JP3012066B2 - 極異方配向磁石 - Google Patents

極異方配向磁石

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、モータの永久磁石型
ロータ、ステータ等の用途に好適な極異方配向磁石に関
し、特に作用面の実質的な作用領域における表面磁界の
向上を図ろうとするものであり、モータのトルクを向上
させるのに有利である。
【0002】
【従来の技術】従来、モータ用の円筒又は円柱形状の永
久磁石としては、磁粉の磁化容易軸が発現していないか
ランダム配列になる等方性磁石、また磁粉の磁化容易軸
が、半径方向(ラジアル方向)に配向するラジアル異方
性磁石、さらに周面を作用面として極異方に配向する極
異方配向磁石が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記の磁石のうち、極
異方配向磁石は作用面表面の磁束密度を高くとることが
でき、磁気特性が最も良好なものである。しかしなが
ら、このような極異方配向磁石であっても、実際のモー
タに組み込んで、例えばステータに用いる場合には、ロ
ータの回転に寄与する実質的な作用領域は、磁石の高さ
方向中央部のみであって、端部は、モータに配設される
励磁コイルやブラシに対向するので、実際のロータ回転
用の磁束密度には寄与していない。したがってかかる端
部の配向は無駄なものとなっていた。
【0004】この発明は、上記の問題を有利に解決する
もので、磁石の高さ方向端部の磁石配向を有効活用する
ことで、作用面の実作用領域における表面磁界の実質的
な向上を図り、もってモータのトルクを向上させること
のできる極異方配向磁石を提案することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】成形金型の磁気回路に工
夫を加え、磁石材料中における磁粉粒子の配向方向を制
御することによって、極異方配向磁石の実質的な作用面
における表面磁界の向上を図るこの発明の要旨は次のと
おりである。
【0006】円筒又は円柱形状になり、周面の一つを作
用面とすべく中心軸に直交する断面で磁粉の磁化容易軸
が極異方の配向へ揃う磁石において、上記磁粉の磁化容
易軸が、中心軸を含む断面では該作用面の中央寄りに集
束配向してなる極異方配向磁石。
【0007】図1〜図3に、この発明の極異方配向磁石
を10極配向の例として斜視及び中心軸を含む断面で示
し、図中で磁粉の配向方向を実線で表した。図1は外周
面を作用面とする円筒極異方配向磁石であり、また図2
は内周面を作用面とする円筒極異方配向磁石であり、さ
らに図3は周面を作用面とする円柱極異方配向磁石であ
る。一方、比較のために従来の(円筒)極異方配向磁石
を図4に示す。図1〜3と図4との対比から明らかなよ
うに、これらの磁石は何れも、中心軸を含む断面で、磁
粉の磁化容易軸が作用面の中央部寄りに集束配向してい
る。
【0008】
【作用】極異方配向磁石をステータに用いるモータの断
面を図5に、この発明の磁石(同図(a) )と従来の磁石
(同図(b) )とを比較して示す。図中1a ,1b は円筒
磁石、2はモータケース、3はロータ磁極、4はロータ
励磁コイル、5はロータシャフト、6はブラシ、7はブ
ラシに導通するためのリード線、8はロータシャフトの
軸受け、9は板ばね、10はワッシャである。
【0009】前述したとおり、従来の磁石(図5(b) 参
照)は、ロータに対向する実作用領域が、磁石の中央寄
りであって、端部は、モータに配設される励磁コイルや
ブラシに対向するのみで、無駄な磁束を生じさせてい
る。これに対してこの発明では、図5(a) に示したとお
り極異方配向磁石の中心軸を含む断面において、磁粉の
磁化容易軸の配向方向を作用面の中央寄り(実作用領
域)に集束させることにより実質的に全ての磁束が実作
用領域に集束するので、端部の磁粉配向を有効に活用し
て実作用領域での表面磁界を実質的に向上させることが
でき、ひいてはトルクの大きなモータを得ることができ
るのである。
【0010】この発明の磁石材料としては、焼結磁石及
び合成樹脂磁石いずれもが利用できる。合成樹脂磁石
は、焼結磁石のように高温焼成することがないので磁石
製品に歪が入らず、またバインダーの存在によって磁石
製品の割れ欠け率が少なく、歩留まりの高い生産ができ
る点、またシャフトやカップと一体成形できる点では有
利である。
【0011】焼結磁石及び合成樹脂磁石における磁粉と
しては、フェライト系、アルニコ系、サマリウム−コバ
ルト系、ネオジウム−鉄−ボロン系など既に知られたも
のがいずれもが使用できる。また磁粉粒子の平均粒径に
ついても、既に知られた範囲で使用することができる。
たとえばフェライト系では 1.5μm 、希土類系では10〜
50μm が一般的である。
【0012】また合成樹脂についても従来公知のものが
使用できる。たとえばポリアミド12、ポリアミド6など
のポリアミド系合成樹脂や、ポリ塩化ビニル、その酢酸
ビニル共重合体、MMA,PS,PPS,PE,PP等
の単独又は共重合したビニル系合成樹脂や、ウレタン,
シリコーン,ポリカーボネート,PBT,PET,PE
EK,CPE,ハイパロン,ネオプレン,SBR,NB
R等の合成樹脂、又はエポキシ系、フェノール系等の熱
硬化合成樹脂が使用できる。
【0013】さらに磁粉とバインダーである合成樹脂の
配合比率は、用途にもよるが一般的には磁粉:40〜70 v
ol%とすることが望ましい。なおその他にも、従来から
常用される可塑剤や滑剤、抗酸化剤、表面処理剤などを
目的に応じて適量使用できるのはいうまでもない。
【0014】次に、この発明に係る磁場配向成形金型の
磁気回路装置について説明する。図6は、図1に示した
外周面が作用面となる円筒極異方配向磁石を製造する場
合に対応するもので、同図(a) に、中心軸を含む断面で
示し、また同図(b) 、(c) で同図(a) のA-A 断面、B-B
断面を示す。図中番号11a は円筒状キャビティであり、
このキャビティ11a は、外周面の中央領域を極異方配向
用の環状磁石12で、外周面の端部を非磁性体15で、内周
面を非磁性体13で、両端面を強磁性体14で、それぞれ囲
繞して形成される。より好ましくは、内周面の両端部近
傍を非磁性体とする。
【0015】このように極異方配向用の環状磁石12を、
つくろうとする磁石の全高よりも短い長さで、磁石の作
用面中央域に配置し、かつ強磁性体14を両端面に配置す
ることが特徴である。
【0016】さて図6に示したところにおいて、たとえ
ば射出成形によって円筒状キャビティ11a 内に導入され
た合成樹脂磁石材料は、軟化状態にある間に、外周面に
配設された環状磁石12から磁場を印加されて、極異方の
配向に揃うわけであるが、その際にキャビティ端部では
磁力線は強磁性体14に引き寄せられて、図中矢印(矢印
の向きは不問)で示した方向の磁粉配向になって、その
結果として作用面における集束配向が形成されるのであ
る。
【0017】なお、円柱形状の極異方磁石の場合も、図
6で示す磁気回路装置を適用して、この発明の極異方配
向を付与させることができる。この場合において、非磁
性体13は不要である。
【0018】次に図7に示す磁気回路装置は、図2に示
した内周面が作用面となる円筒極異方配向磁石を製造す
る場合に対応するもので、同図(a) に、中心軸を含む断
面で示し、また同図(b) 、(c) で同図(a) のA-A 断面、
B-B 断面を示す。図中番号11b は円筒状キャビティであ
り、このキャビティ11b は、内周面の中央領域(実作用
領域) 極異方配向用の環状磁石17で、内周面の端部を
非磁性体21で、外周面を非磁性体19で、両端面を強磁性
体20で、それぞれ囲繞して形成される。より好ましく
は、外周面の両端部近傍を非磁性体とする。また18はバ
ックヨーク(強磁性体)である。
【0019】このように極異方配向用の環状磁石17を、
つくろうとする磁石の全高よりも短い長さ(磁石作用面
の実作用領域に等しい長さ)でつくろうとする磁石の作
用面中央域に配置し、かつ両端面には強磁性体20を配置
することが特徴である。さて図7に示したところにおい
て、たとえば射出成形によって円筒状キャビティ11b 内
に導入された合成樹脂磁石材料は、軟化状態にある間
に、内周面に配設された環状磁石17から磁場を印加され
て、極異方の配向に揃うわけであるが、その際にキャビ
ティ端部では磁力線は強磁性体20に引き寄せられて、図
中矢印(矢印の向きは不問)で示した方向の磁粉配向に
なって、その結果として作用面における集束配向が形成
されるのである。
【0020】なお、上記した強磁性体14、20の材料は、
S55C,S50C,S40C等の炭素鋼、SKD11, SKD61等のダイス
鋼及びパーメンジュール、純鉄等が使用される。耐摩耗
性向上のために表面硬化処理を施すことは、より有利で
ある。また非磁性体13、15、19及び21の材料は、SUS 30
4 などのオーステナイト系ステンレス鋼、YHD 50等の高
マンガン鋼、銅ベリリウム合金、青銅、真ちゅう及び非
磁性超硬鋼N−7等が用いられる。
【0021】環状磁石12、17には、既知の磁石が使用で
きる。たとえばサマリウムコバルト系磁石等の永久磁
石、また励磁コイルを強磁性体に券回した電磁石が使用
できる。
【0022】また磁場中成形方法も、既知の成形方法が
使用可能であり、例えば磁場配向射出成形、磁場配向圧
縮成形及び磁場配向RIM成形などがある。
【0023】さらに希土類磁粉を用いる場合には、予め
又はキャビティ内に導入した直後に、パルス状の高磁場
をかけ、磁気モーメントを揃える前処理を施すことが望
ましい。
【0024】図8に、合成樹脂磁石を用いて、シャフト
やカップと一体成形した例を示す。
【0025】
【実施例】図7に示した金型磁気回路を用いて、図9に
示す内周面を作用面とする円筒極異方配向磁石を磁場配
向射出成形法及び磁場配向圧縮成形法により製造した。
図9の磁石の内径は26mm、外径は36mmであり、また高さ
は32mm、内周面の実作用領域長さは24mmである。
【0026】磁粉の種類は次の2種とした。 磁粉A:フェライト磁粉(平均粒径1.5 μm のマグネト
プランバイト系ストロンチウム系フェライト) 磁粉B:サマリウムコバルト磁粉(Sm2Co17 系、平均粒
径15μm )
【0027】磁石原料の配合は、合成樹脂磁石、焼結磁
石を各々1種の次の配合とした。 配合A(合成樹脂磁石配合) 磁粉:63 vol%、ポリアミド12:36 vol%、アミノシラ
ンA-1100:1 vol % 配合B(焼結磁石配合) 磁粉:50 wt %、水50 wt %
【0028】成形条件は合成樹脂磁石、焼結磁石を各々
1種の次の条件とした。 成形条件A(合成樹脂磁石) 使用ペレット配合:配合A 成形機 :コイル内蔵式磁場配向射出成形機 射出シリンダ温度:300 ℃ 金型温度 :100 ℃ 射出圧力 :1500kgf/cm2 配向用励磁時間 :15秒 冷却時間 :20秒 射出サイクル :40秒 成形条件B(焼結磁石) 使用スラリー :配合B 成形機 :コイル内蔵式磁場配向圧縮成形機 水抜き方法 :インジェクション方式 励磁方向 :竪磁場 成形温度 :20℃ 焼成温度 :1250℃
【0029】かくして得られた磁石の作用面における表
面磁束密度、ステータとしてモータに組み込んだ場合の
モータホールディングトルク値の測定結果を表1に示
す。また比較のために、中心軸を含む断面において磁粉
が作用面に集束配向していない従来の極異方配向磁石に
ついての測定結果も併記した。なお表面磁束密度は、70
μm 角のガリウムひ素製のホール素子を用いたガウスメ
ータによって測定したものであり、モータホールディン
グトルクは、図5に示したDCモータに組み込んで、比
較例を基準とする相対評価で示した。
【0030】
【表1】
【0031】同表より明らかなように、この発明に従い
円筒状磁石中の磁粉粒子を作用面中央域に集束配向させ
た実施例1〜4は、作用面における表面磁界が向上し、
それに伴いモータートルクも向上している。
【0032】
【発明の効果】この発明の極異方配向磁石は、磁粉の磁
化容易軸が、中心軸を含む断面では該作用面の中央寄り
に集束配向してなることから、作用面の実質的な作用領
域における表面磁界の向上を図ることができ、ひいては
モータに組み込んだ場合にトルクを有利に向上させるこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1はこの発明の、外周面を作用面とする円筒
極異方配向磁石の説明図である。
【図2】図2は、この発明の、内周面を作用面とする円
筒極異方配向磁石の説明図である。
【図3】図3は、この発明の、周面を作用面とする円柱
極異方配向磁石の説明図である。
【図4】図4は、従来の極異方配向磁石の説明図であ
る。
【図5】図5は、極異方配向磁石をステータに用いるモ
ータの断面図である。
【図6】図6は、図1に対応する外周面が作用面となる
円筒極異方配向磁石の磁場配向成形金型の磁気回路装置
の説明図である。
【図7】図7は、図2に対応する内周面が作用面となる
円筒極異方配向磁石の磁場配向成形金型の磁気回路装置
の説明図である。
【図8】図8は、シャフトやカップと一体成形してなる
合成樹脂磁石の説明図である。
【図9】図9は、実施例に供した磁石の寸法形状の説明
図である。
フロントページの続き (72)発明者 菊地 孝宏 千葉県千葉市川崎町1番地 川崎製鉄株 式会社 技術研究本部内 (72)発明者 安田 晃 東京都千代田区内幸町2丁目2番3号 川崎製鉄株式会社 東京本社内 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01F 7/02

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 円筒又は円柱形状になり、周面の一つを
    作用面とすべく中心軸に直交する断面で磁粉の磁化容易
    軸が極異方の配向へ揃う磁石において、 上記磁粉の磁化容易軸が、中心軸を含む断面では該作用
    面の中央寄りに集束配向してなる極異方配向磁石。
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