JP3007035B2 - ボールペンレフィル - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、先端孔と連通する
インキ流通孔を有するチップホルダー部材とインキ収容
部材を合体させて成る比較的大容量のインキを貯蔵可能
にしたインキ収容筒に、剪断減粘性を有するインキと、
該インキの後部にペースト状のインキフォロアーを収蔵
し、その先端孔にボールペンチップを後端に通気手段を
設けた尾栓を嵌着させて成るボールペンレフィルに関
し、更に詳しくは、ボールペンチップのボールを抱持す
る先端かしめ部内壁面にボールを常に押圧する弾発部材
を直接又は可動部材を介してチップ内孔からチップホル
ダー部材間に配設し、チップ先端部からのインキ乾燥や
インキ漏出の防止を意図したボールペンレフィルに関す
る。

【０００２】

【従来の技術】ボールペン用の高粘度油性インキ２を直
接インキ収容筒１に収蔵し、該インキの後部にインキの
逆流防止剤としてペースト状のインキフォロアー３が装
填され更に、インキ収容筒の後端に通気手段を有する尾
栓５を止着すると共に、インキ収容筒の先端孔にボール
ペンチップ４を嵌着させて成るボールペンレフィル（図
７参照）は、インキ収容筒の内径が大きく比較的大容量
のインキを貯蔵可能にしたボールペンレフィルとして
又、軸筒先端開口部よりその筆端部を出し入れする出没
機構を備えた軸筒内に装着されるノック式ボールペン用
レフィルとしても良く知られている。

【０００３】上記の類のボールペンレフィルには高粘度
油性インキの他にも、例えば実開平６−５３１８５号の
ように収蔵するインキが粘度の低い水性インキを用い且
つ、ボールがスプリングで弾発されて非使用時にはチッ
プ先端かしめ部の内壁面に接触しているように構成され
たものや、本発明で用いるインキと同様の静的状態では
比較的高い粘度を有しているが、筆記時のボールの回転
で粘度が低下し流動性が得られる、いわゆる剪断減粘性
を有するインキを用いた例として実開平６−８３３７８
号があるように、筆跡の鮮明さ，書き味の良さ等の性能
面や簡易な構造で部品コスト，組立コストを低減する等
の経済性を追求した改良が種々加えられてきている。

【０００４】又、本発明で用いるインキ収容筒は、チッ
プを保持するチップホルダー部材とインキを収蔵するイ
ンキ収容部材が別体で存在し、これを一体化してインキ
収容筒にして用いるものであるが、この種のインキ収容
筒は、チップ嵌合部周辺に特殊な細工を必要とするため
チップホルダー部材をインキ収容部材とは別体で設ける
例えば実開平６−８３３７９号のような場合や、簡便に
しかも廉価に大容積のインキ収容部を持つインキ収容筒
を得る手段として、従来例として示した図８のインキ収
容筒１がチップホルダー部材９とインキ収容部材１０と
から成るレフィルのように、その用途に応じ一般的に用
いられている技術である。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】滑らかな筆記感触で鮮
明な筆跡が得られる剪断減粘性を有するインキを収蔵し
て成るボールペンは、静的な状態ではインキが高い粘度
に保たれるが、ボールが回転するとボールとの接触面で
ズリ作用が生じ瞬時に粘度が低下し流動性があるインキ
に変化するものであるから、衝撃がレフィルに加わった
状態を想定すると、従来例で示した図７および図８のレ
フィルではインキ収容筒とインキの接触面でズリ作用が
生じてインキが揺動し、インキの自重がチップを上向き
の状態ではインキフォロアーに又、チップを下向きの状
態ではボールに衝撃力となって加圧されることになる。
インキフォロアーの場合は、その粘稠度とインキ収容筒
内壁面との漏れ性等物理的性能で補えるが、ボールへの
衝撃加重を支えるものはボールを抱持するチップ先端縁
のかしめ加工による抱持力のみである。又、チップ先端
縁の肉厚はボール径が小さくなるにつれ薄くなり、加え
て先端縁からのボールの露出量も小さくなることから筆
記に際し先端縁が紙面に接触し易くなって、先端縁の磨
耗と共にボール抱持力が低下することになり、衝撃によ
るインキの揺動荷重を支え切れなくなった時ボールが脱
落することになる。

【０００６】従って、この種のレフィルをチップが下向
き状態で携行するノック式ボールペンの軸筒内に装着さ
れると、チップ先端よりインキが漏出して垂れ下がり或
いは、ボールが脱落して軸筒内をインキで汚したり、ひ
どい場合は衣服を汚してしまうことになるので、チップ
が上向き状態で携行されるタイプのキャップ式ボールペ
ンとして更に、キャップ内にチップ先端部を被覆するゴ
ムパッキンを装填するなど、インキ漏出を防止する対応
がなされて用いられていたもので、ノック式ボールペン
に使用できるレフィルではなかった。

【０００７】本発明は滑らかな筆記感触で鮮明な筆跡が
得られる剪断減粘性を有するインキを用い且つ、ノック
式ボールペンの軸筒内にも収納可能なレフィルとして、
チップが下向き状態にある時衝撃力が加わって起こるボ
ール脱落や、同様にチップを下向き状態で携行すると発
生するチップ先端からのインキ漏出の問題を、簡便な手
段により防止することを意図するものである。

【０００８】

【課題を解決するための手段と実施の形態】本発明はか
かる状態に鑑みてなされたものであって、先端孔と連通
するインキ流通孔を有するチップホルダー部材とインキ
収容部材を合体させて形成したインキ収容筒に、剪断減
粘性を有するインキと、該インキの後部にペースト状の
インキフォロアーを収蔵し、その先端孔にボールペンチ
ップを嵌着させると共に、チップホルダー部材との間に
ボールを抱持する先端かしめ部内壁面にボールを常に押
圧する弾発部材を直接又は可動部材を介して配設し、後
端に通気手段を設けた尾栓を嵌着させて成るボールペン
レフィルにあって、前記ボールペンチップがボールを抱
持する先端かしめ部内壁面をボールと同形の球面に形成
すると共に、前記チップホルダー部材が先端孔と該先端
孔径より一段小径で後端面迄は貫通しないインキ流通孔
を有し、前記インキ収容部材との嵌合部に、インキ流通
孔に通ずる径方向に穿設した横溝と、該横溝と後端面に
連通してインキ流通路となる軸心方向に延びる縦溝を設
け、インキの流通量を規制する後端面を含む隔壁部を形
成することをもって課題解決のための手段とするもので
ある。

【０００９】すなわち、チップ先端からのインキ漏出原
因は、ボールを抱持する先端縁のかしめ部内壁面と弾発
部材に押圧されたボールの接触による弁機能が不完全で
あるためで、少なくとも、ボールが接触するかしめ部内
壁面はボールと同形の球面に形成され互いに密接するよ
うに配慮されなければならない。その一手段として、ボ
ールハウス内にボールを位置させた状態で先端縁にかし
め治具を押し当て、ボールにかしめ部を圧接させる圧延
かしめを行ない、かしめ部内壁面をボールと同形の球面
に形成し、しかる後先端縁から露出するボール上面をハ
ンマーロッドでハンマーリングし、ボール座を所定量後
端部方向に塑性変形させて、ボールハウス内におけるボ
ールとのクリアランスを確保するもので、同時に圧延か
しめされた先端縁は通常のかしめ加工による先端縁より
加工硬化でボールの抱持力も強化する作用を生むことに
なる。

【００１０】しかしながら、剪断減粘性を有するインキ
を用いるレフィルにあっては、チップが下向き状態でレ
フィルにノック作動等の衝撃力が加わると、先記したチ
ップホルダー部材にインキの流通量を規制するインキ流
通路と後端面を含む隔壁部を設けておかないとボール脱
落の危惧が解消できない。レフィルに衝撃力が加わると
インキが揺動して生ずる衝撃圧は、前記の隔壁部の後端
面で受け止めてボールに加わる圧力を極く微圧に保つと
共に、インキの流通量を規制しながら逆に充分チップに
インキを供給するインキ流通量を確保する手段として、
本発明は更に、チップホルダー部材の嵌合部に設けたイ
ンキ流通孔に通ずる径方向に穿設した横溝と、該横溝と
後端面に連通してインキ流通路となる縦溝を、径方向対
称位置に複数設けて、インキ流通量を規制する後端面を
含む隔壁部に形成することによって、一方のインキ流通
路に不具合が生じた場合でも性能面にその影響が及ばな
いように配慮するものである。

【００１１】又、ボール径が小径になればなる程ボール
を抱持する先端縁の肉厚は薄くなり且つ、先端縁からの
ボール露出量も小さくなるので、筆記時における紙当り
で先端縁が摩耗してボール落ちする危惧はこれ等の手段
を講じても完全には払拭されるものではない。そこで本
発明は、たとえボール落ちしてもチップ先端部からイン
キを流出させない手段を講じて完璧を期するものであ
る。すなわち、先記したボールペンチップの後部孔に貫
通するインキ導通孔を軸心方向に所定長さに設けて後部
孔との開口部が真円に保たれるように形成すると共に、
ボールを押圧する可動部材を弾発部材との間に介在さ
せ、該可動部材を、ボール面にその先端面を当接するチ
ップのインキ導通孔径より小径の先端部と一段径大に設
けた芯部からなるボール押圧部と、インキ通路をその外
周上に設け後端面を弾発部材に接するインキ整流部とで
形成すると共に、当該ボール押圧部の先端部と芯部とを
連結する連結部をテーパー面に形成し、ボールが脱落し
た際、可動部材がチップ先端に向け前進することによ
り、先記の真円に設けたインキ導通孔開口部と当該連結
部のテーパー面とが当接し、チップ先端からのインキ流
出を止める弁機構を構成するものである。

【００１２】本発明は以上の簡便な手段により、滑らか
な筆記感触で鮮明な筆跡が得られる剪断減粘性を有する
インキを用いたボールペンレフィルにあって、ノック式
ボールペンの軸筒内に収納され筆端部を出没させるノッ
ク作動の衝撃によって起こるボール脱落と、同様にチッ
プを下向き状態で携行すると発生するチップ先端からの
インキ漏出が共に防止でき更に、万が一ボールが脱落し
てもチップ先端からのインキ流出防止の弁機構が作用す
るので安心してノック式ボールペンに用いることができ
るレフィルを提供するに至ったものである。

【００１３】

【実施例】以下、本発明の実施の形態を実施例を示した
図面を基に詳説する。なお、先記の先行技術例の説明に
用いた部材および部位を示す符号と同じものについては
同符号を用いて説明する。

【００１４】図１は本発明の実施例であるノック式ボー
ルペンに装着できる剪断減粘性を有するインキを収蔵し
たボールペンレフィルを縦断面図で示したものである。
本発明のボールペンレフィルは、チップホルダー部材９
とインキ収容部材１０を合体したインキ収容筒１に、剪
断減粘性を有するインキ２と、該インキの後部にインキ
の消費につれ追従するペースト状のインキ逆流防止剤で
あるインキフォロアー３を収蔵し、チップホルダー部材
の先端孔９ａにボールペンチップ４を嵌着させると共
に、チップホルダー部材との間にボール６を抱持する先
端かしめ部内壁面４ｆにボールを常に押圧する、先端部
を棒状に形成した弾発部材（コイルスプリング）７を配
設し、インキ収容部材の後端１０ｂに通気手段を設けた
尾栓５を嵌着させて構成したものである。

【００１５】本発明で用いるボールペンチップ４は、通
常のボールペンチップと略同様の加工手段で求められる
ものであるが、図２のチップ先端部製造図に示されるよ
うに、ボールハウス４ａ内に挿入されたボール６は、ボ
ールハウス底部に複数条のインキ溝４ｇを刻設したボー
ル座４ｃに支承され、他方先端縁４ｂにかしめ治具Ｔを
押し当てボールに圧接させる圧延かしめが行なわれ、先
端縁かしめ部内壁面４ｆをボールと同形の球面に形成
し、しかる後先端縁から露出するボール上面をハンマー
ロッドＨでハンマーリングし、ボール座を所定量後端部
方向に塑性変形させて、ボールハウス内におけるボール
とのクリアランスＱを確保するように製造されたもので
ある。

【００１６】ボールペンチップ４が具備している特徴点
の一つは、上記の如く先端縁かしめ部内壁面４ｆがボー
ル６と同形の球面に形成されているものであって、これ
により弾発部材７で押圧されたボールがかしめ部内壁面
に密接し、チップ先端からのインキ漏出を防止するしく
みを構成するものである。先端縁かしめ部内壁面をボー
ルと同形の球面に形成する手段はこれに限るものではな
いが、例示した製造手段によるチップはボールハウス４
ａ内におけるボールとのクリアランスＱが比較的小さい
中・低粘度インキ用として適するもので又、最も簡便且
つ確実な製造方法として推奨できるものである。

【００１７】本発明に用いるインキ収容筒１は後述する
チップホルダー部材９の突当鍔部９ｈをインキ収容部材
１０の先端面１０ａに当接させ、その嵌合部９ｄを嵌着
させて一体化したものであって、チップホルダー部材９
はボール６を押圧する弾発部材７を支承すると共に、イ
ンキ２の流通量を規制する後端面９ｃを含む隔壁部９ｇ
において、衝撃によってインキが揺動しその圧力がボー
ルを直撃しないよう衝撃圧を緩衝させる役割を担い、イ
ンキ収容部材１０は内径の設定に自由度があり比較的大
容量のインキを貯蔵可能にすると共に、簡易に且つ廉価
に求めることができる利点を有するものである。

【００１８】チップホルダー部材９は先端孔９ａと該先
端孔径より一段小径で後端面９ｃ迄は貫通しないインキ
流通孔９ｂを有し、外周上にインキ収容部材１０の先端
面１０ａに当接する突当鍔部９ｈと、該突当鍔部より後
部をインキ収容部材との嵌合部９ｄに形成し、当該嵌合
部にはインキ流通孔に通ずる径方向に穿設した横溝９ｅ
と、該横溝と後端面に連通してインキ流通路となる軸心
方向に延びる縦溝９ｆを設け、インキ流通量を規制する
後端面を含む隔壁部９ｇを形成してある（図１および図
４参照）。

【００１９】又、チップホルダー部材９の嵌合部９ｄに
設ける隔壁部９ｇの別の実施例として、図３に示す如く
インキ流通孔９ｂに通ずる径方向に穿設した横溝９ｅ
と、該横溝と後端面９ｃに連通してインキ流通路となる
軸心方向に延びる縦溝９ｆを径方向対称位置に複数設け
て形成したものであるが、一方のインキ流通路に目詰ま
り等の不具合が生じた場合でも性能面にその影響が及ば
ない利点があり又、樹脂材料を射出成形加工する部品加
工面において、インキ流通孔９ｂの片持コアーピンを上
・下両サイドから挾持し安定させる狙いからも有利なこ
とである（図５参照）。なお、レフィルをノック式，キ
ャップ式ボールペンのいずれに用いても良いよう共用化
を図る場合には、図３に示すチップホルダー部材９の突
当鍔部９ｈに軸心方向に延び外周面で開口する空気溝９
ｊを設けておくべきで、キャップ式の軸筒内の段部と突
当鍔部の当接で軸筒内における空気の流通が遮断される
ことを防止するもので、キャップ嵌着時に加圧される空
気の通路となるものである。

【００２０】更に、段落番号「００１５」に記載したボ
ールペンチップ４は、ボールハウス４ａと後部孔４ｄに
連通するインキ導通孔４ｅの長さを通常のボールペンチ
ップより若干長目に設定してあり、ボール座４ｃに刻設
するインキ溝４ｇの加工や先端縁４ｂの圧延かしめ後ボ
ール上面をハンマーリングしてボール座部を塑性変形さ
せる加工の際に、インキ導通孔に変形が起こる影響が及
ばない所定長さにインキ導通孔の長さを設定し、後部孔
で開口する開口部４ｈが真円に形成されるよう配慮して
ある（図２参照）。

【００２１】上記のインキ導通孔４ｅの開口部４ｈを真
円に形成することは、段落番号「００１６」に記載した
ボールペンチップ４が具備する特徴点の他のもう一つの
特徴点であって、後述するボール６を押圧する可動部材
８のボール押圧部８ａとの関係において、万が一ボール
が脱落したとしてもチップ先端からインキを流出させな
い手段を構成するものである。

【００２２】図３はボール６をチップ４の先端縁かしめ
部内壁面４ｆに常に押圧する手段として、ボールと弾発
部材（コイルスプリング）７の間に可動部材８を介在さ
せた本発明における他の実施例について、レフィル先端
部のみを拡大し縦断面にして示したものである。

【００２３】可動部材８は、チップ４のボール面にその
先端面が当接するインキ導通孔４ｅ径より小径の先端部
８ｃとインキ導通孔径より径大の芯部８ｄからなるボー
ル押圧部８ａと、インキ通路８ｆをその外周上に設け後
端面８ｅを弾発部材７に接するインキ整流部８ｂとで構
成し、更にボール押圧部８ａは、先端部８ｃと芯部８ｂ
に連結する連結部８ｈをテーパー面に、インキ整流部８
ｂは、芯部の外周上にその外接円がチップ後部孔４ｄ径
より小径の複数枚のリブ状羽根部８ｇで、円周を等間隔
に区画しインキ通路８ｆに形成している。なお、実施例
ではインキ通路をリブ状羽根部で区画したものを用いた
が、これに限るものではなく、要は弾発部材の配設場所
を通過したインキ２が乱流を起こすことなくスムーズに
チップ先端部に流動することに配慮すべきものである。

【００２４】弾発部材７はコイルスプリング先端面を可
動部材８の後端面８ｅと接し、後端はチップホルダー部
材９の先端孔９ａに支承され、可動部材を介してその弾
発力によりボール６をチップ４の先端かしめ部内壁面４
ｆに押し当てるように作用している。

【００２５】次に、段落番号「００２１」で記載したボ
ールペンチップ４のインキ導通孔開口部４ｈと可動部材
８のボール押圧部８ａの関係において、ボール６が脱落
してもチップ先端からインキを流出させない手段につい
て詳述する。

【００２６】図６はチップ４のボールハウス４ａよりボ
ール６が外方に脱落した状態を、チップ先端部のみを拡
大した一部切欠縦断面にして示したものである。ボール
脱落は、チップが下向き状態にある時レフィルに衝撃が
加わると、剪断減粘性を有するインキ２特有の現象であ
るインキ収容筒１との接触面でズリ作用が発生してイン
キが揺動し、インキの重量がボール面に衝撃荷重となっ
て直撃するためで、本発明はチップホルダー部材９の嵌
合部９ｄにインキの流通量を規制する後端面９ｃを含む
隔壁部９ｇを形成することで対処したことは先記のとお
りである。しかしながら、ボールが脱落する原因はボー
ルを抱持するチップ先端縁の磨耗等他にも存在し、粘度
が低いインキを用いてチップを下向き状態で携行するノ
ック式ボールペンにも適用できるボールペンレフィルと
するためには、ボール脱落に対し更なる工夫が必要であ
った。

【００２７】本発明は、ボールペンチップ４のボール６
とチップホルダー部材９の先端孔９ａで支承する弾発部
材（コイルスプリング）７との間に、段落番号「００２
３」で記述した可動部材８を配し、ボールが脱落した
時、可動部材はコイルスプリングの弾発力を受けてチッ
プ先端方向に移動し、図６に示した状態すなわち、段落
番号「００２０」に記述したチップの真円に形成された
インキ導通孔開口部４ｈに、可動部材のボール押圧部８
ａに設けた、先端部８ｃと芯部８ｄを連結するテーパー
面で形成された連結部８ｈが当接し、チップ先端からの
インキ流出防止の弁機構が作用するように構成されてい
る。

【００２８】本発明はかくの如く、低粘度の水性ボール
ペン用インキと同様に鮮明な筆跡と滑らかな筆記感触が
得られ且つ、水性インキでは必要であったインキ流出の
調整機能をもたせるためのインキ吸蔵体や中継芯又は、
ペン芯部材等の部材を用いず、インキ収容筒１に直詰め
できる静的には高い粘度を有するがボール６の回転で粘
度が低下する剪断減粘性を有するインキ２を収蔵して、
チップを下向き状態で携行するノック式ボールペンに適
用できるボールペンレフィルの現出を試み、障害であっ
たチップ先端部からのインキ漏出（垂れ下がり）やボー
ル脱落の防止と、万が一ボールが脱落した時にはチップ
先端部からのインキ流出が防止できる、簡便にして有効
な手段を見い出したものである。

【００２９】すなわち、ボールペンチップ４を下向き状
態で放置しておくと発生するチップ先端部からのインキ
漏出防止には、チップの先端かしめ部内壁面４ｆをボー
ル６に圧接させる圧延かしめによりボールと同形の球面
に形成して、ボールが密接する面接触を実現させ又、チ
ップが下向き状態で加わる衝撃力で発生するボール脱落
防止には、チップホルダー部材９の嵌合部９ｄにインキ
２の流通量を規制する横溝９ｅと縦溝９ｆから成るイン
キ流通路と後端面９ｃを含む隔壁部９ｇの形成により、
インキの揺動による衝撃圧を後端面で緩衝し更に、万が
一ボールが脱落した際には、ボールと弾発部材７の間に
介在させた可動部材８がチップ先端方向に移動するのに
伴い、真円に形成されたチップのインキ導通孔４ｅの開
口部４ｈと、可動部材のボール押圧部９ａにテーパー面
で形成した連結部８ｈが当接する弁機構を付加するそれ
ぞれの対応手段により、目的とした、ノック式ボールペ
ンに用いることのできる、鮮明な筆跡で滑らかな筆記感
触のボールペンレフィルを提供するに至ったものであ
る。

【００３０】本発明のボールペンレフィルをノック式ボ
ールペンの軸筒内に収容して、衣服のポケットに挾持し
たチップ４が下向き状態で携行するケースでは、ボール
６と同形の球面に形成されたチップ先端かしめ部内壁面
４ｆと、弾性部材７により直接または可動部材８を介し
て押圧されるボール面とが接触する弁機構の作用によ
り、チップ先端部からのインキ漏出や垂れ下がりの心配
がなく又、製品輸送の際の振動や衝撃力が加わるケース
でも、インキの揺動に伴う衝撃圧をチップホルダー部材
９のインキ流通量を規制する後端面９ｃにより、ボール
に加わる圧力を微力におさえてボール脱落の心配を解消
してあり更に、筆記による紙面との接触でボールを抱持
する先端縁４ｂが磨滅し、残存インキがありながらボー
ルが外方に脱落してしまうケースにおいては、チップの
インキ導通孔開口部４ｈと弾発部材７で押圧された可動
部材のボール押圧部８ａに設けた連結部８ｈとが接触す
る弁機構が作用して、チップ先端部からのインキ流出を
防ぎ、勿論ボール脱落でレフィルは使用不能となるもの
であるが、衣服をインキで汚す最悪のケースを回避する
もので、これにより、ノック式ボールペンに安心して用
いることのできるボールペンレフィルであるとの確証が
得られるに至ったものである。

【００３１】

【発明の効果】剪断減粘性をインキに付与すると、静的
な状態では高い粘度を有しているので、インキ出調整機
能をもつインキ吸蔵体や中継芯又はペン芯部材等の部材
を用いず、インキ収容筒にインキを直詰めでき且つ、筆
記時にはボールの回転でインキの粘度が急激に低下する
ので、滑らかな筆記感触で鮮明な筆跡が得られる利点が
あって、チップ先端部からのインキ漏出や衝撃によるボ
ール脱落の欠陥を、キャップ内にチップ先端部をシール
しておくシール部材（シリコーンゴム等の弾性を有する
部材を用いる）を嵌着させた、キャップ式ボールペンが
先に商品化されて好評を得ていたものであるが、本発明
はこの剪断減粘性を有するインキを用いて、チップ先端
部をシール部材をもってシールしない裸の状態で、チッ
プを下向き状態で携行ししかも、筆端部を軸筒の先端よ
り出没作動させるノック式ボールペンに収納できるボー
ルペンレフィルの現出を試み、成功させたものである。

【００３２】剪断減粘性を有するインキを用いたボール
ペンは、先記した如く市場評価は極めて良好であり、難
解な課題を解決して同インキを用いてノック操作により
筆端部を出没作動できるノック式ボールペンにも適用で
きるボールペンレフィルに完成させた本発明の効果は、
性能面において先に開発されたキャップ式のものと何ら
変わることなく、これをノック式に用いればキャップを
取ったり嵌めたりするわずらわしさから開放されて更
に、機能性，便利性が付加されるものであって、これに
より新たな商品の展開が画せる効果は計り知れなく大な
るものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例であるボールペンレフィルの縦
断面図である。

【図２】本発明のボールペンチップの製造方法を例示し
たチップ先端部のみを切欠縦断面した工程図である。

【図３】本発明の他の実施例を示すレフィル先端部を切
欠拡大した縦断面図である。

【図４】実施例のチップホルダー部材隔壁部を示す図１
のＡ−Ａ矢視横断面図である。

【図５】他の実施例のチップホルダー部材隔壁部を示す
図３のＢ−Ｂ矢視横断面図である。

【図６】ボール脱落時の状態を示す他の実施例のチップ
先端部を一部切欠縦断面した説明図である。

【図７】従来例のボールペンレフィルの縦断面図であ
る。

【図８】インキ収容筒に関する従来例を示すボールペン
レフィルの縦断面図である。

【符号の説明】１ インキ収容筒 ２ インキ ３ インキフォロアー４ ボールペンチップ ４ａ ボールハウス ４ｂ 先端縁 ４ｃ ボール座 ４ｄ 後部孔 ４ｅ インキ導通孔 ４ｆ かしめ部内壁面 ４ｇ インキ溝 ４ｈ 開口部 ５ 尾栓 ６ ボール ７ 弾発部材８ 可動部材 ８ａ ボール押圧部 ８ｂ インキ整流部 ８ｃ 先端部 ８ｄ 芯部 ８ｅ 後端面 ８ｆ インキ通路 ８ｈ 連結部９ チップホルダー部材 ９ａ 先端孔 ９ｂ インキ流通孔 ９ｃ 後端面 ９ｄ 嵌合部 ９ｅ 横溝 ９ｆ 縦溝 ９ｇ 隔壁部 ９ｈ 突当鍔部 １０ インキ収容部材 １０ａ 先端面 １０ｂ 後端 Ｈ ハンマーロッド Ｑ クリアランス Ｔ かしめ治具

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平９−175079（ＪＰ，Ａ) 特開 昭63−252799（ＪＰ，Ａ) 特許2878196（ＪＰ，Ｂ２) 特許2834067（ＪＰ，Ｂ２) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) B43K 7/00 - 7/08 B43K 1/08

Claims (4)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 先端孔と連通するインキ流通孔を有し、
   外周上にインキ収容部材の先端面に当接する突当鍔部
   と、該突当鍔部より後部をインキ収容部材との嵌合部に
   形成したチップホルダー部材を、インキ収容部材に嵌着
   させたインキ収容筒に、剪断減粘性を有するインキと、
   該インキの後部にペースト状のインキフォロアーを収蔵
   し、ボールハウス底部に複数条のインキ溝を刻設したボ
   ール座を有し、インキ導通孔を後部孔に貫通して設け、
   先端縁を内向きにかしめてボールを抱持したボールペン
   チップをその先端孔に嵌着させると共に、チップホルダ
   ー部材との間に、ボールを常にチップ先端縁に押圧する
   弾発部材を直接又は可動部材を介して配設し、その後端
   に通気手段を設けた尾栓を嵌着させて成るボールペンレ
   フィルにおいて、前記ボールペンチップ（４）がボール
   （６）を抱持する先端かしめ部内壁面（４ｆ）をボール
   と同形の球面に形成すると共に、前記チップホルダー部
   材（９）が先端孔（９ａ）と該先端孔径より一段小径で
   後端面（９ｃ）迄は貫通しないインキ流通孔（９ｂ）を
   有し、前記インキ収容部材（１０）との嵌合部（９ｄ）
   に、インキ流通孔に通ずる径方向に穿設した横溝（９
   ｅ）と該横溝と後端面に連通してインキ流通路となる軸
   心方向に延びる縦溝（９ｆ）を設け、インキ流通量を規
   制する後端面（９ｃ）を含む隔壁部（９ｇ）を形成した
   ことを特徴とするボールペンレフィル。
2. 【請求項２】 前記ボールペンチップ（４）がボールハ
   ウス（４ａ）内にボール（６）を位置させた状態で先端
   縁（４ｂ）にかしめ治具（Ｔ）を押し当て、ボールにか
   しめ部を圧接させる圧延かしめを行ない、かしめ部内壁
   面（４ｆ）をボールと同形の球面に形成し、しかる後先
   端縁から露出するボール上面をハンマーロッド（Ｈ）で
   ハンマーリングし、ボール座（４ｃ）を所定量後端部方
   向に塑性変形させて、ボールハウス内におけるボールと
   のクリアランス（Ｑ）を確保すると共に、後部孔（４
   ｄ）に貫通するインキ導通孔（４ｅ）を軸心方向に所定
   長さに設けて後部孔との開口部（４ｈ）が真円に保たれ
   るように形成したことを特徴とする請求項１に記載のボ
   ールペンレフィル。
3. 【請求項３】 前記チップホルダー部材（９）の前記イ
   ンキ収容部材（１０）との嵌合部（９ｄ）にあって、イ
   ンキ流通孔（９ｂ）に通ずる径方向に穿設した横溝（９
   ｅ）と、該横溝と後端面（９ｃ）に連通してインキ流通
   路となる軸心方向に延びる縦溝（９ｆ）を、径方向対称
   位置に複数設け、インキの流通量を規制する後端面（９
   ｃ）を含む隔壁部（９ｇ）を形成したことを特徴とする
   請求項１に記載のボールペンレフィル。
4. 【請求項４】 前記ボールペンチップ（４）のボール
   （６）面にその先端面が当接するインキ導通孔（４ｅ）
   径より小径の先端部（８ｃ）とインキ導通孔径より径大
   の芯部（８ｄ）からなるボール押圧部（８ａ）と、イン
   キ通路（８ｆ）をその外周上に設け後端面（８ｅ）を弾
   発部材（７）に接するインキ整流部（８ｂ）とで形成し
   た前記可動部材（８）のボール押圧部（８ａ）にあっ
   て、先端部（８ｃ）と芯部（８ｄ）とを連結する連結部
   （８ｈ）をテーパー面に形成したことを特徴とする請求
   項１、２または３に記載のボールペンレフィル。