JP3799630B2 - 非鉄溶融金属用浸漬管 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミニウム、亜鉛、銅、鉛などの非鉄金属の溶融物との接触状態で使用される非鉄溶融金属用浸漬管、この浸漬管を保護管とする非鉄溶融金属用浸漬型ヒーター、この浸漬型ヒーターを備えた非鉄金属溶融炉などに関する。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウムなどの非鉄金属(以下アルミニウムを以て代表させる)を溶融保持する炉においては、金属を加熱して溶融保持するためのヒーター、溶融金属の温度を測定するための熱電対などが必要であり、これらを保護するためにセラミック製の保護管が使用されている。図1に断面図として示す様に、溶融金属に浸漬した状態で使用されるヒーターの保護管1(以下ヒーターチューブということがある)を例にとれば、内部のヒーターで発生した熱を外部の溶湯に伝達する機能が要求される。従って、通常ヒーターチューブ1の内面は、溶湯と接触する外面よりも、相対的に高温となるので、内外面間の熱応力差により、外面側に微小な隙間が形成され、溶湯が内面側にまで浸透しやすくなり、ヒーターチューブ全体の侵食が急速に進行する傾向にある。特に、溶湯がアルミニウムである場合には、それ自体の還元力が極めて強く、しかも温度の上昇とともに浸透性および侵食性が増大するので、ヒーターチューブは、より一層侵食されやすくなる。
【0003】
本発明者らは、上記の様なヒーターチューブに係わる問題点に鑑みて研究を重ねた結果、炭化珪素および/または窒化珪素を骨材とするセラミック焼結体において、骨材に特定量の鱗片状黒鉛と炭化硼素とを配合することにより、化学的耐久性のみならず、機械的耐久性、さらには熱伝導性および熱伝導性の向上に伴う発生熱応力の低減性にも優れたヒーターチューブなどの保護管を得ることに成功している(その技術の具体的な内容は、特開平2−180755号公報に開示されている;以下この技術を先願技術という)。
【0004】
図2に、先願技術によるヒーターチューブ1を使用する非鉄溶融金属用浸漬型ヒーターの一例の断面を示す。ヒーターチューブ1は、バーナー3および燃焼ガスを案内する耐熱性内管5を保護する。この形式のヒーターにおいては、燃料供給口7からの気体燃料(都市ガスなど)は、空気供給口9からの空気によりバーナートップ13で燃焼され、内管5の下端から上昇し、内管5とヒーターチューブ1との間を通過して、排気口11から排気ガスとして排出される。非鉄金属溶融炉においては、この間にヒーターチューブ1の管壁を介して溶融金属を加熱する。図2に示すヒーターの熱源としては、気体燃料だけではなく、液体燃料、電気などを使用しても良いことは、いうまでもない。
【0005】
内管5は、その形状、寸法(径および長さ)、構造などの点で種々異なるものが存在しており、一例として、円筒部に多数の通気孔が形成されている構造のものを挙げることができる。図2に示す形式の非鉄溶融金属用浸漬型ヒーターにおいては、必要ならば、内管5を省略しても良い。
【0006】
また、熱源として電気を使用する場合には、端子線に接続された電気ヒーターをヒーターチューブ1内に挿入する構造となり、通電により加熱される。すなわち、気体燃料或いは液体燃料を使用する場合と異なって、燃料供給口7、空気供給口9、排気口11などは、設ける必要がない。
【0007】
以上の様な先願技術によるヒーターチューブは、それ以前の技術によるヒーターチューブに比して、化学的耐久性、機械的耐久性、熱伝導性の向上に伴う発生熱応力の低減などの点で、極めて優れている。しかしながら、先願技術によるヒーターチューブをフラックスが存在する溶湯中で使用する場合には、フラックス中のNaがヒーターチューブ内面に浸透して、ヒーターチューブが比較的短時間内に使用不能となることが判明した。例えば、アルミニウム−珪素系合金の低圧鋳造による各種機械部品の製造に際しては、合金溶湯の鋳造性を改善するために、金属ナトリウム、NaCl、NaFなどを含むフラックスを加熱保持中の溶湯に添加することが行われている。この様な状態においては、フラックス中のNaは、ヒーターチューブの外面側から内面側に浸透し、ヒーターチューブ内面に塗布されている酸化防止材を侵食し、本体材と反応して低融点ガラスを生成する。この低融点ガラスは、ヒーターの使用温度で溶融し、ヒーターチューブ内面を流下して、ヒーターチューブの底に溜まり、燃焼ガスの円滑な流通を妨げて、ヒーターによる溶湯の均一な加熱を不可能とするとともに、本体材の侵食が進行して、割れ、穴明きにいたる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、Naを含むフラックスが存在する非鉄金属溶湯中で使用する場合にも、Naの浸透を抑制することにより、その内面において低融点ガラスの形成を防止しうる非鉄溶融金属用浸漬管を提供することを主な目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の課題を解決するために、種々研究を重ねた結果、管壁が内層と本体材との少なくとも2層からなるヒーターチューブにおいて、内層を特定の材料で構成する場合には、その目的を達成しうることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、下記の非鉄溶融金属用浸漬管、この浸漬管を保護管とする非鉄溶融金属用浸漬型ヒーター、この浸漬型ヒーターを備えた非鉄金属溶融炉を提供するものである:
1.非鉄溶融金属用浸漬管であって、管壁が内層と本体材との少なくとも2層からなり、内層がアルミナ・グラファイト質、ジルコニア・グラファイト質、チタニア・グラファイト質およびマグネシア・グラファイト質の少なくとも1種の材料により形成されていることを特徴とする浸漬管。
【0011】
2.上記項1に記載の非鉄溶融金属用浸漬管において、内層と本体材との膨張率の差が1×10-6/℃以内であり、内層厚さが2mm〜管壁厚さの1/3の範囲にあり、内層を形成する材料が下記(a)〜(d)の少なくとも1種である浸漬管:
(a)アルミナ70〜85重量%とグラファイト30〜15重量%とを含むアルミナ−グラファイト質、
(b)ジルコニア70〜85重量%とグラファイト30〜15重量%とを含むジルコニア−グラファイト質、
(c)チタニア70〜85重量%とグラファイト30〜15重量%とを含むチタニア−グラファイト質および
(d)マグネシア70〜80重量%とグラファイト30〜20重量%とを含むマグネシア−グラファイト質。
【0012】
3.本体材外表面の溶湯境界面近傍をアルミナ、ジルコニア、チタニアおよびマグネシアの少なくとも1種によりコーティングした上記項1〜2のいずれかに記載の非鉄溶融金属用浸漬管。
【0013】
4.上記項1〜3のいずれかに記載の浸漬管を保護管とする非鉄溶融金属用浸漬型ヒーター。
【0014】
5.上記項1〜4のいずれかに記載の浸漬管を保護管とする非鉄溶融金属用浸漬型熱電対。
【0015】
6.上記項4に記載の浸漬型ヒーターを備えた非鉄金属溶融炉。
【0016】
7.上記項5に記載の浸漬型熱電対を備えた非鉄金属溶融炉。
【0017】
内層を構成する材料としては、フラックスからのNaとの反応性が低い材料或いはNaとの間で低融点ガラス(通常1000℃以下)を生成しない材料を使用する必要がある。アルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシアなどの金属酸化物は、いずれもNaとの反応性が低く、低融点ガラスを生成しないという利点を有しているものの、熱膨張係数がいずれも高い。ヒーターチューブ本体材を構成する含炭素セラミック複合体、窒化珪素結合SiCなどは、耐スポール性に優れていることが極めて重要であるので、その熱膨張係数は低い。従って、単に低融点ガラスを生成しないという理由で、上記のアルミナなどの酸化物材料を内層材料として選択する場合には、内層と本体材との熱膨張率の大きな差のために、管壁に亀裂を生じて、ヒーターチューブが損傷する。
【0018】
しかるに、本発明者の研究によれば、内層材料としてアルミナなどの金属酸化物にグラファイトを添加した複合材料を使用する場合には、Naとの反応性を抑制しつつ、同時に熱膨張係数をも低い水準に保持できることを見出した。本発明は、この様な新知見に基づいて完成されたものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明においてヒーターチューブの内層を構成する金属酸化物−グラファイト複合材料は、次の(a)〜(d)の少なくとも1種である:(a)アルミナ70〜85重量%とグラファイト30〜15重量%とを含むアルミナ−グラファイト質、(b)ジルコニア70〜85重量%とグラファイト30〜15重量%とを含むジルコニア−グラファイト質、(c)チタニア70〜85重量%とグラファイト30〜15重量%とを含むチタニア−グラファイト質および(d)マグネシア70〜80重量%とグラファイト20〜30重量%とを含むマグネシア−グラファイト質。
【0020】
上記の各複合材料において、グラファイト量が規定値未満となる場合には、材料自体の熱膨張係数が高いので、本体材材料との熱膨張係数の差が大きくなり、耐スポール性が低下し、実用的でなくなる。これに対し、グラファイト量が規定値を上回る場合には、熱膨張係数の差は小さくなるものの、グラファイト源として使用する黒鉛の層間化合物としての或いは黒鉛に混入する不純物としてのSiO2、Fe2O3、Na2O、K2Oなどの量が増大するので、不適である。即ち、これらの成分は、Naとの反応性が高いので、これらの成分含有量が増大すると、ヒーターチューブ内面における低融点ガラスの生成を十分に抑制することができない。
【0021】
本発明においてヒーターチューブの本体材を構成する材料は、特に限定されるものではなく、通常のヒーターチューブの本体材として使用されているものをそのまま使用することができ、例えば、含炭素質セラミック複合体、窒化珪素結合炭化珪素、炭素結合炭化珪素などが挙げられる。これらの本体材材料中では、含炭素質セラミック複合体がより好ましい。含炭素質セラミック複合体としては、より具体的に、特開平2−180755号に記載されている炭化珪素−リン状黒鉛−炭化硼素系複合体などが例示される。
【0022】
本発明による非鉄溶融金属用浸漬管は、例えば、以下の様にして製造できる。すなわち、所定の粒子径分布および配合割合となる様に炭化珪素、グラファイト源材料(例えば、鱗状黒鉛、人造黒鉛など)、炭化珪素などの粉体材料を均一に混合した後、液状のバインダーを加えて、本体材形成用杯土を調製しておく。
【0023】
炭化硼素は、溶融金属に濡れ難く、溶融アルミニウムに対する耐食性にも優れているので、本体材の性能を向上させる。また、炭化硼素を配合すると、焼結体の組織が緻密となり、焼結強度も大幅に向上する。さらに、炭化硼素は、酸化されて酸化硼素として焼結体表面を被覆するので、酸化防止効果をも発揮する。
【0024】
バインダーとしては、セラミックス製造に際して使用されている公知のものが使用可能であり、特に限定されるものではないが、タール、ピッチ、フェノール樹脂、フルフリルアルコールなどの有機結合材;セルローズ、デキストリン、リグニンなどの有機糊料、リン酸アルミニウムなどのリン酸塩、ケイ酸ナトリウムなどのケイ酸塩、シリカゾル、アルミナゾル、ジルコニアゾルなどのゾル類、カオリンなどの無機結合材などが例示される。また、焼結体中の残留炭素と反応させるかまたは焼成雰囲気中のCO2と反応させて金属炭化物を形成させるために、或いは雰囲気中のNと反応させて金属窒化物を形成させるために、金属珪素、フェロシリコン、フェロボロン、シルミン、金属ジルコニウムなどを杯土重量の10%を超えない範囲で配合することができる。
【0025】
一方、所定の粒子径分布および配合割合となる様に、Al2O3、ZrO2、TiO2およびMgOの少なくとも1種、グラファイト源材料(例えば、鱗状黒鉛、人造黒鉛など)などの粉体材料を均一に混合した後、液状のバインダー(タール、ピッチなど)を加えて、内層形成用杯土を調製しておく。この場合、液状バインダーとしては、本体材形成成分と同様のものを使用することができる。また、杯土には、炭化硼素、金属珪素などを杯土重量の10%を超えない範囲で配合することができる。
【0026】
次いで、上記の2種の杯土を使用して、常法により所定形状のモールドに二層チャージし、成形し、焼成し、加工することにより、ヒーターチューブを得る。
本発明のヒーターチューブにおいて、内層として使用する金属酸化物−グラファイト複合材料の組成が上記の範囲内である場合には、内層材料と本体材材料との熱膨張係数の差は、通常1×10-6/℃以内となる。この場合には、熱膨張係数がより大きい内層の膨張に起因する本体材材料の破壊は、実質的に抑制できる。
【0027】
本発明によるヒーターチューブの管壁の厚さは、特に限定されるものではないが、通常7〜50mm程度、より好ましくは25〜30mm程度である。ヒーターチューブの管壁厚さに占める内層の厚さは、2mm〜管壁の1/3程度の範囲とすることが好ましい。内層の厚さが小さすぎる場合には、Naの浸透を充分に抑制することができないのに対し、内層の厚さが大きすぎる場合には、熱膨張量が大きくなって、本体材の応力が高まり、ヒーターチューブの機械的耐久性を低下させる。
【0028】
本発明においては、ヒーターチューブ本体材の少なくとも溶湯境界面(メニスカスともいわれる)近傍にアルミナ、ジルコニア、チタニアおよびマグネシアの少なくとも1種をコーティング材を焼き付けしておくことにより、耐熱性および耐食性を向上させることができる。コーティング材の厚さは、特に限定されるものではないが、通常0.3〜1mm程度である。この様なコーティング材の組成の例を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
なお、表1に示す各成分の詳細は、以下の通りである。
【0031】
Al2O3:純度99%、粒度60メッシュ以下
ZrO2:純度95%、粒度60メッシュ以下、安定化率80%
粘土:耐火度SK34、流度25メッシュ以下
アルミナセメント:Al2O354%、CaO37%。粒度170メッシュ以下
ケイ酸カリウム水溶液:ケイ酸カリウム:水=1:1(ケイ酸カリウム中のSiO225% K2O15%)
ヒーターチューブに対するこの様なコーティング材の付与は、常法のハケ塗布、スプレー塗布、コテ塗り、キャスティングなどにより行う。この際、コーティング材組成物が、塗布方法に適した粘度となるように、液状バインダーの配合量を調整する。コーティング材組成物を塗布した後、充分に自然乾燥し、強制乾燥し、さらに焼き付け炉で焼き付け処理する。
【0032】
また、本発明において、本体材の外側に内層と同じ組成の材料からなる外層を形成する3層構造とする場合には、上記のコーティングを形成することなく、ヒーターチューブの耐熱性および耐食性を向上させることができる。3層構造においては、特に限定されるものではないが、内層と外層との合計厚さが2mm〜管壁厚さ(内層+本体材+外層)の1/3程度であって、且つ外層の厚さが内層の厚さ以下であることが好ましい。
【0033】
本発明によるヒーターチューブは、Na含有フラックスの存在下にアルミニウム、亜鉛、銅、鉛などの非鉄金属の溶融物との接触状態で使用される非鉄溶融金属用浸漬管として有用であり、より具体的には、この浸漬管を保護管とする非鉄溶融金属用浸漬型ヒーター、この浸漬管を保護管とする非鉄溶融金属用浸漬型熱電対、この様な浸漬型ヒーターおよび/または熱電対を備えた非鉄金属溶融炉などにおいて、特に有用である。
【0034】
さらに、本発明によるヒーターチューブは、Naを含有しない条件下に非鉄金属の溶融物との接触状態で使用される非鉄溶融金属用浸漬管としても、有用である。
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、Naを含むフラックスが存在する非鉄金属溶湯中で使用する場合にも、Naの浸透を抑制しつつ、優れた機械的特性を発揮するヒーターチューブが得られる。
【0036】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明の特徴とするところをより一層明確にする。
【0037】
実施例1
表2および表3にそれぞれ配合割合を示す本体材形成用材料と内層形成用材料とを使用して、本体材と内層とからなる坩堝形状の円筒状焼結体を製造した。
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
なお、表2および表3に示す各成分の詳細は、以下の通りである。
【0041】
SiC:純度98%、粒度60メッシュ以下
Al2O3:純度99%、粒度60メッシュ以下
ZrO2:純度95%、粒度60メッシュ以下、安定化率80%(この安定化率では、大部分が立方晶ZrO2の結晶形態をとり、非鉄溶融金属用浸漬管の使用温度域で異常容積変化現象を示さず、膨張係数は9×10-6/℃となる)
TiO2:純度95%、粒度60メッシュ以下
MgO:純度95%、粒度60メッシュ以下
C:鱗状黒鉛、純度95%、粒度20〜100メッシュ
金属Si:純度98%、粒度325メッシュ以下
B4C:純度98%、粒度325メッシュ以下
ピッチ・タール:両者の1:1混合物
まず、ピッチ・タール以外の粉体成分を充分に混合した後、ピッチ・タールを添加し、さらに充分に混練して、本体材形成用材料と内層形成用材料(16種)とをそれぞれ調製した。次いで、外径70mm×高さ80mm、内径30mm×深さ60mmの円筒状坩堝形状が成形できるモールドに、外面側に本体材形成用材料を、内面側(底を含む)に内層形成用材料をチャージし、800kg/cm2の圧力で成形した。なお、成形体として内層の厚さ7.5mmのもの(成形体A)、4.0mmのもの(成形体B)および2.0mmのもの(成形体C)を製造した。
【0042】
次いで、得られた成形体をコークスブリーズ中に埋設し、電気炉で10℃/hrの速度で1350℃まで昇温し、同温度に12時間保持して焼結した。得られた円筒状坩堝形状焼結体を下記のスポールテストとフラックステストに供した。
【0043】
1.スポールテスト
市販のホウケイ酸フリット微粉をシリカゾルに加えてスラリー状とし、上記で得られた円筒状坩堝状焼結体の内外面に厚さ約1mmに塗布し、110℃で乾燥して、ガラス層を形成させた。
【0044】
得られた乾燥焼結体を予め1200℃に加熱してある電気炉に挿入し、10分間保持した後、炉外に取り出して空冷するという急熱・急冷サイクルを10回繰り返し行って、供試体内外面の亀裂の有無および程度などを判定した。
【0045】
本体材部分には、亀裂が認められなかったので、内層部分についての結果のみを表4、5および6に示す。なお、表4には、内層部分の熱膨張係数を併せて示す。
【0046】
参考までに、本体材部分の熱膨張係数は、4.2×10-6/℃であった。
【0047】
【表4】
【0048】
表4において、「成形体A−1」とあるのは、焼結体の内層厚さが7.5mmであって、材料組成が表3の組成1であることを意味し、その他の成形体についても同様である。
【0049】
【表5】
【0050】
表5において、「成形体B−1」とあるのは、焼結体の内層厚さが4.0mmであって、材料組成が表3の組成1であることを意味し、その他の成形体についても同様である。
【0051】
【表6】
【0052】
表6において、「成形体C−1」とあるのは、焼結体の内層厚さが2.0mmであって、材料組成が表3の組成1であることを意味し、その他の成形体についても同様である。
【0053】
2.フラックステスト
上記のスポールテストで使用したと同様の乾燥焼結体の内部にNa含有フラックス(NaCl:NaF=1:1、Na含有量40%)51gを収容し、焼結体と同一材質の蓋で上部を閉じ、セラミックセメントで密封し、110℃で乾燥した。得られた密封供試体を電気炉に挿入し、100℃/hrの速度で1000℃の温度まで昇温し、同温度に10時間保持した後、冷却し、炉から取り出した。取り出した供試体を縦方向に2つに切断し、フラックスの残量高さを測定し、内層へのNa含有フラックスの浸透がない場合の残量高さを10として、この値に対する残量高さの比でNaの浸透防止効果を評価した。成形体A、BおよびCについての結果をそれぞれ表4、5および6に併せて示す。表4、5および表6において、「10/10」とあるには、フラックスの浸透が実質的に認められないことを意味する。
【0054】
なお、参考までに、表2に示す本体材形成用材料のみで製造した同一寸法の焼結体の評価は、3/10であった。
【0055】
3.総合評価
上記のスポールテストおよびフラックステストの結果を勘案して、総合評価を行った。成形体A、BおよびCについての結果をそれぞれ表4、5および6に併せて示す。評価基準は、以下の通りである。
【0056】
×:実用に供し得ない場合がある。
【0057】
△:実用上問題はない。
【0058】
○:実用上優れている。
【0059】
◎:実用上極めて優れている。
【0060】
表4、5および6に示す総合評価から明かな様に、実用条件に比して極めて厳しい条件下に行なったスポールテストにおいて5サイクル以上の耐久性を発揮し、且つNa含有フラックスに対し、本体材形成用材料のみで製造した焼結体の2倍(「6/10」)以上の浸透防止性を示した場合に、実用上優れていると判断した。
【0061】
実施例2および比較例1
実使用を模した方法によりフラックスの浸透試験を行った。
【0062】
実施例1と同様の手法により、外径70mm×高さ80mm、内径30mm×深さ60mmの円筒状坩堝形状の焼結体を得た後、その外表面(本体材)を切削加工して、外径55mm×高さ70mm、内径30mm×深さ60mmの円筒状坩堝形状焼結体を調製した。内層用の材料としては、表1の組成物No.3(アルミナ−グラファイト質)およびNo.8(ジルコニア−グラファイト質)を使用した。
【0063】
本体材と内層の厚みおよび内層の材質を表7に示す。表7において、比較例1は、本体材のみからなる焼結体(比較例1)についての結果を示す。
【0064】
【表7】
【0065】
得られた円筒状坩堝形状焼結体の内外層表面に実施例1と同様にしてホウケイ酸フリットによりガラス層を形成した後、下記の要領でフラックス浸透テストおよびその評価を行った。
【0066】
1.テスト方法
焼結体の上部を本体材と同一材質の蓋で閉じ、セラミックセメントで密封した後、アルミナ質のトレイの中におき、その周りに粒状アルミナ900gとフラックス(実施例1で使用したものと同じ)30gとの均一混合物を配置する。この状態でアルミナ質トレイをガス炉に入れ、800℃まで1時間で昇温し、同温度に8時間保持し、その後15時間かけて炉中で冷却した後、炉から取り出す。
【0067】
2.評価−1
得られた焼結体サンプルを縦方向に半分に切断し、図3に断面図として示すように、一方の切断片の側壁部の最大フラックス浸透深さ(L1およびL2;mm)および底部の最大フラックス浸透深さ(L3;mm)を測定し、以下に示す計算式で浸透量を算出する。
【0068】
浸透量(%)=100×L1(またはL2)/L0(=12.5mm)
浸透量(%)=100×L3/L0(=10.0mm)
ただし、フラックス浸透深さは、切断片の切断面を上にして電気炉に入れ、酸化雰囲気中900℃で30分間保持し、フラックスを表面に浮き出させることにより、測定する。結果を表8に示す。
【0069】
【表8】
【0070】
表8に示す結果から、内層の厚さが7.5mmである場合の方が耐フラックス浸透性に優れており、また、コストの低いアルミナ・グラファイト質の方が優れた効果を発揮することが明らかである。
【0071】
3.評価−2
評価−1で切断した切断片No.1の残りを対象として、その肉厚方向にX線マイクロアナライザーによりNaの存在を分析した(ライン分析)。結果は、図4に示す通りである。
【0072】
本体材側のNa強度は高いが、内層側でNa強度が落ちていることが明らかである。
【0073】
実施例3および比較例2〜3
コーティング材の塗布による効果を測定するために、以下の処理を行った。
【0074】
実施例2と同様にして得た外径55mm×高さ70mm、内径30mm×深さ60mmの円筒状坩堝形状焼結体の内面と上部にホウケイ酸フリットを約1mm厚に塗布し、外面と外底面には前記表1のコーティング材組成1を約0.5mm厚に塗布した後、6時間かけて自然乾燥し、150℃で3時間強制乾燥し、次いで電気炉中300℃/hrの昇温速度で1000℃まで昇温し、同温度で30分間保持して、焼き付けた。
【0075】
本体材と内層の厚みおよび内層の材質を表9に示す。
【0076】
また、実施例2と同様の手法により測定したフラックス浸透テストによる結果を表10に示す。ただし、フラックスの濃度は、10倍の300gとし、粒状アルミニウム900gと混合して使用した。表10において、比較例2はアルミナコーティングを有しない焼結体についての結果を示し、比較例3は本体材のみからなる焼結体についての結果を示す。
【0077】
【表9】
【0078】
【表10】
【0079】
実施例3と比較例2との対比から、アルミナコーティングを行うことにより、耐フラックス浸透性が向上していることが明らかである。
【0080】
実施例4および比較例4
図5に断面図として示す構造および寸法を有する本発明ヒーターチューブを製造し、実炉テストを行った。
【0081】
すなわち、表2に示す本体材形成用材料と表3の内層形成用材料No.3とを使用して、本体材21と内層23とからなり、外面の湯面(メニスカス)25の近傍200mmにアルミナコーティング27を有するヒーターチューブを製造した。
【0082】
まず、ピッチ・タール以外の粉体成分を充分に混合した後、ピッチ・タールを添加し、さらに充分に混練して、本体材形成用材料と内層形成用材料とをそれぞれ調製した。次いで、所定の形状が基本成形できるモールドの外面側に本体材形成用材料を、内面側(底を含む)に内層形成用材料をチャージし、800kg/cm2の圧力で成形した。次いで、得られた成形体をコークスブリーズ中に埋設し、電気炉で10℃/hrの速度で1350℃まで昇温し、同温度に12時間保持して焼結した後、所定形状に加工した。次いで、加工体の内面、上部、底部、および湯面近傍200mmを除く外面にホウケイ酸フリットを約1mm厚に塗布し、外面の湯面近傍200mmには前記表1のアルミナコーティング材組成1を約0.5mm厚に塗布した後、6時間かけて自然乾燥し、150℃で3時間強制乾燥し、次いで電気炉中300℃/hrの昇温速度で1000℃まで昇温し、同温度で30分間保持して、焼き付けた。
【0083】
テストは、Na系フラックス(金属ナトリウム濃度150ppm)を使用する溶融炉において、AC4Cアルミニウム合金溶湯に上記のヒーターチューブを浸漬し、チューブ熱源としてガスバーナー(都市ガス13A 最大燃焼熱量20000Kcal/hr)を使用して、保持温度740℃で5.5ヶ月行った。
【0084】
表11に結果を示す。比較例4は、本体材のみからなる焼結体についての結果を示す。
【0085】
【表11】
【図面の簡単な説明】
【図1】ヒーターチューブの一例を示す断面図である。
【図2】ヒーターチューブを使用する非鉄溶融金属用浸漬型ヒーターの一例を示す断面図である。
【図3】実施例2のフラックス浸透テストにおいて使用した焼結体サンプルの浸透状況を模式的に示す断面図である。
【図4】実施例2のフラックス浸透テストにおいて使用した焼結体サンプルの肉厚方向のNaの分布を示すマイクロアナライザー分析チャートである。
【図5】実施例4において得られたヒーターチューブの寸法および形状を示す断面図である。
【符号の説明】
1…ヒーターチューブ
3…バーナー
5…内管
7…燃料供給口
9…空気供給口
11…排気口
13…バーナートップ
21…本体材
23…内層
25…湯面(メニスカス)
27…アルミナコーティング
Claims (7)
- ホウケイ酸ガラスで被覆した非鉄溶融金属用浸漬管であって、管壁が内層と本体材との少なくとも2層からなり、内層がアルミナ・グラファイト質、ジルコニア・グラファイト質、チタニア・グラファイト質およびマグネシア・グラファイト質の少なくとも1種の材料により形成されており、本体材の材料が含炭素質セラミック複合体、窒化珪素結合炭化珪素、または炭素結合炭化珪素であることを特徴とする浸漬管。
- 請求項1に記載の非鉄溶融金属用浸漬管において、内層と本体材との膨張率の差が1×10-6/℃以内であり、内層厚さが2mm〜管壁厚さの1/3の範囲にあり、内層を形成する材料が下記(a)〜(d)の少なくとも1種である浸漬管:
(a)アルミナ70〜85重量%とグラファイト30〜15重量%とを含むアルミナ−グラファイト質、
(b)ジルコニア70〜85重量%とグラファイト30〜15重量%とを含むジルコニア−グラファイト質、
(c)チタニア70〜85重量%とグラファイト30〜15重量%とを含むチタニア−グラファイト質および
(d)マグネシア70〜80重量%とグラファイト30〜20重量%とを含むマグネシア−グラファイト質。 - 本体材外表面の溶湯境界面近傍をアルミナ、ジルコニア、チタニアおよびマグネシアの少なくとも1種によりコーティングした請求項1〜2のいずれかに記載の非鉄溶融金属用浸漬管。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の浸漬管を保護管とする非鉄溶融金属用浸漬型ヒーター。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の浸漬管を保護管とする非鉄溶融金属用浸漬型熱電対。
- 請求項4に記載の浸漬型ヒーターを備えた非鉄金属溶融炉。
- 請求項5に記載の浸漬型熱電対を備えた非鉄金属溶融炉。
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