JP3021897B2 - 二酸化窒素の過フッ素化炭化水素溶液によるセルロースの酸化方法 - Google Patents

二酸化窒素の過フッ素化炭化水素溶液によるセルロースの酸化方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の分野】本発明は過フッ素化炭化水素中の二酸化
窒素の溶液においてセルロースを酸化させるための方法
に関する。
【0002】
【関連技術の説明】酸化セルロースは多年知られてお
り、そして喫煙製品における煙草の代替物としての用途
を含む様々な用途に関して使用されて来た。体内におい
て可吸収性であると言う事実が酸化セルロースを医療用
の興味ある材科、たとえば縫合糸、止血鉗子および癒着
防止装置の材料とするものである。
【0003】五十年以上に亘り、酸化剤として二酸化窒
素を使用することによってセルロースを酸化し得ること
が知られて来た。酸化セルロースが何等かの明らかに好
ましからざる結果を伴うことなく、ヒトの体液中で可溶
性であり、そして吸収可能であることが発見された後、
酸化セルロースは医療用途に関して関心が持たれて来
た。セルロースの酸化方法および医療用途に関する製品
の使用について初期の仕事はイーストマン・コダックの
W.0.Kenyon他(たとえば、Kenyon他に
対し1947年7月8日に付与された米国特許第2,4
23,707号およびR.H.Hasek他のInd.
&Eng.Chem.、Vol.41、第2頁(194
9年)の「セルロースの酸化」参照)により為された。
これらの初期の酸化方法において、セルロースはガス状
または液状二酸化窒素により、あるいは塩素化炭化水
素、たとえば四塩化炭素中の二酸化窒素溶液によって酸
化された。
【0004】W.H.Ashton他の、1968年1
月16日に特許された米国特許第3,364,200号
は劣化に対して改良された安定性を有する酸化セルロー
スの調製方法を開示している。それらは非水溶媒、たと
えばフレオン113(CClF−CClF)および
フレオン11(CClF)中の二酸化窒素においてセ
ルロースを酸化することを開示している。セルロースの
酸化における二酸化窒素用の溶媒としての塩素化炭化水
素および塩素化フルオロカーボン(CFCs)はまた、
B.G.Yasnitskyの、1982年8月31日
に特許された米国特許第4,347,057号によって
開示された。
【0005】ロシアの文献中に掲載された論文(M.
M.Pavlyuchenko 他の「四酸化窒素によ
るセルロースの相互作用に関する有機溶媒の性質の影
響」、Zh.Prikl.Khim. Vol.48、
No.8、第1822頁(1975年))は四酸化窒素
によるセルロースの酸化について報告した。より具体的
に、著者等はアルカン、ハロゲン化飽和炭化水素、芳香
族化合物、エーテル、複素環式エーテルおよびシクロヘ
キサンを含む溶媒についてのこの酸化に対する影響を研
究した。それらのデータに基づいてセルロースが最高の
速度で酸化される溶媒を選択し得ることを彼等は主張し
た。彼等は過フッ素化炭化水素溶媒を開示しなかった。
【0006】セルロースの酸化に際して二酸化窒素用の
適切な溶媒であることが示されているCFCsはまた、
高所におけるオゾン層の喪失に関連する環境問題を提出
することをも示して来た。CFCsは冷媒、エーロゾル
推進薬および発泡剤ならびに溶媒として広範な用途が達
成された故で、数多くの研究は環境に対する有害な影響
を有していない代替的材料を見出だそうと努めて来た。
【0007】1985年にはランド・コーポレーション
の科学者達が、溶媒としてCFCs、特にCFC−11
3を、そして具体的には排出用途において置き換えるた
めの努力について報告した。P.Morrisonおよ
びK.Wolfの「置換分析(Substitutio
n Analysis):溶媒のケーススタディ」、
J.of Haz,Hat.、Vol.10、第189
【0008】(1985年)。彼等は何等の理想的代替
物も見出だせず、そして純粋なCFC−113の最も有
効な置換物はCFC−113と他の溶媒との単純な組合
わせであった。L.E.Manzerによる批評論文
(「CFC−オゾン号:CFCsに対する代替物の開発
に関する進歩」Science、 Vol.249、第
31頁(1990年)において、CFC−113は溶剤
として説明されており、これに関して「多くの研究が、
受容可能な単一置換物の同定に関心を寄せて来たが、大
きな成功を伴うものではなかった」と述べられている、
第33頁。開示された代替物はCFC−113と2種類
の「候補」ヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC
s)とのブレンド/共沸混合物である。
【0009】クロロフルオロカーボンによるオゾンの喪
失に関する一般的な論文は日本の文献−K.Fujie
の「クロロフルオロカーボンによるオゾン層の喪失およ
びそれらの置換についての開発」、化学工学Vol.5
3、No.9、第62頁(1989年)中に見られた。
フルオロカーボン(FCs)、ヒドロフルオロカーボン
(HFCs)および(HCFCs)がCFCsの使用可
能な置換物として述べられている。CFC−12の代替
物としてのHFC−134aならびにCFC−11およ
びCFC−12の代替物としてHCFC−123の使用
が開示されているが、CFCsの代替物としてFCsか
ら調製される何等の均等物も開示されていない。
【0010】
【発明の概要】本発明によれば、セルロースを酸化する
方法はそのセルロースを有効量のパーフルオロカーボン
溶媒中の二酸化窒素溶液と反応させる工程を含んで構成
される。
【0011】この方法は環境的に望ましくない溶媒、た
とえばCFCsの使用を回避し、そしてそれらの代わり
にパーフルオロカーボン(PFCs)を用いるものであ
り、それらは無臭かつ難燃性であり、また低い毒性を有
し、更に水溶性である。それに加えてPFCsはセルロ
ースの一層速い酸化をもたらし、残存二酸化窒素を安全
に中和することを許容する。本明細書および特許請求の
範囲において、「二酸化窒素」はNOおよび二量体N
の双方を包含するものと理解されることに注目さ
れたい。
【0012】
【発明の具体的な説明】CFCsは大気のオゾン層に対
し重大な危険を呈することが一層明白となるにつれて、
それらの数多くの用途においてこれらの物質を置き換え
るという動機が一層強くなる。フレオン113(CCl
F−CClF)はCFCであって、セルロースの酸
化に際して二酸化窒素用の溶媒としての利用を含む溶剤
として広範囲に及ぶ使用が判明している。本発明はフレ
オン113(および代替溶媒、たとえば四塩化炭素)を
セルロースの酸化方法においてPFCsによって置換す
るものである。
【0013】PFCを使用するセルロースの酸化方法
は、二酸化窒素溶媒としてのPFCの置き換え工程以外
は以前利用されていた方法と略同一である。この初期の
方法はここに参考として引用するものとし、かつ以下に
おいて要約する米国特許第3,364,200号中に可
成り詳細に説明されていた。
【0014】セルロースはこの方法の出発原料であり、
そしてこの用語は本明細書および特許請求の範囲におい
て天然に生成されるセルロース物質および再生セルロー
スの両者を包含するものとする。適切なセルロース物質
には綿、澱粉、木材チップ、木材パルプ、セルロースフ
ィルム、メチルセルロース等がある。数多くの医療用途
に関して、再生セルロース(すなわち、レーヨン)が好
ましい。それは均一な化学的および物理的性質を有して
いるからである。セルロースは無水グルコース(anh
ydroglucose)ユニットから構成されるポリ
マーを含んで成る。セルロースが酸化されるとき、無水
グルコースユニットのNo.6炭素原子上のアルコール
基はカルボキシル基に酸化される。セルロース分子の各
無水グルコースユニット上のNo.6炭素原子が酸化さ
れたとすれば、カルボキシル含量は約25 1/2重量
%となるであろう。以下において論述する理由によっ
て、そのように完全な酸化は一般的に望ましくない。
【0015】酸化は、先ずセルロース−繊維、織物、ガ
ーゼ等を反応容器内に導入することによって行われる。
このセルロースは細長い、多孔コアに取り付け、かつ緩
やかに巻き付ける。溶媒を容器内に導入し、そしてセル
ロースを介して循環させる。その後、二酸化窒素を適量
をもって添加する。このセルロースは数時間乃至約24
時間までの期間に亘り溶液中に浸漬した儘とするが、こ
の間にセルロースは酸化されることになる。この期間は
酸化の所望程度によって決定される。次いで、液体を容
器から除去し、そして酸化セルロースを洗浄し、かつ乾
燥する。もし、それを医療用途に予定しているのなら、
その材料を滅菌し、通常その後切断して寸法を整え、そ
して包装する。
【0016】セルロースの酸化に関する或る種の有機溶
媒の影響が研究され、そして先に参照したロシアの文献
(M,M,Pavlyuchenko他)中に報告され
た。その文献において、著者等はセルロースの酸化速度
は溶媒の性質によって決まることを結論づけていた。二
酸化窒素有機溶媒系におけるセルロース酸化の異なった
度合いは以下に帰することが出来る。 1.溶媒と二酸化窒素との相互作用、そしてこれはオキ
シダントの活性化(すなわち、飽和炭化水素による)を
導くか、あるいは溶媒(ジオキサン)との組合わせを導
くものである。 2.溶媒とセルロースとの相互作用、そしてこれはポリ
マー内への遊離および結合オキシダントの拡散に影響を
及ぼすものである。 これらの著者は非極性溶媒、たとえばシクロヘキサンに
よるオキシダントの活性化はN←→2NOの解
離度における増大に左右されることを見出だした。飽和
およびハロゲン化炭化水素中の二酸化窒素の溶液に関す
る分光学データと対応する溶媒におけるセルロースの酸
化度合いとの比較は、その溶媒中の二酸化窒素濃度の増
加がセルロースの酸化度合いの増加を伴うことを示して
いる。これら著者はセルロースを酸化するのは二酸化窒
素(NO)であると考えている。溶液中のN
→2NOの解離度は溶媒の性質、すなわち誘電率およ
びその双極子モーメントに左右される。二酸化窒素の量
およびセルロース酸化の程度は不活性溶媒の誘電率およ
び双極子モーメントが増加すると、減少する。
【0017】著者等はまた、Nにより様々な安定
性を有する、有機溶媒によるπ錯体の生成ならびにセル
ロースによる純有機溶媒の収着度における相違は一連の
芳香族化合物におけるセルロースの酸化の間に得られる
結果の故である可能性があると考えている。溶媒分子に
よる二酸化窒素の結合ならびに溶媒によるセルロースの
反応中心の溶媒和の故でセルロースはエーテルおよびジ
オキサン中では酸化されない。溶媒分子によるこれら中
心の部分溶媒和はまた、多分溶媒の不存在における酸化
との比較において芳香族およびハロゲン化炭化水素双方
中の一層低い酸化度が原因であろう。彼等が検討した溶
煤中にPFCsは存在しなかった。
【0018】PFCsは完全にフッ素化された有機化合
物のファミリーを生成するが、これらは性質のユニーク
な組合わせを有している。それらは全ての炭素−結合し
た水素原子をフッ素原子で置換することにより共通の有
機化合物から誘導される。これら生成物の一つの製造方
法は電気化学的フッ素化である。この方法において、有
機化合物は液体フッ化水素中で電気分解される。オクタ
ンの電気化学的フッ素化を示す以下の反応が典型的であ
る。
【0019】CH(CHCH+18HF+e
→CF(CFCF+18Hフッ素化は完
全なので、その生成物は水素または塩素を全く含まな
い。このことがPFCsを相対的に非毒性かつ難燃性と
し、そしてそれらに対し脱脂溶剤、冷媒およびエーロゾ
ル推進薬として通常用いられる炭化水素およびCFCs
とは全く異なる性質を付与するものである。
【0020】PFCsはそれらをセルロース酸化用溶媒
として適当なものとする数多くの性質を有している。そ
れらは二酸化窒素またはセルロースと化学的に反応する
ものではない。それらの低い双極子モーメントと誘電率
との組合わせであって、二酸化窒素とのそれらの相互反
応を減少させることにおいて、これが酸化を非常に効率
よく進行させる。それはあたかも気相におけるようであ
る。同時にそれらは反応を冷却するための放熱子を提供
する。それらは水に不溶であり、このことが酸化された
セルロースを都合良く水洗可能とするものである。それ
らは低い毒性を有し、かつ難燃性であって、安全性およ
び環境上の懸念を減少させる。それらはまた、無色かつ
無臭であって、高い熱安定性を有している。更に、それ
らはその高分子量に関して低い気化熱、高い密度、低い
粘度、低い表面張力、そして低い沸点を有している。3
Mインダストリアル・ケミカル・プロダクツ・ディヴィ
ジョンは「Fluorinert」商標の下に各種のP
FCsを販売している。
【0021】セルロースの酸化用溶媒として使用するた
めに特定のPFCを選択するに際して、キー・ファクタ
ーは沸点である。過度の蒸発を回避するために、その沸
点は約30℃以上であるべきだが、高沸点を有する溶媒
は酸化されたセルロースから除去するのが一層困難とな
る。そのような訳で、約30℃乃至約100℃の範囲内
に沸点を有する溶媒が好ましく、45℃乃至85℃の範
囲が一層好ましい。特に適切なものは市販のPFCs、
たとえばFC−72[CF(CFCF]およ
びFC−84[CF(CFCF]であって、
両者共3Mから入手可能なもの、試験的PFC、KCD
−9445(C12)であって、デュポンから得ら
れるもの、およびこれらの2種類以上の混合物である。
PFCsの混合物は時にはより安価となる。それは製造
業者が純粋な物質を分離しなくてもよいからである。た
とえば、SF−2(3M)はFC−72、FC−84お
よび高沸点PFC′sの混合物である。
【0022】フレオン113を置換するための最初の衝
動はその環境問題を回避することであったが、PFCs
は付加的な操作上の利点を提供するものである。与えら
れた酸化レベルを達成するために、PFCsは減少させ
た二酸化窒素濃度、より低い温度およびより短い反応時
間を許容するものである。図1はフレオン113および
FC−84を用い、各ケース共温度25℃および37
℃、7%二酸化窒素濃度および反応時間7時間をもって
行ったレーヨン酸化の結果を比較するものである。
【0023】先に論述したように、セルロースの100
%酸化はカルボン酸含量25.5%に相当する。実用
上、好ましい酸化度は材料について意図される用途に左
右される。医療用途に関して、その材料は可バイオ吸収
性であるべきであり、これは少なくとも約10%のカル
ボン酸含量を必要とするものであり、このポイントにお
ける酸化は約40%完了の状態である。縫合糸に関して
は、低酸化レベルが望ましく、それによってバイオ吸収
が何週間にも亘って緩やかに起こり、この期間中その縫
合糸は機能する。その材料が止血用に使用される場合は
迅速な吸収が望ましく、カルボキシル含量18〜21%
が好ましい。
【0024】所望の酸化を達成することは、溶媒中の二
酸化窒素濃度、温度および反応時間の間での相互作用を
包含するものである。もし、二酸化窒素濃度が余り低い
と、酸化は緩慢となり、そして所望の酸化レベルには一
日以上の時間を要することになる。濃度が高すぎると、
その反応は大量の熱を発生し、そして制御することが困
難になる。更に、二酸化窒素がその材料を損傷する可能
性がある。2〜12重量%の二酸化窒素濃度の範囲が一
般に好ましく、5〜10%が一層好ましい。通常、好ま
しい二酸化窒素濃度はセルロース:二酸化窒素比約1を
もたらす。
【0025】反応は大気圧において行うことが出来る
が、好ましいのはその反応を閉塞容器内で行うことであ
り、これは反応中に発生した熱および蒸気の故で圧力上
昇を伴うものだからである。
【0026】より高い温度で反応を行わせることは一層
速い作業をもたらすものであるが、その温度が高過ぎる
とき、特に二酸化窒素濃度が高過ぎるときは得られた材
料の品質が損なわれる(すなわち、それは硬くなり、そ
して柔軟性が乏しくなる)。酸化は周囲(25℃)乃
至60℃の温度において行うのが好ましく、35°乃至
50℃の範囲が一層好ましい。
【0027】好ましい二酸化窒素濃度および温度をもっ
て、所望レベルの酸化を達成するためには反応時間は少
なくとも約7時間である。
【0028】30℃および40℃における時間の関数と
して二酸化窒素の5%溶液を使用する酸化を図2中に示
す。本発明を以下の実施例中で更に説明する。
【0029】
【実施例1】圧力反応器におけるSF−2溶媒中のOR
Cの調製 圧力容器(Parr反応器)内にレーヨンクロス16,
18gを配置し、そのクロスを覆ってテフロンスクリー
ンを置くことによりそれが舞い上がったり、また反応器
の攪拌羽根に絡まるのを阻止し、そしてSF−2溶媒3
23.6gを添加した。SF−2は3Mカンパニーから
入手可能なパーフルオロカーボン混合物である。この混
合物は無色、透明かつ無臭の液体で、沸点範囲70℃乃
至90℃、そして比重1.7を有するものである。この
溶媒は二酸化窒素に対し非常に不活性である。反応器を
3分間窒素ガスでパージして空気と入れ替え、10℃に
冷却した二酸化窒素液体12.13gを添加し、そして
その頂部を圧力容器に対しボルト留めした。溶媒:クロ
ス:Nの比は20:1:0.75であった。オー
バーヘッド攪拌機をスタートさせ、そして反応器を38
℃に加熱した。圧力が最高66psiに上昇するけれど
も、温度は17時間一定に保持した。次いで、反応器を
室温に冷却し、圧力をアルカリトラップ内に逃がして溶
媒中のあらゆる酸化窒素ガスを中和させ、そして圧力容
器頂部のボルトを外した。このクロスを取り出し、20
0mlの新しいSF−2中に配置し、そして10分間緩
慢に攪拌した。新しいSF−2をもって2回目の洗浄を
反復した後、クロスを50:50v/vイソプロピルア
ルコール:水混合物200ml中に配置し、そして10
分間緩慢に攪拌した。このアルコール−水洗浄を合計5
回反復した。次に、このクロスを100%イソプロピル
アルコール200ml中に配置し、そして10分間緩や
かに攪拌して水を除去する。この100%アルコール洗
浄を合計3回反復した後、クロスを取り出し、そしてそ
れを風乾させた。この乾燥クロスを重量約1g/枚の片
に切断し、そして更にオーブン中で70℃において1時
間に亘り乾燥した。この乾燥クロスを秤量し、次いで
0.5N水酸化ナトリウム10ml中に溶解し、そして
蒸留水100mlで希釈した。この溶液をフェノールフ
タレイン終点に対し標準0.1N HClをもって滴定
した。ブランクもまた、クロスを添加せずに水酸化ナト
リウムのみを用いて行った。水酸化ナトリウム溶液の逆
滴定から計算されたクロスのカルボン酸含量は22.1
%であった。
【0030】
【実施例2】加圧下のFC−84パーフルオロカーボン
中のレーヨンの酸化 圧力容器内にレーヨンクロス15.98gを配置し、そ
のクロスをテフロンスクリーンで覆い、そして他の3M
パーフルオロカーボンであるFC−84溶媒319.6
gを添加した。この十分にフッ素化された炭化水素は無
色、無臭の液体で、沸点80℃および比重1.73を有
するものであり、そしてこれは二酸化窒素に対し非常に
不活性である。この反応器を窒素ガスで3分間パージし
て空気を除去し、10℃に過冷却した二酸化窒素23.
97gを添加し、そしてその頂部を圧力容器に固定し
た。二酸化窒素の濃度は7%であり、そして溶媒:クロ
ス:Nの比率は20:1:1.5であった。この
溶液をオーバーヘッド攪拌機をもって攪拌し、そして2
5℃に加熱し、圧力が最高10.0psiに上昇するけ
れどもこの温度に7時間保持した。
【0031】次いで、反応器をガス抜きし、そして室温
に冷却した。クロスを取り出し、そしてそれを50:5
0イソプロピルアルコール:水(v/v)200mlに
おいて5回、更に100%イソプロピルアルコール20
0mlにおいて3回洗浄した。風乾の後、このクロスか
ら約1g/枚の2片を切断し、そしてそれらを更に、オ
ーブン内で70℃において1時間に亘り乾燥した。次
に、乾燥クロスの各片を秤量し、そしてそれらを0.5
N水酸化ナトリウム中に溶解した。この水酸化ナトリウ
ムを0.1N HClで逆滴定して、このクロスのカル
ボン酸含量が11.3%であることを計算した。
【0032】
【笑施例3】フレオン113中のレーヨンの酸化(比較
試験) 溶媒としてフレオン113を用い、溶媒:クロス:N
の同一比率ならびに同一の反応温度および時間をも
って実施例2を反復した。溶媒としてフレオン113に
より、発現した最高圧力は僅かに3.5psiであり、
そして生成されたクロスはカルボン酸含量4.1%を有
していた。このことはFC−84がフレオン113より
速い酸化をもたらすことを示している。
【0033】
【実施例4】加圧下のFC−72パーフルオロカーボン
中のレーヨンの酸化 圧力容器内にレーヨンクロス16.64gを配置し、こ
のクロスをテフロンスクリーンで覆い、そしてFC−7
2溶媒332.8gを添加した。窒素ガスで3分間フラ
ッシングした後、10℃に冷却した二酸化窒素17.5
2gを添加し、そして圧力容器の頂部を取り付けた。N
の濃度は5.0%であり、そして溶媒:クロス:
の比率は20:1:1.05であった。攪拌機
を作動させて、温度を30℃とし、そして圧力は最高1
8.7psiに上昇するけれども反応を7時間に亘り行
わせた。次いで、反応器を室温に冷却し、そしてガス抜
きした。このクロスを取り出し、そして50:50イソ
プロピルアルコール:水(v/v)200mlにおいて
洗浄した。この洗浄を合計3回反復し、次いでこのクロ
スを100%イソプロピルアルコール200mlにおい
て2回洗浄し、そして風乾した。このクロスを滴定し、
そしてそれがカルボン酸含量12.2%を有することが
判明した。
【0034】
【実施例5】大気圧におけるFluorinertFC
−72中のレーヨンの酸化 低温のコンデンサーを備えた50ml容量の丸底フラス
コ内にレーヨンのメリヤス生地1.26gを配置した。
氷浴中で冷却したFC−72溶媒15.12g内に二酸
化窒素液体3.78gを溶解した。この二酸化窒素溶液
をレーヨン生地に添加し、そしてフラスコを25℃で2
2時間保持した。FC−72中の窒素の濃度は20%で
あった。この反応から泡が上昇するのが認められ、そし
て二酸化窒素の褐色のヒュームがフラスコ内の溶液の上
方に現れた。22時間の最後において、溶媒が再使用で
きるようにこの溶液を希水酸化ナトリウム水溶液に添加
して、過剰の二酸化窒素を中和した。クロスをフラスコ
から取り出し、そして50:50イソプロピルアルコー
ル:水(v:v)溶液50mlを添加し、更に10分間
攪拌する。このクロスを取り出し、そして新しい50:
50溶媒において10分間に亘り2回洗浄した。これを
合計5回反復した。次いで、クロスを100%イソプロ
ピルアルコール50ml中で10分間洗浄し、そして風
乾させた。この乾燥クロスをオーブン内に70℃で1時
間置いてそれを完全に乾燥させ、次いで秤量し、更に5
N水酸化ナトリウム10ml中に溶解した。この溶液を
標準0.1N HClで滴定し、そしてこのクロスがカ
ルボン酸含量1/.6重量%を有することが判明した。
【0035】
【実施例6】二酸化窒素によるFluorinertF
C−84中のレーヨンの酸化 装置は実施例5におけるものと同一であった。丸底フラ
スコ内のレーヨンのメリヤス生地0.87gおよび予め
その中に二酸化窒素2.61gを溶解したFluori
nertFC=84 10.44gを配置した。溶媒中
の二酸化窒素の濃度は20%であった。低温のコンデン
サーを丸底フラスコの頂部に取り付け、そしてフラスコ
を25℃の水溶中に浸漬し、そこで22時間保持し、そ
の後クロスを取り出し、そして実施例5におけるように
洗浄した。このクロスをオーブン中70℃で1時間乾燥
し、次いでカルボン酸含量について滴定した。このクロ
スはカルボン酸含量20.5%を有することが判明し
た。
【0036】この発明の具体的な実施態様は次のとおり
である。
【0037】1)溶媒が約30℃乃至約100℃の範囲
内の沸点を有することを特徴とする請求項1の方法
【0038】2)溶媒が約45℃乃至約85℃の範囲内
の沸点を有することを特徴とする上記実施態様第1項の
方法。
【0039】3)溶媒がFC−72、FC−84、KC
D−9445およびそれらの混合物から成る群から選択
されることを特徴とする請求項1の方法。
【0040】4)溶液中の二酸化窒素濃度が約2重量%
乃至約12重量%の範囲内にあることを特徴とする請求
項1の方法。
【0041】5)溶液中の二酸化窒素濃度が約5−10
%であることを特徴とする上記実施態様第4項の方法。
【0042】6)反応体がその反応の間約25℃乃至約
60℃の範囲内の温度に維持されることを特徴とする請
求項1の方法。
【0043】7)反応体がその反応の間約35℃乃至約
50℃の範囲内の温度に維持されることを特徴とする上
記実施態様第6項の方法。
【0044】8)反応が少なくとも約7時間に亘り継続
されることを特徴とする請求頂1の方法。
【0045】9)反応を、酸化が少なくとも約40%完
了するまで継続することを特徴とする請求項1の方法。
【0046】10)請求項1の方法により酸化されたこ
とを特徴とする酸化セルロース材料。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の溶媒を使用することにより達成された
結果と従来技術の溶媒による結果とを比較するグラフで
ある。
【図2】2種類の異なった温度における本方法によるレ
ーヨンの酸化を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 ロウエル・セイファースタイン アメリカ合衆国、08820 ニュージャー ジー州、エディソン、ティンバー・ドラ イブ 3 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08B 15/04

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 セルロースを有効量の、パーフルオロカ
    ーボン溶媒中の二酸化窒素溶液と反応させる工程を含ん
    で成ることを特徴とするセルロースの酸化方法。
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