JP3854107B2 - スピンバルブ型薄膜素子及びこのスピンバルブ型薄膜素子を用いた薄膜磁気ヘッド - Google Patents

スピンバルブ型薄膜素子及びこのスピンバルブ型薄膜素子を用いた薄膜磁気ヘッド Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、固定磁性層の固定磁化方向と外部磁界の影響を受けるフリー磁性層の磁化の方向との関係で電気抵抗が変化するスピンバルブ型薄膜素子に係り、特に、センス電流を適正な方向に流すことにより、固定磁性層の磁化をより安定した状態に保つことが可能なスピンバルブ型薄膜素子及びこのスピンバルブ型薄膜素子を用いた薄膜磁気ヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】
図28は、従来のスピンバルブ型薄膜素子を模式図的に示した横断面図、図29は、図28に示すスピンバルブ型薄膜素子を記録媒体との対向面側から見た断面図である。
【0003】
符号1は例えばTa(タンタル)などで形成された下地層であり、この下地層1の上に反強磁性層2が形成され、さらに前記反強磁性層2の上に固定磁性層3が形成されている。
【0004】
前記固定磁性層3は前記反強磁性層2に接して形成されることにより、前記固定磁性層3と反強磁性層2との界面にて交換結合磁界(交換異方性磁界)が発生し、前記固定磁性層の磁化は、例えば図示Y方向に固定される。
【0005】
前記固定磁性層3の上には、Cuなどで形成された非磁性導電層4が形成され、さらに前記非磁性導電層4の上には、フリー磁性層5が形成されている。なお符号6は、Taなどで形成された保護層である。
【0006】
図29に示すように、下地層1から保護層6までの積層体の両側には、例えばCo―Pt(コバルト―白金)合金で形成されたハードバイアス層7,7、及び導電層8,8が形成されており、例えば、前記ハードバイアス層7が図示X方向に磁化されていることで、前記フリー磁性層5の磁化が図示X方向に揃えられている。これにより、前記フリー磁性層5の変動磁化と前記固定磁性層3の固定磁化とが交叉する関係となっている。なお符号6は、Taなどで形成された保護層である。
【0007】
このスピンバルブ型薄膜素子では、前記導電層8から、センス電流が、図示X方向あるいは図示X方向と逆方向に、主に非磁性導電層4を中心にして流れる。そして、ハードディスクなどの記録媒体からの洩れ磁界により、図示X方向に揃えられた前記フリー磁性層5の磁化が変動すると、図示Y方向に固定された固定磁性層3の固定磁化との関係で電気抵抗が変化し、この電気抵抗値の変化に基づく電圧変化により、記録媒体からの洩れ磁界が検出される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前述したようにセンス電流は、導電層8から主に比抵抗の小さい非磁性導電層4を中心にして流れるが、センス電流を流すことにより、右ネジの法則によってセンス電流磁界が形成され、このセンス電流磁界が、前記固定磁性層3の固定磁化に影響を与えるといった問題がある。
【0009】
例えば図28に示すように、固定磁性層3の磁化は図示Y方向に向けられているが、センス電流を流すことによって形成されるセンス電流磁界が、前記固定磁性層3の部分で、図示Y方向と逆方向に向けらていた場合、前記固定磁性層3の固定磁化方向とセンス電流磁界の方向とが一致しないために、前記固定磁化がセンス電流磁界の影響を受けてゆらぎ、磁化状態が不安定化するといった問題がある。
【0010】
特に、前記反強磁性層2に、NiOやFeMn合金など、固定磁性層3との界面で発生する交換結合磁界(交換異方性磁界)が小さく、またブロッキング温度が低い反強磁性材料を使用した場合にあっては、固定磁性層3の固定磁化方向とセンス電流磁界方向とが逆方向の関係になっていると、前記固定磁性層3の固定磁化の劣化が激しく、さらには、前記固定磁化が反転してしまうなどの破壊につながる。
【0011】
近年では、高記録密度化に対応するために、センス電流を多く流す傾向にあるが、1mAのセンス電流を流すことにより、約30(Oe)のセンス電流磁界が発生し、さらに素子温度が約15℃上昇することが判っており、このため前記センス電流を数十mA流した場合にあっては、急激な素子温度上昇と、膨大なセンス電流磁界が発生することになる。
【0012】
このため固定磁性層3の固定磁化の熱的安定性を向上させるために、ブロッキング温度が高く、且つ固定磁性層3との界面で大きな交換結合磁界(交換異方性磁界)を発生する反強磁性材料を選択することと、前記センス電流を適正な方向に流し、センス電流磁界によって、固定磁性層3の磁化が破壊されないようにする必要性がある。
【0013】
本発明は上記従来の問題点を解決するためのものであり、特に固定磁性層の構造、及び反強磁性層の材質を改良し、しかもセンス電流を流す方向を適正な方向に制御することにより、前記固定磁性層の磁化状態を熱的に安定した状態に保つことができるスピンバルブ型薄膜素子及びこのスピンバルブ型薄膜素子を用いた薄膜磁気ヘッドを提供することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、フリー磁性層の上に形成された上側非磁性導電層と、前記フリー磁性層の下に形成された下側非磁性導電層と、前記上側非磁性材料層の上に形成された上側固定磁性層と、前記下側非磁性導電層の下に形成された下側固定磁性層と、前記上側固定磁性層の上に形成された上側反強磁性層と、前記下側固定磁性層の下に形成された下側反強磁性層と、を有し、
前記上側固定磁性層及び前記下側固定磁性層の固定磁化と交叉する方向にセンス電流が流されることにより、前記上側固定磁性層及び下側固定磁性層の固定磁化方向と前記フリー磁性層の変動磁化との関係によって変化する電気抵抗が検出されるスピンバルブ型薄膜素子において、
前記上側固定磁性層及び前記下側固定磁性層は、前記反強磁性層に接する第1の磁性層と、前記第1の磁性層と非磁性中間層を介して重ねられる第2の磁性層の積層構造で形成されており、
前記上側固定磁性層と前記下側固定磁性層の一方で、前記第1の磁性層の磁気モーメント(飽和磁化Ms・膜厚t)は、前記第2の磁性層の磁気モーメントよりも大きく形成され、他方で、前記第1の磁性層の磁気モーメントは、前記第2の磁性層の磁気モーメントよりも小さく形成され、
各前記第1の磁性層は、共に同一方向に固定され、各前記第2の磁性層は前記第1の磁性層に反平行に磁化されて、前記各第2の磁性層は、共に同一方向に固定され、
前記上側固定磁性層の前記第1の磁性層の磁気モーメントと前記第2の磁性層の磁気モーメントとの合成磁気モーメント、および、前記下側固定磁性層の前記第1の磁性層の磁気モーメントと前記第2の磁性層の磁気モーメントとの合成磁気モーメントが、互いに逆方向を向いており
前記第1の磁性層/前記非磁性中間層/前記第2の磁性層の部分に形成されるセンス電流磁界の方向が、前記フリー磁性層の上下に形成された双方の前記合成磁気モーメントの方向と同一方向となる方向に前記センス電流が流されるものであり、
前記反強磁性層は、PtMn合金、あるいは、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ruのいずれか1種または2種以上の元素である)で形成されることを特徴とするものである。
【0015】
また前記PtMn合金に代えて、前記反強磁性層は、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ruのいずれか1種または2種以上の元素である)、あるいは、Pt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Agのいずれか1種または2種以上の元素である)で形成されることが好ましい。
【0016】
また本発明では、前記第1の磁性層と前記第2の磁性層の間に形成される非磁性中間層は、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種あるいは2種以上の合金で形成されることが好ましい。
【0017】
また本発明における薄膜磁気ヘッドは、上記のいずれかに記載されたスピンバルブ型薄膜素子の上下に、ギャップ層を介してシールド層が形成されていることを特徴とするものである。
【0018】
本発明では、スピンバルブ型薄膜素子を構成する固定磁性層が、2層に分断されており、2層に分断された固定磁性層の間に非磁性中間層が形成されている。
【0019】
この分断された2層の固定磁性層の磁化は、反平行状態に磁化されており、しかも一方の固定磁性層の磁気モーメントの大きさと、他方の固定磁性層の磁気モーメントの大きさとが異なる、いわゆるフェリ状態となっている。2層の固定磁性層間に発生する交換結合磁界(RKKY相互作用)は、1000(Oe)から5000(Oe)と非常に大きいため、2層の固定磁性層は非常に安定した状態で反平行に磁化された状態となっている。
【0020】
ところで反平行(フェリ状態)に磁化された一方の固定磁性層は、反強磁性層に接して形成されており、この反強磁性層に接する側の固定磁性層(以下、第1の固定磁性層と称す)は、前記反強磁性層との界面で発生する交換結合磁界(交換異方性磁界)によって、例えば記録媒体との対向面から離れる方向(ハイト方向)に磁化が固定される。これにより、前記第1の固定磁性層と非磁性中間層を介して対向する固定磁性層(以下、第2の固定磁性層と称す)の磁化は、前記第1の固定磁性層の磁化と反平行の状態で固定される。
【0021】
従来では、反強磁性層と固定磁性層との2層で形成していた部分を、本発明では、反強磁性層/第1の固定磁性層/非磁性中間層/第2の固定磁性層の4層で形成することによって、第1の固定磁性層と第2の固定磁性層の磁化状態を外部磁界に対し非常に安定した状態に保つことが可能となる。
【0022】
ところで近年では、高記録密度化に伴い、記録媒体の回転数の増加による装置内温度の上昇や、センス電流量の増加による温度上昇及び、センス電流磁界の増大によって、前記第1の固定磁性層と第2の固定磁性層の磁化状態が不安定化する恐れがある。
【0023】
前記センス電流は、第1の固定磁性層と第2の固定磁性層の磁化方向と交叉する方向(フリー磁性層の磁化方向と同一方向、あるいは逆方向)に流されるが、前記センス電流を流すことにより、右ネジの法則によって、センス電流磁界が発生し、このセンス電流磁界は、第1の固定磁性層/非磁性中間層/第2の固定磁性層の部分において、前記第1の固定磁性層(あるいは第2の固定磁性層)の磁化方向と同一方向かあるいは逆方向に侵入してくる。
【0024】
前述したように、前記第1の固定磁性層の磁気モーメントと第2の固定磁性層の磁気モーメントは異なる値で形成されており、これによって、前記第1の固定磁性層の磁化と第2の固定磁性層の磁化は反平行状態に磁化された状態となっているが、本発明では、前記第1の固定磁性層と第2の固定磁性層の磁気モーメントの大きさの相違を利用して、センス電流を適正な方向に流し、センス電流磁界によって、第1の固定磁性層と第2の固定磁性層の磁化状態を、熱的により安定した状態にできるようにしている。
【0025】
具体的には、シングルスピンバルブ型薄膜素子において、第1の固定磁性層の磁気モーメントが、第2の固定磁性層の磁気モーメントよりも大きい場合、第1の固定磁性層の磁気モーメントと第2の磁気モーメントを足し合わせて求めることができる合成磁気モーメントは、第1の固定磁性層の磁気モーメントと同一方向に向いている。
【0026】
そして本発明では、センス電流を流すことによって、第1の固定磁性層/非磁性中間層/第2の固定磁性層の部分に形成されるセンス電流磁界の方向と、前記合成磁気モーメントの方向とが一致するように、センス電流を流す方向を調整し、第1の固定磁性層と第2の固定磁性層の磁化状態を熱的に安定した状態に保つことが可能になる。
【0027】
さらに本発明では、デュアルスピンバルブ型薄膜素子において、フリー磁性層の上下に形成される合成磁気モーメントを互いに逆方向になるように、第1の固定磁性層と第2の固定磁性層の磁気モーメント等を調整し、センス電流を流すことによって、フリー磁性層の上下における第1の固定磁性層/非磁性中間層/第2の固定磁性層の部分に形成されるセンス電流磁界の方向と、前記合成磁気モーメントの方向とを一致させ、これによって、第1の固定磁性層と第2の固定磁性層の磁化状態を熱的に安定した状態に保つことが可能になる。
【0028】
また本発明では、センス電流を流す方向の制御の他に様々な条件によって、第1の固定磁性層と第2の固定磁性層の磁化状態の安定性を向上させている。
【0029】
まず第1に反強磁性層と第1の固定磁性層との界面で発生する交換結合磁界(交換異方性磁界)を大きくすることである。前述したように反強磁性層との界面で発生する交換結合磁界(交換異方性磁界)によって第1の固定磁性層の磁化は、ある一定方向に固定されるが、この交換結合磁界が弱いと、第1の固定磁性層の固定磁化が安定せず、外部磁界などにより変動しやすくなってしまう。このため反強磁性層との界面で発生する交換結合磁界(交換異方性磁界)は大きいことが好ましく、本発明では、第1の固定磁性層との界面で大きい交換結合磁界を得ることができる反強磁性層としてPtMn合金を提示することができる。またPtMn合金に代えて、X―Mn(XはPd,Ir,Rh,Ru)合金やPt―Mn―X′(X′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Ag)合金を使用してもよい。
【0030】
これら反強磁性材料は、従来から反強磁性材料として使用されているNiO、FeMn合金やNiMn合金などに比べて、交換結合磁界が大きく、またブロッキング温度が高く、さらに耐食性に優れているなど、反強磁性材料として優れた特性を有している。
【0031】
図26は、反強磁性層にPtMn合金を使用し、固定磁性層を非磁性中間層を介して第1の固定磁性層と第2の固定磁性層の2層に分断した本形態におけるスピンバルブ型薄膜素子と、固定磁性層を単層で形成した従来におけるスピンバルブ型薄膜素子とのR―H曲線である。
【0032】
形態におけるスピンバルブ型薄膜素子の膜構成は、下から、
Si基板/アルミナ/Ta(30)/反強磁性層;PtMn(200)/第1の固定磁性層;Co(25)/非磁性中間層;Ru(7)/第2の固定磁性層;Co(20)/Cu(20)/Co(10)/NiFe(40)/Ta(30)であり、従来におけるスピンバルブ型薄膜素子の膜構成は、下から、
Si基板/アルミナ/Ta(30)/反強磁性層;PtMn(300)/固定磁性層;Co(25)/Cu(20)/Co(10)/NiFe(40)/Ta(30)である。なお括弧内の数値は膜厚を示しており、単位はオングストロームである。
【0033】
なお本形態及び従来におけるスピンバルブ型薄膜素子共に、成膜後、200(Oe)の磁場を印加しながら、260℃で4時間の熱処理を施した。
【0034】
図26に示すように、本形態におけるスピンバルブ型薄膜素子のΔMR(抵抗変化率)は、最大値で7〜8%の間であり、負の外部磁界を与えることにより、前記ΔMRは低下していくが、従来におけるスピンバルブ型薄膜素子のΔMRの落ち方に比べて、本形態におけるΔMRの落ち方は緩やかであることがわかる。
【0035】
ここで本形態では、ΔMRの最大値の半分の値になる時の外部磁界の大きさをスピンバルブ型薄膜素子が発生する交換結合磁界(Hex)と定める。
【0036】
図26に示すように、従来におけるスピンバルブ型薄膜素子では、最大ΔMRが、約8%であり、前記ΔMRが半分になるときの外部磁界(交換結合磁界(Hex))は、絶対値で約900(Oe)であることがわかる。
【0037】
これに対し、本形態におけるスピンバルブ型薄膜素子では、最大ΔMRが、約7.5%であり、従来に比べて若干低下するものの、前記ΔMRが半分になるときの外部磁界(交換結合磁界(Hex))は、絶対値で約2800(Oe)であり、従来に比べて非常に大きくなることがわかる。
【0038】
このように、固定磁性層を2層に分断した本形態におけるスピンバルブ型薄膜素子にあっては、固定磁性層を1層で形成した従来のスピンバルブ型薄膜素子に比べて、交換結合磁界(Hex)を飛躍的に大きくでき、固定磁性層の磁化の安定性を従来に比べて向上できることがわかる。またΔMRについても本形態では従来に比べてあまり低下せず、高いΔMRを保つことができることがわかる。
【0039】
次に図27は、4種類のスピンバルブ型薄膜素子を使用して、環境温度と交換結合磁界との関係を示すグラフである。
【0040】
まず使用する1種目のスピンバルブ型薄膜素子は、反強磁性層にPtMn合金を用い、固定磁性層を2層に分断した本形態におけるスピンバルブ型薄膜素子であり、膜構成としては、下から、
Si基板/アルミナ/Ta(30)/反強磁性層;PtMn(200)/第1の固定磁性層;Co(25)/非磁性中間層;Ru(7)/第2の固定磁性層;Co(20)/Cu(20)/Co(10)/NiFe(70)/Ta(30)である。
【0041】
2種類目は、反強磁性層にPtMn合金を使用し、固定磁性層を単層で形成した従来例1であり、膜構成としては、下から、
Si基板/アルミナ/Ta(30)/反強磁性層;PtMn(300)/固定磁性層;Co(25)/Cu(25)/Co(10)/NiFe(70)/Ta(30)である。
【0042】
3種類目は、反強磁性層にNiOを使用し、固定磁性層を単層で形成した従来例2であり、膜構成としては、下から、
Si基板/アルミナ/反強磁性層;NiO(500)/固定磁性層;Co(25)/Cu(25)/Co(10)/NiFe(70)/Ta(30)である。
【0043】
4種類目は、反強磁性層にFeMn合金を使用し、固定磁性層を単層で形成した従来例3であり、膜構成としては、下から、
Si基板/アルミナ/Ta(30)/NiFe(70)/Co(10)/Cu(25)/固定磁性層;Co(25)/反強磁性層;FeMn(150)/Ta(30)である。なお、上述した4種類全ての膜構成の括弧内の数値は膜厚を示しており、単位はオングストロームである。
【0044】
また反強磁性層にPtMnを用いた本形態及び従来例1では、成膜後、200(Oe)の磁場を印加しながら260℃で4時間の熱処理を施している。また、反強磁性層にNiO、FeMnを使用した従来例2,3では成膜後、熱処理を施していない。
【0045】
図27に示すように本形態におけるスピンバルブ型薄膜素子では、環境温度が約20℃のとき交換結合磁界(Hex)は約2500(Oe)と非常に高くなっていることがわかる。
【0046】
これに対し、反強磁性層にNiOを用いた従来例2、及び反強磁性層にFeMnを用いた従来例3では、環境温度が約20℃でも交換結合磁界(Hex)が約500(Oe)以下と低くなっている。また反強磁性層にPtMnを用い、固定磁性層を単層で形成した従来例1にあっては、環境温度が約20℃で1000(Oe)程度の交換結合磁界を発生しており、反強磁性層にNiO(従来例2)、FeMn(従来例3)を用いるよりも、より大きな交換結合磁界を得られることがわかる。
【0047】
特開平9―16920号公報では、反強磁性層にNiOを使用し、固定磁性層を非磁性中間層を介して2層で形成したスピンバルブ型薄膜素子のR―H曲線が図8に示されている。公報の図8によれば、600(Oe)の交換結合磁界(Hex)を得られるとしているが、この数値は、反強磁性層にPtMnを使用し、固定磁性層を単層で形成した場合の交換結合磁界(約1000(Oe);従来例1)に比べて低いことがわかる。
【0048】
すなわち、反強磁性層にNiOを使用した場合にあっては、固定磁性層を2層に分断し、前記2層の固定磁性層の磁化をフェリ状態にしても、反強磁性層にPtMnを使用し、且つ固定磁性層を単層で形成する場合よりも、交換結合磁界は低くなってしまうため、反強磁性層にPtMn合金を使用することが、より大きい交換結合磁界を得ることができる点で好ましいとわかる。
【0049】
また図27に示すように、反強磁性層にNiOあるいはFeMn合金を使用した場合、環境温度が約200℃になると、交換結合磁界は0(Oe)になってしまうことがわかる。これは、前記NiO及びFeMnのブロッキング温度が約200℃程度と低いためである。
【0050】
これに対し反強磁性層にPtMn合金を使用した従来例1では、環境温度が約400℃になって、交換結合磁界が0(Oe)になっており、前記PtMn合金を使用すると、固定磁性層の磁化状態を熱的に非常に安定した状態に保てることがわかる。
【0051】
ブロッキング温度は反強磁性層として使用される材質に支配されるので、図27に示す本形態におけるスピンバルブ型薄膜素子においても、約400℃になると、交換結合磁界は0(Oe)になると考えられるが、本形態のように反強磁性層にPtMn合金を使用した場合では、NiOなどに比べ高いブロッキング温度を得ることが可能であり、しかも固定磁性層を2層に分断して前記2層の固定磁性層の磁化をフェリ状態にすれば、ブロッキング温度に到達するまでの間に非常に大きい交換結合磁界を得ることができ、前記2層の固定磁性層の磁化状態を熱的に安定した状態に保つことが可能となる。
【0052】
また本形態では第1の固定磁性層と第2の固定磁性層との間に形成されている非磁性中間層として、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種あるいは2種以上を使用し、前記非磁性中間層の膜厚を、反強磁性層がフリー磁性層よりも下側に形成される場合と、上側に形成される場合とで変えており、適正な範囲内の膜厚で前記非磁性中間層を形成することにより、交換結合磁界(Hex)を大きくすることができる。なお前記非磁性中間層の適切な膜厚値については、後でグラフを参照しながら詳述する。
【0053】
さらに本形態によれば、固定磁性層を2層に分断して形成すれば、PtMn合金などで形成される反強磁性層の膜厚を薄くしても大きい交換結合磁界(Hex)を得ることが可能であり、スピンバルブ型薄膜素子の膜構成の中で最も厚い膜厚を有していた反強磁性層を薄くできることで、前記スピンバルブ型薄膜素子全体の総合膜厚を薄くできる。反強磁性層を薄く形成できることで、前記スピンバルブ型薄膜素子の上下に形成されるギャップ層の膜厚を、絶縁性を充分に保つことができる程度に厚くしても、スピンバルブ型薄膜素子の下側に形成されたギャップ層から、スピンバルブ型薄膜素子の上側に形成されたギャップ層までの距離、すなわちギャップ長を短くでき、狭ギャップ化に対応することが可能となっている。
【0054】
ところで本形態のように、固定磁性層を、非磁性中間層を介して第1の固定磁性層と第2の固定磁性層の2層に分断した場合、前記第1の固定磁性層と第2の固定磁性層の膜厚を同じ値で形成すると、交換結合磁界(Hex)、及びΔMR(抵抗変化率)が極端に低下することが実験によりわかった。第1の固定磁性層と第2の固定磁性層との膜厚を同じ膜厚で形成すると、前記第1の固定磁性層と第2の固定磁性層との磁化状態が反平行(フェリ状態)になり難くなるためであると推測され、前記第1の固定磁性層と第2の固定磁性層の磁化状態が反平行状態でないために、フリー磁性層の変動磁化との相対角度を適正に制御できなくなってしまう。
【0055】
そこで本形態では、前記第1の固定磁性層と第2の固定磁性層とを同じ膜厚で形成せず、異なる膜厚で形成することによって、大きい交換結合磁界が得られ、同時にΔMRを従来と同程度まで高くすることが可能となっている。なお第1の固定磁性層と第2の固定磁性層の膜厚比については、後でグラフを参照して詳述する。
【0056】
以上のように本形態では、固定磁性層を非磁性中間層を介して第1の固定磁性層と第2の固定磁性層の2層に分断し、さらに反強磁性層としてPtMn合金など、前記第1の固定磁性層との界面で大きい交換結合磁界(交換異方性磁界)を発揮する反強磁性材料を使用することによって、スピンバルブ型薄膜素子全体の交換結合磁界(Hex)を大きくすることができ、第1の固定磁性層と、第2の固定磁性層の磁化を熱的に安定した反平行状態(フェリ状態)に保つことが可能となっている。
【0057】
特に本形態では、センス電流を流す方向を適正な方向に制御することにより、センス電流を流すことによって形成されるセンス電流磁界の方向と、第1の固定磁性層の磁気モーメントと第2の固定磁性層の磁気モーメントを足し合わせて求めることができる合成磁気モーメントの方向とを一致させ、これにより、より前記第1の固定磁性層と第2の固定磁性層の磁化状態を、熱的に安定した状態に保ことが可能になる。
【0058】
【発明の実施の形態】
図1は参考例のスピンバルブ型薄膜素子を模式図的に示した横断面図、図2は図1のスピンバルブ型薄膜素子を記録媒体との対向面側から見た断面図である。
【0059】
このスピンバルブ型薄膜素子の上下には、ギャップ層を介してシールド層が形成されており、前記スピンバルブ型薄膜素子、ギャップ層、及びシールド層で、再生用の薄膜磁気ヘッド(MRヘッド)が構成されている。なお前記再生用の薄膜磁気ヘッドの上に、記録用のインダクティブヘッドが積層されていてもよい。
【0060】
前記薄膜磁気ヘッドは、ハードディスク装置に設けられた浮上式スライダのトレーリング側端部などに設けられて、ハードディスクなどの記録磁界を検出するものである。なお、ハードディスクなどの磁気記録媒体の移動方向は図示Z方向であり、磁気記録媒体からの洩れ磁界の方向はY方向である。
【0061】
図1,2に示すスピンバルブ型薄膜素子は、反強磁性層、固定磁性層、非磁性導電層、及びフリー磁性層が一層ずつ形成された、いわゆるシングルスピンバルブ型薄膜素子であり、最も下に形成された層は、Taなどの非磁性材料で形成された下地層10である。図1,2では前記下地層10の上に、反強磁性層11が形成され、前記反強磁性層11の上に、第1の固定磁性層12が形成されている。そして図1に示すように前記第1の固定磁性層12の上には非磁性中間層13が形成され、さらに前記非磁性中間層13の上に第2の固定磁性層14が形成されている。
【0062】
前記第1の固定磁性層12及び第2の固定磁性層14は、例えばCo膜、NiFe合金、CoNiFe合金、CoFe合金などで形成されている。
【0063】
また本形態では、前記反強磁性層11は、PtMn合金で形成されていることが好ましい。PtMn合金は、従来から反強磁性層として使用されているNiMn合金やFeMn合金などに比べて耐食性に優れ、しかもブロッキング温度が高く、交換結合磁界(交換異方性磁界)も大きい。また本形態では、前記PtMn合金に代えて、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ruのいずれか1種または2種以上の元素である)合金、あるいは、Pt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Agのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で形成されていてもよい。
【0064】
ところで図1に示す第1の固定磁性層12及び第2の固定磁性層14に示されている矢印は、それぞれの磁気モーメントの大きさ及びその方向を表しており、前記磁気モーメントの大きさは、飽和磁化(Ms)と膜厚(t)とをかけた値で決定される。
【0065】
図1に示す第1の固定磁性層12と第2の固定磁性層14とは同じ材質、例えばCo膜で形成され、しかも第2の固定磁性層14の膜厚tP2が、第1の固定磁性層12の膜厚tP1よりも大きく形成されているために、第2の固定磁性層14の方が第1の固定磁性層12に比べ磁気モーメントが大きくなっている。なお、本形態では、第1の固定磁性層12及び第2の固定磁性層14が異なる磁気モーメントを有することを必要としており、従って、第1の固定磁性層12の膜厚tP1が第2の固定磁性層14の膜厚tP2より厚く形成されていてもよい。
【0066】
図1に示すように第1の固定磁性層12は図示Y方向、すなわち記録媒体から離れる方向(ハイト方向)に磁化されており、非磁性中間層13を介して対向する第2の固定磁性層14の磁化は前記第1の固定磁性層12の磁化方向と反平行に磁化されている。
【0067】
第1の固定磁性層12は、反強磁性層11に接して形成され、磁場中アニール(熱処理)を施すことにより、前記第1の固定磁性層12と反強磁性層11との界面にて交換結合磁界(交換異方性磁界)が発生し、例えば図1に示すように、前記第1の固定磁性層12の磁化が、図示Y方向に固定される。前記第1の固定磁性層12の磁化が、図示Y方向に固定されると、非磁性中間層12を介して対向する第2の固定磁性層14の磁化は、第1の固定磁性層12の磁化と反平行の状態で固定される。
【0068】
形態では、前記第1の固定磁性層12の膜厚tP1と、第2の固定磁性層14の膜厚比tP2を適正化しており、(第1の固定磁性層の膜厚tP1)/(第2の固定磁性層の膜厚tP2)は、0.33〜0.95、あるいは1.05〜4の範囲内であることが好ましい。この範囲内であれば交換結合磁界を大きくできるが、上記範囲内においても第1の固定磁性層12と第2の固定磁性層14との膜厚自体が厚くなると、交換結合磁界は低下する傾向にあるため、本形態では、第1の固定磁性層12と第2の固定磁性層14の膜厚を適正化している。
【0069】
形態では、第1の固定磁性層12の膜厚tP1及び第2の固定磁性層14の膜厚tP2が10〜70オングストロームの範囲内で、且つ第1の固定磁性層12の膜厚tP1から第2の固定磁性層14の膜厚tP2を引いた絶対値が2オングストローム以上であることが好ましい。
【0070】
上記範囲内で適正に膜厚比、及び膜厚を調節すれば、少なくとも500(Oe)以上の交換結合磁界(Hex)を得ることが可能である。ここで交換結合磁界とは、最大ΔMR(抵抗変化率)の半分のΔMRとなるときの外部磁界の大きさのことであり、前記交換結合磁界(Hex)は、反強磁性層11と第1の固定磁性層12との界面で発生する交換結合磁界(交換異方性磁界)や第1の固定磁性層12と第2の固定磁性層14との間で発生する交換結合磁界(RKKY相互作用)などのすべての磁界を含めた総合的なものである。
【0071】
また本形態では、前記(第1の固定磁性層の膜厚tP1)/(第2の固定磁性層の膜厚tP2)は、0.53〜0.95、あるいは1.05〜1.8の範囲内であることがより好ましい。また上記範囲内であって、第1の固定磁性層12の膜厚tP1と第2の固定磁性層14の膜厚tP2は共に10〜50オングストロームの範囲内であり、しかも第1の固定磁性層12の膜厚tP1から第2の固定磁性層14の膜厚tP2を引いた絶対値は2オングストローム以上であることが好ましい。上記範囲内で、第1の固定磁性層12と第2の固定磁性層14の膜厚比、及び第1の固定磁性層12の膜厚tP1と第2の固定磁性層14の膜厚tP2を適正に調節すれば、少なくとも1000(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能である。
【0072】
また上記範囲内の、膜厚比及び膜厚であれば交換結合磁界(Hex)を大きくできると同時に、ΔMR(抵抗変化率)も従来と同程度に高くすることが可能である。
【0073】
交換結合磁界が大きいほど、第1の固定磁性層12の磁化と第2の固定磁性層14の磁化を安定して反平行状態に保つことが可能であり、特に本形態では反強磁性層11としてブロッキング温度が高く、しかも第1の固定磁性層12との界面で大きい交換結合磁界(交換異方性磁界)を発生させるPtMn合金を使用することで、前記第1の固定磁性層12及び第2の固定磁性層14の磁化状態を熱的にも安定して保つことができる。
【0074】
ところで、第1の固定磁性層12と第2の固定磁性層14とが同じ材質で形成され、しかも前記第1の固定磁性層12と第2の固定磁性層14との膜厚が同じ値であると、交換結合磁界(Hex)及びΔMRは極端に低下することが実験により確認されている。
【0075】
これは、第1の固定磁性層12のMs・tP1(磁気モーメント)と、第2の固定磁性層14のMs・tP2(磁気モーメント)とが同じ値である場合、前記第1の固定磁性層12の磁化と第2の固定磁性層14の磁化とが反平行状態にならず、前記磁化の方向分散量(様々な方向に向いている磁気モーメント量)が多くなることにより、後述するフリー磁性層16の磁化との相対角度を適正に制御できないからである。
【0076】
こうした問題を解決するためには、第1に第1の固定磁性層12と、第2の固定磁性層14のMs・tを異なる値にすること、すなわち第1の固定磁性層12と第2の固定磁性層14とが同じ材質で形成される場合には、前記第1の固定磁性層12と第2の固定磁性層14を異なる膜厚で形成する必要がある。
【0077】
形態では、前述したように、第1の固定磁性層12と、第2の固定磁性層14の膜厚比を適正化しているが、その膜厚比の中で、前記第1の固定磁性層12の膜厚tP1と第2の固定磁性層14の膜厚tP2とがほぼ同じ値になる場合、具体的には、0.95〜1.05の範囲内の膜厚比を適正な範囲から除外している。
【0078】
次に、本形態のように、反強磁性層11にPtMn合金など、成膜後に磁場中アニール(熱処理)を施すことにより、第1の固定磁性層12との界面で交換結合磁界(交換異方性磁界)を発生させる反強磁性材料を使用した場合には、第1の固定磁性層12と第2の固定磁性層14のMs・tを異なる値に設定しても、熱処理中の印加磁場の方向、及びその大きさを適正に制御しないと、第1の固定磁性層12の磁化及び第2の固定磁性層14の磁化に方向分散量が多くなったり、あるいは前記磁化を向けたい方向に適正に制御できない。
【0079】
【表1】
Figure 0003854107
【0080】
表1では、第1の固定磁性層12のMs・tP1が、第2の固定磁性層のMs・tP2よりも大きい場合に、熱処理中の磁場の大きさ及びその方向を変えることによって、第1の固定磁性層12及び第2の固定磁性層14の磁化がどの方向に向くかを表している。
【0081】
表1の(1)では、熱処理中の磁場の方向を図示左側に、100〜1k(Oe)与えている。この場合、第1の固定磁性層12のMs・tP1の方が、第2の固定磁性層14のMs・tP2よりも大きいために、支配的な第1の固定磁性層12の磁化が、印加磁場方向にならって図示左方向に向き、第2の固定磁性層14の磁化は、第1の固定磁性層12との交換結合磁界(RKKY相互作用)によって、反平行状態になろうとする。
【0082】
表1の(2)では、右方向に100〜1k(Oe)の磁場を印加すると、支配的な第1の固定磁性層12の磁化が、印加磁場方向にならって右方向に向き、第2の固定磁性層14の磁化は、第1の固定磁性層12の磁化に対して反平行になる。
【0083】
表1の(3)では、右方向に5k(Oe)以上の磁場を与えると、まず支配的な第1の固定磁性層12の磁化は、印加磁場方向にならって右方向に向く。ところで、第1の固定磁性層12と第2の固定磁性層14との間に発生する交換結合磁界(RKKY相互作用)は、1k(Oe)〜5k(Oe)程度であるので、5k(Oe)以上の磁場が印加されると、第2の固定磁性層14もその印加磁場方向、すなわち図示右方向に向く。同様に、表1の(4)では左方向に5k(Oe)以上の磁場を印加すると、第1の固定磁性層12及び第2の固定磁性層14の磁化は共に、図示左方向に向く。
【0084】
【表2】
Figure 0003854107
【0085】
表2では、第1の固定磁性層12のMs・tP1が、第2の固定磁性層のMs・tP2も小さい場合に、熱処理中の印加磁場の大きさ及びその方向を変えることによって、第1の固定磁性層12及び第2の固定磁性層14の磁化がどの方向に向くかを表している。
【0086】
表2の(1)では、図示左方向に100〜1k(Oe)の磁場を与えると、Ms・tP2の大きい第2の固定磁性層14の磁化が支配的になり、前記第2の固定磁性層14の磁化が、印加磁場方向にならって、図示左方向に向く。第1の固定磁性層12と第2の固定磁性層14の間の交換結合(RKKY相互作用)によって、前記第1の固定磁性層12の磁化は、前記第2の固定磁性層14の磁化に対して反平行になる。同様に、表2の(2)では、図示右方向に100〜1k(Oe)の磁場を与えると、支配的な第2の固定磁性層14の磁化が図示右方向に向き、第1の固定磁性層12の磁化は図示左方向に向く。
【0087】
表2の(3)では、図示右方向に5k(Oe)以上の磁場を与えると、第1の固定磁性層12及び第2の固定磁性層14の間の交換結合(RKKY相互作用)以上の磁場が印加されることにより、前記第1の固定磁性層12及び第2の固定磁性層14の磁化が共に、図示右方向に向く。表2の(4)では、図示左方向に5k(Oe)以上の磁場を印加されると、第1の固定磁性層12及び第2の固定磁性層14の磁化が共に図示左方向を向く。
【0088】
ここで、例えば第1の固定磁性層12の磁化を図示右方向に向けようとする場合に、適正な熱処理中の磁場方向及びその大きさは、表1における(2)(3)及び表2における(1)(3)である。
【0089】
表1(2)(3)では共に、Ms・tP1の大きい第1の固定磁性層12の磁化は、熱処理中における右方向の印加磁場の影響を受けて、右方向に向き、このとき、熱処理によって発生する反強磁性層11との界面での交換結合磁界(交換異方性磁界)によって、前記第1の固定磁性層12の磁化が右方向に固定される。表1(3)では、5k(Oe)以上の磁場を取り除くと、第2の固定磁性層14は、第1の固定磁性層12との間に発生する交換結合磁界(RKKY相互作用)によって、前記第2の固定磁性層14の磁化は反転し、左方向に向く。
【0090】
同様に表2(1)(3)では、右方向に向けられた第1の固定磁性層12の磁化は、反強磁性層11との界面での交換結合磁界(交換異方性磁界)によって、右方向に固定される。表2(3)では、5k(Oe)以上の磁場を取り除くと、第2の固定磁性層14は、第1の固定磁性層12との間に発生する交換結合磁界(RKKY相互作用)によって、前記第2の固定磁性層14の磁化は反転し、左方向に固定される。
【0091】
ところで表1及び表2に示すように、熱処理中に印加される磁場の大きさは、100〜1k(Oe)、あるいは5k(Oe)以上であり、1k(Oe)〜5k(Oe)の範囲の磁場の大きさを適正な範囲から外している。これは次のような理由による。
【0092】
磁場を与えることによって、Ms・tの大きい固定磁性層の磁化は、その磁場方向に向こうとする。ところが、熱処理中の磁場の大きさが1k(Oe)〜5k(Oe)の間であると、Ms・tの小さい固定磁性層の磁化までが、磁場の影響を強く受けて、その磁場方向に向こうとする。このため、固定磁性層間に発生する交換結合磁界(RKKY相互作用)によって反平行になろうとする2層の固定磁性層の磁化が、強い磁場の影響を受けて反平行にはならず、前記固定磁性層の磁化が、様々な方向に向こうとする、いわゆる磁化分散量が多くなり、2層の固定磁性層の磁化を適正に反平行状態に磁化することができなくなる。従って、本形態では1k(Oe)〜5k(Oe)の磁場の大きさを、適正な範囲から外している。なお熱処理中の磁場の大きさを100(Oe)以上としたのは、この程度の磁場を与えないと、Ms・tの大きい固定磁性層の磁化を、その印加磁場方向に向けることができないからである。
【0093】
なお上述した熱処理中の磁場の大きさ及びその方向の制御方法は、熱処理を必要とする反強磁性層11を使用した場合であれば、どのような反強磁性材料を使用した場合であっても適用でき、例えば従来から反強磁性層11として用いられているNiMn合金などを使用した場合でも適用可能である。
【0094】
以上のように本形態では、第1の固定磁性層12と第2の固定磁性層14との膜厚比を適正な範囲内に収めることによって、交換結合磁界(Hex)を大きくでき、第1の固定磁性層12と第2の固定磁性層14の磁化を、熱的にも安定した反平行状態(フェリ状態)に保つことができ、しかもΔMR(抵抗変化率)を従来と同程度に確保することが可能である。
【0095】
さらに熱処理中の磁場の大きさ及びその方向を適正に制御することによって、第1の固定磁性層12及び第2の固定磁性層14の磁化方向を、得たい方向に制御することが可能になる。
【0096】
ところで前述したように磁気モーメント(磁気的膜厚)は、飽和磁化Msと膜厚tとの積によって求めることができ、例えば、バルク固体のNiFeであると、飽和磁化Msは、約1.0T(テスラ)であり、バルク固体のCoであると、飽和磁化Msは約1.7Tであることが知られている。従って、前記NiFe膜の膜厚が30オングストロームである場合、前記NiFe膜の磁気的膜厚は、30オングストローム・テスラとなる。外部から磁界を加えたときの強磁性膜の静磁エネルギーは、磁気的膜厚と外部磁界との掛け合わせに比例するため、磁気的膜厚の大きい強磁性膜と磁気的膜厚の小さい強磁性膜が非磁性中間層を介してRKKY相互作用によりフェリ状態になっている場合、磁気的膜厚の大きい方の強磁性膜が、外部磁界の方向を向きやすくなるわけである。
【0097】
しかしながら、タンタル(Ta)やルテニウム(Ru)、銅(Cu)等の非磁性膜と積層接触した強磁性膜の場合や、PtMn膜などの反強磁性層と積層接触した強磁性膜の場合、非磁性膜原子や反強磁性膜原子と強磁性膜原子(Ni,Fe,Co)が直接触れ合うため、非磁性膜や反強磁性膜との界面付近の強磁性膜の飽和磁化Msが、バルク固体の飽和磁化Msよりも小さくなることが知られている。更に、強磁性膜と非磁性膜、反強磁性層の積層多層膜に熱処理が施されると、前記熱処理によって界面拡散が進行し、強磁性膜の飽和磁化Msに膜厚方向の分布が生じることが知られている。すなわち、非磁性膜や反強磁性層に近い場所の飽和磁化Msは小さく、非磁性膜や反強磁性膜との界面から離れるに従って飽和磁化Msがバルク固体の飽和磁化Msに近づくという現象である。
【0098】
非磁性膜や反強磁性層に近い場所の強磁性膜の飽和磁化Msの減少は、非磁性膜の材料、反強磁性層の材料、強磁性膜の材料や積層順序、熱処理温度等に依存するため、正確には、それぞれの特定された条件において求めなければならないことになる。本形態における磁気的膜厚とは、非磁性膜や反強磁性層との熱拡散によって生じた飽和磁化Msの減少量も考慮して算出した値である。
【0099】
PtMn膜と強磁性膜との界面で交換結合磁界を得るためには、熱処理によりPtMn膜と強磁性膜との界面で拡散層を形成することが必要であるが、拡散層の形成に伴う強磁性膜の飽和磁化Msの減少は、PtMn膜と強磁性膜の積層順序に依存することになる。
【0100】
特に図1に示すように、反強磁性層11がフリー磁性層16よりも下側に形成されている場合にあっては、前記反強磁性層11と第1の固定磁性層12との界面に熱拡散層が発生しやすく、このため前記第1の固定磁性層12の磁気的な膜厚は、実際の膜厚tP1に比べて小さくなっている。しかし前記第1の固定磁性層12の磁気的な膜厚が小さくなりすぎると、第2の固定磁性層14との磁気的膜厚(磁気モーメント)差が大きくなりすぎ、前記第1の固定磁性層12に占める熱拡散層の割合が増えることにより、交換結合磁界の低下につながるといった問題がある。
【0101】
すなわち本形態のように、第1の固定磁性層12との界面で交換結合磁界を発生されるために熱処理を必要とする反強磁性層11を使用し、第1の固定磁性層12と第2の固定磁性層14の磁化状態をフェリ状態にするためには、前記第1の固定磁性層12及び第2の固定磁性層14の膜厚の適正化のみならず、前記第1の固定磁性層12及び第2の固定磁性層14の磁気的膜厚の適正化を行わないと、安定した磁化状態を保つことができない。
【0102】
前述したように、第1の固定磁性層12と第2の固定磁性層14の磁気的膜厚にある程度差がないと、磁化状態はフェリ状態にはなりにくく、また第1の固定磁性層12と第2の固定磁性層14の磁気的膜厚の差が大きくなりすぎても、交換結合磁界の低下につながり好ましくない。そこで本形態では、第1の固定磁性層12と第2の固定磁性層14の膜厚比と同じように、(第1の固定磁性層12の磁気的膜厚)/(第2の固定磁性層14の磁気的膜厚)は、0.33〜0.95、あるいは1.05〜4の範囲内とであることが好ましい。また本形態では、第1の固定磁性層12の磁気的膜厚及び第2の固定磁性層14の磁気的膜厚が10〜70(オングストローム・テスラ)の範囲内で、且つ第1の固定磁性層12の磁気的膜厚から第2の固定磁性層14の磁気的膜厚を引いた絶対値が2(オングストローム・テスラ)以上であることが好ましい。
【0103】
また(第1の固定磁性層12の磁気的膜厚)/(第2の固定磁性層14の磁気的膜厚)が、0.53〜0.95、あるいは1.05〜1.8の範囲内であることがより好ましい。また上記範囲内であって、第1の固定磁性層12の磁気的膜厚と第2の固定磁性層14の磁気的膜厚は共に10〜50(オングストローム・テスラ)の範囲内であり、しかも第1の固定磁性層12の磁気的膜厚から第2の固定磁性層14の磁気的膜厚を引いた絶対値は2(オングストローム・テスラ)以上であることが好ましい。
【0104】
次に、図1に示す第1の固定磁性層12と第2の固定磁性層14との間に介在する非磁性中間層13に関して説明する。
【0105】
形態では、第1の固定磁性層12と第2の固定磁性層14との間に介在する非磁性中間層13は、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種あるいは2種以上の合金で形成されていることが好ましい。
【0106】
形態では、反強磁性層11が後述するフリー磁性層16よりも下側に形成されているか、あるいは上側に形成されているかで、適正な前記非磁性中間層13の膜厚値を変えている。
【0107】
図1に示すようにフリー磁性層16よりも下側に反強磁性層11が形成されている場合の前記非磁性中間層13の膜厚は、3.6〜9.6オングストロームの範囲内で形成されることが好ましい。この範囲内であれば、500(Oe)以上の交換結合磁界(Hex)を得ることが可能である。
【0108】
また前記非磁性中間層13の膜厚は、4〜9.4オングストロームの範囲内で形成されると、1000(Oe)以上の交換結合磁界を得ることができるのでより好ましい。
【0109】
非磁性中間層13の膜厚が上述した寸法以外の寸法で形成されると、交換結合磁界が極端に低下することが実験により確認されている。すなわち、上記寸法以外の寸法により前記非磁性中間層13が形成されると、前記第1の固定磁性層12と第2の固定磁性層14との磁化が反平行状態(フェリ状態)になりにくくなり、前記磁化状態が不安定化するといった問題がある。
【0110】
図1に示すように、第2の固定磁性層14の上には、Cuなどで形成された非磁性導電層15が形成され、さらに前記非磁性導電層15の上にフリー磁性層16が形成されている。図1に示すようにフリー磁性層16は、2層で形成されており、前記非磁性導電層15に接する側に形成された符号17の層はCo膜で形成されている。またもう一方の層18は、NiFe合金や、CoFe合金、あるいはCoNiFe合金などで形成されている。なお非磁性導電層15に接する側にCo膜の層17を形成する理由は、Cuで形成された前記非磁性導電層15との界面での金属元素等の拡散を防止でき、また、ΔMR(抵抗変化率)を大きくできるからである。なお符号19はTaなどで形成された保護層である。
【0111】
また図2に示すように、下地層10から保護層19までの積層体の両側には、例えばCo―Pt合金やCo―Cr―Pt合金などで形成されたハードバイアス層130及びCuやCrで形成された導電層131が形成されており、前記ハードバイアス層のバイアス磁界の影響を受けて、前記フリー磁性層16の磁化は、図示X方向に磁化された状態となっている。
【0112】
図1におけるスピンバルブ型薄膜素子では、前記導電層からフリー磁性層16、非磁性導電層15、及び第2の固定磁性層14にセンス電流が与えられる。記録媒体から図1に示す図示Y方向に磁界が与えられると、フリー磁性層16の磁化は図示X方向からY方向に変動し、このときの非磁性導電層15とフリー磁性層16との界面、及び非磁性導電層15と第2の固定磁性層14との界面でスピンに依存した伝導電子の散乱が起こることにより、電気抵抗が変化し、記録媒体からの洩れ磁界が検出される。
【0113】
ところで前記センス電流は、実際には、第1の固定磁性層12と非磁性中間層13の界面などにも流れる。前記第1の固定磁性層12はΔMRに直接関与せず、前記第1の固定磁性層12は、ΔMRに関与する第2の固定磁性層14を適正な方向に固定するための、いわば補助的な役割を担った層となっている。このため、センス電流が、第1の固定磁性層12及び非磁性中間層13に流れることは、シャントロス(電流ロス)になるが、このシャントロスの量は非常に少なく、本形態では、従来とほぼ同程度のΔMRを得ることが可能となっている。
【0114】
ところで本形態では、固定磁性層を非磁性中間層13を介して第1の固定磁性層12と第2の固定磁性層14の2層に分断することにより、反強磁性層11の膜厚を薄くしても、大きな交換結合磁界(Hex)、具体的には500(Oe)以上の交換結合磁界を得られることが実験によりわかった。
【0115】
従来、シングルスピンバルブ型薄膜素子の反強磁性層11としてPtMn合金を使用した場合に、少なくとも200オングストローム以上の膜厚を確保しなければ、500(Oe)以上の交換結合磁界を得ることができなかったが、本形態では、前記反強磁性層11を少なくとも90オングストローム以上で形成すれば、500(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能である。また前記膜厚を100オングストローム以上にすれば、1000(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能である。なお前記反強磁性層11の膜厚の数値範囲は、シングルスピンバルブ型薄膜素子の場合であり、反強磁性層が、フリー磁性層の上下に形成される、いわゆるデュアルスピンバルブ型薄膜素子の場合には、若干適正な膜厚範囲が異なる。デュアルスピンバルブ型薄膜素子の場合については後述する。
【0116】
このように本形態によれば、スピンバルブ型薄膜素子の中で最も大きな膜厚を有していた反強磁性層11を従来に比べて半分以下の膜厚で形成できることで、スピンバルブ型薄膜素子全体の膜厚を薄くすることが可能である。
【0117】
図13はスピンバルブ型薄膜素子が形成された読み取りヘッドの構造を記録媒体との対向面側から見た断面図である。
【0118】
符号120は、例えばNiFe合金などで形成された下部シールド層であり、この下部シールド層120の上に下部ギャップ層121が形成されている。また前記下部ギャップ層121の上は、本形態におけるスピンバルブ型薄膜素子122が形成されており、前記スピンバルブ型薄膜素子122の両側にハードバイアス層123、及び導電層124が形成されている。さらに前記導電層124の上には、上部ギャップ層125が形成され、前記上部ギャップ層125の上には、NiFe合金などで形成された上部シールド層126が形成されている。
【0119】
前記下部ギャップ層123及び上部ギャップ層125は、例えばSiOやAl(アルミナ)などの絶縁材料によって形成されている。図13に示すように、下部ギャップ層121から上部ギャップ層125までの長さがギャップ長Glであり、このギャップ長Glが小さいほど高記録密度化に対応できるものとなっている。
【0120】
形態では前述したように、反強磁性層11の膜厚を薄くできることで、スピンバルブ型薄膜素子122全体の厚さを薄くできるため、前記ギャップ長Glを短くすることが可能である。また下部ギャップ層121及び上部ギャップ層125の膜厚を比較的厚くしても、ギャップ長Glを従来に比べて小さくすることができ、また下部ギャップ層121及び上部ギャップ層125を厚く形成することで、絶縁性を充分に確保することができる。
【0121】
図1に示すスピンバルブ型薄膜素子は、まず下から下地層10、反強磁性層11、第1の固定磁性層12、非磁性中間層13、第2の固定磁性層14、非磁性導電層15、フリー磁性層16、及び保護層19を成膜し、成膜後の工程において、磁場中アニール(熱処理)を施す。
【0122】
図1に示すスピンバルブ型薄膜素子では、第1の固定磁性層12の膜厚tP1が、第2の固定磁性層14の膜厚tP2に比べ薄く形成されており、第1の固定磁性層12の磁気モーメント(Ms・tP1)の方が、第2の固定磁性層14の磁気モーメント(Ms・tP2)に比べて小さく設定されている。
【0123】
この場合、前記第1の固定磁性層14の磁化を向けたい方向と逆の方向に、100〜1000(Oe)の磁場を印加するか、あるいは磁化を向けたい方向に5k(Oe)以上の磁場を印加する。
【0124】
図1に示すように、第1の固定磁性層12の磁化を図示Y方向に固定したい場合には、前述した表2を参照することにより、図示Y方向と逆の方向に100〜1k(Oe)(表2(1)参照)の磁場を印加するか、あるいはY方向(表2(3)参照)に5k(Oe)以上の磁場を印加すればよいことがわかる。
【0125】
Y方向と逆の方向に100〜1k(Oe)の磁場を与えることで、磁気モーメント(Ms・tP2)が大きい第2の固定磁性層14の磁化がY方向と逆の方向に磁化され、前記第2の固定磁性層との交換結合磁界(RKKY相互作用)によって反平行に磁化されようとする第1の固定磁性層12の磁化が図示Y方向に向き、前記反強磁性層11との界面に発生する交換結合磁界(交換異方性磁界)によって、前記第1の固定磁性層12の磁化が図示Y方向に固定される。第1の固定磁性層12の磁化が図示Y方向に固定されることにより、第2の固定磁性層14の磁化が、第1の固定磁性層12の磁化と反平行に固定される。
【0126】
あるいは図示Y方向に5k(Oe)以上の磁場を与えると、第1の固定磁性層12及び第2の固定磁性層14の磁化が共に図示Y方向に磁化され、第1の固定磁性層12の磁化が、反強磁性層11との界面に発生する交換結合磁界(交換異方性磁界)によって図示Y方向に固定される。5k(Oe)以上の印加磁場を取り去ると、第2の固定磁性層14の磁化は、第1の固定磁性層12との交換結合磁界(RKKY相互作用)によって反転し、図示Y方向と反対方向に固定される。
【0127】
あるいは、第1の固定磁性層12の磁気モーメントが、第2の固定磁性層14の磁気モーメントよりも大きい場合には、前記第1の固定磁性層12の磁化を向けたい方向に、100〜1000(Oe)または5k(Oe)以上の磁場を印加する。
【0128】
なお、図1に示すスピンバルブ型薄膜素子は、再生用ヘッド(薄膜磁気ヘッド)を構成する最も重要な箇所であり、まず、磁性材料製の下部シールド層上にギャップ層を形成した後、前記スピンバルブ型薄膜素子を成膜する。その後、前記スピンバルブ型薄膜素子の上にギャップ層を介して上部シールド層を形成すると、再生用ヘッド(MRヘッド)が完成する。なお前記再生用ヘッド上に、磁性材料製のコアとコイルとを有する記録用のインダクティブヘッドを積層してもよい。この場合、前記上部シールド層を、インダクティブヘッドの下部コア層として兼用することが好ましい。なお、図3以降のスピンバルブ型薄膜素子は、図1に示すスピンバルブ型薄膜素子と同様に、その上下にシールド層が形成されている。
【0129】
図3は、参考例のスピンバルブ型薄膜素子の構造を模式図的に示した横断面図、図4は、図3に示すスピンバルブ型薄膜素子を記録媒体との対向面側から見た断面図である。
【0130】
このスピンバルブ型薄膜素子は、図1のスピンバルブ型薄膜素子の膜構成を逆にして形成したシングルスピンバルブ型薄膜素子である。
【0131】
すなわち、図3に示すスピンバルブ型薄膜素子では、下から下地層10、NiFe膜22、Co膜23(NiFe膜22とCo膜23を合わせてフリー磁性層21)、非磁性導電層24、第2の固定磁性層25、非磁性中間層26、第1の固定磁性層27、反強磁性層28、及び保護層29の順で積層されている。
【0132】
なお前記反強磁性層28は、PtMn合金で形成されていることが好ましく、あるいはPtMn合金に代えて、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ruのいずれか1種または2種以上の元素である)合金、あるいは、Pt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Agのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で形成されていてもよい。
【0133】
このスピンバルブ型薄膜素子においても、前記第1の固定磁性層27の膜厚tP1と、第2の固定磁性層25の膜厚比tP2は、(第1の固定磁性層の膜厚tP1)/(第2の固定磁性層の膜厚tP2)は、0.33〜0.95、あるいは1.05〜4の範囲内であることが好ましく、より好ましくは、0.53〜0.95、あるいは1.05〜1.8の範囲内である。しかも、第1の固定磁性層27の膜厚tP1及び第2の固定磁性層25の膜厚tP2が10〜70オングストロームの範囲内で、且つ第1の固定磁性層27の膜厚tP1から第2の固定磁性層25の膜厚tP2を引いた絶対値が2オングストローム以上であることが好ましい。さらに好ましくは、第1の固定磁性層27の膜厚tP1及び第2の固定磁性層25の膜厚tP2が10〜50オングストロームの範囲内で、且つ第1の固定磁性層27の膜厚tP1から第2の固定磁性層25の膜厚tP2を引いた絶対値が2オングストローム以上である。
【0134】
前述したように、第1の固定磁性層27と第2の固定磁性層25の磁気的膜厚にある程度差がないと、磁化状態はフェリ状態にはなりにくく、また第1の固定磁性層27と第2の固定磁性層25の磁気的膜厚の差が大きくなりすぎても、交換結合磁界の低下につながり好ましくない。そこで本形態では、第1の固定磁性層27と第2の固定磁性層25の膜厚比と同じように、(第1の固定磁性層27の磁気的膜厚Ms・tP1)/(第2の固定磁性層25の磁気的膜厚Ms・tP2)は、0.33〜0.95、あるいは1.05〜4の範囲内とであることが好ましい。また本形態では、第1の固定磁性層27の磁気的膜厚Ms・tP1及び第2の固定磁性層25の磁気的膜厚Ms・tP2が10〜70(オングストローム・テスラ)の範囲内で、且つ第1の固定磁性層27の磁気的膜厚Ms・tP1から第2の固定磁性層25の磁気的膜厚Ms・tP2を引いた絶対値が2(オングストローム・テスラ)以上であることが好ましい。
【0135】
また(第1の固定磁性層27の磁気的膜厚Ms・tP1)/(第2の固定磁性層25の磁気的膜厚Ms・tP2)が、0.53〜0.95、あるいは1.05〜1.8の範囲内であることがより好ましい。また上記範囲内であって、第1の固定磁性層27の磁気的膜厚Ms・tP1と第2の固定磁性層25の磁気的膜厚Ms・tP2は共に10〜50(オングストローム・テスラ)の範囲内であり、しかも第1の固定磁性層27の磁気的膜厚Ms・tP1から第2の固定磁性層25の磁気的膜厚Ms・tP2を引いた絶対値は2(オングストローム・テスラ)以上であることが好ましい。
【0136】
次に図3に示す第1の固定磁性層27と第2の固定磁性層25との間に介在する非磁性中間層26は、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種あるいは2種以上の合金で形成されていることが好ましい。
【0137】
形態では図3に示すように、フリー磁性層21よりも上側に反強磁性層28が形成されている場合、前記非磁性中間層26の膜厚は、2.5〜6.4オングストローム、あるいは6.6〜10.7オングストロームの範囲内であることが好ましい。この範囲内であると、少なくとも500(Oe)以上の交換結合磁界(Hex)を得ることができる。
【0138】
また本形態では、前記非磁性中間層26の膜厚は、2.8〜6.2オングストローム、あるいは6.8〜10.3オングストロームの範囲内であることがより好ましい。この範囲内であると、少なくとも1000(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能である。
【0139】
また、前記反強磁性層28を少なくとも90オングストローム以上で形成すれば、500(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能である。また前記膜厚を100オングストローム以上にすれば、1000(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能である。
【0140】
図3に示すスピンバルブ型薄膜素子では、第1の固定磁性層27の膜厚tP1は、第2の固定磁性層25の膜厚tP2と異なる値で形成され、例えば前記第1の固定磁性層27の膜厚tP1の方が、第2の固定磁性層25の膜厚tP2よりも厚く形成されている。また前記第1の固定磁性層27の磁化が、図示Y方向に磁化され、前記第2の固定磁性層25の磁化は図示Y方向と逆の方向に磁化されて、第1の固定磁性層27と第2の固定磁性層25磁化はフェリ状態となっている。図3に示す第1の固定磁性層27と第2の固定磁性層25の磁化方向の制御方法について以下に説明する。
【0141】
まず図3に示す各層をスパッタ法などによって成膜し、成膜後の工程において、磁場中アニール(熱処理)を施す。
【0142】
第1の固定磁性層27のMs・tP1(磁気モーメント)が、第2の固定磁性層25のMs・tP2(磁気モーメント)よりも大きい場合には、前記第1の固定磁性層27の磁化を向けたい方向に100〜1000(Oe)または5k(Oe)の磁場を印加すればよい。
【0143】
図3に示すように、Ms・tP1の大きい第1の固定磁性層27を図示Y方向に向けようとすると、前述した表1を参照することにより、図示Y方向に100〜1k(Oe)(表1(2)参照)、あるいは図示Y方向に5k(Oe)以上(表1(3)参照)の磁場を熱処理中に印加する。
【0144】
図示Y方向に100〜1k(Oe)の磁場を与えることにより、Ms・tP1の大きい第1の固定磁性層27の磁化は、図示Y方向に向き、第2の固定磁性層25の磁化は反平行状態になろうとする。そして、前記第1の固定磁性層27と反強磁性層28との界面に発生する交換結合磁界(交換異方性磁界)によって、前記第1の固定磁性層27の磁化は図示Y方向に固定され、これにより、第2の固定磁性層25の磁化が図示Y方向と反対の方向に固定されるのである。
【0145】
あるいは図示Y方向に5k(Oe)以上の磁場を与えると、第1の固定磁性層27と第2の固定磁性層25間に発生する交換結合磁界(RKKY相互作用)よりも大きな磁場が印加されることにより、第1の固定磁性層27及び第2の固定磁性層25の磁化が共に図示Y方向に磁化され、前記第1の固定磁性層27の磁化は、反強磁性層28との界面に発生する交換結合磁界(交換異方性磁界)によって図示Y方向に固定される。一方、第2の固定磁性層25の磁化は、印加磁場を取り去ることにより、第1の固定磁性層27との交換結合磁界(RKKY相互作用)によって反転し、前記第1の固定磁性層27の磁化と反平行状態になって固定される。
【0146】
あるいは第1の固定磁性層27の磁気モーメントが第2の固定磁性層25の磁気モーメントよりも小さい場合には、第1の固定磁性層27の磁化を向けたい方向と逆の方向に100〜1000(Oe)の磁場を印加し、または磁化を向けたい方向に5k(Oe)以上の磁場を印加する。
【0147】
なお図4に示すように、下地層10から保護層29までの積層体の両側には、ハードバイアス層130と導電層131が形成されており、前記ハードバイアス層130が図示X方向に磁化されていることによって、フリー磁性層21の磁化が図示X方向に揃えられている。
【0148】
図5は、本施形態のスピンバルブ型薄膜素子の構造を模式図的に示した横断面図、図6は図5に示すスピンバルブ型薄膜素子を記録媒体との対向面側から見た断面図である。
【0149】
このスピンバルブ型薄膜素子は、フリー磁性層を中心としてその上下に非磁性導電層、固定磁性層、及び反強磁性層が1層ずつ形成された、いわゆるデュアルスピンバルブ型薄膜素子である。このデュアルスピンバルブ型薄膜素子では、フリー磁性層/非磁性導電層/固定磁性層のこの3層の組合わせが2組存在するためシングルスピンバルブ型薄膜素子に比べて大きなΔMRを期待でき、高密度記録化に対応できるものとなっている。
【0150】
図5に示すスピンバルブ型薄膜素子は、下から下地層30、反強磁性層31、第1の固定磁性層(下)32、非磁性中間層(下)33、第2の固定磁性層(下)34、非磁性導電層35、フリー磁性層36(符号37,39はCo膜、符号38はNiFe合金膜)、非磁性導電層40、第2の固定磁性層(上)41、非磁性中間層(上)42、第1の固定磁性層(上)43、反強磁性層44、及び保護層45の順で積層されている。なお図6に示すように、下地層30から保護層45までの積層体の両側には、ハードバイアス層130と導電層131が形成されている。
【0151】
図5に示すスピンバルブ型薄膜素子の反強磁性層31,44は、PtMn合金で形成されていることが好ましく、あるいはPtMn合金に代えて、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ruのいずれか1種または2種以上の元素である)合金、あるいは、Pt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Agのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で形成されていてもよい。
【0152】
このスピンバルブ型薄膜素子においても、前記第1の固定磁性層(下)32の膜厚tP1と、第2の固定磁性層(下)34の膜厚tP2との膜厚比、及び第1の固定磁性層(上)43の膜厚tP1と第2の固定磁性層41(上)の膜厚tP2との膜厚比(第1の固定磁性層の膜厚tP1)/(第2の固定磁性層の膜厚tP2)は、0.33〜0.95、あるいは1.05〜4の範囲内であることが好ましい。さらには、膜厚比が上記範囲内であり、第1の固定磁性層(下)32,(上)43の膜厚tP1及び第2の固定磁性層(下)34,(上)41の膜厚tP2が10〜70オングストロームの範囲内で、且つ第1の固定磁性層32,43の膜厚tP1から第2の固定磁性層34,41の膜厚tP2を引いた絶対値が2オングストローム以上であると、500(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能である。
【0153】
また本形態では、(第1の固定磁性層の膜厚tP1)/(第2の固定磁性層の膜厚tP2)は、0.53〜0.95、あるいは1.05〜1.8の範囲内であることがより好ましく、さらには、第1の固定磁性層(下)32,(上)43の膜厚tP1及び第2の固定磁性層(下)34,(上)41の膜厚tP2が10〜50オングストロームの範囲内で、且つ第1の固定磁性層32,43の膜厚tP1から第2の固定磁性層34,41の膜厚tP2を引いた絶対値が2オングストローム以上であれば、1000(Oe)以上の交換結合磁界を得ることができる。
【0154】
ところで、フリー磁性層36よりも下側に形成されている第1の固定磁性層(下)32の膜厚tP1を、第2の固定磁性層(下)34の膜厚tP2よりも大きくしても、前記第1の固定磁性層(下)32の膜厚tP1と第2の固定磁性層(下)34の膜厚差が約6オングストローム以下であると、交換結合磁界が低下しやすい傾向にあることが実験によって確認されている。
【0155】
この現象は、第1の固定磁性層(下)32,(上)43との界面にて交換結合磁界(交換異方性磁界)を発生させるために熱処理を必要とする例えばPtMn合金で形成された反強磁性層31,44を使用した場合に見られる。
【0156】
交換結合磁界の低下は、フリー磁性層36よりも下側に形成されている反強磁性層31と第1の固定磁性層(下)32との熱拡散によって、前記第1の固定磁性層(下)32の磁気的な膜厚が減少し、前記第1の固定磁性層(下)32の磁気的な膜厚と、第2の固定磁性層34の膜厚tP2とが、ほぼ同じ厚さになるからである。このため本形態では、(第1の固定磁性層(上)43の膜厚tP1/第2の固定磁性層(上)41の膜厚tP2)よりも(第1の固定磁性層(下)32の膜厚tP1/第2の固定磁性層(下)34の膜厚tP2)の方を大きくすることが好ましい。
【0157】
なお前記熱拡散層の発生は、図5に示すデュアルスピンバルブ型薄膜素子に限らず、フリー磁性層16よりも反強磁性層11が下側に形成されたシングルスピンバルブ型薄膜素子(図1参照)にも同様に起こる現象である。
【0158】
前述したように、第1の固定磁性層(下)32,(上)43の磁気的膜厚Ms・tP1と第2の固定磁性層(下)34,(上)41の磁気的膜厚Ms・tP2にある程度差がないと、磁化状態はフェリ状態にはなりにくく、また第1の固定磁性層(下)32,(上)43の磁気的膜厚Ms・tP1と第2の固定磁性層(下)34,(上)41の磁気的膜厚Ms・tP2の差が大きくなりすぎても、交換結合磁界の低下につながり好ましくない。そこで本形態では、第1の固定磁性層(下)32,(上)43の膜厚tP1と第2の固定磁性層(下)34,(上)41の膜厚tP2の膜厚比と同じように、(第1の固定磁性層(下)32,(上)43の磁気的膜厚Ms・tP1)/(第2の固定磁性層(下)34,(上)41の磁気的膜厚Ms・tP2)は、0.33〜0.95、あるいは1.05〜4の範囲内とであることが好ましい。また本形態では、第1の固定磁性層(下)32,(上)43の磁気的膜厚Ms・tP1及び第2の固定磁性層(下)34,(上)41の磁気的膜厚Ms・tP2が10〜70(オングストローム・テスラ)の範囲内で、且つ第1の固定磁性層(下)32,(上)43の磁気的膜厚Ms・tP1から第2の固定磁性層(下)34,(上)41の磁気的膜厚Ms・tP2を引いた絶対値が2(オングストローム・テスラ)以上であることが好ましい。
【0159】
また(第1の固定磁性層(下)32,(上)43の磁気的膜厚Ms・tP1)/(第2の固定磁性層(下)34,(上)41の磁気的膜厚Ms・tP2)が、0.53〜0.95、あるいは1.05〜1.8の範囲内であることがより好ましい。また上記範囲内であって、第1の固定磁性層(下)32,(上)43の磁気的膜厚Ms・tP1と第2の固定磁性層(下)34,(上)41の磁気的膜厚Ms・tP2は共に10〜50(オングストローム・テスラ)の範囲内であり、しかも第1の固定磁性層(下)32,(上)43の磁気的膜厚Ms・tP1から第2の固定磁性層(下)34,(上)41の磁気的膜厚Ms・tP2を引いた絶対値は2(オングストローム・テスラ)以上であることが好ましい。
【0160】
次に図5に示す第1の固定磁性層(下)32,(上)43と第2の固定磁性層(下)34,(上)41との間に介在する非磁性中間層33,42は、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種あるいは2種以上の合金で形成されていることが好ましい。
【0161】
図5に示すようにフリー磁性層36よりも下側に形成された前記非磁性中間層(下)33の膜厚は、3.6〜9.6オングストロームの範囲内で形成されることが好ましい。この範囲内であれば、500(Oe)以上の交換結合磁界(Hex)を得ることが可能である。
【0162】
また前記非磁性中間層(下)33の膜厚は、4〜9.4オングストロームの範囲内で形成されると、1000(Oe)以上の交換結合磁界を得ることができるのでより好ましい。
【0163】
また本形態では図5に示すように、フリー磁性層36よりも上側に形成された非磁性中間層(上)42の膜厚は、2.5〜6.4オングストローム、あるいは6.8〜10.7オングストロームの範囲内であることが好ましい。この範囲内であると、少なくとも500(Oe)以上の交換結合磁界(Hex)を得ることができる。
【0164】
また本形態では、前記非磁性中間層(上)42の膜厚は、2.8〜6.2オングストローム、あるいは6.8〜10.3オングストロームの範囲内であることがより好ましい。この範囲内であると、少なくとも1000(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能である。
【0165】
また、前記反強磁性層31,44を少なくとも100オングストローム以上で形成すれば、500(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能である。また前記膜厚を110オングストローム以上にすれば、1000(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能である。
【0166】
従来では、前記反強磁性層31,44の膜厚は約200オングストローム以上で形成されていたので、本形態によれば、約半分の膜厚で前記反強磁性層31,44を形成することが可能であり、特にデュアルスピンバルブ型薄膜素子の場合には、反強磁性層31,44が2層形成されるので、従来に比べてスピンバルブ型薄膜素子全体の膜厚を、約200オングストローム以上薄くできる。このように薄く形成されたスピンバルブ型薄膜素子では、図13に示す下部ギャップ層121、及び上部ギャップ層125を、絶縁性を充分に保つ程度に厚くしても、ギャップ長Glを薄くでき、高密度記録化に対応できるものとなっている。
【0167】
なお第1の固定磁性層(下)32,(上)43と第2の固定磁性層(下)34,(上)41との膜厚比や膜厚、非磁性中間層(下)33,(上)42の膜厚、及び反強磁性層31,44の膜厚を上述した範囲内で適正に調節することにより、従来と同程度のΔMRを保つことができ、具体的には約10%以上のΔMRを得ることが可能である。
【0168】
図5に示すように、フリー磁性層36よりも下側に形成された第1の固定磁性層(下)32の膜厚tP1は、非磁性中間層33を介して形成された第2の固定磁性層(下)34の膜厚tP2に比べて薄く形成されている。一方、フリー磁性層36よりも上側に形成されている第1の固定磁性層(上)43の膜厚tP1は、非磁性中間層42を介して形成された第2の固定磁性層41(上)の膜厚tP2に比べ厚く形成されている。そして、第1の固定磁性層(下)32,(上)43の磁化は共に図示Y方向と反対方向に磁化されており、第2の固定磁性層(下)34,(上)41の磁化は図示Y方向に磁化された状態になっている。
【0169】
図1及び図3に示すシングルスピンバルブ型薄膜素子の場合にあっては、第1の固定磁性層のMs・tP1と第2の固定磁性層のMs・tP2が異なるように膜厚などを調節し、第1の固定磁性層の磁化の向きは、図示Y方向あるいは図示Y方向と反対方向のどちらでもよい。
【0170】
しかし、図5に示すデュアルスピンバルブ型薄膜素子にあっては、第1の固定磁性層(下)32,(上)43の磁化が共に同じ方向に向くようにする必要性があり、そのために、本形態では、第1の固定磁性層(下)32,(上)43の磁気モーメントMs・tP1と、第2の固定磁性層(下)34,(上)41の磁気モーメントMs・tP2との調整、及び熱処理中に印加する磁場の方向及びその大きさを適正に調節している。
【0171】
ここで、第1の固定磁性層(下)32,(上)43の磁化を共に同じ方向に向けておくのは、前記第1の固定磁性層(下)32,(上)43の磁化と反平行になる第2の固定磁性層(下)34,(上)41の磁化を共に同じ方向に向けておくためであり、その理由について以下に説明する。
【0172】
前述したように、スピンバルブ型薄膜素子のΔMRは、固定磁性層の固定磁化とフリー磁性層の変動磁化との関係によって得られるものであるが、本形態のように固定磁性層が第1の固定磁性層と第2の固定磁性層の2層に分断された場合にあっては、前記ΔMRに直接関与する固定磁性層の層は第2の固定磁性層であり、第1の固定磁性層は、前記第2の固定磁性層の磁化を、一定方向に固定しておくためのいわば補助的な役割を担っている。
【0173】
仮に図5に示す第2の固定磁性層(下)34,(上)41の磁化が互いに反対方向に固定されているとすると、例えば第2の固定磁性層(上)41の固定磁化と、フリー磁性層36の変動磁化との関係では抵抗が大きくなっても、第2の固定磁性層(下)34の固定磁化と、フリー磁性層36の変動磁化との関係では抵抗が非常に小さくなってしまい、結局、デュアルスピンバルブ型薄膜素子におけるΔMRは、図1や図3に示すシングルスピンバルブ型薄膜素子のΔMRよりも小さくなってしまう。
【0174】
この問題は、本形態のように、固定磁性層を非磁性中間層を介して2層に分断したデュアルスピンバルブ型薄膜素子に限ったことではなく、従来のデュアルスピンバルブ型薄膜素子であっても同じことであり、シングルスピンバルブ型薄膜素子に比べΔMRを大きくでき、大きな出力を得ることができるデュアルスピンバルブ型薄膜素子の特性を発揮させるには、フリー磁性層の上下に形成される固定磁性層を共に同じ方向に固定しておく必要がある。
【0175】
ところで本形態では、図5に示すように、フリー磁性層36よりも下側に形成された固定磁性層は、第2の固定磁性層(下)34のMs・tP2の方が、第1の固定磁性層(下)32のMs・tP1に比べ大きくなっており、Ms・tP2の大きい第2の固定磁性層(下)34の磁化が図示Y方向に固定されている。ここで、第2の固定磁性層34のMs・tP2と、第1の固定磁性層32のMs・tP1とを足し合わせた、いわゆる合成磁気モーメントは、Ms・tP2の大きい第2の固定磁性層34の磁気モーメントに支配され、図示Y方向に向けられている。
【0176】
一方、フリー磁性層36よりも上側に形成された固定磁性層は、第1の固定磁性層(上)43のMs・tP1の方が、第2の固定磁性層(上)41のMs・tP2に比べて大きくなっており、Ms・tP1の大きい第1の固定磁性層(上)43の磁化が図示Y方向と反対方向に固定されている。第1の固定磁性層(上)43のMs・tP1と、第2の固定磁性層(上)41のMs・tP2とを足した、いわゆる合成磁気モーメントは、第1の固定磁性層(上)43のMs・tP1に支配され、図示Y方向と反対方向に向けられている。
【0177】
すなわち、図5に示すデュアルスピンバルブ型薄膜素子では、フリー磁性層36の上下で、第1の固定磁性層のMs・tP1と第2の固定磁性層のMs・tP2を足して求めることができる合成磁気モーメントの方向が反対方向になっているのである。このためフリー磁性層36よりも下側で形成される図示Y方向に向けられた合成磁気モーメントと、前記フリー磁性層36よりも上側で形成される図示Y方向と反対方向に向けられた合成磁気モーメントとが、図示左周りの磁界を形成している。
【0178】
従って、前記合成磁気モーメントによって形成される磁界により、第1の固定磁性層(下)32,(上)43の磁化と第2の固定磁性層(下)34,(上)41の磁化とがさらに安定したフェリ状態を保つことが可能である。
【0179】
更に、センス電流114は、主に比抵抗の小さい非磁性導電層35,39を中心にして流れ、センス電流114を流すことにより、右ネジの法則によってセンス電流磁界が形成されることになるが、センス電流114を図5の方向に流すことにより、フリー磁性層36の下側に形成された第1の固定磁性層(下)32/非磁性中間層(下)33/第2の固定磁性層(下)34の場所にセンス電流が作るセンス電流磁界の方向を、前記第1の固定磁性層(下)32/非磁性中間層(下)33/第2の固定磁性層(下)34の合成磁気モーメントの方向と一致させることができ、さらに、フリー磁性層36よりも上側に形成された第1の固定磁性層(上)43/非磁性中間層(上)42/第2の固定磁性層(上)41の場所にセンス電流が作るセンス電流磁界を、前記第1の固定磁性層(上)43/非磁性中間層(上)42/第2の固定磁性層(上)41の合成磁気モーメントの方向と一致させることができる。
【0180】
センス電流磁界の方向と合成磁気モーメントの方向を一致させることのメリットに関しては後で詳述するが、簡単に言えば、前記固定磁性層の熱的安定性を高めることができることと、大きなセンス電流を流せることができるので、再生出力を向上できるという、非常に大きいメリットがある。センス電流磁界と合成磁気モーメントの方向に関するこれらの関係は、フリー磁性層36の上下に形成される固定磁性層の合成磁気モーメントが図示左周りの磁界を形成しているからである。
【0181】
装置内の環境温度は約200℃程度まで上昇し、さらに今後、記録媒体の回転数や、センス電流の増大などによって、環境温度がさらに上昇する傾向にある。このように環境温度が上昇すると、交換結合磁界は低下するが、本形態によれば、合成磁気モーメントで形成される磁界と、センス電流磁界により、熱的にも安定して第1の固定磁性層(下)32,(上)43の磁化と第2の固定磁性層(下)34,(上)41の磁化とをフェリ状態に保つことができる。
【0182】
前述した合成磁気モーメントによる磁界の形成、及び、合成磁気モーメントによる磁界とセンス電流磁界との方向関係は、本形態特有の構成であり、フリー磁性層の上下に単層で形成され、しかも同じ方向に向けられ固定磁化された固定磁性層を有する従来のデュアルスピンバルブ型薄膜素子では、得ることができないものとなっている。
【0183】
次に、熱処理中に与える磁界の方向及びその大きさについて以下に説明する。図5に示すスピンバルブ型薄膜素子では、反強磁性層31,44にPtMn合金など第1の固定磁性層(下)32,(上)43との界面で交換結合磁界(交換異方性磁界)を発生させるために、熱処理が必要な反強磁性材料を使用しているので、熱処理中に印加する磁場の方向及びその大きさを適正に制御しないと、第1の固定磁性層(下)32,(上)43と第2の固定磁性層(下)34,(上)41との磁化の方向を図5に示すような方向に得ることはできない。
【0184】
まず成膜する段階で、図5に示すように、フリー磁性層36よりも下側に形成された第1の固定磁性層(下)32のMs・tP1を、第2の固定磁性層(下)34のMs・tP2よりも小さくし、且つ前記フリー磁性層36よりも上側に形成された第1の固定磁性層(上)43のMs・tP1を第2の固定磁性層(上)41のMs・tP2よりも大きくする。
【0185】
図5に示すように、第1の固定磁性層(下)32,(上)43を図示Y方向と反対方向に向けたい場合には、前述した表1,2を参照することにより、図示Y方向と逆方向に5k(Oe)以上(表1(4)及び表2(4)参照)の磁界を与える必要がある。
【0186】
図示Y方向と反対方向に5k(Oe)以上の磁界を印加することにより、第1の固定磁性層(下)32,(上)43の磁化及び第2の固定磁性層(下)34,(上)41の磁化がすべて一旦図示Y方向と反対方向に向く。前記第1の固定磁性層(下)32,(上)43は、反強磁性層31,44との界面での交換結合磁界(交換異方性磁界)によって、図示Y方向と反対方向に固定され、5k(Oe)以上の磁界を取り去ることにより、第2の固定磁性層(下)34,(上)41の磁化は、第1の固定磁性層(下)32,(上)43との交換結合磁界(RKKY相互作用)によって、図示Y方向に反転し図示Y方向に固定されるのである。
【0187】
あるいは5k(Oe)以上の磁界を図示Y方向に与えてもよい。この場合には、第1の固定磁性層(下)32,(上)43の磁化と第2の固定磁性層(下)34,(上)41の磁化が図5に示す磁化方向と反対向きに磁化され、右回りの合成磁気モーメントによる磁界が形成される。
【0188】
また本形態では、フリー磁性層36よりも下側に形成された第1の固定磁性層(下)32のMs・tP1を、第2の固定磁性層34のMs・tP2よりも大きくし、且つ、前記フリー磁性層36よりも上側に形成された第1の固定磁性層43のMs・tP1を第2の固定磁性層41のMs・tP2よりも小さくしてもよい。この場合においても、第1の固定磁性層(下)32,(上)43の磁化を得たい方向、すなわち図示Y方向あるいは図示Y方向と反対方向に5k(Oe)以上の磁界を印加することによって、フリー磁性層36の上下に形成された第2の固定磁性層(下)34,(上)41を同じ方向に向けて固定でき、しかも図示右回りのあるいは左回りの合成磁気モーメントによる磁界を形成できる。
【0189】
なお上記した方法以外の方法で、フリー磁性層36の上下に形成された第2の固定磁性層(下)34,(上)41の磁化を互いに同じ方向に向け、しかも合成磁気モーメントによる磁界の形成、及び合成磁気モーメントによる磁界とセンス電流磁界との方向関係の形成を行うことはできない。
【0190】
また本形態では以下に示す方法によって、第2の固定磁性層(下)34,(上)41の磁化を互いに同じ方向に向けることが可能であるが、フリー磁性層36の上下に形成される合成磁気モーメントは互いに同じ方向を向くため、前記合成磁気モーメントによる磁界を形成することはできない。しかし、本形態のデュアルスピンバルブ型薄膜素子であれば、以下の熱処理方法によっても、従来のデュアルスピンバルブ型薄膜素子と同程度のΔMRを得ることができ、しかも従来のデュアルスピンバルブ型薄膜素子に比べ、固定磁性層(第1の固定磁性層と第2の固定磁性層)の磁化状態を熱的に安定した状態に保つことが可能である。
【0191】
まず、フリー磁性層36の下側に形成された第1の固定磁性層(下)32のMs・tP1と前記フリー磁性層36の上側に形成された第1の固定磁性層(上)43のMs・tP1を共に、第2の固定磁性層(下)34,(上)41のMs・tP2よりも大きくした場合には、前記第1の固定磁性層(下)32,(上)43の磁化を向けたい方向に、100〜1k(Oe)、あるいは5k(Oe)以上の磁界を与えることにより、前記第1の固定磁性層(下)32,(上)43を共に同じ方向に向け、前記第1の固定磁性層(下)32,(上)43との交換結合磁界(RKKY相互作用)によって、前記第1の固定磁性層(下)32,(上)43の磁化と反平行に磁化される第2の固定磁性層(下)34,(上)41の磁化を共に同じ方向に向けて固定することができる。
【0192】
あるいは、フリー磁性層36の下側に形成された第1の固定磁性層(下)32のMs・tP1と前記フリー磁性層36の上側に形成された第1の固定磁性層(上)43のMs・tP1を共に、第2の固定磁性層(下)34,(上)41のMs・tP2よりも小さくした場合には、前記第1の固定磁性層(下)32,(上)43の磁化を向けたい方向と反対方向に、100〜1k(Oe)、あるいは、前記第1の固定磁性層(下)32,(上)43の磁化を向けたい方向に5k(Oe)以上の磁界を与えることにより、第1の固定磁性層(下)32,(上)43を共に同じ方向に向け、前記第1の固定磁性層(下)32,(上)43との交換結合磁界(RKKY相互作用)によって、前記第1の固定磁性層(下)32,(上)43の磁化と反平行に磁化される第2の固定磁性層(下)34,(上)41の磁化を共に同じ方向に向けて固定することができる。
【0193】
以上、図1から図6に示したスピンバルブ型薄膜素子によれば、固定磁性層を非磁性中間層を介して第1の固定磁性層と第2の固定磁性層との2層に分断し、この2層の固定磁性層間に発生する交換結合磁界(RKKY相互作用)によって前記2層の固定磁性層の磁化を反平行状態(フェリ状態)にすることにより、従来に比べて熱的にも安定した固定磁性層の磁化状態を保つことができる。
【0194】
特に本形態では、反強磁性層としてブロッキング温度が非常に高く、また第1の固定磁性層との界面で大きい交換結合磁界(交換異方性磁界)を発生するPtMn合金を使用することにより、第1の固定磁性層と第2の固定磁性層との磁化状態を、より熱的安定性に優れたものにできる。
【0195】
また本形態では、第1の固定磁性層と第2の固定磁性層との膜厚比や、前記第1の固定磁性層と第2の固定磁性層との間に介在する非磁性中間層の膜厚、及び反強磁性層の膜厚を適正な範囲内で形成することによって、交換結合磁界(Hex)を大きくでき、従って、前記第1の固定磁性層と第2の固定磁性層の固定磁化の熱的安定性をより向上させることが可能である。
【0196】
なお第1の固定磁性層の膜厚tP1と第2の固定磁性層の膜厚tP2との膜厚比、さらには、前記第1の固定磁性層、第2の固定磁性層、非磁性中間層、及び反強磁性層の膜厚を適性な範囲内で形成することにより、従来とほぼ同程度のΔMRを得ることも可能である。
【0197】
さらに本形態では、反強磁性層としてPtMn合金など、第1の固定磁性層との界面で交換結合磁界(交換異方性磁界)を発生させるために熱処理を必要とする反強磁性材料を使用した場合に、第1の固定磁性層のMs・tP1と第2の固定磁性層のMs・tP2とを異なる値で形成し、さらに熱処理中の印加磁場の大きさ及びその方向を適正に調節することによって、前記第1の固定磁性層(及び第2の固定磁性層)の磁化を得たい方向に磁化させることが可能である。
【0198】
特に図5に示すデュアルスピンバルブ型薄膜素子にあっては、第1の固定磁性層(下)32,(上)43のMs・tP1と第2の固定磁性層(下)34,(上)41のMs・tP2を適正に調節し、さらに熱処理中の印加磁場の大きさ及びその方向を適正に調節することによって、ΔMRに関与するフリー磁性層36の上下に形成された2つの第2の固定磁性層(下)34,(上)41の磁化を共に同じ方向に固定でき、且つフリー磁性層36の上下に形成される合成磁気モーメントを互いに反対方向に形成できることによって、前記合成磁気モーメントによる磁界の形成、及び、前記合成磁気モーメントによる磁界とセンス電流磁界との方向関係の形成ができ、固定磁性層の磁化の熱的安定性をさらに向上させることが可能である。
【0199】
図7は、参考例のスピンバルブ型薄膜素子の構造を模式図的に示した横断面図、図8は、図7に示すスピンバルブ型薄膜素子を記録媒体との対向面から見た場合の断面図である。
【0200】
このスピンバルブ型薄膜素子においても、図1〜図6に示すスピンバルブ型薄膜素子と同様に、ハードディスク装置に設けられた浮上式スライダのトレーリング側端部などに設けられて、ハードディスクなどの記録磁界を検出するものである。なお、ハードディスクなどの磁気記録媒体の移動方向は図示Z方向であり、磁気記録媒体からの洩れ磁界の方向はY方向である。
【0201】
このスピンバルブ型薄膜素子は、固定磁性層のみならず、フリー磁性層も非磁性中間層を介して第1のフリー磁性層と第2のフリー磁性層の2層に分断されている。
【0202】
図7,8に示すように下から下地層50、反強磁性層51、第1の固定磁性層52、非磁性中間層53、第2の固定磁性層54、非磁性導電層55、第1のフリー磁性層56、非磁性中間層59、第2のフリー磁性層60、及び保護層61の順に積層されている。
【0203】
前記下地層50及び保護層61は例えばTaなどで形成されている。また前記反強磁性層51は、PtMn合金で形成されていることが好ましい。PtMn合金は、従来から反強磁性層として使用されているNiMn合金やFeMn合金などに比べて耐食性に優れ、しかもブロッキング温度が高く、交換結合磁界も大きい。また本形態では、前記PtMn合金に代えて、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ruのいずれか1種または2種以上の元素である)合金、あるいは、Pt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Agのいずれか1種または2種以上の元素である)合金を使用してもよい。
【0204】
第1の固定磁性層52及び第2の固定磁性層54は、Co膜、NiFe合金、CoFe合金、あるいはCoNiFe合金などで形成されている。また非磁性中間層53は、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種あるいは2種以上の合金で形成されていることが好ましい。さらに非磁性導電層55はCuなどで形成されている。
【0205】
前記第1の固定磁性層52の磁化と第2の固定磁性層54の磁化は、互いに反平行に磁化されたフェリ状態となっており、例えば第1の固定磁性層52の磁化は図示Y方向に、第2の固定磁性層54の磁化は図示Y方向と反対方向に固定されている。このフェリ状態の安定性を保つためには、大きい交換結合磁界が必要であり、本形態では、より大きな交換結合磁界を得るために、以下に示す種々の適正化を行っている。
【0206】
図7,8に示すスピンバルブ型薄膜素子では、(第1の固定磁性層52の膜厚tP1)/(第2の固定磁性層54の膜厚tP2)は、0.33〜0.95、あるいは1.05〜4の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.53〜0.95、あるいは、1.08〜1.8の範囲内とすることである。
【0207】
また第1の固定磁性層52及び第2の固定磁性層54の膜厚にあっては、共に10〜70オングストロームで、且つ│第1の固定磁性層52の膜厚tP1―第2の固定磁性層54の膜厚tP2│≧2オングストロームであることが好ましく、より好ましくは、10〜50オングストロームで、且つ│第1の固定磁性層52の膜厚tP1―第2の固定磁性層54の膜厚tP2│≧2オングストロームである。
【0208】
前述したように、第1の固定磁性層52の磁気的膜厚Ms・tp1と第2の固定磁性層54の磁気的膜厚Ms・tp2にある程度差がないと、磁化状態はフェリ状態にはなりにくく、また第1の固定磁性層52の磁気的膜厚Ms・tp1と第2の固定磁性層54の磁気的膜厚Ms・tp2の差が大きくなりすぎても、交換結合磁界の低下につながり好ましくない。そこで本形態では、第1の固定磁性層52の膜厚tp1と第2の固定磁性層54の膜厚tp2との膜厚比と同じように、(第1の固定磁性層52の磁気的膜厚Ms・tp1)/(第2の固定磁性層54の磁気的膜厚Ms・tp2)は、0.33〜0.95、あるいは1.05〜4の範囲内とであることが好ましい。また本形態では、第1の固定磁性層52の磁気的膜厚Ms・tp1及び第2の固定磁性層54の磁気的膜厚Ms・tp2が10〜70(オングストローム・テスラ)の範囲内で、且つ第1の固定磁性層52の磁気的膜厚Ms・tp1から第2の固定磁性層54の磁気的膜厚Ms・tp2を引いた絶対値が2(オングストローム・テスラ)以上であることが好ましい。
【0209】
また(第1の固定磁性層52の磁気的膜厚Ms・tp1)/(第2の固定磁性層54の磁気的膜厚Ms・tp2)が、0.53〜0.95、あるいは1.05〜1.8の範囲内であることがより好ましい。また上記範囲内であって、第1の固定磁性層52の磁気的膜厚Ms・tp1と第2の固定磁性層54の磁気的膜厚Ms・tp2は共に10〜50(オングストローム・テスラ)の範囲内であり、しかも第1の固定磁性層52の磁気的膜厚Ms・tp1から第2の固定磁性層54の磁気的膜厚Ms・tp2を引いた絶対値は2(オングストローム・テスラ)以上であることが好ましい。
【0210】
また第1の固定磁性層52と第2の固定磁性層54に介在する非磁性中間層53の膜厚は、3.6〜9.6オングストロームの範囲内であることが好ましい。この範囲内であれば500(Oe)以上の交換結合磁界を得ることができる。より好ましくは、4〜9.4オングストロームの範囲内であり、この範囲内であれば1000(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能である。
【0211】
さらに反強磁性層51の膜厚は、90オングストローム以上であることが好ましい。この範囲内であれば500(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能である。より好ましくは、100オングストローム以上であり、この範囲内であれば1000(Oe)以上の交換結合磁界を得ることができる。
【0212】
図7,8に示す非磁性導電層55の上には、第1のフリー磁性層56が形成されている。図7,8に示すように前記第1のフリー磁性層56は2層で形成されており、非磁性導電層55に接する側にCo膜57が形成されている。非磁性導電層55に接する側にCo膜57を形成するのは、第1にΔMRを大きくできること、第2に非磁性導電層55との拡散を防止するためである。
【0213】
前記Co膜57の上にはNiFe合金膜58が形成されている。さらに前記NiFe合金膜58上には、非磁性中間層59が形成されている。そして前記非磁性中間層59の上には、第2のフリー磁性層60が形成され、さらに前記第2のフリー磁性層60上にはTaなどで形成された保護層61が形成されている。
【0214】
前記第2のフリー磁性層60は、Co膜、NiFe合金、CoFe合金、あるいはCoNiFe合金などで形成されている。
【0215】
図8に示す下地層50から保護層61までのスピンバルブ膜は、その側面が傾斜面に削られ、前記スピンバルブ膜は台形状で形成されている。前記スピンバルブ膜の両側には、ハードバイアス層62,62及び導電層63,63が形成されている。前記ハードバイアス層62は、Co―Pt合金やCo―Cr―Pt合金などで形成されており、また前記導電層63は、CuやCrなどで形成されている。
【0216】
図7,8に示す第1のフリー磁性層56と第2のフリー磁性層60の間には非磁性中間層59が介在し、前記第1のフリー磁性層56と第2のフリー磁性層60間に発生する交換結合磁界(RKKY相互作用)によって、前記第1のフリー磁性層56の磁化と第2のフリー磁性層60の磁化は互いに反平行状態(フェリ状態)になっている。
【0217】
図8に示すスピンバルブ型薄膜素子では、例えば第1のフリー磁性層56の膜厚tF1は、第2のフリー磁性層60の膜厚tF2よりも小さく形成されている。
【0218】
そして前記第1のフリー磁性層56のMs・tF1は、第2のフリー磁性層60のMs・tF2よりも小さく設定されており、ハードバイアス層62から図示X方向にバイアス磁界が与えられると、Ms・tF2の大きい第2のフリー磁性層60の磁化が前記バイアス磁界の影響を受けて、図示X方向に揃えられ、前記第2のフリー磁性層60との交換結合磁界(RKKY相互作用)によって、Ms・tF1の小さい第1のフリー磁性層56の磁化は図示X方向と反対方向に揃えられる。
【0219】
図示Y方向から外部磁界が侵入してくると、前記第1のフリー磁性層56と第2のフリー磁性層60の磁化はフェリ状態を保ちながら、前記外部磁界の影響を受けて回転する。そしてΔMRに寄与する第1のフリー磁性層56の変動磁化と、第2の固定磁性層54の固定磁化(例えば図示Y方向と反対方向に磁化されている)との関係によって電気抵抗が変化し、外部磁界の信号が検出される。
【0220】
形態では第1のフリー磁性層56の膜厚tF1と、第2のフリー磁性層60の膜厚tF2の膜厚比を適正化し、より大きな交換結合磁界を得ることができると同時に、従来とほぼ同程度のΔMRを得ることを可能にしている。
【0221】
形態では、(第1のフリー磁性層56の膜厚tF1/第2のフリー磁性層60の膜厚tF2)が、0.56〜0.83、あるいは1.25〜5の範囲内であることが好ましい。この範囲内であると、少なくとも500(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能である。また本形態では、前記(第1のフリー磁性層56の膜厚tF1/第2のフリー磁性層60の膜厚tF2)は、0.61〜0.83、あるいは1.25〜2.1の範囲内であることがより好ましい。この範囲内であると少なくとも1000(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能である。
【0222】
なお(第1のフリー磁性層56の膜厚tF1/第2のフリー磁性層60の膜厚tF2)のうち、0.83〜1.25の範囲を除外したのは、前記第1のフリー磁性層56の膜厚tF1と第2のフリー磁性層60の膜厚tF2とがほぼ同じ値で形成され、前記第1のフリー磁性層56のMs・tF1と、第2のフリー磁性層60のMs・tF2がほぼ同じ値に設定されると、ハードバイアス層62からのバイアス磁界の影響を受けて、第1のフリー磁性層56と第2のフリー磁性層60のどちらの磁化も、前記バイアス磁界方向に向こうとしてしまうため、前記第1のフリー磁性層56の磁化と第2のフリー磁性層60の磁化は反平行状態にならず、安定した磁化状態を保つことが不可能となる。
【0223】
また、第1のフリー磁性層56の磁気的膜厚Ms・tF1と第2のフリー磁性層60の磁気的膜厚Ms・tF2にある程度差がないと、磁化状態はフェリ状態にはなりにくく、また第1のフリー磁性層56の磁気的膜厚Ms・tF1と第2のフリー磁性層60の磁気的膜厚Ms・tF2の差が大きくなりすぎても、交換結合磁界の低下につながり好ましくない。そこで本形態では、第1のフリー磁性層56の膜厚tF1と第2のフリー磁性層60の膜厚tF2との膜厚比と同じように、(第1のフリー磁性層56の磁気的膜厚Ms・tF1)/(第2のフリー磁性層60の磁気的膜厚Ms・tF2)は、0.56〜0.83、あるいは1.25〜5の範囲内とであることが好ましい。また本形態では、(第1のフリー磁性層56の磁気的膜厚Ms・tF1)/(第2のフリー磁性層60の磁気的膜厚Ms・tF2)が0.61〜0.83、あるいは1.25〜2.1の範囲内であることがより好ましい。
【0224】
また本形態では、第1のフリー磁性層56と第2のフリー磁性層60との間に介在する非磁性中間層59は、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種あるいは2種以上の合金で形成されていることが好ましい。さらに前記非磁性中間層59の膜厚は、5.5〜10.0オングストロームの範囲内であることが好ましい。この範囲内であれば、500(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能である。また前記非磁性中間層59の膜厚は、5.9〜9.4オングストロームの範囲内であることがより好ましい。この範囲内であれば1000(Oe)以上の交換結合磁界を得ることができる。
【0225】
なお上記の数値範囲内で、第1の固定磁性層52と第2の固定磁性層54の膜厚比、非磁性中間層53及び反強磁性層51の膜厚、さらには第1のフリー磁性層56と第2のフリー磁性層60の膜厚比、及び非磁性中間層59の膜厚を調整することにより、従来と同程度のΔMR(抵抗変化率)を得ることが可能である。
【0226】
次に熱処理の方法について説明する。図7,8に示すスピンバルブ型薄膜素子においては、反強磁性層51にPtMn合金などの熱処理を施すことにより、第1の固定磁性層52との界面にて交換結合磁界(交換異方性磁界)が発生する反強磁性材料を使用している。このため前記熱処理中に印加する磁場の方向及びその大きさを適正に制御して、第1の固定磁性層52及び第2の固定磁性層54の磁化方向を調整する必要性がある。
【0227】
仮に、第1の固定磁性層52のMs・tP1の方が、第2の固定磁性層54のMs・tP2よりも大きい場合には、前記第1の固定磁性層52の磁化を向けたい方向に、100〜1k(Oe)、あるいは5k(Oe)の磁場を印加すればよい。例えば前記第1の固定磁性層52を図示Y方向に向けたいならば、図示Y方向に100〜1k(Oe)の磁界を与える。Ms・tP1の大きい第1の固定磁性層52の磁化は、磁場方向、すなわち図示Y方向に向き、反強磁性層51との界面で発生する交換結合磁界(交換異方性磁界)によって前記第1の固定磁性層52の磁化は図示Y方向に固定される。一方、第2の固定磁性層54の磁化は、第1の固定磁性層52との交換結合磁界(RKKY相互作用)によって、図示Y方向と反対方向に向き固定される。あるいは図示Y方向に5k(Oe)以上の磁界を与える。第1の固定磁性層52と第2の固定磁性層54との交換結合磁界(RKKY相互作用)は、1k(Oe)〜5k(Oe)程度なので、5k(Oe)以上の磁場が印加されることにより、前記第1の固定磁性層52の磁化及び第2の固定磁性層54の磁化は共に、図示Y方向に向く。このとき、前記第1の固定磁性層52の磁化は、反強磁性層51との界面で発生する交換結合磁界(交換異方性磁界)によって図示Y方向に固定される。一方、5k(Oe)以上の磁場が取り去られると、第2の固定磁性層54の磁化は、前記第1の固定磁性層52との交換結合磁界(RKKY相互作用)によって、図示Y方向と反対方向に向けられて固定される。
【0228】
また第1の固定磁性層52のMs・tP1の方が、第2の固定磁性層54のMs・tP2よりも小さい場合、前記第1の固定磁性層52の磁化を向けたい方向と反対方向に100〜1k(Oe)、または前記第1の固定磁性層52の磁化を向けたい方向に5k(Oe)以上の磁場を印加すればよい。例えば第1の固定磁性層52を図示Y方向に向けたいならば、図示Y方向と反対方向に100〜1k(Oe)の磁場を与える。これによって、Ms・tP2の大きい第2の固定磁性層54の磁化は、前記磁場方向、すなわち図示Y方向と反対方向に向き、前記第2の固定磁性層54と交換結合磁界(RKKY相互作用)によって前記第1の固定磁性層52の磁化は図示Y方向に向けられる。前記第1の固定磁性層52の磁化は、反強磁性層51との界面に発生する交換結合磁界(交換異方性磁界)によって図示Y方向に固定され、第2の固定磁性層54の磁化は、図示Y方向と反対方向に固定される。あるいは、図示Y方向に5k(Oe)以上の磁界を与えらればよい。5k(Oe)以上の磁界を与えることにより、第1の固定磁性層52及び第2の固定磁性層54の磁化は共に図示Y方向に向けられ、前記第1の固定磁性層52の磁化は、反強磁性層51との界面での交換結合磁界(交換異方性磁界)によって図示Y方向に固定される。5k(Oe)以上の磁場が取り除かれると、図示Y方向に向けられていた第2の固定磁性層54の磁化は、前記第1の固定磁性層52との交換結合磁界(RKKY相互作用)によって図示Y方向と反対方向に向けられ固定される。
【0229】
また本形態では、図示X方向及び図示Y方向を正の方向、図示X方向と反対方向及び図示Y方向と反対方向を負の方向とした場合、第1のフリー磁性層56のMs・tF1と第2のフリー磁性層60のMs・tF2を足し合わせた、いわゆる合成磁気モーメントの絶対値は、第1の固定磁性層52のMs・tP1と第2の固定磁性層54のMs・tP2を足し合わせた合成磁気モーメントの絶対値よりも大きい方が好ましい。すなわち、│(Ms・tF1+Ms・tF2)/(Ms・tp1+Ms・tP2)│>1であることが好ましい。
【0230】
第1のフリー磁性層56と第2のフリー磁性層60との合成磁気モーメントの絶対値を、第1の固定磁性層52と第2の固定磁性層54との合成磁気モーメントの絶対値よりも大きくすることにより、前記第1のフリー磁性層56と第2のフリー磁性層60の磁化が、第1の固定磁性層52と第2の固定磁性層54との合成磁気モーメントの影響を受けにくくなり、前記第1のフリー磁性層56及び第2のフリー磁性層60の磁化が外部磁界に対して感度良く、回転し、出力を向上させることが可能になる。
【0231】
図9は、参考例のスピンバルブ型薄膜素子を模式図的に示した横断面図、図10は、図9に示すスピンバルブ型薄膜素子を記録媒体との対向面から見た場合の断面図である。
【0232】
このスピンバルブ型薄膜素子は、図7,8に示すスピンバルブ型薄膜素子の積層の順番を逆にしたものである。
【0233】
すなわち下から、下地層70、第2のフリー磁性層71、非磁性中間層72、第1のフリー磁性層73、非磁性導電層76、第2の固定磁性層77、非磁性中間層78、第1の固定磁性層79、反強磁性層80、及び保護層81の順で積層されている。
【0234】
前記下地層70及び保護層81は例えばTaなどで形成されている。前記反強磁性層80は、PtMn合金で形成されていることが好ましい。PtMn合金は、従来から反強磁性層として使用されているNiMn合金やFeMn合金などに比べて耐食性に優れ、しかもブロッキング温度が高く、交換結合磁界も大きい。また本形態では、前記PtMn合金に代えて、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ruのいずれか1種または2種以上の元素である)合金、あるいは、Pt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Agのいずれか1種または2種以上の元素である)合金を使用してもよい。
【0235】
第1の固定磁性層79及び第2の固定磁性層77は、Co膜、NiFe合金、CoFe合金、あるいはCoNiFe合金などで形成されている。また非磁性中間層78は、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種あるいは2種以上の合金で形成されていることが好ましい。さらに非磁性導電層76はCuなどで形成されている。
【0236】
また図9,10に示すスピンバルブ型薄膜素子では、(第1の固定磁性層79の膜厚tP1)/(第2の固定磁性層77の膜厚tP2)は、0.33〜0.95、あるいは1.05〜4の範囲内であることが好ましく、しかも第1の固定磁性層79の膜厚tP1及び第2の固定磁性層77の膜厚tP2は共に10〜70オングストロームの範囲内であり、且つ、│第1の固定磁性層79の膜厚tP1―第2の固定磁性層77の膜厚tP2│≧2オングストローム以上であることが好ましい。上記範囲内で適正に調節すれば、500(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能である。
【0237】
さらに本形態では、(第1の固定磁性層79の膜厚tP1)/(第2の固定磁性層77の膜厚tP2)は、0.53〜0.95、あるいは1.05〜1.8の範囲内であることがより好ましく、しかも第1の固定磁性層79の膜厚tP1及び第2の固定磁性層77の膜厚tP2は共に10〜50オングストロームの範囲内であり、且つ、│第1の固定磁性層79の膜厚tP1―第2の固定磁性層77の膜厚tP2│≧2オングストローム以上であることがより好ましい。上記範囲内で適正に調節あれば、1000(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能である。
【0238】
前述したように、第1の固定磁性層79の磁気的膜厚Ms・tP1と第2の固定磁性層77の磁気的膜厚Ms・tP2にある程度差がないと、磁化状態はフェリ状態にはなりにくく、また第1の固定磁性層79の磁気的膜厚Ms・tP1と第2の固定磁性層77の磁気的膜厚Ms・tP2の差が大きくなりすぎても、交換結合磁界の低下につながり好ましくない。そこで本形態では、第1の固定磁性層79の膜厚tp1と第2の固定磁性層77の膜厚tp1との膜厚比と同じように、(第1の固定磁性層79の磁気的膜厚Ms・tP1)/(第2の固定磁性層77の磁気的膜厚Ms・tP2)は、0.33〜0.95、あるいは1.05〜4の範囲内であることが好ましい。また本形態では、第1の固定磁性層79の磁気的膜厚Ms・tP1及び第2の固定磁性層77の磁気的膜厚Ms・tP2が10〜70(オングストローム・テスラ)の範囲内で、且つ第1の固定磁性層79の磁気的膜厚Ms・tP1から第2の固定磁性層77の磁気的膜厚Ms・tP2を引いた絶対値が2(オングストローム・テスラ)以上であることが好ましい。
【0239】
また(第1の固定磁性層79の磁気的膜厚Ms・tP1)/(第2の固定磁性層77の磁気的膜厚Ms・tP2)が、0.53〜0.95、あるいは1.05〜1.8の範囲内であることがより好ましい。また上記範囲内であって、第1の固定磁性層79の磁気的膜厚Ms・tP1と第2の固定磁性層77の磁気的膜厚Ms・tP2は共に10〜50(オングストローム・テスラ)の範囲内であり、しかも第1の固定磁性層79の磁気的膜厚Ms・tP1から第2の固定磁性層77の磁気的膜厚Ms・tP2を引いた絶対値は2(オングストローム・テスラ)以上であることが好ましい。
【0240】
また第1の固定磁性層79と第2の固定磁性層77との間に介在する非磁性中間層78の膜厚は、2.5〜6.4、あるいは、6.6〜10.7オングストロームの範囲内であることが好ましい。この範囲内であれば500(Oe)以上の交換結合磁界を得ることができる。より好ましくは、2.8〜6.2オングストローム、あるいは6.8〜10.3オングストロームの範囲内であり、この範囲内であれば1000(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能である。
【0241】
さらに反強磁性層80の膜厚は、90オングストローム以上であることが好ましい。この範囲内であれば500(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能である。より好ましくは、100オングストローム以上であり、この範囲内であれば1000(Oe)以上の交換結合磁界を得ることができる。
【0242】
図10に示すスピンバルブ型薄膜素子では、フリー磁性層が2層に分断されて形成されており、非磁性導電層76に接する側に第1のフリー磁性層73が形成され、もう一方のフリー磁性層が、第2のフリー磁性層71となっている。図10に示すように第1のフリー磁性層73は2層で形成されており、非磁性導電層76に接する側に形成された層75はCo膜で形成されている。また、非磁性中間層72に接する側に形成された層74と、第2のフリー磁性層71は、例えば、NiFe合金、CoFe合金、あるいはCoNiFe合金などで形成されている。
【0243】
図10に示す下地層70から保護層81までのスピンバルブ膜は、その側面が傾斜面に削られ、前記スピンバルブ膜は台形状で形成されている。前記スピンバルブ膜の両側には、ハードバイアス層82,82及び導電層83,83が形成されている。前記ハードバイアス層82は、Co―Pt合金やCo―Cr―Pt合金などで形成されており、また前記導電層83は、CuやCrなどで形成されている。
【0244】
図10に示す第1のフリー磁性層73と第2のフリー磁性層71の間には非磁性中間層72が介在し、前記第1のフリー磁性層73と第2のフリー磁性層71間に発生する交換結合磁界(RKKY相互作用)によって、前記第1のフリー磁性層73の磁化と第2のフリー磁性層71の磁化は反平行状態(フェリ状態)となっている。図10に示すスピンバルブ型薄膜素子では、例えば第1のフリー磁性層73の膜厚TF1は、第2のフリー磁性層71の膜厚TF2より大きく形成されている。そして前記第1のフリー磁性層73のMs・tF1は、第2のフリー磁性層71のMs・tF2よりも大きくなるように設定されており、ハードバイアス層82から図示X方向にバイアス磁界が与えられると、Ms・tF1の大きい第1のフリー磁性層73の磁化が前記バイアス磁界の影響を受けて、図示X方向に揃えられ、前記第1のフリー磁性層73との交換結合磁界(RKKY相互作用)によってMs・tF2の小さい第2のフリー磁性層71の磁化は図示X方向と反対方向に揃えられる。なお本形態では、第1のフリー磁性層73の膜厚tF1が、第2のフリー磁性層71の膜厚tF2よりも小さく形成され、前記第1のフリー磁性層73のMs・tF1が第2のフリー磁性層71のMs・tF2よりも小さく設定されていてもよい。
【0245】
図示Y方向から外部磁界が侵入してくると、前記第1のフリー磁性層73と第2のフリー磁性層71の磁化はフェリ状態を保ちながら、前記外部磁界の影響を受けて回転する。そしてΔMRに寄与する第1のフリー磁性層73の磁化方向と、第2の固定磁性層71の固定磁化との関係によって電気抵抗が変化し、外部磁界の信号が検出される。
【0246】
形態では第1のフリー磁性層73の膜厚TF1と、第2のフリー磁性層71の膜厚TF2の膜厚比を適正化し、より大きな交換結合磁界を得ることができると同時に、従来とほぼ同程度のΔMRを得ることを可能にしている。
【0247】
形態では、(第1のフリー磁性層73の膜厚tF1/第2のフリー磁性層71の膜厚tF2)が、0.56〜0.83、あるいは1.25〜5の範囲内であることが好ましい。この範囲内であると、少なくとも500(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能である。また本形態では、前記(第1のフリー磁性層73の膜厚tF1/第2のフリー磁性層71の膜厚tF2)は、0.61〜0.83、あるいは1.25〜2.1の範囲内であることがより好ましい。この範囲内であると少なくとも1000(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能である。
【0248】
また、第1のフリー磁性層73の磁気的膜厚Ms・tF1と第2のフリー磁性層71の磁気的膜厚Ms・tF2にある程度差がないと、磁化状態はフェリ状態にはなりにくく、また第1のフリー磁性層73の磁気的膜厚Ms・tF1と第2のフリー磁性層71の磁気的膜厚Ms・tF2の差が大きくなりすぎても、交換結合磁界の低下につながり好ましくない。そこで本形態では、第1のフリー磁性層73の膜厚tF1と第2のフリー磁性層71の膜厚tF2との膜厚比と同じように、(第1のフリー磁性層73の磁気的膜厚Ms・tF1)/(第2のフリー磁性層71の磁気的膜厚Ms・tF2)は、0.56〜0.83、あるいは1.25〜5の範囲内であることが好ましい。また本形態では、(第1のフリー磁性層73の磁気的膜厚Ms・tF1)/(第2のフリー磁性層71の磁気的膜厚Ms・tF2)が0.61〜0.83、あるいは1.25〜2.1の範囲内であることがより好ましい。
【0249】
また本形態では、第1のフリー磁性層73と第2のフリー磁性層71との間に介在する非磁性中間層72は、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種あるいは2種以上の合金で形成されていることが好ましい。さらに前記非磁性中間層72の膜厚は、5.5〜10.0オングストロームの範囲内であることが好ましい。この範囲内であれば、500(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能である。また前記非磁性中間層72の膜厚は、5.9〜9.4オングストロームの範囲内であることがより好ましい。この範囲内であれば1000(Oe)以上の交換結合磁界を得ることができる。
【0250】
なお第1の固定磁性層79と第2の固定磁性層77の膜厚比、非磁性中間層78及び反強磁性層80の膜厚、さらには、第1のフリー磁性層73と第2のフリー磁性層71との膜厚比、及び非磁性中間層72の膜厚を、上述した範囲内で適正に調節すれば、従来と同程度のΔMR(抵抗変化率)を得ることが可能である。
【0251】
次に熱処理の方法について説明する。仮に、第1の固定磁性層79のMs・tP1の方が、第2の固定磁性層77のMs・tP2よりも大きい場合には、前記第1の固定磁性層79の磁化を向けたい方向に、100〜1k(Oe)、あるいは5k(Oe)の磁界を与えれば良い。あるいは、第1の固定磁性層79のMs・tP1の方が、第2の固定磁性層77のMs・tP2よりも小さい場合、前記第1の固定磁性層79の磁化を向けたい方向と反対方向に100〜1k(Oe)、または前記第1の固定磁性層79の磁化を向けたい方向に5k(Oe)以上の磁界を与えらればよい。本形態においては、前記第1の固定磁性層79の磁化は、図示Y方向に固定され、前記第2の固定磁性層77の磁化は図示Y方向と反対方向に固定されている。あるいは前記第1の固定磁性層79の磁化は、図示Y方向と反対方向に固定され、前記第2の固定磁性層77の磁化は、図示Y方向に固定されている。
【0252】
また本形態では、図示X方向及び図示Y方向を正の方向、図示X方向と反対方向及び図示Y方向と反対方向を負の方向とした場合、第1のフリー磁性層73のMs・tF1と第2のフリー磁性層71のMs・tF2を足し合わせた、いわゆる合成磁気モーメントの絶対値は、第1の固定磁性層79のMs・tP1と第2の固定磁性層77のMs・tP2を足し合わせた合成磁気モーメントの絶対値よりも大きい方が好ましい。すなわち、│(Ms・tF1+Ms・tF2)/(Ms・tp1+Ms・tP2)│>1であることが好ましい。
【0253】
第1のフリー磁性層73と第2のフリー磁性層71との合成磁気モーメントの絶対値を、第1の固定磁性層79と第2の固定磁性層77との合成磁気モーメントの絶対値よりも大きくすることにより、前記第1のフリー磁性層79と、第2のフリー磁性層77の磁化が、第1の固定磁性層79と第2の固定磁性層77との合成磁気モーメントの影響を受けにくくなり、前記第1のフリー磁性層73及び第2のフリー磁性層71の磁化が外部磁界に対して感度良く、回転し、出力を向上させることが可能になる。
【0254】
図11は参考例のスピンバルブ型薄膜素子の構造を表す横断面図であり、図12は図11に示すスピンバルブ型薄膜素子を、記録媒体との対向面側から見た断面図である。
【0255】
このスピンバルブ型薄膜素子は、フリー磁性層を中心にしてその上下に非磁性導電層、固定磁性層、及び反強磁性層が積層されたデュアルスピンバルブ型薄膜素子であり、前記フリー磁性層、及び固定磁性層が、非磁性中間層を介して2層に分断されて形成されている。
【0256】
図11、12に示す最も下側に形成されている層は、下地層91であり、この下地層91の上に反強磁性層92、第1の固定磁性層(下)93、非磁性中間層94(下)、第2の固定磁性層(下)95、非磁性導電層96、第2のフリー磁性層97、非磁性中間層100、第1のフリー磁性層101、非磁性導電層104、第2の固定磁性層(上)105、非磁性中間層(上)106、第1の固定磁性層(上)107、反強磁性層108、及び保護層109が形成されている。
【0257】
まず材質について説明する。反強磁性層92,108は、PtMn合金で形成されていることが好ましい。PtMn合金は、従来から反強磁性層として使用されているNiMn合金やFeMn合金などに比べて耐食性に優れ、しかもブロッキング温度が高く、交換結合磁界(交換異方性磁界)も大きい。また本形態では、前記PtMn合金に代えて、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ruのいずれか1種または2種以上の元素である)合金、あるいは、Pt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Agのいずれか1種または2種以上の元素である)合金を使用してもよい。
【0258】
第1の固定磁性層(下)93,(上)107、及び第2の固定磁性層(下)95,(上)105は、Co膜、NiFe合金、CoFe合金、あるいはCoNiFe合金などで形成されている。また第1の固定磁性層(下)93,(上)107と第2の固定磁性層(下)95,(上)105間に形成されている非磁性中間層(下)94,(上)106及び第1のフリー磁性層101と第2のフリー磁性層97間に形成されている非磁性中間層100は、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種あるいは2種以上の合金で形成されていることが好ましい。さらに非磁性導電層96,104はCuなどで形成されている。
【0259】
図11に示すように、第1のフリー磁性層101及び第2のフリー磁性層97は2層で形成されている。非磁性導電層96,104に接する側に形成された第1のフリー磁性層101の層103及び第2のフリー磁性層97の層98はCo膜で形成されている。また、非磁性中間層100を介して形成されている第1のフリー磁性層101の層102及び第2のフリー磁性層97の層99は、例えば、NiFe合金、CoFe合金、あるいはCoNiFe合金などで形成されている。
【0260】
非磁性導電層96,104側に接する層98,103をCo膜で形成することにより、ΔMRを大きくでき、しかも非磁性導電層96,104との拡散を防止することができる。
【0261】
次に各層の膜厚の適正範囲について説明する。まずフリー磁性層の下側に形成されている第1の固定磁性層(下)93の膜厚tP1と、第2の固定磁性層(下)95の膜厚tP2との膜厚比、及びフリー磁性層の上側に形成されている第1の固定磁性層(上)107の膜厚tP1と第2の固定磁性層(上)105の膜厚tP2との膜厚比は、(第1の固定磁性層(下)93,(上)107の膜厚tP1)/(第2の固定磁性層(下)95,(上)105の膜厚tP2)は、0.33〜0.95、あるいは1.05〜4の範囲内であることが好ましく、しかも、第1の固定磁性層(下)93,(上)107及び第2の固定磁性層(下)95,(上)105の膜厚は、共に10〜70オングストロームの範囲内で形成され、且つ、│第1の固定磁性層(下)93,(上)107の膜厚tP1―第2の固定磁性層(下)95,(上)105の膜厚tP2│≧2オングストロームで形成されていることが好ましい。上記範囲内であれば500(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能である。
【0262】
また本形態では、(第1の固定磁性層(下)93,(上)107の膜厚tP1)/(第2の固定磁性層(下)95,(上)105の膜厚tP2)は、0.53〜0.95、あるいは1.05〜1.8の範囲内であることが好ましく、しかも、第1の固定磁性層(下)93,(上)107及び第2の固定磁性層(下)95,(上)105の膜厚は、共に10〜50オングストロームの範囲内で形成され、且つ、│第1の固定磁性層(下)93,(上)107の膜厚tP1―第2の固定磁性層(下)95,(上)105の膜厚tP2│≧2オングストロームで形成されていることが好ましい。上記範囲内であれば1000(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能である。
【0263】
ところで、本形態では前述したように、反強磁性層92,108としてPtMn合金など、第1の固定磁性層(下)93,(上)107との界面で交換結合磁界(交換異方性磁界)を発生させるために熱処理を必要とする反強磁性材料を使用している。
【0264】
しかし、フリー磁性層よりも下側に形成されている反強磁性層92と第1の固定磁性層(下)93との界面では、金属元素の拡散が発生しやすく熱拡散層が形成されやすくなっているために、前記第1の固定磁性層(下)93として機能する磁気的な膜厚は実際の膜厚tP1よりも薄くなっている。従ってフリー磁性層よりも上側の積層膜で発生する交換結合磁界と、下側の積層膜から発生する交換結合磁界をほぼ等しくするには、フリー磁性層よりも下側に形成されている(第1の固定磁性層(下)93の膜厚tP1/第2の固定磁性層(下)95の膜厚tP2)が、フリー磁性層よりも上側に形成されている(第1の固定磁性層(上)107の膜厚tP1/第2の固定磁性層(上)105の膜厚tP2よりも大きい方が好ましい。フリー磁性層よりも上側の積層膜から発生する交換結合磁界と、下側の積層膜から発生する交換結合磁界とを等しくすることにより、前記交換結合磁界の製造プロセス劣化が少なく、磁気ヘッドの信頼性を向上させることができる。
【0265】
前述したように、第1の固定磁性層(下)93,(上)107の磁気的膜厚Ms・tP1と第2の固定磁性層(下)95,(上)105の磁気的膜厚Ms・tP2にある程度差がないと、磁化状態はフェリ状態にはなりにくく、また第1の固定磁性層(下)93,(上)107の磁気的膜厚Ms・tP1と第2の固定磁性層(下)95,(上)105の磁気的膜厚Ms・tP2の差が大きくなりすぎても、交換結合磁界の低下につながり好ましくない。そこで本形態では、第1の固定磁性層(下)93,(上)107の膜厚tP1と第2の固定磁性層(下)95,(上)105の膜厚tP2の膜厚比と同じように、(第1の固定磁性層(下)93,(上)107の磁気的膜厚Ms・tP1)/(第2の固定磁性層(下)95,(上)105の磁気的膜厚Ms・tP2)は、0.33〜0.95、あるいは1.05〜4の範囲内とであることが好ましい。また本形態では、第1の固定磁性層(下)93,(上)107の磁気的膜厚Ms・tP1及び第2の固定磁性層(下)95,(上)105の磁気的膜厚Ms・tP2が10〜70(オングストローム・テスラ)の範囲内で、且つ第1の固定磁性層(下)93,(上)107の磁気的膜厚Ms・tP1から第2の固定磁性層(下)95,(上)105の磁気的膜厚Ms・tP2を引いた絶対値が2(オングストローム・テスラ)以上であることが好ましい。
【0266】
また(第1の固定磁性層(下)93,(上)107の磁気的膜厚Ms・tP1)/(第2の固定磁性層(下)95,(上)105の磁気的膜厚Ms・tP2)が、0.53〜0.95、あるいは1.05〜1.8の範囲内であることがより好ましい。また上記範囲内であって、第1の固定磁性層(下)93,(上)107の磁気的膜厚Ms・tP1と第2の固定磁性層(下)95,(上)105の磁気的膜厚Ms・tP2は共に10〜50(オングストローム・テスラ)の範囲内であり、しかも第1の固定磁性層(下)93,(上)107の磁気的膜厚Ms・tP1から第2の固定磁性層(下)95,(上)105の磁気的膜厚Ms・tP2を引いた絶対値は2(オングストローム・テスラ)以上であることが好ましい。
【0267】
また本形態では、フリー磁性層よりも下側に形成されている第1の固定磁性層(下)93と第2の固定磁性層(下)95の間に介在する非磁性中間層(下)94の膜厚は、3.6〜9.6オングストロームの範囲内であることが好ましい。この範囲内であれば500(Oe)以上の交換結合磁界を得ることができる。より好ましくは、4〜9.4オングストロームの範囲内であり、この範囲内であれば1000(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能である。
【0268】
またフリー磁性層よりも上側に形成されている第1の固定磁性層(上)107と第2の固定磁性層(上)105との間に介在する非磁性中間層(上)106の膜厚は、2.5〜6.4オングストローム、あるいは6.6〜10.7オングストロームの範囲内であることが好ましい。この範囲内であると少なくとも500(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能である。また、2.8〜6.2オングストローム、あるいは6.8〜10.3オングストロームの範囲内であることがより好ましく、この範囲内であれば1000(Oe)以上の交換結合磁界を得ることができる。
【0269】
さらに本形態では、反強磁性層92,108の膜厚は、100オングストローム以上であることが好ましく、前記反強磁性層92,108を100オングストローム以上で形成することにより、少なくとも500(Oe)以上の交換結合磁界を得ることができる。また本形態では、前記反強磁性層92,108の膜厚を110オングストローム以上で形成すれば、少なくとも1000(Oe)以上の交換結合磁界を得ることができる。
【0270】
また本形態では、第1のフリー磁性層101の膜厚をtF1とし、第2のフリー磁性層97の膜厚をtF2とした場合、(第1のフリー磁性層101の膜厚tF1/第2のフリー磁性層97の膜厚tF2)は、0.56〜0.83、あるいは1.25〜5の範囲内であることが好ましい。この範囲内であると500(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能である。また、前記(第1のフリー磁性層の膜厚/第2のフリー磁性層の膜厚)は、0.61〜0.83、あるいは1.25〜2.1の範囲内であることがより好ましく、この範囲内であると、1000(Oe)以上の交換結合磁界を得ることができる。
【0271】
また、第1のフリー磁性層101の磁気的膜厚Ms・tF1と第2のフリー磁性層97の磁気的膜厚Ms・tF2にある程度差がないと、磁化状態はフェリ状態にはなりにくく、また第1のフリー磁性層101の磁気的膜厚Ms・tF1と第2のフリー磁性層97の磁気的膜厚Ms・tF2の差が大きくなりすぎても、交換結合磁界の低下につながり好ましくない。そこで本形態では、第1のフリー磁性層101の膜厚tF1と第2のフリー磁性層97の膜厚tF2との膜厚比と同じように、(第1のフリー磁性層101の磁気的膜厚Ms・tF1)/(第2のフリー磁性層97の磁気的膜厚Ms・tF2)は、0.56〜0.83、あるいは1.25〜5の範囲内であることが好ましい。また本形態では、(第1のフリー磁性層101の磁気的膜厚Ms・tF1)/(第2のフリー磁性層97の磁気的膜厚Ms・tF2)が0.61〜0.83、あるいは1.25〜2.1の範囲内であることがより好ましい。
【0272】
また、第1のフリー磁性層101と第2のフリー磁性層97との間に介在する非磁性中間層100は、その膜厚が、5.5〜10.0オングストロームの範囲内で形成されていることが好ましく、この範囲内であると、500(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能である。また、前記非磁性中間層100の膜厚は、5.9〜9.4オングストロームの範囲内であることがより好ましく、この範囲内であると1000(Oe)以上の交換結合磁界を得ることができる。
【0273】
なお本形態では、第1の固定磁性層(下)93,(上)107と第2の固定磁性層(下)95,(上)105との膜厚比、第1の固定磁性層(下)93,(上)107と第2の固定磁性層(下)95,(上)105、非磁性中間層(下)94,(上)106、及び反強磁性層92,108の膜厚、さらには、第1のフリー磁性層101と第2のフリー磁性層97の膜厚比、及び非磁性中間層100の膜厚を上記範囲内で適正に調節すれば、従来と同程度のΔMRを得ることが可能である。
【0274】
ところで、図11,12に示すデュアルスピンバルブ型薄膜素子においては、フリー磁性層の上下に形成されている第2の固定磁性層(下)95,(上)105の磁化を互いに反対方向に向けておく必要がある。これはフリー磁性層が第1のフリー磁性層101と第2のフリー磁性層97の2層に分断されて形成されており、前記第1のフリー磁性層101の磁化と第2のフリー磁性層97の磁化とが反平行になっているからである。
【0275】
例えば図11,12に示すように、第1のフリー磁性層101の磁化が図示X方向と反対方向に磁化されているとすると、前記第1のフリー磁性層101との交換結合磁界(RKKY相互作用)によって、第2のフリー磁性層97の磁化は、図示X方向に磁化された状態となっている。前記第1のフリー磁性層101及び第2のフリー磁性層97の磁化は、フェリ状態を保ちながら、外部磁界の影響を受けて反転するようになっている。
【0276】
図11,図12に示すデュアルスピンバルブ型薄膜素子にあっては、第1のフリー磁性層101の磁化及び第2のフリー磁性層97の磁化は共にΔMRに関与する層となっており、前記第1のフリー磁性層101及び第2のフリー磁性層97の変動磁化と、第2の固定磁性層(下)95,(上)105の固定磁化との関係で電気抵抗が変化する。シングルスピンバルブ型薄膜素子に比べ大きいΔMRを期待できるデュアルスピンバルブ型薄膜素子としての機能を発揮させるには、第1のフリー磁性層101と第2の固定磁性層(上)105との抵抗変化及び、第2のフリー磁性層97と第2の固定磁性層(下)95との抵抗変化が、共に同じ変動を見せるように、前記第2の固定磁性層(下)95,(上)105の磁化方向を制御する必要性がある。すなわち、第1のフリー磁性層101と第2の固定磁性層(上)105との抵抗変化が最大になるとき、第2のフリー磁性層97と第2の固定磁性層(下)95との抵抗変化も最大になるようにし、第1のフリー磁性層101と第2の固定磁性層(上)105との抵抗変化が最小になるとき、第2のフリー磁性層97と第2の固定磁性層(下)95との抵抗変化も最小になるようにすればよいのである。
【0277】
よって図11,12に示すデュアルスピンバルブ型薄膜素子では、第1のフリー磁性層101と第2のフリー磁性層97の磁化が反平行に磁化されているため、第2の固定磁性層(上)105の磁化と第2の固定磁性層(下)95の磁化を互いに反対方向に磁化する必要性があるのである。
【0278】
形態では、上記のような理由から、第2の固定磁性層(下)95の磁化と、第2の固定磁性層(上)105の磁化とを反対方向に向けて固定しているが、このような磁化方向の制御を行うためには、各固定磁性層のMs・tと、熱処理中に与える磁場の方向及び大きさを適正に調節する必要がある。
【0279】
まず各固定磁性層のMs・tについては、フリー磁性層よりも上側に形成されている第1の固定磁性層(上)107のMs・tP1を、第2の固定磁性層(上)105のMs・tP2よりも大きくし、且つ、フリー磁性層よりも下側に形成されている第1の固定磁性層(下)93のMs・tP1を、第2の固定磁性層(下)95のMs・tP2よりも小さくするか、あるいは、フリー磁性層よりも上側に形成されている第1の固定磁性層(上)107のMs・tP1を、第2の固定磁性層105(上)のMs・tP2よりも小さくし、且つ、フリー磁性層よりも下側に形成されている第1の固定磁性層(下)93のMs・tP1を、第2の固定磁性層(下)95のMs・tP2よりも大きくする必要がある。
【0280】
形態では、反強磁性層92,108としてPtMn合金など磁場中アニール(熱処理)を施すことにより、第1の固定磁性層(下)93,(上)107との界面で交換結合磁界を発生する反強磁性材料を使用しているので、熱処理中に印加する磁場の方向とその大きさを適正に調節しなければならない。本形態では、フリー磁性層よりも上側に形成されている第1の固定磁性層(上)107のMs・tP1を、第2の固定磁性層(上)105のMs・tP2よりも大きくし、且つ、フリー磁性層よりも下側に形成されている第1の固定磁性層(下)93のMs・tP1を、第2の固定磁性層(下)95のMs・tP2よりも小さくした場合にあっては、フリー磁性層よりも上側に形成されている第1の固定磁性層(上)107の磁化を向けたい方向に、100〜1k(Oe)の磁界を与える。
【0281】
例えば、図11に示すように、前記第1の固定磁性層(上)107の磁化を図示Y方向に向けたい場合には、図示Y方向に100〜1k(Oe)の磁界を与える。ここでMs・tP1の大きい前記第1の固定磁性層(上)107と、フリー磁性層よりも下側に形成された第2の固定磁性層(下)95が共に前記印加磁場の方向、すなわち図示Y方向に向く。一方、フリー磁性層よりも上側に形成されたMs・tP2の小さい第2の固定磁性層(上)105の磁化は、第1の固定磁性層(上)107との交換結合磁界(RKKY相互作用)によって、前記第1の固定磁性層(上)107の磁化方向と反平行に磁化される。同様にフリー磁性層よりも下側に形成されたMs・tP1の小さい第1の固定磁性層(下)93の磁化は、第2の固定磁性層(下)95の磁化とフェリ状態になろうとして、図示Y方向と反対方向に磁化される。熱処理によって反強磁性層108との界面で発生する交換結合磁界(交換異方性磁界)により、フリー磁性層よりも上側に形成された第1の固定磁性層(上)107の磁化は図示Y方向に固定され、第2の固定磁性層(上)105の磁化は図示Y方向と反対方向に固定される。同様に、交換結合磁界(交換異方性磁界)によって、フリー磁性層よりも下側に形成されている第1の固定磁性層(下)93の磁化は、図示Y方向と反対方向に固定され、第2の固定磁性層(下)95の磁化は図示Y方向に固定される。
【0282】
またフリー磁性層よりも上側に形成されている第1の固定磁性層(上)107のMs・tP1を、第2の固定磁性層(上)105のMs・tP2よりも小さくし、且つ、フリー磁性層よりも下側に形成されている第1の固定磁性層(下)93のMs・tP1を、第2の固定磁性層(下)95のMs・tP2よりも大きくした場合には、フリー磁性層よりも下側に形成された第1の固定磁性層(下)93の磁化を向けたい方向に、磁界を100〜1k(Oe)与える。
【0283】
以上のようにして、フリー磁性層の上下に形成された第2の固定磁性層(下)95,(上)105を反対方向に磁化することで、従来のデュアルスピンバルブ型薄膜素子と同程度のΔMRを得ることができる。
【0284】
また本形態では、フェリ状態の第1のフリー磁性層101の磁化と第2のフリー磁性層97の磁化とを、外部磁界に対してより感度良く反転できるようにするために、第1のフリー磁性層101の磁気モーメントと第2のフリー磁性層97の磁気モーメントとを足し合わせた合成磁気モーメントが、前記フリー磁性層よりも下側に形成されている第1の固定磁性層(下)93の磁気モーメントと第2の固定磁性層(下)95の磁気モーメントとを足し合わせた合成磁気モーメント、及びフリー磁性層よりも上側に形成されている第1の固定磁性層(上)107の磁気モーメントと第2の固定磁性層(上)105の磁気モーメントとを足し合わせた合成磁気モーメントよりも大きくなるようにすればよい。すなわち、例えば、図示X方向及び図示Y方向の磁気モーメントを正の値、図示X方向と反対方向及び図示Y方向と反対方向の磁気モーメントを負の値とした場合、合成磁気モーメント│Ms・tF1+Ms・tF2│が、第1の固定磁性層(上)107と第2の固定磁性層(上)105との磁気モーメントで形成される合成磁気モーメント│Ms・tP1+Ms・tP2│及び、第1の固定磁性層(下)93及び第2の固定磁性層(下)95との合成磁気モーメント│Ms・tP1+Ms・tP2│よりも大きくなっていることが好ましい。
【0285】
以上、図7から図12に示すスピンバルブ型薄膜素子では、固定磁性層のみならず、フリー磁性層も、非磁性中間層を介して第1のフリー磁性層と第2のフリー磁性層の2層に分断し、この2層のフリー磁性層の間に発生する交換結合磁界(RKKY相互作用)によって前記2層のフリー磁性層の磁化を反平行状態(フェリ状態)にすることにより、前記第1のフリー磁性層と第2のフリー磁性層の磁化を、外部磁界に対して感度良く反転できるようにしている。
【0286】
また本形態では、第1のフリー磁性層と第2のフリー磁性層との膜厚比や、前記第1のフリー磁性層と第2のフリー磁性層との間に介在する非磁性中間層の膜厚、あるいは第1の固定磁性層と第2の固定磁性層との膜厚比や、前記第1の固定磁性層と第2の固定磁性層との間に介在する非磁性中間層の膜厚、及び反強磁性層の膜厚などを適正な範囲内で形成することによって、交換結合磁界を大きくすることができ、第1の固定磁性層と第2の固定磁性層との磁化状態を固定磁化として、第1のフリー磁性層と第2のフリー磁性層との磁化状態を変動磁化として、熱的にも安定したフェリ状態に保つことが可能であり、しかも従来と同程度のΔMRを得ることが可能となっている。
【0287】
形態では、さらにセンス電流の方向を調節することで、第1の固定磁性層の磁化と第2の固定磁性層の磁化との反平行状態(フェリ状態)を、より熱的にも安定した状態に保つことが可能となっている。
【0288】
スピンバルブ型薄膜素子では、反強磁性層、固定磁性層、非磁性導電層、及びフリー磁性層から成る積層膜の両側に導電層が形成されており、この導電層からセンス電流が流される。前記センス電流は、比抵抗の小さい前記非磁性導電層と、前記非磁性導電層と固定磁性層との界面、及び非磁性導電層とフリー磁性層との界面に主に流れる。本形態では、前記固定磁性層は第1の固定磁性層と第2の固定磁性層とに分断されており、前記センス電流は主に第2の固定磁性層と非磁性導電層との界面に流れている。
【0289】
前記センス電流を流すと、右ネジの法則によって、センス電流磁界が形成される。本形態では前記センス電流磁界を第1の固定磁性層の磁気モーメントと第2の固定磁性層の磁気モーメントを足し合わせて求めることができる合成磁気モーメントの方向と同じ方向になるように、前記センス電流の流す方向を調節している。
【0290】
図1に示すスピンバルブ型薄膜素子では、非磁性導電層15の下側に第2の固定磁性層54が形成されている。この場合にあっては、第1の固定磁性層52及び第2の固定磁性層54のうち、磁気モーメントの大きい方の固定磁性層の磁化方向に、センス電流磁界の方向を合わせる。
【0291】
図1に示すように、前記第2の固定磁性層54の磁気モーメントは第1の固定磁性層52の磁気モーメントに比べて大きく、前記第2の固定磁性層54の磁気モーメントは図示Y方向と反対方向(図示左方向)に向いている。このため前記第1の固定磁性層52の磁気モーメントと第2の固定磁性層54の磁気モーメントとを足し合わせた合成磁気モーメントは、図示Y方向と反対方向(図示左方向)に向いている。
【0292】
前述のように、非磁性導電層15は第2の固定磁性層54及び第1の固定磁性層52の上側に形成されている。このため、主に前記非磁性導電層15を中心にして流れるセンス電流112によって形成されるセンス電流磁界は、前記非磁性導電層15よりも下側において図示左方向に向くように、前記センス電流112の流す方向を制御すればよい。このようにすれば、第1の固定磁性層52と第2の固定磁性層54との合成磁気モーメントの方向と、前記センス電流磁界の方向とが一致する。
【0293】
図1に示すように前記センス電流112は図示X方向に流される。右ネジの法則により、センス電流を流すことによって形成されるセンス電流磁界は、紙面に対して右回りに形成される。従って、非磁性導電層15よりも下側の層には、図示左方向(図示Y方向と反対方向)のセンス電流磁界が印加されることになり、このセンス電流磁界によって、合成磁気モーメントを補強する方向に作用し、第1の固定磁性層52と第2の固定磁性層54間に作用する交換結合磁界(RKKY相互作用)が増幅され、前記第1の固定磁性層52の磁化と第2の固定磁性層54の磁化の反平行状態をより熱的に安定させることが可能になる。
【0294】
特にセンス電流を1mA流すと、約30(Oe)程度のセンス電流磁界が発生し、また素子温度が約15℃程度上昇することが判っている。さらに、記録媒体の回転数は1000rpm程度まで速くなり、この回転数の上昇により、装置内温度は約100℃まで上昇する。このため例えばセンス電流を10mA流した場合、スピンバルブ型薄膜素子の素子温度は、約250℃程度まで上昇し、さらにセンス電流磁界も300(Oe)と大きくなる。
【0295】
このような、非常に高い環境温度下で、しかも大きなセンス電流が流れる場合にあっては、第1の固定磁性層52の磁気モーメントと第2の固定磁性層54とを足し合わせて求めることができる合成磁気モーメントの方向と、センス電流磁界の方向とが逆向きであると、第1の固定磁性層52の磁化と第2の固定磁性層54の磁化との反平行状態が壊れ易くなる。
【0296】
また、高い環境温度下でも耐え得るようにするには、センス電流磁界の方向の調節の他に、高いブロッキング温度を有する反強磁性材料を反強磁性層11として使用する必要があり、そのために本形態ではブロッキング温度が約400℃程度のPtMn合金を使用している。
【0297】
なお図1に示す第1の固定磁性層52の磁気モーメントと第2の固定磁性層54の磁気モーメントとで形成される合成磁気モーメントが図示右方向(図示Y方向)に向いている場合には、センス電流を図示X方向と反対方向に流し、センス電流磁界が紙面に対し左回りに形成されるようにすればよい。
【0298】
次に図3に示すスピンバルブ型薄膜素子のセンス電流方向について説明する。
図3では、非磁性導電層24の上側に第2の固定磁性層25及び第1の固定磁性層27が形成されている。図3に示すように、第1の固定磁性層27の磁気モーメントの方が第2の固定磁性層25の磁気モーメントよりも大きくなっており、また前記第1の固定磁性層27の磁気モーメントの方向は図示Y方向(図示右方向)を向いている。このため前記第1の固定磁性層27の磁気モーメントと第2の固定磁性層25の磁気モーメントとを足し合わせた合成磁気モーメントは図示右方向を向いている。
【0299】
図3に示すように、センス電流113は図示X方向に流される。右ネジの法則により、センス電流113を流すことによって形成されるセンス電流磁界は紙面に対して右回りに形成される。非磁性導電層24よりも上側に第2の固定磁性層25及び第1の固定磁性層27が形成されているので、前記第2の固定磁性層25及び第1の固定磁性層27には、図示右方向(図示Y方向と反対方向)のセンス電流磁界が侵入してくることになり、合成磁気モーメントの方向と一致し、従って、第1の固定磁性層27の磁化と第2の固定磁性層25の磁化との反平行状態は壊れ難くなっている。
【0300】
なお、前記合成磁気モーメントが図示左方向(図示Y方向と反対方向)に向いている場合には、センス電流113を図示X方向と反対方向に流し、前記センス電流113を流すことによって形成されるセンス電流磁界を紙面に対し左回りに発生させ、第1の固定磁性層27と第2の固定磁性層25の合成磁気モーメントの向きと、前記センス電流磁界との向きを一致させる必要がある。
【0301】
図5に示すスピンバルブ型薄膜素子は、フリー磁性層36の上下に第1の固定磁性層(下)32,(上)43と第2の固定磁性層(下)34,(上)41が形成されたデュアルスピンバルブ型薄膜素子である。
【0302】
このデュアルスピンバルブ型薄膜素子では、フリー磁性層36の上下に形成される合成磁気モーメントが互いに反対方向に向くように、前記第1の固定磁性層(下)32,(上)43の磁気モーメントの方向及びその大きさと第2の固定磁性層(下)34,(上)41の磁気モーメントの方向及びその大きさを制御する必要がある。
【0303】
図5に示すようにフリー磁性層36よりも下側に形成されている第2の固定磁性層(下)34の磁気モーメントは、第1の固定磁性層(下)32の磁気モーメントよりも大きく、また前記第2の固定磁性層(下)34の磁気モーメントは図示右方向(図示Y方向)を向いている。従って、前記第1の固定磁性層(下)32の磁気モーメントと第2の固定磁性層(下)34の磁気モーメントを足し合わせて求めることができる合成磁気モーメントは図示右方向(図示Y方向)を向いている。またフリー磁性層36よりも上側に形成されている第1の固定磁性層(上)43の磁気モーメントは第2の固定磁性層(上)41の磁気モーメントよりも大きく、また前記第1の固定磁性層(上)43の磁気モーメントは図示左方向(図示Y方向と反対方向)に向いている。このため前記第1の固定磁性層(上)43の磁気モーメントと第2の固定磁性層(上)41の磁気モーメントを足し合わせて求めることができる合成磁気モーメントは図示左方向(図示Y方向と反対方向)を向いている。このように本形態ではフリー磁性層36の上下に形成される合成磁気モーメントが互いに反対方向に向いている。
【0304】
形態では図5に示すように、センス電流114は図示X方向と反対方向に流される。これにより前記センス電流114を流すことによって形成されるセンス電流磁界は紙面に対し左回りに形成される。
【0305】
前記フリー磁性層36よりも下側で形成された合成磁気モーメントは図示右方向(図示Y方向)に、フリー磁性層36よりも上側で形成された合成磁気モーメントは図示左方向(図示Y方向と反対方向)に向いているので、前記2つの合成磁気モーメントの方向は、センス電流磁界の方向と一致しており、フリー磁性層36の下側に形成された第1の固定磁性層(下)32の磁化と第2の固定磁性層(下)34の磁化の反平行状態、及びフリー磁性層36の上側に形成された第1の固定磁性層(上)43の磁化と第2の固定磁性層(上)41の磁化の反平行状態を、熱的にも安定した状態で保つことが可能である。
【0306】
なお、フリー磁性層36よりも下側に形成された合成磁気モーメントが図示左方向に向いており、フリー磁性層36よりも上側に形成された合成磁気モーメントが図示右側に向いている場合には、センス電流114を図示X方向に流し、前記センス電流を流すことによって形成されるセンス電流磁界の方向と、前記合成磁気モーメントの方向とを一致させる必要がある。
【0307】
また図7及び図9では、フリー磁性層が非磁性中間層を介して第1のフリー磁性層と第2のフリー磁性層の2層に分断されて形成されたスピンバルブ型薄膜素子の形態であるが、図7に示すスピンバルブ型薄膜素子のように、非磁性導電層55よりも下側に第1の固定磁性層52及び第2の固定磁性層54が形成された場合にあっては、図1に示すスピンバルブ型薄膜素子の場合と同様のセンス電流方向の制御を行えばよい。
【0308】
また図9に示すスピンバルブ型薄膜素子のように、非磁性導電層76よりも上側に第1の固定磁性層79と第2の固定磁性層77が形成されている場合にあっては、図3に示すスピンバルブ型薄膜素子の場合と同様のセンス電流方向の制御を行えばよい。
【0309】
以上のように本形態によれば、センス電流を流すことによって形成されるセンス電流磁界の方向と、第1の固定磁性層の磁気モーメントと第2の固定磁性層の磁気モーメントを足し合わせることによって求めることができる合成磁気モーメントの方向とを一致させることにより、前記第1の固定磁性層と第2の固定磁性層間に作用する交換結合磁界(RKKY相互作用)を増幅させ、前記第1の固定磁性層の磁化と第2の固定磁性層の磁化の反平行状態(フェリ状態)を熱的に安定した状態に保つことが可能である。
【0310】
特に本形態では、より熱的安定性を向上させるために、反強磁性層にPtMn合金などのブロッキング温度の高い反強磁性材料を使用しており、これによって、環境温度が、従来に比べて大幅に上昇しても、前記第1の固定磁性層の磁化と第2の固定磁性層の磁化の反平行状態(フェリ状態)を壊れ難くすることができる。
【0311】
また高記録密度化に対応するためセンス電流量を大きくして再生出力を大きくしようとすると、それに従ってセンス電流磁界も大きくなるが、本形態では、前記センス電流磁界が、第1の固定磁性層と第2の固定磁性層の間に働く交換結合磁界を増幅させる作用をもたらしているので、センス電流磁界の増大により、第1の固定磁性層と第2の固定磁性層の磁化状態はより安定したものとなる。
【0312】
なおこのセンス電流方向の制御は、反強磁性層にどのような反強磁性材料を使用した場合であっても適用でき、例えば反強磁性層と固定磁性層(第1の固定磁性層)との界面で交換結合磁界(交換異方性磁界)を発生させるために、熱処理が必要であるか、あるいは必要でないかを問わない。
【0313】
さらに、従来のように、固定磁性層が単層で形成されていたシングルスピンバルブ型薄膜素子の場合であっても、前述したセンス電流を流すことによって形成されるセンス電流磁界の方向と、固定磁性層の磁化方向とを一致させることにより、前記固定磁性層の磁化を熱的に安定化させることが可能である。
【0314】
【実施例】
ず固定磁性層を、非磁性中間層を介して第1の固定磁性層と第2の固定磁性層の2層に分断して形成したスピンバルブ型薄膜素子を使用し、前記第1の固定磁性層と第2の固定磁性層の膜厚比と、交換結合磁界(Hex)及びΔMR(抵抗変化率)との関係について測定した。
【0315】
まず、第1の固定磁性層(反強磁性層に接する側の固定磁性層)を20オングストローム又は40オングストロームに固定し、第2の固定磁性層の膜厚を変化させて、前記第2の固定磁性層の膜厚と、交換結合磁界及びΔMRとの関係について調べた。実験に使用した膜構成は以下の通りである。
【0316】
Si基板/アルミナ/Ta(30)/反強磁性層;PtMn(150)/第1の固定磁性層;Co(20又は40)/非磁性中間層;Ru(7)/第2の固定磁性層;Co(X)/非磁性導電層;Cu(25)/フリー磁性層;Co(10)+NiFe(40)/Ta(30)
である。なお各層における括弧内の数値は膜厚を示しており、単位はオングストロームである。
【0317】
また上記スピンバルブ型薄膜素子を成膜した後、200(Oe)の磁場を印加しながら260℃で4時間の熱処理を施した。その実験結果を図14及び図15に示す。
【0318】
図14に示すように、第1の固定磁性層(P1)の膜厚tP1を20オングストロームで固定した場合、第2の固定磁性層(P2)の膜厚tP2を、20オングストロームにすると、急激に交換結合磁界(Hex)は低下し、且つ、前記膜厚tP2を厚くすることにより、前記交換結合磁界は徐々に低下していくことがわかる。また前記第1の固定磁性層(P1)の膜厚tP1を40オングストロームで固定した場合、第2の固定磁性層(P2)の膜厚tP2を40オングストロームにすると急激に交換結合磁界は低下し、且つ前記膜厚tP2を40オングストロームよりも大きくすると、徐々に交換結合磁界は低下していくことがわかる。また、前記膜厚tP2を40オングストロームよりも小さくしていくと、約26オングストロームまでは交換結合磁界は大きくなるが、前記膜厚tP2を26オングストロームよりも小さくしていくと、交換結合磁界は小さくなっていくことがわかる。
【0319】
ところで第1の固定磁性層(P1)の膜厚tP1と第2の固定磁性層(P2)の膜厚tP2とがほぼ同じ膜厚で形成されると、急激に交換結合磁界が低下するのは、前記第1の固定磁性層(P1)の磁化と第2の固定磁性層(P2)の磁化とが、互いに反平行に磁化されない、いわゆるフェリ状態になりにくいからではないかと推測される。
【0320】
上述した膜構成に示すように、第1の固定磁性層(P1)と第2の固定磁性層(P2)は共にCo膜で形成されているので、同じ飽和磁化(Ms)を有している。さらにほぼ同じ膜厚で形成されることにより、第1の固定磁性層(P1)の磁気モーメント(Ms・tP1)と第2の固定磁性層(P2)の磁気モーメント(Ms・tP2)は、ほぼ同じ値で設定されている。
【0321】
形態では、反強磁性層にPtMn合金を使用しているので、成膜後磁場中アニールを施すことにより、第1の固定磁性層(P1)との界面で交換結合磁界を発生させ、前記第1の固定磁性層(P1)をある一定方向に固定しようとしている。
【0322】
ところが、第1の固定磁性層(P1)と第2の固定磁性層(P2)の磁気モーメントがほぼ同じ値であると、磁場を印加して熱処理を施したときに、前記第1の固定磁性層(P1)と第2の固定磁性層(P2)とが、共に磁場方向に向こうとする。本来なら、第1の固定磁性層(P1)と第2の固定磁性層(P2)との間には交換結合磁界(RKKY相互作用)が発生し、前記第1の固定磁性層(P1)の磁化と第2の固定磁性層(P2)の磁化は、反平行状態(フェリ状態)に磁化されようとするが、第1の固定磁性層(P1)と第2の固定磁性層(P2)の磁化が互いに磁場方向に向こうとするため、反平行状態に磁化されにくく、第1の固定磁性層(P1)と第2の固定磁性層(P2)の磁化状態は、外部磁界などに対し非常に不安定な状態となっている。
【0323】
このため、第1の固定磁性層(P1)の磁気モーメントと第2の固定磁性層(P2)の磁気モーメントとの差をある程度つけることが好ましいが、図14に示すように、第1の固定磁性層(P1)の膜厚tP1と第2の固定磁性層(P2)の膜厚tP2の差が大きくなりすぎ、第1の固定磁性層(P1)と第2の固定磁性層(P2)の磁気モーメントの差がありすぎると、交換結合磁界が低下し、反平行状態が崩れやすいという問題がある。
【0324】
図16,17は、第2の固定磁性層(P2)の膜厚tP2を30オングストロームで固定し、第1の固定磁性層(P1)の膜厚tP1を変化させたときの、前記第1の固定磁性層の膜厚tP1と交換結合磁界(Hex)及びΔMRとの関係を表すグラフである。この実験で使用したスピンバルブ型薄膜素子の膜構成は以下の通りである。
【0325】
Si基板/アルミナ/Ta(30)/PtMn(150)/第1の固定磁性層;Co(X)/非磁性中間層;Ru(7)/第2の固定磁性層;Co(30)/非磁性導電層;Cu(25)/フリー磁性層;Co(10)+NiFe(40)/Ta(30)である。なお各層における括弧内の数値は膜厚を示しており、単位はオングストロームである。
【0326】
また上記スピンバルブ型薄膜素子を成膜した後、200(Oe)の磁場を印加しながら260℃で4時間の熱処理を施した。
【0327】
図16に示すように、第1の固定磁性層(P1)の膜厚tP1を30オングストロームにした場合、すなわち第2の固定磁性層(P2)の膜厚tP2と同じ膜厚で形成した場合、交換結合磁界(Hex)は急激に低下することがわかる。これは上述した理由による。
【0328】
また、第1の固定磁性層(P1)の膜厚tP1が約32オングストロームのときも交換結合磁界は小さくなっていることがわかる。これは熱拡散層の発生により、第1の固定磁性層の磁気的な膜厚が実際の膜厚tP1よりも小さくなり、第2の固定磁性層の膜厚tP2(=30オングストローム)に近づくからである。
【0329】
前記熱拡散層は、反強磁性層と第1の固定磁性層との界面において、金属元素が拡散することによって形成されるが、前記熱拡散層は、この実験で使用した膜構成に示すように、フリー磁性層よりも下側に反強磁性層及び固定磁性層を形成した場合に発生しやすくなる。
【0330】
図18は、デュアルスピンバルブ型薄膜素子を製作し、前記デュアルスピンバルブ型薄膜素子の2個の第2の固定磁性層を共に20オングストロームに固定し、2個の第1の固定磁性層のそれぞれの膜厚を変化させた場合における、前記第1の固定磁性層の膜厚と、交換結合磁界(Hex)との関係を示すグラフである。この実験で使用したスピンバルブ型薄膜素子の膜構成は以下の通りである。
【0331】
Si基板/アルミナ/Ta(30)/反強磁性層;PtMn(150)/第1の固定磁性層(P1 下);Co(X)/非磁性中間層;Ru(6)/第2の固定磁性層(P2 下);Co(20)/非磁性導電層;Cu(20)/フリー磁性層;Co(10)+NiFe(40)+Co(10)/非磁性導電層;Cu(20)/第2の固定磁性層(P2 上);Co(20)/非磁性中間層;Ru(8)/第1の固定磁性層(P1 上);Co(X)/反強磁性層;PtMn(150)/保護層;Ta(30)である。なお各層における括弧内の数値は膜厚を示しており、単位はオングストロームである。
【0332】
また上記スピンバルブ型薄膜素子を成膜した後、200(Oe)の磁場を印加しながら260℃で4時間の熱処理を施した。
【0333】
なお、実験では、フリー磁性層よりも下側に形成された第1の固定磁性層(P1 下)を25オングストロームで固定して、フリー磁性層よりも上側に形成された第1の固定磁性層(P1 上)の膜厚を変化させ、前記第1の固定磁性層(P1 上)の膜厚と、交換結合磁界(Hex)との関係について調べた。
【0334】
また、フリー磁性層よりも上側に形成された第1の固定磁性層(P1 上)を25オングストロームで固定して、フリー磁性層よりも下側に形成された第1の固定磁性層(P1 下)の膜厚を変化させ、前記第1の固定磁性層(P1 下)の膜厚と交換結合磁界との関係について調べた。
【0335】
図18に示すように、第1の固定磁性層(P1 下)を25オングストロームで固定し、第1の固定磁性層(P1 上)の膜厚を20オングストロームに近づけていくと、徐々に交換結合磁界は大きくなっていくが、前記第1の固定磁性層(P1 上)の膜厚が約18〜22オングストロームになると、第2の固定磁性層(P1 上)の膜厚とほぼ同じ膜厚になることから、上述した理由により、急激に交換結合磁界は低下してしまう。また前記第1の固定磁性層(P1 上)の膜厚を22オングストロームから30オングストロームまで徐々に大きくしていくと、徐々に交換結合磁界は低下していくことがわかる。
【0336】
また図18に示すように、第1の固定磁性層(P1 上)を25オングストローム7で固定し、第1の固定磁性層(P1 下)の膜厚を20オングストロームに近づけると、徐々に交換結合磁界は大きくなっていくが、前記第1の固定磁性層(P1 下)の膜厚が約18〜22オングストロームになると、急激に交換結合磁界は低下している。また前記第1の固定磁性層(P1 下)の膜厚を22オングストロームよりも大きくすると、前記膜厚が約26オングストロームまで交換結合磁界は大きくなるが、前記膜厚を26オングストローム以上にすると、交換結合磁界は低下することがわかる。
【0337】
ここで、第1の固定磁性層(P1)の膜厚を約22オングストローム程度にした場合の、第1の固定磁性層(P1 上)における交換結合磁界と、第1の固定磁性層(P1 下)における交換結合磁界とを比較すると、第1の固定磁性層(P1 上)の膜厚を約22オングストローム程度にした場合の方が、第1の固定磁性層(P1 下)を約22オングストローム程度にした場合に比べ交換結合磁界を大きくできることがわかる。これは前述したように、第1の固定磁性層(P1 下)と、反強磁性層との界面には、熱拡散層が形成されやすいので、前記第1の固定磁性層の磁気的な膜厚は、実質的に小さくなり、第2の固定磁性層(P2 下)の膜厚とほぼ同程度になってしまうからである。
【0338】
以上、図14、図16、及び図18に示す実験結果により500(Oe)以上の交換結合磁界を得ることができる(第1の固定磁性層(P1)の膜厚)/(第2の固定磁性層(P2)の膜厚)を調べた。
【0339】
まず図14に示すように、第1の固定磁性層(P1)を20オングストロームに固定した場合、500(Oe)以上の交換結合磁界を得るには、(第1の固定磁性層(P1)の膜厚)/(第2の固定磁性層(P2)の膜厚)を、0.33以上0.91以下、あるいは1.1以上にしなければいけないことがわかる。なおこのときの第2の固定磁性層(P2)の膜厚は、10〜60オングストローム(18〜22オングストロームを除く)の範囲内である。
【0340】
次に図14に示すように、第1の固定磁性層(P1)を40オングストロームに固定した場合、500(Oe)以上の交換結合磁界を得るには、(第1の固定磁性層(P1)の膜厚)/(第2の固定磁性層(P2)の膜厚)を、0.57以上0.95以下、1.05以上4以下にしなければいけないことがわかる。なおこのときの第2の固定磁性層(P2)の膜厚は、10〜60オングストローム(38〜42オングストロームを除く)の範囲内である。
【0341】
次に、図16に示すように、第2の固定磁性層(P2)を30オングストロームに固定した場合、500(Oe)以上の交換結合磁界を得るには、(第1の固定磁性層(P1)の膜厚)/(第2の固定磁性層(P2)の膜厚)を、0.33以上0.93以下、あるいは1.06以上2.33以下にしなければいけないことがわかる。なおこのときの第1の固定磁性層(P1)の膜厚は、10〜70オングストローム(28〜32オングストロームを除く)の範囲内である。
【0342】
さらに図18に示すように、デュアルスピンバルブ型薄膜素子の場合にあっては、(第1の固定磁性層(P1)の膜厚)/(第2の固定磁性層(P2)の膜厚)の範囲のうち、0.9以上1.1以下の範囲を外せば、500(Oe)以上の交換結合磁界を得ることができることがわかる。
【0343】
ここで500(Oe)以上の交換結合を得ることができる最も広い膜厚比の範囲を取ると、(第1の固定磁性層(P1)の膜厚)/(第2の固定磁性層(P2)の膜厚)は、0.33〜0.95、あるいは1.05〜4の範囲内となる。
【0344】
ただし、交換結合磁界は膜厚比のみならず、第1の固定磁性層(P1)と第2の固定磁性層(P2)の膜厚も重要な要素の一つであるので、さらに、上述した膜厚比の範囲内で、しかも第1の固定磁性層(P1)の膜厚及び第2の固定磁性層(P2)の膜厚を、10〜70オングストロームの範囲内とし、且つ第1の固定磁性層(P1)の膜厚から第2の固定磁性層(P2)の膜厚を引いた絶対値を2オングストローム以上にすれば、500(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能になる。
【0345】
次に1000(Oe)以上の交換結合磁界を得ることができる(第1の固定磁性層(P1)の膜厚)/(第2の固定磁性層(P2)の膜厚)を調べた。
【0346】
まず図14に示すように、第1の固定磁性層(P1)を20オングストロームにした場合、(第1の固定磁性層(P1)の膜厚)/(第2の固定磁性層(P2)の膜厚)を0.53〜0.91、あるいは1.1以上にすれば1000(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能である。なおこのときの第2の固定磁性層(P2)の膜厚は、10〜38オングストローム(18〜22オングストロームを除く)の範囲内である。
【0347】
また図14に示すように、第1の固定磁性層(P1)を40オングストロームにした場合、(第1の固定磁性層(P1)の膜厚)/(第2の固定磁性層(P2)の膜厚)を0.88〜0.95、あるいは1.05〜1.8の範囲内にすれば、1000(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能である。なおこのときの第2の固定磁性層(P2)の膜厚は、22〜45オングストローム(38〜42オングストロームを除く)の範囲内である。
【0348】
さらに図16に示すように、第2の固定磁性層(P2)を30オングストロームに固定した場合、(第1の固定磁性層(P1)の膜厚)/(第2の固定磁性層(P2)の膜厚)を0.56〜0.93、あるいは1.06〜1.6の範囲内であれば1000(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能である。なおこのときの第1の固定磁性層(P1)の膜厚は、10〜50オングストローム(28〜32オングストロームを除く)の範囲内である。
【0349】
また図18に示すように、デュアルスピンバルブ型薄膜素子の場合にあっては、(第1の固定磁性層(P1)の膜厚)/(第2の固定磁性層(P2)の膜厚)を0.5〜0.9、あるいは1.1〜1.5程度の範囲内にすれば、1000(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能となっている。
【0350】
従って、1000(Oe)以上の交換結合磁界を得るには、第1の固定磁性層(P1)の膜厚)/(第2の固定磁性層(P2)の膜厚)を、0.53〜0.95、あるいは1.05〜1.8の範囲内にし、さらに、第1の固定磁性層(P1)と第2の固定磁性層(P2)の膜厚を10〜50オングストロームの範囲内で、しかも第1の固定磁性層(P1)の膜厚から第2の固定磁性層(P2)の膜厚を引いた絶対値が2オングストローム以上であることが好ましい。
【0351】
なお図15及び図17に示すように、上述した膜厚比及び膜厚の範囲内であれば、ΔMRもそれほど低下せず、約6%以上のΔMRを得ることが可能である。このΔMRの値は従来のスピンバルブ型薄膜素子(シングルスピンバルブ型薄膜素子に限る)のΔMRと同程度か若干低い値である。
【0352】
また図15に示すように、第1の固定磁性層(P1)を40オングストロームにした場合、第2の固定磁性層(P1)を20オングストロームにした場合に比べて、ややΔMRは小さくなることがわかる。
【0353】
前記第1の固定磁性層(P1)は、実際にはΔMRに関与しない層であり、前記ΔMRは、第2の固定磁性層(P2)の固定磁化と、フリー磁性層の変動磁化との関係で決定される。ところがセンス電流は、ΔMRに関与しない第1の固定磁性層(P1)にも流れるため、いわゆるシャントロス(分流ロス)が発生し、このシャントロスは、第1の固定磁性層(P1)の膜厚が厚くなるほど大きくなる。以上のような理由から、第1の固定磁性層(P1)の膜厚が厚くなるほど、ΔMRは低下しやすい傾向にある。
【0354】
次に、第1の固定磁性層(P1)と第2の固定磁性層(P2)の間に形成される非磁性中間層の適正な膜厚について測定した。なお、実験には、フリー磁性層よりも下側に反強磁性層が形成されたボトム型と、フリー磁性層よりも上側に反強磁性層が形成されたトップ型の2種類のスピンバルブ型薄膜素子を製作し、前記非磁性中間層の膜厚と交換結合磁界との関係について調べた。実験に使用したボトム型のスピンバルブ型薄膜素子の膜構成は、下から、
Si基板/アルミナ/Ta(30)/反強磁性層;PtMn(200)/第1の固定磁性層;Co(20)/非磁性中間層;Ru(X)/第2の固定磁性層;Co(25)/非磁性導電層;Co(10)/フリー磁性層;Co(10)+NiFe(40)/Ta(30)であり、トップ型のスピンバルブ型薄膜素子の膜構成は、下から、
Si基板/アルミナ/Ta(30)/フリー磁性層;NiFe(40)+Co(10)/非磁性導電層;Cu(25)/第2の固定磁性層;Co(25)/非磁性中間層;Ru(X)/第1の固定磁性層;Co(20)/反強磁性層;PtMn(200)/Ta(30)である。なお括弧内の数値は膜厚を表しており、単位はオングストロームである。
【0355】
また各スピンバルブ型薄膜素子を成膜後、200(Oe)の磁場を印加しながら、260℃で4時間の熱処理を施している。その実験結果を図19に示す。
【0356】
図19に示すように、トップ型とボトム型とでは、Ru膜(非磁性中間層)の膜厚に対する交換結合磁界の挙動が大きく異なっていることがわかる。
【0357】
00(Oe)以上の交換結合磁界を得ることができる範囲を好ましいとしているので、トップ型のスピンバルブ型薄膜素子において、500(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能なRu膜の膜厚は、2.5〜6.4オングストローム、あるいは6.6〜10.7オングストロームの範囲内であることがわかる。さらに好ましくは1000(Oe)以上の交換結合磁界が得られる範囲内であり、前記Ru膜の膜厚を、2.8〜6.2オングストローム、あるいは6.8〜10.3オングストロームの範囲内にすれば、1000(Oe)以上の交換結合磁界が得られることがわかる。
【0358】
次にボトム型のスピンバルブ型薄膜素子において、500(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能なRu膜の膜厚は、3.6〜9.6オングストロームの範囲内であることがわかる。さらに、4.0〜9.4オングストロームの範囲内とすれば、1000(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能になる。
【0359】
ところで、トップ型のスピンバルブ型薄膜素子と、ボトム型のスピンバルブ型薄膜素子とで、非磁性中間層の適性な膜厚の範囲が異なるのは、第1の固定磁性層と第2の固定磁性層との間に作用する交換結合磁界(RKKY相互作用)が、下地膜の格子定数との関係や、あるいは、磁性層の伝導電子のエネルギーバンドの値の変化に非常に敏感に反応するためであると推測される。
【0360】
次に4種類のスピンバルブ型薄膜素子(シングルスピンバルブ型薄膜素子)を製作し、各スピンバルブ型薄膜素子の反強磁性層(PtMn合金)の膜厚と、交換結合磁界との関係について測定した。
【0361】
参考例1,2は、固定磁性層が非磁性中間層を介して第1の固定磁性層と第2の固定磁性層の2層に分断されたスピンバルブ型薄膜素子、比較例1,2は、固定磁性層が単層で形成された従来型のスピンバルブ型薄膜素子である。
【0362】
まず参考例1のスピンバルブ型薄膜素子は、フリー磁性層よりも反強磁性層が上側に形成されたトップ型であり、膜構成は下から、
Si基板/アルミナ/Ta(30)/フリー磁性層;NiFe(40)+Co(10)/非磁性導電層;Cu(25)/第2の固定磁性層;Co(25)/非磁性中間層;Ru(4)/第1の固定磁性層;Co(20)/反強磁性層;PtMn(X)/Ta(30)であり、また実施例2のスピンバルブ型薄膜素子は、フリー磁性層よりも下側に反強磁性層が形成されたボトム型であり、膜構成は下から、
Si基板/アルミナ/Ta(30)/反強磁性層;PtMn(X)/第1の固定磁性層;Co(20)/非磁性中間層;Ru(8)/第2の固定磁性層;Co(25)/非磁性導電層;Cu(25)/フリー磁性層;Co(10)+NiFe(40)/Ta(30)である。
【0363】
また比較例1のスピンバルブ型薄膜素子は、フリー磁性層よりも反強磁性層が上側に形成されたトップ型であり、膜構成は下から、
Si基板/アルミナ/Ta(30)/フリー磁性層;NiFe(40)+Co(10)/非磁性導電層;Cu(25)/固定磁性層;Co(40)/反強磁性層;PtMn(X)/Ta(30)であり、また比較例2のスピンバルブ型薄膜素子は、フリー磁性層よりも反強磁性層が下側に形成されたボトム型であり、膜構成は下から、
Si基板/アルミナ/Ta(30)/反強磁性層;PtMn(X)/固定磁性層;Co(40)/非磁性導電層;Cu(25)/フリー磁性層;Co(10)+NiFe(40)/Ta(30)である。
【0364】
なお各スピンバルブ型薄膜素子の膜構成において括弧内の数値は膜厚を示しており、単位はオングストロームである。
【0365】
さらにピンバルブ型薄膜素子の成膜後、参考例1,2にあっては、200(Oe)の磁場、比較例1,2にあっては、2k(Oe)の磁場を印加しながら、260℃で4時間の熱処理を施している。その実験結果を図20に示す。
【0366】
図20に示すように、4種類のスピンバルブ型薄膜素子は全て、PtMn合金の膜厚を厚くすることにより、交換結合磁界を大きくできることがわかる。
【0367】
ここで500(Oe)以上の交換結合磁界を得られる範囲を好ましい範囲としているから、比較例1,2では、共にPtMn合金の膜厚を少なくとも200オングストローム以上で形成しなければ、500(Oe)以上の交換結合磁界を得ることができないことがわかる。
【0368】
一方、参考例1,2においては、PtMn合金の膜厚を90オングストローム以上にすれば500(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能であることがわかる。そこでPtMn合金の好ましい膜厚の範囲を90〜200オングストロームの範囲内に設定している。
【0369】
さらに図20に示すように、参考例1,2のPtMn合金の膜厚を100オングストローム以上にすれば、少なくとも1000(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能であるとわかる。そこでよりも好ましいPtMn合金の膜厚を100〜200オングストロームの範囲内に設定している。
【0370】
次に2種類のデュアルスピンバルブ型薄膜素子を製作し、各スピンバルブ型薄膜素子における反強磁性層(PtMn合金)の膜厚と、交換結合磁界との関係について測定した。
【0371】
実施例は、固定磁性層が非磁性中間層を介して第1の固定磁性層と第2の固定磁性層の2層に分断して形成されたュアルスピンバルブ型薄膜素子、比較例は、固定磁性層が単層で形成された従来のデュアルスピンバルブ型薄膜素子である。
【0372】
まず実施例のスピンバルブ型薄膜素子における膜構成は、下から、
Si基板/アルミナ/Ta(30)/反強磁性層;PtMn(x)/第1の固定磁性層;Co(20)/非磁性中間層;Ru(6)/第2の固定磁性層;Co(25)/非磁性導電層;Cu(20)/フリー磁性層;Co(10)+NiFe(40)+Co(10)/非磁性導電層;Cu(20)/第2の固定磁性層;Co(20)/非磁性中間層;Ru(8)/第1の固定磁性層;Co(25)/反強磁性層;PtMn(X)/Ta(30)であり、比較例のスピンバルブ型薄膜素子における膜構成は、下から、
Si基板/アルミナ/Ta(30)/反強磁性層;PtMn(X)/固定磁性層;Co(30)/非磁性導電層;Cu(20)/フリー磁性層;Co(10)+NiFe(40)+Co(10)/非磁性導電層;Cu(20)/固定磁性層;Co(30)/反強磁性層;PtMn(X)/Ta(30)である。
【0373】
なお各スピンバルブ型薄膜素子の膜構成における括弧内の数値は膜厚を示しており、単位はオングストロームである。
【0374】
また各スピンバルブ型薄膜素子を成膜後、実施例では、200(Oe)の磁場を、比較例では2k(Oe)の磁場を印加しながら260℃で4時間の熱処理を施している。その実験結果を図21に示す。
【0375】
図21に示すように、比較例ではPtMn合金の膜厚を約200オングストローム以上で形成しないと、500(Oe)以上の交換結合磁界を得ることができないとわかる。
【0376】
これに対し、実施例では、PtMn合金の膜厚を、100オングストローム以上で形成すれば500(Oe)以上の交換結合磁界を得ることができるとわかる。そこで好ましい反強磁性層の膜厚を100〜200オングストロームの範囲内に設定している。さらに実施例では、PtMn合金の膜厚を110オングストローム以上で形成すれば、1000(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能であるためより好ましい反強磁性層の膜厚を110〜200オングストロームの範囲内に設定している。
【0377】
また図22は、PtMn合金の膜厚と、ΔMRとの関係を示すグラフである。
図22に示すように、比較例では、PtMn合金の膜厚を200オングストローム以上で形成すると、約10%以上のΔMRを得ることが可能となっているが、実施例においては、PtMn合金の膜厚を100オングストローム程度に薄くしても、従来とほぼ同じ程度のΔMRを確保できることがわかる。
【0378】
ところで、スピンバルブ型薄膜素子における積層膜のうち、最も膜厚の厚いのは反強磁性層である。このため図20及び図21に示すように、前記反強磁性層の膜厚を薄くしても、具体的には従来のスピンバルブ型薄膜素子の反強磁性層の膜厚の半分以下で形成しても、大きい交換結合磁界を得ることが可能となっている。このためスピンバルブ型薄膜素子全体の膜厚を薄くすることができ、図13に示すように、前記スピンバルブ型薄膜素子122の上下に形成されるギャップ層121,125の膜厚を絶縁性を確保できる程度に充分に厚くしても、ギャップ長Glを小さくでき、狭ギャップ化を実現できる。
【0379】
次に、フリー磁性層を非磁性中間層を介して第1のフリー磁性層と第2のフリー磁性層の2層に分断して形成したピンバルブ型薄膜素子を製作し、前記第1のフリー磁性層と第2のフリー磁性層との膜厚比と、交換結合磁界との関係について測定した。まず、第1のフリー磁性層(非磁性導電層に接し、ΔMRに直接関与する側のフリー磁性層)の膜厚を50オングストロームで固定し、第2のフリー磁性層(ΔMRに直接関与しない側のフリー磁性層)の膜厚を変化させた。膜構成は下から、
Si基板/アルミナ/Ta(30)/第2のフリー磁性層(F2);NiFe(X)/非磁性中間層;Ru(8)/第1のフリー磁性層(F1);NiFe(40)+Co(10)/非磁性導電層;Cu(20)/Ru(8)/反強磁性層;PtMn(150)/Ta(30)であり、各層における括弧内の数値は膜厚を示しており、単位はオングストロームである。
【0380】
なおスピンバルブ型薄膜素子を成膜後、200(Oe)の磁場を印加しながら、260℃で4時間の熱処理を施している。
【0381】
図23に示すように、第2のフリー磁性層(F2)の膜厚が40オングストローム程度まで大きくなると、交換結合磁界は大きくなることがわかる。また、前記第2のフリー磁性層(F2)の膜厚が60オングストローム以上になると、徐々の交換結合磁界は低下していくことがわかる。
【0382】
前記第2のフリー磁性層(F2)の膜厚が40〜60オングストロームの範囲内であると、交換結合磁界は急激に小さくなり測定不可能であった。その原因は、第1のフリー磁性層(F1)の膜厚(=50オングストローム)と、第2のフリー磁性層の膜厚とがほぼ同じ値になるため、前記第1のフリー磁性層(F1)及び第2のフリー磁性層(F2)の磁気モーメントがほぼ同じになり、印加磁場に対し、前記第1のフリー磁性層(F1)の磁化及び第2のフリー磁性層(F2)の磁化が両方とも印加磁場方向へ向こうとする。磁気モーメントの値が異なれば、第1のフリー磁性層(F1)と第2のフリー磁性層(F2)との間には交換結合磁界(RKKY相互作用)が発生し、前記第1のフリー磁性層(F1)の磁化と第2のフリー磁性層(F2)の磁化とが反平行の状態になろうとするが、前述のように、前記第1のフリー磁性層(F1)の磁化及び第2のフリー磁性層(F2)の磁化が両方とも同一方向に向こうとするため、前記第1のフリー磁性層(F1)と第2のフリー磁性層(F2)との磁化状態は不安定化し、後述するように、前記第2のフリー磁性層(F2)の変動磁化と、固定磁性層(第1の固定磁性層)の固定磁化との相対角度が制御できなくなり、ΔMRは急激に低下する。
【0383】
00(Oe)以上の交換結合磁界を得ることができる範囲を好ましい範囲に設定しているので、図23に示すように、(第1のフリー磁性層(F1)の膜厚)/(第2のフリー磁性層(F2)の膜厚)を、0.56〜0.83、あるいは1.25〜5の範囲内で形成すれば、500(Oe)以上の交換結合磁界を得ることができるとわかる。
【0384】
さらに前記(第1のフリー磁性層(F1)の膜厚/第2のフリー磁性層(F2)の膜厚)を、0.61〜0.83、あるいは1.25〜2.1の範囲内で形成すれば1000(Oe)以上の交換結合磁界を得ることができてより好ましい。
【0385】
次にフリー磁性層を非磁性中間層を介して第1のフリー磁性層と第2のフリー磁性層の2層に分断して形成したピンバルブ型薄膜素子を製作し、前記第1のフリー磁性層と第2のフリー磁性層との膜厚比と、ΔMRとの関係について測定した。まず、第2のフリー磁性層(ΔMRに直接関与しない側のフリー磁性層)を20オングストロームで固定し、第1のフリー磁性層(非磁性導電層に接し、ΔMRに直接関与する側のフリー磁性層)の膜厚を変化させた。膜構成は、下から、
Si基板/アルミナ/Ta(30)/第2のフリー磁性層;NiFe(20)/非磁性中間層;Ru(8)/第1のフリー磁性層;NiFe(X)+Co(10)/非磁性導電層;Cu(20)/第1の固定磁性層;Co(25)/非磁性中間層;Ru(8)/第2の固定磁性層;Co(20)/反強磁性層;PtMn(15)/Ta(30)であり、各層における括弧内の数値は膜厚を示しており、単位はオングストロームである。
【0386】
なおスピンバルブ型薄膜素子を成膜後、200(Oe)の磁場を印加して260℃で4時間の熱処理を施している。また上記膜構成を見てわかるように、1のフリー磁性層は2層で形成されており、NiFe膜の膜厚を変化させている。その実験結果を図24に示すが、図24に示す横軸は、NiFe合金の膜厚と、Co膜の膜厚(=10オングストローム)を足した第1のフリー磁性層総合の膜厚である。
【0387】
図24に示すように、第1のフリー磁性層(F1)の膜厚が、20オングストロームに近づくと、第2のフリー磁性層(F2)の膜厚とほぼ同程度になるため、ΔMRは急激に低下することがわかる。また、図24に示すように、第1のフリー磁性層(F1)の膜厚が約30オングストローム以上になると、ΔMRは上昇し、従来のスピンバルブ型薄膜素子(シングルスピンバルブ型薄膜素子)と同程度のΔMRを得ることが可能である。
【0388】
ところで、図23から導き出した500(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能な(第1のフリー磁性層(F1)の膜厚)/(第2のフリー磁性層(F2)の膜厚)の範囲を、図24上に表してみると、第1のフリー磁性層(F1)の膜厚)/(第2のフリー磁性層(F2)の膜厚)を1.25〜5の範囲内にすれば、高いΔMRを得ることが可能となっている。
【0389】
次に第1のフリー磁性層と第2のフリー磁性層との間に介在する非磁性中間層の膜厚を変化させて、前記非磁性中間層の膜厚と交換結合磁界との関係について測定した。実験に使用したスピンバルブ型薄膜素子(デュアルスピンバルブ型薄膜素子)の膜構成は下から、
Si基板/アルミナ/Ta(30)/反強磁性層;PtMn(150)/Ru(6)/非磁性導電層;Cu(20)/第1のフリー磁性層;Co(10)+NiFe(50)/非磁性中間層;Ru(X)/第1のフリー磁性層;NiFe(30)+Co(10)/非磁性導電層;Cu(20)/Ru(8)/反強磁性層;PtMn(150)/Ta(30)であり、各層における括弧内の数値は膜厚を表しており、単位はオングストロームである。
【0390】
なおピンバルブ型薄膜素子を成膜後、200(Oe)の磁場を印加しながら、260℃で4時間の熱処理を施している。その実験結果を図20に示す。
【0391】
図20に示すように、500(Oe)以上の交換結合磁界を得るには、Ru膜の膜厚を5.5〜10.0オングストロームの範囲内で形成すればよいことがわかる。また1000(Oe)以上の交換結合磁界を得るには、Ru膜の膜厚を5.9〜9.4オングストロームの範囲内で形成すればよいことがわかる。
【0392】
【発明の効果】
以上詳述した本発明によれば、固定磁性層を非磁性中間層を介して第1の固定磁性層と第2の固定磁性層の2層に分断して形成し、前記第1の固定磁性層と第2の固定磁性層との間に発生する交換結合磁界(RKKY相互作用)によって、前記第1の固定磁性層の磁化と第2の固定磁性層の磁化を反平行状態にすれば、前記固定磁性層の磁化状態を非常に安定した状態に保つことが可能である。
【0393】
特に本発明では、センス電流を流すことによって形成されるセンス電流磁界の方向と、第1の固定磁性層の磁気モーメントと第2の固定磁性層の磁気モーメントとを足し合わせて求めることができる合成磁気モーメントの方向とを一致させることにより、前記第1の固定磁性層と第2の固定磁性層との磁化状態をさらに熱的に安定されることが可能である。
【0394】
なおこのセンス電流方向の制御は、反強磁性層にどのような反強磁性材料を使用した場合であっても適用でき、例えば反強磁性層と固定磁性層(第1の固定磁性層)との界面で交換結合磁界(交換異方性磁界)を発生させるために、熱処理が必要であるか、あるいは必要でないかを問わない。
【0395】
さらに、従来のように、固定磁性層が単層で形成されていたシングルスピンバルブ型薄膜素子の場合であっても、前述したセンス電流を流すことによって形成されるセンス電流磁界の方向と、固定磁性層の磁化方向とを一致させることにより、前記固定磁性層の磁化を熱的に安定化させることが可能である。
【0396】
また本発明では、前記第1の固定磁性層と第2の固定磁性層との膜厚比、及び膜厚を適性な範囲内で調節することにより、500(Oe)以上の交換結合磁界、さらに好ましくは1000(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能である。
【0397】
また本発明では、前記第1の固定磁性層と第2の固定磁性層との間に介在する非磁性中間層を、Ru,Rh,Ir,Cr,Re,Cuなどで形成し、さらに、フリー磁性層よりも上側に前記非磁性中間層が形成される場合と、下側に非磁性中間層が形成される場合とで、前記非磁性中間層の膜厚を適性な範囲内で調節することにより、500(Oe)以上の交換結合磁界を得ることができ、より好ましくは1000(Oe)以上の交換結合磁界を得ることができる。
【0398】
さらに本発明では、反強磁性層として、ブロッキング温度が高く、また固定磁性層(第1の固定磁性層)との界面で発生する交換結合磁界(交換異方性磁界)が大きく、しかも耐食性に優れた反強磁性材料として、PtMn合金を使用している。あるいはX―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ruのいずれか1種または2種以上の元素である)、Pt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Agのいずれか1種または2種以上の元素である)で形成してもよい。
【0399】
本発明のように、固定磁性層を第1の固定磁性層と第2の固定磁性層の2層に分断した場合では、前記反強磁性層の膜厚を、従来の反強磁性層の半分程度の膜厚で形成しても、500(Oe)以上の交換結合磁界を得ることができ、より好ましくは1000(Oe)以上の交換結合磁界を得ることができる。
【0400】
さらに本発明では、フリー磁性層が固定磁性層と同様に、非磁性中間層を介して第1のフリー磁性層と第2のフリー磁性層に分断されて形成されていることが好ましい。第1のフリー磁性層と第2のフリー磁性層との間には交換結合磁界(RKKY相互作用)が発生し、前記第1のフリー磁性層の磁化と第2のフリー磁性層の磁化とが反平行状態に磁化され、外部磁界に対して感度よく反転できるようになる。
【0401】
また本発明では、前記第1のフリー磁性層と第2のフリー磁性層との膜厚比を適正な範囲内で形成し、さらに前記第1のフリー磁性層と第2のフリー磁性層との間に介在する非磁性中間層をRu膜などで形成し、前記非磁性中間層の膜厚を適性な範囲内で形成すれば、500(Oe)以上の交換結合磁界を得ることが可能であり、より好ましくは1000(Oe)以上の交換結合磁界を得ることができる。
【0402】
さらに本発明によれば、第1の固定磁性層との界面において熱処理を必要とする反強磁性層を使用した場合に、第1の固定磁性層の磁気モーメントと第2の固定磁性層の磁気モーメントの大小を適正に調節し、さらに前記熱処理中に印加する磁場の方向及びその大きさを適正に調節することによって、第1の固定磁性層の磁化を向けたい方向に向けることができ、しかも前記第1の固定磁性層の磁化と第2の固定磁性層の磁化とを反平行状態に適正に制御することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】参考例のスピンバルブ型薄膜素子の横断面図、
【図2】図1に示すスピンバルブ型薄膜素子を記録媒体との対向面側から見た断面図、
【図3】参考例のスピンバルブ型薄膜素子の横断面図、
【図4】図3に示すスピンバルブ型薄膜素子を記録媒体との対向面側から見た断面図、
【図5】本実施形態のスピンバルブ型薄膜素子の横断面図、
【図6】図5に示すスピンバルブ型薄膜素子を記録媒体との対向面側から見た断面図、
【図7】参考例のスピンバルブ型薄膜素子の横断面図、
【図8】図7に示すスピンバルブ型薄膜素子を記録媒体との対向面側から見た断面図、
【図9】参考例のスピンバルブ型薄膜素子の横断面図、
【図10】図9に示すスピンバルブ型薄膜素子を記録媒体との対向面側から見た断面図、
【図11】参考例のスピンバルブ型薄膜素子の横断面図、
【図12】図11に示すスピンバルブ型薄膜素子を記録媒体との対向面側から見た断面図、
【図13】読み出しヘッド(再生ヘッド)を記録媒体との対向面からみた断面図、
【図14】第1の固定磁性層(P1)の膜厚を20、あるいは40オングストロームで固定した場合の、第2の固定磁性層(P2)の膜厚と、交換結合磁界との関係、及び(第1の固定磁性層(P1)の膜厚)/(第2の固定磁性層(P2)の膜厚)と、交換結合磁界(Hex)との関係を示すグラフ、
【図15】第1の固定磁性層(P1)の膜厚を20、あるいは40オングストロームで固定した場合の、第2の固定磁性層(P2)の膜厚と、ΔMR(%)との関係を示すグラフ、
【図16】第2の固定磁性層(P2)を30オングストロームで固定した場合の、第1の固定磁性層(P1)の膜厚と、交換結合磁界との関係、及び(第1の固定磁性層(P1)の膜厚)/(第2の固定磁性層(P2)の膜厚)と交換結合磁界(Hex)との関係を示すグラフ、
【図17】第2の固定磁性層(P2)を30オングストロームで固定した場合の、第1の固定磁性層(P1)の膜厚と、ΔMR(%)との関係を示すグラフ、
【図18】デュアルスピンバルブ型薄膜素子において、第1の固定磁性層(上)の膜厚及び第1の固定磁性層(下)の膜厚と交換結合磁界(Hex)との関係、さらに(第1の固定磁性層(P1 上)の膜厚)/(第2の固定磁性層(P2 上)の膜厚)及び(第1の固定磁性層(P1 下)の膜厚)/(第2の固定磁性層(P2 下)の膜厚)と交換結合磁界(Hex)との関係を示すグラフ、
【図19】第1の固定磁性層と第2の固定磁性層の間に介在するRu(非磁性中間層)の膜厚と交換結合磁界(Hex)との関係を示すグラフ、
【図20】4種類のスピンバルブ型薄膜素子を使用し、各スピンバルブ型薄膜素子のPtMn(反強磁性層)の膜厚と、交換結合磁界(Hex)との関係を示すグラフ、
【図21】2種類のデュアルスピンバルブ型薄膜素子を使用し、各デュアルスピンバルブ型薄膜素子のPtMn(反強磁性層)の膜厚と、交換結合磁界(Hex)との関係を示すグラフ、
【図22】2種類のデュアルスピンバルブ型薄膜素子を使用し、各デュアルスピンバルブ型薄膜素子のPtMn(反強磁性層)の膜厚と、ΔMR(%)との関係を示すグラフ、
【図23】第1のフリー磁性層(F1)の膜厚を50オングストロームで固定した場合、第2のフリー磁性層(F2)の膜厚と交換結合磁界(Hex)との関係、及び(第1のフリー磁性層(F1)の膜厚)/(第2のフリー磁性層(F2)の膜厚)と交換結合磁界(Hex)との関係を示すグラフ、
【図24】第2のフリー磁性層(F2)の膜厚を20オングストロームで固定した場合、第1のフリー磁性層(F1)の膜厚とΔMR(%)との関係、及び(第1のフリー磁性層(F1)の膜厚)/(第2のフリー磁性層(F2)の膜厚)とΔMR(%)との関係を示すグラフ、
【図25】第1のフリー磁性層(F1)と第2のフリー磁性層(F2)の間に介在するRu(非磁性中間層)の膜厚と、交換結合磁界(Hex)との関係を示すグラフ、
【図26】本発明におけるスピンバルブ型薄膜素子、及び従来におけるスピンバルブ型薄膜素子におけるヒステリシスループ、
【図27】反強磁性層をPtMnで形成した場合、NiOで形成した場合、及びFeMnで形成した場合の各スピンバルブ型薄膜素子における環境温度(℃)と交換結合磁界(Hex)との関係を示すグラフ、
【図28】従来におけるスピンバルブ型薄膜素子の横断面図、
【図29】図28に示すスピンバルブ型薄膜素子を記録媒体との対向面側から見た断面図、
【符号の説明】
10、30、50、70、91 下地層
11、28、31、44、51、80、92、108 反強磁性層
12、27、52、79 第1の固定磁性層
13、26、33、42、53、59、72、78、94、100、106 非磁性中間層
14、25、54、77 第2の固定磁性層
15、24、35、40、55、76、96、104 非磁性導電層
16、21、36 フリー磁性層
19、29、45、61、81、109 保護層
32、93 第1の固定磁性層(下)
34、95 第2の固定磁性層(下)
41、105 第2の固定磁性層(上)
43、107 第1の固定磁性層(上)
56、73、101 第1のフリー磁性層
60、71、97 第2のフリー磁性層
62、82、130 ハードバイアス層
63、83、131 導電層
112、113、114 センス電流

Claims (4)

  1. フリー磁性層の上に形成された上側非磁性導電層と、前記フリー磁性層の下に形成された下側非磁性導電層と、前記上側非磁性材料層の上に形成された上側固定磁性層と、前記下側非磁性導電層の下に形成された下側固定磁性層と、前記上側固定磁性層の上に形成された上側反強磁性層と、前記下側固定磁性層の下に形成された下側反強磁性層と、を有し、
    前記上側固定磁性層及び前記下側固定磁性層の固定磁化と交叉する方向にセンス電流が流されることにより、前記上側固定磁性層及び下側固定磁性層の固定磁化方向と前記フリー磁性層の変動磁化との関係によって変化する電気抵抗が検出されるスピンバルブ型薄膜素子において、
    前記上側固定磁性層及び前記下側固定磁性層は、前記反強磁性層に接する第1の磁性層と、前記第1の磁性層と非磁性中間層を介して重ねられる第2の磁性層の積層構造で形成されており、
    前記上側固定磁性層と前記下側固定磁性層の一方で、前記第1の磁性層の磁気モーメント(飽和磁化Ms・膜厚t)は、前記第2の磁性層の磁気モーメントよりも大きく形成され、他方で、前記第1の磁性層の磁気モーメントは、前記第2の磁性層の磁気モーメントよりも小さく形成され、
    各前記第1の磁性層は、共に同一方向に固定され、各前記第2の磁性層は前記第1の磁性層に反平行に磁化されて、前記各第2の磁性層は、共に同一方向に固定され、
    前記上側固定磁性層の前記第1の磁性層の磁気モーメントと前記第2の磁性層の磁気モーメントとの合成磁気モーメント、および、前記下側固定磁性層の前記第1の磁性層の磁気モーメントと前記第2の磁性層の磁気モーメントとの合成磁気モーメントが、互いに逆方向を向いており
    前記第1の磁性層/前記非磁性中間層/前記第2の磁性層の部分に形成されるセンス電流磁界の方向が、前記フリー磁性層の上下に形成された双方の前記合成磁気モーメントの方向と同一方向となる方向に前記センス電流が流されるものであり、
    前記反強磁性層は、PtMn合金、あるいは、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ruのいずれか1種または2種以上の元素である)で形成されることを特徴とするスピンバルブ型薄膜素子。
  2. 前記反強磁性層は、Pt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Agのいずれか1種または2種以上の元素である)で形成される請求項記載のスピンバルブ型薄膜素子。
  3. 前記第1の磁性層と前記第2の磁性層の間に形成される前記非磁性中間層は、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種あるいは2種以上の合金で形成される請求項1又は2に記載のスピンバルブ型薄膜素子。
  4. 請求項1ないし請求項のいずれかに記載されたスピンバルブ型薄膜素子の上下に、ギャップ層を介してシールド層が形成されていることを特徴とする薄膜磁気ヘッド。
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