JP3058342B2 - 多孔質シリカ薄膜の製造方法 - Google Patents

多孔質シリカ薄膜の製造方法

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JP3058342B2 JP2310734A JP31073490A JP3058342B2 JP 3058342 B2 JP3058342 B2 JP 3058342B2 JP 2310734 A JP2310734 A JP 2310734A JP 31073490 A JP31073490 A JP 31073490A JP 3058342 B2 JP3058342 B2 JP 3058342B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、ナノメータレベルの超薄膜からなる多層構
造の多孔質シリカ薄膜を製造する方法に関する。
[従来の技術] ケイ酸ソーダから作製された多孔質のシリカゲル,ホ
ウケイ酸ガラスの分相性を利用した方法やゾル−ゲル法
等により作製された多孔質ガラス,層状ポリケイ酸塩等
のシリカ関連化合物は、その多孔質構造を利用し物質分
離,触媒担体等の分野で使用されている。
物質分離や触媒担体等の用途においては、被分離物質
や反応物質の透過量を大きくすることが必要である。そ
こで、膜強度を維持し、しかも膜厚を薄くして膜強度を
下げたフィルム状薄膜に製膜することが要求される。更
に、薄膜の細孔構造に起因する作用を効果的に発揮させ
る上で、細孔構造をナノメータレベルで制御することが
要求される。
しかし、従来のシリカ関連化合物原料は、その多くが
粉末状であるため薄膜化し難く、造粒して粒状,板状,
塊状等に成形した状態で使用されている。
たとえば、シリカを薄膜化する代表的なゾル−ゲル法
においては、アルコキシシラン物質の加水分解溶液を基
板上に塗布し、加熱処理等によってゲルコーティング膜
を形成することにより、シリカ薄膜を作製している。と
ころが、ゾル−ゲル法でシリカ薄膜を製造する場合、薄
膜形成時に溶媒の蒸発やシロキサン結合(Si−O−Si)
の生成による架橋反応に伴って体積収縮が生じる。その
ため、クラックが発生し易く、得られた薄膜が脆い構造
をもつ。この点から、フィルム状の薄膜を製造すること
は、現実的には非常に難しい。
また、基板や支持膜等を使用する場合、コーティング
膜と基板等との密着性や、膜形成時の体積収縮に耐える
機械的強度が基板,支持膜等に要求されることから、基
板,支持膜等の材質に制約が加わる。更に、シリカコー
ティング薄膜の場合、基板,支持膜等としても、得られ
た薄膜の目的用途から多孔体が使用される。しかし、こ
の多孔体の細孔構造に起因し、特にサブミクロンレベル
の超薄膜で、均一な膜厚をもつ薄膜が得られ難い。
また、ゾル−ゲル法で作製されたシリカ薄膜は三次元
架橋体であるため、得られた薄膜は、無定形の細孔構造
をもつものになる。
[発明が解決しようとする課題] このように、従来の粉末を成形する方法やゾル−ゲル
法等によるとき、物質分離や触媒担体等の目的用途に適
した被分離物質や反応物質の透過量を大きくすることが
できるフィルム状の多孔質シリカ薄膜を製造することが
困難であった。特に、膜厚をナノメータレベルの緻密さ
で制御することは、不可能であった。
そこで、本発明者等は、フィルム状のシリカ薄膜の製
造方法について、膜強度を維持しつつ、しかも膜抵抗を
下げるため、膜厚を薄くする方法について鋭意研究し、
本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、ある種の両親媒性物質が分子レ
ベル、換言すればナノメータレベルで高い規則性をもつ
多層二分子膜薄膜を形成する性質を利用することによ
り、ナノメータレベルで細孔構造を制御したシリカ薄膜
を製造することを目的とする。
[課題を解決するための手段] 本発明においては、二分子膜形成能をもつ両親媒性物
質の展開液を基板上に展開した後、基板上の液膜から溶
媒を除去することによって両親媒性物質の多層二分子膜
薄膜を調製する。そして、この多層二分子膜薄膜をシリ
カ化合物を含有する溶液に接触させ、多層二分子膜薄膜
を鋳型として、その細孔空隙にシリカ化合物を浸透させ
る。次いで、必要に応じて有機溶媒で両親媒性物質を抽
出除去することにより、フィルム状のシリカ薄膜を製造
する。
或いは、多層二分子膜薄膜をシリカ化合物含有溶液に
接触させた後、引き続き酸に接触させ、再びシリカ化合
物含有溶液に接触させる処理を1回或いは複数回繰り返
すことによって、所定量のシリカ化合物を浸透させるこ
ともできる。
本発明で使用される両親媒性物質は、同一分子内に極
性基及び疎水基の両方を同時に有する化合物である。
極性基としては、スルホン酸塩,硫酸塩,アンモニウ
ム塩,ポリアミン塩,カルボン酸塩,スルホニル塩,燐
酸塩,ホスホン酸塩,ホスホニウム塩,ポリエーテル
類,アルコール類,糖残基類を含むポリオール類及びこ
れらの基の組合せを使用することができる。しかし、シ
リカ化合物との反応性を考慮するとき、たとえばアンモ
ニウム塩のようにイオン対型で、特にカチオン性残基を
有するものが好ましい。
他方、疎水基としては、アルキル基,アルキルアリル
基,脂環基,縮合多環基及びこれらの基の組合せを使用
することができる。ただし、生体膜と同様に安定な二分
子膜を形成する上では、ある特定の部分化学構造が要求
される。たとえば、2本以上のアルキル長鎖、或いはア
ゾベンゼン,ビフェニル等の剛いセグメントを含むアル
キル長鎖等である。この点、二分子膜構造を取る両親媒
性物質の化学構造上の特徴及びこれによる薄膜形成能が
高い理由や、代表的な化合物例等に関して、特願平1−
58889号に詳しく説明しているので、ここでは省略す
る。
両親媒性物質の展開液は、所定量の両親媒性物質を溶
媒に溶解或いは分散して調製される。溶媒としては、多
くの場合、水が使用されるが、有機溶媒の使用も可能で
ある。
展開液が展開される基板には、ガラス基板,石英板,
フロロポア,グラファイト板,シリコン基板,緻密ポリ
マーフィルム,多孔質ポリマーフィルム等がある。基板
の表面に対しては、展開液の種類に応じて親水化処理或
いは疎水化処理を施しても良い。たとえば、展開液が基
板表面上の所定面積に展開されるように、基板表面の一
部を親水化処理し、残りの表面部分を疎水化処理するこ
とも有効である。
基板上に展開された展開液から溶媒が除去されると、
両親媒性の二分子膜薄膜が形成される。この溶媒が除去
される過程で、両親媒性物質の分子集合体の規則性を確
保するため、溶媒の除去を徐々に行うことが好ましい。
溶媒除去の条件は、展開液の溶媒系にもよるが、水溶液
系の場合の一例を示すと、室温付近の25℃,相対湿度60
%に設定された恒温恒湿層内で3日間をかけて行われ
る。このとき、展開される基板の表面積,展開液中の両
親媒性物質の濃度,展開液の液量等によって、調整され
る両親媒性物質の多層二分子膜薄膜の膜厚が決まり、最
終的に製造されるシリカ薄膜の膜厚も決まる。
溶媒を除去した後に得られる両親媒性物質の多層二分
子膜薄膜は、基板から剥がしても十分な自己支持性を保
持している。しかし、操作性を考慮するとき、基板に付
着したままの多層二分子膜薄膜に対して、シリカ化合物
含有溶液への浸漬等の接触処理を行うことが好ましい。
本発明におけるシリカ化合物とは、主としてSi−O結
合を有する化合物をいう。このシリカ化合物を含有する
溶液は、両親媒性物質の多層二分子膜薄膜の有機溶媒に
対する溶解性を考慮するとき、水溶液系であることが好
ましい。また、シリカ化合物の溶解性を上げるために、
溶液を酸性或いは塩基性に調整したシリカ化合物含有溶
液を使用することもできる。本発明で使用可能なシリカ
化合物としては、ケイ酸カリウム,ケイ酸ナトリウム,
コロイダルシリカ等が例示されるが、特にこれらに限定
されるものではない。
シリカ化合物含有溶液は、シリカ化合物の濃度が高く
なるに従って粘度が高くなる。そのため、多層二分子膜
薄膜を浸漬放置している間に、溶媒の蒸発に起因し溶液
表面にシリカ化合物のゲル化膜が形成され、取扱いが困
難になる場合がある。そこで、シリカ化合物の濃度を1
〜15重量%の範囲にすることが適当である。
シリカ化合物含有溶液に対する多層二分子膜薄膜の浸
漬時間は、後述する多層二分子膜薄膜中の両親媒性物質
とシリカ化合物とのイオン交換反応性により定まる。両
親媒性物質とシリカ化合物との反応は、多層二分子膜薄
膜中の両親媒性物質の種類に応じて若干の長短があるも
のの、多くの場合に、20℃前後の室温で1〜15重量%の
シリカ濃度範囲において、ほぼ12時間以内に終了する。
したがって、浸漬処理は、これ以上の時間で施せば十分
である。
シリカ化合物含有溶液に浸漬処理した両親媒性物質の
多層二分子膜薄膜を水で洗浄し、乾燥した後、両親媒性
物質の種類に応じて選択された有機溶媒を抽出剤とし
て、両親媒性物質を抽出除去する。この処理によって両
親媒性物質が除去され、ナノメータレベルの超薄膜から
なる多層膜状のシリカ薄膜が得られる。
得られたシリカ薄膜は、後述の実施例で示すように表
面積が大きく、多孔質構造をもっている。しかし、フィ
ルムの膜厚が極めて小さなものであるため、自己支持性
に欠けたり、小片化する場合がある。そこで、本発明者
等は、層面内におけるシリカ薄膜の成長を促進させるこ
とによって、自己支持性のあるフィルム状のシリカ薄膜
を製造する方法を検討した。その結果、シリカ化合物含
有溶液に浸漬処理した両親媒性物質の多層二分子膜薄膜
を、水洗・乾燥させた後、酸に接触させ、再びシリカ含
有化合物の溶液に浸漬する処理を1回又は複数回繰り返
す方法、或いは両親媒性の多層二分子膜薄膜を調製する
展開液にラジカル重合性モノマーを添加し、このモノマ
ーを多層二分子膜薄膜中で重合処理して調製される超薄
層ポリマーを含む多層二分子膜薄膜を利用する方法等が
有効であることを見い出した。
たとえば、酸処理を採用する場合には、シリカ化合物
含有溶液に浸漬処理した多層二分子膜薄膜を水洗及び乾
燥した後、酸の気体,水溶液或いはその蒸気に接触させ
る処理を施す。そして、水洗及び乾燥した後、再び多層
二分子膜薄膜をシリカ化合物含有溶液に浸漬する。この
一連の処理を両親媒性物質の多層二分子膜薄膜に対して
1回又は複数回繰り返して施し、最終的に両親媒性物質
の種類に応じて選択された有機溶媒を抽出剤として両親
媒性物質を抽出除去すると、ピンセット類でも十分に取
扱うことができる程度に自己支持性を備えたフィルム状
のシリカ薄膜が製造される。
使用される酸は、多くの場合にカチオン型の両親媒性
物質の対アニオン種が塩素,臭素,沃素等のハロゲンア
ニオンであるため、そのハロゲンアニオンを含むハロゲ
ン化水素酸が推奨される。しかし、硫酸,硝酸,リン
酸,カルボン酸等の他の酸を使用することもできる。
シリカ化合物含有溶液で処理した両親媒性物質の多層
二分子膜薄膜に対する接触方法としては、たとえば塩化
水素酸のように酸の蒸気圧が高い場合、気体状で、或い
は塩酸等の水溶液の蒸気に晒すのも効果的である。しか
し、多層二分子膜薄膜を酸の水溶液に浸漬する方法が簡
便で、しかも効果的である。
水溶液の酸濃度は、特に制限されるものではないが、
0.1〜1M程度が取扱い易さの面から好適である。この浸
漬処理は、シリカ化合物含有溶液を使用した処理と同様
に、0.1〜1Mの濃度範囲で反応が終了する12時間以上あ
れば十分である。
酸処理に引き続いて行われるシリカ化合物含有溶液に
よる処理は、前工程におけるシリカ化合物含有溶液によ
る処理と同様な条件下で行うことができる。
酸処理を含む一連の操作は、両親媒性物質の多層二分
子膜薄膜に対して繰り返し施すことができる。このとき
の繰返し回数は、多層二分子膜薄膜を構成する両親媒性
物質の種類によって若干異なるものの、2〜5回以上で
繰返し処理の効果が飽和することがある。このように、
両親媒性物質の多層二分子膜薄膜をシリカ化合物含有溶
液及び酸に交互に接触処理することによって、得られた
シリカ薄膜の自己支持性が向上する。
また、二分子膜形成能を有する両親媒性物質は、特願
平1−58885号で示したように、ラジカル重合性モノマ
ーを多層二分子膜薄膜内に取り込むことができる。取り
込まれたラジカル重合性モノマーは、二次元的に架橋し
た超薄膜積層体を形成する。そこで、この超薄膜積層体
を利用することによっても、自己支持性を備えたフィル
ム状のシリカ薄膜を製造することが可能である。
すなわち、二分子膜形成能を有するカチオン型の両親
媒性物質にラジカル重合性モノマーを添加した展開液
を、同様の方法によって基板上に展開した後、溶媒を蒸
発させ、モノマーを含有する両親媒性の多層二分子膜薄
膜を調製する。そして、多層二分子膜薄膜に含まれてい
るラジカル重合性モノマーを、熱重合,光重合,放射線
重合等によって重合させ、二次元的に架橋した超薄層ポ
リマーを含有する多層二分子膜複合薄膜を得る。この複
合薄膜に対して、同様にシリカ化合物含有溶液への浸漬
処理、或いは酸処理を組合せたシリカ化合物含有溶液へ
の浸漬処理を施し、シリカ薄膜を製造する。このとき、
シリカ化合物含有溶液への浸漬処理及び酸処理は、ラジ
カル重合性モノマーを含有しない展開液から調製された
多層二分子膜薄膜と同様の条件下で行うことができる。
使用されるラジカル重合性モノマー及びこのモノマー
を重合させて超薄層ポリマーを含む多層二分子膜複合薄
膜を調製する方法は、特願平1−58885号で示されてい
るが、それに拘束されることなく他のモノマー及び調製
法も採用可能である。ラジカル重合性モノマーの一例を
示すと、次式の多官能モノマーの単独或いは複数を共重
合させて使用することもできる。なお、次式におけるR
は、CH3又はHを示す。
また、これら多官能モノマーに単官能モノマーやエチ
レングリコール,グリセリン等の希釈剤を混合すること
もできる。使用可能な単官能モノマーとしては、次のも
のが例示される。
シリカ化合物含有溶液等による処理が施された多層二
分子膜複合薄膜は、最終的に酸化雰囲気下での熱処理を
受けてシリカ薄膜となる。具体的には、空気下或いは酸
素ガス流下で多層二分子膜複合薄膜を電気炉等で300℃
以上に加熱することにより、両親媒性物質及び超薄層ポ
リマーを焼却除去する。
[作 用] 分子の両末端に極性基及び疎水基を有する両親媒性物
質のうち、ある種のものは生体膜と同様の二分子膜構造
を有する分子集合体を形成する。この二分子膜を形成す
る両親媒性物質は、水分散体として得られるだけでな
く、両親媒性物質の水分散液を固体基板上に展開した後
で、水を徐々に除くことによって透明性の自己支持性を
もつフィルム状の多層二分子膜薄膜に成形できる。そし
て、得られたフィルム状の多層二分子膜薄膜内において
も、両親媒性物質の規則的な二分子膜構造が維持されて
おり、二次元平面性の高いラメラ構造を取ることが知ら
れている[たとえば、Thin Solid Films,121,L89(198
4)参照]。これに対して、二分子膜形成能をもたない
両親媒性物質、すなわち一般の界面活性剤では、自己支
持性があり、且つ規則的な分子組織の構造をもつ薄膜の
成形は困難である。
そこで、本発明者等は、特に二分子膜形成能を有する
両親媒性物質から調製される多層二分子膜薄膜の分子レ
ベルで高度に規則的な組織構造に着目し、両親媒性物質
が作る二次元平面性の高いラメラ構造を鋳型にしてシリ
カ層を形成するとき、分子レベル、すなわちナノメータ
単位の超薄膜からなるシリカ薄膜がフィルム状で得られ
ると考えた。ここで、親水部がイオン対型の両親媒性物
質は、対イオンにイオン交換性があり、組織構造を維持
しつつ容易にイオン交換する。この性質を利用して、多
層二分子膜薄膜の親水部にシリカ化合物を層間化するこ
とを試みた。一般にSi−O結合からなるシリカ化合物が
アニオン性であることから、両親媒性物質としては、カ
チオン性型を選んだ。
両親媒性物質とシリカ化合物との間のイオン交換反応
は、ほぼ化学量論的に進行し、両親媒性物質の親水部層
間がシリカ化合物で満たされる。そして、最終的に両親
媒性物質を適当な有機溶媒で抽出除去すると、ナノメー
タ単位の超薄膜からなるシリカ薄膜がフィルム状で得ら
れる。
このとき、イオン交換反応によって層間化されるシリ
カ化合物と両親媒性物質の分子断面積等の違いに起因し
て、多層二分子膜薄膜の層間がシリカ化合物で十分に満
たされない場合がある。このような場合、両親媒性物質
を抽出した後に得られるシリカ薄膜は、薄すぎるため、
自己支持性がなかったり、小片化することがある。そこ
で、多層二分子膜薄膜の層間に多量のシリカ化合物を導
入することが必要になる。
このシリカ化合物の導入のために、本発明において
は、酸による処理で、多層二分子膜薄膜内にイオン交換
サイトを賦活させている。イオン交換で層間導入された
アニオン性シリカ化合物は、酸処理によってプロトン化
されて中性化し、電気的に中性を保つため、多層二分子
膜薄膜内に処理する酸の対アニオンが再び導入され、イ
オン交換サイトが賦活する。この処理を繰り返すことに
よって、多層二分子膜薄膜に化学量論以上の多量のシリ
カ化合物を層間化することができる。ただし、導入され
るシリカ化合物の量には限度があって、繰返し回数に対
し飽和することがある。この原因は、現段階においては
定かでないが、多層二分子膜薄膜の親水部の空間的な制
約が起因しているものと推察される。
ラジカル重合性モノマーを重合処理して調製された超
薄層ポリマーを含む両親媒性物質の多層二分子膜複合薄
膜においては、両親媒性物質のみから調製した多層二分
子膜薄膜に比較して、同程度の高い規則性をもつ両親媒
性物質の組織構造が形成されている。このことは、Che
m.Lett.,p2059−2062(1989)に示されているように、
X線回折等の実験結果から明らかである。また、超薄層
ポリマーを含む多層二分子膜複合薄膜を使用した場合に
は、超薄層ポリマーがイオン交換で導入されたシリカ化
合物のバインダーとして作用し、酸化処理中のシリカ化
合物の層平面成長性を促進するものと推察される。
[実施例] 以下、実施例によって、本発明を具体的に説明する。
−実施例1− 二分子膜形成能を有する両親媒性物質として、次式
(1)の構造をもつ化合物を使用した。
この両親媒性物質(1)を純水に分散させて、20mMの
展開液を調製した。得られた展開液を酢酸セルロースフ
ィルム枠で囲われたフロロポアー(以下、これを単にフ
ロロポアーという)上に展開し、展開液をそのままの状
態で温度25℃,相対湿度60%の雰囲気下で3日間保持す
ることにより、展開液中の水分を蒸発させ、自己支持性
のある半透明性で黄色の多層二分子膜薄膜を得た。
作製された多層二分子膜薄膜を10重量%に希釈したケ
イ酸カリウム水溶液に浸漬し、12時間放置した後、水溶
液から取り出した。処理後の多層二分子膜薄膜は、若干
膨潤した状態を呈した。この多層二分子膜薄膜は、次い
で純水で十分洗浄し乾燥した後、メタノール溶媒に浸漬
することによって両親媒性物質(1)を抽出除去した。
得られたシリカ薄膜は、若干脆さがある白色透明な膜
厚約10μmのフィルムであった。このシリカ薄膜を走査
型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、その微細構造
は、ナノメータオーダの超薄膜からなる多層膜構造であ
った。また、窒素吸着量から求めたシリカ薄膜の表面積
は、260m2/gであった。
−実施例2− 二分子膜形成能をもつ両親媒性物質として、次式
(2)の構造をもつ化合物を使用した。
この両親媒性物質(2)から調製した20mM水分散展開
液を、フロロポアー上に展開し、実施例1と同じ条件下
で水分を蒸発させ、半透明性の多層二分子膜薄膜を作製
した。
得られた多層二分子膜薄膜を10重量%に希釈したケイ
酸カリウム水溶液に浸漬し、実施例1と同様に処理し
た。得られたシリカ薄膜は、白色の小片であった。
そこで、両親媒性物質(2)の多層二分子膜薄膜をケ
イ酸カリウム水溶液に浸漬した後、0.2Mの臭化水素酸水
溶液に12時間浸漬処理し、再びケイ酸カリウム水溶液に
12時間浸漬する操作を3回繰り返し、最終的にメタノー
ル溶液で両親媒性物質(2)を抽出除去した。その結
果、十分に自己支持性のあるフィルム状を呈し、膜厚が
約30μmのシリカ薄膜が得られた。
このシリカ薄膜の断面をSEMで調査したところ、第1
図に示すように数ナノメータ単位の超薄膜がシリカ薄膜
のフィルム面に平行に並んだ多層膜構造が観察された。
また、窒素吸着量から求めた表面積は、210m2/gであっ
た。
−実施例3− 二分子膜形成能をもつ両親媒性物質として、次式
(3)に示す化合物を使用した。
この両親媒性物質(3)から調製した50mMの水分散展
開液を、フロロポアー上に展開し、実施例1と同様にし
て水分を蒸発させ、半透明性で白色の多層二分子膜薄膜
を得た。
作製された多層二分子膜薄膜に対して、実施例2のケ
イ酸カリウムに代えて、ケイ酸ナトリウムの10重量%水
溶液を使用し、0.2Mの臭化水素酸水溶液と交互に12時間
ごとに浸漬する処理を4回繰り返して、最後にメタノー
ル溶媒で両親媒性物質(3)を抽出除去した。得られた
シリカ薄膜は、自己支持性をもつ白色のフィルム状であ
った。また、窒素吸着量から求めたシリカ薄膜の表面積
は、200m2/gであった。
−実施例4− 両親媒性物質(2)を純水に分散させた20mM水分散液
に、両親媒性物質(2)と等モル量の2官能モノマー
(4)及び重合開始剤として2官能モノマー(4)に対
して2モル%の4(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル
−(2−ヒドロキシエトキシ−2−プロピル)ケトンを
混合して展開液を調整した。この展開液をフロロポアー
上に展開し、実施例1と同様に水分を蒸発させた後、超
高圧水銀ランプで紫外線照射して2官能モノマー(4)
を架橋重合させた。
作製された透明フィルム状の多層二分子膜複合薄膜を
実施例1と同様にケイ酸カリウム水溶液に浸漬処理し
た。そして、純水で洗浄し乾燥させた後、箱型電気炉に
投入し、昇温速度10℃/分で昇温し、500℃に10時間放
置した。
得られたシリカ薄膜は、十分に自己支持性があり、半
透明のフィルム状を呈していた。このシリカ薄膜の表面
積は170m2/gで若干低い傾向にあったが、SEMによるフィ
ルム断面の観察ではナノメータオーダ超薄膜からなる多
層膜構造が認められた。
−比較例− アルコキシシランを出発原料としたゾル−ゲル法によ
って、シリカ薄膜を調製した。すなわち、エタノール50
重量部に対し、20重量部のアルコキシシランSi(OCH3
及び加水分解用として10重量部の0.05N希塩酸水溶液
を加え、1分間撹拌した後、ガラスシャーレ上に展開し
て放置した。展開液は、1昼夜後に溶媒のほとんどが蒸
発し、無色透明な非常に脆いシリカ薄片となった。その
断面をSEMで観察したところ、第2図に示すように特徴
のない微細構造をもつものであった。また、窒素吸着量
から求めた表面積も、1m2/g以下の低い値を示した。
[発明の効果] 以上に説明したように、本発明においては、両親媒性
物質が形成する二分子膜集合体の特異な構造を利用し、
多層二分子膜薄膜の層間にシリカ化合物を含有させた
後、両親媒性物質を適宜の溶媒で抽出除去している。こ
のようにして作製されたシリカ薄膜は、両親媒性物質の
多層二分子膜構造を鋳型として形成されたものであるた
め、ナノメータオーダで構造制御され、非常に表面積の
大きなものとなる。また、自己支持性を備えているた
め、シリカ薄膜の取扱いも容易である。したがって、こ
のシリカ薄膜を物質分離膜,触媒担体等として使用する
とき、その大きな表面積に起因して高機能の材料として
使用される。
【図面の簡単な説明】
第1図は実施例2で作製されたシリカ薄膜の多層構造を
示すSEM写真であり、第2図は比較例のゾル−ゲル法に
よって作製されたシリカ薄膜の特徴のない緻密な構造を
示すSEM写真である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C01B 33/12 - 33/193

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】二分子膜形成能を有するカチオン型の両親
    媒性物質の展開液を基板上に展開した後、前記基板上の
    液膜から溶媒を除去することによって前記両親媒性物質
    の多層二分子膜薄膜を調製し、シリカ化合物を含有する
    溶液に前記多層二分子膜薄膜を接触させ、次いで前記多
    層二分子膜薄膜を抽出除去することを特徴とする多孔質
    シリカ薄膜の製造方法。
  2. 【請求項2】シリカ化合物の溶液に接触させた後、両親
    媒性物質の多層二分子膜薄膜を更に酸に接触させ、再び
    シリカ化合物の溶液に接触させる処理を1回又は複数回
    繰り返し行うことを特徴とする請求項1記載の多孔質シ
    リカ薄膜の製造方法。
  3. 【請求項3】二分子膜形成能を有するカチオン型の両親
    媒性物質にラジカル重合性モノマーを添加した展開液を
    基板上に展開し、前記基板上の液膜から溶媒を除去する
    ことによってラジカル重合性モノマーを含有する両親媒
    性物質の多層二分子膜薄膜を調製した後、前記ラジカル
    重合性モノマーを重合して二次元的に架橋した超薄層ポ
    リマーを含む多層二分子膜複合薄膜を形成し、シリカ化
    合物を含有する溶液を前記多層二分子膜複合薄膜に接触
    させ、次いで前記多層二分子膜複合薄膜を焼却除去する
    ことを特徴とする多孔質シリカ薄膜の製造方法。
  4. 【請求項4】シリカ化合物を含有する溶液に接触させた
    後、重合したラジカル重合性モノマーを含有する両親媒
    性物質の多層二分子膜薄膜を更に酸に接触させ、再びシ
    リカ化合物の溶液に接触させる処理を1回又は複数回繰
    り返し行うことを特徴とする請求項3記載の多孔質シリ
    カ薄膜の製造方法。
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