギルスニガー(Asperg
illus niger)からのアミログルコシダーゼおよびトラ
ンスグルコシダーゼである。
【0027】グルコシルドナーがグルコースまたは1−
グルコ−ヘキソピラノシドである場合には、グルコシダ
ーゼを酵素として使用することが特に好ましい。しか
し、ガラクトースもしくは1−ガラクト−ヘキソピラノ
シド、またはマンノースもしくは1−マンノ−ヘキソピ
ラノシドが用いられる場合には、使用するのが有利な酵
素はガラクトシダーゼまたはマンノシダーゼである。す
なわちグルコシルドナーIIの場合には比較的広範な基質
特異性があるので、式IIIの化合物の選択に融通性があ
る。すなわち、多数の相異なるN−およびカルボキシル
−保護基を自由に併用することができる。
【0028】基質IIおよびIIIの溶解を改善するには、
酵素活性への悪影響が全くないかまたはほんの僅かであ
る溶媒を用いることが可能である。これらの例にはアセ
トン、ジメトキシエタン、ジグライムがあるが、特にジ
イソプロピルエーテルおよび第三ブチルメチルエーテ
ル、トルエンおよびキシレンがある。また、使用する酵
素と生理学的に融和性である塩を加えることにより反応
速度を増大させることも可能である。このような塩の例
としてはMnSO4、CaCl2、KCl、NaBr、L
iCl、LiBrおよびKMnO4があるが、NiSO4
およびMgCl2がより好ましい。
【0029】本発明により用いられるグリコシダーゼ
は、水溶液中において遊離の水溶性酵素としてまたは慣
用法により担体に結合された水に不溶性形態で(ドイツ
国特許出願公開公報第2732301号参照)用いることがで
きる。酵素が固定化形態で用いられる場合には、これは
バッチ法および連続法の両手法で実施されうる。
【0030】反応の進行はHPLC〔ODS-Hypersil 5
μm4.6×250mm、MeOH-H2O、Bioselect 100/10-8 250×
4.6mm、CH3CN-H2O〕によりまたはTLC〔CHCl3/Hex/
MeOH=3:1:1〕により追跡されうる。
【0031】その後の後処理は例えば、トルエンまたは
ジイソプロピルエーテルでの抽出、XAD吸着剤(例え
ばXAD−2)での処理によるニトロフェノールの除
去、水性相の凍結乾燥およびクロマトグラフィー例えば
調製用薄層クロマトグラフィー、シリカゲルでのクロマ
トグラフィー(フラッシュまたは慣用の)、フラッシュ
クロマトグラフィーまたはEurosil Bioselect 100-30 C
l8(Knauer社製)もしくはLiChroPrep RP 18(Merck社
製)でのMPLCおよびSephadex LH20(Pharmacia社
製)もしくはBiogel P2 100-200メッシュ(BioRad社
製)でのクロマトグラフィーによる精製によって実施さ
れる。また、最初に反応溶液を凍結乾燥し次に固形残留
物をメタノールで抽出することも可能である。その場合
メタノール溶液の濾過および濃縮の次にはさらに精製す
るために前記のクロマトグラフィー手法を使用すること
ができる。
【0032】
【実施例】以下に本発明を説明するために実施例を記載
する。
【0033】実施例 1 大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ(50μlの(NH4)
2SO4懸濁液、Boehringer Mannheim社製)75Uを、
りん酸カリウム緩衝液(0.1M、pH=7;10mM Mg
Cl2)100ml中のo−ニトロフェニルβ−ガラクト
シド 1.24g(4.1ミリモル)および(L)−Z−セ
リンエチルエステル2.0g(7.5ミリモル)に加え、
その混合物を室温で5時間撹拌した。凍結乾燥し、残留
物をメタノールで抽出し次いでシリカゲルでのフラッシ
ュクロマトグラフィー(MeOH/CH2Cl2/ヘキサ
ン=1:6:6)に付しそして最後に調製用薄層クロマ
トグラフィー(MeOH/CHCl3/ヘキサン=2:
6:6)により精製して目的の複合糖質300mg(17
%)を得た。これは1H/13C−NMRによれば純粋な
化合物であった。13 C−NMR(DMSO−d6、75MHz、δ ppm表
示): Cl(Gal):104.03(β) FAB−MS:MH+=430
【0034】実施例 2 大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ(100μlの(NH
4)2SO4懸濁液、Boehringer Mannheim)150Uを、
りん酸カリウム緩衝液(0.07M、pH=7;10mM M
gCl2)200ml中のo−ニトロフェニルβ−ガラク
トシド 2.5g(8.3ミリモル)および(L)−Z−セ
リンアリルエステル8.0g(28.7ミリモル)に加
え、その混合物を室温で24時間撹拌した。凍結乾燥、
メタノールでの残留物の抽出およびシリカゲルでのカラ
ムクロマトグラフィー(MeOH/CH2Cl2/ヘキサ
ン=1:6:2)による後処理を行って目的の複合糖質
435mg(12%)を得た。13 C−NMR(DMSO−d6、75MHz、δ ppm表
示): Cl(Gal):104.06(β) FAB−MS:MH+=442
【0035】実施例 3 o−ニトロフェニルβ−ガラクトシド124mg(0.4
1ミリモル)および(L)−Z−セリンアリルエステル2
00mg(0.72ミリモル)をりん酸カリウム緩衝液
(0.07M、pH=7.0;10mM MgCl2)10ml中
において大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ(5μlの
(NH4)2SO4懸濁液、Boehringer Mannheim社製)7.
5Uとともに50℃で2 1/4時間撹拌した。凍結乾燥し
ついで調製用薄層クロマトグラフィー(MeOH/CH
Cl3/ヘキサン=2:2:6)に付して予想されたグ
リコシド22mg(12%)を得た。分光学上のデータは
実施例2に相当した。
【0036】実施例 4 o−ニトロフェニルβ−ガラクトシド225mg(0.8
5ミリモル)および(L)−Z−セリンアリルエステル5
00mg(1.8ミリモル)をりん酸カリウム緩衝液(0.
07M、pH=7.0;10mM MgCl2)20ml中にお
いて大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ(10μlの(N
4)2SO4懸濁液、Boehringer Mannheim社製)15U
とともに室温で2 1/4時間撹拌した。凍結乾燥し、残留
物をメタノールで抽出しついでメタノールを用いてSeph
adex LH20(カラム 60×2.5cm)でクロマトグラフ
ィーに付した。目的生成物34mg(9%)が得られた。
分光学上のデータは実施例2に相当した。
【0037】実施例 5 大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ(50μlの(NH4)
2SO4懸濁液、Boehringer Mannheim社製)75UをT
RIS緩衝液(0.1M、pH=7.2)50ml中において
o−ニトロフェニルβ−ガラクトシド 538mg(1.7
8ミリモル)および(D)−Z−セリンアリルエステル
1.07g(3.84ミリモル)に加え、その混合物を室
温で6.5時間撹拌した。凍結乾燥し、次いで水を用い
たBiogel P2(100〜200メッシュ、カラム50×
3cm)でのクロマトグラフィーそしてMeOH/CHC
3/ヘキサン=1:3:1を用いたシリカゲルでのク
ロマトグラフィーに付した。目的の複合糖質が95mg
(12%)の収量で得られた。13 C−NMR(DMSO−d6、75MHz、δ ppm表
示): FAB−MS:MH+=442
【0038】実施例 6 大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ(50μlの(NH4)
2SO4懸濁液、Boehringer Mannheim社製)75UをT
RIS緩衝液(0.01M、pH=7.2)50ml中におい
てo−ニトロフェニルβ−ガラクトシド 542mg(1.
8ミリモル)および(L)−Z−セリンエチルエステル
1.06g(3.8ミリモル)に加え、その混合物を室温
で5.5時間撹拌した。次に凍結乾燥、水によるBiogel
P2(100〜200メッシュ、カラム50×3cm)およ
びCHCl3/MeOH/ヘキサン(3:1:1)による
シリカゲルでのクロマトグラフィーにより精製を実施し
た。目的グリコシド78mg(10%収率)が得られた。
分光学上のデータは実施例1に相当した。
【0039】実施例 7 o−ニトロフェニルβ−ガラクトシド532mg(1.7
7ミリモル)および(L)−Boc−セリンアリルエステ
ル1.02g(4.16ミリモル)をTRIS緩衝液
(0.01M、pH=7.2)50ml中において大腸菌由来
のβ−ガラクトシダーゼ(50μlの(NH4)2SO4懸濁
液、Boehringer Mannheim社製)75Uとともに室温で
5.5時間撹拌した。凍結乾燥し、水を用いたBiogel P2
(100〜200メッシュ、カラム50×3cm)でのク
ロマトグラフィーおよびCHCl3/MeOH/ヘキサ
ン(3:1:1)を用いたシリカゲルでのクロマトグラ
フィーに付して目的の複合糖質130mg(18%)を得
た。
【0040】この化合物はTLC、1H/13C−NMR
およびFAB−MSによれば純粋であった。13 C−NMR(DMSO−d6、75MHz、δ ppm表
示): Cl(Gal):104.01(β) FAB−MS:MH+=408
【0041】実施例 8 p−ニトロフェニルα−マンノシド391mg(1.3ミ
リモル)および(L)−Z−セリンアリルエステル714
mg(2.9ミリモル)をTRIS緩衝液(pH6、0.01
M)35ml中においてα−マンノシダーゼ(タチナタマ
メから、Sigma社製)22U(220μlの(NH4)2SO
4懸濁液)とともに室温で3.5時間撹拌した。凍結乾燥
し、Emosil-Bioselect(アセトニトリル/水 40:6
0中の100−30 C18)90gでのクロマトグラ
フィーおよびシリカゲル(CHCl3/メタノール/ヘ
キサン 3:1:1)でのクロマトグラフィーに付して
目的の生成物22g(4%)を得た。これは1H/13
−NMRおよびFAB−MSによれば純粋であった。13 C−NMR(DMSO−d6、75MHz、δ ppm表
示): Cl(Man):100.61(α) FAB−MS:MH+=442
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07H 15/04 C12P 19/44 - 19/62 BIOSIS(DIALOG) CA(STN)

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 グリコシダーゼの存在下で式II 【化1】 (式中R1はフッ素、ヒドロキシル基、1〜5個の炭素
    原子を有するアルコキシ基、2〜5個の炭素原子を有す
    るアルケニルオキシ基、6〜10個の炭素原子を有する
    アリールオキシ基であるか、または酸素原子を介して結
    合されている炭水化物残基である)の化合物を式III 【化2】 〔式中R2はアミノ保護基でありそしてR3はヒドロキシ
    ル基;アルコキシまたはアルキルメルカプト基またはア
    ルケニルオキシ基(これらの各々は1〜18個の炭素原
    子を有しそしてハロゲンまたはシアノにより置換されう
    る);アリールオキシ基(これは6〜10個の炭素原子
    を有しそしてそれぞれ1〜5個の炭素原子を有するアル
    キル、アルコキシ、アルキルメルカプト、およびニトロ
    基により置換されうる);または −NHR4(ここでR
    4は1〜5個の炭素原子を有するアルキル基であるかま
    たは式IV 【化3】 の基または式VまたはVI 【化4】 のジ−またはトリペプチド残基であって、ここでR5
    ヒドロキシル基、各場合1〜5個の炭素原子を有しそし
    てハロゲンまたはシアノにより置換されうるアルコキ
    シ、アルキルメルカプトまたはアルケニルオキシ基、ま
    たは6〜10個の炭素原子を有しそして各場合に1〜5
    個の炭素原子を有するアルキル、アルコキシ、アルキル
    メルカプト、およびニトロ基により置換されうるアリー
    ルオキシ基であり、そしてR6、R7およびR8は同一で
    あるかまたは相異なっていて水素であるか、または1〜
    10個の炭素原子を有しそしてハロゲン、ヒドロキシ
    ル、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ア
    リールまたはヘテロアリールにより置換されうる直鎖
    状、分枝鎖状または環状のアルキルまたはアルケニル基
    である)である〕の化合物とインキュベートすることか
    らなる式I 【化5】 の複合糖質の製造方法。
  2. 【請求項2】 式IIにおいてR1がフッ素、メトキシ
    基、アリルオキシ基、ビニルオキシ基、フェノキシ基、
    o−またはp−ニトロフェノキシ基またはジニトロフェ
    ノキシ基である化合物を用いる請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 式IIIにおいてR2がベンジルオキシカル
    ボニル、アリルオキシカルボニル、第三ブチルオキシカ
    ルボニル、ホルミル、アセチル、クロロアセチル、トリ
    フルオロアセチル、フェナセチル、ベンゾイルまたは6
    〜24個の炭素原子を有する長鎖脂肪酸のアシル基であ
    る化合物を用いる請求項1記載の方法。
  4. 【請求項4】 式IIIにおいてR3がメトキシ、メトキシ
    メチル、ベンジルオキシメチル、メチルメルカプトメチ
    ル、エトキシ、クロロエトキシ、ブロモエトキシもしく
    はシアノエトキシ、ベンジルオキシ、p−ニトロベンジ
    ルオキシ、p−メトキシベンジルオキシ、ピペロニルオ
    キシ、アリルオキシもしくはビニルオキシおよび第三ブ
    チルオキシもしくは第三ブチルジメチルシリルオキシで
    あるか、またはR3が基NHR4である場合にはR4が式I
    VまたはV(式中R5はR3で定義した意味を有する)の
    基であり、R3およびR5は同一であるかまたは相異なる
    ことができる化合物を用いる請求項1または3記載の方
    法。
  5. 【請求項5】 式IIおよび式IIIの各化合物が4:1〜
    1:10の比で用いられる請求項1〜4のいずれか1項
    に記載の方法。
  6. 【請求項6】 反応を5.0〜8.0のpH範囲で行う請求
    項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 【請求項7】 反応を−30〜50℃の温度で行う請求
    項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 【請求項8】 酵母および甘扁桃からのグルコシダー
    ゼ、大腸菌、アスペルギルスニガー(Aspergillus nige
    r)、コーヒー豆またはウシの精巣からのガラクトシダ
    ーゼ、カタツムリアセトン粉末形態でのβ−マンノシダ
    ーゼまたはタチナタマメまたはアーモンドからのα−マ
    ンノシダーゼ、アスペルギルスオリゼ(Aspergillus or
    yzae)、バチルスズブチリス(Bacillus subtilis)ま
    たはブタの膵臓からのアミラーゼまたはアスペルギルス
    ニガーからのアミログルコシダーゼをグリコシダーゼと
    して用いる請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
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