JP3051314B2 - リン酸型燃料電池用ガスケットおよびその製造法 - Google Patents

リン酸型燃料電池用ガスケットおよびその製造法

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JP3051314B2 JP6312747A JP31274794A JP3051314B2 JP 3051314 B2 JP3051314 B2 JP 3051314B2 JP 6312747 A JP6312747 A JP 6312747A JP 31274794 A JP31274794 A JP 31274794A JP 3051314 B2 JP3051314 B2 JP 3051314B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、リン酸型燃料電池の
本体セルをシールするために使用され、耐熱性と耐リン
酸性に優れ、濃リン酸液に浸漬した際に長期にわたって
表面固有抵抗が低下しないガスケットおよびその製造法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】リン酸型燃料電池の本体セルをシールす
るためのガスケットとして、従来はフッ素系樹脂成型品
およびフッ化ビニリデン系フッ素ゴム(以下、フッ素ゴ
ムという)の成型品が使用されていたが、フッ素系樹脂
成型品は、硬度が高く、復元性に劣るためにシール性能
に問題があり、またフッ素ゴムの成型品は、高温時の機
械的強度(耐圧縮破壊性)、電気絶縁性および耐リン酸
性が充分でない等の問題があった。
【0003】この問題を解決するため、四フッ化エチレ
ン・プロピレン共重合体、カーボンブラック、有機過酸
化物架橋剤、共架橋剤および適量の加工助剤を配合して
なるゴム組成物を所望の金型に充填し、プレス加硫し、
次いでオーブンで二次加硫を施すことにより、耐熱性と
耐リン酸性に優れたガスケットを製造することが提案さ
れた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
四フッ化エチレン・プロピレン共重合体を主成分とする
先願発明のガスケットは、温度180℃程度の高温下で
濃度85%の濃リン酸液に浸漬した場合、当初1015
1016Ωであった表面固有抵抗が約30日後には108
Ω程度に小さくなるため、リン酸型燃料電池の発電セル
間、および発電セルとその支持具(マニホールド)間の
絶縁性が小さくなるという課題が残った。これは、ガス
ケットの本来の機能を満たすために必要不可欠なカーボ
ンブラック、乾式シリカ等の補強剤が濃リン酸を吸収
し、この濃リン酸が水分を吸収して導電性を与える核に
なるためと考えられる。
【0005】この発明は、四フッ化エチレン・プロピレ
ン共重合体その他のフッ素系エラストマーとカーボンブ
ラック等からなる加硫成型品の表面にカーボンブラック
等の補強剤を含有しないか、またはその含有率が小さい
フッ素系エラストマーからなる被膜を形成することによ
り、上記の濃リン酸液に浸漬した際における表面固有抵
抗の低下を防止するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】第1発明は、上記のリン
酸型燃料電池用ガスケットに係り、フッ素系エラストマ
ー100重量部に付き補強剤としてカーボンブラックま
たは乾式シリカの少なくとも一方を20〜70重量部配
合し、加硫成型してなるガスケット本体と、このガスケ
ット本体の表面を被覆する被膜とからなり、この被膜
は、上記補強剤の含有量が0または5重量部以下のフッ
素系エラストマーからなり、ガスケット本体に共架橋に
より一体化されていることを特徴とする。
【0007】第2発明は、上記リン酸型燃料電池用ガス
ケットの製造に適した第1の方法に係り、フッ素系エラ
ストマー100重量部に付き補強剤としてカーボンブラ
ックまたは乾式シリカの少なくとも一方を20〜70重
量部、さらに有機過酸化物架橋剤、共架橋剤および加工
助剤をそれぞれ適量配合してなるエラストマー組成物を
金型に充填し、150〜180℃の温度で10〜30分
間プレス加硫し、得られた加硫成型品の表面に補強剤含
有量が0または5重量部以下のフッ素系エラストマー、
有機過酸化物架橋剤、共架橋剤および溶媒からなるコー
ティング剤を塗布し、温度150〜230℃のオーブン
で5〜24時間の二次加硫を施して上記の加硫成型品と
コーティング膜とを共架橋させることを特徴とする。
【0008】第3発明は、上記リン酸型燃料電池用ガス
ケットの製造に適した第2の方法に係り、上記第2発明
のコーティング剤に代え、補強剤含有量が0または5重
量部以下のフッ素系エラストマーおよび溶媒からなるコ
ーティング剤、すなわち第2発明のコーティング剤から
有機過酸化物架橋剤および共架橋剤を省略したコーティ
ング剤を使用するものである。
【0009】第4発明は、上記リン酸型燃料電池用ガス
ケットの製造に適した第3の方法に係り、上記の第2発
明または第3発明において、エラストマー組成物を金型
に充填する際、該金型に上記補強剤含有量が0または5
重量部以下のフッ素系エラストマーであらかじめ成形さ
れたフィルムまたはシートをセットし、しかるのち上記
エラストマー組成物を充填し、150〜180℃の温度
で10〜30分間プレス加硫して上記のエラストマー組
成物とフィルムまたはシートとを加硫接着し、次いで温
度150〜230℃のオーブンで5〜24時間の二次加
硫を施すことを特徴とする。
【0010】上記のガスケット本体および被膜を構成す
るフッ素系エラストマーとしては、四フッ化エチレン・
プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン・六フッ化プロ
ピレン共重合体、フッ化ビニリデン・六フッ化プロピレ
ン・四フッ化プロピレン共重合体、フルオロシリコーン
エラストマーおよびパーフルオロエラストマー等が例示
されるが、高温時の機械的強度、電気絶縁性および耐酸
性(耐リン酸性)の点から四フッ化エチレン・プロピレ
ン共重合体が好ましい。この四フッ化エチレン・プロピ
レン共重合体は、四フッ化エチレンとプロピレンとをほ
ぼ交互に配列した共重合体である。
【0011】このガスケット本体用フッ素系エラストマ
ーに配合されるカーボンブラックは、MT、SRF、G
PF、HAF等が使用可能であるが、高温時の機械的強
度(耐圧縮破壊性)の点ではHAF、特に粒子径20〜
30nmの高補強性カーボンが好ましく、耐酸性および
電気絶縁性の点ではMTカーボンが好ましい。また、上
記のカーボンブラックに代えて、またカーボンブラック
と併用する形で耐酸性が良好な乾式シリカを使用するこ
とができる。
【0012】上記のカーボンブラックまたは乾式シリカ
の配合量は、いずれかを単独で使用した場合、フッ素系
エラストマー100重量部当り20〜70重量部であ
り、両者を併用した場合は合計量で20〜70重量部で
ある。特にカーボンブラックのみを単独で使用したとき
の配合量は、20〜60重量部が好ましい。上記の配合
量が20重量部未満の場合は、高温時における機械的強
度が低く、また成形性が低下する。反対に70重量部を
超えた場合は、硬度が高くなり過ぎてシール性能が低下
すると共に、成形が困難になる。
【0013】上記のガスケット本体用フッ素系エラスト
マーには、有機過酸化物架橋剤および共架橋剤が併用さ
れる。有機過酸化物架橋剤としては、1,3ビス(t・
ブチル・パーオキシ・イソ・プロピル)ベンゼンの使用
が好ましい。上記有機過酸化物架橋剤の好ましい配合量
は、上記のフッ素系エラストマー100重量部当り1〜
3重量部であり、上記配合量が1重量部未満の場合は、
加硫速度が遅くなって外観不良が生じ、成型品の圧縮永
久歪みおよび耐クリープ特性が低下し、反対に3重量部
を超えた場合は、加硫速度が速過ぎてスコーチ(早期加
硫)や外観不良が生じ、成型品が脆くなり、高温時の機
械的強度が低下する。
【0014】また、共架橋剤としてはトリアリルイソシ
アヌレートの使用が好ましい。この共架橋剤の好ましい
配合量は、同じくフッ素系エラストマー100重量部当
り2〜8重量部である。この配合量が2重量部未満の場
合は、加硫が十分に行われず、成型品の圧縮永久歪みお
よび耐クリープ特性が悪くなる。反対に8重量部を超え
た場合は、加硫物が脆くなり、高温時の機械的強度が低
下する。
【0015】上記のフッ素系エラストマー、カーボンブ
ラック(または乾式シリカ)、有機過酸化物架橋剤およ
び共架橋剤は、通常使用される適量の加工助剤や滑剤と
共に混練される。得られたゴム組成物は、一次加硫と二
次加硫によって所望の形状に成型される。
【0016】一次加硫は、上記のゴム組成物を金型に充
填したプレス加硫によって行われる。加硫温度は150
〜180℃に、また加硫時間は10〜30分に、またプ
レス圧力(面圧)は20〜60kg/cm2 にそれぞれ設定
される。上記加硫温度が150℃未満の場合は、加硫が
遅くなるため、加硫に長時間を要して生産性が低下した
り、成型品の外面に欠損が生じたりすることがあり、反
対に180℃を超えた場合は、加硫速度が速過ぎて成型
品の外面に欠損が生じ易くなる。また、加硫時間が10
分未満の場合は、初期物性が低く、圧縮永久歪が大きく
なり、反対に30分を超えた場合は、初期物性が低下
し、かつ生産性が低下する。また、プレス圧力が20kg
/cm2 未満の場合は、成型品の外面に欠損が生じ易くな
り、反対に60kg/cm2 を超えた場合は、金型やプレス
熱盤等の損傷を早める。
【0017】二次加硫は、オーブン加硫により、温度1
50〜230℃で5〜24時間行われる。この温度が1
50℃未満の場合は、加硫が不足して製品の圧縮永久歪
みが大きくなり、反対に230℃を超えた場合は、加硫
が進み過ぎて成型品が老化する。また、加硫時間が5時
間未満の場合は、初期物性が低く、圧縮永久歪が大きく
なり、反対に24時間を超えた場合は、熱老化が進み、
物性の低下が著しくなる。
【0018】第2発明では、上記の二次加硫に先立ち、
一次加硫で得られた加硫成型品の表面に前記のガスケッ
ト本体に使用したものと同様のフッ素系エラストマー
(例えば、四フッ化エチレン・プロピレン共重合体)1
00重量部、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソ
プロピル)ベンゼン、ジクミルペルオキシドおよび2,
5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘ
キサン等の有機過酸化物加硫剤2〜5重量部、トリアリ
ルイソシアヌレート(TAIC)、トリアジン系化合物
等の共架橋剤3〜7重量部を上記テトラヒドロフラン
(THF)等の溶媒1000〜2000重量部に溶解し
たコーティング剤が塗布される。
【0019】このコーティング剤においては、前記ガス
ケット本体に使用したカーボンブラック、乾式シリカ等
の補強剤は不要であるが、上記フッ素系エラストマー1
00重量部に付き5重量部以下の範囲で添加することが
できる。ただし、この添加量が5重量部を超えると、被
膜を設けた効果が失われる。そして、上記の塗布は、刷
毛またはスプレイ等の任意の手段で行うことができる
が、その塗布厚み(乾燥)は、2〜7μm(固形分付量
8〜27g/m2 )が好ましく、この塗布厚みが2μm
未満では、所望の効果が得られない場合があり、反対に
7μmを超えても効果の上昇が無く、むしろ塗膜の剥離
が生じ易くなる。
【0020】第3発明では、上記第2発明のコーティン
グ剤に代えて前記同様のフッ素系エラストマーおよび溶
媒からなるコーティング剤、換言すれば、第2発明のコ
ーティング剤から有機過酸化物加硫剤および共架橋剤を
除いたものが使用される。補強剤は、第3発明と同様に
不要であるが、5重量部以下の範囲で添加することがで
きる。なお、溶媒の使用量は、前記同様に1000〜2
000重量部が、また塗布厚みは前記同様に2〜7μm
がそれぞれ好ましい。
【0021】第4発明では、上記のフッ素系エラストマ
ー(例えば、4フッ化エチレン・プロピレン共重合体)
のみをロール等で成形して得られたフィルムまたはシー
トを第2発明および第3発明で使用する金型のキャビテ
ィにセットし、その上にガスケット本体用のエラストマ
ー組成物を充填し、前記同様に一次加硫および二次加硫
を順に行う。なお、上記のフッ素系エラストマーには、
前記の補強剤を5重量部以下の範囲で添加することがで
きる。また、上記のフッ素系エラストマーを成形して得
られるフィルムまたはシートの厚みは、150〜500
μmが好ましく、この厚みが150μm未満では成形時
にフィルムが折れ曲がりを生じたりするため、ガスケッ
ト面に均一に成型されなくなったりし、反対に500μ
mを超えると被膜剥離が生じ易くなる。
【0022】
【作用】第1発明のリン酸型燃料電池用ガスケットは、
ガスケット本体がフッ素系エラストマーで形成されてい
るので、高温下の機械的強度、電気絶縁性および耐リン
酸性の点で優れている。そして、補強剤としてカーボン
ブラックまたは乾式シリカの少なくとも一方が20〜7
0重量部配合されるので、高温時の耐割れ荷重性が良好
となる。しかも、このガスケット本体が上記の補強剤を
含有しない、または含有していても含有量が5重量部以
下のフッ素系エラストマーの被膜で被覆され、かつガス
ケット本体にフッ素系エラストマー被膜が接合され、強
固に一体化されているので、このガスケットが高温の濃
リン酸液に長時間浸漬されてもガスケットとしての表面
固有抵抗が低下せず、かつガスケットに外力が加わって
変形したときもフッ素系エラストマー被膜が上記の変形
に追従して変形し、該被膜が剥離することはない。な
お、カーボンブラックとしてMTカーボンブラックを使
用した場合は、MTカーボンブラックが不活性であるた
め、耐リン酸性および電気絶縁性が一層改善される。
【0023】第2発明ないし第4発明の製造方法は、フ
ッ素系エラストマーを主成分とするゴム組成物を金型に
充填して加硫成型し、更に二次加硫を施す方法であるか
ら、電気絶縁性および耐リン酸性の良好なガスケット本
体が得られる。そして、このガスケット本体には、補強
剤としてカーボンブラックおよび乾式シリカの少なくと
も一方を使用するので、高温時の耐割れ荷重性が良好に
なる。また、架橋剤として有機過酸化物および共架橋剤
を併用するので、耐熱性および耐酸性が良好になる。
【0024】しかして、第2発明では、上記の二次加硫
に先立ち、一次加硫で得られた加硫成型品の表面にフッ
素系エラストマー、有機過酸化物架橋剤、共架橋剤およ
び溶媒からなり、補強剤含有量が0または5重量部以下
のコーティング剤を塗布し、しかるのち二次加硫を行う
ので、上記加硫成型品を二次加硫して得られたガスケッ
ト本体の表面にフッ素系エラストマーからなり、カーボ
ンブラックやシリカ等の補強剤を全く含まないか、また
含んでいてもその量が非常に少ない被膜が形成される。
そして、この第2発明では、二次加硫の際、コーティン
グ剤に配合された有機過酸化物架橋剤および共架橋剤が
コーティング膜に直接作用すると共に、更に上記加硫成
型品に残留する有機過酸化物および共架橋剤の作用が加
わるため、ガスケット本体の表面に特に強固な被膜が形
成される。
【0025】また、第3発明では、上記第2発明のコー
ティング剤から有機過酸化物架橋剤および共架橋剤を除
いてコーティング剤とするので、上記同様にガスケット
本体の表面にフッ素系エラストマーからなり、カーボン
ブラックやシリカ等の補強剤を全く含まないか、また含
んでいてもその量が非常に少ない被膜が形成され、この
被膜が上記加硫成型品に残留する有機過酸化物および共
架橋剤の作用で加硫されると共に、ガスケット本体と共
架橋によって強く結合され、前記第1発明のガスケット
が製造される。
【0026】また、第4発明では、加硫成型用の金型に
フッ素系エラストマーからなり補強剤含有量が0または
5重量部以下のフィルムまたはシートをあらかじめセッ
トし、しかるのちガスケット本体用のエラストマー組成
物を上記フィルム等の上から金型に充填するので、金型
に充填した状態の加硫、すなわち一次加硫において上記
のフィルム等がエラストマー組成物中の有機過酸化物架
橋剤および共架橋剤の作用で加硫され、加硫成型品と共
架橋によって一体化され、この加硫および共架橋が次の
二次加硫によって更に進行して第1発明のガスケットが
製造される。
【0027】
【実施例】四フッ化エチレン・プロピレン重合体(旭硝
子社製、商品名「JSRアフラス100S」、ムーニー
粘度ML1+10値(100℃):160)100重量
部、MTカーボン45重量部、加工助剤2.5重量部、
共架橋剤のトリアリルイソシアヌレート5重量部および
有機過酸化物加硫剤の1,3−ビス(t−ブチルパーオ
キシイソプロピル)ベンゼン2重量部からなる未加硫の
エラストマー組成物をリン酸型燃料電池用ガスケット製
造用金型のキャビティに充填し、170℃で20分間プ
レス加硫(一次加硫)して額縁状の加硫成型品を得た。
【0028】一方、四フッ化エチレン・プロピレン重合
体(旭硝子社製、商品名「JSRアフラス150L」、
ムーニー粘度ML1+10値(100℃):35)10
0重量部、共架橋剤のトリアリルイソシアヌレート5重
量部、有機過酸化物加硫剤の1,3−ビス(t−ブチル
パーオキシイソプロピル)ベンゼン3重量部および溶媒
のテトラヒドロフラン1000重量部からなるコーティ
ング剤を調製し、このコーティング剤を刷毛によって上
記の加硫成型品に種々の厚みに塗布し、室温で充分に乾
燥し、しかるのちオーブン中で150℃×1時間、17
5℃×1時間および200℃×5時間の二次加硫を行っ
てリン酸型燃料電池用ガスケットを製造した。
【0029】得られた試料1ないし試料6のガスケット
を濃度85%、温度180℃の濃リン酸に30日浸漬
し、浸漬前後の表面固有抵抗Rs、体積固有抵抗Rv、
外観および常態物性(引張強度TB、破断伸びEB、1
00%引張応力M100 、JIS−A硬度Hsを比較し
た。その結果を下記の表1、2に示す。ただし、抵抗測
定は、温度28℃、湿度61%の条件下で、抵抗測定器
(米国HEWLETT PACKARD 社製、商品名「HP4339A
ハイレジスタンス・メータ」)を用いて行った。
【0030】 表 1 試料番号 1 2 3 コーティング厚み(μm) 0 1.2 2.5 表面固有抵抗(Ω) 浸漬前 1.3×1016 7.0×1015 2.8×1016 浸漬30日後 2.8×10 9 6.5×1015 5.4×1015 体積固有抵抗(Ω・cm) 浸漬前 2.0×1016 1.5×1014 1.2×1014 浸漬30日後 2.1×1012 1.2×1014 2.0×1013 外観(浸漬30日後) 異常なし 異常なし 異常なし 常態物性 引張強度(kgf/cm2 ) 225 221 220 破断伸び(%) 200 210 210 100%引張応力(kgf/cm2) 108 110 105 JIS-A 硬度(ポイント) 83 83 83 浸漬30日後の物性 引張強度(kgf/cm2 ) 202 205 187 破断伸び(%) 220 210 180 100%引張応力(kgf/cm2) 83 96 90 JIS-A 硬度(ポイント) 82 81 81
【0031】 表 2 試料番号 4 5 6 コーティング厚み(μm) 5.0 7.5 10.0 表面固有抵抗(Ω) 浸漬前 3.0×1016 2.8×1016 3.1×1016 浸漬30日後 7.8×1014 3.1×1013 3.8×1015 体積固有抵抗(Ω・cm) 浸漬前 2.0×1014 5.2×1014 3.8×1014 浸漬30日後 7.0×1013 1.3×1013 2.0×1013 外観(浸漬30日後) 異常なし 異常なし ざらつき 常態物性 引張強度(kgf/cm2 ) 225 210 213 破断伸び(%) 200 210 210 100%引張応力(kgf/cm2) 108 102 105 JIS-A 硬度(ポイント) 83 83 83 浸漬30日後の物性 引張強度(kgf/cm2 ) 195 193 193 破断伸び(%) 220 210 210 100%引張応力(kgf/cm2) 87 78 76 JIS-A 硬度(ポイント) 82 81 81
【0032】上記の表1および表2から明らかなよう
に、この発明の実施例である試料2〜5は、リン酸に浸
漬する前後の表面固有抵抗、体積固有抵抗および物性の
変化が小さく、コーティングを省略した試料1に比べて
耐リン酸性が著しく優れていた。そして、上記のコーテ
ィング剤を温度40℃の条件下で60日間保存し、しか
るのちコーティングしても抵抗値の低下が無かった。な
お、コーティング厚みが最小の試料2においても、機能
上の問題は無かったが、塗りむらによる非コート部分の
発生を考慮すると、コーティング厚みは2μm以上が好
ましい。一方、コーティング厚みが最大の試料6は、コ
ーティング被膜が若干剥離して表面にざらつきが生じ
た。
【0033】次に上記のコーティング剤にカーボンブラ
ックとしてMTカーボンを5重量部および10重量部添
加する以外は試料4と同様にして試料7および試料8の
リン酸型燃料電池用ガスケットを製造し、上記同様に試
験した。その結果を下記の表3に示す。ただし、常態物
性および浸漬30日後の物性は、試料4と同じであった
ため、記載を省略した。
【0034】 表 3 試料番号 7 8 コーティング厚み(μm) 5.0 5.0 カーボンブラック含有量(重量部) 5 10 表面固有抵抗(Ω) 浸漬前 3.0×1016 5.0×1016 浸漬30日後 8.2×1012 3.2×10 9 体積固有抵抗(Ω・cm) 浸漬前 2.4×1014 1.8×1015 浸漬30日後 9.0×1012 4.5×1013 外観(浸漬30日後) 異常なし 異常なし
【0035】上記の表3から明らかなように、コーティ
ング被膜におけるカーボンブラック含有量が増大する
と、浸漬後の抵抗値が低下し、特にカーボンブラック含
有量が10重量部の試料8は、表面固有抵抗の低下が著
しく、コーティング被膜を有しない試料1と同程度であ
った。
【0036】次に上記の試料4に使用したコーティング
剤から共架橋剤および有機過酸化物加硫剤が除かれたコ
ーティング剤を使用する以外は試料4と同様にして試料
9のリン酸型燃料電池用ガスケットを製造し、上記同様
に試験した。また、上記試料4のコーティング剤に使用
した四フッ化エチレン・プロピレン重合体を用いて厚み
約200μmのフィルムを成形し、このフィルムをリン
酸型燃料電池用ガスケット製造用金型にセットし、この
フィルムの上から上記金型のキャビティに上記試料4の
未加硫のエラストマー組成物を充填し、しかるのち前記
同様にプレス加硫(一次加硫)およびオーブン中の二次
加硫を行って試料10のリン酸型燃料電池用ガスケット
を製造し、前記同様に試験した。その結果を下記の表4
に示す。
【0037】 表 4 試料番号 9 10 コーティング厚み(μm) 5.0 − フィルム厚み(μm) − 200 表面固有抵抗(Ω) 浸漬前 2.7×1015 3.7×1015 浸漬30日後 3.8×1015 3.2×1015 体積固有抵抗(Ω・cm) 浸漬前 1.7×1014 2.5×1014 浸漬30日後 2.5×1014 2.1×1014 外観(浸漬30日後) 異常なし ざらつき 常態物性 引張強度(kgf/cm2 ) 221 210 破断伸び(%) 210 210 100%引張応力(kgf/cm2) 112 102 JIS-A 硬度(ポイント) 82 83 浸漬30日後の物性 引張強度(kgf/cm2 ) 203 195 破断伸び(%) 220 220 100%引張応力(kgf/cm2) 87 87 JIS-A 硬度(ポイント) 82 82
【0038】上記の表4から明らかなように、前記試料
4のコーティング剤から共架橋剤および有機酸化物加硫
剤を除いたコーティング剤を用いた試料9も、また上記
試料4のコーティング剤に使用した四フッ化エチレン・
プロピレン共重合体でフィルムを成形し、このフィルム
を用いて一体成型した試料10も、抵抗値の低下に対す
る耐性が認められ、所期の目的を十分に達成することが
できた。ただし、フィルムを使用した試料10には、浸
漬後の表面に若干のざらつきが生じた。
【0039】
【発明の効果】以上に説明したように、請求項1に記載
された発明のリン酸型燃料電池用ガスケットは、フッ素
系エラストマー100重量部に付き補強剤としてカーボ
ンブラックまたは乾式シリカの少なくとも一方を20〜
70重量部配合し、加硫成型してなるガスケット本体
と、このガスケット本体の表面を被覆する被膜とからな
り、この被膜が上記補強剤の含有量0または5重量部以
下のフッ素系エラストマーからなり、ガスケット本体に
共架橋により一体化されているので、リン酸に浸漬した
際の表面固有抵抗の低下が上記のコーティング膜を有し
ない場合に比べて著しく小さくなり、かつ安定する。そ
して、コーティング膜の厚みによる影響が少なく、この
厚みが薄くても充分な効果が得られる。また、コーティ
ング剤の貯蔵安定性も良好であり、40℃で60日程度
保管した後にコーティングしても機能の低下がなく、取
扱が容易である。
【0040】請求項2に記載された発明のリン酸型燃料
電池用ガスケットの製造法は、フッ素系エラストマー1
00重量部に付き補強剤としてカーボンブラックまたは
乾式シリカの少なくとも一方を20〜70重量部、さら
に有機過酸化物架橋剤、共架橋剤および加工助剤をそれ
ぞれ適量配合してなるエラストマー組成物を金型に充填
し、150〜180℃の温度で10〜30分間プレス加
硫し、得られた加硫成型品の表面にフッ素系エラストマ
ー、有機過酸化物架橋剤、共架橋剤および溶媒からな
り、補強剤含有量が0または5重量部以下のコーティン
グ剤を塗布し、温度150〜230℃のオーブンで5〜
24時間の二次加硫を施して上記の加硫成型品とコーテ
ィング膜とを共架橋させるので、請求項1に記載された
リン酸型燃料電池用ガスケットを容易に製造することが
でき、しかもコーティング剤およびガスケット本体の双
方に含まれる有機過酸化物架橋剤および共架橋剤が上記
の共架橋に寄与するため、ガスケット本体およびコーテ
ィング被膜が特に強固に一体化される。
【0041】請求項3に記載された発明は、請求項2に
記載された発明のコーティング剤から有機過酸化物架橋
剤および共架橋剤が除かれたコーティング剤を使用する
ので、請求項2に記載された発明に比して請求項1に記
載されたリン酸型燃料電池用ガスケットを容易に製造す
ることができ、しかもコーティング剤の保存中に品質が
劣化することがなく、その長期保存が一層容易になる。
【0042】請求項4に記載された発明は、請求項2ま
たは3に記載された発明において、エラストマー組成物
を金型に充填する際、該金型に上記のフッ素系エラスト
マーであらかじめ成形されたフィルムまたはシートをセ
ットし、しかるのち上記エラストマー組成物を充填し、
次いで加硫成型(一次成型)および二次成型を前記同様
に行うので、請求項1に記載されたリン酸型燃料電池用
ガスケットを容易に製造することができ、しかも請求項
2、3に記載された方法に比べてコーティング剤の調製
が不要であり、該調製のための特別な装置を必要としな
い。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 栗田 善継 三重県鈴鹿郡関町古厩52−1 クレハエ ラストマー株式会社関工場内 (72)発明者 近藤 修身 愛知県名古屋市中村区本陣通4−36 ク レハエラストマー株式会社名古屋支店内 (72)発明者 鈴木 圭一 愛知県名古屋市緑区大高町奥中道41 ゴ ムノイナキ株式会社内 (56)参考文献 特開 昭62−208561(JP,A) 特開 昭60−241657(JP,A) 特開 昭60−184769(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01M 8/00 - 8/24

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 フッ素系エラストマー100重量部に付
    き補強剤としてカーボンブラックまたは乾式シリカの少
    なくとも一方を20〜70重量部配合し、加硫成型して
    なるガスケット本体と、このガスケット本体の表面を被
    覆する被膜とからなり、この被膜は、上記補強剤の含有
    量が0または5重量部以下のフッ素系エラストマーから
    なり、ガスケット本体に共架橋により一体化されている
    ことを特徴とするリン酸型燃料電池用ガスケット。
  2. 【請求項2】 フッ素系エラストマー100重量部に付
    き補強剤としてカーボンブラックまたは乾式シリカの少
    なくとも一方を20〜70重量部、さらに有機過酸化物
    架橋剤、共架橋剤および加工助剤をそれぞれ適量配合し
    てなるエラストマー組成物を金型に充填し、150〜1
    80℃の温度で10〜30分間プレス加硫し、得られた
    加硫成型品の表面に補強剤含有量が0または5重量部以
    下のフッ素系エラストマー、有機過酸化物架橋剤、共架
    橋剤および溶媒からなるコーティング剤を塗布し、温度
    150〜230℃のオーブンで5〜24時間の二次加硫
    を施して上記の加硫成型品とコーティング膜とを共架橋
    させることを特徴とするリン酸型燃料電池用ガスケット
    の製造法。
  3. 【請求項3】 フッ素系エラストマー100重量部に付
    き補強剤としてカーボンブラックまたは乾式シリカの少
    なくとも一方を20〜70重量部、さらに有機過酸化物
    架橋剤、共架橋剤および加工助剤をそれぞれ適量配合し
    てなるエラストマー組成物を金型に充填し、150〜1
    80℃の温度で10〜30分間プレス加硫し、得られた
    加硫成型品の表面に補強剤含有量が0または5重量部以
    下のフッ素系エラストマーおよび溶媒からなるコーティ
    ング剤を塗布し、温度150〜230℃のオーブンで5
    〜24時間の二次加硫を施して上記の加硫成型品とコー
    ティング膜とを共架橋させることを特徴とするリン酸型
    燃料電池用ガスケットの製造法。
  4. 【請求項4】 フッ素系エラストマー100重量部に付
    き補強剤としてカーボンブラックまたは乾式シリカの少
    なくとも一方を20〜70重量部、さらに有機過酸化物
    架橋剤、共架橋剤および加工助剤をそれぞれ適量配合し
    てなるエラストマー組成物を金型に充填する際、該金型
    に上記補強剤含有量が0または5重量部以下のフッ素系
    エラストマーであらかじめ成形されたフィルムまたはシ
    ートをセットし、しかるのち上記エラストマー組成物を
    充填し、150〜180℃の温度で10〜30分間プレ
    ス加硫して上記のエラストマー組成物とフィルムまたは
    シートとを加硫接着し、次いで温度150〜230℃の
    オーブンで5〜24時間の二次加硫を施すことを特徴と
    するリン酸型燃料電池用ガスケットの製造法。
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