JP3012051B2 - 異方性セグメント型磁石 - Google Patents

異方性セグメント型磁石

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JP3012051B2
JP3012051B2 JP3297227A JP29722791A JP3012051B2 JP 3012051 B2 JP3012051 B2 JP 3012051B2 JP 3297227 A JP3297227 A JP 3297227A JP 29722791 A JP29722791 A JP 29722791A JP 3012051 B2 JP3012051 B2 JP 3012051B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、モーターの永久磁石
型ステーターやアウターローター等の用途に供して好適
な異方性セグメント型磁石に関し、特にトルクの減少を
招くことなしに、コギング及びそれに起因した振動や騒
音さらには回転むらの発生を効果的に防止しようとする
ものである。
【0002】
【従来の技術】従来、モーターに使用されるセグメント
型磁石としては、磁粉粒子の配向方向が図1(d)又は
(e)に示すような磁石が用いられてきた。ここで点線
は磁粉粒子の磁化容易軸の配向方向であり、通常(d)
はアキシャル型配向、(e)はラジアル型配向と呼ばれ
ている。
【0003】ところで、かかる配向になるセグメント型
磁石をステーターとして利用した場合、ローターが回転
してステーターが形成する磁界を横切るときに、その境
界におけるギャップ磁束密度が大きく変化することか
ら、コギングと呼ばれる弊害が生じていた。かかるコギ
ングは、微妙な振動ひいては騒音や回転むらの発生を招
き好ましくない。
【0004】この点を解決するものとして、図1(f)
に示すような、磁粉粒子の磁化容易軸の配向方向を作用
面側に発散させ、ステーター磁界の境界におけるギャッ
プ磁束密度の変化を緩和した発散型磁石が提案された。
しかしながらかような磁粉配向にした場合、確かにギャ
ップ磁束密度の回転方向における変化量は小さくなるも
のの、作用面における表面磁界の絶対値が小さくなるこ
とから、トルクの低下を招いていた。
【0005】また、従来のモーター用ステーターの長手
方向における実質作用幅は、図2に記号aで示すとおり
であって、軸受け7、ワッシャー8、板ばね9及びブラ
シ10等の存在のため、ローターの磁極幅と同程度の狭い
ものでしかなかった。このようにステーターの幅を十分
に活用してはいなかったため、得られるトルクも磁石の
幅を有効に利用したものとは言えなかった。なお図中番
号11はセグメント型磁石、12はローター磁極、13はロー
ター励磁コイル、14はシャフト、15は強磁性体ケースで
ある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、上記の問
題を有利に解決するもので、ギャップ磁束密度の変化を
効果的に緩和すると共に、従来、有効利用が図られてい
なかったセグメント磁石の両端部を有効に活用すること
により、トルクの低下を招くことなしに、コギングの発
生を効果的に抑制し得る異方性セグメント磁石を提案す
ることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】さてこの発明では、セグ
メント磁石の磁粉粒子の磁化容易軸を、ローター磁極の
回転域に対応する領域すなわち磁石の長手方向内側中央
域に集束配向させることによって内側作用面の表面磁界
を向上させると共に、セグメント磁石の少なくとも両縁
部近傍、換言すると磁石横断面における少なくとも両端
部近傍については、作用面側に発散する配向とすること
により、上記の目的を達成したものである。
【0008】すなわちこの発明は、横断面の内側が円弧
状を呈して長手方向に延在し、その内側湾曲面を作用面
とするセグメント形状の磁石であって、該磁石の磁粉粒
子の磁化容易軸の配向方向が、長手方向断面において、
内側作用面の中央域に集束し、かつ横断面において、少
なくとも両端部近傍が該磁石の非作用面側に集束してな
る異方性セグメント型磁石である。
【0009】
【作用】この発明では、成形金型の磁気回路に工夫を加
え、磁石材料中における磁粉粒子の配向方向を制御する
ことによって、セグメント型磁石の実質的な作用面にお
ける表面磁界の向上を図ると共に、コギングの発生を抑
制するものである。具体的には、セグメント状キャビテ
ィの内側湾曲面に対向させて、該セグメント長よりも狭
幅になる湾曲状の主磁極を該セグメントの中央部に配置
する一方、対向磁極を該セグメント状キャビティの全長
にわたって配置し、かつ該キャビティ横断面における磁
極幅については、補助極の幅を主極幅に比べて狭くする
ことにより、成形金型キャビティ内の磁力線を、長手方
向断面においては内側作用面の中央域に集束させ、かつ
横断面においては少なくとも両端部近傍について非作用
面側に集束させるのである。
【0010】かくしてキャビティ内に装入された磁石材
料について、その磁粉粒子の配向方向を磁力線の方向に
揃える、すなわち長手方向断面においては磁石内側の実
質的作用面に集束させると共に、横断面においては少な
くとも両端部近傍を作用面側に発散させることができ、
その結果磁石の実質的作用面における表面磁界を低下さ
せることなしにコギングの発生を効果的に防止できるの
である。
【0011】図1(a),(b)及び(c)にそれぞ
れ、この発明に従って磁粉粒子を配向させたセグメント
状磁石の代表例をそれぞれ示す。同図(a)は、磁粉粒
子の配向方向を、横方向断面においては両端部のみ非作
用面側に集束させ、かつ長手方向断面においては外側面
(端面を含む)から中央域に直線的に集束させた場合
(単純集束配向)、また同図(b)は、横方向断面にお
いては同図(a)と同様に両端部のみ非作用面側に集束
させ、かつ長手方向断面においては外側面中央部及び両
端面から作用面中央域に集束させた場合(両端部側面集
束配向)、さらに同図(c)は、横方向断面においては
全ての磁粉粒子を非作用面側の一点に集束させ、かつ長
手方向断面においては同図(a)と同様に単純集束配向
させた場合である。このようにこの発明に従うセグメン
ト磁石は、少なくともその長手方向両縁部が、横断面に
おいて非作用面側に集束、換言すれば作用面側に発散し
ているので、ローターがステーター磁界の境界を横切る
ときにおけるギャップ磁束密度の回転方向における変化
量を軽減することができ、それ故コギングの発生を効果
的に防止できるのである。
【0012】ところで、ステーターの横断面における磁
粉粒子の配向方向を、上記のような配向とした場合に
は、前述したとおり、作用面における表面磁界の絶対値
が小さくなってトルクの低下を招いていたのであるが、
この発明では、この点を次に述べるようにして解決した
のである。図3及び図4に、この発明に従う異方性セグ
メント状磁石を直流モーターのステーターとして組み込
んだ状態を示す。図3,4と従来モーターを組み込んだ
前掲図2とを対比すれば明白なように、実質的な作用面
に対し、図1(d)〜(f)に示された従来磁石では無
駄な磁束が存在するのに対し、図1(a)〜(c)に示
される発明磁石では全ての磁束が実質的作用面に集束し
て配向しており、従ってアキシャル配向の場合に比べて
より高いギャップ磁束密度が得られ、従って横断面にお
ける磁粉粒子の配向方向を発散配向とした場合であって
も、トルクの低下を効果的に抑制できるのみならず、む
しろトルクの向上を望み得るのである。
【0013】この発明の磁石材料としては、焼結磁石及
び合成樹脂磁石いずれもが利用できる。たとえば焼結磁
石及び合成樹脂磁石における磁粉としては、フェライト
系、アルニコ系、サマリウム−コバルト系、ネオジウム
−鉄−ボロン系など既に知られたものがいずれもが使用
できる。また磁粉粒子の平均粒径についても、既に知ら
れた範囲で使用することができる。たとえばフェライト
系では 1.5μm 、希土類系では10〜50μm が一般的であ
る。
【0014】また合成樹脂についても従来公知のものが
使用できる。たとえばポリアミド6などのポリアミド系
合成樹脂や、ポリ塩化ビニル、その酢酸ビニル共重合
体、MMA,PS,PPS,PE,PP等の単独又は共
重合したビニル系合成樹脂や、ウレタン,シリコーン,
ポリカーボネート,PBT,PET,PEEK,CP
E,ハイバロン,ネオプレン,SBR,NBR等の合成
樹脂や、又はエポキシ系、フェノール系等の熱硬化合成
樹脂が使用できる。さらに磁粉とバインダーである合成
樹脂の配合比率は、用途にもよるが一般的な射出成形の
場合には磁粉:40〜70 vol%程度とすることが望まし
い。なおその他にも、従来から常用される可塑剤や滑
剤、抗酸化剤、表面処理剤などを目的に応じて適量使用
できるのはいうまでもない。
【0015】次に、この発明に係る磁場配向成形金型の
磁気回路装置について説明する。図5、図6、図7及び
図8並びに図9、図10及び図11にそれぞれ、セグメント
磁石の製造に用いる射出成形金型の磁気回路装置の好適
例を模式で示す。図5〜8は製品の横方向断面であり、
図5にアキシャル配向、図6にラジアル配向、図7に両
端部発散配向、図8に全体発散配向を示す。また図9〜
11は長手方向断面であり、図9にアキシャル配向、図10
に単純集束配向、図11に両端部側面集束配向を示す。図
中番号1はダイ2に設けたキャビティ、3は主極、4は
対極、5はスプールランナー、6は突き出し棒である。
【0016】上記の各図中、主極3,対極4,突き出し
棒6については、S55C,S50C,S40C等の炭素鋼、SKD 1
1, SKD 61等のダイス鋼及びパメンジュール、純鉄等の
強磁性体が使用され、一方ダイ2としては、ステンレス
鋼、銅ベリリウム合金、ハイマンガン鋼、青銅、真ちゅ
う及び非磁性超鋼N−7等の非磁性体が用いられる。
【0017】さてこの発明の磁石は、横断面が図7,
8、一方長手方向断面は図10,11に示したような金型を
用いることによって製造することができる。すなわち例
えば図8と図10との組合せになる射出成形用金型によっ
てこの発明に従うセグメント磁石を製造する場合を考え
ると、セグメント状キャビティ1内に導入された合成樹
脂磁石材料が軟化状態にある内に、該磁石材料に対して
磁場を印加すると、磁力線はキャビティ1の長手方向断
面においては両端面を含む外周全域から、内側作用面の
中央域に集束するように透過する一方、キャビティ1の
横断面においては非作用面上方の一点に向かって集束、
換言すれば作用面側に発散するように透過し、それ故磁
石材料中の磁粉粒子の磁化容易軸が、かかる磁力線の方
向に沿って配向する結果、図1(c)に示したような集
束配向なるセグメント型磁石が得られるのである。
【0018】ここに金型磁気回路の面からは、図7,8
に示したように、横断面においては補助極4の幅を作用
面を構成する主極3の幅よりも狭くすると共に、磁束を
絞るべき長手方向断面においては、図10,11に示したよ
うに主極3の幅を補助極4の幅よりも狭くすることが肝
要で、かかる仕組みとすることによって、磁粉粒子の磁
化容易軸を所望の方向に配向させるのである。その結果
この発明磁石では、磁粉粒子の磁化容易軸が、横断面に
おいては図12(a),(b)に示すように、また長手方
向においては図13(a),(b)にそれぞれ示すように
配向するのである。
【0019】なお磁場中成形方法としては、磁場配向射
出成形、磁場配向圧縮成形及び磁場配向RIM成形など
が適当である。なお各成形法における磁粉の含有率は、
各成形形態に応じて決めることができる。
【0020】
【実施例】実施例1 図5〜8に示す横方向断面及び図9〜11に示す長手方向
断面を組み合わせて構成した金型を用い、図14に示す寸
法になるセグメント型磁石を、以下の条件で製作した。
ここに磁粉粒子の横断面における集束角度は、図12
(a)に示したような全面集束についてはXA 、また同
図(b)に示したような両端部集束については両端部を
B 、ラジアル部分の角度をXC と定義した。一方長手
方向については、図13(a)に示したような単純集束配
向の場合はY、また同図(b)に示したような両端部側
面集束配向の場合は、側面集束率Z〔=(1−b)/a
×100 %〕で定義した。またモータートルクの測定は、
この発明磁石については図3,4に、また従来磁石につ
いては図2に示したようにセットして行った。この時ロ
ーターの磁極幅は磁石幅の70%のものを使用した。
【0021】 ・原料 磁粉A:フェライト磁粉(平均粒径 1.5μm のマグネト
プランバイト系ストロンチウム系フェライト) 磁粉B:サマリウム−コバルト磁粉(2−17系;平均粒
径15μm)
【0022】 ・配合 配合A(プラマグ配合) 磁 粉 :63 vol% ポリアミド12 :36 vol% アミノシランA−1100:1 vol% 配合B(焼結配合) 磁 粉 :50wt% 水 :50wt%
【0023】 ・成形方法A:プラマグ射出成形条件 使用ペレット配合 :配合A 成形機 :コイル内蔵式磁場配向射出成形機 射出シリンダー温度:300 ℃ 金型温度 :100 ℃ 射出圧力 :1500kg/cm2 励磁時間 :15秒 冷却時間 :20秒 射出サイクル :40秒 ・成形方法B:焼結磁石作成条件 使用スラリー :配合B 成形機 :コイル搭載式磁場配向圧縮成形機 水抜き方法 :インジェクション方式 励磁方向 :竪磁場 成形温度 :20℃ 焼成温度 :1250℃
【0024】 ・ホール素子 70μm 角のガリウム−ひ素
使用 ・ガウスメーター 東洋磁気製ガウスメーター
使用
【0025】かくして得られたセグメント型磁石の有効
作用面における表面磁束密度及びモーターホールヂング
トルクについて測定した結果を、コギング現象の評価と
共に表1,2及び3に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
【表3】
【0029】同表より明らかなように、この発明に従い
セグメント型磁石中の磁粉粒子の配向方向を、長手方向
断面においては内側作用面の中央域に集束させ、かつ横
断面においては少なくとも両端部近傍を作用面側に発散
させることにより、トルクの発生を招くことなく、むし
ろ向上させた上で、コギングの発生を効果的に防止する
ことができる。
【0030】
【発明の効果】かくしてこの発明によれば、セグメント
型磁石材料中の磁粉粒子を、長手方向断面においては内
側作用面の中央域に効果的に集束配向させる一方、横断
面においては少なくとも両端部近傍を作用面側に発散さ
せることができるので、着磁後における有効作用面にお
ける表面磁界を低下させることなしに、ステーター磁界
の境界におけるギャップ磁束密度の変化を緩和すること
ができ、従ってモータートルクの低下を招くことなくコ
ギングの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】セグメント型磁石の横断面及び長手断面におけ
る磁粉粒子の磁化容易軸の配向状態を示した図である。
【図2】従来のセグメント型磁石を組み込んだモーター
の断面図である。
【図3】この発明に従うセグメント型磁石を組み込んだ
モーターの断面図である。
【図4】この発明に従う別のセグメント型磁石を組み込
んだモーターの断面図である。
【図5】製品磁石の横断面における磁粉粒子の配向がア
キシャル配向になるような磁気回路装置をそなえる磁場
配向成形金型の横断面図である。
【図6】製品磁石の横断面における磁粉粒子の配向がラ
ジアル配向になるような磁気回路装置をそなえる磁場配
向成形金型の横断面図である。
【図7】製品磁石の横断面における磁粉粒子の配向が両
端部発散配向になるような磁気回路装置をそなえる磁場
配向成形金型の横断面図である。
【図8】製品磁石の横断面における磁粉粒子の配向が全
体発散配向になるような磁気回路装置をそなえる磁場配
向成形金型の横断面図である。
【図9】製品磁石の長手断面における磁粉粒子の配向が
アキシャル配向になるような磁気回路装置をそなえる磁
場配向成形金型の横断面図である。
【図10】製品磁石の長手方向断面における磁粉粒子の
配向が単純集束配向になるような磁気回路装置をそなえ
る磁場配向成形金型の横断面図である。
【図11】製品磁石の長手方向断面における磁粉粒子の
配向が両端部側面集束配向になるような磁気回路装置を
そなえる磁場配向成形金型の横断面図である。
【図12】(a)は、横断面における集束角度XA の説
明図である。(b)は、横断面における集束角度XB
びXC の説明図である。
【図13】(a)は、長手方向断面における集束角度Y
の説明図である。(b)は、長手方向断面における側面
集束率Zの説明図である。
【図14】実施例で作製したセグメント磁石の寸法を示
した図である。
【符号の説明】
1 キャビティ 2 ダイ 3 主極 4 対極 5 スプールランナー 6 突き出し棒 7 軸受け 8 ワッシャー 9 板ばね 10 ブラシ 11 セグメント型磁石 12 ローター磁極 13 ローター励磁コイル 14 シャフト 15 強磁性体ケース
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01F 7/02

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 横断面の内側が円弧状を呈して長手方向
    に延在し、その内側湾曲面を作用面とするセグメント形
    状の磁石であって、該磁石の磁粉粒子の磁化容易軸の配
    向方向が、長手方向断面において、内側作用面の中央域
    に集束し、かつ横断面において、少なくとも両端部近傍
    が該磁石の非作用面側に集束してなる異方性セグメント
    型磁石。
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