JP3058654B2 - 超微結晶合金及びその製造方法 - Google Patents

超微結晶合金及びその製造方法

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JP3058654B2
JP3058654B2 JP2127183A JP12718390A JP3058654B2 JP 3058654 B2 JP3058654 B2 JP 3058654B2 JP 2127183 A JP2127183 A JP 2127183A JP 12718390 A JP12718390 A JP 12718390A JP 3058654 B2 JP3058654 B2 JP 3058654B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は非対称性の大きさB−Hカーブ特性を有する
超微結晶合金及びその製造方法に関する。
[従来の技術] 非対称B−Hカーブを示す実用的合金としては、スパ
ッタ膜により多層にした膜以外の報告は少ないが膜以外
でもいくつかの報告が行われている。
非対称B−Hカーブ特性を有する超微結晶合金の用途
としては、磁気スイッチや制御用磁心、MRセンサー等が
ある磁束制御範囲を大きくしたり、制御磁化力を小さく
できるなど種々のメリットがある。
[発明が解決しようとする課題] 膜以外の非対称B−Hカーブを示す合金として、Sher
woodらは(Fe0.5Mn0.5)75P16B6A13アモルファス合金を
磁場中冷却し1.5Kの温度で非対称B−Hカーブを観測し
ている(Sherwood et al.,1974 AIP Conf.Proc.24 745
−6)。これは強磁性と反強磁性の交換異方性のためで
あると解釈されている。しかし、この合金では室温では
強磁性を示さないため実用的でない。
一方KomotoらはFe5Co70Si15B10アモルファス合金にお
いて約180℃のキュリー温度以下の温度に保持すること
により22mOeのB−Hカーブのシフトを観察している。
(Komoto et al.,Japan J.Appl.Phys.Vol.17(1978)N
o.1 p257)。しかしながら、この方法ではB−Hカーブ
が滑らかではない蛇形になりやすく、B−Hカーブの非
対称性も十分ではなく実用的なものとはいい難い。ま
た、特開昭61−4203特開昭61−123119では滑らかなB−
Hカーブを示す合金が報告されている。しかし、この合
金はCo基アモルファス合金であり、温度が高い条件では
徐々にB−Hカーブの非対称性が変化してしまい問題が
ある。
また最近になり特開平1−79342に記載されているよ
うに熱的安定性に優れた超微細結晶粒組織からなるFe基
軟磁性合金が報告されている。この合金は低磁歪、高飽
和磁束密度で軟磁気特性にすぐれている。しかし、この
合金においてこれまでB−Hカープの非対称性に優れた
合金は報告されていない。
[課題を解決するための手段] 上記問題点を解決するための鋭意検討の結果本発明者
らは、特開平1−79342号等に記載されている超微細結
晶粒組織からなる合金すなわち、組織の少なくとも50%
が平均粒径1000Å以下の微細結晶粒からなる合金におい
て、原点から3mOe以上シフトした非対称性が大きいB−
Hカーブ特性を有する特性が得られることおよびその製
造方法を新規に見いだし本発明に想到した。
Cu,Ag,Auから選ばれた少なくとも1種の元素と、Ti,
V,Cr,Mn,Nb,Mo,Zr,Hf,Ta,Wから選ばれる少なくとも一種
の元素を必須元素として含む合金は比較的低保持力で非
対称B−H特性のものが得られる。
即ち、本発明は、組成式: (Fe1-aMa100−x−y−z−α−β−γAxSiyBzM′
αM″βγ(at%)(但し、MはCo及び/又はNiであ
り、AはCu,Ag,Auから選ばれる少なくとも一種の元素、
M′はNb,Mo,Ta,Ti,Zr,Hf,V,Cr,Mn及びWからなる群か
ら選ばれた少なくとも1種の元素、M″はAl,白金族元
素,Sc,希土類元素,Zn,Sn,Reからなる群から選ばれた少
なくとも1種の元素、XはC,Ge,P,Ga,Sb,In,Be,Asから
なる群から選ばれた少なくとも1種の元素であり、a,x,
y,z,α,β及びγはそれぞれ0≦a≦0.5、0.1≦x≦
3、0≦y≦30、0≦z≦25、5≦y+z≦30、0.1≦
α≦20、0≦β≦20、0≦γ≦20を満たす。)であっ
て、組織の少なくとも50%が平均粒径1000Å以下の超微
細結晶粒からなり、原点から3mOe以上シフトしたB−H
カーブ特性を有する超微結晶合金である。
また、本発明の超微結晶合金は、合金表面付近に(10
0)面が配向した結晶相が存在し、かつ内部はランダム
配向(配向していない)になっている場合においても原
点から3mOe以上シフトしたB−Hカーブ特性が得られ
る。
なお、B−HカーブのシフトHsは、第1図中に示した
Hc1、Hc2を用い次の様に定義した。
Hs(Ho1+Hc2)/2 ただし、Hc1,Hc2の位置がB軸に対して右側の場合はH
c1,Hc2の値を正、左側の場合は負とする。
保磁力Hcは Hc=(Hc1−Hc2)/2 と定義した。
本発明の超微結晶合金を製造する一つの方法は、薄帯
状のアモルファス合金を製造する工程と、酸素を含む雰
囲気中において薄帯長手方向に磁場を印可しながら磁場
中熱処理し、組織の少なくとも50%を平均粒径1000Å以
下の超微細結晶粒とする工程とからなり、前記酸素を含
む雰囲気中における磁場中熱処理により原点から3mOe以
上シフトしたB−Hカーブ特性を付与する超微結晶合金
の製造方法である。
また、本発明の超微結晶合金の他の製造方法として
は、薄帯状のアモルファス合金を製造する工程と、酸素
を含む雰囲気中で熱処理して組織の少なくとも50%が平
均粒径1000Å以下の超微細結晶粒とする工程と、さらに
薄帯長手方向に磁場を印可しながら磁場中熱処理する工
程とからなり、前記酸素を含む雰囲気中における熱処理
により原点から3mOe以上シフトしたB−Hカーブ特性を
付与する超微結晶合金の製造方法がある。
本発明の超微結晶合金のさらに他の製造方法として
は、表面に結晶相を形成した薄帯状のアモルファス合金
を製造する工程と、薄帯長手方向に磁場を印可しながら
磁場中熱処理し、組織の少なくとも50%が平均粒径1000
Å以下の超微細結晶粒とする工程とからなり、前記合金
表面に(100)面が配向した結晶相を形成することによ
り原点から3mOe以上シフトしたB−Hカーブ特性を付与
する超微結晶合金の製造方法がある。
本発明に終わるアモルファス合金は、通常単ロール法
の等の液体急冷法により製造されるが、その他にスパッ
ター法、蒸着法、電着法等により製造することも可能で
ある。
本発明の超微結晶合金の製造方法においては、磁場中
熱処理する工程を含むことが望ましく、特に励磁する方
向に磁場を印加し磁場中熱処理した場合にB−H曲線の
シフト量を大きくできるため好ましい結果が得られる。
[実施例] 以下本発明を実施例に従って説明するが本発明はこれ
らに限定されるものではない。
実施例1 単ロール法により、Febal.Cu1Nb2.5Si10.5B9(at%)
の組成を有する幅10mm,厚さ18μmのアモルファス合金
薄帯を作製し、次に外径19mm、内径15mmにロール接触面
を外側にし巻回しトロイダル磁心を作製した。次にこの
合金を酸素が5%含まれる窒素ガス中550℃1時間の熱
処理を行った。なお熱処理の際は薄帯長手方向に100eの
磁場を印加した。熱処理後の合金はミクロ組織観察の結
果組織のほとんどが超微細な結晶粒組織を有しているこ
とが確認された。
第2図に熱処理後の磁心の直流B−Hカーブを示す。
図から分かる様に本合金の直流B−Hカーブは非対称
になっていることが分かる。また。100℃に30分保持後
の直流B−Hカーブを観察したがほとんど変化していな
かった。
実施例2 単ロール法により、Febal.Cu1Nb3Si8B9(at%)の組
成を有する幅5mm,厚さ18μmのアモルファス合金薄帯を
作製した。第3図にロール接触面側及び自由凝固面側の
X線回折パターンを示す。bcc相(200)面に相当する結
晶ピークとアモルファス相に相当するハローなパターン
が認められる。これよりこの合金はアモルファス相とbc
c相からなることが分かる。これより、結晶は(100)面
が合金薄帯表面に配向していると推定される。また、ロ
ール接触面側及び自由凝固面側のX線回折パターンが異
なり自由凝固面側のbccピークが大きいことから結晶相
は自由面側表面に形成していると推定される。実際表面
を研磨した後は結晶ピークは認められなかった。
次に外径19mm、内径15mmにロール接触面を外側にし巻
回しトロイダル磁心を作製した。次にこの合金を窒素ガ
ス中530℃1時間の熱処理を行った。なお熱処理の際は
薄帯長手方向に100eの磁場を印加した。透過電子顕微鏡
によりミクロ組織観察の結果、熱処理後の合金は200Å
程度の超微細な結晶を主体としていることが確認され
た。
次に熱処理後の直流B−Hカーブを測定した。比較の
ため無磁場中で熱処理を行った場合の直流B−Hカーブ
を測定した。磁場中熱処理を行った場合のB−Hカーブ
のシフト量Hsは23mOe、無磁場中熱処理を行った場合のH
sは1mOeであった。
磁場中熱処理を行うことにより、より非対称のB−H
カーブになることが確認された。
実施例3 第1表に示す組成の合金溶湯を単ロール法により急冷
し、幅5mm厚さ18μmのアモルファスを主体とする合金
を作製した。X線回折の結果合金表面付近に僅かながら
結晶を存在していることが確認された。次にこの合金を
外径19mm、内径15mmに巻回しトロイダル磁心を作製しAr
ガス雰囲気中で熱処理し結晶化させた。熱処理直後の直
流B−H曲線のシフト量Hsと100℃で30分保持後のB−
H曲線のシフト量の変化率をΔHs/Hsを示す。
ここで、 ΔHs=|Hs30−Hs Hs30:30分後のHs Hs:初期のHs である。なお、磁場中熱処理の際は薄帯長手方向に磁場
を印加した。
この表より本発明合金の直流B−Hカーブのシフト量
は大きくかつ安定していることが分かる。これに対して
従来の製造方法で作られた超微結晶合金はシフト量が小
さいことが分かる。また、非対称B−H特性を示すCo基
アモルファス合金に比べ高温において安定している。ま
た本発明の製造方法は非対称性の大きい微細結晶粒から
なる合金を製造するのに有効であることが分かる。
実施例4 第2表に示す組成の合金溶湯を単ロール法により冷却
し、幅5mm厚さ18μmのアモルファス合金を作製した。
次にこの合金を外径25mm、内径20mmに巻回しトロイダル
磁心を作製し酸素が5%含まれるArガス雰囲気中で熱処
理し結晶化させた。なお、磁場中熱処理の際は薄帯長手
方向に磁場を印加した。熱処理理直後の直流B−H曲線
のシフト量Hsと100℃で30分保持後のB−H曲線のシフ
ト量の変化率ΔHs/Hsを示す。
この表より本発明合金の直流B−Hカーブのシフト量
は大きくかつ安定していることが分かる。これに対して
従来の製造方法で作られた超微結晶合金はシフト量が小
さいことが分かる。
[発明の効果] 本発明によれば非対称性が大きいB−Hカーブ特性を
有し、熱安定性の良好な超微結晶合金を得ること及びそ
の製造方法を提供できるためその効果は著しいものがあ
る。
【図面の簡単な説明】
第1図は非対称B−Hカーブを説明するための模式図、
第2図は熱処理後の本発明合金からなる磁心の直流B−
Hカーブの1例を示した図、第3図は熱処理前のアモル
ファス合金のロール接触面側及び自由凝固面側のX線回
折パターンを示した図である。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平1−142049(JP,A) 特開 平1−110707(JP,A) 特開 昭64−79342(JP,A) 特開 昭64−31922(JP,A) 特開 平2−22445(JP,A) 特開 平1−149940(JP,A) 特開 昭64−68446(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 45/02 C21D 6/00 C22C 38/00 303 H01F 1/153

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】薄帯状のアモルファス合金を製造する工程
    と、酸素を含む雰囲気中において薄帯長手方向に磁場を
    印可しながら磁場中熱処理し、組織の少なくとも50%を
    平均粒径1000Å以下の超微細結晶粒とする工程とからな
    り、前記酸素を含む雰囲気中における磁場中熱処理によ
    り原点から3mOe以上シフトしたB−Hカーブ特性を付与
    することを特徴とする超微結晶合金の製造方法。
  2. 【請求項2】薄帯状のアモルファス合金を製造する工程
    と、酸素を含む雰囲気中で熱処理して組織の少なくとも
    50%が平均粒径1000Å以下の超微細結晶粒とする工程
    と、さらに薄帯長手方向に磁場を印可しながら磁場中熱
    処理する工程とからなり、前記酸素を含む雰囲気中にお
    ける熱処理により原点から3mOe以上シフトしたB−Hカ
    ーブ特性を付与することを特徴とする超微結晶合金の製
    造方法。
  3. 【請求項3】表面に結晶相を形成した薄帯状のアモルフ
    ァス合金を製造する工程と、薄帯長手方向に磁場を印可
    しながら磁場中熱処理し、組織の少なくとも50%が平均
    粒径1000Å以下の超微細結晶粒とする工程とからなり、
    前記合金表面に(100)面が配向した結晶相を形成する
    ことにより原点から3mOe以上シフトしたB−Hカーブ特
    性を付与することを特徴とする超微結晶合金の製造方
    法。
  4. 【請求項4】次式で示される組成からなり、アモルファ
    ス合金を熱処理することにより組織の少なくとも50%が
    平均粒径1000Å以下の超微細結晶粒からなり、且つ、原
    点から3mOe以上シフトしたB−Hカーブ特性を有するこ
    とを特徴とする超微結晶合金。 組成式: (Fe1-aMa100−x−y−z−α−β−γAxSiyBzM′α
    M″βγ(at%)(但し、MはCo及び/又はNiであ
    り、AはCu,Ag,Auから選ばれる少なくとも一種の元素、
    M′はNb,Mo,Ta,Ti,Zr,Hf,V,Cr,Mn及びWからなる群か
    ら選ばれた少なくとも1種の元素、M″はAl,白金族元
    素,Sc,希土類元素,Zn,Sn,Reからなる群から選ばれた少
    なくとも1種の元素、XはC,Ge,P,Ga,Sb,In,Be,Asから
    なる群から選ばれた少なくとも1種の元素であり、a,x,
    y,z,α,β及びγはそれぞれ0≦a≦0.5、0.1≦x≦
    3、0≦y≦30、0≦z≦25、5≦y+z≦30、0.1≦
    α≦20、0≦β≦20、0≦γ≦20を満たす。)
  5. 【請求項5】前記熱処理前のアモルファス相において、
    合金表面付近には(100)面が配向した結晶相が存在
    し、かつ内部はランダム配向になっていることを特徴と
    する請求項4に記載の超微結晶合金。
  6. 【請求項6】B−Hカーブの原点からのシフトが20mOe
    以上であることを特徴とする請求項4又は5に記載の超
    微結晶合金。
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