JP3011066B2 - 高炉炉底部構造 - Google Patents

高炉炉底部構造

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JP3011066B2
JP3011066B2 JP7221777A JP22177795A JP3011066B2 JP 3011066 B2 JP3011066 B2 JP 3011066B2 JP 7221777 A JP7221777 A JP 7221777A JP 22177795 A JP22177795 A JP 22177795A JP 3011066 B2 JP3011066 B2 JP 3011066B2
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賢治 片山
隆信 稲田
悟 若林
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は高炉の長寿命化を目
的とした高炉炉底部の耐火物構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、高炉の大型化が進み内容積で5000
m3を越えるものも少なくない。このような大型高炉の改
修には莫大な費用がかかることから、最近の高炉操業に
おいては、銑鉄を安定に製造することもさることなが
ら、少しでも炉寿命を延ばすことが重要な課題となって
いる。高炉の寿命判断は、生産計画に沿った吹き止めを
除けば炉本体の損傷程度を基に下されることになるが、
その判断基準は休風時の補修により操業を継続するに必
要な炉体維持が可能か否かにある。稼働開始以降、定期
的あるいは必要に応じて休風時に炉内面から補修を実施
しているが、高炉炉体の中で羽口より上部の側壁部につ
いては補修技術の進歩により、ある程度炉体維持が可能
となっているものの、羽口より下部の炉体側壁部および
底部については、溶銑滓が存在する部位であること、お
よび羽口より下部の内容物を容易に空にすることができ
ないために同部の損傷に対する抜本的補修は不可能であ
る。すなわち、羽口より下部の側壁部、および底部 (以
下「炉底側壁」および「炉底底部」とそれぞれ称す) の
著しい損傷は、高炉の寿命を決定すると考えてよく、炉
命延長の鍵は炉底側壁および底部の損傷抑止にあると言
える。
【0003】この炉底側壁および炉底底部の損傷とは具
体的に言えば炉内面にある耐火レンガの侵食および損傷
を意味し、レンガ損耗機構は複雑であるが、その主な要
因は溶銑の流動によるレンガ溶損にあるとされている。
溶銑流動が活発であれば損耗は進行する。従って、レン
ガ損耗抑制とは同部近傍の溶銑流速を低下させ熱負荷を
軽減することにあるといえる。
【0004】従来、炉底保護のため含Ti鉄源鉱石の装
入、あるいは羽口からの含Ti鉱石の吹き込みなどが実施
されてきた。これらは炉底側壁および炉底底部近傍の溶
銑粘度上昇による溶銑流速の低下を目的としたものであ
る。しかし、含Ti鉱石は安価なものではなく常時使用す
ることはコスト的にデメリットが大きい。また、大量使
用も出銑滓が悪化する危険性がある。一方、通液性の面
から溶銑流速を考えた場合、高炉炉床部に発生する溶銑
だけの領域 (以下「コークフリー層」と称す) の有無が
問題となる。
【0005】図1に高炉炉床部の模式図を示す。炉底底
部3の上方にスラグ6+コークス8の上層と溶銑7+コ
ークス8の下層からなるコークス充填層1およびコーク
フリー層2が存在する。また、炉底側壁4の上部には円
周方向一定間隔で羽口5、下部には出銑口9が設けられ
ており、出銑口9の炉底部からの高さを湯溜り深さ10と
いう。
【0006】このように高炉炉底部にコークフリー層2
が存在すればその部分の通液性はコークス充填層1と比
較して著しく良いことから、コークフリー層が存在する
部位は溶銑流速が上昇し熱負荷が増すこととなる。その
ため溶銑流動に与える影響は大きく、特に炉底側壁部に
のみ発生した場合など、溶銑流は環状流化し同部のレン
ガ損耗が促進される。
【0007】このコークフリー層に着目して、炉底保護
を図る技術がいくつかある。例えば特公平5−7443号公
報においては炉中心部の鉱石/コークス( 以下「O/
C」と称す) 比を上昇させ炉中心部の装入物荷重を上げ
ることによって炉底部コークス充填層の浮上を抑止する
方法が開示されている。しかし、炉中心部のO/C比を
上昇させることは、炉上部での半径方向ガス流分布にも
影響を与えることから、高炉内製銑反応の効果的な進
行、さらには安定操業を阻害する危険をはらんでいる。
【0008】また、特開平4−45213 号公報に示された
技術は、コークフリー層の形状を実験により推定した上
で、その層を埋める形の炉底形状を提案するものであ
る。具体的には炉床部の底面の構造を炉中心部から炉周
辺部に向かう水平面に対して20〜45度の角度範囲で傾斜
させ、炉床にコークフリー層を発生させないことにより
溶銑流速を制御し、レンガ損耗の抑制を図っている。し
かしながら実際の高炉では出銑を断続的に行っているた
め湯面位置が変動しコークス充填層も浮沈する。また、
操業条件、特に装入O/C比によっても浮沈すると考え
られる。安息角とほぼ等しい45度の傾斜ではコークス充
填層が大きく浮上することで極薄コークフリー層が炉中
心から炉周辺部全体に、45度より小さい角度ではくびれ
た部分、つまり局所的に薄いコークフリー層が発生し、
その部分では溶銑が高速度で流れて異常損耗が起こる可
能性が高く、高炉操業においてこのような急激な損耗は
対処が遅れる危険性がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上述
のごとき問題点に鑑み、高炉の基本使命である効率的か
つ安定な銑鉄製造を阻害することなく、高炉の炉寿命の
延長を図ることのできる高炉炉底部構造を開発すること
にある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、炉底側壁
および炉底底部レンガの損耗抑制に関して検討を重ねた
結果、炉底耐火物構造を炉底側壁周辺部でコークフリー
層形成のない構造とすることで同部のレンガ損耗を抑制
できることに着目し、高炉の羽口高さでの炉半径をRと
したとき、上述の特開平4−45213 号公報にみられる認
識とは反対に中心からの距離0.5 R以上かつ0.8 R以下
の範囲内から炉底底面と水平面とのなす傾斜角度を45度
超に増加させることを特徴とする高炉炉底耐火物構造を
発明した。
【0011】ここに、炉底底面は炉底の投影面をいい、
炉底底面と水平面とのなす角は、反時計回りの方向を正
として定義する。その好適態様にあっては、上述の傾斜
角度を持つ炉底底面と炉底側壁の境界位置が出銑口の高
さ以上となる湯溜まり深さを持つように構成してもよ
い。
【0012】
【発明の実施の形態】ここで、本発明において上述のよ
うな構成をとる理由について、その作用とともに詳述す
る。
【0013】過去の高炉解体調査結果を図2に示す。図
中、羽口5の下方の侵食の様子を示すが、出銑口9より
下方に特に顕著な侵食が見られ、最大侵食ライン11まで
築炉時レンガ面12から大きく侵食されているのが分か
る。13は鉄皮、14はシャモットレンガ、15はカーボンレ
ンガをそれぞれ示す。
【0014】ここで注目されるのは、長期間の操業で炉
底部は侵食を受けるが、出銑口9より上方ではそれほど
侵食は顕著でなく、一方、特に炉底側壁部のレンガ損耗
が著しいことである。この主な原因は出銑口に向かう溶
銑流の環状流化にあると考えられ、同部位に発生するコ
ークフリー層は炉底側壁部のレンガ損耗に非常に大きな
影響を及ぼしていると推定される。
【0015】そこで、コークフリー層の形状が、炉底側
壁・炉底底部のレンガに与える熱負荷について把握する
ため、図3に示す炉底形状( コークフリー層の形状:
A、B、C) を前提条件として炉底湯流れモデルによる
数値解析を行った。
【0016】コークフリー層の形状A、B、Cの各場合
についてそれぞれ3点での熱流束の量を求め、その結果
を図4に示す。これらの結果からも分かるように、炉底
底部ではコークフリー層形状を大きく変化させても熱流
束にそれほど大きな変化はない。しかし、炉底側壁では
計算部位でのコークフリー層の有無が熱負荷に大きな変
化を与えており、コークフリー層なしの場合、20%以上
熱流束が減少している。また、熱負荷を比較した際、底
部より側壁の方が大きい。
【0017】従って、炉底耐火物構造は常に出銑口直下
の炉底側壁部近傍にコークフリー層が発生しないように
考慮する必要がある。コークフリー層上面形状いわゆる
コークス充填層との境界形状について平板模型実験によ
り求めた文献がある。「製銑第54委員会資料54委−186
4」である。それによれば、コークフリー層上面形状
は、傾斜角0〜44.0度で変化するとされている。しか
し、本発明ではこの傾斜角度以上の傾斜をもつ炉底構造
を作ることで、炉底底部にコークフリー層ができたとし
ても出銑口付近の炉底側壁は必ずコークス充填層が占
め、溶銑流の環状流化をもたらすコークフリー層形状の
発生が押さえられることとなる。そこで本発明では傾斜
角度を45度より大きな値と決定した。
【0018】しかし、コークフリー層の形状は溶銑滓の
浮力、上部からの荷重、送風圧、充填物の密度などの因
子により決定されるため。湯溜まり深さの増加、上部か
らの荷重減少 (O/C比の減少) はコークス充填層を浮
上させ、炉底部の全範囲にコークフリー層が発生する可
能性がある。そこで、炉底底面と炉底側壁の接点、つま
り境界位置が、出銑口高さ以上となる湯溜まり深さとす
れば、出銑口付近の局所的コークフリー層の発生を最大
限押さえることができ、発生した場合もすでに炉底底部
の広範囲においてコークフリー層となっているため局所
的な溶銑流動は起こり得ないのである。
【0019】さらに、コークフリー層の形状を推定する
ために模型実験を実施した。装置は全周模型装置 (1/20
縮尺) を使用し、粒径0.5 〜1.0 mmの焼結鉱を装置内に
充填、その後荷下がりさせた状態で装置底部にかかる応
力を測定した。
【0020】その測定結果を図5に示す。図示結果から
も、装置底部にかかる応力が、中心部から中間部までほ
ぼ一定で中間部から壁側に向かって急激に低下している
ことが分かる。このような応力分布が実際の高炉の場合
にも鉛直方向にそのままかかるとすればコークス充填層
の最下部は、高炉の羽口高さでの炉半径をRとしたと
き、中心からの距離0.5 R未満の範囲でほぼ平らで0.5
R以上で壁側に向かって上昇する形状となると考えられ
る。
【0021】そこで本発明にあっては、中心からの距離
0.5 R以上で炉底底面と水平面とのなす傾斜角度を増加
させ、その傾斜角度を底部側壁に向かって45度より大き
くするのである。また、0.5 R未満の水平面と炉底底面
とのなす角は絶対値が10度程度なら中心部が中間部より
高い構造でも問題はない。ただし、中心からの距離が0.
8 Rですでに装置底部にかかる垂直応力が、中心および
中間部の約30%以下になっている。しかも、0.8 R超か
ら傾斜をつけてもすでに炉壁に十分接近しているため、
コークフリー層が炉壁側に発生することが予測され、効
果があまり期待できない。そこで上限値として0.8 Rを
決定した。より好ましくは、0.5R〜0.8Rの距離であり、
傾斜角度も45〜70度である。
【0022】
【実施例】次に、本発明の具体例を示す実施例によって
その作用効果を詳述する。操業条件によりコークス充填
層は浮沈すると考えられる。そこで図6においてケース
1〜5に示す各炉底構造において、 Aシリーズ:コークス充填層が沈下している場合、図6
(a) 〜(f) Bシリーズ:コークス充填層が0.3Rだけ浮上している場
合、図6(g) 〜(l) を想定し図5の底部垂直応力分布をもとにコークフリー
層の形状をそれぞれ推定した。
【0023】なお、図中、は炉底中心位置、は炉底
側壁位置をそれぞれ示し、また符号9は出銑口を示し、
符号12は築炉時のレンガ面を示し、そして斜線部はコー
クフリー層2を示す。
【0024】これらの前提条件をもとに炉底湯流れモデ
ルによる数値解析を実施した。計算に使用した境界条件
は炉容積4800m3、炉床半径7.3mの高炉操業条件を参考に
して適宜設定した。
【0025】炉底中心位置、炉底側壁位置 (出銑口
から一定距離下の位置) のポイントにおける熱流束を求
めA、Bシリーズそれぞれについて、ベース (図6(e)
、(k) 参照) と各ケース1〜5とを比較し、相対的評
価を行った。ベースはA、Bシリーズともに従来の高炉
に近い条件の場合の結果である。表1にAシリーズ、表
2にBシリーズの結果をそれぞれ示し、それらの2つの
結果の総合評価を表3に示す。
【0026】本発明が提案する炉底構造に相当するケー
ス3、ケース5ではいずれのシリーズでも、つまりコー
クス充填層の浮沈にかかわらず、熱負荷が押さえられて
いる。一方、傾斜角度を25度 (ケース1) とした炉底構
造ではコークス充填層が上昇すると (図6(g) 参照) 、
薄いコークフリー層の部位が炉底中心と出銑口の間に局
所的に発生し、コークフリー層全体がつながってしま
う。そのため、この状況にある場合、溶銑流速がコーク
フリー層の薄い部位で増加し、熱負荷が大幅に上昇す
る。
【0027】またケース2のように0.5R以上から傾斜角
度30度とした場合、コークフリー層が沈下すると図6
(b) のように側壁近傍にコークフリー層が発生し、溶銑
流の環状流化を招き、熱負荷が大幅に上昇する。さらに
従来の高炉の炉底構造に相当するベース (図6(e))ある
いはケース4 (図6(d))もコーナ部にコークフリー層が
発生し同様の状況となる。
【0028】以上、炉底湯流れモデルによる数値解析の
結果、本発明の炉底耐火物構造は常時炉底側壁の熱負荷
を押えることができ、レンガ損耗抑制に有効であること
が確認された。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
【0032】
【発明の効果】本発明にしたがって、中心からの距離0.
5 R以上かつ0.8 R以下の範囲内から炉底底面と水平面
とのなす角を増加させ、その傾斜角度を底部側壁に向か
って45度より大きくした高炉炉底部の耐火物構造とする
ことで、炉底側壁周辺部でコークフリー層の発生が困難
となり、溶銑流の環状流化を防ぎ、炉底側壁のレンガ損
耗を大幅に抑制することができる。従って、安定操業を
阻害することなく高炉の炉命延長が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一般的な高炉炉底部構造を示した模式図であ
る。
【図2】高炉解体調査結果から炉底レンガ侵食ラインを
示した模式図である。
【図3】炉底湯流れモデル計算に使用したコークフリー
層形状を示した模式図である。
【図4】コークフリー層を変化させ、3ポイント (炉底
1、炉底2、側壁) の熱流束変化を示したグラフであ
る。
【図5】模型実験による底部垂直応力の半径方向分布を
示したグラフである。
【図6】図6(a) 〜(l) は、本発明の効果を確認するた
めに炉底湯流れモデルを使用したときのその計算に使用
した炉底構造とコークフリー層形状を示した模式図であ
る。
【符号の説明】
1:コークス充填層 2:コークフリー層 3:炉底底部 4:炉底側壁部 5:羽口 6:スラグ 7:溶銑 8:コークス 9:出銑口 10:湯溜まり深さ 11:最大侵食ライン 12:築炉時レンガ面 13:鉄皮 14:シャモットレンガ 15:カーボンレンガ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21B 7/00 - 7/16

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 高炉の羽口高さでの炉半径をRとしたと
    き、高炉炉底部の底面形状を中心からの距離0.5 R以上
    かつ0.8 R以下の範囲内から炉底底面と水平面とのなす
    傾斜角度を45度超に増加させることを特徴とする高炉炉
    底部構造。
  2. 【請求項2】 前記の傾斜角度を持つ炉底底面と炉底側
    壁の境界位置が出銑口の高さ以上となる湯溜まり深さを
    持つことを特徴とする前記請求項1記載の高炉炉底部構
    造。
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