JP3014644B2 - 銅材料の酸化処理方法及びその設備 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、銅材料表面に酸化
皮膜を迅速且つ均一に形成できる酸化処理方法及びその
設備に関する。

【０００２】

【従来の技術】交流通電に用いる電力ケーブル用銅撚線
等は、構成素線の表面に 0.2μｍ〜５μｍの厚さの酸化
皮膜を均一に形成することにより各素線間を絶縁して分
流安定性を高めている。ここで分流とは、電流が撚線表
面に偏って流れずに撚線の内層にも均一に流れることを
言う。前記の銅撚線等の素線表面を酸化させるには、
水酸化ナトリウム水溶液（電解液）を用いて陽極酸化す
る方法、酸化剤を含む溶液に浸漬し化学的に酸化させ
る方法、アンモニアガスや硫化水素ガス等の酸化性ガ
ス雰囲気に保持し気相反応により酸化させる方法が採用
されている。しかし、銅撚線を酸化させる場合、前記
の方法では、銅撚線の内層までを酸化させることがで
きない為、銅単線を酸化処理しこれを撚合わせている。
従って生産性に劣るという問題がある。の方法は、気
相反応なので撚線のまま処理しても、撚線の内層まで酸
化させることができ生産性に優れる。前記の方法を実
施する酸化処理設備は、被処理材を加熱し酸化させる為
のステンレス製反応室、酸化性ガス発生機、酸化性ガス
発生機と反応室とを繋ぐパイプ、酸化性ガス循環用エア
ポンプ、被処理材の予熱室、使用後のアンモニアガスを
中和する中和槽等から構成されている。しかし、この設
備は、アンモニアガスが腐食性の為、循環用エアポンプ
等がすぐに腐食し実用性に欠ける。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】そこで、予め反応室内
に、例えばアンモニア水を入れておき、反応室内を加熱
して、前記アンモニア水を蒸発させて酸化処理を行う方
法が提案された。しかし、この方法では、所定厚さの酸
化皮膜を安定して形成できなかった。そこで、本発明者
等は鋭意研究を行い、その原因がアンモニアガス（蒸
気）が反応室内面に結露して、反応室内のアンモニアガ
ス濃度が低下する為であることを突き止め、更に研究を
進めて本発明を完成させるに至った。本発明は、少なく
とも表面が銅からなる銅材料の表面に酸化皮膜を迅速且
つ均一に形成する方法及びその設備の提供を目的とす
る。

【０００４】

【課題を解決するための手段】請求項１記載の発明は、
少なくとも表面が銅からなる銅材料を酸化性ガス雰囲気
の反応室内で酸化させる方法において、前記反応室を外
側と内側から加熱して前記反応室内面を酸化性ガスの露
点以上の温度に保持することを特徴とする銅材料の酸化
処理方法である。

【０００５】請求項２記載の発明は、少なくとも表面が
銅からなる銅材料を酸化性ガス雰囲気の反応室内で酸化
させる設備において、反応室内部に発熱体が配され、か
つ、前記反応室の外側に前記反応室の内面を前記酸化性
ガスの露点以上の温度に加熱する発熱体が配されている
ことを特徴とする銅材料の酸化処理設備である。

【０００６】

【発明の実施の形態】本発明は、少なくとも表面が銅か
らなる銅材料（以下銅材料と略記する。）を酸化性ガス
雰囲気の反応室内に入れ加熱して、前記銅材料の表面を
酸化処理する際に、反応室を外側からも加熱して反応室
内面に前記酸化性ガスが結露するのを抑制し、以て反応
室内の酸化性ガスを高濃度に保持して、銅材料の表面に
酸化皮膜を迅速且つ均一に形成する方法及びその設備で
ある。この発明において、銅材料とは電力ケーブル用銅
撚線、銅ブスバー、銅単線、銅被覆複合撚線等少なくと
も表面が銅または銅合金からなる任意の材料である。ま
た酸化性ガスとはアンモニアガスや硫化水素ガス等であ
る。反応室の材料にはＳＵＳ等の耐食性に優れる任意の
金属材料が用いられる。反応室の外側を加熱するには、
抵抗加熱、誘導加熱、温水パイプ加熱、ガス燃焼加熱等
の通常の加熱方法が用いられる。

【０００７】以下にこの発明の設備を図を参照して具体
的に説明する。図１は本発明設備の実施の形態を示す説
明図である。この設備は、内部をドア10で予熱室11と反
応室12とに仕切ったステンレス製円筒体13と、前記反応
室12を外側から加熱する恒温槽20からなる。予熱室11と
反応室12には室内加熱用の温水パイプ30と室内攪拌用の
ファン（図示せず）とがそれぞれ設けられている。前記
ドア10はスライドして開閉する（ドアを引込む戸袋は図
示せず）。ドア10と反応室12との間はゴムパッキン（図
示せず）でシールされている。反応室12の床には凹み14
が設けられ、この凹み14の中にアンモニア水40を入れ
る。図１で60は銅撚線等を巻付けるドラムで、このドラ
ムには予熱室11と反応室12間を容易に移動できるよう車
輪15が取付けてある。

【０００８】次に前記設備を用いて銅撚線を酸化させる
方法を説明する。恒温槽20、予熱室11、及び反応室12を
所定温度に加熱する。ドラムに巻取った銅撚線を予熱室
11で予熱し、予熱後ドア10を開けて反応室12に移動さ
せ、その後ドア10を閉めてドラムに巻取った銅撚線を酸
化処理する。反応室12の内面16は恒温槽20によりアンモ
ニア蒸気の露点以上の温度に加熱されているので、アン
モニア蒸気は結露せずに反応室12内に高濃度（高湿度）
に保持される。従って銅撚線は内層まで迅速且つ均一に
酸化される。なお、銅撚線を予熱する理由は、予熱して
おかないと冷えた銅撚線上にアンモニア蒸気が結露して
酸化皮膜が不均一に形成される場合があるためである。

【０００９】図２は本発明設備の他の実施の形態を示す
説明図である。この設備は反応室12の外側に抵抗発熱体
50を巻付けたもので、恒温槽を用いたものに較べて設備
がコンパクトである。

【００１０】前記ドラムには、図３に示すように、複数
のステンレス製シャフト61を、その長さ方向に見て同心
円状になるように配置し、両端を円板62で固定したもの
を用いるのが良い。このドラム60に銅撚線70を巻付ける
には、例えば、内側のシャフト上を左端から右端へ間隔
を開けて巻付け、次に中間のシャフト上を右端から左端
へ間隔を開けて巻付け、次に外側のシャフト上を間隔を
開けて巻付ける。このように巻付けることにより銅撚線
70はお互いに重なり合うことがなく、全長に渡り同じ酸
化雰囲気に曝され、酸化皮膜が迅速且つ均一に形成され
る。反応室内をファンにより攪拌することにより、酸化
皮膜は更に迅速且つ均一に形成される。

【００１１】

【実施例】以下に本発明を実施例により詳細に説明す
る。無酸素銅撚線(0.8mmφの素線を３本撚合わせ、この
撚線を３本撚合わせ、このように３本ずつ合計５回撚合
わせた撚線）を図３に示した巻取ドラムに間隔をあけて
巻付け、これを図１に示した処理設備を用いて各24時間
ずつ酸化処理した。ステンレス製円筒体の寸法は外径10
50mm, 内径1000mm, 長さ1800mmである。反応室内の凹部
には濃度５％のアンモニア水を５リットル入れた。反応室内
の温水チューブには外径20mm、内径15mmの銅製パイプに
ステンレス製フィンを取付けたものを用いた。恒温槽内
は反応室内と同じ温度に保持した。酸化処理中反応室内
はファンで攪拌した。アンモニア水の蒸気は反応室内面
に結露することなく、反応室内に飽和した。

【００１２】比較の為、反応室を外側から加熱しない場
合についても、同様の酸化処理を行った。

【００１３】酸化処理後の各撚線の最外層と最内層から
各々20本のサンプルを切出し、酸化皮膜の厚さを測定し
た。結果を表１に示す。

【００１４】

【表１】

【００１５】表１より明かなように、本発明例では酸化
皮膜が厚く且つ均一に形成された。これは反応室を外側
からも加熱して反応室内面をアンモニアガスの露点以上
の温度に保持した為、反応室内のアンモニアガス蒸気が
高濃度（高湿度）に保たれた為である。これに対し、比
較例では酸化皮膜が薄く、しかも厚さが不均一であっ
た。これは反応室を外側から加熱しなかった為、反応室
内面の温度が低くなり、そこにアンモニア蒸気が結露し
て反応室内のアンモニア蒸気の濃度（湿度）が低下した
為である。

【００１６】以上、銅材料に無酸素銅撚線を用い、反応
室の外側からの加熱を恒温槽に入れて行い、また酸化性
ガスにアンモニア蒸気を用いた場合について説明した
が、本発明は銅材料に銅被覆複合撚線を用いても、反応
室の外側加熱を反応室の外側にニクロム線等の発熱体を
巻付けて行っても、また酸化性ガスに硫化水素ガス等の
他の酸化性ガスを用いても、同様の効果が得られるもの
である。

【００１７】

【発明の効果】以上に述べたように、本発明方法によれ
ば反応室内の酸化性ガスが高濃度に保持されるので、銅
撚線や銅被覆複合撚線等の場合でも内層まで迅速且つ均
一に酸化され、分流安定性に優れた銅材料が容易に得ら
れる。また、この方法は反応室の外側に発熱体を配置し
た設備を用いて容易に行える。依って工業上顕著な効果
を奏する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の酸化処理設備の第１の実施の形態を示
す (イ)縦断面図、及び(ロ) 図１(イ) のａ−ａ矢視断面図
である。

【図２】本発明の酸化処理設備の第２の実施の形態を示
す縦断面図である。

【図３】本発明で用いる巻取りドラムの実施の形態を示
す (イ)縦断面図、及び(ロ) 図３(イ) のｂ−ｂ矢視断面図
である。

【符号の説明】

10 ドア 11 予熱室 12 反応室 13 ステンレス製円筒体 14 凹み 15 車輪 16 反応室内面 20 恒温槽 30 温水パイプ 40 アンモニア水 50 抵抗発熱体 60 ドラム 61 ステンレス製シャフト 62 円板 70 銅撚線

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 少なくとも表面が銅からなる銅材料を酸
   化性ガス雰囲気の反応室内で酸化させる方法において、
   前記反応室を外側と内側から加熱して前記反応室内面を
   酸化性ガスの露点以上の温度に保持することを特徴とす
   る銅材料の酸化処理方法。
2. 【請求項２】 少なくとも表面が銅からなる銅材料を酸
   化性ガス雰囲気の反応室内で酸化させる設備において、
   反応室内部に発熱体が配され、かつ、前記反応室の外側
   に前記反応室の内面を前記酸化性ガスの露点以上の温度
   に加熱する発熱体が配されていることを特徴とする銅材
   料の酸化処理設備。