JP3056334U - アルミニウム溶湯保持炉の浸漬ヒーター - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】酸化物固着、固着物付着堆積およびフラックス
の反応侵食を悉く防止できる、構造簡素にして耐久性の
大きい浸漬ヒーターを提供する。 【解決手段】炭化珪素・炭素質セラミックチューブを備
えた縦型浸漬ヒーターに於いて、チューブ本体の溶湯面
接触部及びその上下近傍の外周部を低熱伝導性セラミッ
クスからなる被覆層で包囲したことを特徴とする。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】 本考案は炭化珪素・炭素質セラミックチューブを備えた縦型浸漬ヒーターに関 する。

【０００２】

【従来の技術】

従来一般に、この種の浸漬ヒーターは内部に挿入されたガス燃焼または電気抵 抗の発熱体とそれを保護するチューブを備え、該チューブは、通常、耐熱衝撃性 、アルミ溶湯に対する耐浸透性および耐食性にすぐれた炭化珪素・炭素質セラミ ックスから構成されている。チューブはさらに耐酸化性にすぐれたものにするた めに、外表面を保護膜でコーティングしている。縦型浸漬ヒーターはアルミニウ ム保持炉の溶湯容器の上部から懸垂支持してチューブの下部を溶湯中に浸漬する 直筒形のヒーターが一般的である。

【０００３】 縦型浸漬ヒーターは、チューブの内部から溶湯を直接加熱するので、上下の溶 湯温度には均一性があり熱効率も高く、また電気抵抗発熱体等を適用して溶湯上 面から加熱する間接加熱に較べてアルミの酸化物の生成が少なくなる等の利点を 有することにより多くのアルミニウム溶湯保持炉に取付けられている。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】

しかしながら、従来の縦型浸漬ヒーターでは、ヒーターの溶湯面接触部近傍で チューブに亀裂がしばしば発生することからその耐久性は必ずしも満足なもので はないという問題点があった。チューブ亀裂発生原因としては、チューブの発熱 部の一部が湯面上に露出し、ヒーターの加熱時には、チューブの液面上露出部が 高温になり、そのために、溶湯面接触部近傍でチューブの外周面に付着した溶湯 が酸化して固着してしまうこと、さらに、ヒーターの温度低下時には、この部分 に付着したアルミ溶湯が冷却固化し固着物はしだいに堆積を増してくることなど が考えられる。固着物はコランダム、アルミ金属、フラックス成分からなり、こ の固着物とチューブとの熱膨張率の相違からチューブに亀裂が発生し破損され、 ヒーターの耐久性低下原因になっている。

【０００５】 さらに、溶湯面上に浮遊するフラックスとチューブが反応してチューブの表面 を侵蝕させ耐久性を低下させるという問題もある。

【０００６】 この縦型浸漬ヒーターがもつ問題点の解決のために、チューブ露出部を内側壁 と外側壁との２層構造となし、この２層構造間にセラミックファイバーを埋設し て断熱効果をもたせ表面酸化が起きないようにするという提案がなされている（ 例えば特開昭６３−１３７１３０号公報）。しかしながら、セラミックファイバ ーを埋設することは、この部位の強度を低下させることとなり耐久性が低下し問 題である。チューブの強度をもたせるために肉厚にすることは、チューブの内部 から直接溶湯を効率よく加熱するという機能を損なうこととなり好ましくない。

【０００７】 本考案は、上記の問題点を悉く除去し、構造簡素にして耐久性に優れるこの種 浸漬ヒーターを提供することを目的としてなされたものである。

【０００８】

【課題を解決するための手段】

本考案は、チューブ本体の溶湯面接触部及びその上下近傍の外周部を低熱伝導 性セラミックスからなる被覆層で包囲し、加熱時には被覆層の表面温度を低く保 たせ、該被覆層表面上でのアルミニウムの酸化固着を防止し、またヒーターの温 度低下時には、該被覆層の熱断熱により該被覆層表面温度の降下を防ぎアルミ溶 湯を固化させる事なしに流下させるようにしたものである。したがって、溶湯面 接触部近傍に於ける酸化物生成と固着物堆積を防止でき、前記の問題点の解決が 図られる。

【０００９】

【考案の実施の形態】

以下に本考案の一実施形態を添付図面に基づき説明する。

【００１０】 図１に本考案浸漬ヒータＡの一使用状態が示され、該浸漬ヒータＡは従来のも のと同様に、燃焼バーナー１と炭化珪素・炭素質セラミックからなるチューブ本 体２を備え、該チューブ本体２内には、上記バーナー１を加熱源として発熱する 発熱体（図示せず）が挿入されている。発熱体は電気抵抗発熱体であってもよい 。浸漬ヒーターＡはアルミニウム保持炉の溶湯容器ａに施された天蓋ｂに懸垂状 態に支持され、この支持状態に於いて、チューブ本体２は溶湯容器ａ内の溶湯ｃ 内に浸漬され、その上部は溶湯ａ面上に露出してる。

【００１１】 本考案は上記構成の浸漬ヒーターに於いて、チューブ本体２の溶湯面接触部２ ａ近傍、詳しくは溶湯面接触部２ａ及びその上下近傍部２ｂ,２ｃの外周部を、 低熱伝導性セラミックからなる被覆層３で包囲したことを特徴としている。

【００１２】 被覆層３を構成するセラミックスは、低熱伝導性であることが必要であり、た とえば熱伝導率が０．８Kcal/m・hr・℃以下の断熱性を有し、とりわけアルミ溶湯 に対する耐浸透性および耐食性並びに耐熱衝撃性にすぐれる耐火材が望ましい。 因みに、これ以上の熱伝導率であると断熱効果をもたせるには被覆層３の厚みを かなり大きくする必要があり、形状および重量面であまり好ましくない。このよ うな耐火材としては珪酸カルシウム系耐火材やアルミナ・コージェライト系耐火 材等を例示でき、特に珪酸カルシウム系耐火材（例えばワラストナイト、アルミ ナセメントなど）はアルミ溶湯に対し高い耐食性と耐浸透性を示すほか高い断熱 性を有し好適である。これらの断熱性耐火材の断熱性をさらに高めるためにセラ ミックファイバーをこれら断熱性耐火材に例えば重量比で１対１〜５程度の割合 で混合すると一層効果的となる。さらに、セラミックファイバーの混合は繊維の 働きで被覆層３の脱落防止に効果がある。

【００１３】 被覆層３の形成には、例えば鋳込み成型法を適用でき、型内に上記耐火材のス ラリーを流し込みチューブ本体２の所定個所２ａ,２ｂ,２ｃを鋳ぐるんだ後、離 型し加熱乾燥することにより得られる。

【００１４】 被覆層３は、ヒーターの直接加熱を妨げる要因になるので、その上下長さは、 溶湯ｃの液面高さの変動に対応できる範囲で、できるだけ小さい方がよい。例え ば被覆層３の上端側は天蓋ｂの下面近傍位置まで即ち液面上方に露出する部分の 略々全領域を、下端側は、液面の最低高さを基準にそれを僅かに超える位置まで 形成されていればよい。

【００１５】 被覆層３の厚さは特に制限はないが、あまり薄すぎると断熱性能の面で、また あまり厚過ぎても形状面や重量面で好ましくない結果を招く恐れがあるので、、 通常は１０〜５０mm程度、好ましくは２５〜３５mm程度の範囲内から構成材料の 断熱性能等を考慮し適宜選択決定される。

【００１６】 本考案によれば、低熱伝導性セラミックスからなる被覆層３でチューブ本体２ の溶湯接触面２ａ並びにその上下近傍部２ｂ,２ｃの外周部を包囲する構成にし たので、チューブ本体２の露出面（上近傍部２ｃに相当する）から出る熱は該被 覆層３により遮断され、アルミの酸化がなくなり、酸化物生成の問題が解消され る。また、チューブ本体２の露出面の温度低下が起きた場合には、被覆層３の熱 遮断によって、溶湯ｃとの接触界面に於けるチューブ本体２の温度低下が抑えら れ、被覆層３の表面に付着した溶湯を冷却固化させずに流下させることができ、 固着物の付着堆積の問題もなくなる。さらに溶湯面上に浮遊するフラックスとチ ューブ表面とは被覆層３によって隔離されているので、チューブ表面がフラック スと反応して侵食されるということがなくなる。

【００１７】 以下に本考案の実験例を上げる。

【００１８】

【実験例】

長さ１１００mm、外径１１０mm、内径８５mmの炭化珪素・炭素質セラミックチ ューブ本体２の溶湯面接触部２ａ及びその上下近傍部２ｂ,２ｃの外周部を包囲 するように珪酸カルシウム系耐火材（組成 Ａｌ₂Ｏ₃：３４重量％ ＳｉＯ₂： ３０重量％ ＣａＯ：３４重量％ 熱伝導率：０.４５Kcal/m・h・℃）からなる 被覆層３を上下幅１５０mm、厚さ３０mmにチューブを包囲するように鋳ぐるみ、 その後加熱乾燥した。

【００１９】 上記構成の本考案の浸漬ヒーターと、被覆層３を備えていない以外は本考案品 と同じ構成の従来の浸漬ヒーターとをアルミ保持炉で使用したところ、従来品で は８ヶ月程度の使用でチューブに亀裂の発生及び破損が認められたが、本考案品 は１８ヶ月程度の使用によっても亀裂の発生はなく、少なくとの２倍以上の耐久 性向上が認められた。

【００２０】

【実験例２】 実験例１とは、珪酸カルシウム系耐火材に熱伝導率０．１５Kcal/m・hr・℃、ア ルミナ成分５４％のセラミックファイバーを重量比で１対３の割合で混合した以 外は同じ条件で実験したところ、１年を経過しても被覆部３（熱伝導率：０２５ Kcal/m・hr・℃）への酸化物，固着物の付着が少なく、また亀裂も剥落も発せせ ずに使用されていた。

【００２１】

【考案の効果】

本考案によれば、低熱伝導性の被覆層を単に備えるというごく簡単な構成のも ので、酸化物固着、固着物付着堆積およびフラックスの反応侵食を悉く防止でき 、 構造簡素にして耐久性の大きい浸漬ヒーターを提供できる。さらに耐久性向上に よりメンテナンスに要する労力と費用を軽減できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本考案の一実施形態並びにその一使用例を示
す縦断面図である。

【符号の説明】

１ ガス燃焼バーナー ２ チューブ本体 ３ 被覆層

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)考案者 西平 賀炯 大阪府東大阪市稲田新町３丁目11番32号 日本坩堝株式会社技術開発部内

Claims (3)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】炭化珪素・炭素質セラミックチューブを備
   えた縦型浸漬ヒーターに於いて、チューブ本体の溶湯面
   接触部及びその上下近傍の外周部を低熱伝導性セラミッ
   クスからなる被覆層で包囲したことを特徴とするアルミ
   ニウム溶湯保持炉の浸漬ヒーター。
2. 【請求項２】低熱伝導性セラミックスとして、熱伝導率
   が０．８Kcal/m・hr・℃以下の珪酸カルシウム系耐火材を
   使用することを特徴とする請求項１記載の浸漬ヒータ
   ー。
3. 【請求項３】珪酸カルシウム系耐火材がセラミックファ
   イバーを重量比で１対１〜５の割合で含有していること
   を特徴とする請求項１又は２記載の浸漬ヒーター。