JP3024896B2 - 貧血改善材 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、貧血改善材に関し、詳
しくは鉄欠乏性貧血の治療、予防の目的で使用される味
が良好で、鉄の吸収性に優れた貧血改善材に関する。

【０００２】

【従来の技術】最近行われた国民栄養調査の結果では、
鉄の摂取量の不足が指摘され、潜在的な貧血患者の増加
が報告されている。しかし、鉄の補給のために、食品に
添加されている塩化鉄やクエン酸鉄などの鉄化合物は極
めて味が悪く、その添加により食品の味が著しく損なわ
れる。また、ヘム鉄については、鉄含量が低いため食品
に大量に添加する必要があり、同様に食品の味が著しく
損なわれる。このため、貧血の症状を改善するのに十分
な量の鉄を補給食品中に含有させることが極めて困難で
ある。また、鉄味の弱いピロリン酸鉄などの溶解性の低
い鉄化合物については、その添加による食品の味への影
響は少ないものの、生体での利用性が低いといった問題
点があり、大きな貧血症状の改善が期待できない。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、鉄の生体で
の利用性に優れ、かつ添加した食品の味を損なうことな
く容易に摂取できるように味が改善された貧血改善材の
開発を目的とするものである。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題を
解決すべく鋭意研究を重ねた結果、鉄味は少ないが生体
での利用性が低い鉄化合物と同時に難消化性オリゴ糖を
摂取させることにより、鉄の生体利用性が著しく向上す
ることを見出し、本発明を完成するに至った。

【０００５】すなわち、本発明はフラクトオリゴ糖およ
び鉄化合物を含有する貧血改善材に関する。

【０００６】本発明に使用されるオリゴ糖は、生体の消
化酵素で消化されない難消化性のオリゴ糖で腸内細菌に
より発酵を受けやすいものが好ましく、特にフラクトオ
リゴ糖が好適である。しかし、イソマルトースの如く消
化を受けやすい少糖は適さない。一方、鉄化合物として
は鉄の燐酸塩などの不溶性の鉄化合物が好ましく、鉄味
の少ないピロリン酸鉄が最も適している。

【０００７】難消化性オリゴ糖と鉄化合物の１日あたり
の摂取量は、目的に応じて適宜決定すればよいが、通常
はオリゴ糖が２０〜３００ｍｇ／ｋｇ体重、好ましくは
２０〜１００ｍｇ／ｋｇ体重であり、鉄化合物は鉄とし
て２０〜４０００μｇ／ｋｇ体重、好ましくは２０〜６
００μｇ／ｋｇ体重である。また、両者の配合割合につ
いては、重量比で一般的に前者：後者＝２００００：１
〜５０：１が適当である。さらに、所望により、常用の
増量剤，賦形剤などを加えることができる。

【０００８】本発明の貧血改善材は、そのまま摂取する
ことができるが、砂糖，香辛料など一般に食品製造に用
いられる食品素材，調味料および食品添加物等と混合し
て摂取してもよい。また、本発明の貧血改善材は、顆粒
剤，カプセル剤，錠剤，粉剤，液剤などあらゆる形態で
摂取することができるが、他の食品に配合して摂取され
てもよいことは言うまでもない。

【０００９】

【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明
するが、これらは本発明を限定するものではない。 実施例１ 生後３週齢のＳＤ系雄ラット（日本クレア）を１群１４
匹使用して、固形飼料（ＭＦ）で３日間予備飼育した
後、鉄欠乏食で３週間飼育して鉄欠乏性貧血ラットを作
製した。鉄欠乏食投与３週後のヘモグロビン値を基準に
１群７匹の２群に分けて、ピロリン酸鉄を鉄として試験
食中１５ｐｐｍとなるように添加したフラクトオリゴ糖
を含有しない試験食（Ｃｏｎｔ．）と本発明の貧血改善
材としてピロリン酸鉄を鉄として試験食中１５ｐｐｍ、
フラクトオリゴ糖（商品名：メイオリゴＰ、オリゴ糖純
度９５％以上、明治製菓（株）製）を試験食中５％とな
るように添加した試験食（Ｆ５）をそれぞれ１４日間与
えた。試験食の組成を表１に示した。

【００１０】

【表１】

【００１１】飼育は、室温２２±２℃、１２時間の明暗
サイクル（８：００〜２０：００）の飼育室で行い、飼
料および飲料水（純水）は自由摂取とした。試験食によ
る飼育開始１０日目より４日間の糞を採取した。糞およ
び飼料中の鉄含量は、灰化後にイオンプラズマ発光分析
装置（ＩＣＰＳ−５０００：島津製作所製）を用いて測
定し、鉄の吸収率を算出した。また、試験終了時に採血
し貧血の指標である血中ヘモグロビン濃度を臨床検査用
測定キット（商品名：ヘモグロビンＢテストワコー、和
光純薬製）で測定した。結果は、表２に示す如く、本発
明の貧血改善材を摂取したＦ５群では、鉄吸収率および
貧血の指標である血中ヘモグロビン濃度は有意に高値を
示し、貧血の改善が早いことが確認された。

【００１２】

【表２】

【００１３】実施例２ 生後３週齢のＳＤ系雄ラット（日本クレア）を１群１４
匹使用して、固形飼料（ＭＦ）で３日間予備飼育した
後、鉄欠乏食で３週間飼育して鉄欠乏性貧血ラットを作
製した。鉄欠乏食投与３週後のヘモグロビン値を基準に
１群７匹の２群に分けて、ピロリン酸鉄を鉄として試験
食中３０ｐｐｍとなるよう添加したフラクトオリゴ糖を
含有しない試験食（Ｃｏｎｔ．）と本発明の貧血改善材
としてピロリン酸鉄を鉄として試験食中３０ｐｐｍ、フ
ラクトオリゴ糖（商品名：メイオリゴＰ、オリゴ糖純度
９５％以上、明治製菓（株）製）を試験食中５％となる
よう添加した試験食（Ｆ５）をそれぞれ１０日間与え
た。試験食の組成を表３に示した。

【００１４】

【表３】

【００１５】飼育は、室温２２±２℃、１２時間の明暗
サイクル（８：００〜２０：００）の飼育室で行い、飼
料および飲料水（純水）は自由摂取とした。試験食によ
る飼育開始３日目より５日間の糞を採取した。糞および
飼料中の鉄含量は、灰化後にイオンプラズマ発光分析装
置（ＩＣＰＳ−５０００：島津製作所製）を用いて測定
し、鉄の吸収率を算出した。また、試験終了時に採血
し、貧血の指標である血中ヘモグロビン濃度を臨床検査
用測定キット（商品名：ヘモグロビンＢテストワコー、
和光純薬製）で測定した。結果は、表４に示す如く、本
発明の貧血改善材を摂取したＦ５群では、鉄吸収率およ
び貧血の指標である血中ヘモグロビン濃度は有意に高値
を示し、貧血の改善が早かった。

【００１６】

【表４】

【００１７】実施例３ この例では、本発明の貧血改善材と他の食品添加物とし
て用いられる各種鉄化合物の味を比較した。味の評価
は、１０名のパネラーが、容易に摂取できる、摂取
が困難および摂取できないの３段階で評価した。評価
に用いた各種サンプルは、サンプル中のフラクトオリゴ
糖が５０％、鉄が１００ｇ当たり１０ｍｇとなるように
混合し、シュークロースで一定量としたものを用いた。
評価結果は、表５に示すごとく、本発明の素材が嗜好性
に著しく優れていることが確認された。

【００１８】

【表５】

【００１９】

【発明の効果】本発明の貧血改善材は、生体における鉄
の利用性に優れ、しかも鉄味が極めて少く、嗜好性に優
れている。したがって、あらゆる食品に添加してもその
食品の味を損なうことなく、貧血症状の改善に役立つこ
とが期待できる。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 足立 堯 埼玉県坂戸市千代田５−３−１ 明治製 菓株式会社 生物科学研究所内 (56)参考文献 特開 昭63−119691（ＪＰ，Ａ) 特開 平５−316997（ＪＰ，Ａ) 特開 平３−67565（ＪＰ，Ａ) 特開 昭51−76436（ＪＰ，Ａ) 特開 平３−120212（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) A61K 33/26 A23L 1/304 A61K 33/42 A61K 47/26 ＣＡ（ＳＴＮ)

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 フラクトオリゴ糖および鉄化合物を含有
   する貧血改善材。
2. 【請求項２】 鉄化合物が、鉄の燐酸塩である請求項１
   記載の貧血改善材。
3. 【請求項３】 鉄化合物が、ピロリン酸鉄である請求項
   １記載の貧血改善材。