JP3035772B2 - ヒートパイプとこの加工方法 - Google Patents

ヒートパイプとこの加工方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、特に情報電子機器等に
使用される放熱用ヒートパイプとこの加工方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】ノートPCなどの情報電子機器は、軽量
・薄型の要求を満たしながら機能の複合化に伴い、MP
Uなどの電子部品の発熱密度が極めて高くなってきてい
る。この要求に応えるために、上記発熱部品の熱分散に
薄板型のヒートパイプが用いられるようになってきた。
【0003】ヒートパイプを薄型に仕上げるためには、
作動流体の蒸気通路を要求熱流量の限界近くまで下げる
工夫と共に、加工時においては中子を入れて内部面積の
精度管理を行い、またコンテナ材料の厚さを極小に仕上
げる必要がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、これらを行っ
てもコンテナへの外部からの機械的な圧力や気液二相変
化に伴う内部圧力に耐えるためと、ヒートパイプの起動
特性に起因する液溜まりが、ヒートパイプの軸方向の幾
つか部分的に発生し、熱抵抗の増加の要因となるため
に、自ずと薄型化に限界があり、従来は材料の厚さが1.
5mm程度のものしか実現できなかった。
【0005】本発明は上記課題に鑑み、厚さ寸法が1mm
以下であっても、良好な効果が得られるヒートパイプと
この加工手段を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に本発明では、通常は加工毎に出し入れしている中子
を、作動液環流のためヒートパイプの中に組み込むウィ
ックに最適な構造として、ヒートパイプ加工毎に残す工
夫を施すことにより、厚さ1mm以下の極薄型で、しかも
熱輸送能力と熱抵抗特性の優れたヒートパイプの提供を
可能にしたものである。
【0007】すなわち請求項1においては、第一のパイ
プと、第一のパイプに比べて比較的小径、かつ長さの短
い第二のパイプ、上記第一のパイプの略中央部に第二
のパイプを少なくとも一本挿入固定して、前記第一のパ
イプの内壁と第二のパイプの外壁空間の両側面が主とし
て蒸気通路、第二のパイプの内部を主として作動液帰還
路となるように平板状とし、さらに第一のパイプに作動
液を入れて端部を封止したヒートパイプとする。請求項
2においては、第二のパイプ断面を眼鏡状に変形させ、
請求項3においては、第一のパイプの内側にグルーブ加
工を施す。請求項4においては第一のパイプと、第一の
パイプに比べて比較的小径、かつ長さの短い第二のパイ
プ、芯棒を用いて第一のパイプの略中央部に第二のパイ
プを少なくとも一本挿入して仮固定し、プレスにて第一
のパイプを平板状とする事により内壁に第二のパイプを
固定し、次に上記芯棒を抜いた後、第一のパイプに作動
液を入れて端部を封止したヒートパイプの加工方法とす
る。請求項5においては、第一のパイプと、第一のパイ
プに比べて比較的小径、かつ長さの短い第二のパイプ、
芯棒を用いて第一のパイプの略中央部に第二のパイプを
少なくとも一本挿入して仮固定し、プレスにて第一のパ
イプを平板状とする事により内壁に第二のパイプを固定
し、次に上記芯棒を抜いた後、少なくとも注入部を残し
て第二のパイプ断面を眼鏡状に再プレス加工施し、第一
のパイプに作動液を入れて端部を封止したヒートパイプ
の加工方法とする。請求項6においては一端部を細径加
工を施した第一のパイプと、第一のパイプに比べて比較
的小径、かつ長さの短い第二のパイプ、芯棒を用いて第
一のパイプの略中央部に第二のパイプを少なくとも一本
挿入して仮固定し、プレスにて第一のパイプを平板状と
する事により内壁に第二のパイプ固定し、次に上記芯棒
を抜いた後、少なくとも上記細径加工部を残して再プレ
ス加工施し、第一のパイプに作動液を入れて端部を封止
した後、上記細径加工部をプレスしたヒートパイプの加
工方法。
【0008】
【実施例】図1はこの発明の実施例の全体図であり、点
線で示されるのは中子を兼ねるウィックの位置を示し、
略中央部に配置されており、この詳細な断面図は図2に
おいて示されている。
【0009】本発明の実施例とするヒートパイプの全体
斜視図を図1に、このA−A断面を矢印方向に見た断面
図を図2に、さらに図1に示すヒートパイプの軸方向の
断面図は図3に示す。これらの図を用いて説明すると、
第一のパイプ10は、内部を空洞とする筒状の材料から形
成され、この軸方向端部をそれぞれ絞り加工部11とプレ
ス部14としてあり、当該両端部の間がコンテナ12となっ
ている。前記絞り加工部11は作動液の注入口となってお
り、組立工程において封止部15を形成し第一のパイプ15
の内部を密封するものとなっている。また第一のパイプ
10内は図2が示すようにグルーブ13が形成されていると
共に、前記コンテナ12の有効長さに満たない長さ寸法と
してある第二のパイプ20が埋設されており、当該第二の
パイプ20の軸方向形状は、図2が示すように、円弧部21
-21を有する眼鏡状となっている。ここで前記グルーブ1
3は、第一のパイプ10のグルーブウイックを形成し、第
二のパイプ20はパイプウイックを形成している。このと
き、前記第一のパイプ10の内壁と第二のパイプ20の外壁
空間の両側面が主として蒸気通路となり、第二のパイプ
20の内部が主として作動液帰還路となっている。
【0010】さらに具体例を挙げれば、第一のパイプ10
は、厚さ0.18mm程度で外径寸法が3mmから15mm程度の無
酸素銅やリン脱酸銅からなる管材を180mm程度の長さに
カットし、この内面に高さ 0.12mm程度のグルーブ加工
を施している。第二のパイプ20は、厚さ0.12mmから0.25
mmで外径寸法が1.2mmから3mm程度の無酸素銅やリン脱
酸銅をからなり、上記第一のパイプ10であるコンテナ12
の有効長さに満たない長さにカットし形成されている。
【0011】次に本発明のヒートパイプの加工方法を図
4乃至図7を使用して説明する。図4には第一のパイプ
10の一端部を絞り加工した図を示し、図6には図4の第
一のパイプ10を仮プレスし、第二のパイプ20を第一のパ
イプ10の内部に固定した図を示し、図5には図6のA−
A断面を矢印方向に見た断面図を示し、図7には図6に
示す第一のパイプ10をさらにプレスした状態の図を示し
ている。
【0012】図4において、第一のパイプ10は、一方の
端部を作動液注入のために細径に絞り加工を施し、絞り
加工部11と作動液の注入口16とを形成している。その
後、第一のパイプ10の他端部からピアノ線やリン青銅か
らなる芯棒30を通して、第二のパイプ20を上記コンテナ
12内部に挿入し、プレス治具にセットすることにより、
図4に示すようにコンテナ12内部の略中央部に第二のパ
イプ20が仮固定され、この状態を保持して第二のパイプ
20の外形が、第一のパイプ10の内壁に固定される寸法管
理で仮プレスされ、図5のような断面状態を有する図6
に示す形状とした後、芯棒30を抜く。
【0013】ここで、この発明の目的のウイック構造を
有するコンテナ12を仕上げることができるため、コンテ
ナ12が目的の厚さに仕上がっておれば、絞り加工をして
いない端部をプレス加工した後、溶接またはロー付けを
行って封止し、絞り加工部11の開口部すなわち作動液の
注入口16よりコンテナ12内部を減圧し、図示しない純水
などの作動液を所定量注入して、絞り加工部11の根本付
近の封止部15を圧接し、不要部分をカットして溶接する
ことにより、ヒートパイプが完成する。
【0014】しかし、本発明の究極の目的である極薄型
ヒートパイプを加工する時には、上記芯棒30を抜いた状
態で上記とは別のプレス治具にセットして、絞り加工部
11近傍を残して第一のパイプ10のコンテナ12部を再プレ
スして図2に示す断面構造を有する図7に示す形状とし
た後、絞り加工をしていない端部の封止と作動液注入を
上述の手順と同様に行って、ヒートパイプとした後、最
後に注入口16をプレス整形することで封止部15を形成
し、ヒートパイプ加工の全工程が完了する。
【0015】ここで、上記絞り加工部11とプレス加工を
別工程とする理由は次の通りである。第一のパイプ10内
に作動液を入れる工程は、脱気したコンテナ12の中にガ
ス抜き精製した純水を計量したのち注入するが、上記薄
型ヒートパイプの平板隙間と断面積が小さいために、コ
ンテナ12内部に注入される作動液が入れづらくなり、作
動液量が管理限界から外れ易くなる問題対策と、封止部
15の溶接熱による材料軟化対策とを、注入口16部分のみ
薄型加工を作動液注入後の加工にすることにより、同時
に解決するために行っている。
【0016】すなわち、注入口16からコンテナ12内部が
減圧され、第一のパイプ10内に図示しない作動液が注入
されるが、この時、絞り加工部11近傍の内部空間体積が
比較的大きいと、コンテナ12内部の十分な減圧が得られ
るばかりでなく、作動液の注入速度が妨げられることが
無く、注入量のバラツキが極めて少なく制御できること
になる。また作動液注入後に注入口16を封止溶接熱によ
り、注入口16から絞り加工部11にかけて材料の軟化を誘
発するが、絞り加工部11を中心にして、ヒートパイプの
加工厚さからコンテナ12内部空間が無くなる程度に圧接
し、コンテナ12材料の加工硬化を促すことにより、溶接
熱による材料の軟化は、上記圧接成形によって、ほぼ溶
接前の硬度にまで戻る。なお上記においては一端部分の
絞り加工部11について述べているが、この加工硬化の工
法は、必要に応じて他端部のプレス部14においても同様
に行える。
【0017】次に上記構成を有するヒートパイプの作用
について述べる。内壁にグルーブウイックを有するコン
テナ12の内部に眼鏡状に変形した第二のパイプ20とする
パイプウィックが形成されており、ヒートパイプの作動
時はパイプウイック外周のコンテナ12の内壁に接してい
る部分も、勿論有効なウィックとして働くが、当該ウィ
ックよりもパイプウィックの内部は、ヒートパイプの蒸
発部蒸気通路から隔離されており、毛細管圧力限界や飛
散限界が無いために、凝縮部から帰還する作動液の主た
るウィックとして機能する。
【0018】また、第二のパイプ20すなわちパイプウイ
ックの断面形状を円弧部21-21を有する眼鏡状としてい
るのは、コンテナ12を平板状に加工するときの内部への
凹み変形を抑制する中子として有効な形状であるばかり
でなく、ウィックとしてのポンプ作用を最適保持させる
ための手段でもある。
【0019】また、図3には上記実施例のヒートパイプ
の作動をモデル化して図示してある。すなわち、図3に
おいて、コンテナ12内部で示される矢印実線は、作動液
が液体流を示し、矢印点線は作動液が蒸気流であること
を示し、作動液は蒸発部で蒸発し、蒸気流となってパイ
プウィックの外を流れ、凝縮部で液体となり、その殆ど
はパイプウィックの内部を環流する。
【0020】このように蒸気と液体の流路が分かれてい
るために、蒸気流圧力に起因する毛細管圧力限界や飛散
限界が無く、コンテナ12の狭壁間隔を極限まで薄くする
ことが可能となる。当該図3に示すモデル図には、グル
ープウィックの役割が不明確であるが、当該ウィックは
軸方向の作動液環流のポンプ作用の補助的役割と、横断
面方向の伝熱を受け持っている。
【0021】なお、上記実施例においては、第一のパイ
プ10内部にグルーブウィック加工材を用いたが、説明す
るまでもなく、断面積の小さいものや長さの比較的短い
ものなどは、当該グルーブウィックは必ずしも必要では
なく、薄型化のためにはグルーブウイックが無い方が良
い場合もある。また、パイプウィック材は予め楕円や眼
鏡状などに変形加工して用いた方が都合が良い場合もあ
り、パイプ断面に必ずしも限定されるものではないこと
は勿論、ウィック補助材として当該パイプウィック内部
に線材などを適宜挿入できる。さらに各々のパイプや作
動液は、銅や純水に限定されるものではなく、他の周知
の材料を用いても同様の薄型ヒートパイプを得ることが
できる。また、第二のパイプ20とするパイプウイックは
1本に限定することなく複数個用意してもよい。
【0022】
【発明の効果】以上詳述したように、この発明によれ
ば、要求コンテナ幅により選択された外形の第一のパイ
プ10と、要求コンテナ厚さにより選択されたウイック材
となる一本あるいは複数本の第二のパイプ20を最適に組
み合わせることにより、平板加工時の特に薄板加工に不
可欠な精度管理のために必要な加工毎に出し入れする中
子や、ヒートパイプ完成後に凹み変形修正のための加熱
整形などを不要とできるばかりでなく、作動液環流に優
れた特性を示すウイックのために、極限まで薄型化が可
能となヒートパイプとヒートパイプの加工方法を得るこ
とができる。
【0023】また本発明によるヒートパイプは、変形し
難いために、個々の特性バラツキが少なく、ヒートパイ
プ完成後に曲げ加工を許容して用いることも可能となる
など、数々の優れた特性を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のヒートパイプの斜視図を示す
【図2】図1のA−A断面を矢印方向に見た断面図を示
【図3】図1の軸方向の断面図を示す
【図4】本発明のヒートシンクの製造次の斜視図を示す
【図5】図6のA−A断面を矢印方向に見た断面図を示
【図6】本発明のヒートパイプを仮プレスした後の斜視
図を示す
【図7】本発明のヒートパイプのコンテナをプレスした
後の斜視図を示す
【符号の説明】
図において同一符号は同一、または相当部分を示す。 10 第一のパイプ 11 絞り加工部 12 コンテナ 13 グルーブ(グルーブウイック) 14 プレス部 15 封止部 16 注入口 20 第二のパイプ(パイプウイック) 21 円弧部 30 芯棒
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭55−25781(JP,A) 特開 平8−303972(JP,A) 特開 平9−49693(JP,A) 実開 昭53−36755(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F28D 15/02 101 F28D 15/02 102 F28D 15/02 106 H05K 7/20

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】第一のパイプと、第一のパイプに比べて比
    較的小径、かつ長さの短い第二のパイプ、上記第一の
    パイプの略中央部に第二のパイプを少なくとも一本挿入
    固定して、前記第一のパイプの内壁と第二のパイプの外
    壁空間の両側面が主として蒸気通路、第二のパイプの内
    部を主として作動液帰還路となるように平板状とし、さ
    らに第一のパイプに作動液を入れて端部を封止したヒー
    トパイプ。
  2. 【請求項2】第二のパイプ断面を眼鏡状に変形させた請
    求項1に記載のヒートパイプ。
  3. 【請求項3】第一のパイプの内側にグルーブ加工を施し
    た請求項1および請求項2に記載のヒートパイプ。
  4. 【請求項4】第一のパイプと、第一のパイプに比べて比
    較的小径、かつ長さの短い第二のパイプ、芯棒を用いて
    第一のパイプの略中央部に第二のパイプを少なくとも一
    本挿入して仮固定し、プレスにて第一のパイプを平板状
    とする事により内壁に第二のパイプを固定し、次に上記
    芯棒を抜いた後、第一のパイプに作動液を入れて端部を
    封止したヒートパイプの加工方法。
  5. 【請求項5】第一のパイプと、第一のパイプに比べて比
    較的小径、かつ長さの短い第二のパイプ、芯棒を用いて
    第一のパイプの略中央部に第二のパイプを少なくとも一
    本挿入して仮固定し、プレスにて第一のパイプを平板状
    とする事により内壁に第二のパイプを固定し、次に上記
    芯棒を抜いた後、少なくとも注入部を残して第二のパイ
    プ断面を眼鏡状に再プレス加工施し、第一のパイプに作
    動液を入れて端部を封止したヒートパイプの加工方法。
  6. 【請求項6】一端部を細径加工を施した第一のパイプ
    と、第一のパイプに比べて比較的小径、かつ長さの短い
    第二のパイプ、芯棒を用いて第一のパイプの略中央部に
    第二のパイプを少なくとも一本挿入して仮固定し、プレ
    スにて第一のパイプを平板状とする事により内壁に第二
    のパイプ固定し、次に上記芯棒を抜いた後、少なくとも
    上記細径加工部を残して再プレス加工施し、第一のパイ
    プに作動液を入れて端部を封止した後、上記細径加工部
    をプレスしたヒートパイプの加工方法。
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