JP3012418B2 - 記録ヘッド用保管容器 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、記録ヘッド用保管容器
に関し、詳しくは、インクジェット記録装置に使用され
る着脱自在な記録ヘッド若しくはインク収容部と一体形
の記録ヘッドを収容するための記録ヘッド用保管容器に
関する。

【０００２】

【従来の技術】インクの色や種類を変えるために記録ヘ
ッドをインク収容部と一体型になして交換可能としたイ
ンクジェット記録装置や使い捨ての記録ヘッドを使用す
るようにしたものが知られている。このような記録ヘッ
ド若しくはインク収容部と一体型の記録ヘッド（以下で
インクジェットカートリッジ（ＩＪＣ）と呼ぶ）は装置
自体ないし走査のためのキャリッジに着脱自在なように
構成されていて、不使用時や新たに交換されるまでの保
管時には従来箱状に形成された容器内に収納保管されて
きた。また、従来のかかる保管容器にあっては、一般に
記録ヘッド若しくはＩＪＣの出入れが容器の上向きとし
た開口部から目視で確認されながら行われてきた。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これま
でのような従来の記録ヘッド用保管容器では、人の指先
で行われるその出入れ動作が上向きとした開口部からの
上方への持上げまたは下方への押込みの形となるため
に、横倒しの形で収容される記録ヘッドあるいはＩＪＣ
の記録ヘッド部（以下ではこれらを一括して単に記録ヘ
ッドと称する）のインク吐出面が容器の対向する内側面
に摺接する傾向がある。そのためにインク吐出面に穿設
されている微細なインク吐出口を損傷させる虞があっ
た。

【０００４】またその保管中に記録ヘッドのインク吐出
口近傍でインクが乾燥して目詰りが生じるのを防止する
ために、インク吐出面が当接する内周部にこれを覆蓋す
るキャッピング機構が設けられたものにあっては、収納
・取出し時にインク吐出面がキャップ部材と摺接するこ
とによって乾燥若しくは粘性の増したインクや、ごみが
インク吐出口内にすり込まれる虞があり、ために記録品
位が損われるという問題があった。

【０００５】本発明の目的は、かかる従来の問題に着目
し、その解決を図るべく、インク吐出機能を損わせるよ
うなことなく記録ヘッドの収納・取出しが保証されると
共にその安定した保管が可能な記録ヘッド用保管容器を
提供することにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は、収容位置に保持される記録ヘッドのイン
ク吐出口形成面に対して直交する面が開口された容器本
体と、その開口に沿って開閉動作が可能なスライド蓋と
を有し、前記容器本体の開口に前記収容位置への前記記
録ヘッドの出入れを規制する規制部材を設けると共に、
前記スライド蓋にその閉蓋動作によって前記記録ヘッド
のインク吐出口形成面の側を前記収容位置の対向壁に設
けた受け部に向けて偏倚させる手段を設けたことを特徴
とするものである。

【０００７】

【作用】本発明によれば、開口を利用して記録ヘッドを
収容位置に収めたり収容位置から取出したりするにあた
りその出入れ方向が開口に設けた規制部材によって規制
されるので、インク吐出口形成面を収容位置の壁面に摺
接させるような方向からの出入れがなされずにすみ、こ
れによって、インク吐出口形成面を傷損させたり、不吐
出の原因となるごみなどをインク吐出口にすり込むよう
なことが防止される。そして、スライド蓋の閉蓋動作に
より収容位置の記録ヘッドのインク吐出口形成面側を偏
倚手段を介して対向する受部に向けて偏倚させ、記録ヘ
ッドを安定した状態で容器内に保持することができる。

【０００８】

【実施例】以下に、図面に基づいて本発明の実施例を詳
細かつ具体的に説明する。

【０００９】図１は本発明の一実施例を示す。ここで、
１は記録ヘッド保管用の容器（本体）であり、本例の容
器１はほぼ長方形に形成されていて、その上部と長手方
向の一方の側部とが開口されている。２は容器１へのス
ライド蓋であり、容器１の開口が形成されている側部側
から矢印Ａで示すように容器１の両側の外部側面に沿っ
てスライドさせることにより閉蓋状態とすることができ
る。なお、容器１の外部両側面およびスライド蓋２の対
応する内部両側面には１点鎖線で示すように例えば凹凸
によるスライド用の軌条や溝が設けられている。３は記
録ヘッド（本例の場合はＩＪＣ）、４はそのインク吐出
面であり容器１に対し、その開口側から矢印Ｂで示すよ
うにして２点鎖線で示す位置にＩＪＣ３を収容すること
ができる。

【００１０】５は容器１の上部開口１Ａに対し、その両
側から開口１Ａに向けて突設した収納方向規制部材（以
下では単に収納規制部材という）であり、このような収
納規制部材５を設けたことにより、ＩＪＣ３を上部開口
１Ａの上方から収納位置に押込んだり、収納位置から上
方に持ち出したりすることが規制される。６は収納位置
に納められたＩＪＣ３前端部を当接させて位置決めする
受部、７はＩＪＣ３の上面に形成した蓋係止溝であり、
スライド蓋２の方にはこれと対向する位置の裏面側に係
止爪（不図示）が設けられていて、閉蓋状態としたとき
に係止爪を上記係止溝に係着させることで、その状態を
維持させることができる。

【００１１】また、スライド蓋２の側部開口とは反対側
の内側面またはこれとかかわる位置に不図示の弾性部材
が設けられていて、スライド蓋２を閉蓋状態としたとき
にこの弾性部材をＩＪＣ３の後端部に当接させ、その弾
発力によりＩＪＣ３を受部６に向けて偏倚させ、がたつ
かせない状態に保つことができる。なお、本例の場合、
容器１およびスライド蓋２は共に樹脂系材料好ましくは
Ａ・Ｂ・Ｓ樹脂により一体成形されるもので、更にここ
では図示しないが容器１のインク吐出面４と対向する部
位にインク吐出面に当接して吐出口を封止可能なキャッ
ピング部材を配置するようにしてもよい。また、本例で
は受部６を容器１のインク吐出面４と対峙する内面のほ
ぼ中央部に設けたが、インク吐出面４に当接しない限
り、このような受部６は上記内面のどこに設けてもよ
い。

【００１２】このように構成した記録ヘッド用保管容器
にあっては、まず、記録装置側から取外したＩＪＣ３を
矢印Ｂで示すようにして容器１内に収容する。そして、
スライド蓋２を矢印Ａ方向から容器１の外側に沿わせて
嵌め合わすことにより、スライド蓋２を設けた弾性部材
の弾発力でＩＪＣ３を受部６に向けて偏倚させ、スライ
ド蓋２の係止爪を容器１の係止溝７に係着させて、ＩＪ
Ｃ３を安定した収納状態に保つことができる。また、Ｉ
ＪＣ３を容器１から取出す場合は、スライド蓋２を矢印
Ａとは反対方向に引抜いた上、ＩＪＣ３を矢印Ｂとは反
対方向に抜き出すようにすればよい。収納・取出しいず
れの場合にあっても、上部開口１Ａには両側から収納規
制部材５が突設されているので、取扱者が不用意に上部
開口１Ａの上方からＩＪＣ３を押込んだり、上方に持ち
上げて取出したりすることが防止できる。

【００１３】図２および図３は本発明のそれぞれ他の実
施例を示す。図２は、収納規制部材５を容器１の開口１
Ａの片側のみに突設した例を、また、図３は上部開口１
Ａの一部を覆うようにして収納規制板１５を設けた例を
それぞれ示すもので、このような収納動作とその方向を
規制するための部材は上述の実施例に限らず、上部開口
１Ａの上方から収納位置に取扱者がＩＪＣ３を直接出入
れするのを禁止するように形成される限り、どのような
形状ないし位置であってもよい。また、このような収納
規制部材は上述のような機能に加えて、更にその下面側
で収納あるいは引出しのために移動されるＩＪＣ３の案
内がなされるようにしてもよい。なお、図２および図３
に示した実施例によるＩＪＣ３の収納・取出し動作につ
いては図１に示した例と変わらないのでその説明を省略
する。

【００１４】また、これまでに述べてきた実施例では容
器およびスライド蓋を共に樹脂系材料で成形するとした
が、材料としてはこれに限られるものではなく、特にス
ライド蓋としてはアルミニウムやその他の金属材料で形
成することも可能であり、また、容器およびスライド蓋
とも１つの材料で必ずしも一体成形されなくともよいこ
とはいうまでもない。

【００１５】（その他）なお、本発明は、特にインクジ
ェット記録方式の中でも、インク吐出を行わせるために
利用されるエネルギとして熱エネルギを発生する手段
（例えば電気熱変換体やレーザ光等）を備え、前記熱エ
ネルギによりインクの状態変化を生起させる方式の記録
ヘッド、記録装置において優れた効果をもたらすもので
ある。かかる方式によれば記録の高密度化，高精細化が
達成できるからである。

【００１６】その代表的な構成や原理については、例え
ば、米国特許第４７２３１２９号明細書，同第４７４０
７９６号明細書に開示されている基本的な原理を用いて
行うものが好ましい。この方式は所謂オンデマンド型，
コンティニュアス型のいずれにも適用可能であるが、特
に、オンデマンド型の場合には、液体（インク）が保持
されているシートや液路に対応して配置されている電気
熱変換体に、記録情報に対応していて核沸騰を越える急
速な温度上昇を与える少なくとも１つの駆動信号を印加
することによって、電気熱変換体に熱エネルギを発生せ
しめ、記録ヘッドの熱作用面に膜沸騰を生じさせて、結
果的にこの駆動信号に一対一で対応した液体（インク）
内の気泡を形成できるので有効である。この気泡の成
長，収縮により吐出用開口を介して液体（インク）を吐
出させて、少なくとも１つの滴を形成する。この駆動信
号をパルス形状とすると、即時適切に気泡の成長収縮が
行われるので、特に応答性に優れた液体（インク）の吐
出が達成でき、より好ましい。このパルス形状の駆動信
号としては、米国特許第４４６３３５９号明細書，同第
４３４５２６２号明細書に記載されているようなものが
適している。なお、上記熱作用面の温度上昇率に関する
発明の米国特許第４３１３１２４号明細書に記載されて
いる条件を採用すると、さらに優れた記録を行うことが
できる。

【００１７】記録ヘッドの構成としては、これまでに開
示されているような吐出口，液路，電気熱変換体の組合
せ構成（直線状液流路または直角液流路）の他に熱作用
部が屈曲する領域に配置されている構成を開示する米国
特許第４５５８３３３号明細書，米国特許第４４５９６
００号明細書を用いた構成も本発明に含まれるものであ
る。加えて、複数の電気熱変換体に対して、共通するス
リットを電気熱変換体の吐出部とする構成を開示する特
開昭５９−１２３６７０号公報や熱エネルギの圧力波を
吸収する開孔を吐出部に対応させる構成を開示する特開
昭５９−１３８４６１号公報に基いた構成としても本発
明の効果は有効である。すなわち、記録ヘッドの形態が
どのようなものであっても、本発明によれば記録を確実
に効率よく行うことができるようになるからである。

【００１８】さらに、記録装置が記録できる記録媒体の
最大幅に対応した長さを有するフルラインタイプの記録
ヘッドに対しても本発明は有効に適用できる。そのよう
な記録ヘッドとしては、複数記録ヘッドの組合せによっ
てその長さを満たす構成や、一体的に形成された１個の
記録ヘッドとしての構成のいずれでもよい。

【００１９】加えて、上例のようなシリアルタイプのも
のでも、装置本体に固定された記録ヘッド、あるいは装
置本体に装着されることで装置本体との電気的な接続や
装置本体からのインクの供給が可能になる交換自在のチ
ップタイプの記録ヘッド、あるいは記録ヘッド自体に一
体的にインクタンクが設けられたカートリッジタイプの
記録ヘッドを用いた場合にも本発明は有効である。

【００２０】また、本発明が適用される記録装置の構成
として、記録ヘッドの吐出回復手段、予備的な補助手段
等を付加することは本発明の効果を一層安定できるの
で、好ましいものである。これらを具体的に挙げれば、
記録ヘッドに対してのキャッピング手段、クリーニング
手段、加圧或は吸引手段、電気熱変換体或はこれとは別
の加熱素子或はこれらの組み合わせを用いて加熱を行う
予備加熱手段、記録とは別の吐出を行なう予備吐出手段
を挙げることができる。

【００２１】また、搭載される記録ヘッドの種類ないし
個数についても、例えば単色のインクに対応して１個の
みが設けられたものの他、記録色や濃度を異にする複数
のインクに対応して複数個数設けられるものであっても
よい。すなわち、例えば記録装置の記録モードとしては
黒色等の主流色のみの記録モードだけではなく、記録ヘ
ッドを一体的に構成するか複数個の組み合わせによるか
いずれでもよいが、異なる色の複色カラー、または混色
によるフルカラーの各記録モードの少なくとも一つを備
えた装置にも本発明は極めて有効である。

【００２２】さらに加えて、以上説明した本発明実施例
においては、インクを液体として説明しているが、室温
やそれ以下で固化するインクであって、室温で軟化もし
くは液化するものを用いてもよく、あるいはインクジェ
ット方式ではインク自体を３０℃以上７０℃以下の範囲
内で温度調整を行ってインクの粘性を安定吐出範囲にあ
るように温度制御するものが一般的であるから、使用記
録信号付与時にインクが液状をなすものを用いてもよ
い。加えて、熱エネルギによる昇温を、インクの固形状
態から液体状態への状態変化のエネルギとして使用せし
めることで積極的に防止するため、またはインクの蒸発
を防止するため、放置状態で固化し加熱によって液化す
るインクを用いてもよい。いずれにしても熱エネルギの
記録信号に応じた付与によってインクが液化し、液状イ
ンクが吐出されるものや、記録媒体に到達する時点では
すでに固化し始めるもの等のような、熱エネルギの付与
によって初めて液化する性質のインクを使用する場合も
本発明は適用可能である。このような場合のインクは、
特開昭５４−５６８４７号公報あるいは特開昭６０−７
１２６０号公報に記載されるような、多孔質シート凹部
または貫通孔に液状又は固形物として保持された状態
で、電気熱変換体に対して対向するような形態としても
よい。本発明においては、上述した各インクに対して最
も有効なものは、上述した膜沸騰方式を実行するもので
ある。

【００２３】さらに加えて、本発明が適用されるインク
ジェット記録装置の形態としては、コンピュータ等の情
報処理機器の画像出力端末として用いられるものの他、
リーダ等と組合せた複写装置、さらには送受信機能を有
するファクシミリ装置の形態を採るもの等であってもよ
い。

【００２４】

【発明の効果】以上説明してきたように、本発明によれ
ば、収容位置に保持される記録ヘッドのインク吐出口形
成面に対して直交する面が開口された容器本体と、その
開口に沿って開閉動作が可能なスライド蓋とを有し、前
記容器本体の開口に前記収容位置への前記記録ヘッドの
出入れを規制する規制部材を設けると共に、前記スライ
ド蓋にその閉蓋動作によって前記記録ヘッドのインク吐
出口形成面の側を前記収容位置の対向壁に設けた受け部
に向けて偏倚させる手段を設けたので、記録ヘッドを収
納したり取出したりするときにインク吐出面を傷つけた
り、インク吐出不良を発生させる原因となるようなこと
を防止することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１実施例による構成を示す斜視図で
ある。

【図２】本発明の他の実施例による構成を示す斜視図で
ある。

【図３】本発明の更に他の実施例による構成を示す斜視
図である。

【符号の説明】

１ 容器（本体） １Ａ 上部開口 ２ スライド蓋 ３ 記録ヘッド（ＩＪＣ） ４ インク吐出面 ５ 収納規制部材 ６ 受部 ７ （蓋）係止溝 １５ 収納規制板

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 蔭山 徹人 東京都大田区下丸子３丁目30番２号 キ ヤノン株式会社内 (72)発明者 平久江 利光 東京都大田区下丸子３丁目30番２号 キ ヤノン株式会社内 (72)発明者 小沢 雅一 東京都大田区下丸子３丁目30番２号 キ ヤノン株式会社内 (56)参考文献 特開 昭63−33285（ＪＰ，Ａ) 特開 平３−176158（ＪＰ，Ａ) 特開 平３−176159（ＪＰ，Ａ) 特開 平３−248849（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) B41J 2/175

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 収容位置に保持される記録ヘッドのイン
   ク吐出口形成面に対して直交する面が開口された容器本
   体と、その開口に沿って開閉動作が可能なスライド蓋と
   を有し、 前記容器本体の開口に前記収容位置への前記記録ヘッド
   の出入れを規制する規制部材を設けると共に、前記スラ
   イド蓋にその閉蓋動作によって前記記録ヘッドのインク
   吐出口形成面の側を前記収容位置の対向壁に設けた受け
   部に向けて偏倚させる手段を設けたことを特徴とする記
   録ヘッド用保管容器。
2. 【請求項２】 前記記録ヘッドはインク収容部と一体形
   にしたカートリッジ型記録ヘッドであって、インクジェ
   ット記録装置に着脱自在であることを特徴とする請求項
   １に記載の記録ヘッド用保管容器。
3. 【請求項３】 前記記録ヘッドはインクを吐出するため
   のエネルギを発生させる素子として、インクに膜沸騰を
   生じさせる熱エネルギを発生する電気熱変換体を有する
   ことを特徴とする請求項１または２に記載の記録ヘッド
   用保管容器。