JP3031897B2 - エポキシ樹脂硬化物およびこれを得るための硬化方法 - Google Patents

エポキシ樹脂硬化物およびこれを得るための硬化方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は貯蔵安定性および機械的
強度に優れ、熱賦活時の内包物の放出性に優れるマイク
ロカプセル型硬化剤または硬化促進剤、およびそれを含
有するエポキシ樹脂組成物、並びに硬化方法およびエポ
キシ樹脂硬化物に関する。
【0002】
【従来の技術】エポキシ樹脂は接着剤や塗料、コーティ
ング剤、封止材、積層体などの多岐にわたる用途に用い
られている。また、これらのエポキシ樹脂には通常、各
種硬化剤や硬化促進剤が含有されている。
【0003】汎用されているエポキシ樹脂組成物には、
アミンやルイス酸、酸無水物のような硬化剤や硬化促進
剤を使用する直前にエポキシ樹脂と混合する、所謂二液
型の組成物がある。このような二液型のものではエポキ
シ樹脂と硬化剤とを別々に保存しておき必要に応じて両
者を混合して用いるが、混合したのちの可使時間が比較
的短いので多量に混合しておくことができず、従って、
多量に使用する場合は少量ずつ何度も配合する必要があ
り、作業能率が極めて悪いものである。
【0004】一方、このような問題点を解決するものと
して、エポキシ樹脂に予め配合しておいても硬化反応が
生じず、光照射や加熱によって硬化反応が起こるような
潜在性硬化剤を用いた一液型のものが種々提案されてい
る。しかしながら、これら潜在性硬化剤を用いてもエポ
キシ樹脂に配合した場合の貯蔵安定性に優れるものは、
硬化反応を比較的高温条件で行う必要があり、また、低
温条件で硬化するものは貯蔵安定性が悪いという問題を
有し、貯蔵安定性と硬化性との両性能のバランスが良好
なものは未だ開発されていないのが実情である。
【0005】近年、エポキシ樹脂組成物の構成成分のう
ちの一成分をマイクロカプセル化して一液保存を行う方
法が提案されている。具体的には、特公昭54−314
68号公報や特開平1−242616号公報、特開平2
−292325号公報、特開平3−182520号公
報、特開平5−123565号公報、特開平6−731
63号公報、特開平6−128545号公報などに硬化
剤や硬化促進剤を内包するマイクロカプセルをエポキシ
樹脂に配合する技術が開示されている。これらの公報に
開示にマイクロカプセルの壁膜材料としては、エポキシ
樹脂硬化物、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチルエ
ステル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルト
ルエン、アクリルゴムなどの各種重合体や、塩化ビニリ
デンやアクリロニトリル、メタクリル酸などのエチレン
系単量体を主成分単量体として得られる重合体などが挙
げられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記のようなマイクロ
カプセルを用いた一液タイプのエポキシ樹脂組成物は、
貯蔵時の保存安定性や加熱使用時の硬化性、硬化物の優
れた物性をバランス良く満足する必要があり、これらの
特性はマイクロカプセルの壁膜を構成する材料に大きく
左右される。例えば、上記エポキシ樹脂硬化物のような
架橋樹脂を壁膜に採用した場合、貯蔵時の保存安定性は
改良されるが、加熱使用時に内包する硬化剤等が壁膜外
に拡散放出されにくく、その結果、硬化性に劣る可能性
がある。
【0007】また、ポリスチレンやポリメタクリル酸メ
チルエステル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビ
ニルトルエン、アクリルゴムなどの各種重合体や、塩化
ビニリデンやアクリロニトリル、メタクリル酸などのエ
チレン系単量体を主成分単量体として得られる重合体の
ような可塑性重合体を壁膜に採用した場合、加熱時の硬
化性は良好となるが、貯蔵時の保存安定性に問題が残
る。この点を改良するために、多官能性単量体を壁膜材
料の調製時に共重合して壁膜に微架橋を施して保存安定
性を改善すると、加熱使用時の硬化性が低下し、バラン
スの良いものを得ることが難しかった。
【0008】さらに、上記従来のマイクロカプセルを用
いた一液タイプのエポキシ樹脂組成物は、加熱してエポ
キシ樹脂を硬化させたのち、壁膜を構成する材料が硬化
物中に分散して異物(不純物)として含有するので、得
られた硬化物の耐熱性や耐水性などの各種物性に悪影響
を与える可能性がある。従って、常温での一液保存性や
加熱使用時の硬化性、硬化物の優れた物性の各特性をバ
ランス良く満足するものは未だ得られていないのが実情
である。
【0009】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者らは上
記従来のエポキシ樹脂組成物が有する課題を解決するた
めに鋭意研究を重ねた結果、特定の構造単位を有する重
合体を壁膜材料の主成分とすることによって、従来品に
比べて比較的バランスのとれた一液タイプのエポキシ樹
脂組成物が得られ、この組成物から得られる硬化物が優
れた特性を発揮することを見い出し、本発明を完成する
に至った。
【0010】即ち、本発明は下記一般式[化2]にて示
される構造単位を有する重合体を主成分とする壁膜内に
硬化剤または硬化促進剤を内包してなるマイクロカプセ
ル型硬化剤または硬化促進剤と、エポキシ樹脂を含むエ
ポキシ樹脂組成物を、加熱することによって得られるエ
ポキシ樹脂硬化物を提供するものである。
【化2】
【0011】特に好ましい態様は、上記硬化剤および硬
化促進剤がエポキシ樹脂用の硬化剤および硬化促進剤で
ある。
【0012】また、本発明は上記エポキシ樹脂組成物を
所定温度以上に加熱して、内包する硬化剤または硬化促
進剤を壁膜外に放出することを特徴とするエポキシ樹脂
組成物の硬化反応を生じせしめると共に、マイクロカプ
セルの壁膜を硬化物中に溶解させることを特徴とするエ
ポキシ樹脂硬化物を得るための硬化方法を提供するもの
である。
【0013】本発明に用いるマイクロカプセル型硬化剤
や硬化促進剤における壁膜は、上記[化2]にて示され
る構造単位を有する重合体を主成分とするものであり、
通常、ポリウレア系と呼ばれる重合体である。このよう
な構造単位を有する重合体は、実用的には多価イソシア
ネート類と多価アミン類との重付加反応によって得る
か、もしくは多価イソシアネート類と水との反応によっ
て得ることができる。多価イソシアネート類としては、
分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物で
あればよく、具体的にはm−フェニレンジイソシアネー
ト、p−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレ
ンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネー
ト、ナフタレン−1,4−ジイソシアネート、ジフェニ
ルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジ
メトキシ−4,4’−ビフェニルジイソシアネート、
3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイ
ソシアネート、キシリレン−1,4−ジイソシアネー
ト、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、
トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソ
シアネート、プロピレン−1,2−ジイソシアネート、
ブチレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレ
ン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−
1,4−ジイソシアネートなどのジイソシアネート類、
p−フェニレンジイソチオシアネート、キシリレン−
1,4−ジイソチオシアネート、エチリジンジイソチオ
シアネートなどのトリイソシアネート類、4,4’−ジ
メチルジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトラ
イソシアネートなどのテトライソシアネート類、ヘキサ
メチレンジイソシアネートとヘキサントリオールとの付
加物、2,4−トリレンジイソシアネートとプレンツカ
テコールとの付加物、トリレンジイソシアネートとヘキ
サントリオールとの付加物、トリレンジイソシアネート
とトリメチロールプロパンの付加物、キシリレンジイソ
シアネートとトリメチロールプロパンの付加物、ヘキサ
メチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの
付加物、トリフェニルジメチレントリイソシアネート、
テトラフェニルトリメチレンテトライソシアネート、ペ
ンタフェニルテトラメチレンペンタイソシアネート、リ
ジンイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート
などの脂肪族多価イソシアネートの三量体のようなイソ
シアネートプレポリマーなどが挙げられ、これらは一種
もしくは二種以上併用して用いることができる。
【0014】上記多価イソシアネート類の中でもマイク
ロカプセルを調製する際の造膜性や機械的強度の点か
ら、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパ
ンの付加物、キシリレンジイソシアネートとトリメチロ
ールプロパンの付加物、トリフェニルジメチレントリイ
ソシアネートなどのポリメチレンポリフェニルイソシア
ネート類に代表されるイソシアネートプレポリマーを用
いることが好ましい。
【0015】一方、上記多価イソシアネート類と反応さ
せる多価アミン類としては、分子内に2個以上のアミノ
基を有する化合物であればよく、具体的にはジエチレン
トリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレン
ペンタミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,8
−オクタメチレンジアミン、1,12−ドデカメチレン
ジアミン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジ
アミン、p−フェニレンジアミン、o−キシリレンジア
ミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミ
ン、メンタンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチル
シクロヘキシル)メタン、イソフォロンジアミン、1,
3−ジアミノシクロヘキサン、スピロアセタール系ジア
ミンなどが挙げられ、これらは一種もしくは二種以上併
用して用いることができる。
【0016】また、前記多価イソシアネート類と水との
反応では、まず、多価イソシアネート類の加水分解によ
ってアミンが形成され、このアミンが未反応のイソシア
ネート基と反応(所謂、自己重付加反応)することによ
って、前記構造単位を有するポリウレア系の重合体が形
成されるのである。
【0017】また、本発明において上記壁膜からなるマ
イクロカプセル内に内包させる硬化剤または硬化促進剤
としては、重合体の硬化反応を行うものや、硬化反応を
促進する作用を有するものであれば特に制限はなく、例
えば接着剤や塗料、コーティング剤、封止材などの用途
に用いるものが使用できる。本発明のマイクロカプセル
型硬化剤や硬化促進剤は一液タイプのエポキシ樹脂組成
物において、好適にその効果を発揮することができる。
この場合、マイクロカプセルを調製する際の作業性や得
られるマイクロカプセルの特性の点からは、常温で液状
の硬化剤や硬化促進剤が好ましい。なお、本発明におい
て常温で液状とは、硬化剤や硬化促進剤自体の性状が常
温で液状である場合のほか、常温で固体であっても任意
の有機溶剤などに溶解もしくは分散させて液状にしたも
のも含むものである。
【0018】このような硬化剤としては、例えばメチル
ハイミック酸無水物、フタル酸無水物、ベンゾフェノン
テトラカルボン酸無水物などの酸無水物類、ビスフェノ
ールA,フェノール樹脂などのフェノール類、トリブチ
ルアミンなどの脂肪族三級アミン類、ベンジルジメチル
アミン、2−(ジメチルアミノ)フェノール、2,4,
6−トリス(ジアミノメチル)フェノールなどの芳香族
三級アミン類や脂環族三級アミン類、またはこれらの変
性アミン類、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミ
ダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−
イソプロピルイミダゾール、2−ドデシルイミダゾー
ル、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイ
ミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル
−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メ
チルイミダゾールなどのイミダゾール類、これらのイミ
ダゾール類と酢酸、乳酸、サリチル酸、安息香酸、アジ
ピン酸、フタル酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、ト
リメリット酸などとのイミダゾールカルボン酸塩、三フ
ッ化ホウ素、五フッ化リンなどのルイス酸などを用いる
ことができる。これらのうち加熱時の硬化反応性の点か
らは、三級アミン類やイミダゾール類などの触媒型硬化
剤を用いることが好ましい。また、本発明においてはこ
れらの硬化剤を少量配合しても充分に硬化反応が起きる
ように、通常使用される公知の硬化促進剤を任意量配合
することもできる。
【0019】一方、本発明において用いることができる
硬化促進剤としては、具体的にはエチルグアニジン、ト
リメチルグアニジン、フェニルグアニジン、ジフェニル
グアニジンなどのアルキル置換グアニジン類、3−
(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿
素、3−フェニル−1,1−ジメチル尿素、3−(4−
クロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素などの3−置
換フェニル−1,1−ジメチル尿素類、2−メチルイミ
ダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−ウンデシル
イミダゾリン、2−ヘプタデシルイミダゾリンなどのイ
ミダゾリン類、2−アミノピリジンなどのモノアミノピ
リジン類、N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシ−
3−アリロキシプロピル)アミン−N’−ラクトイミド
などのアミンイミド系類、エチルホスフィン、プロピル
ホスフィン、ブチルホスフィン、フェニルホスフィン、
トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブ
チルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリフェニ
ルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフ
ェニルホスフィン/トリシフェニルボラン錯体、テトラ
フェニルホスホニウムテトラフェニルボレートなどのリ
ン系化合物、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕ウ
ンデセン、7,1,4−ジアザビシクロ〔2,2,2〕
オクタンなどのDBU系化合物などを用いることができ
る。なお、前記硬化剤として例示した化合物も硬化促進
剤として用いることができる。
【0020】また、上記マイクロカプセルの壁膜内に内
包することができる有機溶剤としては、常温で液状であ
れば特に限定されないが、少なくとも壁膜を溶解しない
ものを選定する必要がある。具体的には酢酸エチル、メ
チルエチルケトン、アセトン、塩化メチレン、キシレ
ン、トルエン、テトラヒドロフランなどの有機溶剤の
他、フェニルキシリルエタン、ジアルキルナフタレンな
どのオイル類を用いることができる。
【0021】上記本発明に用いるマイクロカプセル型硬
化剤や硬化促進剤は、従来から公知の方法にて調製する
ことができるが、特に、界面重合法を用いて壁膜を形成
しマイクロカプセル化すると、壁膜の均質化や壁膜厚の
調整の点から好ましい。具体的には、上述した常温で液
状の硬化剤もしくは硬化促進剤を芯物質として、これに
多価イソシアネート類を溶解させる。このようにして得
られた溶液は油状であるので、これを水相中に油相とし
て油滴状に分散させてO/W型(油相/水相型)のエマ
ルジョンを作製する。この時、各油滴の粒径は0.05
〜500μm、好ましくは0.05〜50μm程度とす
ることが、重合中のエマルジョンの安定性の点から好ま
しい。固体状の硬化剤や硬化促進剤を前記有機溶剤に溶
解して芯物質とする場合には、S/O/W型(固相/油
相/水相)タイプのエマルジョンとなる。また、上記エ
マルジョンタイプでは硬化剤や硬化促進剤が親油性の場
合であるが、親水性の場合には上記エマルジョンタイプ
となりがたいが、この場合には溶解度の調整を行ってO
/O型やS/O/O型のエマルジョンタイプとして界面
重合を行えばよい。
【0022】次いで、このエマルジョンの水相に多価ア
ミンを添加、溶解することによって、油相中の多価イソ
シアネートとの間で界面重合させて重付加反応を行い、
前記[化2]にて示される構造単位を有するポリウレア
系の重合体からなるマイクロカプセルの壁膜を形成す
る。他の方法としては、上記エマルジョンを加温するこ
とによって、油相中の多価イソシアネートが水相との界
面で水と反応してアミンを生成し、引続き自己重付加反
応を起こして前記[化2]にて示される構造単位を有す
るポリウレア系の重合体からなるマイクロカプセルの壁
膜を形成する。なお、本発明においては、これらの2つ
の反応は同時に進行させて壁膜を形成してもよいもので
ある。
【0023】上記のような壁膜形成工程では、芯物質が
液状の場合には水相から油相への多価アミンおよび水の
自由拡散や、油相から水相への多価イソシアネートの自
由拡散がスムースに起こるので、緻密で隔離性に優れた
壁膜が形成されるが、芯物質が固体状のものをそのまま
用いると、自由拡散がスムースに行われないので、緻密
な壁膜が得られがたく、また、膜厚の均一性に欠けるよ
うになる。
【0024】このようにして得られたマイクロカプセル
は、ポリウレア系の重合体からなる壁膜内に芯物質とし
ての硬化剤や硬化促進剤を内包してなるものであり、従
来から公知の手段、例えば遠心分離後に乾燥したり、噴
霧乾燥したりする手段によって単離することができる。
この際、必要に応じてマイクロカプセル中の有機溶剤を
減圧乾燥などの手段を併用して除去することもできる。
【0025】以上のようにして得られるマイクロカプセ
ル型硬化剤や硬化促進剤は、壁膜内に内包する硬化剤や
硬化促進剤の量が、全重量の10〜95重量%、好まし
くは30〜80重量%の範囲とする。内包量は10重量
%に満たない場合には、硬化反応の時間が長くなりすぎ
て反応性に乏しくなり、内包量が95重量%を超える場
合には、壁膜の厚みが薄すぎて芯物質の隔離性や機械的
強度に乏しくなる恐れがある。
【0026】また、上記マイクロカプセル型硬化剤や硬
化促進剤の粒径は、特に限定されるものではないが、エ
ポキシ樹脂などへの均一な分散性の点から、通常、0.
05〜500μm、好ましくは0.1〜30μm程度と
する。
【0027】本発明の硬化物を得るための第1のエポキ
シ樹脂組成物は、上記マイクロカプセル型硬化剤を硬化
性の点からエポキシ樹脂100重量部に対して1〜80
重量部、好ましくは5〜50重量部の割合で配合する。
また、第2のエポキシ樹脂組成物は、上記マイクロカプ
セル型硬化促進剤を別途添加する加熱硬化型硬化剤10
0重量部に対して0.1〜30重量部、好ましくは1〜
20重量部の割合で配合する。
【0028】このようなエポキシ樹脂組成物を得るため
に用いるエポキシ樹脂は、液状であっても固形状であっ
てもよく、通常、エポキシ当量が100〜3500程度
のもので、1分子中に平均2個以上のエポキシ基を有す
るものを好ましく用いることができる。具体的にはビス
フェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポ
キシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、環状脂肪
族エポキシ樹脂、ヒダントインエポキシ樹脂、ハイドロ
キノン型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹
脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール
ノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹
脂、トリグリシジルエーテルトリフェニルメタンなどの
グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ヘキサヒドロフタ
ル酸グリシジルエステルなどのグリシジルエステル型エ
ポキシ樹脂、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン
などのグリシジルアミン型エポキシ樹脂、4,4’−ビ
ス(グリシジルオキシ)−3,3’−ジアリルビフェニ
ルなどのビフェニル型エポキシ樹脂、ホルマリン以外の
アルデヒドを用いて縮合反応によって得られるフェノー
ル樹脂をベースとするエポキシ樹脂などが挙げられ、こ
れらを単独もしくは二種以上併用して用いることができ
る。これらのうちマイクロカプセルを形成する壁材の加
熱時における速やかな破壊の点から、ビスフェノールA
型やクレゾールノボラック型、ビフェニル型のエポキシ
樹脂を用いることが好ましい。
【0029】また、前記マイクロカプセル型硬化促進剤
と共にエポキシ樹脂に配合する加熱硬化型硬化剤として
は、一般にエポキシ樹脂の硬化剤として加熱硬化に用い
る硬化剤を使用することができ、具体的にはジシアンジ
アミド系、イミダゾール系、フェノール系、酸無水物
系、酸ヒドラジド系、フッ素化ホウ素化合物系、アミン
イミド系、アミン系などのエポキシ樹脂の硬化剤が挙げ
られ、これらは単独で、もしくは2種類以上を併用して
用いることができる。これらの加熱硬化型硬化剤は前記
エポキシ樹脂100重量部に対して1〜200重量部、
好ましくは5〜100重量部の範囲で添加、混合して用
いる。
【0030】さらに、必要に応じてエポキシ樹脂組成物
に含有させることができる充填剤としては、シリカ、ク
レー、石膏、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、石英粉、
ガラス繊維、カオリン、マイカ、アルミナ、水和アルミ
ナ、水酸化アルミニウム、タルク、ドロマイト、ジルコ
ン、チタン化合物、モリブデン化合物、アンチモン化合
物などが挙げられ、シランカップリング剤や顔料、老化
防止剤、その他任意の添加剤成分も目的や用途に応じて
適宜配合することができる。これらの充填剤はエポキシ
樹脂組成物中、90重量%以下、好ましくは0.1〜8
5重量%の範囲で含有させることができる。また、銅や
亜鉛、ニッケル、カドミウム、ステンレス、アルミニウ
ム、銀などの金属粉末を配合して、本発明の組成物に導
電性を付与することもできる。導電性を付与する場合に
は上記金属粉末をエポキシ樹脂組成物中に25重量%以
上配合することが好ましい。
【0031】上記各成分を含むエポキシ樹脂組成物は、
ロール、ミキサー、ヘンシェルミキサー、ボールミル、
ニーダー、ディスパーなどを用いて、常温下で均一に分
散、混合して得ることができる。
【0032】上記エポキシ樹脂組成物は所定温度以上に
加熱して、マイクロカプセル中の硬化剤や硬化促進剤を
壁膜外へ放出させて、エポキシ樹脂を硬化させて、目的
とする硬化物を得る。本発明の硬化方法におけるこのよ
うな加熱放出現象は、特開平1−242616号公報に
開示されているようなマイクロカプセルの壁膜を通じて
の拡散透過支配のものではなく、物理的な変化によるも
のである。つまり、マイクロカプセルの形状変化や壁膜
成分のエポキシ樹脂への溶解によって、内包する硬化剤
や硬化促進剤が放出されるのである。この場合の壁膜の
溶解は完全溶解と部分的溶解の両方の場合がある。
【0033】本発明の硬化方法では驚くべきことに、壁
膜成分が比較的強固な架橋構造体であっても、上記マイ
クロカプセルの加熱溶解(破壊)現象は80〜150℃
のような非常に低温で且つ瞬時に起こり、壁膜の厚みが
厚くなっても硬化性(マイクロカプセル内からの芯物質
の放出性)が低下しない。このような溶解現象は本発明
のマイクロカプセル型硬化剤や硬化促進剤を、組成物内
に配合せずに単体で90〜200℃程度の温度に加熱し
ても起こらず、また、オイルなどの液状媒体中で加熱し
ても起こらないのである。つまり、本発明のマイクロカ
プセル型硬化剤や硬化促進剤の壁膜を構成する特定構造
の重合体は、エポキシ樹脂組成物と配合することによっ
て上記硬化反応が起こるのである。
【0034】このような本発明の硬化方法における作用
機構は明らかではないが、本発明に用いるマイクロカプ
セルにおける特定構造を有する壁膜の構造単位はエポキ
シ樹脂が共存すると、比較的低温下で解離反応を起こす
ためであると推定される。また、この解離反応を起こす
温度は壁膜を構成する重合体の構造(組成)や、共存さ
せるエポキシ樹脂の種類によって制御することができ
る。壁膜を構成する重合体の構造は、界面重合によって
壁膜を形成する際に用いる多価イソシアネートや多価ア
ミンの種類を変えたり、2種類以上の多価イソシアネー
トを用いることによって変えることができる。なお、こ
こでいうマイクロカプセルにおける壁膜の破壊温度は、
DSC測定によって得られる発熱ピークの立ち上がり温
度によって測定するものである。
【0035】
【発明の効果】以上のように本発明では特定構造を有す
るポリウレア系の重合体からなる壁膜内に硬化剤や硬化
促進剤を内包したマイクロカプセル型の硬化剤や硬化促
進剤を用いているので、貯蔵時の保存安定性が良好であ
るだけでなく、エポキシ樹脂と共に配合しエポキシ樹脂
組成物とした場合に、貯蔵時の保存安定性が良好とな
り、しかも所定温度以上に加熱した際の硬化反応性が良
好であり、内包する硬化剤等が放出する際の壁膜成分は
エポキシ樹脂と共有結合を起こしたりして溶解するの
で、得られた硬化物には壁膜成分が異物(不純物)とし
て含有することがなく、耐熱性や耐水性などの物性に悪
影響を与えることがない。
【0036】従って、本発明のエポキシ樹脂硬化物は、
接着剤や接着シート、成形材料、注型材料、積層板、液
状塗料、粉体塗料、粘接着材など多種の用途に適したも
のである。
【0037】
【実施例】以下、本発明を実施例によって具体的に説明
する。なお、以下、文中で部および%とあるのは重量部
および重量%を意味する。
【0038】実施例1 キシリレンジイソシアネート3モルとトリメチロールプ
ロパン1モルとの付加物10部を、硬化剤としての1−
ベンジル−2−フェニルイミダゾール10部とジイソプ
ロピルナフタレン30部との混合液中に均一に溶解させ
て、油相を調製した。
【0039】蒸留水95部とポリビニルアルコール5部
からなる水相を別途調製し、この中に上記調製した油相
を添加して、ホモミキサーにて乳化しエマルジョン状態
にし、これを還流管、撹拌機、滴下濾斗を備えた重合反
応器に仕込んだ。
【0040】一方、トリエチレンテトラミン3部を含む
水溶液13部を調製し、これを上記重合反応器に備えた
滴下濾斗内に入れ、反応器中のエマルジョンに滴下して
70℃で3時間界面重合を行い、マイクロカプセル型硬
化剤を作製した。
【0041】このようにして得られたマイクロカプセル
型硬化剤は遠心分離にて分別、水洗の操作を繰り返した
のち、乾燥することによって自由流動性を有する粉末状
粒子として単離した。この粒子の平均粒径は5μmであ
った。なお、得られたマイクロカプセル型硬化剤の粒子
構造の走査型電子顕微鏡写真を図1に示す。
【0042】上記のようにして得たマイクロカプセル型
硬化剤12部を、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エ
ポキシ当量約190、重量平均分子量380、25℃で
の粘度125ポイズ)100部に添加し、混合釜にて常
温で1時間混練し、さらに3本ロールミルを通してエポ
キシ樹脂組成物を得た。
【0043】比較例1 実施例1にて得たマイクロカプセル型硬化剤の代わり
に、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールを4部を
配合した以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組
成物を得た。
【0044】比較例2 ポリスチレン樹脂(電気化学社製、商品名デンカスチロ
ール)20部と、硬化剤としての1−ベンジル−2−フ
ェニルイミダゾール10部を、塩化メチレン180部中
に均一に溶解させて、油相を調製した。
【0045】蒸留水950部とポリビニルアルコール5
0部からなる水相を別途調製し、この中に上記調製した
油相を添加して、ホモミキサーにて乳化しエマルジョン
状態にし、これをロータリーエバポレータ中に移して、
有機溶剤である塩化メチレンを留去し、マイクロカプセ
ル型硬化剤を作製した。
【0046】このようにして得られたマイクロカプセル
型硬化剤は遠心分離にて分別、水洗の操作を繰り返した
のち、乾燥することによって自由流動性を有する粉末状
粒子として単離した。この粒子の平均粒径は9μmであ
った。
【0047】上記のようにして得たマイクロカプセル型
硬化剤を用いて、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組
成物を得た。
【0048】比較例3 アクリロニトリル35部、メタクリル酸メチルエステル
13部、ジビニルベンゼン2部からなる単量体混合物
に、ラウロイルパーオキサイド0.2部、硬化剤として
の1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール25部を均
一に溶解させて、油相を調製した。
【0049】蒸留水475部とポリビニルアルコール2
5部からなる水相を別途調製し、この中に上記調製した
油相を添加して、ホモミキサーにて乳化しエマルジョン
状態にし、これを還流管、撹拌機、滴下濾斗を備えた重
合反応器に仕込んだ。
【0050】次いで、反応器内を窒素置換したのち、7
0℃で3時間、in situ 重合を行ってマイクロカプセル
型硬化剤を作製した。
【0051】このようにして得られたマイクロカプセル
型硬化剤は遠心分離にて分別、水洗の操作を繰り返した
のち、乾燥することによって自由流動性を有する粉末状
粒子として単離した。この粒子の平均粒径は8μmであ
った。
【0052】上記のようにして得たマイクロカプセル型
硬化剤を用いて、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組
成物を得た。
【0053】実施例2 実施例1にて用いた1−ベンジル−2−フェニルイミダ
ゾールの代わりに、1−ベンジル−2−メチルイミダゾ
ールを用いた以外は、実施例1と同様にしてマイクロカ
プセル型硬化剤を作製した。このマイクロカプセル型硬
化剤の平均粒径は5μmであった。
【0054】得られたマイクロカプセル型硬化剤を用
い、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を得た。
【0055】比較例4 実施例2にて得たマイクロカプセル型硬化剤の代わり
に、1−ベンジル−2−メチルイミダゾールを4部を配
合した以外は、実施例2と同様にしてエポキシ樹脂組成
物を得た。
【0056】実施例3 トリレンジイソシアネート3モルとトリメチロールプロ
パン1モルとの付加物6.7部を、硬化促進剤としての
トリフェニルホスフィン7.5部とジイソプロピルナフ
タレン12.5部との混合液中に均一に溶解させて、油
相を調製した。
【0057】蒸留水95部とポリビニルアルコール5部
からなる水相を別途調製し、この中に上記調製した油相
を添加して、ホモミキサーにて乳化しエマルジョン状態
にし、これを還流管、撹拌機、滴下濾斗を備えた重合反
応器に仕込んだ。
【0058】一方、トリエチレンテトラミン4.7部を
含む水溶液14.7部を調製し、これを上記重合反応器
に備えた滴下濾斗内に入れ、反応器中のエマルジョンに
滴下して70℃で3時間界面重合を行い、マイクロカプ
セル型硬化促進剤を作製した。
【0059】このようにして得られたマイクロカプセル
型硬化促進剤は遠心分離にて分別、水洗の操作を繰り返
したのち、乾燥することによって自由流動性を有する粉
末状粒子として単離した。この粒子の平均粒径は3μm
であった。なお、得られたマイクロカプセル型硬化促進
剤の粒子構造の走査型電子顕微鏡写真を図2に示す。
【0060】上記のようにして得たマイクロカプセル型
硬化促進剤4.6部を、オルソクレゾールノボラック型
エポキシ樹脂(エポキシ当量約190、軟化点65℃)
100部と、フェノールノボラック樹脂(水酸基当量1
05、軟化点98℃)53部と共に混合し、さらに熱ロ
ールミルを通して溶融混練してエポキシ樹脂組成物を得
た。
【0061】比較例5 実施例3にて得たマイクロカプセル型硬化促進剤の代わ
りに、トリフェニルホスフィン1.5部を配合した以外
は、実施例3と同様にしてエポキシ樹脂組成物を得た。
【0062】実施例4 マイクロカプセルの壁膜材料としてのトリレンジイソシ
アネート3モルとトリメチロールプロパン1モルとの付
加物の代わりに、キシリレンジイソシアネート3モルと
トリメチロールプロパン1モルとの付加物を用いた以外
は、実施例3と同様にしてマイクロカプセル型硬化促進
剤およびエポキシ樹脂組成物を調製した。
【0063】実施例5 マイクロカプセルの壁膜材料としてのトリレンジイソシ
アネート3モルとトリメチロールプロパン1モルとの付
加物の代わりに、キシリレンジイソシアネートの水添化
合物3モルとトリメチロールプロパン1モルとの付加物
を用いた以外は、実施例3と同様にしてマイクロカプセ
ル型硬化促進剤およびエポキシ樹脂組成物を調製した。
【0064】実施例6 マイクロカプセルの壁膜材料としてのトリレンジイソシ
アネート3モルとトリメチロールプロパン1モルとの付
加物の代わりに、トリメチレンテトラフェニルイソシア
ネート5部を用いた以外は、実施例3と同様にしてマイ
クロカプセル型硬化促進剤およびエポキシ樹脂組成物を
調製した。
【0065】実施例7 マイクロカプセルの壁膜材料としてのトリレンジイソシ
アネート3モルとトリメチロールプロパン1モルとの付
加物の代わりに、トリレンジイソシアネート3モルとト
リメチロールプロパン1モルとの付加物3.35部と、
キシリレンジイソシアネート3モルとトリメチロールプ
ロパン1モルとの付加物3.35部との混合物を用いた
以外は、実施例3と同様にしてマイクロカプセル型硬化
促進剤およびエポキシ樹脂組成物を調製した。
【0066】実施例8 マイクロカプセルの壁膜材料としてのトリレンジイソシ
アネート3モルとトリメチロールプロパン1モルとの付
加物の代わりに、トリレンジイソシアネート3モルとト
リメチロールプロパン1モルとの付加物4.69部と、
キシリレンジイソシアネート3モルとトリメチロールプ
ロパン1モルとの付加物2.01部との混合物を用いた
以外は、実施例3と同様にしてマイクロカプセル型硬化
促進剤およびエポキシ樹脂組成物を調製した。
【0067】比較例6 トリフェニルホスフィン20部とジイソプロピルナフタ
レン40部を均一に溶解させて、油相を調製した。
【0068】蒸留水194部とイソブチレン/無水マレ
イン酸共重合体6部からなる水溶液を調製し、これにク
エン酸水溶液を加えてpHを3.6とした水相を別途調
製し、この中に上記調製した油相を添加して、ホモミキ
サーにて乳化しエマルジョン状態にし、これを還流管、
撹拌機、滴下濾斗を備えた重合反応器に仕込んだ。
【0069】次いで、反応器内にメラミン−ホルムアル
デヒド初期縮合物15部を加え、70℃で3時間加熱し
てメチロールメラミンの反応生成物からなる皮膜を油相
の周囲に形成させ、マイクロカプセル型硬化促進剤を作
製した。
【0070】このようにして得られたマイクロカプセル
型硬化促進剤は遠心分離にて分別、水洗の操作を繰り返
したのち、乾燥することによって自由流動性を有する粉
末状粒子として単離した。この粒子の平均粒径は8μm
であった。
【0071】上記のようにして得たマイクロカプセル型
硬化促進剤を用いて、実施例3と同様にしてエポキシ樹
脂組成物を得た。
【0072】実施例9 キシリレンジイソシアネート3モルとトリメチロールプ
ロパン1モルとの付加物6部と、ジイソプロピルナフタ
レン10部からなる混合液に、硬化促進剤としての平均
粒径3μmの3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,
1−ジメチル尿素を均一に溶解させて、油相を調製し
た。
【0073】蒸留水95部とポリビニルアルコール5部
からなる水相を別途調製し、この中に上記調製した油相
を添加して、ホモミキサーにて乳化しエマルジョン状態
にし、これを還流管、撹拌機、滴下濾斗を備えた重合反
応器に仕込んだ。
【0074】一方、トリエチレンテトラミン4.7部を
含む水溶液14.7部を調製し、これを上記重合反応器
に備えた滴下濾斗内に入れ、反応器中のエマルジョンに
滴下して70℃で3時間界面重合を行い、マイクロカプ
セル型硬化促進剤を作製した。
【0075】このようにして得られたマイクロカプセル
型硬化促進剤は遠心分離にて分別、水洗の操作を繰り返
したのち、乾燥することによって自由流動性を有する粉
末状粒子として単離した。この粒子の平均粒径は8μm
であった。
【0076】上記のようにして得たマイクロカプセル型
硬化促進剤5部を、ビスフェノールA型エポキシ樹脂
(エポキシ当量約190、重量平均分子量380、25
℃での粘度125ポイズ)100部と、ジシアンジアミ
ド8部と共に混合釜にて常温で1時間混練し、さらに3
本ロールミルを通してエポキシ樹脂組成物を得た。
【0077】比較例7 実施例9にて得たマイクロカプセル型硬化促進剤の代わ
りに、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジ
メチル尿素を用い、エポキシ樹脂組成物中への配合部数
を1部とした以外は、実施例9と同様にしてエポキシ樹
脂組成物を得た。
【0078】上記各実施例および比較例にて得たエポキ
シ樹脂組成物の各特性を、下記に示す試験方法に従って
測定し、その結果を表1に示した。
【0079】<硬化性>150℃もしくは200℃にお
ける硬化時間を熱板式ゲルタイム測定法によって測定し
た。なお、実施例1、2、9、比較例1〜4、7につい
ては、測定温度を150℃とし、それ以外は200℃で
測定した。
【0080】<貯蔵安定性>各実施例および比較例にて
得たエポキシ樹脂組成物を、40℃の条件下で貯蔵し、
粘度の経日変化もしくはゲルタイムの経日変化を観察
し、初期粘度の3倍以上もしくは初期ゲルタイムの50
%になるまでに要した日数を測定した。なお、実施例
1、2、9、比較例1〜4、7については粘度の経日変
化を、それ以外はゲルタイムの経日変化を調べた。
【0081】<反応開始温度(マイクロカプセルの破壊
温度)>各実施例および比較例にて得たエポキシ樹脂組
成物について、示差熱分析(DSC)計を用いて発熱ピ
ークの立ち上がり始める温度(硬化反応開始温度)を測
定した。図3には実施例3にて得たエポキシ樹脂組成物
についてのDSCサーモグラムを、図4には比較例5に
て得たエポキシ樹脂組成物についてのDSCサーモグラ
ムを示した。
【0082】図3および図4の比較から明らかなよう
に、本発明にて用いるエポキシ樹脂組成物は比較例品と
比べてマイクロカプセルの隔離性が優れるので、カプセ
ルの破壊と同時に急激な硬化反応が生じている。
【0083】<マイクロカプセル型硬化剤の破壊挙動の
観察>エポキシ樹脂組成物を10℃/分の昇温速度条件
下におき、マイクロカプセルの形態変化を光学顕微鏡に
よって観察し、その結果を図5および図6に示した。図
5は実施例1にて得たエポキシ樹脂組成物についての各
温度での顕微鏡写真を、図6には比較例6にて得たエポ
キシ樹脂組成物についての各温度での顕微鏡写真を示
す。
【0084】図5および図6の比較から明らかなよう
に、本発明にて用いるエポキシ樹脂組成物は120〜1
60℃付近でカプセルの変形やエポキシ樹脂への壁膜の
溶解が起こっているが、比較例品では200℃付近でも
カプセル形状に変化が全く起こらず、隔離性と硬化反応
性のバランスが悪いことが判る。
【0085】<エポキシ樹脂硬化物の物性>各実施例お
よび比較例にて得たエポキシ樹脂組成物について、接着
剤としての機能を以下の方法にて測定した。
【0086】JIS−K6854に従い、被着体として
鋼板(SPCC:200×25×0.8t mm)を用
い、接着剤として厚み150μm、引張速度200mm
/秒にてT剥離接着力を測定した。なお、硬化条件は1
50℃×1時間とした。
【0087】本発明品では硬化後に壁膜成分がエポキシ
樹脂と反応するために、接着力に優れ、エポキシ樹脂硬
化物の脆さを改善することができるようになる。
【0088】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1にて得られたマイクロカプセル型硬化
剤の粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真(1000
倍)である。
【図2】実施例3にて得られたマイクロカプセル型硬化
促進剤の粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真(250
0倍)である。
【図3】実施例3にて得られたエポキシ樹脂組成物のD
SCサーモグラムを示す。
【図4】比較例4にて得られたエポキシ樹脂組成物のD
SCサーモグラムを示す。
【図5】実施例1にて得られたエポキシ樹脂組成物を加
熱することによって、マイクロカプセル型硬化剤の粒子
(壁膜)の破壊挙動を示す光学顕微鏡写真である。
【図6】比較例6にて得られたエポキシ樹脂組成物を加
熱することによって、マイクロカプセル型硬化促進剤の
粒子(壁膜)の破壊挙動を示す光学顕微鏡写真である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平8−301978(JP,A) 特開 平2−292325(JP,A) 特開 平7−26153(JP,A) 特開 昭62−67003(JP,A) 特開 昭60−227828(JP,A) 特開 平1−242616(JP,A) 特開 平1−287131(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08G 59/40 - 59/66 B01J 13/02 C08G 18/32

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記一般式[化1]にて示される構造単
    位を有する重合体を主成分とする壁膜内に硬化剤または
    硬化促進剤を内包してなるマイクロカプセル型硬化剤ま
    たはマイクロカプセル型硬化促進剤と、エポキシ樹脂を
    含むエポキシ樹脂組成物を、加熱することによって得ら
    れるエポキシ樹脂硬化物。 【化1】
  2. 【請求項2】 硬化剤または硬化促進剤が、エポキシ樹
    脂用硬化剤またはエポキシ樹脂用硬化促進剤である請求
    項1記載のエポキシ樹脂硬化物。
  3. 【請求項3】 マイクロカプセル型硬化促進剤と共に、
    エポキシ樹脂用硬化剤を含む請求項1記載のエポキシ樹
    脂硬化物。
  4. 【請求項4】 一般式[化1]にて示される構造単位を
    有する重合体を主成分とする壁膜内に硬化剤または硬化
    促進剤を内包してなるマイクロカプセル型硬化剤または
    硬化促進剤と、エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物
    を、所定温度以上に加熱して内包する硬化剤または硬化
    促進剤を壁膜外に放出し、エポキシ樹脂の硬化反応を生
    じせしめると共に、マイクロカプセルの壁膜を硬化物中
    に溶解させることを特徴とするエポキシ樹脂硬化物を得
    るための硬化方法。
  5. 【請求項5】 所定温度が80℃である請求項4記載の
    硬化方法。
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