JP3033323B2 - X線多層膜反射鏡の製造方法 - Google Patents
X線多層膜反射鏡の製造方法Info
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、X線縮小投影露光装
置、X線望遠鏡、X線顕微鏡、X線レーザおよび各種X
線分析装置等において、X線の波長域での反射光学系に
用いられる多層膜反射鏡の製造方法に関する。
置、X線望遠鏡、X線顕微鏡、X線レーザおよび各種X
線分析装置等において、X線の波長域での反射光学系に
用いられる多層膜反射鏡の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】X線波長域の光に対しては、物質の屈折
率は、 n=1−δ−iβ (δ、β:正の実数) と表され、δ、βともに1に比べて非常に小さい(屈折
率の虚部βはX線の吸収を表す)。従って、屈折率がほ
ぼ1に近くなりX線はほとんど屈折せず、また、必ずX
線を吸収する。そのため、可視光領域の光のように屈折
を利用したレンズはX線波長域の光には使用できない。
率は、 n=1−δ−iβ (δ、β:正の実数) と表され、δ、βともに1に比べて非常に小さい(屈折
率の虚部βはX線の吸収を表す)。従って、屈折率がほ
ぼ1に近くなりX線はほとんど屈折せず、また、必ずX
線を吸収する。そのため、可視光領域の光のように屈折
を利用したレンズはX線波長域の光には使用できない。
【0003】そこで、反射を利用した光学系が用いられ
るが、やはり屈折率が1に近いために反射率は非常に低
く、大部分のX線は透過するか或いは吸収されてしま
う。この問題を解決するために、使用するX線の波長域
での屈折率と真空の屈折率(=1)との差が大きい物質
と、差の小さい物質とを交互に何層も積層することでそ
れらの界面である反射面を多数設け、それぞれの界面か
らの反射波の位相が一致するように光学的干渉理論に基
づいて各層の厚さを調整した多層膜反射鏡が開発され
た。このような多層膜反射鏡の代表的なものとして、W
(タングステン)/C(炭素)、Mo(モリブデン)/
Si(シリコン)等の組合せが知られている。そして、
これらの多層膜はスパッタリング、真空蒸着、CVD等
の薄膜形成技術によって作製されていた。
るが、やはり屈折率が1に近いために反射率は非常に低
く、大部分のX線は透過するか或いは吸収されてしま
う。この問題を解決するために、使用するX線の波長域
での屈折率と真空の屈折率(=1)との差が大きい物質
と、差の小さい物質とを交互に何層も積層することでそ
れらの界面である反射面を多数設け、それぞれの界面か
らの反射波の位相が一致するように光学的干渉理論に基
づいて各層の厚さを調整した多層膜反射鏡が開発され
た。このような多層膜反射鏡の代表的なものとして、W
(タングステン)/C(炭素)、Mo(モリブデン)/
Si(シリコン)等の組合せが知られている。そして、
これらの多層膜はスパッタリング、真空蒸着、CVD等
の薄膜形成技術によって作製されていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前述のような多層膜
は、人工的に周期構造を構成してあり本来不安定なもの
である。特に、高強度のX線に対してこのような多層膜
反射鏡を使用する場合、X線の一部が多層膜およびその
基板に吸収され、そのエネルギによって多層膜の温度が
上昇する。そのため、多層膜中で相互拡散、化合物形成
などの反応が促進されるため、短時間のうちに多層膜構
造が破壊されて反射鏡としての機能を失ってしまう。
は、人工的に周期構造を構成してあり本来不安定なもの
である。特に、高強度のX線に対してこのような多層膜
反射鏡を使用する場合、X線の一部が多層膜およびその
基板に吸収され、そのエネルギによって多層膜の温度が
上昇する。そのため、多層膜中で相互拡散、化合物形成
などの反応が促進されるため、短時間のうちに多層膜構
造が破壊されて反射鏡としての機能を失ってしまう。
【0005】最近、X線多層膜反射鏡の実用化が進むに
従い、多層膜の耐熱性の評価が行われるようになり、い
くつかの材料の組み合わせについてその耐熱性が明らか
にされつつある。例えば、前記Mo/Siの組合せの多
層膜は、123 Åというシリコンの吸収端の長波長側で高
い反射率を示すため、X線縮小投影露光装置の反射光学
系に用いる多層膜反射鏡として優れている。しかし、こ
の多層膜は耐熱性が低く、真空中で400 ℃程度に加熱さ
れると多層膜構造が破壊してしまう。そして、この破壊
の現象は、モリブデン層へのシリコンの拡散とモリブデ
ンシリサイドの形成によることが知られている。(例え
ば、D.G.Sterns et.al.,J.Appl.Phys.67(1990)2415. 参
照) そこで、拡散を防止して耐熱性を向上させる目的で、多
層膜を形成している互いに屈折率の異なる物質からなる
A層とB層の間に拡散防止層C層を設けた多層膜反射鏡
が提案された。しかし、いずれも多層膜も耐熱性の向上
は不十分なものであった。
従い、多層膜の耐熱性の評価が行われるようになり、い
くつかの材料の組み合わせについてその耐熱性が明らか
にされつつある。例えば、前記Mo/Siの組合せの多
層膜は、123 Åというシリコンの吸収端の長波長側で高
い反射率を示すため、X線縮小投影露光装置の反射光学
系に用いる多層膜反射鏡として優れている。しかし、こ
の多層膜は耐熱性が低く、真空中で400 ℃程度に加熱さ
れると多層膜構造が破壊してしまう。そして、この破壊
の現象は、モリブデン層へのシリコンの拡散とモリブデ
ンシリサイドの形成によることが知られている。(例え
ば、D.G.Sterns et.al.,J.Appl.Phys.67(1990)2415. 参
照) そこで、拡散を防止して耐熱性を向上させる目的で、多
層膜を形成している互いに屈折率の異なる物質からなる
A層とB層の間に拡散防止層C層を設けた多層膜反射鏡
が提案された。しかし、いずれも多層膜も耐熱性の向上
は不十分なものであった。
【0006】例えば、特開昭60-7400 では金属層と炭化
ホウ素(B4 C)層との間にシリコン(Si)の拡散防
止層を設けた多層膜が提案されているが、シリコンは多
くの金属と反応してシリサイドを形成し易いので拡散防
止層としては機能しない。また、特開平2-242201にはモ
リブデンとシリコンからなる多層膜の界面に反応性スパ
ッタリングにより形成した酸化珪素(SiO2 )層を設
けて耐熱性を向上させた多層膜が提案されている。しか
し、反応性スパッタリングによる成膜では、基板上に既
に形成された薄膜の表面も同時に反応性ガスのイオンお
よびラジカルにさらされることになる。形成されたばか
りの薄膜表面は、非常に活性であるため、このようなイ
オンおよびラジカルと容易に反応する。そのため、基板
上の薄膜の表面でも化合物化反応が起こり、薄膜の表面
粗さが著しく増大してしまう。その結果、形成された多
層膜の界面粗さが大きくなって散乱による損失が大きい
ため高い反射率が得られなくなる。従って、この場合、
モリブデン層の表面が酸素プラズマにさらされて表面粗
さが増大するため、耐熱性は向上してもX線の反射率自
体が低下してしまうという問題が生じた。
ホウ素(B4 C)層との間にシリコン(Si)の拡散防
止層を設けた多層膜が提案されているが、シリコンは多
くの金属と反応してシリサイドを形成し易いので拡散防
止層としては機能しない。また、特開平2-242201にはモ
リブデンとシリコンからなる多層膜の界面に反応性スパ
ッタリングにより形成した酸化珪素(SiO2 )層を設
けて耐熱性を向上させた多層膜が提案されている。しか
し、反応性スパッタリングによる成膜では、基板上に既
に形成された薄膜の表面も同時に反応性ガスのイオンお
よびラジカルにさらされることになる。形成されたばか
りの薄膜表面は、非常に活性であるため、このようなイ
オンおよびラジカルと容易に反応する。そのため、基板
上の薄膜の表面でも化合物化反応が起こり、薄膜の表面
粗さが著しく増大してしまう。その結果、形成された多
層膜の界面粗さが大きくなって散乱による損失が大きい
ため高い反射率が得られなくなる。従って、この場合、
モリブデン層の表面が酸素プラズマにさらされて表面粗
さが増大するため、耐熱性は向上してもX線の反射率自
体が低下してしまうという問題が生じた。
【0007】本発明は、このような問題を解決すること
を目的とする。
を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的のために本発明
では、互いに屈折率の異なる3種類の物質A、B、Cを
ターゲットとし、不活性ガスのみのイオンを前記ターゲ
ットに照射するスパッタリング法により、A/C/B/
Cの順に前記各物質からなる薄膜を積層し、これを複数
回繰り返すことで多層膜を形成しX線多層膜反射鏡を製
造した。(請求項1)そして、上記製造方法において、
前記物質Cが、酸化物または窒化物、もしくは炭化物の
化合物であるようにして多層膜を形成した。(請求項
2)
では、互いに屈折率の異なる3種類の物質A、B、Cを
ターゲットとし、不活性ガスのみのイオンを前記ターゲ
ットに照射するスパッタリング法により、A/C/B/
Cの順に前記各物質からなる薄膜を積層し、これを複数
回繰り返すことで多層膜を形成しX線多層膜反射鏡を製
造した。(請求項1)そして、上記製造方法において、
前記物質Cが、酸化物または窒化物、もしくは炭化物の
化合物であるようにして多層膜を形成した。(請求項
2)
【0009】
【作用】本発明により製造されるX線多層膜反射鏡は、
図1に示すように互いに屈折率の異なる物質からなるA
層、B層の間に拡散防止層としてC層を形成したもので
ある。このような構成においては、熱力学的に安定なC
層がA層とB層の間の相互拡散を効果的に防止するので
耐熱性が大幅に向上する。拡散防止層となるC層には、
酸化物、窒化物、炭化物等の熱力学的に安定な材料を用
いればよいが、光学特性を考慮して高い反射率が得られ
る材料を選択することが好ましい。
図1に示すように互いに屈折率の異なる物質からなるA
層、B層の間に拡散防止層としてC層を形成したもので
ある。このような構成においては、熱力学的に安定なC
層がA層とB層の間の相互拡散を効果的に防止するので
耐熱性が大幅に向上する。拡散防止層となるC層には、
酸化物、窒化物、炭化物等の熱力学的に安定な材料を用
いればよいが、光学特性を考慮して高い反射率が得られ
る材料を選択することが好ましい。
【0010】本発明においては、3種類の個別のターゲ
ットを用いるため各層の材料に関して選択上の制限はな
い。多層膜の最表面(入射面)層をC層としてこれを多
層膜の保護層として機能させてもよいし、A層もしくは
B層を最表面層としても構わない。そして、本発明で
は、スパッタリング法によって各層を成膜する際に、ア
ルゴン等の不活性ガスを用いるようにした。
ットを用いるため各層の材料に関して選択上の制限はな
い。多層膜の最表面(入射面)層をC層としてこれを多
層膜の保護層として機能させてもよいし、A層もしくは
B層を最表面層としても構わない。そして、本発明で
は、スパッタリング法によって各層を成膜する際に、ア
ルゴン等の不活性ガスを用いるようにした。
【0011】一般に、スパッタリング法による酸化物、
窒化物、炭化物等の化合物の成膜に際しては、ターゲッ
トとして金属等の単体の物質を用いていた。そして、ス
パッタリングを行う際にアルゴン等の不活性ガスに酸
素、窒素、アンモニア、メタン等の炭化水素などの反応
性ガスを混入し、成膜時に化合物を合成する方法がとら
れていた。しかし、この方法では、前述のように基板上
に既に成膜された薄膜の表面も反応性ガスのイオンおよ
びラジカルにさらされるので、拡散防止層の表面粗さが
増大する。そのため、多層膜の界面粗さが大きくなる。
窒化物、炭化物等の化合物の成膜に際しては、ターゲッ
トとして金属等の単体の物質を用いていた。そして、ス
パッタリングを行う際にアルゴン等の不活性ガスに酸
素、窒素、アンモニア、メタン等の炭化水素などの反応
性ガスを混入し、成膜時に化合物を合成する方法がとら
れていた。しかし、この方法では、前述のように基板上
に既に成膜された薄膜の表面も反応性ガスのイオンおよ
びラジカルにさらされるので、拡散防止層の表面粗さが
増大する。そのため、多層膜の界面粗さが大きくなる。
【0012】それに対して本発明では、化合物からなる
拡散防止層を成膜する際もアルゴン等の不活性ガスのみ
を用いるので、界面の粗さが生じることはない。そのた
め、高い反射率を有する多層膜を形成することができ
る。なお、拡散防止層の厚さは、必要な耐熱性を得るた
めに必要最小限の厚さにすればよいので、該拡散防止層
を設けたことによる反射率の低下は小さく抑えることが
できる。
拡散防止層を成膜する際もアルゴン等の不活性ガスのみ
を用いるので、界面の粗さが生じることはない。そのた
め、高い反射率を有する多層膜を形成することができ
る。なお、拡散防止層の厚さは、必要な耐熱性を得るた
めに必要最小限の厚さにすればよいので、該拡散防止層
を設けたことによる反射率の低下は小さく抑えることが
できる。
【0013】以下、本発明を実施例によりさらに詳しく
説明する。
説明する。
【0014】
【実施例1】図2は、本実施例において使用されるイオ
ンビームスパッタリング装置の概略構成図である。この
装置の真空チャンバー10内には、基板1を取り付ける
基板ホルダ2、イオン源5および3種類の物質のターゲ
ット3a、3b、3cがそれぞれ取り付けられるターゲ
ットホルダ4とが設けられている。ターゲットホルダ4
は、図示していない回転手段により図中矢印Pで示すよ
うに回転可能になっており、成膜したい物質のターゲッ
トをイオン源5に対向する位置へ移動させることができ
る。成膜時は、イオン源5からアルゴンイオンビーム7
を照射して所望の物質からなるターゲットに衝突させ
る。そして、ターゲット材料をスパッタリングして生じ
た蒸気を基板1上に付着させて薄膜を形成する。
ンビームスパッタリング装置の概略構成図である。この
装置の真空チャンバー10内には、基板1を取り付ける
基板ホルダ2、イオン源5および3種類の物質のターゲ
ット3a、3b、3cがそれぞれ取り付けられるターゲ
ットホルダ4とが設けられている。ターゲットホルダ4
は、図示していない回転手段により図中矢印Pで示すよ
うに回転可能になっており、成膜したい物質のターゲッ
トをイオン源5に対向する位置へ移動させることができ
る。成膜時は、イオン源5からアルゴンイオンビーム7
を照射して所望の物質からなるターゲットに衝突させ
る。そして、ターゲット材料をスパッタリングして生じ
た蒸気を基板1上に付着させて薄膜を形成する。
【0015】本実施例では、ターゲットホルダ4にモリ
ブデン、シリコン、酸化珪素(SiO2 )の3種類のタ
ーゲットを取付けた。そして、シリコンウエハを基板と
して用い、この基板1上に膜厚25Åのモリブデン層(A
層)、膜厚5Åの酸化珪素層(C層)、膜厚40Åのシリ
コン層(B層)、膜厚5Åの酸化珪素層(C層)の順で
50回成膜を行い、図1のような周期長75Å、積層数50組
の多層膜を形成した。なお、本実施例では最上層として
シリコン層を形成してある。
ブデン、シリコン、酸化珪素(SiO2 )の3種類のタ
ーゲットを取付けた。そして、シリコンウエハを基板と
して用い、この基板1上に膜厚25Åのモリブデン層(A
層)、膜厚5Åの酸化珪素層(C層)、膜厚40Åのシリ
コン層(B層)、膜厚5Åの酸化珪素層(C層)の順で
50回成膜を行い、図1のような周期長75Å、積層数50組
の多層膜を形成した。なお、本実施例では最上層として
シリコン層を形成してある。
【0016】以上のようにして作製した多層膜を真空中
で加熱して耐熱性を調べた。その結果、450 ℃まで反射
率の変化はなく、550 ℃で多層膜構造が破壊して反射率
が低下した。比較例として本実施例と同じイオンビーム
スパッタリング装置により、膜厚25Åのモリブデン層と
膜厚50Åのシリコン層とを交互に50層ずつ積層して多層
膜を作製した。そして、同様にしてその耐熱性を調べ
た。その結果、400 ℃で既に反射しなくなった。
で加熱して耐熱性を調べた。その結果、450 ℃まで反射
率の変化はなく、550 ℃で多層膜構造が破壊して反射率
が低下した。比較例として本実施例と同じイオンビーム
スパッタリング装置により、膜厚25Åのモリブデン層と
膜厚50Åのシリコン層とを交互に50層ずつ積層して多層
膜を作製した。そして、同様にしてその耐熱性を調べ
た。その結果、400 ℃で既に反射しなくなった。
【0017】次に、本実施例で作製した多層膜と比較例
で作製した多層膜について、それぞれの軟X線反射率を
放射光を用いてS偏光で測定した。放射光の入射角は多
層膜の法線に対して15゜に設定し、波長135 Å付近に反
射率のピークが生じるようにした。その結果、比較例の
多層膜の反射率72%に対して本実施例の多層膜の反射率
は66%であり、拡散防止層を設けたことによる反射率の
大幅な低下は認められなかった。
で作製した多層膜について、それぞれの軟X線反射率を
放射光を用いてS偏光で測定した。放射光の入射角は多
層膜の法線に対して15゜に設定し、波長135 Å付近に反
射率のピークが生じるようにした。その結果、比較例の
多層膜の反射率72%に対して本実施例の多層膜の反射率
は66%であり、拡散防止層を設けたことによる反射率の
大幅な低下は認められなかった。
【0018】
【実施例2】図3は、本実施例において使用される高周
波マグネトロンスパッタリング装置の概略構成図であ
る。この装置の真空チャンバー10内には、基板1を取
り付ける基板ホルダ2と3種類の物質のターゲット3
a、3b、3cとが設けられている。そして、各ターゲ
ットにはそれぞれ高周波電源6a、6b、6cが接続さ
れている。基板ホルダ2は自転可能に構成され、基板1
が各ターゲット上を通過することができるようになって
いる。各ターゲットにはそれぞれシャッタが設けられ、
また各ターゲット間には遮蔽板が設けられている。(い
ずれも図示せず。)成膜時は、アルゴンガスを真空チャ
ンバー10内に導入して、各ターゲットに高周波電力を
印加する。この時、成膜したい物質のターゲットのシャ
ッタを開き、それ以外のターゲットのシャッタを閉じて
おく。そして、シャッタを開けたターゲットの材料をス
パッタリングして、生じた蒸気を基板1上に付着させて
薄膜を形成する。
波マグネトロンスパッタリング装置の概略構成図であ
る。この装置の真空チャンバー10内には、基板1を取
り付ける基板ホルダ2と3種類の物質のターゲット3
a、3b、3cとが設けられている。そして、各ターゲ
ットにはそれぞれ高周波電源6a、6b、6cが接続さ
れている。基板ホルダ2は自転可能に構成され、基板1
が各ターゲット上を通過することができるようになって
いる。各ターゲットにはそれぞれシャッタが設けられ、
また各ターゲット間には遮蔽板が設けられている。(い
ずれも図示せず。)成膜時は、アルゴンガスを真空チャ
ンバー10内に導入して、各ターゲットに高周波電力を
印加する。この時、成膜したい物質のターゲットのシャ
ッタを開き、それ以外のターゲットのシャッタを閉じて
おく。そして、シャッタを開けたターゲットの材料をス
パッタリングして、生じた蒸気を基板1上に付着させて
薄膜を形成する。
【0019】本実施例では、ターゲットとしてモリブデ
ン、シリコン、炭化珪素(SiC)の3種類を用いた。
そして、シリコンウエハを基板として用い、この基板1
上に膜厚25Åのモリブデン層(A層)、膜厚10Åの炭化
珪素層(C層)、膜厚30Åのシリコン層(B層)、膜厚
10Åの炭化珪素層(C層)の順に50回成膜を行い、図1
のような周期長75Å、積層数50組の多層膜を形成した。
なお、本実施例では最上層としてシリコン層を形成して
ある。
ン、シリコン、炭化珪素(SiC)の3種類を用いた。
そして、シリコンウエハを基板として用い、この基板1
上に膜厚25Åのモリブデン層(A層)、膜厚10Åの炭化
珪素層(C層)、膜厚30Åのシリコン層(B層)、膜厚
10Åの炭化珪素層(C層)の順に50回成膜を行い、図1
のような周期長75Å、積層数50組の多層膜を形成した。
なお、本実施例では最上層としてシリコン層を形成して
ある。
【0020】以上のようにして作製した多層膜を真空中
で加熱して耐熱性を調べた。その結果、600 ℃まで反射
率の変化はなく、800 ℃で多層膜構造が破壊して反射し
なくなった。比較例として本実施例と同じ装置を用いて
膜厚25Åのモリブデン層と膜厚50Åのシリコン層とを交
互に50層ずつ積層して多層膜を作製した。そして、同様
にしてその耐熱性を調べた。その結果、400 ℃で既に反
射しなくなった。
で加熱して耐熱性を調べた。その結果、600 ℃まで反射
率の変化はなく、800 ℃で多層膜構造が破壊して反射し
なくなった。比較例として本実施例と同じ装置を用いて
膜厚25Åのモリブデン層と膜厚50Åのシリコン層とを交
互に50層ずつ積層して多層膜を作製した。そして、同様
にしてその耐熱性を調べた。その結果、400 ℃で既に反
射しなくなった。
【0021】次に、本実施例で作製した多層膜と比較例
で作製した多層膜について、それぞれの軟X線反射率を
実施例1と同様にして測定した。その結果、比較例の多
層膜の反射率72%に対して本実施例の多層膜の反射率は
68%であり、拡散防止層を設けたことによる反射率の大
幅な低下は認められなかった。なお、各実施例において
は、実用上重要度の高いモリブデン/シリコンの組合せ
の多層膜反射鏡に関する耐熱性向上について述べたが、
他の物質の組合せからなる多層膜反射鏡に対しても、本
発明を適用できることは言うまでもない。
で作製した多層膜について、それぞれの軟X線反射率を
実施例1と同様にして測定した。その結果、比較例の多
層膜の反射率72%に対して本実施例の多層膜の反射率は
68%であり、拡散防止層を設けたことによる反射率の大
幅な低下は認められなかった。なお、各実施例において
は、実用上重要度の高いモリブデン/シリコンの組合せ
の多層膜反射鏡に関する耐熱性向上について述べたが、
他の物質の組合せからなる多層膜反射鏡に対しても、本
発明を適用できることは言うまでもない。
【0022】ところで、2種類の物質を交互に積層して
なる従来の多層膜反射鏡に、本発明で拡散防止層として
用いた酸化物、窒化物、炭化物等の化合物を一方の物質
に用いても耐熱性の向上を図れる。しかし、この場合は
反射率の大幅な低下を余儀なくされる。これは、一般
に、高い反射率を得るのに適した材料と熱力学的に安定
な拡散防止効果を有する材料とが一致しないためであ
る。
なる従来の多層膜反射鏡に、本発明で拡散防止層として
用いた酸化物、窒化物、炭化物等の化合物を一方の物質
に用いても耐熱性の向上を図れる。しかし、この場合は
反射率の大幅な低下を余儀なくされる。これは、一般
に、高い反射率を得るのに適した材料と熱力学的に安定
な拡散防止効果を有する材料とが一致しないためであ
る。
【0023】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、熱力学的
に安定な酸化物、窒化物、炭化物等の化合物を拡散防止
層として多層膜中に設けたので、該多層膜中の相互拡散
を有効に防止することができる。そのため、多層膜の耐
熱性が大幅に向上する。そして、スパッタリングによる
成膜の際、不活性ガスだけによるスパッタリングを行う
ため薄膜の表面粗さが増大しない。従って、高反射率の
多層膜を作製できる。
に安定な酸化物、窒化物、炭化物等の化合物を拡散防止
層として多層膜中に設けたので、該多層膜中の相互拡散
を有効に防止することができる。そのため、多層膜の耐
熱性が大幅に向上する。そして、スパッタリングによる
成膜の際、不活性ガスだけによるスパッタリングを行う
ため薄膜の表面粗さが増大しない。従って、高反射率の
多層膜を作製できる。
【0024】本発明は、今後、放射光を始めとする高強
度のX線源に対して使用される多層膜光学系の用途、あ
るいはX線レーザ共振器のように極端に過酷な耐久性が
要求される用途等に対し、おおいにその効果を発揮する
ことができるものである。
度のX線源に対して使用される多層膜光学系の用途、あ
るいはX線レーザ共振器のように極端に過酷な耐久性が
要求される用途等に対し、おおいにその効果を発揮する
ことができるものである。
【図1】は、本発明により製造される多層膜の構造を示
す概略断面図である。
す概略断面図である。
【図2】は、実施例1で用いたイオンビームスパッタリ
ング装置の概略構成図である。
ング装置の概略構成図である。
【図3】は、実施例2で用いた高周波マグネトロンスパ
ッタリング装置の概略構成図である。
ッタリング装置の概略構成図である。
1 基板 2 基板ホルダ 3a ターゲット 3b ターゲット 3c ターゲット 4 ターゲットホルダ 5 イオン源 6a 高周波電源 6b 高周波電源 6c 高周波電源 7 イオンビーム 10 真空チャンバー
Claims (2)
- 【請求項1】 互いに屈折率の異なる3種類の物質A、
B、Cをターゲットとし、不活性ガスのみのイオンを前
記ターゲットに照射するスパッタリング法により、A/
C/B/Cの順に前記各物質からなる薄膜を積層し、こ
れを複数回繰り返すことで多層膜を形成することを特徴
とするX線多層膜反射鏡の製造方法。 - 【請求項2】 前記物質Cが、酸化物または窒化物、も
しくは炭化物の化合物であることを特徴とする請求項1
に記載のX線多層膜反射鏡の製造方法。
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- 1992-02-25 JP JP4037898A patent/JP3033323B2/ja not_active Expired - Fee Related
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