JP3040750B2 - スピンバルブ型薄膜素子及びこのスピンバルブ型薄膜素子を用いた薄膜磁気ヘッド - Google Patents
スピンバルブ型薄膜素子及びこのスピンバルブ型薄膜素子を用いた薄膜磁気ヘッドInfo
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Description
磁化方向と外部磁界の影響を受けるフリー磁性層の磁化
の方向との関係で電気抵抗が変化するスピンバルブ型薄
膜素子に係り、特に、固定磁性層を2層に分断し、前記
2層の固定磁性層の磁化(フェリ状態)を熱的に安定し
た状態に保つことができるスピンバルブ型薄膜素子及び
このスピンバルブ型薄膜素子を用いた薄膜磁気ヘッドに
関する。
を記録媒体との対向面側から見た場合の構造を示す断面
図である。符号1は例えばTa(タンタル)などで形成
された下地層であり、この下地層1の上に反強磁性層2
が形成され、さらに前記反強磁性層2の上に固定磁性層
3が形成されている。前記固定磁性層3は前記反強磁性
層2に接して形成されることにより、前記固定磁性層3
と反強磁性層2との界面にて交換結合磁界(交換異方性
磁界)が発生し、前記固定磁性層の磁化は、例えば図示
Y方向に固定される。
成された非磁性導電層4が形成され、さらに前記非磁性
導電層4の上には、フリー磁性層5が形成されている。
前記フリー磁性層5の両側には、例えばCo―Pt(コ
バルト―白金)合金で形成されたハードバイアス層6,
6が形成されており、前記ハードバイアス層6,6が図
示X方向に磁化されていることで、前記フリー磁性層5
の磁化が図示X方向に揃えられている。これにより、前
記フリー磁性層5の変動磁化と前記固定磁性層3の固定
磁化とが交叉する関係となっている。なお符号7は、T
aなどで形成された保護層、符号8は、Cuなどで形成
された導電層である。
ディスクなどの記録媒体からの洩れ磁界により、図示X
方向に揃えられた前記フリー磁性層5の磁化が変動する
と、図示Y方向に固定された固定磁性層3の固定磁化と
の関係で電気抵抗が変化し、この電気抵抗値の変化に基
づく電圧変化により、記録媒体からの洩れ磁界が検出さ
れる。
記反強磁性層2として、NiMn合金、FeMn合金、
あるいはNiOなどの反強磁性材料が使用されている。
しかしこれらの材料のうち特に、FeMn合金やNiO
合金はブロッキング温度が約200℃以下であり、熱的
安定性に欠けた材料である。特に近年では、記録媒体の
回転数、あるいは導電層8から流れるセンス電流量の増
大などにより、装置内の環境温度が例えば200℃以上
と高温になる。このため、スピンバルブ型薄膜素子の反
強磁性層2としてブロッキング温度の低い反強磁性材料
を使用すると、前記反強磁性層2と固定磁性層3との界
面に発生する交換結合磁界(交換異方性磁界)が小さく
なってしまい、固定磁性層3の磁化を適正に図示Y方向
に固定することができず、ΔMR(抵抗変化率)の低下
を招く。
される反強磁性材料のみで決定されるために、スピンバ
ルブ型薄膜素子の構造を改良したとしても、前記ブロッ
キング温度そのものを上昇させることはできない。例え
ば特開平9―16920号公報には、固定磁性層の構造
を改良して、交換結合磁界を向上させることができる発
明について記載されている。しかし、この発明では、反
強磁性層としてNiOを使用しているため、ブロッキン
グ温度は200度程度であり、たとえ室温程度のときの
交換結合磁界を大きくできたとしても、装置内温度は2
00度近く、あるいはそれ以上の環境温度になると、記
録媒体走行中でのスピンバルブ型薄膜素子の交換結合磁
界は小さくなり、あるいは0になり、ΔMRを得ること
が全くできなくなる。
eMn合金に対しブロッキング温度が高いが、耐食性な
どの特性が悪いために、反強磁性層として使用される反
強磁性材料には、さらにブロッキング温度が高く、しか
も耐食性などの特性に優れた反強磁性材料が求められ
る。
のものであり、特に固定磁性層の構造、及び反強磁性層
の材質を改良し、しかも前記固定磁性層の膜厚などを適
性に調節することで、交換結合磁界を大きくすることが
でき、熱的安定性に優れたスピンバルブ型薄膜素子及び
このスピンバルブ型薄膜素子を用いた薄膜磁気ヘッドを
提供することを目的としている。
と、この反強磁性層と接して形成され、前記反強磁性層
との交換結合磁界により磁化方向が固定される固定磁性
層と、前記固定磁性層に非磁性導電層を介して形成さ
れ、前記固定磁性層の磁化方向と交叉する方向に磁化が
揃えられるフリー磁性層とを有するスピンバルブ型薄膜
素子において、前記固定磁性層は、反強磁性層に接する
第1の磁性層と、前記第1の磁性層と非磁性中間層を介
して重ねられる第2の磁性層の2層で形成され、前記第
1の磁性層と第2の磁性層は異なる膜厚で形成されてお
り、前記反強磁性層は、PtMn合金で形成され、前記
交換結合磁界は、1kOe以上であることを特徴とする
ものである。本発明では、PtMnに代えて、前記反強
磁性層は、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,
Ruのいずれか1種または2種以上の元素である)、あ
るいは、Pt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,I
r,Rh,Ru,Au,Agのいずれか1種または2種
以上の元素である)で形成されてもよい。 また本発明で
は、前記(第1の磁性層の膜厚)/(第2の磁性層の膜
厚)は、0.53〜0.95、あるいは1.05〜1.
8の範囲内であることが好ましい。
の膜厚及び第2の固定磁性層の膜厚は、共に10〜50
オングストロームの範囲内であり、且つ│第1の固定磁
性層の膜厚―第2の固定磁性層の膜厚│≧2オングスト
ロームであることが好ましい。
磁性中間層を介して第1のフリー磁性層と第2のフリー
磁性層の2層で形成され、前記第1のフリー磁性層と第
2のフリー磁性層は、異なる膜厚で形成されていること
が好ましい。上記において、前記(第1のフリー磁性層
の膜厚/第2のフリー磁性層の膜厚)は、0.61〜
0.83、あるいは1.25〜2.1の範囲内であるこ
とが好ましい。
と第2のフリー磁性層との間に介在する非磁性中間層の
膜厚は、5.9〜9.4オングストロームの範囲内であ
ることが好ましい。また本発明では、前記反強磁性層
は、フリー磁性層よりも下側に形成され、前記第1の磁
性層と第2の磁性層との間に介在する非磁性中間層の膜
厚は、4.0〜9.4オングストロームの範囲内である
ことが好ましい。さらに本発明では、前記反強磁性層
は、フリー磁性層よりも上側に形成され、前記第1の磁
性層と第2の磁性層との間に介在する非磁性中間層の膜
厚は、2.8〜6.2オングストローム、あるいは6.
8〜10.3オングストロームの範囲内であることが好
ましい。
は、100〜200オングストロームの範囲内であるこ
とが好ましい。
前述したスピンバルブ型薄膜素子の上下に、ギャップ層
を介してシールド層が形成されていることを特徴とする
ものである。本発明では、スピンバルブ型薄膜素子を構
成する固定磁性層が、2層に分断されており、2層に分
断された固定磁性層の間に非磁性中間層が形成されてい
る。この分断された2層の固定磁性層の磁化は、反平行
状態に磁化されており、しかも一方の固定磁性層の磁気
モーメント(磁気的膜厚)の大きさと、他方の固定磁性
層の磁気モーメントの大きさとが異なる、いわゆるフェ
リ状態となっている。2層の固定磁性層間に発生する交
換結合磁界(RKKY相互作用)は、1000(Oe)
から5000(Oe)と非常に大きいため、2層の固定
磁性層は非常に安定した状態で反平行に磁化された状態
となっている。
た一方の固定磁性層は、反強磁性層に接して形成されて
おり、この反強磁性層に接する側の固定磁性層(以下、
第1の固定磁性層と称す)は、前記反強磁性層との界面
で発生する交換結合磁界(交換異方性磁界)によって、
例えば記録媒体との対向面から離れる方向(ハイト方
向)に磁化が固定される。これにより、前記第1の固定
磁性層と非磁性中間層を介して対向する固定磁性層(以
下、第2の固定磁性層と称す)の磁化は、前記第1の固
定磁性層の磁化と反平行の状態で固定される。
層で形成していた部分を、本発明では、反強磁性層/第
1の固定磁性層/非磁性中間層/第2の固定磁性層の4
層で形成することによって、第1の固定磁性層と第2の
固定磁性層の磁化状態を外部磁界に対し非常に安定した
状態に保つことが可能となるが、より前記第1の固定磁
性層と第2の固定磁性層の磁化の安定性を向上させるに
は、様々な条件を必要とする。
との界面で発生する交換結合磁界(交換異方性磁界)を
大きくすることである。前述したように反強磁性層との
界面で発生する交換結合磁界(交換異方性磁界)によっ
て第1の固定磁性層の磁化は、ある一定方向に固定され
るが、この交換結合磁界が弱いと、第1の固定磁性層の
固定磁化が安定せず、外部磁界などにより変動しやすく
なってしまう。このため反強磁性層との界面で発生する
交換結合磁界(交換異方性磁界)は大きいことが好まし
く、本発明では、第1の固定磁性層との界面で大きい交
換結合磁界を得ることができる反強磁性層としてPtM
n合金を提示することができる。またPtMn合金に代
えて、X―Mn(XはPd,Ir,Rh,Ru)合金や
Pt―Mn―X′(X′は、Pd,Ir,Rh,Ru,
Au,Ag)合金を使用してもよい。
材料として使用されているNiO、FeMn合金やNi
Mn合金などに比べて、交換結合磁界が大きく、またブ
ロッキング温度が高く、さらに耐食性に優れているな
ど、反強磁性材料として優れた特性を有している。
用し、固定磁性層を非磁性中間層を介して第1の固定磁
性層と第2の固定磁性層の2層に分断した本発明におけ
るスピンバルブ型薄膜素子と、固定磁性層を単層で形成
した従来におけるスピンバルブ型薄膜素子とのR―H曲
線である。
膜構成は、下から、Si基板/アルミナ/Ta(30)
/反強磁性層;PtMn(200)/第1の固定磁性
層;Co(25)/非磁性中間層;Ru(7)/第2の
固定磁性層;Co(20)/Cu(20)/Co(1
0)/NiFe(40)/Ta(30)であり、従来に
おけるスピンバルブ型薄膜素子の膜構成は、下から、S
i基板/アルミナ/Ta(30)/反強磁性層;PtM
n(300)/固定磁性層;Co(25)/Cu(2
0)/Co(10)/NiFe(40)/Ta(30)
である。なお括弧内の数値は膜厚を示しており、単位は
オングストロームである。なお本発明及び従来における
スピンバルブ型薄膜素子共に、成膜後、200(Oe)
の磁場を印加しながら、260℃で4時間の熱処理を施
した。
ンバルブ型薄膜素子のΔMR(抵抗変化率)は、最大値
で7〜8%の間であり、負の外部磁界を与えることによ
り、前記ΔMRは低下していくが、従来におけるスピン
バルブ型薄膜素子のΔMRの落ち方に比べて、本発明に
おけるΔMRの落ち方は緩やかであることがわかる。こ
こで本発明では、ΔMRの最大値の半分の値になる時の
外部磁界の大きさをスピンバルブ型薄膜素子が発生する
交換結合磁界(Hex)と定める。
バルブ型薄膜素子では、最大ΔMRが、約8%であり、
前記ΔMRが半分になるときの外部磁界(交換結合磁界
(Hex))は、絶対値で約900(Oe)であること
がわかる。これに対し、本発明におけるスピンバルブ型
薄膜素子では、最大ΔMRが、約7.5%であり、従来
に比べて若干低下するものの、前記ΔMRが半分になる
ときの外部磁界(交換結合磁界(Hex))は、絶対値
で約2800(Oe)であり、従来に比べて非常に大き
くなることがわかる。
本発明におけるスピンバルブ型薄膜素子にあっては、固
定磁性層を1層で形成した従来のスピンバルブ型薄膜素
子に比べて、交換結合磁界(Hex)を飛躍的に大きく
でき、固定磁性層の磁化の安定性を従来に比べて向上で
きることがわかる。またΔMRについても本発明では従
来に比べてあまり低下せず、高いΔMRを保つことがで
きることがわかる。
膜素子を使用して、環境温度と交換結合磁界との関係を
示すグラフである。まず使用する1種目のスピンバルブ
型薄膜素子は、反強磁性層にPtMn合金を用い、固定
磁性層を2層に分断した本発明におけるスピンバルブ型
薄膜素子であり、膜構成としては、下から、Si基板/
アルミナ/Ta(30)/反強磁性層;PtMn(20
0)/第1の固定磁性層;Co(25)/非磁性中間
層;Ru(7)/第2の固定磁性層;Co(20)/C
u(20)/Co(10)/NiFe(70)/Ta
(30)である。
使用し、固定磁性層を単層で形成した従来例1であり、
膜構成としては、下から、Si基板/アルミナ/Ta
(30)/反強磁性層;PtMn(300)/固定磁性
層;Co(25)/Cu(25)/Co(10)/Ni
Fe(70)/Ta(30)である。
し、固定磁性層を単層で形成した従来例2であり、膜構
成としては、下から、Si基板/アルミナ/反強磁性
層;NiO(500)/固定磁性層;Co(25)/C
u(25)/Co(10)/NiFe(70)/Ta
(30)である。
使用し、固定磁性層を単層で形成した従来例3であり、
膜構成としては、下から、Si基板/アルミナ/Ta
(30)/NiFe(70)/Co(10)/Cu(2
5)/固定磁性層;Co(25)/反強磁性層;FeM
n(150)/Ta(30)である。なお、上述した4
種類全ての膜構成の括弧内の数値は膜厚を示しており、
単位はオングストロームである。
及び従来例1では、成膜後、200(Oe)の磁場を印
加しながら260℃で4時間の熱処理を施している。ま
た、反強磁性層にNiO、FeMnを使用した従来例
2,3では成膜後、熱処理を施していない。
バルブ型薄膜素子では、環境温度が約20℃のとき交換
結合磁界(Hex)は約2500(Oe)と非常に高く
なっていることがわかる。これに対し、反強磁性層にN
iOを用いた従来例2、及び反強磁性層にFeMnを用
いた従来例3では、環境温度が約20℃でも交換結合磁
界(Hex)が約500(Oe)以下と低くなってい
る。また反強磁性層にPtMnを用い、固定磁性層を単
層で形成した従来例1にあっては、環境温度が約20℃
で1000(Oe)程度の交換結合磁界を発生してお
り、反強磁性層にNiO(従来例2)、FeMn(従来
例3)を用いるよりも、より大きな交換結合磁界を得ら
れることがわかる。
性層にNiOを使用し、固定磁性層を非磁性中間層を介
して2層で形成したスピンバルブ型薄膜素子のR―H曲
線が図8に示されている。公報の図8によれば、600
(Oe)の交換結合磁界(Hex)を得られるとしてい
るが、この数値は、反強磁性層にPtMnを使用し、固
定磁性層を単層で形成した場合の交換結合磁界(約10
00(Oe);従来例1)に比べて低いことがわかる。
場合にあっては、固定磁性層を2層に分断し、前記2層
の固定磁性層の磁化をフェリ状態にしても、反強磁性層
にPtMnを使用し、且つ固定磁性層を単層で形成する
場合よりも、交換結合磁界は低くなってしまうため、反
強磁性層にPtMn合金を使用することが、より大きい
交換結合磁界を得ることができる点で好ましいとわか
る。
iOあるいはFeMn合金を使用した場合、環境温度が
約200℃になると、交換結合磁界は0(Oe)になっ
てしまうことがわかる。これは、前記NiO及びFeM
nのブロッキング温度が約200℃程度と低いためであ
る。これに対し反強磁性層にPtMn合金を使用した従
来例1では、環境温度が約400℃になって、交換結合
磁界が0(Oe)になっており、前記PtMn合金を使
用すると、固定磁性層の磁化状態を熱的に非常に安定し
た状態に保てることがわかる。
される材質に支配されるので、図27に示す本発明にお
けるスピンバルブ型薄膜素子においても、約400℃に
なると、交換結合磁界は0(Oe)になると考えられる
が、本発明のように反強磁性層にPtMn合金を使用し
た場合では、NiOなどに比べ高いブロッキング温度を
得ることが可能であり、しかも固定磁性層を2層に分断
して前記2層の固定磁性層の磁化をフェリ状態にすれ
ば、ブロッキング温度に到達するまでの間に非常に大き
い交換結合磁界を得ることができ、前記2層の固定磁性
層の磁化状態を熱的に安定した状態に保つことが可能と
なる。
固定磁性層との間に形成されている非磁性中間層とし
て、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種あ
るいは2種以上を使用し、前記非磁性中間層の膜厚を、
反強磁性層がフリー磁性層よりも下側に形成される場合
と、上側に形成される場合とで変えており、適正な範囲
内の膜厚で前記非磁性中間層を形成することにより、交
換結合磁界(Hex)を大きくすることができる。なお
前記非磁性中間層の適切な膜厚値については、後でグラ
フを参照しながら詳述する。
に分断して形成すれば、PtMn合金などで形成される
反強磁性層の膜厚を薄くしても大きい交換結合磁界(H
ex)を得ることが可能であり、スピンバルブ型薄膜素
子の膜構成の中で最も厚い膜厚を有していた反強磁性層
を薄くできることで、前記スピンバルブ型薄膜素子全体
の総合膜厚を薄くできる。反強磁性層を薄く形成できる
ことで、前記スピンバルブ型薄膜素子の上下に形成され
るギャップ層の膜厚を、絶縁性を充分に保つことができ
る程度に厚くしても、スピンバルブ型薄膜素子の下側に
形成されたギャップ層から、スピンバルブ型薄膜素子の
上側に形成されたギャップ層までの距離、すなわちギャ
ップ長を短くでき、狭ギャップ化に対応することが可能
となっている。
非磁性中間層を介して第1の固定磁性層と第2の固定磁
性層の2層に分断した場合、前記第1の固定磁性層と第
2の固定磁性層の膜厚を同じ値で形成すると、交換結合
磁界(Hex)、及びΔMR(抵抗変化率)が極端に低
下することが実験によりわかった。第1の固定磁性層と
第2の固定磁性層との膜厚を同じ膜厚で形成すると、前
記第1の固定磁性層と第2の固定磁性層との磁化状態が
反平行(フェリ状態)になり難くなるためであると推測
され、前記第1の固定磁性層と第2の固定磁性層の磁化
状態が反平行状態でないために、フリー磁性層の変動磁
化との相対角度を適正に制御できなくなってしまう。
と第2の固定磁性層とを同じ膜厚で形成せず、異なる膜
厚で形成することによって、大きい交換結合磁界が得ら
れ、同時にΔMRを従来と同程度まで高くすることが可
能となっている。なお第1の固定磁性層と第2の固定磁
性層の膜厚比については、後でグラフを参照して詳述す
る。
磁性中間層を介して第1の固定磁性層と第2の固定磁性
層の2層に分断し、さらに反強磁性層としてPtMn合
金など、前記第1の固定磁性層との界面で大きい交換結
合磁界(交換異方性磁界)を発揮する反強磁性材料を使
用することによって、スピンバルブ型薄膜素子全体の交
換結合磁界(Hex)を大きくすることができ、第1の
固定磁性層と、第2の固定磁性層の磁化を熱的に安定し
た反平行状態(フェリ状態)に保つことが可能となって
いる。
磁性層と第2の固定磁性層の膜厚比、非磁性中間層の材
質、及びその膜厚、または反強磁性層の膜厚などを適正
化することによって、よりスピンバルブ型薄膜素子全体
の交換結合磁界を大きくでき、且つ高いΔMRを得られ
るようにしている。
子は、反強磁性層、固定磁性層、非磁性導電層、及びフ
リー磁性層が1層ずつ形成された、いわゆるシングルス
ピンバルブ型薄膜素子であってもよいし、あるいは、フ
リー磁性層を中心にしてその上下に非磁性導電層、固定
磁性層、及び反強磁性層が形成された、いわゆるデュア
ルスピンバルブ型薄膜素子であってもよい。
磁性層と同様に、非磁性中間層を介して2層に分断され
て形成されていてもよい。非磁性中間層を介して形成さ
れた第1のフリー磁性層と第2のフリー磁性層の磁化
は、前記第1のフリー磁性層と第2のフリー磁性層間に
発生する交換結合磁界(RKKY相互作用)によって、
反平行に磁化され、しかも固定磁性層(第1の固定磁性
層及び第2の固定磁性層)の磁化に対して交叉する方向
に揃えられている。
固定磁性層)の場合は、反強磁性層との交換結合磁界
(交換異方性磁界)によってある一定方向に磁化が固定
された状態となっているが、フリー磁性層の磁化は、外
部磁界によって自由に変動するようになっており、フリ
ー磁性層の磁化の変動が、前記固定磁性層の固定磁化の
方向との関係により電気抵抗が変化し、外部磁界の信号
を検出できるようになっている。
れた第1のフリー磁性層の膜厚と第2のフリー磁性層の
膜厚との比、及び前記非磁性中間層の膜厚を適正化する
ことによって、第1の固定磁性層と第2の固定磁性層と
の反平行状態(フェリ状態)を熱的にも安定した状態に
保ち、従来と同程度の高いΔMRを得られるようにして
いる。なお前記第1のフリー磁性層及び第2のフリー磁
性層の膜厚比、及び非磁性中間層の膜厚値については、
後でグラフを参照しながら詳述する。
形態のスピンバルブ型薄膜素子を模式図的に示した横断
面図、図2は図1のスピンバルブ型薄膜素子を記録媒体
との対向面側から見た断面図である。このスピンバルブ
型薄膜素子の上下には、ギャップ層を介してシールド層
が形成されており、前記スピンバルブ型薄膜素子、ギャ
ップ層、及びシールド層で、再生用の薄膜磁気ヘッド
(MRヘッド)が構成されている。なお前記再生用の薄
膜磁気ヘッドの上に、記録用のインダクティブヘッドが
積層されていてもよい。
置に設けられた浮上式スライダのトレーリング側端部な
どに設けられて、ハードディスクなどの記録磁界を検出
するものである。なお、ハードディスクなどの磁気記録
媒体の移動方向は図示Z方向であり、磁気記録媒体から
の洩れ磁界の方向はY方向である。
は、反強磁性層、固定磁性層、非磁性導電層、及びフリ
ー磁性層が一層ずつ形成された、いわゆるシングルスピ
ンバルブ型薄膜素子であり、最も下に形成された層は、
Taなどの非磁性材料で形成された下地層10である。
図1,2では前記下地層10の上に、反強磁性層11が
形成され、前記反強磁性層11の上に、第1の固定磁性
層12が形成されている。そして図1に示すように前記
第1の固定磁性層12の上には非磁性中間層13が形成
され、さらに前記非磁性中間層13の上に第2の固定磁
性層14が形成されている。前記第1の固定磁性層12
及び第2の固定磁性層14は、例えばCo膜、NiFe
合金、CoNiFe合金、CoFe合金などで形成され
ている。
PtMn合金で形成されていることが好ましい。PtM
n合金は、従来から反強磁性層として使用されているN
iMn合金やFeMn合金などに比べて耐食性に優れ、
しかもブロッキング温度が高く、交換結合磁界(交換異
方性磁界)も大きい。また本発明では、前記PtMn合
金に代えて、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,R
h,Ruのいずれか1種または2種以上の元素である)
合金、あるいは、Pt―Mn―X′(ただしX′は、P
d,Ir,Rh,Ru,Au,Agのいずれか1種また
は2種以上の元素である)合金で形成されていてもよ
い。
及び第2の固定磁性層14に示されている矢印は、それ
ぞれの磁気モーメントの大きさ及びその方向を表してお
り、前記磁気モーメントの大きさは、飽和磁化(Ms)
と膜厚(t)とをかけた値で決定される。図1に示す第
1の固定磁性層12と第2の固定磁性層14とは同じ材
質、例えばCo膜で形成され、しかも第2の固定磁性層
14の膜厚tP2が、第1の固定磁性層12の膜厚tP1よ
りも大きく形成されているために、第2の固定磁性層1
4の方が第1の固定磁性層12に比べ磁気モーメントが
大きくなっている。なお、本発明では、第1の固定磁性
層12及び第2の固定磁性層14が異なる磁気モーメン
トを有することを必要としており、従って、第1の固定
磁性層12の膜厚t P1が第2の固定磁性層14の膜厚t
P2より厚く形成されていてもよい。
図示Y方向、すなわち記録媒体から離れる方向(ハイト
方向)に磁化されており、非磁性中間層13を介して対
向する第2の固定磁性層14の磁化は前記第1の固定磁
性層12の磁化方向と反平行に磁化されている。第1の
固定磁性層12は、反強磁性層11に接して形成され、
磁場中アニール(熱処理)を施すことにより、前記第1
の固定磁性層12と反強磁性層11との界面にて交換結
合磁界(交換異方性磁界)が発生し、例えば図1に示す
ように、前記第1の固定磁性層12の磁化が、図示Y方
向に固定される。前記第1の固定磁性層12の磁化が、
図示Y方向に固定されると、非磁性中間層12を介して
対向する第2の固定磁性層14の磁化は、第1の固定磁
性層12の磁化と反平行の状態で固定される。
膜厚tP1と、第2の固定磁性層14の膜厚比tP2を適正
化しており、(第1の固定磁性層の膜厚tP1)/(第2
の固定磁性層の膜厚tP2)は、0.33〜0.95、あ
るいは1.05〜4の範囲内であることが好ましい。こ
の範囲内であれば交換結合磁界を大きくできるが、上記
範囲内においても第1の固定磁性層12と第2の固定磁
性層14との膜厚自体が厚くなると、交換結合磁界は低
下する傾向にあるため、本発明では、第1の固定磁性層
12と第2の固定磁性層14の膜厚を適正化している。
tP1及び第2の固定磁性層14の膜厚tP2が10〜70
オングストロームの範囲内で、且つ第1の固定磁性層1
2の膜厚tP1から第2の固定磁性層14の膜厚tP2を引
いた絶対値が2オングストローム以上であることが好ま
しい。
節すれば、少なくとも500(Oe)以上の交換結合磁
界(Hex)を得ることが可能である。ここで交換結合
磁界とは、最大ΔMR(抵抗変化率)の半分のΔMRと
なるときの外部磁界の大きさのことであり、前記交換結
合磁界(Hex)は、反強磁性層11と第1の固定磁性
層12との界面で発生する交換結合磁界(交換異方性磁
界)や第1の固定磁性層12と第2の固定磁性層14と
の間で発生する交換結合磁界(RKKY相互作用)など
のすべての磁界を含めた総合的なものである。
の膜厚tP1)/(第2の固定磁性層の膜厚tP2)は、
0.53〜0.95、あるいは1.05〜1.8の範囲
内であることがより好ましい。また上記範囲内であっ
て、第1の固定磁性層12の膜厚tP1と第2の固定磁性
層14の膜厚tP2は共に10〜50オングストロームの
範囲内であり、しかも第1の固定磁性層12の膜厚tP1
から第2の固定磁性層14の膜厚tP2を引いた絶対値は
2オングストローム以上であることが好ましい。上記範
囲内で、第1の固定磁性層12と第2の固定磁性層14
の膜厚比、及び第1の固定磁性層12の膜厚tP1と第2
の固定磁性層14の膜厚tP2を適正に調節すれば、少な
くとも1000(Oe)以上の交換結合磁界を得ること
が可能である。また上記範囲内の、膜厚比及び膜厚であ
れば交換結合磁界(Hex)を大きくできると同時に、
ΔMR(抵抗変化率)も従来と同程度に高くすることが
可能である。
性層12の磁化と第2の固定磁性層14の磁化を安定し
て反平行状態に保つことが可能であり、特に本発明では
反強磁性層11としてブロッキング温度が高く、しかも
第1の固定磁性層12との界面で大きい交換結合磁界
(交換異方性磁界)を発生させるPtMn合金を使用す
ることで、前記第1の固定磁性層12及び第2の固定磁
性層14の磁化状態を熱的にも安定して保つことができ
る。
固定磁性層14とが同じ材質で形成され、しかも前記第
1の固定磁性層12と第2の固定磁性層14との膜厚が
同じ値であると、交換結合磁界(Hex)及びΔMRは
極端に低下することが実験により確認されている。これ
は、第1の固定磁性層12のMs・tP1(磁気モーメン
ト)と、第2の固定磁性層14のMs・tP2(磁気モー
メント)とが同じ値である場合、前記第1の固定磁性層
12の磁化と第2の固定磁性層14の磁化とが反平行状
態にならず、前記磁化の方向分散量(様々な方向に向い
ている磁気モーメント量)が多くなることにより、後述
するフリー磁性層16の磁化との相対角度を適正に制御
できないからである。
第1の固定磁性層12と、第2の固定磁性層14のMs
・tを異なる値にすること、すなわち第1の固定磁性層
12と第2の固定磁性層14とが同じ材質で形成される
場合には、前記第1の固定磁性層12と第2の固定磁性
層14を異なる膜厚で形成する必要がある。
磁性層12と、第2の固定磁性層14の膜厚比を適正化
しているが、その膜厚比の中で、前記第1の固定磁性層
12の膜厚tP1と第2の固定磁性層14の膜厚tP2とが
ほぼ同じ値になる場合、具体的には、0.95〜1.0
5の範囲内の膜厚比を適正な範囲から除外している。
PtMn合金など、成膜後に磁場中アニール(熱処理)
を施すことにより、第1の固定磁性層12との界面で交
換結合磁界(交換異方性磁界)を発生させる反強磁性材
料を使用した場合には、第1の固定磁性層12と第2の
固定磁性層14のMs・tを異なる値に設定しても、熱
処理中の印加磁場の方向、及びその大きさを適正に制御
しないと、第1の固定磁性層12の磁化及び第2の固定
磁性層14の磁化に方向分散量が多くなったり、あるい
は前記磁化を向けたい方向に適正に制御できない。
の固定磁性層のMs・tP2よりも大きい場合に、熱処理
中の磁場の大きさ及びその方向を変えることによって、
第1の固定磁性層12及び第2の固定磁性層14の磁化
がどの方向に向くかを表している。
を図示左側に、100〜1k(Oe)与えている。この
場合、第1の固定磁性層12のMs・tP1の方が、第2
の固定磁性層14のMs・tP2よりも大きいために、支
配的な第1の固定磁性層12の磁化が、印加磁場方向に
ならって図示左方向に向き、第2の固定磁性層14の磁
化は、第1の固定磁性層12との交換結合磁界(RKK
Y相互作用)によって、反平行状態になろうとする。
(Oe)の磁場を印加すると、支配的な第1の固定磁性
層12の磁化が、印加磁場方向にならって右方向に向
き、第2の固定磁性層14の磁化は、第1の固定磁性層
12の磁化に対して反平行になる。
以上の磁場を与えると、まず支配的な第1の固定磁性層
12の磁化は、印加磁場方向にならって右方向に向く。
ところで、第1の固定磁性層12と第2の固定磁性層1
4との間に発生する交換結合磁界(RKKY相互作用)
は、1k(Oe)〜5k(Oe)程度であるので、5k
(Oe)以上の磁場が印加されると、第2の固定磁性層
14もその印加磁場方向、すなわち図示右方向に向く。
同様に、表1の(4)では左方向に5k(Oe)以上の
磁場を印加すると、第1の固定磁性層12及び第2の固
定磁性層14の磁化は共に、図示左方向に向く。
の固定磁性層のMs・tP2も小さい場合に、熱処理中の
印加磁場の大きさ及びその方向を変えることによって、
第1の固定磁性層12及び第2の固定磁性層14の磁化
がどの方向に向くかを表している。
1k(Oe)の磁場を与えると、Ms・tP2の大きい第
2の固定磁性層14の磁化が支配的になり、前記第2の
固定磁性層14の磁化が、印加磁場方向にならって、図
示左方向に向く。第1の固定磁性層12と第2の固定磁
性層14の間の交換結合(RKKY相互作用)によっ
て、前記第1の固定磁性層12の磁化は、前記第2の固
定磁性層14の磁化に対して反平行になる。同様に、表
2の(2)では、図示右方向に100〜1k(Oe)の
磁場を与えると、支配的な第2の固定磁性層14の磁化
が図示右方向に向き、第1の固定磁性層12の磁化は図
示左方向に向く。
e)以上の磁場を与えると、第1の固定磁性層12及び
第2の固定磁性層14の間の交換結合(RKKY相互作
用)以上の磁場が印加されることにより、前記第1の固
定磁性層12及び第2の固定磁性層14の磁化が共に、
図示右方向に向く。表2の(4)では、図示左方向に5
k(Oe)以上の磁場を印加されると、第1の固定磁性
層12及び第2の固定磁性層14の磁化が共に図示左方
向を向く。ここで、例えば第1の固定磁性層12の磁化
を図示右方向に向けようとする場合に、適正な熱処理中
の磁場方向及びその大きさは、表1における(2)
(3)及び表2における(1)(3)である。
大きい第1の固定磁性層12の磁化は、熱処理中におけ
る右方向の印加磁場の影響を受けて、右方向に向き、こ
のとき、熱処理によって発生する反強磁性層11との界
面での交換結合磁界(交換異方性磁界)によって、前記
第1の固定磁性層12の磁化が右方向に固定される。表
1(3)では、5k(Oe)以上の磁場を取り除くと、
第2の固定磁性層14は、第1の固定磁性層12との間
に発生する交換結合磁界(RKKY相互作用)によっ
て、前記第2の固定磁性層14の磁化は反転し、左方向
に向く。
けられた第1の固定磁性層12の磁化は、反強磁性層1
1との界面での交換結合磁界(交換異方性磁界)によっ
て、右方向に固定される。表2(3)では、5k(O
e)以上の磁場を取り除くと、第2の固定磁性層14
は、第1の固定磁性層12との間に発生する交換結合磁
界(RKKY相互作用)によって、前記第2の固定磁性
層14の磁化は反転し、左方向に固定される。
理中に印加される磁場の大きさは、100〜1k(O
e)、あるいは5k(Oe)以上であり、1k(Oe)
〜5k(Oe)の範囲の磁場の大きさを適正な範囲から
外している。これは次のような理由による。磁場を与え
ることによって、Ms・tの大きい固定磁性層の磁化
は、その磁場方向に向こうとする。ところが、熱処理中
の磁場の大きさが1k(Oe)〜5k(Oe)の間であ
ると、Ms・tの小さい固定磁性層の磁化までが、磁場
の影響を強く受けて、その磁場方向に向こうとする。こ
のため、固定磁性層間に発生する交換結合磁界(RKK
Y相互作用)によって反平行になろうとする2層の固定
磁性層の磁化が、強い磁場の影響を受けて反平行にはな
らず、前記固定磁性層の磁化が、様々な方向に向こうと
する、いわゆる磁化分散量が多くなり、2層の固定磁性
層の磁化を適正に反平行状態に磁化することができなく
なる。従って、本発明では1k(Oe)〜5k(Oe)
の磁場の大きさを、適正な範囲から外している。なお熱
処理中の磁場の大きさを100(Oe)以上としたの
は、この程度の磁場を与えないと、Ms・tの大きい固
定磁性層の磁化を、その印加磁場方向に向けることがで
きないからである。
その方向の制御方法は、熱処理を必要とする反強磁性層
11を使用した場合であれば、どのような反強磁性材料
を使用した場合であっても適用でき、例えば従来から反
強磁性層11として用いられているNiMn合金などを
使用した場合でも適用可能である。
層12と第2の固定磁性層14との膜厚比を適正な範囲
内に収めることによって、交換結合磁界(Hex)を大
きくでき、第1の固定磁性層12と第2の固定磁性層1
4の磁化を、熱的にも安定した反平行状態(フェリ状
態)に保つことができ、しかもΔMR(抵抗変化率)を
従来と同程度に確保することが可能である。
向を適正に制御することによって、第1の固定磁性層1
2及び第2の固定磁性層14の磁化方向を、得たい方向
に制御することが可能になる。
(磁気的膜厚)は、飽和磁化Msと膜厚tとの積によっ
て求めることができ、例えば、バルク固体のNiFeで
あると、飽和磁化Msは、約1.0T(テスラ)であ
り、バルク固体のCoであると、飽和磁化Msは約1.
7Tであることが知られている。従って、前記NiFe
膜の膜厚が30オングストロームである場合、前記Ni
Fe膜の磁気的膜厚は、30オングストローム・テスラ
となる。外部から磁界を加えたときの強磁性膜の静磁エ
ネルギーは、磁気的膜厚と外部磁界との掛け合わせに比
例するため、磁気的膜厚の大きい強磁性膜と磁気的膜厚
の小さい強磁性膜が非磁性中間層を介してRKKY相互
作用によりフェリ状態になっている場合、磁気的膜厚の
大きい方の強磁性膜が、外部磁界の方向を向きやすくな
るわけである。
ウム(Ru)、銅(Cu)等の非磁性膜と積層接触した
強磁性膜の場合や、PtMn膜などの反強磁性層と積層
接触した強磁性膜の場合、非磁性膜原子や反強磁性膜原
子と強磁性膜原子(Ni,Fe,Co)が直接触れ合う
ため、非磁性膜や反強磁性膜との界面付近の強磁性膜の
飽和磁化Msが、バルク固体の飽和磁化Msよりも小さ
くなることが知られている。更に、強磁性膜と非磁性
膜、反強磁性層の積層多層膜に熱処理が施されると、前
記熱処理によって界面拡散が進行し、強磁性膜の飽和磁
化Msに膜厚方向の分布が生じることが知られている。
すなわち、非磁性膜や反強磁性層に近い場所の飽和磁化
Msは小さく、非磁性膜や反強磁性膜との界面から離れ
るに従って飽和磁化Msがバルク固体の飽和磁化Msに
近づくという現象である。
膜の飽和磁化Msの減少は、非磁性膜の材料、反強磁性
層の材料、強磁性膜の材料や積層順序、熱処理温度等に
依存するため、正確には、それぞれの特定された条件に
おいて求めなければならないことになる。本発明におけ
る磁気的膜厚とは、非磁性膜や反強磁性層との熱拡散に
よって生じた飽和磁化Msの減少量も考慮して算出した
値である。
磁界を得るためには、熱処理によりPtMn膜と強磁性
膜との界面で拡散層を形成することが必要であるが、拡
散層の形成に伴う強磁性膜の飽和磁化Msの減少は、P
tMn膜と強磁性膜の積層順序に依存することになる。
フリー磁性層16よりも下側に形成されている場合にあ
っては、前記反強磁性層11と第1の固定磁性層12と
の界面に熱拡散層が発生しやすく、このため前記第1の
固定磁性層12の磁気的な膜厚は、実際の膜厚tP1に比
べて小さくなっている。しかし前記第1の固定磁性層1
2の磁気的な膜厚が小さくなりすぎると、第2の固定磁
性層14との磁気的膜厚(磁気モーメント)差が大きく
なりすぎ、前記第1の固定磁性層12に占める熱拡散層
の割合が増えることにより、交換結合磁界の低下につな
がるといった問題がある。
層12との界面で交換結合磁界を発生されるために熱処
理を必要とする反強磁性層11を使用し、第1の固定磁
性層12と第2の固定磁性層14の磁化状態をフェリ状
態にするためには、前記第1の固定磁性層12及び第2
の固定磁性層14の膜厚の適正化のみならず、前記第1
の固定磁性層12及び第2の固定磁性層14の磁気的膜
厚の適正化を行わないと、安定した磁化状態を保つこと
ができない。
第2の固定磁性層14の磁気的膜厚にある程度差がない
と、磁化状態はフェリ状態にはなりにくく、また第1の
固定磁性層12と第2の固定磁性層14の磁気的膜厚の
差が大きくなりすぎても、交換結合磁界の低下につなが
り好ましくない。そこで本発明では、第1の固定磁性層
12と第2の固定磁性層14の膜厚比と同じように、
(第1の固定磁性層12の磁気的膜厚)/(第2の固定
磁性層14の磁気的膜厚)は、0.33〜0.95、あ
るいは1.05〜4の範囲内とであることが好ましい。
また本発明では、第1の固定磁性層12の磁気的膜厚及
び第2の固定磁性層14の磁気的膜厚が10〜70(オ
ングストローム・テスラ)の範囲内で、且つ第1の固定
磁性層12の磁気的膜厚から第2の固定磁性層14の磁
気的膜厚を引いた絶対値が2(オングストローム・テス
ラ)以上であることが好ましい。
厚)/(第2の固定磁性層14の磁気的膜厚)が、0.
53〜0.95、あるいは1.05〜1.8の範囲内で
あることがより好ましい。また上記範囲内であって、第
1の固定磁性層12の磁気的膜厚と第2の固定磁性層1
4の磁気的膜厚は共に10〜50(オングストローム・
テスラ)の範囲内であり、しかも第1の固定磁性層12
の磁気的膜厚から第2の固定磁性層14の磁気的膜厚を
引いた絶対値は2(オングストローム・テスラ)以上で
あることが好ましい。
第2の固定磁性層14との間に介在する非磁性中間層1
3に関して説明する。本発明では、第1の固定磁性層1
2と第2の固定磁性層14との間に介在する非磁性中間
層13は、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち
1種あるいは2種以上の合金で形成されていることが好
ましい。
リー磁性層16よりも下側に形成されているか、あるい
は上側に形成されているかで、適正な前記非磁性中間層
13の膜厚値を変えている。図1に示すようにフリー磁
性層16よりも下側に反強磁性層11が形成されている
場合の前記非磁性中間層13の膜厚は、3.6〜9.6
オングストロームの範囲内で形成されることが好まし
い。この範囲内であれば、500(Oe)以上の交換結
合磁界(Hex)を得ることが可能である。また前記非
磁性中間層13の膜厚は、4〜9.4オングストローム
の範囲内で形成されると、1000(Oe)以上の交換
結合磁界を得ることができるのでより好ましい。
外の寸法で形成されると、交換結合磁界が極端に低下す
ることが実験により確認されている。すなわち、上記寸
法以外の寸法により前記非磁性中間層13が形成される
と、前記第1の固定磁性層12と第2の固定磁性層14
との磁化が反平行状態(フェリ状態)になりにくくな
り、前記磁化状態が不安定化するといった問題がある。
の上には、Cuなどで形成された非磁性導電層15が形
成され、さらに前記非磁性導電層15の上にフリー磁性
層16が形成されている。図1に示すようにフリー磁性
層16は、2層で形成されており、前記非磁性導電層1
5に接する側に形成された符号17の層はCo膜で形成
されている。またもう一方の層18は、NiFe合金
や、CoFe合金、あるいはCoNiFe合金などで形
成されている。なお非磁性導電層15に接する側にCo
膜の層17を形成する理由は、Cuで形成された前記非
磁性導電層15との界面での金属元素等の拡散を防止で
き、また、ΔMR(抵抗変化率)を大きくできるからで
ある。なお符号19はTaなどで形成された保護層であ
る。また図2に示すように、下地層10から保護層19
までの積層体の両側には、例えばCo―Pt合金やCo
―Cr―Pt合金などで形成されたハードバイアス層1
30及びCuやCrで形成された導電層131が形成さ
れており、前記ハードバイアス層のバイアス磁界の影響
を受けて、前記フリー磁性層16の磁化は、図示X方向
に磁化された状態となっている。
は、前記導電層からフリー磁性層16、非磁性導電層1
5、及び第2の固定磁性層14にセンス電流が与えられ
る。記録媒体から図1に示す図示Y方向に磁界が与えら
れると、フリー磁性層16の磁化は図示X方向からY方
向に変動し、このときの非磁性導電層15とフリー磁性
層16との界面、及び非磁性導電層15と第2の固定磁
性層14との界面でスピンに依存した伝導電子の散乱が
起こることにより、電気抵抗が変化し、記録媒体からの
洩れ磁界が検出される。
1の固定磁性層12と非磁性中間層13の界面などにも
流れる。前記第1の固定磁性層12はΔMRに直接関与
せず、前記第1の固定磁性層12は、ΔMRに関与する
第2の固定磁性層14を適正な方向に固定するための、
いわば補助的な役割を担った層となっている。このた
め、センス電流が、第1の固定磁性層12及び非磁性中
間層13に流れることは、シャントロス(電流ロス)に
なるが、このシャントロスの量は非常に少なく、本発明
では、従来とほぼ同程度のΔMRを得ることが可能とな
っている。
中間層13を介して第1の固定磁性層12と第2の固定
磁性層14の2層に分断することにより、反強磁性層1
1の膜厚を薄くしても、大きな交換結合磁界(He
x)、具体的には500(Oe)以上の交換結合磁界を
得られることが実験によりわかった。
反強磁性層11としてPtMn合金を使用した場合に、
少なくとも200オングストローム以上の膜厚を確保し
なければ、500(Oe)以上の交換結合磁界を得るこ
とができなかったが、本発明では、前記反強磁性層11
を少なくとも90オングストローム以上で形成すれば、
500(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能で
ある。また前記膜厚を100オングストローム以上にす
れば、1000(Oe)以上の交換結合磁界を得ること
が可能である。なお前記反強磁性層11の膜厚の数値範
囲は、シングルスピンバルブ型薄膜素子の場合であり、
反強磁性層が、フリー磁性層の上下に形成される、いわ
ゆるデュアルスピンバルブ型薄膜素子の場合には、若干
適正な膜厚範囲が異なる。デュアルスピンバルブ型薄膜
素子の場合については後述する。このように本発明によ
れば、スピンバルブ型薄膜素子の中で最も大きな膜厚を
有していた反強磁性層11を従来に比べて半分以下の膜
厚で形成できることで、スピンバルブ型薄膜素子全体の
膜厚を薄くすることが可能である。
れた読み取りヘッドの構造を記録媒体との対向面側から
見た断面図である。符号120は、例えばNiFe合金
などで形成された下部シールド層であり、この下部シー
ルド層120の上に下部ギャップ層121が形成されて
いる。また前記下部ギャップ層121の上は、本発明に
おけるスピンバルブ型薄膜素子122が形成されてお
り、前記スピンバルブ型薄膜素子122の両側にハード
バイアス層123、及び導電層124が形成されてい
る。さらに前記導電層124の上には、上部ギャップ層
125が形成され、前記上部ギャップ層125の上に
は、NiFe合金などで形成された上部シールド層12
6が形成されている。
プ層125は、例えばSiO2やAl2O3(アルミナ)
などの絶縁材料によって形成されている。図13に示す
ように、下部ギャップ層121から上部ギャップ層12
5までの長さがギャップ長Glであり、このギャップ長
Glが小さいほど高記録密度化に対応できるものとなっ
ている。
1の膜厚を薄くできることで、スピンバルブ型薄膜素子
122全体の厚さを薄くできるため、前記ギャップ長G
lを短くすることが可能である。また下部ギャップ層1
21及び上部ギャップ層125の膜厚を比較的厚くして
も、ギャップ長Glを従来に比べて小さくすることがで
き、また下部ギャップ層121及び上部ギャップ層12
5を厚く形成することで、絶縁性を充分に確保すること
ができる。
ず下から下地層10、反強磁性層11、第1の固定磁性
層12、非磁性中間層13、第2の固定磁性層14、非
磁性導電層15、フリー磁性層16、及び保護層19を
成膜し、成膜後の工程において、磁場中アニール(熱処
理)を施す。
第1の固定磁性層12の膜厚tP1が、第2の固定磁性層
14の膜厚tP2に比べ薄く形成されており、第1の固定
磁性層12の磁気モーメント(Ms・tP1)の方が、第
2の固定磁性層14の磁気モーメント(Ms・tP2)に
比べて小さく設定されている。この場合、前記第1の固
定磁性層14の磁化を向けたい方向と逆の方向に、10
0〜1000(Oe)の磁場を印加するか、あるいは磁
化を向けたい方向に5k(Oe)以上の磁場を印加す
る。
の磁化を図示Y方向に固定したい場合には、前述した表
2を参照することにより、図示Y方向と逆の方向に10
0〜1k(Oe)(表2(1)参照)の磁場を印加する
か、あるいはY方向(表2(3)参照)に5k(Oe)
以上の磁場を印加すればよいことがわかる。
の磁場を与えることで、磁気モーメント(Ms・tP2)
が大きい第2の固定磁性層14の磁化がY方向と逆の方
向に磁化され、前記第2の固定磁性層との交換結合磁界
(RKKY相互作用)によって反平行に磁化されようと
する第1の固定磁性層12の磁化が図示Y方向に向き、
前記反強磁性層11との界面に発生する交換結合磁界
(交換異方性磁界)によって、前記第1の固定磁性層1
2の磁化が図示Y方向に固定される。第1の固定磁性層
12の磁化が図示Y方向に固定されることにより、第2
の固定磁性層14の磁化が、第1の固定磁性層12の磁
化と反平行に固定される。
磁場を与えると、第1の固定磁性層12及び第2の固定
磁性層14の磁化が共に図示Y方向に磁化され、第1の
固定磁性層12の磁化が、反強磁性層11との界面に発
生する交換結合磁界(交換異方性磁界)によって図示Y
方向に固定される。5k(Oe)以上の印加磁場を取り
去ると、第2の固定磁性層14の磁化は、第1の固定磁
性層12との交換結合磁界(RKKY相互作用)によっ
て反転し、図示Y方向と反対方向に固定される。あるい
は、第1の固定磁性層12の磁気モーメントが、第2の
固定磁性層14の磁気モーメントよりも大きい場合に
は、前記第1の固定磁性層12の磁化を向けたい方向
に、100〜1000(Oe)または5k(Oe)以上
の磁場を印加する。
は、再生用ヘッド(薄膜磁気ヘッド)を構成する最も重
要な箇所であり、まず、磁性材料製の下部シールド層上
にギャップ層を形成した後、前記スピンバルブ型薄膜素
子を成膜する。その後、前記スピンバルブ型薄膜素子の
上にギャップ層を介して上部シールド層を形成すると、
再生用ヘッド(MRヘッド)が完成する。なお前記再生
用ヘッド上に、磁性材料製のコアとコイルとを有する記
録用のインダクティブヘッドを積層してもよい。この場
合、前記上部シールド層を、インダクティブヘッドの下
部コア層として兼用することが好ましい。なお、図3以
降のスピンバルブ型薄膜素子は、図1に示すスピンバル
ブ型薄膜素子と同様に、その上下にシールド層が形成さ
れている。
バルブ型薄膜素子の構造を模式図的に示した横断面図、
図4は、図3に示すスピンバルブ型薄膜素子を記録媒体
との対向面側から見た断面図である。このスピンバルブ
型薄膜素子は、図1のスピンバルブ型薄膜素子の膜構成
を逆にして形成したシングルスピンバルブ型薄膜素子で
ある。すなわち、図3に示すスピンバルブ型薄膜素子で
は、下から下地層10、NiFe膜22、Co膜23
(NiFe膜22とCo膜23を合わせてフリー磁性層
21)、非磁性導電層24、第2の固定磁性層25、非
磁性中間層26、第1の固定磁性層27、反強磁性層2
8、及び保護層29の順で積層されている。
で形成されていることが好ましく、あるいはPtMn合
金に代えて、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,R
h,Ruのいずれか1種または2種以上の元素である)
合金、あるいは、Pt―Mn―X′(ただしX′は、P
d,Ir,Rh,Ru,Au,Agのいずれか1種また
は2種以上の元素である)合金で形成されていてもよ
い。
前記第1の固定磁性層27の膜厚t P1と、第2の固定磁
性層25の膜厚比tP2は、(第1の固定磁性層の膜厚t
P1)/(第2の固定磁性層の膜厚tP2)は、0.33〜
0.95、あるいは1.05〜4の範囲内であることが
好ましく、より好ましくは、0.53〜0.95、ある
いは1.05〜1.8の範囲内である。しかも、第1の
固定磁性層27の膜厚tP1及び第2の固定磁性層25の
膜厚tP2が10〜70オングストロームの範囲内で、且
つ第1の固定磁性層27の膜厚tP1から第2の固定磁性
層25の膜厚t P2を引いた絶対値が2オングストローム
以上であることが好ましい。さらに好ましくは、第1の
固定磁性層27の膜厚tP1及び第2の固定磁性層25の
膜厚tP2が10〜50オングストロームの範囲内で、且
つ第1の固定磁性層27の膜厚t P1から第2の固定磁性
層25の膜厚tP2を引いた絶対値が2オングストローム
以上である。
第2の固定磁性層25の磁気的膜厚にある程度差がない
と、磁化状態はフェリ状態にはなりにくく、また第1の
固定磁性層27と第2の固定磁性層25の磁気的膜厚の
差が大きくなりすぎても、交換結合磁界の低下につなが
り好ましくない。そこで本発明では、第1の固定磁性層
27と第2の固定磁性層25の膜厚比と同じように、
(第1の固定磁性層27の磁気的膜厚Ms・tP1)/
(第2の固定磁性層25の磁気的膜厚Ms・tP2)は、
0.33〜0.95、あるいは1.05〜4の範囲内と
であることが好ましい。また本発明では、第1の固定磁
性層27の磁気的膜厚Ms・tP1及び第2の固定磁性層
25の磁気的膜厚Ms・tP2が10〜70(オングスト
ローム・テスラ)の範囲内で、且つ第1の固定磁性層2
7の磁気的膜厚Ms・tP1から第2の固定磁性層25の
磁気的膜厚Ms・tP2を引いた絶対値が2(オングスト
ローム・テスラ)以上であることが好ましい。
Ms・tP1)/(第2の固定磁性層25の磁気的膜厚M
s・tP2)が、0.53〜0.95、あるいは1.05
〜1.8の範囲内であることがより好ましい。また上記
範囲内であって、第1の固定磁性層27の磁気的膜厚M
s・tP1と第2の固定磁性層25の磁気的膜厚Ms・t
P2は共に10〜50(オングストローム・テスラ)の範
囲内であり、しかも第1の固定磁性層27の磁気的膜厚
Ms・tP1から第2の固定磁性層25の磁気的膜厚Ms
・tP2を引いた絶対値は2(オングストローム・テス
ラ)以上であることが好ましい。
2の固定磁性層25との間に介在する非磁性中間層26
は、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種あ
るいは2種以上の合金で形成されていることが好まし
い。本発明では図3に示すように、フリー磁性層21よ
りも上側に反強磁性層28が形成されている場合、前記
非磁性中間層26の膜厚は、2.5〜6.4オングスト
ローム、あるいは6.6〜10.7オングストロームの
範囲内であることが好ましい。この範囲内であると、少
なくとも500(Oe)以上の交換結合磁界(Hex)
を得ることができる。
膜厚は、2.8〜6.2オングストローム、あるいは
6.8〜10.3オングストロームの範囲内であること
がより好ましい。この範囲内であると、少なくとも10
00(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能であ
る。また、前記反強磁性層28を少なくとも90オング
ストローム以上で形成すれば、500(Oe)以上の交
換結合磁界を得ることが可能である。また前記膜厚を1
00オングストローム以上にすれば、1000(Oe)
以上の交換結合磁界を得ることが可能である。
第1の固定磁性層27の膜厚tP1は、第2の固定磁性層
25の膜厚tP2と異なる値で形成され、例えば前記第1
の固定磁性層27の膜厚tP1の方が、第2の固定磁性層
25の膜厚tP2よりも厚く形成されている。また前記第
1の固定磁性層27の磁化が、図示Y方向に磁化され、
前記第2の固定磁性層25の磁化は図示Y方向と逆の方
向に磁化されて、第1の固定磁性層27と第2の固定磁
性層25磁化はフェリ状態となっている。図3に示す第
1の固定磁性層27と第2の固定磁性層25の磁化方向
の制御方法について以下に説明する。
って成膜し、成膜後の工程において、磁場中アニール
(熱処理)を施す。第1の固定磁性層27のMs・tP1
(磁気モーメント)が、第2の固定磁性層25のMs・
tP2(磁気モーメント)よりも大きい場合には、前記第
1の固定磁性層27の磁化を向けたい方向に100〜1
000(Oe)または5k(Oe)の磁場を印加すれば
よい。図3に示すように、Ms・tP1の大きい第1の固
定磁性層27を図示Y方向に向けようとすると、前述し
た表1を参照することにより、図示Y方向に100〜1
k(Oe)(表1(2)参照)、あるいは図示Y方向に
5k(Oe)以上(表1(3)参照)の磁場を熱処理中
に印加する。
を与えることにより、Ms・tP1の大きい第1の固定磁
性層27の磁化は、図示Y方向に向き、第2の固定磁性
層25の磁化は反平行状態になろうとする。そして、前
記第1の固定磁性層27と反強磁性層28との界面に発
生する交換結合磁界(交換異方性磁界)によって、前記
第1の固定磁性層27の磁化は図示Y方向に固定され、
これにより、第2の固定磁性層25の磁化が図示Y方向
と反対の方向に固定されるのである。
磁場を与えると、第1の固定磁性層27と第2の固定磁
性層25間に発生する交換結合磁界(RKKY相互作
用)よりも大きな磁場が印加されることにより、第1の
固定磁性層27及び第2の固定磁性層25の磁化が共に
図示Y方向に磁化され、前記第1の固定磁性層27の磁
化は、反強磁性層28との界面に発生する交換結合磁界
(交換異方性磁界)によって図示Y方向に固定される。
一方、第2の固定磁性層25の磁化は、印加磁場を取り
去ることにより、第1の固定磁性層27との交換結合磁
界(RKKY相互作用)によって反転し、前記第1の固
定磁性層27の磁化と反平行状態になって固定される。
メントが第2の固定磁性層25の磁気モーメントよりも
小さい場合には、第1の固定磁性層27の磁化を向けた
い方向と逆の方向に100〜1000(Oe)の磁場を
印加し、または磁化を向けたい方向に5k(Oe)以上
の磁場を印加する。
護層29までの積層体の両側には、ハードバイアス層1
30と導電層131が形成されており、前記ハードバイ
アス層130が図示X方向に磁化されていることによっ
て、フリー磁性層21の磁化が図示X方向に揃えられて
いる。
バルブ型薄膜素子の構造を模式図的に示した横断面図、
図6は図5に示すスピンバルブ型薄膜素子を記録媒体と
の対向面側から見た断面図である。このスピンバルブ型
薄膜素子は、フリー磁性層を中心としてその上下に非磁
性導電層、固定磁性層、及び反強磁性層が1層ずつ形成
された、いわゆるデュアルスピンバルブ型薄膜素子であ
る。このデュアルスピンバルブ型薄膜素子では、フリー
磁性層/非磁性導電層/固定磁性層のこの3層の組合わ
せが2組存在するためシングルスピンバルブ型薄膜素子
に比べて大きなΔMRを期待でき、高密度記録化に対応
できるものとなっている。
から下地層30、反強磁性層31、第1の固定磁性層
(下)32、非磁性中間層(下)33、第2の固定磁性
層(下)34、非磁性導電層35、フリー磁性層36
(符号37,39はCo膜、符号38はNiFe合金
膜)、非磁性導電層40、第2の固定磁性層(上)4
1、非磁性中間層(上)42、第1の固定磁性層(上)
43、反強磁性層44、及び保護層45の順で積層され
ている。なお図6に示すように、下地層30から保護層
45までの積層体の両側には、ハードバイアス層130
と導電層131が形成されている。
磁性層31,44は、PtMn合金で形成されているこ
とが好ましく、あるいはPtMn合金に代えて、X―M
n(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ruのいずれか1
種または2種以上の元素である)合金、あるいは、Pt
―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,R
u,Au,Agのいずれか1種または2種以上の元素で
ある)合金で形成されていてもよい。
前記第1の固定磁性層(下)32の膜厚tP1と、第2の
固定磁性層(下)34の膜厚tP2との膜厚比、及び第1
の固定磁性層(上)43の膜厚tP1と第2の固定磁性層
41(上)の膜厚tP2との膜厚比(第1の固定磁性層の
膜厚tP1)/(第2の固定磁性層の膜厚tP2)は、0.
33〜0.95、あるいは1.05〜4の範囲内である
ことが好ましい。さらには、膜厚比が上記範囲内であ
り、第1の固定磁性層(下)32,(上)43の膜厚t
P1及び第2の固定磁性層(下)34,(上)41の膜厚
tP2が10〜70オングストロームの範囲内で、且つ第
1の固定磁性層32,43の膜厚tP1から第2の固定磁
性層34,41の膜厚tP2を引いた絶対値が2オングス
トローム以上であると、500(Oe)以上の交換結合
磁界を得ることが可能である。
厚tP1)/(第2の固定磁性層の膜厚tP2)は、0.5
3〜0.95、あるいは1.05〜1.8の範囲内であ
ることがより好ましく、さらには、第1の固定磁性層
(下)32,(上)43の膜厚tP1及び第2の固定磁性
層(下)34,(上)41の膜厚tP2が10〜50オン
グストロームの範囲内で、且つ第1の固定磁性層32,
43の膜厚tP1から第2の固定磁性層34,41の膜厚
tP2を引いた絶対値が2オングストローム以上であれ
ば、1000(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが
できる。
形成されている第1の固定磁性層(下)32の膜厚tP1
を、第2の固定磁性層(下)34の膜厚tP2よりも大き
くしても、前記第1の固定磁性層(下)32の膜厚tP1
と第2の固定磁性層(下)34の膜厚差が約6オングス
トローム以下であると、交換結合磁界が低下しやすい傾
向にあることが実験によって確認されている。この現象
は、第1の固定磁性層(下)32,(上)43との界面
にて交換結合磁界(交換異方性磁界)を発生させるため
に熱処理を必要とする例えばPtMn合金で形成された
反強磁性層31,44を使用した場合に見られる。
よりも下側に形成されている反強磁性層31と第1の固
定磁性層(下)32との熱拡散によって、前記第1の固
定磁性層(下)32の磁気的な膜厚が減少し、前記第1
の固定磁性層(下)32の磁気的な膜厚と、第2の固定
磁性層34の膜厚tP2とが、ほぼ同じ厚さになるからで
ある。このため本発明では、(第1の固定磁性層(上)
43の膜厚tP1/第2の固定磁性層(上)41の膜厚t
P2)よりも(第1の固定磁性層(下)32の膜厚tP1/
第2の固定磁性層(下)34の膜厚tP2)の方を大きく
することが好ましい。
ュアルスピンバルブ型薄膜素子に限らず、フリー磁性層
16よりも反強磁性層11が下側に形成されたシングル
スピンバルブ型薄膜素子(図1参照)にも同様に起こる
現象である。
32,(上)43の磁気的膜厚Ms・tP1と第2の固定
磁性層(下)34,(上)41の磁気的膜厚Ms・tP2
にある程度差がないと、磁化状態はフェリ状態にはなり
にくく、また第1の固定磁性層(下)32,(上)43
の磁気的膜厚Ms・tP1と第2の固定磁性層(下)3
4,(上)41の磁気的膜厚Ms・tP2の差が大きくな
りすぎても、交換結合磁界の低下につながり好ましくな
い。そこで本発明では、第1の固定磁性層(下)32,
(上)43の膜厚tP1と第2の固定磁性層(下)34,
(上)41の膜厚tP2の膜厚比と同じように、(第1の
固定磁性層(下)32,(上)43の磁気的膜厚Ms・
tP1)/(第2の固定磁性層(下)34,(上)41の
磁気的膜厚Ms・tP2)は、0.33〜0.95、ある
いは1.05〜4の範囲内とであることが好ましい。ま
た本発明では、第1の固定磁性層(下)32,(上)4
3の磁気的膜厚Ms・tP1及び第2の固定磁性層(下)
34,(上)41の磁気的膜厚Ms・tP2が10〜70
(オングストローム・テスラ)の範囲内で、且つ第1の
固定磁性層(下)32,(上)43の磁気的膜厚Ms・
tP1から第2の固定磁性層(下)34,(上)41の磁
気的膜厚Ms・tP2を引いた絶対値が2(オングストロ
ーム・テスラ)以上であることが好ましい。
(上)43の磁気的膜厚Ms・tP1)/(第2の固定磁
性層(下)34,(上)41の磁気的膜厚Ms・tP2)
が、0.53〜0.95、あるいは1.05〜1.8の
範囲内であることがより好ましい。また上記範囲内であ
って、第1の固定磁性層(下)32,(上)43の磁気
的膜厚Ms・tP1と第2の固定磁性層(下)34,
(上)41の磁気的膜厚Ms・tP2は共に10〜50
(オングストローム・テスラ)の範囲内であり、しかも
第1の固定磁性層(下)32,(上)43の磁気的膜厚
Ms・tP1から第2の固定磁性層(下)34,(上)4
1の磁気的膜厚Ms・tP2を引いた絶対値は2(オング
ストローム・テスラ)以上であることが好ましい。
2,(上)43と第2の固定磁性層(下)34,(上)
41との間に介在する非磁性中間層33,42は、R
u、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種あるいは
2種以上の合金で形成されていることが好ましい。図5
に示すようにフリー磁性層36よりも下側に形成された
前記非磁性中間層(下)33の膜厚は、3.6〜9.6
オングストロームの範囲内で形成されることが好まし
い。この範囲内であれば、500(Oe)以上の交換結
合磁界(Hex)を得ることが可能である。また前記非
磁性中間層(下)33の膜厚は、4〜9.4オングスト
ロームの範囲内で形成されると、1000(Oe)以上
の交換結合磁界を得ることができるのでより好ましい。
磁性層36よりも上側に形成された非磁性中間層(上)
42の膜厚は、2.5〜6.4オングストローム、ある
いは6.8〜10.7オングストロームの範囲内である
ことが好ましい。この範囲内であると、少なくとも50
0(Oe)以上の交換結合磁界(Hex)を得ることが
できる。また本発明では、前記非磁性中間層(上)42
の膜厚は、2.8〜6.2オングストローム、あるいは
6.8〜10.3オングストロームの範囲内であること
がより好ましい。この範囲内であると、少なくとも10
00(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能であ
る。
とも100オングストローム以上で形成すれば、500
(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能である。
また前記膜厚を110オングストローム以上にすれば、
1000(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能
である。従来では、前記反強磁性層31,44の膜厚は
約200オングストローム以上で形成されていたので、
本発明によれば、約半分の膜厚で前記反強磁性層31,
44を形成することが可能であり、特にデュアルスピン
バルブ型薄膜素子の場合には、反強磁性層31,44が
2層形成されるので、従来に比べてスピンバルブ型薄膜
素子全体の膜厚を、約200オングストローム以上薄く
できる。このように薄く形成されたスピンバルブ型薄膜
素子では、図13に示す下部ギャップ層121、及び上
部ギャップ層125を、絶縁性を充分に保つ程度に厚く
しても、ギャップ長Glを薄くでき、高密度記録化に対
応できるものとなっている。
43と第2の固定磁性層(下)34,(上)41との膜
厚比や膜厚、非磁性中間層(下)33,(上)42の膜
厚、及び反強磁性層31,44の膜厚を上述した範囲内
で適正に調節することにより、従来と同程度のΔMRを
保つことができ、具体的には約10%以上のΔMRを得
ることが可能である。
も下側に形成された第1の固定磁性層(下)32の膜厚
tP1は、非磁性中間層33を介して形成された第2の固
定磁性層(下)34の膜厚tP2に比べて薄く形成されて
いる。一方、フリー磁性層36よりも上側に形成されて
いる第1の固定磁性層(上)43の膜厚tP1は、非磁性
中間層42を介して形成された第2の固定磁性層41
(上)の膜厚tP2に比べ厚く形成されている。そして、
第1の固定磁性層(下)32,(上)43の磁化は共に
図示Y方向と反対方向に磁化されており、第2の固定磁
性層(下)34,(上)41の磁化は図示Y方向に磁化
された状態になっている。図1及び図3に示すシングル
スピンバルブ型薄膜素子の場合にあっては、第1の固定
磁性層のMs・tP1と第2の固定磁性層のMs・tP2が
異なるように膜厚などを調節し、第1の固定磁性層の磁
化の向きは、図示Y方向あるいは図示Y方向と反対方向
のどちらでもよい。
型薄膜素子にあっては、第1の固定磁性層(下)32,
(上)43の磁化が共に同じ方向に向くようにする必要
性があり、そのために、本発明では、第1の固定磁性層
(下)32,(上)43の磁気モーメントMs・t
P1と、第2の固定磁性層(下)34,(上)41の磁気
モーメントMs・tP2との調整、及び熱処理中に印加す
る磁場の方向及びその大きさを適正に調節している。こ
こで、第1の固定磁性層(下)32,(上)43の磁化
を共に同じ方向に向けておくのは、前記第1の固定磁性
層(下)32,(上)43の磁化と反平行になる第2の
固定磁性層(下)34,(上)41の磁化を共に同じ方
向に向けておくためであり、その理由について以下に説
明する。
のΔMRは、固定磁性層の固定磁化とフリー磁性層の変
動磁化との関係によって得られるものであるが、本発明
のように固定磁性層が第1の固定磁性層と第2の固定磁
性層の2層に分断された場合にあっては、前記ΔMRに
直接関与する固定磁性層の層は第2の固定磁性層であ
り、第1の固定磁性層は、前記第2の固定磁性層の磁化
を、一定方向に固定しておくためのいわば補助的な役割
を担っている。
4,(上)41の磁化が互いに反対方向に固定されてい
るとすると、例えば第2の固定磁性層(上)41の固定
磁化と、フリー磁性層36の変動磁化との関係では抵抗
が大きくなっても、第2の固定磁性層(下)34の固定
磁化と、フリー磁性層36の変動磁化との関係では抵抗
が非常に小さくなってしまい、結局、デュアルスピンバ
ルブ型薄膜素子におけるΔMRは、図1や図3に示すシ
ングルスピンバルブ型薄膜素子のΔMRよりも小さくな
ってしまう。
を非磁性中間層を介して2層に分断したデュアルスピン
バルブ型薄膜素子に限ったことではなく、従来のデュア
ルスピンバルブ型薄膜素子であっても同じことであり、
シングルスピンバルブ型薄膜素子に比べΔMRを大きく
でき、大きな出力を得ることができるデュアルスピンバ
ルブ型薄膜素子の特性を発揮させるには、フリー磁性層
の上下に形成される固定磁性層を共に同じ方向に固定し
ておく必要がある。
フリー磁性層36よりも下側に形成された固定磁性層
は、第2の固定磁性層(下)34のMs・tP2の方が、
第1の固定磁性層(下)32のMs・tP1に比べ大きく
なっており、Ms・tP2の大きい第2の固定磁性層
(下)34の磁化が図示Y方向に固定されている。ここ
で、第2の固定磁性層34のMs・tP2と、第1の固定
磁性層32のMs・tP1とを足し合わせた、いわゆる合
成磁気モーメントは、Ms・tP2の大きい第2の固定磁
性層34の磁気モーメントに支配され、図示Y方向に向
けられている。
された固定磁性層は、第1の固定磁性層(上)43のM
s・tP1の方が、第2の固定磁性層(上)41のMs・
tP2に比べて大きくなっており、Ms・tP1の大きい第
1の固定磁性層(上)43の磁化が図示Y方向と反対方
向に固定されている。第1の固定磁性層(上)43のM
s・tP1と、第2の固定磁性層(上)41のMs・tP2
とを足した、いわゆる合成磁気モーメントは、第1の固
定磁性層(上)43のMs・tP1に支配され、図示Y方
向と反対方向に向けられている。
ブ型薄膜素子では、フリー磁性層36の上下で、第1の
固定磁性層のMs・tP1と第2の固定磁性層のMs・t
P2を足して求めることができる合成磁気モーメントの方
向が反対方向になっているのである。このためフリー磁
性層36よりも下側で形成される図示Y方向に向けられ
た合成磁気モーメントと、前記フリー磁性層36よりも
上側で形成される図示Y方向と反対方向に向けられた合
成磁気モーメントとが、図示左周りの磁界を形成してい
る。従って、前記合成磁気モーメントによって形成され
る磁界により、第1の固定磁性層(下)32,(上)4
3の磁化と第2の固定磁性層(下)34,(上)41の
磁化とがさらに安定したフェリ状態を保つことが可能で
ある。
小さい非磁性導電層35,39を中心にして流れ、セン
ス電流114を流すことにより、右ネジの法則によって
センス電流磁界が形成されることになるが、センス電流
114を図5の方向に流すことにより、フリー磁性層3
6の下側に形成された第1の固定磁性層(下)32/非
磁性中間層(下)33/第2の固定磁性層(下)34の
場所にセンス電流が作るセンス電流磁界の方向を、前記
第1の固定磁性層(下)32/非磁性中間層(下)33
/第2の固定磁性層(下)34の合成磁気モーメントの
方向と一致させることができ、さらに、フリー磁性層3
6よりも上側に形成された第1の固定磁性層(上)43
/非磁性中間層(上)42/第2の固定磁性層(上)4
1の場所にセンス電流が作るセンス電流磁界を、前記第
1の固定磁性層(上)43/非磁性中間層(上)42/
第2の固定磁性層(上)41の合成磁気モーメントの方
向と一致させることができる。
トの方向を一致させることのメリットに関しては後で詳
述するが、簡単に言えば、前記固定磁性層の熱的安定性
を高めることができることと、大きなセンス電流を流せ
ることができるので、再生出力を向上できるという、非
常に大きいメリットがある。センス電流磁界と合成磁気
モーメントの方向に関するこれらの関係は、フリー磁性
層36の上下に形成される固定磁性層の合成磁気モーメ
ントが図示左周りの磁界を形成しているからである。
昇し、さらに今後、記録媒体の回転数や、センス電流の
増大などによって、環境温度がさらに上昇する傾向にあ
る。このように環境温度が上昇すると、交換結合磁界は
低下するが、本発明によれば、合成磁気モーメントで形
成される磁界と、センス電流磁界により、熱的にも安定
して第1の固定磁性層(下)32,(上)43の磁化と
第2の固定磁性層(下)34,(上)41の磁化とをフ
ェリ状態に保つことができる。
形成、及び、合成磁気モーメントによる磁界とセンス電
流磁界との方向関係は、本発明特有の構成であり、フリ
ー磁性層の上下に単層で形成され、しかも同じ方向に向
けられ固定磁化された固定磁性層を有する従来のデュア
ルスピンバルブ型薄膜素子では、得ることができないも
のとなっている。
の大きさについて以下に説明する。図5に示すスピンバ
ルブ型薄膜素子では、反強磁性層31,44にPtMn
合金など第1の固定磁性層(下)32,(上)43との
界面で交換結合磁界(交換異方性磁界)を発生させるた
めに、熱処理が必要な反強磁性材料を使用しているの
で、熱処理中に印加する磁場の方向及びその大きさを適
正に制御しないと、第1の固定磁性層(下)32,
(上)43と第2の固定磁性層(下)34,(上)41
との磁化の方向を図5に示すような方向に得ることはで
きない。
フリー磁性層36よりも下側に形成された第1の固定磁
性層(下)32のMs・tP1を、第2の固定磁性層
(下)34のMs・tP2よりも小さくし、且つ前記フリ
ー磁性層36よりも上側に形成された第1の固定磁性層
(上)43のMs・tP1を第2の固定磁性層(上)41
のMs・tP2よりも大きくする。図5に示すように、第
1の固定磁性層(下)32,(上)43を図示Y方向と
反対方向に向けたい場合には、前述した表1,2を参照
することにより、図示Y方向と逆方向に5k(Oe)以
上(表1(4)及び表2(4)参照)の磁界を与える必
要がある。
の磁界を印加することにより、第1の固定磁性層(下)
32,(上)43の磁化及び第2の固定磁性層(下)3
4,(上)41の磁化がすべて一旦図示Y方向と反対方
向に向く。前記第1の固定磁性層(下)32,(上)4
3は、反強磁性層31,44との界面での交換結合磁界
(交換異方性磁界)によって、図示Y方向と反対方向に
固定され、5k(Oe)以上の磁界を取り去ることによ
り、第2の固定磁性層(下)34,(上)41の磁化
は、第1の固定磁性層(下)32,(上)43との交換
結合磁界(RKKY相互作用)によって、図示Y方向に
反転し図示Y方向に固定されるのである。
方向に与えてもよい。この場合には、第1の固定磁性層
(下)32,(上)43の磁化と第2の固定磁性層
(下)34,(上)41の磁化が図5に示す磁化方向と
反対向きに磁化され、右回りの合成磁気モーメントによ
る磁界が形成される。
下側に形成された第1の固定磁性層(下)32のMs・
tP1を、第2の固定磁性層34のMs・tP2よりも大き
くし、且つ、前記フリー磁性層36よりも上側に形成さ
れた第1の固定磁性層43のMs・tP1を第2の固定磁
性層41のMs・tP2よりも小さくしてもよい。この場
合においても、第1の固定磁性層(下)32,(上)4
3の磁化を得たい方向、すなわち図示Y方向あるいは図
示Y方向と反対方向に5k(Oe)以上の磁界を印加す
ることによって、フリー磁性層36の上下に形成された
第2の固定磁性層(下)34,(上)41を同じ方向に
向けて固定でき、しかも図示右回りのあるいは左回りの
合成磁気モーメントによる磁界を形成できる。
性層36の上下に形成された第2の固定磁性層(下)3
4,(上)41の磁化を互いに同じ方向に向け、しかも
合成磁気モーメントによる磁界の形成、及び合成磁気モ
ーメントによる磁界とセンス電流磁界との方向関係の形
成を行うことはできない。
第2の固定磁性層(下)34,(上)41の磁化を互い
に同じ方向に向けることが可能であるが、フリー磁性層
36の上下に形成される合成磁気モーメントは互いに同
じ方向を向くため、前記合成磁気モーメントによる磁界
を形成することはできない。しかし、本発明のデュアル
スピンバルブ型薄膜素子であれば、以下の熱処理方法に
よっても、従来のデュアルスピンバルブ型薄膜素子と同
程度のΔMRを得ることができ、しかも従来のデュアル
スピンバルブ型薄膜素子に比べ、固定磁性層(第1の固
定磁性層と第2の固定磁性層)の磁化状態を熱的に安定
した状態に保つことが可能である。
た第1の固定磁性層(下)32のMs・tP1と前記フリ
ー磁性層36の上側に形成された第1の固定磁性層
(上)43のMs・tP1を共に、第2の固定磁性層
(下)34,(上)41のMs・tP2よりも大きくした
場合には、前記第1の固定磁性層(下)32,(上)4
3の磁化を向けたい方向に、100〜1k(Oe)、あ
るいは5k(Oe)以上の磁界を与えることにより、前
記第1の固定磁性層(下)32,(上)43を共に同じ
方向に向け、前記第1の固定磁性層(下)32,(上)
43との交換結合磁界(RKKY相互作用)によって、
前記第1の固定磁性層(下)32,(上)43の磁化と
反平行に磁化される第2の固定磁性層(下)34,
(上)41の磁化を共に同じ方向に向けて固定すること
ができる。
された第1の固定磁性層(下)32のMs・tP1と前記
フリー磁性層36の上側に形成された第1の固定磁性層
(上)43のMs・tP1を共に、第2の固定磁性層
(下)34,(上)41のMs・tP2よりも小さくした
場合には、前記第1の固定磁性層(下)32,(上)4
3の磁化を向けたい方向と反対方向に、100〜1k
(Oe)、あるいは、前記第1の固定磁性層(下)3
2,(上)43の磁化を向けたい方向に5k(Oe)以
上の磁界を与えることにより、第1の固定磁性層(下)
32,(上)43を共に同じ方向に向け、前記第1の固
定磁性層(下)32,(上)43との交換結合磁界(R
KKY相互作用)によって、前記第1の固定磁性層
(下)32,(上)43の磁化と反平行に磁化される第
2の固定磁性層(下)34,(上)41の磁化を共に同
じ方向に向けて固定することができる。
型薄膜素子によれば、固定磁性層を非磁性中間層を介し
て第1の固定磁性層と第2の固定磁性層との2層に分断
し、この2層の固定磁性層間に発生する交換結合磁界
(RKKY相互作用)によって前記2層の固定磁性層の
磁化を反平行状態(フェリ状態)にすることにより、従
来に比べて熱的にも安定した固定磁性層の磁化状態を保
つことができる。
キング温度が非常に高く、また第1の固定磁性層との界
面で大きい交換結合磁界(交換異方性磁界)を発生する
PtMn合金を使用することにより、第1の固定磁性層
と第2の固定磁性層との磁化状態を、より熱的安定性に
優れたものにできる。
の固定磁性層との膜厚比や、前記第1の固定磁性層と第
2の固定磁性層との間に介在する非磁性中間層の膜厚、
及び反強磁性層の膜厚を適正な範囲内で形成することに
よって、交換結合磁界(Hex)を大きくでき、従っ
て、前記第1の固定磁性層と第2の固定磁性層の固定磁
化の熱的安定性をより向上させることが可能である。
固定磁性層の膜厚tP2との膜厚比、さらには、前記第1
の固定磁性層、第2の固定磁性層、非磁性中間層、及び
反強磁性層の膜厚を適性な範囲内で形成することによ
り、従来とほぼ同程度のΔMRを得ることも可能であ
る。
Mn合金など、第1の固定磁性層との界面で交換結合磁
界(交換異方性磁界)を発生させるために熱処理を必要
とする反強磁性材料を使用した場合に、第1の固定磁性
層のMs・tP1と第2の固定磁性層のMs・tP2とを異
なる値で形成し、さらに熱処理中の印加磁場の大きさ及
びその方向を適正に調節することによって、前記第1の
固定磁性層(及び第2の固定磁性層)の磁化を得たい方
向に磁化させることが可能である。
膜素子にあっては、第1の固定磁性層(下)32,
(上)43のMs・tP1と第2の固定磁性層(下)3
4,(上)41のMs・tP2を適正に調節し、さらに熱
処理中の印加磁場の大きさ及びその方向を適正に調節す
ることによって、ΔMRに関与するフリー磁性層36の
上下に形成された2つの第2の固定磁性層(下)34,
(上)41の磁化を共に同じ方向に固定でき、且つフリ
ー磁性層36の上下に形成される合成磁気モーメントを
互いに反対方向に形成できることによって、前記合成磁
気モーメントによる磁界の形成、及び、前記合成磁気モ
ーメントによる磁界とセンス電流磁界との方向関係の形
成ができ、固定磁性層の磁化の熱的安定性をさらに向上
させることが可能である。
バルブ型薄膜素子の構造を模式図的に示した横断面図、
図8は、図7に示すスピンバルブ型薄膜素子を記録媒体
との対向面から見た場合の断面図である。このスピンバ
ルブ型薄膜素子においても、図1〜図6に示すスピンバ
ルブ型薄膜素子と同様に、ハードディスク装置に設けら
れた浮上式スライダのトレーリング側端部などに設けら
れて、ハードディスクなどの記録磁界を検出するもので
ある。なお、ハードディスクなどの磁気記録媒体の移動
方向は図示Z方向であり、磁気記録媒体からの洩れ磁界
の方向はY方向である。このスピンバルブ型薄膜素子
は、固定磁性層のみならず、フリー磁性層も非磁性中間
層を介して第1のフリー磁性層と第2のフリー磁性層の
2層に分断されている。
反強磁性層51、第1の固定磁性層52、非磁性中間層
53、第2の固定磁性層54、非磁性導電層55、第1
のフリー磁性層56、非磁性中間層59、第2のフリー
磁性層60、及び保護層61の順に積層されている。前
記下地層50及び保護層61は例えばTaなどで形成さ
れている。また前記反強磁性層51は、PtMn合金で
形成されていることが好ましい。PtMn合金は、従来
から反強磁性層として使用されているNiMn合金やF
eMn合金などに比べて耐食性に優れ、しかもブロッキ
ング温度が高く、交換結合磁界も大きい。また本発明で
は、前記PtMn合金に代えて、X―Mn(ただしX
は、Pd,Ir,Rh,Ruのいずれか1種または2種
以上の元素である)合金、あるいは、Pt―Mn―X′
(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Ag
のいずれか1種または2種以上の元素である)合金を使
用してもよい。
層54は、Co膜、NiFe合金、CoFe合金、ある
いはCoNiFe合金などで形成されている。また非磁
性中間層53は、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cu
のうち1種あるいは2種以上の合金で形成されているこ
とが好ましい。さらに非磁性導電層55はCuなどで形
成されている。
固定磁性層54の磁化は、互いに反平行に磁化されたフ
ェリ状態となっており、例えば第1の固定磁性層52の
磁化は図示Y方向に、第2の固定磁性層54の磁化は図
示Y方向と反対方向に固定されている。このフェリ状態
の安定性を保つためには、大きい交換結合磁界が必要で
あり、本発明では、より大きな交換結合磁界を得るため
に、以下に示す種々の適正化を行っている。
は、(第1の固定磁性層52の膜厚tP1)/(第2の固
定磁性層54の膜厚tP2)は、0.33〜0.95、あ
るいは1.05〜4の範囲内であることが好ましく、よ
り好ましくは0.53〜0.95、あるいは、1.08
〜1.8の範囲内とすることである。
磁性層54の膜厚にあっては、共に10〜70オングス
トロームで、且つ│第1の固定磁性層52の膜厚tP1―
第2の固定磁性層54の膜厚tP2│≧2オングストロー
ムであることが好ましく、より好ましくは、10〜50
オングストロームで、且つ│第1の固定磁性層52の膜
厚tP1―第2の固定磁性層54の膜厚tP2│≧2オング
ストロームである。
磁気的膜厚Ms・tp1と第2の固定磁性層54の磁気的
膜厚Ms・tp2にある程度差がないと、磁化状態はフェ
リ状態にはなりにくく、また第1の固定磁性層52の磁
気的膜厚Ms・tp1と第2の固定磁性層54の磁気的膜
厚Ms・tp2の差が大きくなりすぎても、交換結合磁界
の低下につながり好ましくない。そこで本発明では、第
1の固定磁性層52の膜厚tp1と第2の固定磁性層54
の膜厚tp2との膜厚比と同じように、(第1の固定磁性
層52の磁気的膜厚Ms・tp1)/(第2の固定磁性層
54の磁気的膜厚Ms・tp2)は、0.33〜0.9
5、あるいは1.05〜4の範囲内とであることが好ま
しい。また本発明では、第1の固定磁性層52の磁気的
膜厚Ms・tp1及び第2の固定磁性層54の磁気的膜厚
Ms・tp2が10〜70(オングストローム・テスラ)
の範囲内で、且つ第1の固定磁性層52の磁気的膜厚M
s・tp1から第2の固定磁性層54の磁気的膜厚Ms・
tp2を引いた絶対値が2(オングストローム・テスラ)
以上であることが好ましい。
Ms・tp1)/(第2の固定磁性層54の磁気的膜厚M
s・tp2)が、0.53〜0.95、あるいは1.05
〜1.8の範囲内であることがより好ましい。また上記
範囲内であって、第1の固定磁性層52の磁気的膜厚M
s・tp1と第2の固定磁性層54の磁気的膜厚Ms・t
p2は共に10〜50(オングストローム・テスラ)の範
囲内であり、しかも第1の固定磁性層52の磁気的膜厚
Ms・tp1から第2の固定磁性層54の磁気的膜厚Ms
・tp2を引いた絶対値は2(オングストローム・テス
ラ)以上であることが好ましい。
性層54に介在する非磁性中間層53の膜厚は、3.6
〜9.6オングストロームの範囲内であることが好まし
い。この範囲内であれば500(Oe)以上の交換結合
磁界を得ることができる。より好ましくは、4〜9.4
オングストロームの範囲内であり、この範囲内であれば
1000(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能
である。
グストローム以上であることが好ましい。この範囲内で
あれば500(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが
可能である。より好ましくは、100オングストローム
以上であり、この範囲内であれば1000(Oe)以上
の交換結合磁界を得ることができる。
は、第1のフリー磁性層56が形成されている。図7,
8に示すように前記第1のフリー磁性層56は2層で形
成されており、非磁性導電層55に接する側にCo膜5
7が形成されている。非磁性導電層55に接する側にC
o膜57を形成するのは、第1にΔMRを大きくできる
こと、第2に非磁性導電層55との拡散を防止するため
である。前記Co膜57の上にはNiFe合金膜58が
形成されている。さらに前記NiFe合金膜58上に
は、非磁性中間層59が形成されている。そして前記非
磁性中間層59の上には、第2のフリー磁性層60が形
成され、さらに前記第2のフリー磁性層60上にはTa
などで形成された保護層61が形成されている。前記第
2のフリー磁性層60は、Co膜、NiFe合金、Co
Fe合金、あるいはCoNiFe合金などで形成されて
いる。
のスピンバルブ膜は、その側面が傾斜面に削られ、前記
スピンバルブ膜は台形状で形成されている。前記スピン
バルブ膜の両側には、ハードバイアス層62,62及び
導電層63,63が形成されている。前記ハードバイア
ス層62は、Co―Pt合金やCo―Cr―Pt合金な
どで形成されており、また前記導電層63は、CuやC
rなどで形成されている。
第2のフリー磁性層60の間には非磁性中間層59が介
在し、前記第1のフリー磁性層56と第2のフリー磁性
層60間に発生する交換結合磁界(RKKY相互作用)
によって、前記第1のフリー磁性層56の磁化と第2の
フリー磁性層60の磁化は互いに反平行状態(フェリ状
態)になっている。
例えば第1のフリー磁性層56の膜厚tF1は、第2のフ
リー磁性層60の膜厚tF2よりも小さく形成されてい
る。そして前記第1のフリー磁性層56のMs・t
F1は、第2のフリー磁性層60のMs・tF2よりも小さ
く設定されており、ハードバイアス層62から図示X方
向にバイアス磁界が与えられると、Ms・tF2の大きい
第2のフリー磁性層60の磁化が前記バイアス磁界の影
響を受けて、図示X方向に揃えられ、前記第2のフリー
磁性層60との交換結合磁界(RKKY相互作用)によ
って、Ms・tF1の小さい第1のフリー磁性層56の磁
化は図示X方向と反対方向に揃えられる。
と、前記第1のフリー磁性層56と第2のフリー磁性層
60の磁化はフェリ状態を保ちながら、前記外部磁界の
影響を受けて回転する。そしてΔMRに寄与する第1の
フリー磁性層56の変動磁化と、第2の固定磁性層54
の固定磁化(例えば図示Y方向と反対方向に磁化されて
いる)との関係によって電気抵抗が変化し、外部磁界の
信号が検出される。本発明では第1のフリー磁性層56
の膜厚tF1と、第2のフリー磁性層60の膜厚tF2の膜
厚比を適正化し、より大きな交換結合磁界を得ることが
できると同時に、従来とほぼ同程度のΔMRを得ること
を可能にしている。
膜厚tF1/第2のフリー磁性層60の膜厚tF2)が、
0.56〜0.83、あるいは1.25〜5の範囲内で
あることが好ましい。この範囲内であると、少なくとも
500(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能で
ある。また本発明では、前記(第1のフリー磁性層56
の膜厚tF1/第2のフリー磁性層60の膜厚tF2)は、
0.61〜0.83、あるいは1.25〜2.1の範囲
内であることがより好ましい。この範囲内であると少な
くとも1000(Oe)以上の交換結合磁界を得ること
が可能である。
/第2のフリー磁性層60の膜厚t F2)のうち、0.8
3〜1.25の範囲を除外したのは、前記第1のフリー
磁性層56の膜厚tF1と第2のフリー磁性層60の膜厚
tF2とがほぼ同じ値で形成され、前記第1のフリー磁性
層56のMs・tF1と、第2のフリー磁性層60のMs
・tF2がほぼ同じ値に設定されると、ハードバイアス層
62からのバイアス磁界の影響を受けて、第1のフリー
磁性層56と第2のフリー磁性層60のどちらの磁化
も、前記バイアス磁界方向に向こうとしてしまうため、
前記第1のフリー磁性層56の磁化と第2のフリー磁性
層60の磁化は反平行状態にならず、安定した磁化状態
を保つことが不可能となる。
厚Ms・tF1と第2のフリー磁性層60の磁気的膜厚M
s・tF2にある程度差がないと、磁化状態はフェリ状態
にはなりにくく、また第1のフリー磁性層56の磁気的
膜厚Ms・tF1と第2のフリー磁性層60の磁気的膜厚
Ms・tF2の差が大きくなりすぎても、交換結合磁界の
低下につながり好ましくない。そこで本発明では、第1
のフリー磁性層56の膜厚tF1と第2のフリー磁性層6
0の膜厚tF2との膜厚比と同じように、(第1のフリー
磁性層56の磁気的膜厚Ms・tF1)/(第2のフリー
磁性層60の磁気的膜厚Ms・tF2)は、0.56〜
0.83、あるいは1.25〜5の範囲内とであること
が好ましい。また本発明では、(第1のフリー磁性層5
6の磁気的膜厚Ms・tF1)/(第2のフリー磁性層6
0の磁気的膜厚Ms・tF2)が0.61〜0.83、あ
るいは1.25〜2.1の範囲内であることがより好ま
しい。
と第2のフリー磁性層60との間に介在する非磁性中間
層59は、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち
1種あるいは2種以上の合金で形成されていることが好
ましい。さらに前記非磁性中間層59の膜厚は、5.5
〜10.0オングストロームの範囲内であることが好ま
しい。この範囲内であれば、500(Oe)以上の交換
結合磁界を得ることが可能である。また前記非磁性中間
層59の膜厚は、5.9〜9.4オングストロームの範
囲内であることがより好ましい。この範囲内であれば1
000(Oe)以上の交換結合磁界を得ることができ
る。なお上記の数値範囲内で、第1の固定磁性層52と
第2の固定磁性層54の膜厚比、非磁性中間層53及び
反強磁性層51の膜厚、さらには第1のフリー磁性層5
6と第2のフリー磁性層60の膜厚比、及び非磁性中間
層59の膜厚を調整することにより、従来と同程度のΔ
MR(抵抗変化率)を得ることが可能である。
7,8に示すスピンバルブ型薄膜素子においては、反強
磁性層51にPtMn合金などの熱処理を施すことによ
り、第1の固定磁性層52との界面にて交換結合磁界
(交換異方性磁界)が発生する反強磁性材料を使用して
いる。このため前記熱処理中に印加する磁場の方向及び
その大きさを適正に制御して、第1の固定磁性層52及
び第2の固定磁性層54の磁化方向を調整する必要性が
ある。
の方が、第2の固定磁性層54のMs・tP2よりも大き
い場合には、前記第1の固定磁性層52の磁化を向けた
い方向に、100〜1k(Oe)、あるいは5k(O
e)の磁場を印加すればよい。例えば前記第1の固定磁
性層52を図示Y方向に向けたいならば、図示Y方向に
100〜1k(Oe)の磁界を与える。Ms・tP1の大
きい第1の固定磁性層52の磁化は、磁場方向、すなわ
ち図示Y方向に向き、反強磁性層51との界面で発生す
る交換結合磁界(交換異方性磁界)によって前記第1の
固定磁性層52の磁化は図示Y方向に固定される。一
方、第2の固定磁性層54の磁化は、第1の固定磁性層
52との交換結合磁界(RKKY相互作用)によって、
図示Y方向と反対方向に向き固定される。あるいは図示
Y方向に5k(Oe)以上の磁界を与える。第1の固定
磁性層52と第2の固定磁性層54との交換結合磁界
(RKKY相互作用)は、1k(Oe)〜5k(Oe)
程度なので、5k(Oe)以上の磁場が印加されること
により、前記第1の固定磁性層52の磁化及び第2の固
定磁性層54の磁化は共に、図示Y方向に向く。このと
き、前記第1の固定磁性層52の磁化は、反強磁性層5
1との界面で発生する交換結合磁界(交換異方性磁界)
によって図示Y方向に固定される。一方、5k(Oe)
以上の磁場が取り去られると、第2の固定磁性層54の
磁化は、前記第1の固定磁性層52との交換結合磁界
(RKKY相互作用)によって、図示Y方向と反対方向
に向けられて固定される。
方が、第2の固定磁性層54のMs・tP2よりも小さい
場合、前記第1の固定磁性層52の磁化を向けたい方向
と反対方向に100〜1k(Oe)、または前記第1の
固定磁性層52の磁化を向けたい方向に5k(Oe)以
上の磁場を印加すればよい。例えば第1の固定磁性層5
2を図示Y方向に向けたいならば、図示Y方向と反対方
向に100〜1k(Oe)の磁場を与える。これによっ
て、Ms・tP2の大きい第2の固定磁性層54の磁化
は、前記磁場方向、すなわち図示Y方向と反対方向に向
き、前記第2の固定磁性層54と交換結合磁界(RKK
Y相互作用)によって前記第1の固定磁性層52の磁化
は図示Y方向に向けられる。前記第1の固定磁性層52
の磁化は、反強磁性層51との界面に発生する交換結合
磁界(交換異方性磁界)によって図示Y方向に固定さ
れ、第2の固定磁性層54の磁化は、図示Y方向と反対
方向に固定される。あるいは、図示Y方向に5k(O
e)以上の磁界を与えらればよい。5k(Oe)以上の
磁界を与えることにより、第1の固定磁性層52及び第
2の固定磁性層54の磁化は共に図示Y方向に向けら
れ、前記第1の固定磁性層52の磁化は、反強磁性層5
1との界面での交換結合磁界(交換異方性磁界)によっ
て図示Y方向に固定される。5k(Oe)以上の磁場が
取り除かれると、図示Y方向に向けられていた第2の固
定磁性層54の磁化は、前記第1の固定磁性層52との
交換結合磁界(RKKY相互作用)によって図示Y方向
と反対方向に向けられ固定される。
向を正の方向、図示X方向と反対方向及び図示Y方向と
反対方向を負の方向とした場合、第1のフリー磁性層5
6のMs・tF1と第2のフリー磁性層60のMs・tF2
を足し合わせた、いわゆる合成磁気モーメントの絶対値
は、第1の固定磁性層52のMs・tP1と第2の固定磁
性層54のMs・tP2を足し合わせた合成磁気モーメン
トの絶対値よりも大きい方が好ましい。すなわち、│
(Ms・tF1+Ms・tF2)/(Ms・tp1+Ms・t
P2)│>1であることが好ましい。
性層60との合成磁気モーメントの絶対値を、第1の固
定磁性層52と第2の固定磁性層54との合成磁気モー
メントの絶対値よりも大きくすることにより、前記第1
のフリー磁性層56と第2のフリー磁性層60の磁化
が、第1の固定磁性層52と第2の固定磁性層54との
合成磁気モーメントの影響を受けにくくなり、前記第1
のフリー磁性層56及び第2のフリー磁性層60の磁化
が外部磁界に対して感度良く、回転し、出力を向上させ
ることが可能になる。
バルブ型薄膜素子を模式図的に示した横断面図、図10
は、図9に示すスピンバルブ型薄膜素子を記録媒体との
対向面から見た場合の断面図である。このスピンバルブ
型薄膜素子は、図7,8に示すスピンバルブ型薄膜素子
の積層の順番を逆にしたものである。すなわち下から、
下地層70、第2のフリー磁性層71、非磁性中間層7
2、第1のフリー磁性層73、非磁性導電層76、第2
の固定磁性層77、非磁性中間層78、第1の固定磁性
層79、反強磁性層80、及び保護層81の順で積層さ
れている。
aなどで形成されている。前記反強磁性層80は、Pt
Mn合金で形成されていることが好ましい。PtMn合
金は、従来から反強磁性層として使用されているNiM
n合金やFeMn合金などに比べて耐食性に優れ、しか
もブロッキング温度が高く、交換結合磁界も大きい。ま
た本発明では、前記PtMn合金に代えて、X―Mn
(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ruのいずれか1種
または2種以上の元素である)合金、あるいは、Pt―
Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,
Au,Agのいずれか1種または2種以上の元素であ
る)合金を使用してもよい。
層77は、Co膜、NiFe合金、CoFe合金、ある
いはCoNiFe合金などで形成されている。また非磁
性中間層78は、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cu
のうち1種あるいは2種以上の合金で形成されているこ
とが好ましい。さらに非磁性導電層76はCuなどで形
成されている。
素子では、(第1の固定磁性層79の膜厚tP1)/(第
2の固定磁性層77の膜厚tP2)は、0.33〜0.9
5、あるいは1.05〜4の範囲内であることが好まし
く、しかも第1の固定磁性層79の膜厚tP1及び第2の
固定磁性層77の膜厚tP2は共に10〜70オングスト
ロームの範囲内であり、且つ、│第1の固定磁性層79
の膜厚tP1―第2の固定磁性層77の膜厚tP2│≧2オ
ングストローム以上であることが好ましい。上記範囲内
で適正に調節すれば、500(Oe)以上の交換結合磁
界を得ることが可能である。
9の膜厚tP1)/(第2の固定磁性層77の膜厚tP2)
は、0.53〜0.95、あるいは1.05〜1.8の
範囲内であることがより好ましく、しかも第1の固定磁
性層79の膜厚tP1及び第2の固定磁性層77の膜厚t
P2は共に10〜50オングストロームの範囲内であり、
且つ、│第1の固定磁性層79の膜厚tP1―第2の固定
磁性層77の膜厚tP2│≧2オングストローム以上であ
ることがより好ましい。上記範囲内で適正に調節あれ
ば、1000(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが
可能である。
磁気的膜厚Ms・tP1と第2の固定磁性層77の磁気的
膜厚Ms・tP2にある程度差がないと、磁化状態はフェ
リ状態にはなりにくく、また第1の固定磁性層79の磁
気的膜厚Ms・tP1と第2の固定磁性層77の磁気的膜
厚Ms・tP2の差が大きくなりすぎても、交換結合磁界
の低下につながり好ましくない。そこで本発明では、第
1の固定磁性層79の膜厚tp1と第2の固定磁性層77
の膜厚tp1との膜厚比と同じように、(第1の固定磁性
層79の磁気的膜厚Ms・tP1)/(第2の固定磁性層
77の磁気的膜厚Ms・tP2)は、0.33〜0.9
5、あるいは1.05〜4の範囲内であることが好まし
い。また本発明では、第1の固定磁性層79の磁気的膜
厚Ms・t P1及び第2の固定磁性層77の磁気的膜厚M
s・tP2が10〜70(オングストローム・テスラ)の
範囲内で、且つ第1の固定磁性層79の磁気的膜厚Ms
・t P1から第2の固定磁性層77の磁気的膜厚Ms・t
P2を引いた絶対値が2(オングストローム・テスラ)以
上であることが好ましい。
Ms・tP1)/(第2の固定磁性層77の磁気的膜厚M
s・tP2)が、0.53〜0.95、あるいは1.05
〜1.8の範囲内であることがより好ましい。また上記
範囲内であって、第1の固定磁性層79の磁気的膜厚M
s・tP1と第2の固定磁性層77の磁気的膜厚Ms・t
P2は共に10〜50(オングストローム・テスラ)の範
囲内であり、しかも第1の固定磁性層79の磁気的膜厚
Ms・tP1から第2の固定磁性層77の磁気的膜厚Ms
・tP2を引いた絶対値は2(オングストローム・テス
ラ)以上であることが好ましい。
性層77との間に介在する非磁性中間層78の膜厚は、
2.5〜6.4、あるいは、6.6〜10.7オングス
トロームの範囲内であることが好ましい。この範囲内で
あれば500(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが
できる。より好ましくは、2.8〜6.2オングストロ
ーム、あるいは6.8〜10.3オングストロームの範
囲内であり、この範囲内であれば1000(Oe)以上
の交換結合磁界を得ることが可能である。
グストローム以上であることが好ましい。この範囲内で
あれば500(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが
可能である。より好ましくは、100オングストローム
以上であり、この範囲内であれば1000(Oe)以上
の交換結合磁界を得ることができる。
は、フリー磁性層が2層に分断されて形成されており、
非磁性導電層76に接する側に第1のフリー磁性層73
が形成され、もう一方のフリー磁性層が、第2のフリー
磁性層71となっている。図10に示すように第1のフ
リー磁性層73は2層で形成されており、非磁性導電層
76に接する側に形成された層75はCo膜で形成され
ている。また、非磁性中間層72に接する側に形成され
た層74と、第2のフリー磁性層71は、例えば、Ni
Fe合金、CoFe合金、あるいはCoNiFe合金な
どで形成されている。
でのスピンバルブ膜は、その側面が傾斜面に削られ、前
記スピンバルブ膜は台形状で形成されている。前記スピ
ンバルブ膜の両側には、ハードバイアス層82,82及
び導電層83,83が形成されている。前記ハードバイ
アス層82は、Co―Pt合金やCo―Cr―Pt合金
などで形成されており、また前記導電層83は、Cuや
Crなどで形成されている。
2のフリー磁性層71の間には非磁性中間層72が介在
し、前記第1のフリー磁性層73と第2のフリー磁性層
71間に発生する交換結合磁界(RKKY相互作用)に
よって、前記第1のフリー磁性層73の磁化と第2のフ
リー磁性層71の磁化は反平行状態(フェリ状態)とな
っている。図10に示すスピンバルブ型薄膜素子では、
例えば第1のフリー磁性層73の膜厚TF1は、第2のフ
リー磁性層71の膜厚TF2より大きく形成されている。
そして前記第1のフリー磁性層73のMs・tF1は、第
2のフリー磁性層71のMs・tF2よりも大きくなるよ
うに設定されており、ハードバイアス層82から図示X
方向にバイアス磁界が与えられると、Ms・tF1の大き
い第1のフリー磁性層73の磁化が前記バイアス磁界の
影響を受けて、図示X方向に揃えられ、前記第1のフリ
ー磁性層73との交換結合磁界(RKKY相互作用)に
よってMs・tF2の小さい第2のフリー磁性層71の磁
化は図示X方向と反対方向に揃えられる。なお本発明で
は、第1のフリー磁性層73の膜厚tF1が、第2のフリ
ー磁性層71の膜厚tF2よりも小さく形成され、前記第
1のフリー磁性層73のMs・tF1が第2のフリー磁性
層71のMs・tF2よりも小さく設定されていてもよ
い。
と、前記第1のフリー磁性層73と第2のフリー磁性層
71の磁化はフェリ状態を保ちながら、前記外部磁界の
影響を受けて回転する。そしてΔMRに寄与する第1の
フリー磁性層73の磁化方向と、第2の固定磁性層71
の固定磁化との関係によって電気抵抗が変化し、外部磁
界の信号が検出される。本発明では第1のフリー磁性層
73の膜厚TF1と、第2のフリー磁性層71の膜厚TF2
の膜厚比を適正化し、より大きな交換結合磁界を得るこ
とができると同時に、従来とほぼ同程度のΔMRを得る
ことを可能にしている。
膜厚tF1/第2のフリー磁性層71の膜厚tF2)が、
0.56〜0.83、あるいは1.25〜5の範囲内で
あることが好ましい。この範囲内であると、少なくとも
500(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能で
ある。また本発明では、前記(第1のフリー磁性層73
の膜厚tF1/第2のフリー磁性層71の膜厚tF2)は、
0.61〜0.83、あるいは1.25〜2.1の範囲
内であることがより好ましい。この範囲内であると少な
くとも1000(Oe)以上の交換結合磁界を得ること
が可能である。
厚Ms・tF1と第2のフリー磁性層71の磁気的膜厚M
s・tF2にある程度差がないと、磁化状態はフェリ状態
にはなりにくく、また第1のフリー磁性層73の磁気的
膜厚Ms・tF1と第2のフリー磁性層71の磁気的膜厚
Ms・tF2の差が大きくなりすぎても、交換結合磁界の
低下につながり好ましくない。そこで本発明では、第1
のフリー磁性層73の膜厚tF1と第2のフリー磁性層7
1の膜厚tF2との膜厚比と同じように、(第1のフリー
磁性層73の磁気的膜厚Ms・tF1)/(第2のフリー
磁性層71の磁気的膜厚Ms・tF2)は、0.56〜
0.83、あるいは1.25〜5の範囲内であることが
好ましい。また本発明では、(第1のフリー磁性層73
の磁気的膜厚Ms・tF1)/(第2のフリー磁性層71
の磁気的膜厚Ms・tF2)が0.61〜0.83、ある
いは1.25〜2.1の範囲内であることがより好まし
い。
と第2のフリー磁性層71との間に介在する非磁性中間
層72は、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち
1種あるいは2種以上の合金で形成されていることが好
ましい。さらに前記非磁性中間層72の膜厚は、5.5
〜10.0オングストロームの範囲内であることが好ま
しい。この範囲内であれば、500(Oe)以上の交換
結合磁界を得ることが可能である。また前記非磁性中間
層72の膜厚は、5.9〜9.4オングストロームの範
囲内であることがより好ましい。この範囲内であれば1
000(Oe)以上の交換結合磁界を得ることができ
る。なお第1の固定磁性層79と第2の固定磁性層77
の膜厚比、非磁性中間層78及び反強磁性層80の膜
厚、さらには、第1のフリー磁性層73と第2のフリー
磁性層71との膜厚比、及び非磁性中間層72の膜厚
を、上述した範囲内で適正に調節すれば、従来と同程度
のΔMR(抵抗変化率)を得ることが可能である。
に、第1の固定磁性層79のMs・t P1の方が、第2の
固定磁性層77のMs・tP2よりも大きい場合には、前
記第1の固定磁性層79の磁化を向けたい方向に、10
0〜1k(Oe)、あるいは5k(Oe)の磁界を与え
れば良い。あるいは、第1の固定磁性層79のMs・t
P1の方が、第2の固定磁性層77のMs・tP2よりも小
さい場合、前記第1の固定磁性層79の磁化を向けたい
方向と反対方向に100〜1k(Oe)、または前記第
1の固定磁性層79の磁化を向けたい方向に5k(O
e)以上の磁界を与えらればよい。本発明においては、
前記第1の固定磁性層79の磁化は、図示Y方向に固定
され、前記第2の固定磁性層77の磁化は図示Y方向と
反対方向に固定されている。あるいは前記第1の固定磁
性層79の磁化は、図示Y方向と反対方向に固定され、
前記第2の固定磁性層77の磁化は、図示Y方向に固定
されている。
向を正の方向、図示X方向と反対方向及び図示Y方向と
反対方向を負の方向とした場合、第1のフリー磁性層7
3のMs・tF1と第2のフリー磁性層71のMs・tF2
を足し合わせた、いわゆる合成磁気モーメントの絶対値
は、第1の固定磁性層79のMs・tP1と第2の固定磁
性層77のMs・tP2を足し合わせた合成磁気モーメン
トの絶対値よりも大きい方が好ましい。すなわち、│
(Ms・tF1+Ms・tF2)/(Ms・tp1+Ms・t
P2)│>1であることが好ましい。
性層71との合成磁気モーメントの絶対値を、第1の固
定磁性層79と第2の固定磁性層77との合成磁気モー
メントの絶対値よりも大きくすることにより、前記第1
のフリー磁性層79と、第2のフリー磁性層77の磁化
が、第1の固定磁性層79と第2の固定磁性層77との
合成磁気モーメントの影響を受けにくくなり、前記第1
のフリー磁性層73及び第2のフリー磁性層71の磁化
が外部磁界に対して感度良く、回転し、出力を向上させ
ることが可能になる。
バルブ型薄膜素子の構造を表す横断面図であり、図12
は図11に示すスピンバルブ型薄膜素子を、記録媒体と
の対向面側から見た断面図である。このスピンバルブ型
薄膜素子は、フリー磁性層を中心にしてその上下に非磁
性導電層、固定磁性層、及び反強磁性層が積層されたデ
ュアルスピンバルブ型薄膜素子であり、前記フリー磁性
層、及び固定磁性層が、非磁性中間層を介して2層に分
断されて形成されている。
いる層は、下地層91であり、この下地層91の上に反
強磁性層92、第1の固定磁性層(下)93、非磁性中
間層94(下)、第2の固定磁性層(下)95、非磁性
導電層96、第2のフリー磁性層97、非磁性中間層1
00、第1のフリー磁性層101、非磁性導電層10
4、第2の固定磁性層(上)105、非磁性中間層
(上)106、第1の固定磁性層(上)107、反強磁
性層108、及び保護層109が形成されている。
2,108は、PtMn合金で形成されていることが好
ましい。PtMn合金は、従来から反強磁性層として使
用されているNiMn合金やFeMn合金などに比べて
耐食性に優れ、しかもブロッキング温度が高く、交換結
合磁界(交換異方性磁界)も大きい。また本発明では、
前記PtMn合金に代えて、X―Mn(ただしXは、P
d,Ir,Rh,Ruのいずれか1種または2種以上の
元素である)合金、あるいは、Pt―Mn―X′(ただ
しX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Agのいず
れか1種または2種以上の元素である)合金を使用して
もよい。
7、及び第2の固定磁性層(下)95,(上)105
は、Co膜、NiFe合金、CoFe合金、あるいはC
oNiFe合金などで形成されている。また第1の固定
磁性層(下)93,(上)107と第2の固定磁性層
(下)95,(上)105間に形成されている非磁性中
間層(下)94,(上)106及び第1のフリー磁性層
101と第2のフリー磁性層97間に形成されている非
磁性中間層100は、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、
Cuのうち1種あるいは2種以上の合金で形成されてい
ることが好ましい。さらに非磁性導電層96,104は
Cuなどで形成されている。
101及び第2のフリー磁性層97は2層で形成されて
いる。非磁性導電層96,104に接する側に形成され
た第1のフリー磁性層101の層103及び第2のフリ
ー磁性層97の層98はCo膜で形成されている。ま
た、非磁性中間層100を介して形成されている第1の
フリー磁性層101の層102及び第2のフリー磁性層
97の層99は、例えば、NiFe合金、CoFe合
金、あるいはCoNiFe合金などで形成されている。
非磁性導電層96,104側に接する層98,103を
Co膜で形成することにより、ΔMRを大きくでき、し
かも非磁性導電層96,104との拡散を防止すること
ができる。
る。まずフリー磁性層の下側に形成されている第1の固
定磁性層(下)93の膜厚tP1と、第2の固定磁性層
(下)95の膜厚tP2との膜厚比、及びフリー磁性層の
上側に形成されている第1の固定磁性層(上)107の
膜厚tP1と第2の固定磁性層(上)105の膜厚tP2と
の膜厚比は、(第1の固定磁性層(下)93,(上)1
07の膜厚tP1)/(第2の固定磁性層(下)95,
(上)105の膜厚tP2)は、0.33〜0.95、あ
るいは1.05〜4の範囲内であることが好ましく、し
かも、第1の固定磁性層(下)93,(上)107及び
第2の固定磁性層(下)95,(上)105の膜厚は、
共に10〜70オングストロームの範囲内で形成され、
且つ、│第1の固定磁性層(下)93,(上)107の
膜厚tP1―第2の固定磁性層(下)95,(上)105
の膜厚tP2│≧2オングストロームで形成されているこ
とが好ましい。上記範囲内であれば500(Oe)以上
の交換結合磁界を得ることが可能である。
(下)93,(上)107の膜厚tP1)/(第2の固定
磁性層(下)95,(上)105の膜厚tP2)は、0.
53〜0.95、あるいは1.05〜1.8の範囲内で
あることが好ましく、しかも、第1の固定磁性層(下)
93,(上)107及び第2の固定磁性層(下)95,
(上)105の膜厚は、共に10〜50オングストロー
ムの範囲内で形成され、且つ、│第1の固定磁性層
(下)93,(上)107の膜厚tP1―第2の固定磁性
層(下)95,(上)105の膜厚tP2│≧2オングス
トロームで形成されていることが好ましい。上記範囲内
であれば1000(Oe)以上の交換結合磁界を得るこ
とが可能である。
強磁性層92,108としてPtMn合金など、第1の
固定磁性層(下)93,(上)107との界面で交換結
合磁界(交換異方性磁界)を発生させるために熱処理を
必要とする反強磁性材料を使用している。しかし、フリ
ー磁性層よりも下側に形成されている反強磁性層92と
第1の固定磁性層(下)93との界面では、金属元素の
拡散が発生しやすく熱拡散層が形成されやすくなってい
るために、前記第1の固定磁性層(下)93として機能
する磁気的な膜厚は実際の膜厚tP1よりも薄くなってい
る。従ってフリー磁性層よりも上側の積層膜で発生する
交換結合磁界と、下側の積層膜から発生する交換結合磁
界をほぼ等しくするには、フリー磁性層よりも下側に形
成されている(第1の固定磁性層(下)93の膜厚tP1
/第2の固定磁性層(下)95の膜厚tP2)が、フリー
磁性層よりも上側に形成されている(第1の固定磁性層
(上)107の膜厚tP1/第2の固定磁性層(上)10
5の膜厚tP2よりも大きい方が好ましい。フリー磁性層
よりも上側の積層膜から発生する交換結合磁界と、下側
の積層膜から発生する交換結合磁界とを等しくすること
により、前記交換結合磁界の製造プロセス劣化が少な
く、磁気ヘッドの信頼性を向上させることができる。
93,(上)107の磁気的膜厚Ms・tP1と第2の固
定磁性層(下)95,(上)105の磁気的膜厚Ms・
tP2にある程度差がないと、磁化状態はフェリ状態には
なりにくく、また第1の固定磁性層(下)93,(上)
107の磁気的膜厚Ms・tP1と第2の固定磁性層
(下)95,(上)105の磁気的膜厚Ms・tP2の差
が大きくなりすぎても、交換結合磁界の低下につながり
好ましくない。そこで本発明では、第1の固定磁性層
(下)93,(上)107の膜厚tP1と第2の固定磁性
層(下)95,(上)105の膜厚tP2の膜厚比と同じ
ように、(第1の固定磁性層(下)93,(上)107
の磁気的膜厚Ms・tP1)/(第2の固定磁性層(下)
95,(上)105の磁気的膜厚Ms・tP2)は、0.
33〜0.95、あるいは1.05〜4の範囲内とであ
ることが好ましい。また本発明では、第1の固定磁性層
(下)93,(上)107の磁気的膜厚Ms・tP1及び
第2の固定磁性層(下)95,(上)105の磁気的膜
厚Ms・tP2が10〜70(オングストローム・テス
ラ)の範囲内で、且つ第1の固定磁性層(下)93,
(上)107の磁気的膜厚Ms・tP1から第2の固定磁
性層(下)95,(上)105の磁気的膜厚Ms・tP2
を引いた絶対値が2(オングストローム・テスラ)以上
であることが好ましい。
(上)107の磁気的膜厚Ms・tP1)/(第2の固定
磁性層(下)95,(上)105の磁気的膜厚Ms・t
P2)が、0.53〜0.95、あるいは1.05〜1.
8の範囲内であることがより好ましい。また上記範囲内
であって、第1の固定磁性層(下)93,(上)107
の磁気的膜厚Ms・tP1と第2の固定磁性層(下)9
5,(上)105の磁気的膜厚Ms・tP2は共に10〜
50(オングストローム・テスラ)の範囲内であり、し
かも第1の固定磁性層(下)93,(上)107の磁気
的膜厚Ms・tP1から第2の固定磁性層(下)95,
(上)105の磁気的膜厚Ms・tP2を引いた絶対値は
2(オングストローム・テスラ)以上であることが好ま
しい。
に形成されている第1の固定磁性層(下)93と第2の
固定磁性層(下)95の間に介在する非磁性中間層
(下)94の膜厚は、3.6〜9.6オングストローム
の範囲内であることが好ましい。この範囲内であれば5
00(Oe)以上の交換結合磁界を得ることができる。
より好ましくは、4〜9.4オングストロームの範囲内
であり、この範囲内であれば1000(Oe)以上の交
換結合磁界を得ることが可能である。
いる第1の固定磁性層(上)107と第2の固定磁性層
(上)105との間に介在する非磁性中間層(上)10
6の膜厚は、2.5〜6.4オングストローム、あるい
は6.6〜10.7オングストロームの範囲内であるこ
とが好ましい。この範囲内であると少なくとも500
(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能である。
また、2.8〜6.2オングストローム、あるいは6.
8〜10.3オングストロームの範囲内であることがよ
り好ましく、この範囲内であれば1000(Oe)以上
の交換結合磁界を得ることができる。
8の膜厚は、100オングストローム以上であることが
好ましく、前記反強磁性層92,108を100オング
ストローム以上で形成することにより、少なくとも50
0(Oe)以上の交換結合磁界を得ることができる。ま
た本発明では、前記反強磁性層92,108の膜厚を1
10オングストローム以上で形成すれば、少なくとも1
000(Oe)以上の交換結合磁界を得ることができ
る。
1の膜厚をtF1とし、第2のフリー磁性層97の膜厚を
tF2とした場合、(第1のフリー磁性層101の膜厚t
F1/第2のフリー磁性層97の膜厚tF2)は、0.56
〜0.83、あるいは1.25〜5の範囲内であること
が好ましい。この範囲内であると500(Oe)以上の
交換結合磁界を得ることが可能である。また、前記(第
1のフリー磁性層の膜厚/第2のフリー磁性層の膜厚)
は、0.61〜0.83、あるいは1.25〜2.1の
範囲内であることがより好ましく、この範囲内である
と、1000(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが
できる。
膜厚Ms・tF1と第2のフリー磁性層97の磁気的膜厚
Ms・tF2にある程度差がないと、磁化状態はフェリ状
態にはなりにくく、また第1のフリー磁性層101の磁
気的膜厚Ms・tF1と第2のフリー磁性層97の磁気的
膜厚Ms・tF2の差が大きくなりすぎても、交換結合磁
界の低下につながり好ましくない。そこで本発明では、
第1のフリー磁性層101の膜厚tF1と第2のフリー磁
性層97の膜厚tF2との膜厚比と同じように、(第1の
フリー磁性層101の磁気的膜厚Ms・tF1)/(第2
のフリー磁性層97の磁気的膜厚Ms・tF2)は、0.
56〜0.83、あるいは1.25〜5の範囲内である
ことが好ましい。また本発明では、(第1のフリー磁性
層101の磁気的膜厚Ms・tF1)/(第2のフリー磁
性層97の磁気的膜厚Ms・tF2)が0.61〜0.8
3、あるいは1.25〜2.1の範囲内であることがよ
り好ましい。
フリー磁性層97との間に介在する非磁性中間層100
は、その膜厚が、5.5〜10.0オングストロームの
範囲内で形成されていることが好ましく、この範囲内で
あると、500(Oe)以上の交換結合磁界を得ること
が可能である。また、前記非磁性中間層100の膜厚
は、5.9〜9.4オングストロームの範囲内であるこ
とがより好ましく、この範囲内であると1000(O
e)以上の交換結合磁界を得ることができる。
93,(上)107と第2の固定磁性層(下)95,
(上)105との膜厚比、第1の固定磁性層(下)9
3,(上)107と第2の固定磁性層(下)95,
(上)105、非磁性中間層(下)94,(上)10
6、及び反強磁性層92,108の膜厚、さらには、第
1のフリー磁性層101と第2のフリー磁性層97の膜
厚比、及び非磁性中間層100の膜厚を上記範囲内で適
正に調節すれば、従来と同程度のΔMRを得ることが可
能である。
ピンバルブ型薄膜素子においては、フリー磁性層の上下
に形成されている第2の固定磁性層(下)95,(上)
105の磁化を互いに反対方向に向けておく必要があ
る。これはフリー磁性層が第1のフリー磁性層101と
第2のフリー磁性層97の2層に分断されて形成されて
おり、前記第1のフリー磁性層101の磁化と第2のフ
リー磁性層97の磁化とが反平行になっているからであ
る。
フリー磁性層101の磁化が図示X方向と反対方向に磁
化されているとすると、前記第1のフリー磁性層101
との交換結合磁界(RKKY相互作用)によって、第2
のフリー磁性層97の磁化は、図示X方向に磁化された
状態となっている。前記第1のフリー磁性層101及び
第2のフリー磁性層97の磁化は、フェリ状態を保ちな
がら、外部磁界の影響を受けて反転するようになってい
る。
ブ型薄膜素子にあっては、第1のフリー磁性層101の
磁化及び第2のフリー磁性層97の磁化は共にΔMRに
関与する層となっており、前記第1のフリー磁性層10
1及び第2のフリー磁性層97の変動磁化と、第2の固
定磁性層(下)95,(上)105の固定磁化との関係
で電気抵抗が変化する。シングルスピンバルブ型薄膜素
子に比べ大きいΔMRを期待できるデュアルスピンバル
ブ型薄膜素子としての機能を発揮させるには、第1のフ
リー磁性層101と第2の固定磁性層(上)105との
抵抗変化及び、第2のフリー磁性層97と第2の固定磁
性層(下)95との抵抗変化が、共に同じ変動を見せる
ように、前記第2の固定磁性層(下)95,(上)10
5の磁化方向を制御する必要性がある。すなわち、第1
のフリー磁性層101と第2の固定磁性層(上)105
との抵抗変化が最大になるとき、第2のフリー磁性層9
7と第2の固定磁性層(下)95との抵抗変化も最大に
なるようにし、第1のフリー磁性層101と第2の固定
磁性層(上)105との抵抗変化が最小になるとき、第
2のフリー磁性層97と第2の固定磁性層(下)95と
の抵抗変化も最小になるようにすればよいのである。
バルブ型薄膜素子では、第1のフリー磁性層101と第
2のフリー磁性層97の磁化が反平行に磁化されている
ため、第2の固定磁性層(上)105の磁化と第2の固
定磁性層(下)95の磁化を互いに反対方向に磁化する
必要性があるのである。
の固定磁性層(下)95の磁化と、第2の固定磁性層
(上)105の磁化とを反対方向に向けて固定している
が、このような磁化方向の制御を行うためには、各固定
磁性層のMs・tと、熱処理中に与える磁場の方向及び
大きさを適正に調節する必要がある。まず各固定磁性層
のMs・tについては、フリー磁性層よりも上側に形成
されている第1の固定磁性層(上)107のMs・tP1
を、第2の固定磁性層(上)105のMs・tP2よりも
大きくし、且つ、フリー磁性層よりも下側に形成されて
いる第1の固定磁性層(下)93のMs・tP1を、第2
の固定磁性層(下)95のMs・tP2よりも小さくする
か、あるいは、フリー磁性層よりも上側に形成されてい
る第1の固定磁性層(上)107のMs・tP1を、第2
の固定磁性層105(上)のMs・tP2よりも小さく
し、且つ、フリー磁性層よりも下側に形成されている第
1の固定磁性層(下)93のMs・tP1を、第2の固定
磁性層(下)95のMs・tP2よりも大きくする必要が
ある。
てPtMn合金など磁場中アニール(熱処理)を施すこ
とにより、第1の固定磁性層(下)93,(上)107
との界面で交換結合磁界を発生する反強磁性材料を使用
しているので、熱処理中に印加する磁場の方向とその大
きさを適正に調節しなければならない。本発明では、フ
リー磁性層よりも上側に形成されている第1の固定磁性
層(上)107のMs・tP1を、第2の固定磁性層
(上)105のMs・tP2よりも大きくし、且つ、フリ
ー磁性層よりも下側に形成されている第1の固定磁性層
(下)93のMs・tP1を、第2の固定磁性層(下)9
5のMs・tP2よりも小さくした場合にあっては、フリ
ー磁性層よりも上側に形成されている第1の固定磁性層
(上)107の磁化を向けたい方向に、100〜1k
(Oe)の磁界を与える。
固定磁性層(上)107の磁化を図示Y方向に向けたい
場合には、図示Y方向に100〜1k(Oe)の磁界を
与える。ここでMs・tP1の大きい前記第1の固定磁性
層(上)107と、フリー磁性層よりも下側に形成され
た第2の固定磁性層(下)95が共に前記印加磁場の方
向、すなわち図示Y方向に向く。一方、フリー磁性層よ
りも上側に形成されたMs・tP2の小さい第2の固定磁
性層(上)105の磁化は、第1の固定磁性層(上)1
07との交換結合磁界(RKKY相互作用)によって、
前記第1の固定磁性層(上)107の磁化方向と反平行
に磁化される。同様にフリー磁性層よりも下側に形成さ
れたMs・tP1の小さい第1の固定磁性層(下)93の
磁化は、第2の固定磁性層(下)95の磁化とフェリ状
態になろうとして、図示Y方向と反対方向に磁化され
る。熱処理によって反強磁性層108との界面で発生す
る交換結合磁界(交換異方性磁界)により、フリー磁性
層よりも上側に形成された第1の固定磁性層(上)10
7の磁化は図示Y方向に固定され、第2の固定磁性層
(上)105の磁化は図示Y方向と反対方向に固定され
る。同様に、交換結合磁界(交換異方性磁界)によっ
て、フリー磁性層よりも下側に形成されている第1の固
定磁性層(下)93の磁化は、図示Y方向と反対方向に
固定され、第2の固定磁性層(下)95の磁化は図示Y
方向に固定される。
いる第1の固定磁性層(上)107のMs・tP1を、第
2の固定磁性層(上)105のMs・tP2よりも小さく
し、且つ、フリー磁性層よりも下側に形成されている第
1の固定磁性層(下)93のMs・tP1を、第2の固定
磁性層(下)95のMs・tP2よりも大きくした場合に
は、フリー磁性層よりも下側に形成された第1の固定磁
性層(下)93の磁化を向けたい方向に、磁界を100
〜1k(Oe)与える。以上のようにして、フリー磁性
層の上下に形成された第2の固定磁性層(下)95,
(上)105を反対方向に磁化することで、従来のデュ
アルスピンバルブ型薄膜素子と同程度のΔMRを得るこ
とができる。
ー磁性層101の磁化と第2のフリー磁性層97の磁化
とを、外部磁界に対してより感度良く反転できるように
するために、第1のフリー磁性層101の磁気モーメン
トと第2のフリー磁性層97の磁気モーメントとを足し
合わせた合成磁気モーメントが、前記フリー磁性層より
も下側に形成されている第1の固定磁性層(下)93の
磁気モーメントと第2の固定磁性層(下)95の磁気モ
ーメントとを足し合わせた合成磁気モーメント、及びフ
リー磁性層よりも上側に形成されている第1の固定磁性
層(上)107の磁気モーメントと第2の固定磁性層
(上)105の磁気モーメントとを足し合わせた合成磁
気モーメントよりも大きくなるようにすればよい。すな
わち、例えば、図示X方向及び図示Y方向の磁気モーメ
ントを正の値、図示X方向と反対方向及び図示Y方向と
反対方向の磁気モーメントを負の値とした場合、合成磁
気モーメント│Ms・tF1+Ms・tF2│が、第1の固
定磁性層(上)107と第2の固定磁性層(上)105
との磁気モーメントで形成される合成磁気モーメント│
Ms・tP1+Ms・tP2│及び、第1の固定磁性層
(下)93及び第2の固定磁性層(下)95との合成磁
気モーメント│Ms・tP1+Ms・tP2│よりも大きく
なっていることが好ましい。
型薄膜素子では、固定磁性層のみならず、フリー磁性層
も、非磁性中間層を介して第1のフリー磁性層と第2の
フリー磁性層の2層に分断し、この2層のフリー磁性層
の間に発生する交換結合磁界(RKKY相互作用)によ
って前記2層のフリー磁性層の磁化を反平行状態(フェ
リ状態)にすることにより、前記第1のフリー磁性層と
第2のフリー磁性層の磁化を、外部磁界に対して感度良
く反転できるようにしている。
2のフリー磁性層との膜厚比や、前記第1のフリー磁性
層と第2のフリー磁性層との間に介在する非磁性中間層
の膜厚、あるいは第1の固定磁性層と第2の固定磁性層
との膜厚比や、前記第1の固定磁性層と第2の固定磁性
層との間に介在する非磁性中間層の膜厚、及び反強磁性
層の膜厚などを適正な範囲内で形成することによって、
交換結合磁界を大きくすることができ、第1の固定磁性
層と第2の固定磁性層との磁化状態を固定磁化として、
第1のフリー磁性層と第2のフリー磁性層との磁化状態
を変動磁化として、熱的にも安定したフェリ状態に保つ
ことが可能であり、しかも従来と同程度のΔMRを得る
ことが可能となっている。本発明では、さらにセンス電
流の方向を調節することで、第1の固定磁性層の磁化と
第2の固定磁性層の磁化との反平行状態(フェリ状態)
を、より熱的にも安定した状態に保つことが可能となっ
ている。
層、固定磁性層、非磁性導電層、及びフリー磁性層から
成る積層膜の両側に導電層が形成されており、この導電
層からセンス電流が流される。前記センス電流は、比抵
抗の小さい前記非磁性導電層と、前記非磁性導電層と固
定磁性層との界面、及び非磁性導電層とフリー磁性層と
の界面に主に流れる。本発明では、前記固定磁性層は第
1の固定磁性層と第2の固定磁性層とに分断されてお
り、前記センス電流は主に第2の固定磁性層と非磁性導
電層との界面に流れている。前記センス電流を流すと、
右ネジの法則によって、センス電流磁界が形成される。
本発明では前記センス電流磁界を第1の固定磁性層の磁
気モーメントと第2の固定磁性層の磁気モーメントを足
し合わせて求めることができる合成磁気モーメントの方
向と同じ方向になるように、前記センス電流の流す方向
を調節している。
非磁性導電層15の下側に第2の固定磁性層14が形成
されている。この場合にあっては、第1の固定磁性層1
2及び第2の固定磁性層14のうち、磁気モーメントの
大きい方の固定磁性層の磁化方向に、センス電流磁界の
方向を合わせる。図1に示すように、前記第2の固定磁
性層14の磁気モーメントは第1の固定磁性層12の磁
気モーメントに比べて大きく、前記第2の固定磁性層1
4の磁気モーメントは図示Y方向と反対方向(図示左方
向)に向いている。このため前記第1の固定磁性層12
の磁気モーメントと第2の固定磁性層14の磁気モーメ
ントとを足し合わせた合成磁気モーメントは、図示Y方
向と反対方向(図示左方向)に向いている。
固定磁性層14及び第1の固定磁性層12の上側に形成
されている。このため、主に前記非磁性導電層15を中
心にして流れるセンス電流112によって形成されるセ
ンス電流磁界は、前記非磁性導電層15よりも下側にお
いて図示左方向に向くように、前記センス電流112の
流す方向を制御すればよい。このようにすれば、第1の
固定磁性層12と第2の固定磁性層14との合成磁気モ
ーメントの方向と、前記センス電流磁界の方向とが一致
する。
図示X方向に流される。右ネジの法則により、センス電
流を流すことによって形成されるセンス電流磁界は、紙
面に対して右回りに形成される。従って、非磁性導電層
15よりも下側の層には、図示左方向(図示Y方向と反
対方向)のセンス電流磁界が印加されることになり、こ
のセンス電流磁界によって、合成磁気モーメントを補強
する方向に作用し、第1の固定磁性層12と第2の固定
磁性層14間に作用する交換結合磁界(RKKY相互作
用)が増幅され、前記第1の固定磁性層12の磁化と第
2の固定磁性層14の磁化の反平行状態をより熱的に安
定させることが可能になる。
(Oe)程度のセンス電流磁界が発生し、また素子温度
が約15℃程度上昇することが判っている。さらに、記
録媒体の回転数は1000rpm程度まで速くなり、こ
の回転数の上昇により、装置内温度は約100℃まで上
昇する。このため例えばセンス電流を10mA流した場
合、スピンバルブ型薄膜素子の素子温度は、約250℃
程度まで上昇し、さらにセンス電流磁界も300(O
e)と大きくなる。
かも大きなセンス電流が流れる場合にあっては、第1の
固定磁性層12の磁気モーメントと第2の固定磁性層1
4とを足し合わせて求めることができる合成磁気モーメ
ントの方向と、センス電流磁界の方向とが逆向きである
と、第1の固定磁性層12の磁化と第2の固定磁性層1
4の磁化との反平行状態が壊れ易くなる。
するには、センス電流磁界の方向の調節の他に、高いブ
ロッキング温度を有する反強磁性材料を反強磁性層11
として使用する必要があり、そのために本発明ではブロ
ッキング温度が約400℃程度のPtMn合金を使用し
ている。
気モーメントと第2の固定磁性層14の磁気モーメント
とで形成される合成磁気モーメントが図示右方向(図示
Y方向)に向いている場合には、センス電流を図示X方
向と反対方向に流し、センス電流磁界が紙面に対し左回
りに形成されるようにすればよい。
センス電流方向について説明する。図3では、非磁性導
電層24の上側に第2の固定磁性層25及び第1の固定
磁性層27が形成されている。図3に示すように、第1
の固定磁性層27の磁気モーメントの方が第2の固定磁
性層25の磁気モーメントよりも大きくなっており、ま
た前記第1の固定磁性層27の磁気モーメントの方向は
図示Y方向(図示右方向)を向いている。このため前記
第1の固定磁性層27の磁気モーメントと第2の固定磁
性層25の磁気モーメントとを足し合わせた合成磁気モ
ーメントは図示右方向を向いている。
示X方向に流される。右ネジの法則により、センス電流
113を流すことによって形成されるセンス電流磁界は
紙面に対して右回りに形成される。非磁性導電層24よ
りも上側に第2の固定磁性層25及び第1の固定磁性層
27が形成されているので、前記第2の固定磁性層25
及び第1の固定磁性層27には、図示右方向(図示Y方
向と反対方向)のセンス電流磁界が侵入してくることに
なり、合成磁気モーメントの方向と一致し、従って、第
1の固定磁性層27の磁化と第2の固定磁性層25の磁
化との反平行状態は壊れ難くなっている。
向(図示Y方向と反対方向)に向いている場合には、セ
ンス電流113を図示X方向と反対方向に流し、前記セ
ンス電流113を流すことによって形成されるセンス電
流磁界を紙面に対し左回りに発生させ、第1の固定磁性
層27と第2の固定磁性層25の合成磁気モーメントの
向きと、前記センス電流磁界との向きを一致させる必要
がある。
リー磁性層36の上下に第1の固定磁性層(下)32,
(上)43と第2の固定磁性層(下)34,(上)41
が形成されたデュアルスピンバルブ型薄膜素子である。
このデュアルスピンバルブ型薄膜素子では、フリー磁性
層36の上下に形成される合成磁気モーメントが互いに
反対方向に向くように、前記第1の固定磁性層(下)3
2,(上)43の磁気モーメントの方向及びその大きさ
と第2の固定磁性層(下)34,(上)41の磁気モー
メントの方向及びその大きさを制御する必要がある。
下側に形成されている第2の固定磁性層(下)34の磁
気モーメントは、第1の固定磁性層(下)32の磁気モ
ーメントよりも大きく、また前記第2の固定磁性層
(下)34の磁気モーメントは図示右方向(図示Y方
向)を向いている。従って、前記第1の固定磁性層
(下)32の磁気モーメントと第2の固定磁性層(下)
34の磁気モーメントを足し合わせて求めることができ
る合成磁気モーメントは図示右方向(図示Y方向)を向
いている。またフリー磁性層36よりも上側に形成され
ている第1の固定磁性層(上)43の磁気モーメントは
第2の固定磁性層(上)41の磁気モーメントよりも大
きく、また前記第1の固定磁性層(上)43の磁気モー
メントは図示左方向(図示Y方向と反対方向)に向いて
いる。このため前記第1の固定磁性層(上)43の磁気
モーメントと第2の固定磁性層(上)41の磁気モーメ
ントを足し合わせて求めることができる合成磁気モーメ
ントは図示左方向(図示Y方向と反対方向)を向いてい
る。このように本発明ではフリー磁性層36の上下に形
成される合成磁気モーメントが互いに反対方向に向いて
いる。
114は図示X方向と反対方向に流される。これにより
前記センス電流114を流すことによって形成されるセ
ンス電流磁界は紙面に対し左回りに形成される。
れた合成磁気モーメントは図示右方向(図示Y方向)
に、フリー磁性層36よりも上側で形成された合成磁気
モーメントは図示左方向(図示Y方向と反対方向)に向
いているので、前記2つの合成磁気モーメントの方向
は、センス電流磁界の方向と一致しており、フリー磁性
層36の下側に形成された第1の固定磁性層(下)32
の磁化と第2の固定磁性層(下)34の磁化の反平行状
態、及びフリー磁性層36の上側に形成された第1の固
定磁性層(上)43の磁化と第2の固定磁性層(上)4
1の磁化の反平行状態を、熱的にも安定した状態で保つ
ことが可能である。
された合成磁気モーメントが図示左方向に向いており、
フリー磁性層36よりも上側に形成された合成磁気モー
メントが図示右側に向いている場合には、センス電流1
14を図示X方向に流し、前記センス電流を流すことに
よって形成されるセンス電流磁界の方向と、前記合成磁
気モーメントの方向とを一致させる必要がある。
磁性中間層を介して第1のフリー磁性層と第2のフリー
磁性層の2層に分断されて形成されたスピンバルブ型薄
膜素子の実施例であるが、図7に示すスピンバルブ型薄
膜素子のように、非磁性導電層55よりも下側に第1の
固定磁性層52及び第2の固定磁性層54が形成された
場合にあっては、図1に示すスピンバルブ型薄膜素子の
場合と同様のセンス電流方向の制御を行えばよい。また
図9に示すスピンバルブ型薄膜素子のように、非磁性導
電層76よりも上側に第1の固定磁性層79と第2の固
定磁性層77が形成されている場合にあっては、図3に
示すスピンバルブ型薄膜素子の場合と同様のセンス電流
方向の制御を行えばよい。
を流すことによって形成されるセンス電流磁界の方向
と、第1の固定磁性層の磁気モーメントと第2の固定磁
性層の磁気モーメントを足し合わせることによって求め
ることができる合成磁気モーメントの方向とを一致させ
ることにより、前記第1の固定磁性層と第2の固定磁性
層間に作用する交換結合磁界(RKKY相互作用)を増
幅させ、前記第1の固定磁性層の磁化と第2の固定磁性
層の磁化の反平行状態(フェリ状態)を熱的に安定した
状態に保つことが可能である。
せるために、反強磁性層にPtMn合金などのブロッキ
ング温度の高い反強磁性材料を使用しており、これによ
って、環境温度が、従来に比べて大幅に上昇しても、前
記第1の固定磁性層の磁化と第2の固定磁性層の磁化の
反平行状態(フェリ状態)を壊れ難くすることができ
る。
流量を大きくして再生出力を大きくしようとすると、そ
れに従ってセンス電流磁界も大きくなるが、本発明で
は、前記センス電流磁界が、第1の固定磁性層と第2の
固定磁性層の間に働く交換結合磁界を増幅させる作用を
もたらしているので、センス電流磁界の増大により、第
1の固定磁性層と第2の固定磁性層の磁化状態はより安
定したものとなる。
性層にどのような反強磁性材料を使用した場合であって
も適用でき、例えば反強磁性層と固定磁性層(第1の固
定磁性層)との界面で交換結合磁界(交換異方性磁界)
を発生させるために、熱処理が必要であるか、あるいは
必要でないかを問わない。
で形成されていたシングルスピンバルブ型薄膜素子の場
合であっても、前述したセンス電流を流すことによって
形成されるセンス電流磁界の方向と、固定磁性層の磁化
方向とを一致させることにより、前記固定磁性層の磁化
を熱的に安定化させることが可能である。
層を介して第1の固定磁性層と第2の固定磁性層の2層
に分断して形成したスピンバルブ型薄膜素子を使用し、
前記第1の固定磁性層と第2の固定磁性層の膜厚比と、
交換結合磁界(Hex)及びΔMR(抵抗変化率)との
関係について測定した。まず、第1の固定磁性層(反強
磁性層に接する側の固定磁性層)を20オングストロー
ム又は40オングストロームに固定し、第2の固定磁性
層の膜厚を変化させて、前記第2の固定磁性層の膜厚
と、交換結合磁界及びΔMRとの関係について調べた。
実験に使用した膜構成は以下の通りである。Si基板/
アルミナ/Ta(30)/反強磁性層;PtMn(15
0)/第1の固定磁性層;Co(20又は40)/非磁
性中間層;Ru(7)/第2の固定磁性層;Co(X)
/非磁性導電層;Cu(25)/フリー磁性層;Co
(10)+NiFe(40)/Ta(30)である。な
お各層における括弧内の数値は膜厚を示しており、単位
はオングストロームである。
素子を成膜した後、200(Oe)の磁場を印加しなが
ら260℃で4時間の熱処理を施した。その実験結果を
図14及び図15に示す。図14に示すように、第1の
固定磁性層(P1)の膜厚tP1を20オングストローム
で固定した場合、第2の固定磁性層(P2)の膜厚tP2
を、20オングストロームにすると、急激に交換結合磁
界(Hex)は低下し、且つ、前記膜厚t P2を厚くする
ことにより、前記交換結合磁界は徐々に低下していくこ
とがわかる。また前記第1の固定磁性層(P1)の膜厚
tP1を40オングストロームで固定した場合、第2の固
定磁性層(P2)の膜厚tP2を40オングストロームに
すると急激に交換結合磁界は低下し、且つ前記膜厚tP2
を40オングストロームよりも大きくすると、徐々に交
換結合磁界は低下していくことがわかる。また、前記膜
厚tP2を40オングストロームよりも小さくしていく
と、約26オングストロームまでは交換結合磁界は大き
くなるが、前記膜厚tP2を26オングストロームよりも
小さくしていくと、交換結合磁界は小さくなっていくこ
とがわかる。
tP1と第2の固定磁性層(P2)の膜厚tP2とがほぼ同
じ膜厚で形成されると、急激に交換結合磁界が低下する
のは、前記第1の固定磁性層(P1)の磁化と第2の固
定磁性層(P2)の磁化とが、互いに反平行に磁化され
ない、いわゆるフェリ状態になりにくいからではないか
と推測される。上述した膜構成に示すように、第1の固
定磁性層(P1)と第2の固定磁性層(P2)は共にC
o膜で形成されているので、同じ飽和磁化(Ms)を有
している。さらにほぼ同じ膜厚で形成されることによ
り、第1の固定磁性層(P1)の磁気モーメント(Ms
・tP1)と第2の固定磁性層(P2)の磁気モーメント
(Ms・tP2)は、ほぼ同じ値で設定されている。本発
明では、反強磁性層にPtMn合金を使用しているの
で、成膜後磁場中アニールを施すことにより、第1の固
定磁性層(P1)との界面で交換結合磁界を発生させ、
前記第1の固定磁性層(P1)をある一定方向に固定し
ようとしている。
2の固定磁性層(P2)の磁気モーメントがほぼ同じ値
であると、磁場を印加して熱処理を施したときに、前記
第1の固定磁性層(P1)と第2の固定磁性層(P2)
とが、共に磁場方向に向こうとする。本来なら、第1の
固定磁性層(P1)と第2の固定磁性層(P2)との間
には交換結合磁界(RKKY相互作用)が発生し、前記
第1の固定磁性層(P1)の磁化と第2の固定磁性層
(P2)の磁化は、反平行状態(フェリ状態)に磁化さ
れようとするが、第1の固定磁性層(P1)と第2の固
定磁性層(P2)の磁化が互いに磁場方向に向こうとす
るため、反平行状態に磁化されにくく、第1の固定磁性
層(P1)と第2の固定磁性層(P2)の磁化状態は、
外部磁界などに対し非常に不安定な状態となっている。
気モーメントと第2の固定磁性層(P2)の磁気モーメ
ントとの差をある程度つけることが好ましいが、図14
に示すように、第1の固定磁性層(P1)の膜厚tP1と
第2の固定磁性層(P2)の膜厚tP2の差が大きくなり
すぎ、第1の固定磁性層(P1)と第2の固定磁性層
(P2)の磁気モーメントの差がありすぎると、交換結
合磁界が低下し、反平行状態が崩れやすいという問題が
ある。
2)の膜厚tP2を30オングストロームで固定し、第1
の固定磁性層(P1)の膜厚tP1を変化させたときの、
前記第1の固定磁性層の膜厚tP1と交換結合磁界(He
x)及びΔMRとの関係を表すグラフである。この実験
で使用したスピンバルブ型薄膜素子の膜構成は以下の通
りである。Si基板/アルミナ/Ta(30)/PtM
n(150)/第1の固定磁性層;Co(X)/非磁性
中間層;Ru(7)/第2の固定磁性層;Co(30)
/非磁性導電層;Cu(25)/フリー磁性層;Co
(10)+NiFe(40)/Ta(30)である。な
お各層における括弧内の数値は膜厚を示しており、単位
はオングストロームである。また本発明では、上記スピ
ンバルブ型薄膜素子を成膜した後、200(Oe)の磁
場を印加しながら260℃で4時間の熱処理を施した。
(P1)の膜厚tP1を30オングストロームにした場
合、すなわち第2の固定磁性層(P2)の膜厚tP2と同
じ膜厚で形成した場合、交換結合磁界(Hex)は急激
に低下することがわかる。これは上述した理由による。
P1が約32オングストロームのときも交換結合磁界は小
さくなっていることがわかる。これは熱拡散層の発生に
より、第1の固定磁性層の磁気的な膜厚が実際の膜厚t
P1よりも小さくなり、第2の固定磁性層の膜厚tP2(=
30オングストローム)に近づくからである。
磁性層との界面において、金属元素が拡散することによ
って形成されるが、前記熱拡散層は、この実験で使用し
た膜構成に示すように、フリー磁性層よりも下側に反強
磁性層及び固定磁性層を形成した場合に発生しやすくな
る。
子を製作し、前記デュアルスピンバルブ型薄膜素子の2
個の第2の固定磁性層を共に20オングストロームに固
定し、2個の第1の固定磁性層のそれぞれの膜厚を変化
させた場合における、前記第1の固定磁性層の膜厚と、
交換結合磁界(Hex)との関係を示すグラフである。
この実験で使用したスピンバルブ型薄膜素子の膜構成は
以下の通りである。Si基板/アルミナ/Ta(30)
/反強磁性層;PtMn(150)/第1の固定磁性層
(P1 下);Co(X)/非磁性中間層;Ru(6)
/第2の固定磁性層(P2 下);Co(20)/非磁
性導電層;Cu(20)/フリー磁性層;Co(10)
+NiFe(40)+Co(10)/非磁性導電層;C
u(20)/第2の固定磁性層(P2 上);Co(2
0)/非磁性中間層;Ru(8)/第1の固定磁性層
(P1 上);Co(X)/反強磁性層;PtMn(1
50)/保護層;Ta(30)である。なお各層におけ
る括弧内の数値は膜厚を示しており、単位はオングスト
ロームである。また本発明では、上記スピンバルブ型薄
膜素子を成膜した後、200(Oe)の磁場を印加しな
がら260℃で4時間の熱処理を施した。
に形成された第1の固定磁性層(P1 下)を25オン
グストロームで固定して、フリー磁性層よりも上側に形
成された第1の固定磁性層(P1 上)の膜厚を変化さ
せ、前記第1の固定磁性層(P1 上)の膜厚と、交換
結合磁界(Hex)との関係について調べた。また、フ
リー磁性層よりも上側に形成された第1の固定磁性層
(P1 上)を25オングストロームで固定して、フリ
ー磁性層よりも下側に形成された第1の固定磁性層(P
1 下)の膜厚を変化させ、前記第1の固定磁性層(P
1 下)の膜厚と交換結合磁界との関係について調べ
た。
(P1 下)を25オングストロームで固定し、第1の
固定磁性層(P1 上)の膜厚を20オングストローム
に近づけていくと、徐々に交換結合磁界は大きくなって
いくが、前記第1の固定磁性層(P1 上)の膜厚が約
18〜22オングストロームになると、第2の固定磁性
層(P1 上)の膜厚とほぼ同じ膜厚になることから、
上述した理由により、急激に交換結合磁界は低下してし
まう。また前記第1の固定磁性層(P1 上)の膜厚を
22オングストロームから30オングストロームまで徐
々に大きくしていくと、徐々に交換結合磁界は低下して
いくことがわかる。
層(P1 上)を25オングストローム7で固定し、第
1の固定磁性層(P1 下)の膜厚を20オングストロ
ームに近づけると、徐々に交換結合磁界は大きくなって
いくが、前記第1の固定磁性層(P1 下)の膜厚が約
18〜22オングストロームになると、急激に交換結合
磁界は低下している。また前記第1の固定磁性層(P1
下)の膜厚を22オングストロームよりも大きくする
と、前記膜厚が約26オングストロームまで交換結合磁
界は大きくなるが、前記膜厚を26オングストローム以
上にすると、交換結合磁界は低下することがわかる。
を約22オングストローム程度にした場合の、第1の固
定磁性層(P1 上)における交換結合磁界と、第1の
固定磁性層(P1 下)における交換結合磁界とを比較
すると、第1の固定磁性層(P1 上)の膜厚を約22
オングストローム程度にした場合の方が、第1の固定磁
性層(P1 下)を約22オングストローム程度にした
場合に比べ交換結合磁界を大きくできることがわかる。
これは前述したように、第1の固定磁性層(P1 下)
と、反強磁性層との界面には、熱拡散層が形成されやす
いので、前記第1の固定磁性層の磁気的な膜厚は、実質
的に小さくなり、第2の固定磁性層(P2 下)の膜厚
とほぼ同程度になってしまうからである。
実験結果により本発明では、500(Oe)以上の交換
結合磁界を得ることができる(第1の固定磁性層(P
1)の膜厚)/(第2の固定磁性層(P2)の膜厚)を
調べた。まず図14に示すように、第1の固定磁性層
(P1)を20オングストロームに固定した場合、50
0(Oe)以上の交換結合磁界を得るには、(第1の固
定磁性層(P1)の膜厚)/(第2の固定磁性層(P
2)の膜厚)を、0.33以上0.91以下、あるいは
1.1以上にしなければいけないことがわかる。なおこ
のときの第2の固定磁性層(P2)の膜厚は、10〜6
0オングストローム(18〜22オングストロームを除
く)の範囲内である。
層(P1)を40オングストロームに固定した場合、5
00(Oe)以上の交換結合磁界を得るには、(第1の
固定磁性層(P1)の膜厚)/(第2の固定磁性層(P
2)の膜厚)を、0.57以上0.95以下、1.05
以上4以下にしなければいけないことがわかる。なおこ
のときの第2の固定磁性層(P2)の膜厚は、10〜6
0オングストローム(38〜42オングストロームを除
く)の範囲内である。
性層(P2)を30オングストロームに固定した場合、
500(Oe)以上の交換結合磁界を得るには、(第1
の固定磁性層(P1)の膜厚)/(第2の固定磁性層
(P2)の膜厚)を、0.33以上0.93以下、ある
いは1.06以上2.33以下にしなければいけないこ
とがわかる。なおこのときの第1の固定磁性層(P1)
の膜厚は、10〜70オングストローム(28〜32オ
ングストロームを除く)の範囲内である。
ンバルブ型薄膜素子の場合にあっては、(第1の固定磁
性層(P1)の膜厚)/(第2の固定磁性層(P2)の
膜厚)の範囲のうち、0.9以上1.1以下の範囲を外
せば、500(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが
できることがわかる。ここで500(Oe)以上の交換
結合を得ることができる最も広い膜厚比の範囲を取る
と、(第1の固定磁性層(P1)の膜厚)/(第2の固
定磁性層(P2)の膜厚)は、0.33〜0.95、あ
るいは1.05〜4の範囲内となる。
ず、第1の固定磁性層(P1)と第2の固定磁性層(P
2)の膜厚も重要な要素の一つであるので、さらに、上
述した膜厚比の範囲内で、しかも第1の固定磁性層(P
1)の膜厚及び第2の固定磁性層(P2)の膜厚を、1
0〜70オングストロームの範囲内とし、且つ第1の固
定磁性層(P1)の膜厚から第2の固定磁性層(P2)
の膜厚を引いた絶対値を2オングストローム以上にすれ
ば、500(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可
能になる。
交換結合磁界を得ることができる(第1の固定磁性層
(P1)の膜厚)/(第2の固定磁性層(P2)の膜
厚)を調べた。まず図14に示すように、第1の固定磁
性層(P1)を20オングストロームにした場合、(第
1の固定磁性層(P1)の膜厚)/(第2の固定磁性層
(P2)の膜厚)を0.53〜0.91、あるいは1.
1以上にすれば1000(Oe)以上の交換結合磁界を
得ることが可能である。なおこのときの第2の固定磁性
層(P2)の膜厚は、10〜38オングストローム(1
8〜22オングストロームを除く)の範囲内である。ま
た図14に示すように、第1の固定磁性層(P1)を4
0オングストロームにした場合、(第1の固定磁性層
(P1)の膜厚)/(第2の固定磁性層(P2)の膜
厚)を0.88〜0.95、あるいは1.05〜1.8
の範囲内にすれば、1000(Oe)以上の交換結合磁
界を得ることが可能である。なおこのときの第2の固定
磁性層(P2)の膜厚は、22〜45オングストローム
(38〜42オングストロームを除く)の範囲内であ
る。さらに図16に示すように、第2の固定磁性層(P
2)を30オングストロームに固定した場合、(第1の
固定磁性層(P1)の膜厚)/(第2の固定磁性層(P
2)の膜厚)を0.56〜0.93、あるいは1.06
〜1.6の範囲内であれば1000(Oe)以上の交換
結合磁界を得ることが可能である。なおこのときの第1
の固定磁性層(P1)の膜厚は、10〜50オングスト
ローム(28〜32オングストロームを除く)の範囲内
である。
バルブ型薄膜素子の場合にあっては、(第1の固定磁性
層(P1)の膜厚)/(第2の固定磁性層(P2)の膜
厚)を0.5〜0.9、あるいは1.1〜1.5程度の
範囲内にすれば、1000(Oe)以上の交換結合磁界
を得ることが可能となっている。従って、1000(O
e)以上の交換結合磁界を得るには、第1の固定磁性層
(P1)の膜厚)/(第2の固定磁性層(P2)の膜
厚)を、0.53〜0.95、あるいは1.05〜1.
8の範囲内にし、さらに、第1の固定磁性層(P1)と
第2の固定磁性層(P2)の膜厚を10〜50オングス
トロームの範囲内で、しかも第1の固定磁性層(P1)
の膜厚から第2の固定磁性層(P2)の膜厚を引いた絶
対値が2オングストローム以上であることが好ましい。
なお図15及び図17に示すように、上述した膜厚比及
び膜厚の範囲内であれば、ΔMRもそれほど低下せず、
約6%以上のΔMRを得ることが可能である。このΔM
Rの値は従来のスピンバルブ型薄膜素子(シングルスピ
ンバルブ型薄膜素子に限る)のΔMRと同程度か若干低
い値である。
層(P1)を40オングストロームにした場合、第2の
固定磁性層(P1)を20オングストロームにした場合
に比べて、ややΔMRは小さくなることがわかる。前記
第1の固定磁性層(P1)は、実際にはΔMRに関与し
ない層であり、前記ΔMRは、第2の固定磁性層(P
2)の固定磁化と、フリー磁性層の変動磁化との関係で
決定される。ところがセンス電流は、ΔMRに関与しな
い第1の固定磁性層(P1)にも流れるため、いわゆる
シャントロス(分流ロス)が発生し、このシャントロス
は、第1の固定磁性層(P1)の膜厚が厚くなるほど大
きくなる。以上のような理由から、第1の固定磁性層
(P1)の膜厚が厚くなるほど、ΔMRは低下しやすい
傾向にある。
固定磁性層(P2)の間に形成される非磁性中間層の適
正な膜厚について測定した。なお、実験には、フリー磁
性層よりも下側に反強磁性層が形成されたボトム型と、
フリー磁性層よりも上側に反強磁性層が形成されたトッ
プ型の2種類のスピンバルブ型薄膜素子を製作し、前記
非磁性中間層の膜厚と交換結合磁界との関係について調
べた。実験に使用したボトム型のスピンバルブ型薄膜素
子の膜構成は、下から、Si基板/アルミナ/Ta(3
0)/反強磁性層;PtMn(200)/第1の固定磁
性層;Co(20)/非磁性中間層;Ru(X)/第2
の固定磁性層;Co(25)/非磁性導電層;Co(1
0)/フリー磁性層;Co(10)+NiFe(40)
/Ta(30)であり、トップ型のスピンバルブ型薄膜
素子の膜構成は、下から、Si基板/アルミナ/Ta
(30)/フリー磁性層;NiFe(40)+Co(1
0)/非磁性導電層;Cu(25)/第2の固定磁性
層;Co(25)/非磁性中間層;Ru(X)/第1の
固定磁性層;Co(20)/反強磁性層;PtMn(2
00)/Ta(30)である。なお括弧内の数値は膜厚
を表しており、単位はオングストロームである。また各
スピンバルブ型薄膜素子を成膜後、200(Oe)の磁
場を印加しながら、260℃で4時間の熱処理を施して
いる。その実験結果を図19に示す。図19に示すよう
に、トップ型とボトム型とでは、Ru膜(非磁性中間
層)の膜厚に対する交換結合磁界の挙動が大きく異なっ
ていることがわかる。
磁界を得ることができる範囲を好ましいとしているの
で、トップ型のスピンバルブ型薄膜素子において、50
0(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能なRu
膜の膜厚は、2.5〜6.4オングストローム、あるい
は6.6〜10.7オングストロームの範囲内であるこ
とがわかる。さらに好ましくは1000(Oe)以上の
交換結合磁界が得られる範囲内であり、前記Ru膜の膜
厚を、2.8〜6.2オングストローム、あるいは6.
8〜10.3オングストロームの範囲内にすれば、10
00(Oe)以上の交換結合磁界が得られることがわか
る。
おいて、500(Oe)以上の交換結合磁界を得ること
が可能なRu膜の膜厚は、3.6〜9.6オングストロ
ームの範囲内であることがわかる。さらに、4.0〜
9.4オングストロームの範囲内とすれば、1000
(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能になる。
ところで、トップ型のスピンバルブ型薄膜素子と、ボト
ム型のスピンバルブ型薄膜素子とで、非磁性中間層の適
性な膜厚の範囲が異なるのは、第1の固定磁性層と第2
の固定磁性層との間に作用する交換結合磁界(RKKY
相互作用)が、下地膜の格子定数との関係や、あるい
は、磁性層の伝導電子のエネルギーバンドの値の変化に
非常に敏感に反応するためであると推測される。
薄膜素子(シングルスピンバルブ型薄膜素子)を製作
し、各スピンバルブ型薄膜素子の反強磁性層(PtMn
合金)の膜厚と、交換結合磁界との関係について測定し
た。実施例1,2は、固定磁性層が非磁性中間層を介し
て第1の固定磁性層と第2の固定磁性層の2層に分断さ
れたスピンバルブ型薄膜素子、比較例1,2は、固定磁
性層が単層で形成された従来型のスピンバルブ型薄膜素
子である。
は、フリー磁性層よりも反強磁性層が上側に形成された
トップ型であり、膜構成は下から、Si基板/アルミナ
/Ta(30)/フリー磁性層;NiFe(40)+C
o(10)/非磁性導電層;Cu(25)/第2の固定
磁性層;Co(25)/非磁性中間層;Ru(4)/第
1の固定磁性層;Co(20)/反強磁性層;PtMn
(X)/Ta(30)であり、また実施例2のスピンバ
ルブ型薄膜素子は、フリー磁性層よりも下側に反強磁性
層が形成されたボトム型であり、膜構成は下から、Si
基板/アルミナ/Ta(30)/反強磁性層;PtMn
(X)/第1の固定磁性層;Co(20)/非磁性中間
層;Ru(8)/第2の固定磁性層;Co(25)/非
磁性導電層;Cu(25)/フリー磁性層;Co(1
0)+NiFe(40)/Ta(30)である。
は、フリー磁性層よりも反強磁性層が上側に形成された
トップ型であり、膜構成は下から、Si基板/アルミナ
/Ta(30)/フリー磁性層;NiFe(40)+C
o(10)/非磁性導電層;Cu(25)/固定磁性
層;Co(40)/反強磁性層;PtMn(X)/Ta
(30)であり、また比較例2のスピンバルブ型薄膜素
子は、フリー磁性層よりも反強磁性層が下側に形成され
たボトム型であり、膜構成は下から、Si基板/アルミ
ナ/Ta(30)/反強磁性層;PtMn(X)/固定
磁性層;Co(40)/非磁性導電層;Cu(25)/
フリー磁性層;Co(10)+NiFe(40)/Ta
(30)である。なお各スピンバルブ型薄膜素子の膜構
成において括弧内の数値は膜厚を示しており、単位はオ
ングストロームである。
の成膜後、実施例1,2にあっては、200(Oe)の
磁場、比較例1,2にあっては、2k(Oe)の磁場を
印加しながら、260℃で4時間の熱処理を施してい
る。その実験結果を図20に示す。図20に示すよう
に、4種類のスピンバルブ型薄膜素子は全て、PtMn
合金の膜厚を厚くすることにより、交換結合磁界を大き
くできることがわかる。ここで本発明では、500(O
e)以上の交換結合磁界を得られる範囲を好ましい範囲
としているから、比較例1,2では、共にPtMn合金
の膜厚を少なくとも200オングストローム以上で形成
しなければ、500(Oe)以上の交換結合磁界を得る
ことができないことがわかる。
合金の膜厚を90オングストローム以上にすれば500
(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能であるこ
とがわかる。そこで本発明では、PtMn合金の好まし
い膜厚の範囲を90〜200オングストロームの範囲内
に設定している。さらに図20に示すように、実施例
1,2のPtMn合金の膜厚を100オングストローム
以上にすれば、少なくとも1000(Oe)以上の交換
結合磁界を得ることが可能であるとわかる。そこで本発
明では、よりも好ましいPtMn合金の膜厚を100〜
200オングストロームの範囲内に設定している。
バルブ型薄膜素子を製作し、各スピンバルブ型薄膜素子
における反強磁性層(PtMn合金)の膜厚と、交換結
合磁界との関係について測定した。実施例は、固定磁性
層が非磁性中間層を介して第1の固定磁性層と第2の固
定磁性層の2層に分断して形成された本発明のデュアル
スピンバルブ型薄膜素子、比較例は、固定磁性層が単層
で形成された従来のデュアルスピンバルブ型薄膜素子で
ある。
ける膜構成は、下から、Si基板/アルミナ/Ta(3
0)/反強磁性層;PtMn(x)/第1の固定磁性
層;Co(20)/非磁性中間層;Ru(6)/第2の
固定磁性層;Co(25)/非磁性導電層;Cu(2
0)/フリー磁性層;Co(10)+NiFe(40)
+Co(10)/非磁性導電層;Cu(20)/第2の
固定磁性層;Co(20)/非磁性中間層;Ru(8)
/第1の固定磁性層;Co(25)/反強磁性層;Pt
Mn(X)/Ta(30)であり、比較例のスピンバル
ブ型薄膜素子における膜構成は、下から、Si基板/ア
ルミナ/Ta(30)/反強磁性層;PtMn(X)/
固定磁性層;Co(30)/非磁性導電層;Cu(2
0)/フリー磁性層;Co(10)+NiFe(40)
+Co(10)/非磁性導電層;Cu(20)/固定磁
性層;Co(30)/反強磁性層;PtMn(X)/T
a(30)である。なお各スピンバルブ型薄膜素子の膜
構成における括弧内の数値は膜厚を示しており、単位は
オングストロームである。
実施例では、200(Oe)の磁場を、比較例では2k
(Oe)の磁場を印加しながら260℃で4時間の熱処
理を施している。その実験結果を図21に示す。図21
に示すように、比較例ではPtMn合金の膜厚を約20
0オングストローム以上で形成しないと、500(O
e)以上の交換結合磁界を得ることができないとわか
る。これに対し、実施例では、PtMn合金の膜厚を、
100オングストローム以上で形成すれば500(O
e)以上の交換結合磁界を得ることができるとわかる。
そこで本発明では、好ましい反強磁性層の膜厚を100
〜200オングストロームの範囲内に設定している。さ
らに実施例では、PtMn合金の膜厚を110オングス
トローム以上で形成すれば、1000(Oe)以上の交
換結合磁界を得ることが可能であるため、本発明では、
より好ましい反強磁性層の膜厚を110〜200オング
ストロームの範囲内に設定している。
MRとの関係を示すグラフである。図22に示すよう
に、比較例では、PtMn合金の膜厚を200オングス
トローム以上で形成すると、約10%以上のΔMRを得
ることが可能となっているが、実施例においては、Pt
Mn合金の膜厚を100オングストローム程度に薄くし
ても、従来とほぼ同じ程度のΔMRを確保できることが
わかる。
る積層膜のうち、最も膜厚の厚いのは反強磁性層であ
る。このため本発明によれば、図20及び図21に示す
ように、前記反強磁性層の膜厚を薄くしても、具体的に
は従来のスピンバルブ型薄膜素子の反強磁性層の膜厚の
半分以下で形成しても、大きい交換結合磁界を得ること
が可能となっている。このため本発明では、スピンバル
ブ型薄膜素子全体の膜厚を薄くすることができ、図13
に示すように、前記スピンバルブ型薄膜素子122の上
下に形成されるギャップ層121,125の膜厚を絶縁
性を確保できる程度に充分に厚くしても、ギャップ長G
lを小さくでき、狭ギャップ化を実現できる。
て第1のフリー磁性層と第2のフリー磁性層の2層に分
断して形成した本発明におけるスピンバルブ型薄膜素子
を製作し、前記第1のフリー磁性層と第2のフリー磁性
層との膜厚比と、交換結合磁界との関係について測定し
た。まず、第1のフリー磁性層(非磁性導電層に接し、
ΔMRに直接関与する側のフリー磁性層)の膜厚を50
オングストロームで固定し、第2のフリー磁性層(ΔM
Rに直接関与しない側のフリー磁性層)の膜厚を変化さ
せた。膜構成は下から、Si基板/アルミナ/Ta(3
0)/第2のフリー磁性層(F2);NiFe(X)/
非磁性中間層;Ru(8)/第1のフリー磁性層(F
1);NiFe(40)+Co(10)/非磁性導電
層;Cu(20)/Ru(8)/反強磁性層;PtMn
(150)/Ta(30)であり、各層における括弧内
の数値は膜厚を示しており、単位はオングストロームで
ある。なおスピンバルブ型薄膜素子を成膜後、200
(Oe)の磁場を印加しながら、260℃で4時間の熱
処理を施している。
(F2)の膜厚が40オングストローム程度まで大きく
なると、交換結合磁界は大きくなることがわかる。ま
た、前記第2のフリー磁性層(F2)の膜厚が60オン
グストローム以上になると、徐々の交換結合磁界は低下
していくことがわかる。前記第2のフリー磁性層(F
2)の膜厚が40〜60オングストロームの範囲内であ
ると、交換結合磁界は急激に小さくなり測定不可能であ
った。その原因は、第1のフリー磁性層(F1)の膜厚
(=50オングストローム)と、第2のフリー磁性層の
膜厚とがほぼ同じ値になるため、前記第1のフリー磁性
層(F1)及び第2のフリー磁性層(F2)の磁気モー
メントがほぼ同じになり、印加磁場に対し、前記第1の
フリー磁性層(F1)の磁化及び第2のフリー磁性層
(F2)の磁化が両方とも印加磁場方向へ向こうとす
る。磁気モーメントの値が異なれば、第1のフリー磁性
層(F1)と第2のフリー磁性層(F2)との間には交
換結合磁界(RKKY相互作用)が発生し、前記第1の
フリー磁性層(F1)の磁化と第2のフリー磁性層(F
2)の磁化とが反平行の状態になろうとするが、前述の
ように、前記第1のフリー磁性層(F1)の磁化及び第
2のフリー磁性層(F2)の磁化が両方とも同一方向に
向こうとするため、前記第1のフリー磁性層(F1)と
第2のフリー磁性層(F2)との磁化状態は不安定化
し、後述するように、前記第2のフリー磁性層(F2)
の変動磁化と、固定磁性層(第1の固定磁性層)の固定
磁化との相対角度が制御できなくなり、ΔMRは急激に
低下する。
磁界を得ることができる範囲を好ましい範囲に設定して
いるので、図23に示すように、(第1のフリー磁性層
(F1)の膜厚)/(第2のフリー磁性層(F2)の膜
厚)を、0.56〜0.83、あるいは1.25〜5の
範囲内で形成すれば、500(Oe)以上の交換結合磁
界を得ることができるとわかる。さらに前記(第1のフ
リー磁性層(F1)の膜厚/第2のフリー磁性層(F
2)の膜厚)を、0.61〜0.83、あるいは1.2
5〜2.1の範囲内で形成すれば1000(Oe)以上
の交換結合磁界を得ることができてより好ましい。
間層を介して第1のフリー磁性層と第2のフリー磁性層
の2層に分断して形成した本発明におけるスピンバルブ
型薄膜素子を製作し、前記第1のフリー磁性層と第2の
フリー磁性層との膜厚比と、ΔMRとの関係について測
定した。まず、第2のフリー磁性層(ΔMRに直接関与
しない側のフリー磁性層)を20オングストロームで固
定し、第1のフリー磁性層(非磁性導電層に接し、ΔM
Rに直接関与する側のフリー磁性層)の膜厚を変化させ
た。膜構成は、下から、Si基板/アルミナ/Ta(3
0)/第2のフリー磁性層;NiFe(20)/非磁性
中間層;Ru(8)/第1のフリー磁性層;NiFe
(X)+Co(10)/非磁性導電層;Cu(20)/
第1の固定磁性層;Co(25)/非磁性中間層;Ru
(8)/第2の固定磁性層;Co(20)/反強磁性
層;PtMn(15)/Ta(30)であり、各層にお
ける括弧内の数値は膜厚を示しており、単位はオングス
トロームである。
を成膜後、200(Oe)の磁場を印加して260℃で
4時間の熱処理を施している。また上記膜構成を見てわ
かるように、本発明では第1のフリー磁性層は2層で形
成されており、NiFe膜の膜厚を変化させている。そ
の実験結果を図24に示すが、図24に示す横軸は、N
iFe合金の膜厚と、Co膜の膜厚(=10オングスト
ローム)を足した第1のフリー磁性層総合の膜厚であ
る。図24に示すように、第1のフリー磁性層(F1)
の膜厚が、20オングストロームに近づくと、第2のフ
リー磁性層(F2)の膜厚とほぼ同程度になるため、Δ
MRは急激に低下することがわかる。また、図24に示
すように、第1のフリー磁性層(F1)の膜厚が約30
オングストローム以上になると、ΔMRは上昇し、従来
のスピンバルブ型薄膜素子(シングルスピンバルブ型薄
膜素子)と同程度のΔMRを得ることが可能である。
(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能な(第1
のフリー磁性層(F1)の膜厚)/(第2のフリー磁性
層(F2)の膜厚)の範囲を、図24上に表してみる
と、第1のフリー磁性層(F1)の膜厚)/(第2のフ
リー磁性層(F2)の膜厚)を1.25〜5の範囲内に
すれば、高いΔMRを得ることが可能となっている。
2のフリー磁性層との間に介在する非磁性中間層の膜厚
を変化させて、前記非磁性中間層の膜厚と交換結合磁界
との関係について測定した。実験に使用したスピンバル
ブ型薄膜素子(デュアルスピンバルブ型薄膜素子)の膜
構成は下から、Si基板/アルミナ/Ta(30)/反
強磁性層;PtMn(150)/Ru(6)/非磁性導
電層;Cu(20)/第1のフリー磁性層;Co(1
0)+NiFe(50)/非磁性中間層;Ru(X)/
第1のフリー磁性層;NiFe(30)+Co(10)
/非磁性導電層;Cu(20)/Ru(8)/反強磁性
層;PtMn(150)/Ta(30)であり、各層に
おける括弧内の数値は膜厚を表しており、単位はオング
ストロームである。なお本発明ではスピンバルブ型薄膜
素子を成膜後、200(Oe)の磁場を印加しながら、
260℃で4時間の熱処理を施している。その実験結果
を図20に示す。
の交換結合磁界を得るには、Ru膜の膜厚を5.5〜1
0.0オングストロームの範囲内で形成すればよいこと
がわかる。また1000(Oe)以上の交換結合磁界を
得るには、Ru膜の膜厚を5.9〜9.4オングストロ
ームの範囲内で形成すればよいことがわかる。
層を非磁性中間層を介して第1の固定磁性層と第2の固
定磁性層の2層に分断して形成し、前記第1の固定磁性
層と第2の固定磁性層との間に発生する交換結合磁界
(RKKY相互作用)によって、前記第1の固定磁性層
の磁化と第2の固定磁性層の磁化を反平行状態にすれ
ば、前記固定磁性層の磁化状態を非常に安定した状態に
保つことが可能である。特に本発明では、前記第1の固
定磁性層と第2の固定磁性層との膜厚比、及び膜厚を適
性な範囲内で調節することにより、500(Oe)以上
の交換結合磁界、さらに好ましくは1000(Oe)以
上の交換結合磁界を得ることが可能である。
第2の固定磁性層との間に介在する非磁性中間層を、R
u,Rh,Ir,Cr,Re,Cuなどで形成し、さら
に、フリー磁性層よりも上側に前記非磁性中間層が形成
される場合と、下側に非磁性中間層が形成される場合と
で、前記非磁性中間層の膜厚を適性な範囲内で調節する
ことにより、500(Oe)以上の交換結合磁界を得る
ことができ、より好ましくは1000(Oe)以上の交
換結合磁界を得ることができる。
ロッキング温度が高く、また固定磁性層(第1の固定磁
性層)との界面で発生する交換結合磁界(交換異方性磁
界)が大きく、しかも耐食性に優れた反強磁性材料とし
て、PtMn合金を使用している。あるいはX―Mn
(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ruのいずれか1種
または2種以上の元素である)、Pt―Mn―X′(た
だしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Agのい
ずれか1種または2種以上の元素である)で形成しても
よい。
磁性層と第2の固定磁性層の2層に分断した場合では、
前記反強磁性層の膜厚を、従来の反強磁性層の半分程度
の膜厚で形成しても、500(Oe)以上の交換結合磁
界を得ることができ、より好ましくは1000(Oe)
以上の交換結合磁界を得ることができる。
性層と同様に、非磁性中間層を介して第1のフリー磁性
層と第2のフリー磁性層に分断されて形成されているこ
とが好ましい。第1のフリー磁性層と第2のフリー磁性
層との間には交換結合磁界(RKKY相互作用)が発生
し、前記第1のフリー磁性層の磁化と第2のフリー磁性
層の磁化とが反平行状態に磁化され、外部磁界に対して
感度よく反転できるようになる。
と第2のフリー磁性層との膜厚比を適正な範囲内で形成
し、さらに前記第1のフリー磁性層と第2のフリー磁性
層との間に介在する非磁性中間層をRu膜などで形成
し、前記非磁性中間層の膜厚を適性な範囲内で形成すれ
ば、500(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可
能であり、より好ましくは1000(Oe)以上の交換
結合磁界を得ることができる。
との界面において熱処理を必要とする反強磁性層を使用
した場合に、第1の固定磁性層の磁気モーメントと第2
の固定磁性層の磁気モーメントの大小を適正に調節し、
さらに前記熱処理中に印加する磁場の方向及びその大き
さを適正に調節することによって、第1の固定磁性層の
磁化を向けたい方向に向けることができ、しかも前記第
1の固定磁性層の磁化と第2の固定磁性層の磁化とを反
平行状態に適正に制御することが可能である。
ことによって形成されるセンス電流磁界の方向と、第1
の固定磁性層の磁気モーメントと第2の固定磁性層の磁
気モーメントとを足し合わせて求めることができる合成
磁気モーメントの方向とを一致させることにより、前記
第1の固定磁性層と第2の固定磁性層との磁化状態をさ
らに熱的に安定されることが可能である。
性層にどのような反強磁性材料を使用した場合であって
も適用でき、例えば反強磁性層と固定磁性層(第1の固
定磁性層)との界面で交換結合磁界(交換異方性磁界)
を発生させるために、熱処理が必要であるか、あるいは
必要でないかを問わない。
で形成されていたシングルスピンバルブ型薄膜素子の場
合であっても、前述したセンス電流を流すことによって
形成されるセンス電流磁界の方向と、固定磁性層の磁化
方向とを一致させることにより、前記固定磁性層の磁化
を熱的に安定化させることが可能である。
薄膜素子の横断面図、
との対向面側から見た断面図、
薄膜素子の横断面図、
との対向面側から見た断面図、
薄膜素子の横断面図、
との対向面側から見た断面図、
薄膜素子の横断面図、
との対向面側から見た断面図、
薄膜素子の横断面図、
体との対向面側から見た断面図、
型薄膜素子の横断面図、
媒体との対向面側から見た断面図、
の対向面からみた断面図、
るいは40オングストロームで固定した場合の、第2の
固定磁性層(P2)の膜厚と、交換結合磁界との関係、
及び(第1の固定磁性層(P1)の膜厚)/(第2の固
定磁性層(P2)の膜厚)と、交換結合磁界(Hex)
との関係を示すグラフ、
るいは40オングストロームで固定した場合の、第2の
固定磁性層(P2)の膜厚と、ΔMR(%)との関係を
示すグラフ、
ロームで固定した場合の、第1の固定磁性層(P1)の
膜厚と、交換結合磁界との関係、及び(第1の固定磁性
層(P1)の膜厚)/(第2の固定磁性層(P2)の膜
厚)と交換結合磁界(Hex)との関係を示すグラフ、
ロームで固定した場合の、第1の固定磁性層(P1)の
膜厚と、ΔMR(%)との関係を示すグラフ、
第1の固定磁性層(上)の膜厚及び第1の固定磁性層
(下)の膜厚と交換結合磁界(Hex)との関係、さら
に(第1の固定磁性層(P1 上)の膜厚)/(第2の
固定磁性層(P2 上)の膜厚)及び(第1の固定磁性
層(P1 下)の膜厚)/(第2の固定磁性層(P2
下)の膜厚)と交換結合磁界(Hex)との関係を示す
グラフ、
介在するRu(非磁性中間層)の膜厚と交換結合磁界
(Hex)との関係を示すグラフ、
各スピンバルブ型薄膜素子のPtMn(反強磁性層)の
膜厚と、交換結合磁界(Hex)との関係を示すグラ
フ、
使用し、各デュアルスピンバルブ型薄膜素子のPtMn
(反強磁性層)の膜厚と、交換結合磁界(Hex)との
関係を示すグラフ、
使用し、各デュアルスピンバルブ型薄膜素子のPtMn
(反強磁性層)の膜厚と、ΔMR(%)との関係を示す
グラフ、
ングストロームで固定した場合、第2のフリー磁性層
(F2)の膜厚と交換結合磁界(Hex)との関係、及
び(第1のフリー磁性層(F1)の膜厚)/(第2のフ
リー磁性層(F2)の膜厚)と交換結合磁界(Hex)
との関係を示すグラフ、
ングストロームで固定した場合、第1のフリー磁性層
(F1)の膜厚とΔMR(%)との関係、及び(第1の
フリー磁性層(F1)の膜厚)/(第2のフリー磁性層
(F2)の膜厚)とΔMR(%)との関係を示すグラ
フ、
磁性層(F2)の間に介在するRu(非磁性中間層)の
膜厚と、交換結合磁界(Hex)との関係を示すグラ
フ、
び従来におけるスピンバルブ型薄膜素子におけるヒステ
リシスループ、
Oで形成した場合、及びFeMnで形成した場合の各ス
ピンバルブ型薄膜素子における環境温度(℃)と交換結
合磁界(Hex)との関係を示すグラフ、
媒体との対向面からみた断面図、
反強磁性層 12、27、52、79 第1の固定磁性層 13、26、33、42、53、59、72、78、9
4、100、106 非磁性中間層 14、25、54、77 第2の固定磁性層 15、24、35、40、55、76、96、104
非磁性導電層 16、21、36 フリー磁性層 19、29、45、61、81、109 保護層 32、93 第1の固定磁性層(下) 34、95 第2の固定磁性層(下) 41、105 第2の固定磁性層(上) 43、107 第1の固定磁性層(上) 56、73、101 第1のフリー磁性層 60、71、97 第2のフリー磁性層 62、82、130 ハードバイアス層 63、83、131 導電層 112、113、114 センス電流
Claims (11)
- 【請求項1】 反強磁性層と、この反強磁性層と接して
形成され、前記反強磁性層との交換結合磁界により磁化
方向が固定される固定磁性層と、前記固定磁性層に非磁
性導電層を介して形成され、前記固定磁性層の磁化方向
と交叉する方向に磁化が揃えられるフリー磁性層とを有
するスピンバルブ型薄膜素子において、 前記固定磁性層は、反強磁性層に接する第1の磁性層
と、前記第1の磁性層と非磁性中間層を介して重ねられ
る第2の磁性層の2層で形成され、前記第1の磁性層と
第2の磁性層は異なる膜厚で形成されており、 前記反強磁性層は、PtMn合金で形成され、 前記交換結合磁界は、1kOe以上である ことを特徴と
するスピンバルブ型薄膜素子。 - 【請求項2】 PtMnに代えて、前記反強磁性層は、
X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ruのいず
れか1種または2種以上の元素である)、あるいは、P
t―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,R
u,Au,Agのいずれか1種または2種以上の元素で
ある)で形成される請求項1記載のスピンバルブ型薄膜
素子。 - 【請求項3】 前記(第1の磁性層の膜厚)/(第2の
磁性層の膜厚)は、0.53〜0.95、あるいは1.
05〜1.8の範囲内である請求項1または2に記載の
スピンバルブ型薄膜素子。 - 【請求項4】 前記第1の固定磁性層の膜厚及び第2の
固定磁性層の膜厚は、共に10〜50オングストローム
の範囲内であり、且つ│第1の固定磁性層の膜厚―第2
の固定磁性層の膜厚│≧2オングストロームである請求
項1ないし3のいずれかに記載のスピンバルブ型薄膜素
子。 - 【請求項5】 前記フリー磁性層は、非磁性中間層を介
して第1のフリー磁性層と第2のフリー磁性層の2層で
形成され、前記第1のフリー磁性層と第2のフリー磁性
層は、異なる膜厚で形成されている請求項1ないし4の
いずれかに記載のスピンバルブ型薄膜素子。 - 【請求項6】 前記(第1のフリー磁性層の膜厚/第2
のフリー磁性層の膜厚)は、0.61〜0.83、ある
いは1.25〜2.1の範囲内である請求項5記載のス
ピンバルブ型薄膜素子。 - 【請求項7】 前記第1のフリー磁性層と第2のフリー
磁性層との間に介在する非磁性中間層の膜厚は、5.9
〜9.4オングストロームの範囲内である請求項5また
は6に記載のスピンバルブ型薄膜素子。 - 【請求項8】 前記反強磁性層は、フリー磁性層よりも
下側に形成され、前記第1の磁性層と第2の磁性層との
間に介在する非磁性中間層の膜厚は、4.0〜9.4オ
ングストロームの範囲内である請求項1ないし7のいず
れかに記載のスピンバルブ型薄膜素子。 - 【請求項9】 前記反強磁性層は、フリー磁性層よりも
上側に形成され、前記第1の磁性層と第2の磁性層との
間に介在する非磁性中間層の膜厚は、2.8〜6.2オ
ングストローム、あるいは6.8〜10.3オングスト
ロームの範囲内である請求項1ないし7のいずれかに記
載のスピンバルブ型薄膜素子。 - 【請求項10】 前記反強磁性層の膜厚は、100〜2
00オングストロームの範囲内である請求項1ないし9
のいずれかに記載のスピンバルブ型薄膜素子。 - 【請求項11】 請求項1ないし請求項10のいずれか
に記載されたスピンバルブ型薄膜素子の上下に、ギャッ
プ層を介してシールド層が形成されていることを特徴と
する薄膜磁気ヘッド。
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