JP3008412B2 - ２サイクルエンジンの排気装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、２サイクルエンジンの排気装置に関し、詳
しくは、弁体によって排気時期を変化させる排気装置に
関するものである。

〔従来の技術〕

第３図は、この種の２サイクルエンジンを概念的に示
したものである。この２サイクルエンジンは、シリンダ
ブロック１におけるエキゾーストポート２のシリンダ３
側開口2a上縁部に弁体４を備えている。

弁体４は、エキゾーストポート２に開口する凹部５に
配置された弁本体4aと、シリンダブロック１に摺動自在
に嵌合され、下端部に上記弁本体4aが固定され、かつ上
端部に図示していない駆動手段との間を連係するリンク
機構６が構成された軸部4bとを備えており、上記駆動手
段を作動させると、リンク機構６および軸部4bを介して
上記弁本体4aがエキゾーストポート２に出没移動され
る。

このようなエンジンでは、上記弁本体4aをエキゾース
トポート２に進退させると、シリンダ３側開口2aの上縁
2a′が実質上距離Ａだけ変化することになり、ピストン
（図示せず）の往復動によるエキゾーストポート２の開
成時期、すなわち排気時期を変化することができ、低回
転数域から高回転数域に亘る広い回転数域でのエンジン
出力の向上を図ることができる。

〔発明が解決しようとする課題〕

ところで、上記のような排気装置における弁体４は、
その弁本体4aを介して常時エキゾーストポート２に露出
されているため、該エキゾーストポート２を通過する高
温高圧の既燃焼ガスから圧力等の外力を受けることにな
る。

したがって、この種の排気装置において弁体４の正確
な作動を確保するためには、上記軸部4bを太径にした
り、その本数を多くして弁体４を案内することが好まし
い。

しかしながら、上記従来の排気装置では、弁本体4aの
作動とともに軸部4bも移動されるため、この軸部4bを太
径にしたり、本数を多くした場合には弁体４の慣性重量
が増大され、その作動応答性が損なわれる虞れがある。

本発明の目的は、上記実情に鑑みて、弁体の作動応答
性を損なうことなくその正確な作動を確保することので
きる２サイクルエンジンの排気装置を提供することにあ
る。

〔課題を解決するための手段〕

本発明に係る２サイクルエンジンの排気装置では、シ
リンダブロックにおけるエキゾーストポートのシリンダ
側開口周縁部に弁体を移動可能に配設し、この弁体を上
記エキゾーストポートに進退することにより排気時期を
変化させるようにした２サイクルエンジンの排気装置に
おいて、前記弁体と、この弁体を案内する軸部材と、該
軸部材を保持するガイド部材とによって予めユニットを
構成し、当該ユニットを前記シリンダブロックに取り付
けるようにしている。

〔作用〕

上記構成によれば、弁体をこの弁体とは別体の軸部材
によって案内するようにしている。

〔実施例〕

以下、実施例を示す図面に基づいて本発明を詳細に説
明する。

第１図（ａ）および第１図（ｂ）は、本発明に係る排
気装置を適用した２サイクルエンジンの要部を概念的に
示したもので、特に自動二輪車に搭載される２サイクル
エンジンを示している。図には明示されていないが、シ
リンダブロック10に形成されたエキゾーストポート11
は、シリンダ12側の部分が二股に分岐されており、該シ
リンダ12に一対の開口11a,11aを有している。これらエ
キゾーストポート11におけるシリンダ12側の開口11a,11
aは、互いに対称な形状を成しており、それぞれの上縁1
1a′,11a′の高さ位置がエンジンの高回転数域に適した
ものに設定されている。

この２サイクルエンジンは、シリンダブロック10にお
ける上記エキゾーストポート11の上方に位置する部位に
収容孔13を有している。この収容孔13は、シリンダブロ
ック10の外側面10aから上記エキゾーストポート11に向
けて形成され、該エキゾーストポート11におけるシリン
ダ12側の開口11a,11aの上縁部近傍に開口しており、そ
の内部にはガイド部材20および弁体21が収容配置されて
いる。

ガイド部材20は、第２図に示すように、先端中心部が
切り欠かれた底板20aと、この底板20aの基端部から上方
に延在された立板20bとが一体に成形されたもので、立
板20bに挿通孔20cと一対の嵌着孔20d,20dとを有してい
る。挿通孔20cは、矩形状を成し、上記底板20aの延在方
向に沿って穿設されている。嵌着孔20d,20dは、それぞ
れ上記立板20bの延在方向に沿って形成され、ガイド部
材20の幅方向に互いに間隔をもって並設されている。

弁体21は、先端面21aが円弧状を成し、側面視が略Ｌ
字状を成す弁本体21bと、この弁本体21bの基端面上部か
ら外方に向けて延設され、外端部に連係ピン22を備えた
案内部21cとを有している。弁本体21bは、中心部に形成
された切欠き21dによって先端部が左右に２分割されて
いる。案内部21cは、上面視がＬ字状を成しており、そ
の基端部には一対の摺動孔21e,21eが形成されている。
摺動孔21e,21eは、上下方向に向けて穿設されており、
上記ガイド部材20に形成された嵌着孔20d,20dと同一の
間隔をもって並設されている。

これらガイド部材20および弁体21は、ガイド部材20の
挿通孔20cに弁体21の案内部21cを貫挿させるとともに、
ガイド部材20の嵌着孔20d,20dにそれぞれ弁体21の摺動
孔21e,21eを介して軸部材23,23を嵌着させることによっ
て予めユニット化される。

この状態におけるガイド部材20および弁体21は、該弁
体21の案内部21cが摺動孔21e,21eを介して軸部材23,23
を摺動することにより該軸部材23,23上を案内され、挿
通孔20cの範囲内においてこれら軸部材23,23の軸方向へ
相対的に移動される。

これらユニット化されたガイド部材20および弁体21
は、第１図に示すように、該弁体21の先端面21aをシリ
ンダ12側に向け、ガイド部材20の底板20aおよび弁体21
の弁本体21bをエキゾーストポート11に臨ませた状態で
収容孔13に収容した後、ガイド部材20を介しネジ（図示
せず）等の締結手段でシリンダブロック10に保持され
る。

さらに、その外端周縁部が馬蹄形のプレート24によっ
て覆着され、上記連係ピン22には図示していない駆動手
段に接続されたリンク機構25が連係される。

上記のように構成された２サイクルエンジンでは、上
述した図示せぬ駆動手段によりリンク機構25を作動させ
ると、連係ピン22を介して弁体21が移動され、該弁体21
の弁本体21bがエキゾーストポート11に進退される。

このとき、第１図（ａ）に示すように、最も縮退させ
た状態の弁体21においては、弁本体21bが完全に収容孔1
3内に没入され、その底面21fがエキゾーストポート11の
内壁面11bと一致されており、ガイド部材20の底板20aと
ともに、該収容孔13のエキゾーストポート11における開
口13aを閉塞させている。

いま、この２サイクルエンジンが運転され、回転数が
所定の低回転数域にあるとき、上述した図示していない
駆動手段が作動され、第１図（ｂ）に示すように、弁体
21の弁本体21bがエキゾーストポート11に突出される。

この状態においては、弁体21によってエキゾーストポ
ート11におけるシリンダ12側の開口11a,11aの上縁11
a′,11a′の高さ位置がそれぞれ実質上距離Ｈだけ下降
したことになり、低回転数域で好適な遅い排気タイミン
グが確保され、低回転数域でのエンジン出力が向上され
る。

一方、上記の状態からエンジンの回転数が上昇し、所
定の高回転数域に至った場合には、上述した図示してい
ない駆動手段が先とは逆方向に作動され、第１図（ａ）
に示すように、弁体21の弁本体21bがエキゾーストポー
ト11から退去される。

この状態においては低回転数域の状態に比べて距離Ｈ
だけ早い時期に排気が開始されることになり、高回転数
域で好適な排気タイミングが確保され、高回転数域での
エンジン出力が向上される。

これらの間、エキゾーストポート11内には高温高圧の
既燃焼ガスが通過しているため、上記弁体21はこの既燃
焼ガスから圧力等の外力を受けることになるが、該弁体
21は複数の軸部材23,23によって案内支持されているた
め、その作動の際の影響を可及的に防止することができ
る。

しかも、上記複数の軸部材23,23は、シリンダブロッ
ク10に保持されたガイド部材20に設けられているため、
これら軸部材23,23を太径にしたり、本数を増加した場
合にも弁体21の慣性重量に影響はなく、したがってその
作動応答性が損なわれることはない。

なお、上記実施例では、自動二輪車に搭載され、エキ
ゾーストポート11におけるシリンダ12側の部分が二股に
分岐された２サイクルエンジンについて例示している
が、本発明ではこれらに限らない。

〔発明の効果〕

上記したように、本発明に係る２サイクルエンジンの
排気装置によれば、弁体をこの弁体とは別体の軸部材に
よって案内するようにしているため、弁体の正確な作動
を確保するために軸部材を太径にしたり、その数を増加
させた場合にも弁体の慣性重量が増大することはなく、
その作動応答性を確保することができる。

しかも、本発明では、弁体、軸部材およびガイド部材
によって予めユニットを構成するようにしているため、
取付作業としてはこのユニットを取り扱うだけでよい。

したがって、弁体と軸部材とを別体に構成したことに
起因して取付作業の煩雑化が招来されることもない。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本発明に係る排気装置を適用した２サイクル
エンジンの要部を概念的に示した断面図であり、第１図
（ａ）は弁体を縮退させた状態を示し、第１図（ｂ）は
弁体を突出させた状態を示したものである。第２図は、
本発明に係る排気装置に適用される弁体を概念的に示し
た拡大分解斜視図、第３図は、従来の排気装置を適用し
た２サイクルエンジンの要部を概念的に示した断面図で
ある。 10……シリンダブロック、11……エキゾーストポート、
11a……シリンダ側開口、12……シリンダ、20……ガイ
ド部材、21……弁体、23……軸部材。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】シリンダブロックにおけるエキゾーストポ
   ートのシリンダ側開口周縁部に弁体を移動可能に配設
   し、この弁体を前記エキゾーストポートに進退すること
   により排気時期を変化させるようにした２サイクルエン
   ジンの排気装置において、 前記弁体と、この弁体を案内する軸部材と、該軸部材を
   保持するガイド部材とによって予めユニットを構成し、
   当該ユニットを前記シリンダブロックに取り付けたこと
   を特徴とする２サイクルエンジンの排気装置。