JP3038401B2 - 金属材料の耐食処理方法 - Google Patents
金属材料の耐食処理方法Info
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- JP3038401B2 JP3038401B2 JP5217837A JP21783793A JP3038401B2 JP 3038401 B2 JP3038401 B2 JP 3038401B2 JP 5217837 A JP5217837 A JP 5217837A JP 21783793 A JP21783793 A JP 21783793A JP 3038401 B2 JP3038401 B2 JP 3038401B2
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は金属材料の耐食処理方法
に関わり、更に詳しくは、溶融炭酸塩型燃料電池用セパ
レータの耐食処理方法に関する。
に関わり、更に詳しくは、溶融炭酸塩型燃料電池用セパ
レータの耐食処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】溶融炭酸塩型燃料電池は、高効率、かつ
環境への影響が少ないなど、従来の発電装置にはない特
徴を有しており、水力・火力・原子力に続く発電システ
ムとして注目を集め、現在世界各国で鋭意研究開発が行
われている。この燃料電池の主要構成部品は、図9に例
示するように、2枚の電極(アノード1、カソード2)
とこれらに挟まれた電解質板3、及びセパレータ4であ
り、セパレータ4は、ガス流路の確保、積層電池間
のリード線、及び燃料ガスと酸化ガスを隔てる隔壁の
3つの役目を担っている。このセパレータ4は、燃料電
池の大出力化のために、薄い金属板をプレス加工等で成
形し積層・接合して製造される。
環境への影響が少ないなど、従来の発電装置にはない特
徴を有しており、水力・火力・原子力に続く発電システ
ムとして注目を集め、現在世界各国で鋭意研究開発が行
われている。この燃料電池の主要構成部品は、図9に例
示するように、2枚の電極(アノード1、カソード2)
とこれらに挟まれた電解質板3、及びセパレータ4であ
り、セパレータ4は、ガス流路の確保、積層電池間
のリード線、及び燃料ガスと酸化ガスを隔てる隔壁の
3つの役目を担っている。このセパレータ4は、燃料電
池の大出力化のために、薄い金属板をプレス加工等で成
形し積層・接合して製造される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上述した溶融炭酸塩型
燃料電池は、その実用化のために、例えば4万時間以上
の寿命が従来から要望されていた。しかし、電解質板3
は腐食性の高い炭酸塩(例えばLi2CO3 とK2 CO3
の混合物)を電解液として含んでおり、この炭酸塩が燃
料電池の運転温度(約650℃)でセパレータ4に直接
接触するため、セパレータの表面が激しく腐食し、燃料
電池の性能を短期間に低下させてしまう問題点があっ
た。
燃料電池は、その実用化のために、例えば4万時間以上
の寿命が従来から要望されていた。しかし、電解質板3
は腐食性の高い炭酸塩(例えばLi2CO3 とK2 CO3
の混合物)を電解液として含んでおり、この炭酸塩が燃
料電池の運転温度(約650℃)でセパレータ4に直接
接触するため、セパレータの表面が激しく腐食し、燃料
電池の性能を短期間に低下させてしまう問題点があっ
た。
【0004】すなわち、セパレータの素材として、高温
で耐食性の高い金属材料(例えばSUS310S、等)
を使用しても、腐食性の高い炭酸塩により、短時間(例
えば数千時間)で腐食生成物がセパレータの表面に成長
し、セパレータ間を短絡させたり、セパレータ・電解板
間の電解液の濡れによるシール(ウェットシール)を破
壊し、燃料ガス又は酸化ガスが外部に漏れだすことがあ
る問題点があった。また、炭酸塩に本質的に耐えられる
素材、例えばセラミック等は、薄くて面積の大きい素材
の製作やその成形、接合が困難であり、セパレータの素
材としては使用できなかった。
で耐食性の高い金属材料(例えばSUS310S、等)
を使用しても、腐食性の高い炭酸塩により、短時間(例
えば数千時間)で腐食生成物がセパレータの表面に成長
し、セパレータ間を短絡させたり、セパレータ・電解板
間の電解液の濡れによるシール(ウェットシール)を破
壊し、燃料ガス又は酸化ガスが外部に漏れだすことがあ
る問題点があった。また、炭酸塩に本質的に耐えられる
素材、例えばセラミック等は、薄くて面積の大きい素材
の製作やその成形、接合が困難であり、セパレータの素
材としては使用できなかった。
【0005】従って、従来は、薄い金属材料を成形・接
合して構成したセパレータの表面に、図10に示す
(A)フレーム溶射又は(B)プラズマ溶射により炭酸
塩に強いアルミニウムを溶射してその被膜を形成してい
た。フレーム溶射(A)は、燃料ガスF(アセチレン
等)を酸素Oで燃焼させて高温の火炎fを作り、この火
炎中に被膜金属材5を供給して溶かし、溶けた金属粒子
を燃焼ガスGと共に圧縮空気a等でノズル6から噴射し
てセパレータ4の表面に金属被膜を形成する方法であ
る。また、プラズマ溶射(B)は、ノズル6内にアーク
cを発生させて不活性ガスIを高温のプラズマにし、こ
のプラズマをノズルから噴射し、このプラズマ内に被膜
金属材5を供給して溶かし、セパレータ4の表面に金属
被膜を形成する方法である。
合して構成したセパレータの表面に、図10に示す
(A)フレーム溶射又は(B)プラズマ溶射により炭酸
塩に強いアルミニウムを溶射してその被膜を形成してい
た。フレーム溶射(A)は、燃料ガスF(アセチレン
等)を酸素Oで燃焼させて高温の火炎fを作り、この火
炎中に被膜金属材5を供給して溶かし、溶けた金属粒子
を燃焼ガスGと共に圧縮空気a等でノズル6から噴射し
てセパレータ4の表面に金属被膜を形成する方法であ
る。また、プラズマ溶射(B)は、ノズル6内にアーク
cを発生させて不活性ガスIを高温のプラズマにし、こ
のプラズマをノズルから噴射し、このプラズマ内に被膜
金属材5を供給して溶かし、セパレータ4の表面に金属
被膜を形成する方法である。
【0006】しかし、かかる従来の耐食処理方法すなわ
ち溶射方法では、アルミニウム粉末をノズル内部に供給
すると、部分的に溶けたアルミニウム粉末がノズルに付
着してノズルを短時間に詰まらせる問題点があった。ま
た、そのためワイヤ状のアルミニウムを供給したり、ア
ルミニウム粉末をノズルの噴出口に供給すると、アルミ
ニウム粉末の溶融が不十分となり、被膜の密着力が低
く、被膜が剥がれやすい、被膜の気孔率が大きく、電
解液が被膜を貫通して素材を腐食させやすい、耐食性
能が低い、等の問題点があった。
ち溶射方法では、アルミニウム粉末をノズル内部に供給
すると、部分的に溶けたアルミニウム粉末がノズルに付
着してノズルを短時間に詰まらせる問題点があった。ま
た、そのためワイヤ状のアルミニウムを供給したり、ア
ルミニウム粉末をノズルの噴出口に供給すると、アルミ
ニウム粉末の溶融が不十分となり、被膜の密着力が低
く、被膜が剥がれやすい、被膜の気孔率が大きく、電
解液が被膜を貫通して素材を腐食させやすい、耐食性
能が低い、等の問題点があった。
【0007】本発明はかかる問題点を解決するために創
案されたものである。すなわち、本発明の目的は、微細
なアルミニウム粉末を完全に溶融させて溶射することが
でき、これにより密着力が強く、気孔率が小さく、耐食
性能が高いアルミニウム被膜を形成することができる金
属材料の耐食処理方法を提供することにある。
案されたものである。すなわち、本発明の目的は、微細
なアルミニウム粉末を完全に溶融させて溶射することが
でき、これにより密着力が強く、気孔率が小さく、耐食
性能が高いアルミニウム被膜を形成することができる金
属材料の耐食処理方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、燃料ガ
ス(F)を酸素(O)で燃焼させて高温燃焼ガス(G)
を生成し、該高温燃焼ガス(G)をノズル(12)によ
り加速して高速のジェット噴流(J)を形成し、前記ノ
ズル(12)内のジェット噴流(J)の噴出口付近に、
平均粒径が10μmから15μm程度の微細なアルミニ
ウム粉末(A)を供給し、該アルミニウム粉末(A)を
前記ジェット噴流(J)と共に前記ノズル(12)より
噴射させて、25℃から300℃の範囲で予熱した被処
理材(15)の表面に溶射する、ことを特徴とする金属
材料の耐食処理方法が提供される。
ス(F)を酸素(O)で燃焼させて高温燃焼ガス(G)
を生成し、該高温燃焼ガス(G)をノズル(12)によ
り加速して高速のジェット噴流(J)を形成し、前記ノ
ズル(12)内のジェット噴流(J)の噴出口付近に、
平均粒径が10μmから15μm程度の微細なアルミニ
ウム粉末(A)を供給し、該アルミニウム粉末(A)を
前記ジェット噴流(J)と共に前記ノズル(12)より
噴射させて、25℃から300℃の範囲で予熱した被処
理材(15)の表面に溶射する、ことを特徴とする金属
材料の耐食処理方法が提供される。
【0009】本発明の好ましい実施例によれば、前記ア
ルミニウム粉末(A)を被処理材(15)に溶射した
後、該被処理材(15)を約700℃で拡散処理するこ
と、また、前記被処理材(15)の面粗さが、Ra2μ
mからRa10μmの範囲にある、ことが好ましい。
ルミニウム粉末(A)を被処理材(15)に溶射した
後、該被処理材(15)を約700℃で拡散処理するこ
と、また、前記被処理材(15)の面粗さが、Ra2μ
mからRa10μmの範囲にある、ことが好ましい。
【0010】
【作用】上記本発明の方法によれば、燃焼が完結して均
一な温度になった高温燃焼ガス(G)をノズル(12)
により加速し、加速されたジェット噴流(J)の噴出口
付近に、平均粒径が10μmから15μm程度の微細な
アルミニウム粉末(A)を供給するので、供給されたア
ルミニウム粉末(A)はジェット噴流(J)に同伴され
て直ちに完全に溶融するので、部分的に溶けたアルミニ
ウム粉末(A)がノズル(12)に付着してノズル(1
2)を詰まらせることがない。また、微細なアルミニウ
ム粉末(A)は高温燃焼ガス(G)により完全に溶融
し、これが25℃から300℃の範囲で予熱処理した被
処理材(15)の表面に溶射するので、被膜の密着力を
高め、被膜の気孔率を小さくし、耐食性能を高めること
ができる。
一な温度になった高温燃焼ガス(G)をノズル(12)
により加速し、加速されたジェット噴流(J)の噴出口
付近に、平均粒径が10μmから15μm程度の微細な
アルミニウム粉末(A)を供給するので、供給されたア
ルミニウム粉末(A)はジェット噴流(J)に同伴され
て直ちに完全に溶融するので、部分的に溶けたアルミニ
ウム粉末(A)がノズル(12)に付着してノズル(1
2)を詰まらせることがない。また、微細なアルミニウ
ム粉末(A)は高温燃焼ガス(G)により完全に溶融
し、これが25℃から300℃の範囲で予熱処理した被
処理材(15)の表面に溶射するので、被膜の密着力を
高め、被膜の気孔率を小さくし、耐食性能を高めること
ができる。
【0011】更に、被処理材(15)の面粗さをRa2
μmからRa10μmの範囲とし、溶射後に該被処理材
(15)を約700℃で拡散処理すれば、より一層、ア
ルミニウム粉末(A)を完全溶融することができ、被膜
の密着力を高め、被膜の気孔率を小さくし、耐食性能を
高めることができる。
μmからRa10μmの範囲とし、溶射後に該被処理材
(15)を約700℃で拡散処理すれば、より一層、ア
ルミニウム粉末(A)を完全溶融することができ、被膜
の密着力を高め、被膜の気孔率を小さくし、耐食性能を
高めることができる。
【0012】
【実施例】以下、本発明の好ましい実施例を図面を参照
して説明する。図1は、本発明の金属材料の耐食処理方
法を実施するための溶射装置の概略図である。この図に
おいて、溶射装置10は、燃料ガスFを酸素Oで燃焼さ
せて高温燃焼ガスGを生成する燃焼管11と、高温燃焼
ガスGを加速して高速のジェット噴流Jを形成するノズ
ル12と、ノズル12内のジェット噴流Jの噴出口付近
に微細なアルミニウム粉末Aを供給する粉末供給管14
とを備えている。燃焼管11とノズル12は、この図に
おいて一体に成形され、かつ冷却水用のジャケットを有
し、燃料ガスFによる過熱を防止できるようになってい
る。なお燃焼管11とノズル12を別々に構成し、これ
を適当な手段で連結してもよい。ノズル12は、高温燃
焼ガスGを円滑に絞り、高速のジェット噴流Jを形成で
きるように部分的に絞られた形状となっている。粉末供
給管14は、高温に耐える耐熱材で形成し、ジェット噴
流Jの軸線に沿って延び、その先端が図示のようにノズ
ル12内の噴出口付近で開口しているのが好ましい。
して説明する。図1は、本発明の金属材料の耐食処理方
法を実施するための溶射装置の概略図である。この図に
おいて、溶射装置10は、燃料ガスFを酸素Oで燃焼さ
せて高温燃焼ガスGを生成する燃焼管11と、高温燃焼
ガスGを加速して高速のジェット噴流Jを形成するノズ
ル12と、ノズル12内のジェット噴流Jの噴出口付近
に微細なアルミニウム粉末Aを供給する粉末供給管14
とを備えている。燃焼管11とノズル12は、この図に
おいて一体に成形され、かつ冷却水用のジャケットを有
し、燃料ガスFによる過熱を防止できるようになってい
る。なお燃焼管11とノズル12を別々に構成し、これ
を適当な手段で連結してもよい。ノズル12は、高温燃
焼ガスGを円滑に絞り、高速のジェット噴流Jを形成で
きるように部分的に絞られた形状となっている。粉末供
給管14は、高温に耐える耐熱材で形成し、ジェット噴
流Jの軸線に沿って延び、その先端が図示のようにノズ
ル12内の噴出口付近で開口しているのが好ましい。
【0013】本発明の方法によれば、上記溶射装置を使
用して、燃焼管11内で燃料ガスFを酸素Oで燃焼させ
て高温燃焼ガスGを生成し、この高温燃焼ガスGをノズ
ル12により加速して高速のジェット噴流Jを形成し、
粉末供給管14からノズル12内のジェット噴流Jの噴
出口付近に微細なアルミニウム粉末Aを供給し、アルミ
ニウム粉末Aをジェット噴流Jと共にノズル12より噴
出させて、被処理材の表面に溶射する。かかる方法によ
り、供給されたアルミニウム粉末は高速のジェット噴流
に同伴されて直ちに完全に溶融するので、部分的に溶け
たアルミニウム粉末がノズルに付着してノズルを詰まら
せることがない。また、微細なアルミニウム粉末は高温
燃焼ガスにより完全に溶融するので、被膜の密着力を高
め、被膜の気孔率を小さくし、耐食性能を高めることが
できる。
用して、燃焼管11内で燃料ガスFを酸素Oで燃焼させ
て高温燃焼ガスGを生成し、この高温燃焼ガスGをノズ
ル12により加速して高速のジェット噴流Jを形成し、
粉末供給管14からノズル12内のジェット噴流Jの噴
出口付近に微細なアルミニウム粉末Aを供給し、アルミ
ニウム粉末Aをジェット噴流Jと共にノズル12より噴
出させて、被処理材の表面に溶射する。かかる方法によ
り、供給されたアルミニウム粉末は高速のジェット噴流
に同伴されて直ちに完全に溶融するので、部分的に溶け
たアルミニウム粉末がノズルに付着してノズルを詰まら
せることがない。また、微細なアルミニウム粉末は高温
燃焼ガスにより完全に溶融するので、被膜の密着力を高
め、被膜の気孔率を小さくし、耐食性能を高めることが
できる。
【0014】また、アルミニウム粉末の粒径を揃え、そ
の平均粒径を10〜15μmとするのがよい。これによ
り、被膜の密着力を高め、被膜の気孔率を小さくし、耐
食性能を高めることができる。なお、アルミニウム粉末
は細かいほど良いが、平均粒径を10μm未満とする
と、アルミニウムの活性により発火等のおそれがあり取
扱いが困難となるので、少なくとも10μm以上とする
のがよい。
の平均粒径を10〜15μmとするのがよい。これによ
り、被膜の密着力を高め、被膜の気孔率を小さくし、耐
食性能を高めることができる。なお、アルミニウム粉末
は細かいほど良いが、平均粒径を10μm未満とする
と、アルミニウムの活性により発火等のおそれがあり取
扱いが困難となるので、少なくとも10μm以上とする
のがよい。
【0015】図2は、本発明の方法により、ステンレス
板(SUS310S)の試験片に60μmの溶射被膜を
形成した被膜断面図(A)と、更にこれを約700℃で
熱処理した被膜断面図(B)である。なお、この図は、
400倍の顕微鏡写真を模写したものである。図2
(A)において、15が被処理材(SUS310S)、
16が溶射したアルミニウム被膜である。また図2
(B)から、被処理材15の表面に溶射したアルミニウ
ムが拡散処理により熱拡散し、被処理材の界面にアルミ
ニウム拡散層17が形成され、その外側(図で上側)に
アルミニウムと鉄の緻密な合金層18が形成されている
ことがわかる。このアルミニウム拡散層17は、成分分
析の結果、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、鉄(F
e)、アルミニウム(Al)を含む耐食性の高い層であ
り、合金層18は合金Fe3 Alからなる耐食性が高い
緻密な層であった。従って、溶射後に約700℃で拡散
処理することが好ましく、これにより、耐食性が高いア
ルミニウム拡散層と耐食性が高く緻密な合金層を形成す
ることができ、この2層により、炭酸塩の母材(被処理
材)との接触を遮断し、被膜の密着力を高め、被膜の気
孔率を小さくし、耐食性能を高めることができる。
板(SUS310S)の試験片に60μmの溶射被膜を
形成した被膜断面図(A)と、更にこれを約700℃で
熱処理した被膜断面図(B)である。なお、この図は、
400倍の顕微鏡写真を模写したものである。図2
(A)において、15が被処理材(SUS310S)、
16が溶射したアルミニウム被膜である。また図2
(B)から、被処理材15の表面に溶射したアルミニウ
ムが拡散処理により熱拡散し、被処理材の界面にアルミ
ニウム拡散層17が形成され、その外側(図で上側)に
アルミニウムと鉄の緻密な合金層18が形成されている
ことがわかる。このアルミニウム拡散層17は、成分分
析の結果、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、鉄(F
e)、アルミニウム(Al)を含む耐食性の高い層であ
り、合金層18は合金Fe3 Alからなる耐食性が高い
緻密な層であった。従って、溶射後に約700℃で拡散
処理することが好ましく、これにより、耐食性が高いア
ルミニウム拡散層と耐食性が高く緻密な合金層を形成す
ることができ、この2層により、炭酸塩の母材(被処理
材)との接触を遮断し、被膜の密着力を高め、被膜の気
孔率を小さくし、耐食性能を高めることができる。
【0016】図3は、溶射被膜の密着力の試験結果を示
す図である。この図において、(A)はフレーム溶射被
膜、(B)はプラズマ溶射被膜、(C)は本発明による
溶射被膜を示している。またそれぞれ試験結果を2つづ
つ示しているが、これは溶射条件のわずかな違いによる
ものである。なお、密着力試験は、JIS H 866
4に準拠し、被膜厚は300μmとし、接着材はセメダ
イン#1500又はアラルダイトAT1を使用し、試験
片にはSUS304の丸棒(直径25.4mm−長さ4
0mm)を使用した。この図から本発明の方法による溶
射被膜は、従来の方法による溶射被膜よりも少なくとも
2倍以上の密着力があることがわかる。
す図である。この図において、(A)はフレーム溶射被
膜、(B)はプラズマ溶射被膜、(C)は本発明による
溶射被膜を示している。またそれぞれ試験結果を2つづ
つ示しているが、これは溶射条件のわずかな違いによる
ものである。なお、密着力試験は、JIS H 866
4に準拠し、被膜厚は300μmとし、接着材はセメダ
イン#1500又はアラルダイトAT1を使用し、試験
片にはSUS304の丸棒(直径25.4mm−長さ4
0mm)を使用した。この図から本発明の方法による溶
射被膜は、従来の方法による溶射被膜よりも少なくとも
2倍以上の密着力があることがわかる。
【0017】図4は、溶接被膜の貫通孔の測定結果を示
す図であり、図3と同様に、(A)はフレーム溶射被
膜、(B)はプラズマ溶射被膜、(C)は本発明による
溶射被膜を示している。またそれぞれ試験結果を2つづ
つ示しているが、これは溶射条件のわずかな違いによる
ものである。この試験は、フェロキシル試験(JISH
8663)に基づき、試験片には炭素鋼板(SS40
0、100×100×9mm)を使用した。
す図であり、図3と同様に、(A)はフレーム溶射被
膜、(B)はプラズマ溶射被膜、(C)は本発明による
溶射被膜を示している。またそれぞれ試験結果を2つづ
つ示しているが、これは溶射条件のわずかな違いによる
ものである。この試験は、フェロキシル試験(JISH
8663)に基づき、試験片には炭素鋼板(SS40
0、100×100×9mm)を使用した。
【0018】図5は、図4の貫通孔試験後の被膜表面を
実体顕微鏡(11倍)で撮影し、その写真を模写したも
のであり、フェロキシルが青く滲み出た貫通孔部分を黒
く示している。この図において、(A)はプラズマ溶射
被膜、(B)は本発明による溶射被膜を示している。ま
た、フレーム溶射被膜も、(A)と同等程度であった。
実体顕微鏡(11倍)で撮影し、その写真を模写したも
のであり、フェロキシルが青く滲み出た貫通孔部分を黒
く示している。この図において、(A)はプラズマ溶射
被膜、(B)は本発明による溶射被膜を示している。ま
た、フレーム溶射被膜も、(A)と同等程度であった。
【0019】図4、図5から明らかなように、本発明の
方法による被膜は、貫通孔が非常に少なく、少なくとも
従来の方法による溶射被膜の1/2以下であった。
方法による被膜は、貫通孔が非常に少なく、少なくとも
従来の方法による溶射被膜の1/2以下であった。
【0020】図6は、被処理材の表面粗さと密着力の関
係を示す図であり、(A)はフレーム溶射被膜、(B)
は本発明による溶射被膜を示している。この図から、本
発明において、被処理材の面粗さは、Ra2μmからR
a10μmの範囲にあることが好ましいことがわかる。
すなわち、この範囲の面粗さを用いることにより、フレ
ーム溶射(A)よりも少なくとも2倍以上の被膜密着力
を得ることができる。
係を示す図であり、(A)はフレーム溶射被膜、(B)
は本発明による溶射被膜を示している。この図から、本
発明において、被処理材の面粗さは、Ra2μmからR
a10μmの範囲にあることが好ましいことがわかる。
すなわち、この範囲の面粗さを用いることにより、フレ
ーム溶射(A)よりも少なくとも2倍以上の被膜密着力
を得ることができる。
【0021】図7は、被処理材の予熱温度と密着力の関
係を示す図であり、(A)はフレーム溶射被膜、(B)
は本発明による溶射被膜を示している。この図から、本
発明の方法を実施する際の被処理材の予熱温度は、25
℃から300℃の範囲にあることが好ましくことがわか
る。この範囲の予熱温度を用いることにより、フレーム
溶射(A)よりも十分大きい被膜の密着力を得ることが
できる。
係を示す図であり、(A)はフレーム溶射被膜、(B)
は本発明による溶射被膜を示している。この図から、本
発明の方法を実施する際の被処理材の予熱温度は、25
℃から300℃の範囲にあることが好ましくことがわか
る。この範囲の予熱温度を用いることにより、フレーム
溶射(A)よりも十分大きい被膜の密着力を得ることが
できる。
【0022】図8は、従来の耐食処理を用いた燃料電池
(A)と本発明の耐食処理を用いた燃料電池(B)との
寿命比較をしたものである。この図において燃料電池の
運転時間(h)を横軸、起電力(mV)を縦軸に示して
いる。なお、この燃料電池は、セル(単電池)を約50
段積層した積層電池(スタック)であり、縦軸は単セル
当たりの起電力を示している。この図から、従来の耐食
処理方法を用いた燃料電池(A)に比較し、本発明によ
る耐食処理方法を用いた燃料電池(B)は、劣化速度が
小さいことがわかる。
(A)と本発明の耐食処理を用いた燃料電池(B)との
寿命比較をしたものである。この図において燃料電池の
運転時間(h)を横軸、起電力(mV)を縦軸に示して
いる。なお、この燃料電池は、セル(単電池)を約50
段積層した積層電池(スタック)であり、縦軸は単セル
当たりの起電力を示している。この図から、従来の耐食
処理方法を用いた燃料電池(A)に比較し、本発明によ
る耐食処理方法を用いた燃料電池(B)は、劣化速度が
小さいことがわかる。
【0023】
【発明の効果】上述したように、本発明の方法によれ
ば、燃焼が完結して均一な温度になった高温燃焼ガスを
ノズルにより加速し、加速されたジェット噴流の噴出口
付近に微細なアルミニウム粉末を供給するので、供給さ
れたアルミニウム粉末は高速のジェット噴流に同伴され
て直ちに完全に溶融するので、部分的に溶けたアルミニ
ウム粉末がノズルに付着してノズルを詰まらせることが
ない。また、微細なアルミニウム粉末は高温燃焼ガスに
より完全に溶融するので、被膜の密着力を高め、被膜の
気孔率を小さくし、耐食性能を高めることができる。
ば、燃焼が完結して均一な温度になった高温燃焼ガスを
ノズルにより加速し、加速されたジェット噴流の噴出口
付近に微細なアルミニウム粉末を供給するので、供給さ
れたアルミニウム粉末は高速のジェット噴流に同伴され
て直ちに完全に溶融するので、部分的に溶けたアルミニ
ウム粉末がノズルに付着してノズルを詰まらせることが
ない。また、微細なアルミニウム粉末は高温燃焼ガスに
より完全に溶融するので、被膜の密着力を高め、被膜の
気孔率を小さくし、耐食性能を高めることができる。
【0024】また、アルミニウム粉末の平均粒径を10
〜15μmとし、被処理材の予熱温度を25℃から30
0℃の範囲とし、被処理材の面粗さをRa2μmからR
a10μmの範囲とし、溶射後に被処理材を約700℃
で拡散処理すれば、より一層、アルミニウム粉末を完全
溶融することができ、被膜の密着力を高め、被膜の気孔
率を小さくし、耐食性能を高めることができる。
〜15μmとし、被処理材の予熱温度を25℃から30
0℃の範囲とし、被処理材の面粗さをRa2μmからR
a10μmの範囲とし、溶射後に被処理材を約700℃
で拡散処理すれば、より一層、アルミニウム粉末を完全
溶融することができ、被膜の密着力を高め、被膜の気孔
率を小さくし、耐食性能を高めることができる。
【0025】従って、本発明の金属材料の耐食処理方法
は、微細なアルミニウム粉末を完全に溶融させて溶射す
ることができ、これにより密着力が強く、気孔率が小さ
く、耐食性能が高いアルミニウム被膜を形成することが
できる、優れた効果を有する。
は、微細なアルミニウム粉末を完全に溶融させて溶射す
ることができ、これにより密着力が強く、気孔率が小さ
く、耐食性能が高いアルミニウム被膜を形成することが
できる、優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の金属材料の耐食処理方法を実施するた
めの溶射装置の概略図である。
めの溶射装置の概略図である。
【図2】本発明による溶射被膜の断面図(A)と、更に
熱処理後の断面図(B)である。
熱処理後の断面図(B)である。
【図3】溶射被膜の密着力の試験結果を示す図である。
【図4】溶接被膜の貫通孔測定結果を示す図である。
【図5】図4の貫通孔試験後の被膜表面の顕微鏡写真を
模写した図である。
模写した図である。
【図6】被処理材の表面粗さと密着力の関係を示す図で
ある。
ある。
【図7】被処理材の予熱温度と密着力の関係を示す図で
ある。
ある。
【図8】従来の耐食処理方法による燃料電池(A)と本
発明の耐食処理方法による燃料電池(B)との寿命を比
較をした図である。
発明の耐食処理方法による燃料電池(B)との寿命を比
較をした図である。
【図9】燃料電池の主要構成部品を示す図である。
【図10】従来の溶射方法を示す図である。
1 アノード 2 カソード 3 電解質板 4 セパレータ 5 被被膜金属材 6 ノズル 10 溶射装置 11 燃焼管 12 ノズル 14 粉末供給管 15 被処理材 16 アルミニウム被膜 17 アルミニウム拡散層 18 合金層 A アルミニウム粉末 F 燃料ガス G 燃焼ガス J ジェット噴流 O 酸素
Claims (3)
- 【請求項1】 燃料ガス(F)を酸素(O)で燃焼させ
て高温燃焼ガス(G)を生成し、該高温燃焼ガス(G)
をノズル(12)により加速して高速のジェット噴流
(J)を形成し、 前記ノズル(12)内のジェット噴流(J)の噴出口付
近に、平均粒径が10μmから15μm程度の微細なア
ルミニウム粉末(A)を供給し、該 アルミニウム粉末(A)を前記ジェット噴流(J)と
共に前記ノズル(12)より噴射させて、25℃から3
00℃の範囲で予熱した被処理材(15)の表面に溶射
する、ことを特徴とする金属材料の耐食処理方法。 - 【請求項2】 前記アルミニウム粉末(A)を被処理材
(15)に溶射した後、該被処理材(15)を約700
℃で拡散処理する、ことを特徴とする請求項1の金属材
料の耐食処理方法。 - 【請求項3】 前記被処理材(15)の面粗さが、Ra
2μmからRa10μmの範囲にある、ことを特徴とす
る請求項1の金属材料の耐食処理方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP5217837A JP3038401B2 (ja) | 1993-09-02 | 1993-09-02 | 金属材料の耐食処理方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP5217837A JP3038401B2 (ja) | 1993-09-02 | 1993-09-02 | 金属材料の耐食処理方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0770728A JPH0770728A (ja) | 1995-03-14 |
JP3038401B2 true JP3038401B2 (ja) | 2000-05-08 |
Family
ID=16710536
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP5217837A Expired - Fee Related JP3038401B2 (ja) | 1993-09-02 | 1993-09-02 | 金属材料の耐食処理方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3038401B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP4602998B2 (ja) * | 2007-01-18 | 2010-12-22 | トーカロ株式会社 | 溶射皮膜形成方法 |
-
1993
- 1993-09-02 JP JP5217837A patent/JP3038401B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH0770728A (ja) | 1995-03-14 |
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