JP3006417B2 - 出銑樋の耐火物損耗検出方法 - Google Patents

出銑樋の耐火物損耗検出方法

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JP3006417B2
JP3006417B2 JP6164092A JP16409294A JP3006417B2 JP 3006417 B2 JP3006417 B2 JP 3006417B2 JP 6164092 A JP6164092 A JP 6164092A JP 16409294 A JP16409294 A JP 16409294A JP 3006417 B2 JP3006417 B2 JP 3006417B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、出銑時に溶銑が流れ
る出銑大樋やスラグ分離後の溶銑が流れる溶銑樋或いは
スラグ樋等の出銑樋に内張りされている耐火物の損耗
を、耐火物層の温度を測定することによって、早期に検
出する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】出銑大樋には、高炉から1500℃を超
える溶鉄やスラグが流れ込むので、樋を形成する鉄皮の
内側に複数の耐火物層を内張りし、樋寿命の延長を図っ
ている。耐火物の層は一般に、外側にあって鉄皮を高温
から護る断熱層と、内側にあって断熱層を溶鉄やスラグ
の侵食から護る耐侵食層とに分けられる。断熱層は耐熱
レンガで組み立てられることが多いが、耐侵食層は流し
込みによって形成されキャスタブル層と呼ばれる。これ
らの層の工法や層材料或いは層構造には各製鉄所により
独自の工夫が施されている。
【0003】溶鉄とスラグは出銑大樋を通過中に比重差
によって上下に分離し、その後の溶銑樋とスラグ樋とに
分かれて流れる。溶銑樋やスラグ樋についても、大樋に
準じた断熱及び耐侵食構造が採られている。
【0004】キャスタブル層の内面は通常均一に損耗す
るのでこれを補修することが適当な頻度で行われている
が、損耗がキャスタブル層の深部や断熱層更に損耗が著
しく鉄皮にまで達した場合は内壁全体を作り替えたり、
樋全体を取り替えることになり大工事が必要になる。こ
のため、内面近くの損耗を検知し深部に至る以前にこれ
を修復し、樋寿命を延ばすことが行われている。
【0005】内面全体の損耗や大きな損耗は目視により
検知することも出来るが、内層の損耗や局所的な初期の
損耗を目視で検知することは困難である。
【0006】内層の損耗検知は耐火物内張りの温度測定
によって行うことが可能である。内張りに何本もの熱電
対を設置し、出銑中に異常に高い温度を示す熱電対の位
置では内層が局部的に損耗していると推定する。この場
合、設置する熱電対の数に限りがあり、熱電対を設置し
ていない位置の内層の局部的損耗が見逃される欠点があ
った。
【0007】この欠点を克服する測温技術として期待さ
れているのが、光ファイバ温度分布測定法である。この
方法では、測温体に光ファイバを巡らせ測温体の温度分
布に応じた温度分布を光ファイバに生じさせる。この光
ファイバに一定波長の光を入射すると後方散乱光として
ラマン効果により波長が若干ずれたストークス光及びア
ンチストークス光(以下、ラマン散乱光と称す)が発生
するが、このラマン散乱光の強度は散乱点の温度に対応
し、入射してから返って来るまでの時間は入射点から散
乱点までの距離に対応する。この原理を利用して、光フ
ァイバをセンサとし光ファイバからの後方散乱強度分布
を計測することにより、光ファイバに沿って測温体の温
度分布が測定される。
【0008】この測定方法の短所に光ファイバセンサが
折損し易い事とこれを保護する樹脂が熱に弱く計測可能
温度の上限が低いことがある。
【0009】従来、これらの短所を補って出銑大樋につ
いて400℃付近までの温度分布を測定する方法が報告
されている。例えば、CAMP−ISIJ Vol.7
(1994),p98には、ポリイミド樹脂で被覆した
光ファイバを保護管に挿入し、さらにこれをガイド管の
中を通してセンサとし、このセンサを、高熱負荷部分を
避けて、樋の耐火物層の鉄皮側に埋め込んで400℃ま
での温度を測定し、光ファイバ温度分布測定法が耐火物
の残存管理に有効な手段であることを報告している。
【0010】一方、耐火物層の深部に達する損耗は局所
的なものが多い。局所的な損耗として、差し込みと称さ
れるキャスタブル層内面の僅かな亀裂に溶銑が滲み込む
現象や、亀裂を通して侵入した溶鉄やスラグが耐火物内
部をえぐるように侵食する回り込みと称する現象等があ
る。回り込みは場合によっては鉄皮部まで達し樋に大き
なダメージを与えるので、初期の段階でその兆候を検出
し補修を行う必要がある。
【0011】耐火物損耗の早期検出を目指すと、僅かな
差し込みによる温度異常を検出する必要があり、温度分
布計測の距離分解能を高めて測定することが望まれる。
【0012】光ファイバ温度分布計測法では、光ファイ
バに入射する光信号のパルス幅やその広がりが時間分解
能即ち距離分解能を律する。この問題を解決する方法と
して、例えば、特開平5−45250には、M系列信号
により変調した入射光を用い、変調に用いたM系列信号
と周波数のみを僅かにずらしたM系列信号により相関処
理を施す(以下、M系列信号処理と称す)ことによって
距離分解能とS/Nを改善する方法が開示されている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】キャスタブル層内面の
局部的損耗を検出するためには、センサの位置を損耗箇
所に近づける必要があり、樋鉄皮内側の耐火物内張りの
外面に敷設したのでは全面的損耗を検出できても、局部
的損耗の検出は困難であった。しかし、センサを損耗箇
所に近づけると温度が上昇し、従来のセンサでは測温す
ることができないという問題があった。
【0014】この発明はこの課題に応えるためになされ
たもので、高温に耐えるセンサをキャスタブル層内面に
近づけて敷設し、測温法と相まって距離分解能を高めた
温度分布測定を行い、耐火物の損耗を早期に検出するこ
とを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】この目的を達成する手段
は、ポリイミド樹脂で被覆された石英ガラスファイバが
高ニッケル耐熱合金の内管に挿入され、さらにその内管
の外側が高ニッケル耐熱合金又はステンレス鋼の外管で
保護され、かつ内管内に不活性ガスが流通されているセ
ンサを、樋の鉄皮内側に設けられた耐火物内張りの断熱
層より内側に敷設し、光ファイバ温度分布測定法により
前記耐火物内張りの温度分布を計測し、計測結果から樋
内面の耐火物の損耗状況を推定することを特徴とする出
銑樋の耐火物損耗検出方法、及び、上記方法における温
度分布測定に際してM系列信号処理を適用する出銑大樋
等の耐火物損耗検出方法である。
【0016】
【作用】樋の耐火物内張りは数10cm の厚さを持つ
が、内面の局部的損耗を早期に検出するためには、セン
サを耐火物の内面に近づけて敷設しなければならない。
図4は、差し込みが起きた点とその周辺の温度分布を示
す図である。1は差し込み、2は等温線で、差し込み1
の位置から離れる程温度分布は平坦になり、キャスタブ
ル層3では差し込み1の位置を明瞭に示す温度分布も、
耐熱層4では不明瞭となる。このため、内面の局部的損
耗を早期に検出するためには、センサを耐火物層より内
側に敷設する必要がある。
【0017】耐火物層より内側では、温度は400℃を
遙に超え1000℃以上にも達するので、センサには高
度の耐熱性が要求される。センサの耐熱性を律するのは
保護被覆と雰囲気である。
【0018】光ファイバはコア部とその外側のクラッド
部を含めて0.1乃至0.2mmと細いので機械的に弱
く、又水分の付着等による化学的変化によってその光学
特性が変化する。このため、その周囲に樹脂を被覆して
ファイバ芯線として用いられる。耐火物に埋め込んで用
いるには樹脂被覆だけでは、強度面でも又耐熱面でも不
足する。このため、芯線を薄い金属管で保護し更に機械
的強度をもつ金属製の外管で保護する。センサの構造を
図3に示す。
【0019】この耐熱センサについては、先に出願した
特願平5−25084にて開示しているが、芯線11に
はポリイミド樹脂被覆ファイバを用いる。一般に用いら
れるUV被覆では数百度の温度で溶融し金属管との間に
癒着が起きたり分解生成物が固着し、光ファイバに応力
がかることがある。ファイバに応力がかかると光学特性
が変わり測定に誤差が生じる。しかし、ポリイミド樹脂
は融点を持たず昇華するので金属管との癒着等が起こら
ず、ファイバに応力をかけることがない。当然のことな
がら、ポリイミド樹脂には昇華しないで金属と癒着する
ような他種樹脂成分を含んではいけない。
【0020】芯線11と内管内に不活性ガスを流通させ
るのは、ポリイミド樹脂が昇華するとファイバーが直接
雰囲気に曝されることになるが、雰囲気中の水素やその
化合物との反応を避けるためである。これらの反応によ
り石英ガラスに水酸基が生成されると、0.9μm 前後
の波長と1.4μm 前後の波長の光が吸収され伝送損失
が大きくなる。ラマン散乱光の強度は微弱であり伝送損
失は測定感度を著しく低下させるので、不活性ガス雰囲
気としてこれを防止する。不活性ガス雰囲気にするに
は、内管12内の大気をアルゴンや窒素等で置換し、そ
の後これらの不活性ガスを少量流し、内圧を若干高める
とともにポリイミドの昇華ガスを運び去ればよい。
【0021】溶銑のように高温で且つ密度の大きい流動
物が間欠的に流れる炉では、温度と耐火物の膨張収縮に
よる重量負荷の変動が繰り返される。このため、外管に
は特に強度が要求され、内管には内面の滑らかさが極度
に要求されるので、芯線11に内管12及び外管13で
二重の保護を施す。
【0022】センサを断熱層よりも内側に敷設すると、
温度が1000℃乃至1200℃に達する場所もあり、
広く用いられているSUS304等のステンレス鋼で
は、酸化により面が荒れてくる。外面では、不活性ガス
による保護がなされていないので、長期にわたる外面の
酸化は肉厚の小さい金属管では劣化損傷につながる。内
面は保護されているが、1000℃を超える温度では市
販の不活性ガスに僅かに含まれる酸素によって肌荒れが
生じる。この肌荒れはファイバに疵をつけることがあ
り、疵をつけられたファイバはその箇所で折れ易くセン
サの切断が起こり易い。
【0023】1000℃を超える温度でも肌荒れを起こ
さない金属に、ハステロイやインコネル等の高ニッケル
耐熱合金がある。このニクロム電熱線に代表されるニッ
ケルを主体にしたニッケル−クロム系合金は、1200
℃程度の高温に曝されても、(不活性ガス雰囲気では)
初期の表面の平滑さを長期間にわたって保つことができ
る。特に、耐熱性に優れ実用的でもある金属として、6
0乃至80wt%のニッケルと20wt%程度以上のクロム
を主体とした合金が推奨される。
【0024】外管13には、高ニッケル耐熱合金の他
に、内面の平滑さは問題にならないので、ステンレス鋼
を用いることもできる。
【0025】このようにすると、光ファイバ温度分布計
のセンサを大樋等の断熱層よりも内側に敷設して使用す
ることができ、断熱層とキャスタブル層の間のみなら
ず、キャスタブル層の中に敷設することができる。後者
の場合、温度帯条件は厳しくなるがより早期の検知が可
能となる。キャスタブル層の表面近傍は全体的に損耗す
るので補充されるが、深部はそのまま残るのでパーマネ
ントキャスタブルとも呼ばれるが、この部分は焼き固め
られ徐々に質がよくなる。このパーマネントキャスタブ
ル層にセンサを敷設し、この層に損耗が達する以前に余
裕を持って検出するのが理想的である。但し、1200
℃を超えるとセンサの寿命が短くなるので、内面補修計
画を勘案して敷設位置を決めることが肝要である。この
ようにして、光ファイバ温度分布測定法によりセンサで
ある光ファイバーの各部の温度分布を測定し、温度が異
常に高い点があればその部分で耐火物の損耗が発生して
いると判断する。
【0026】次に、温度分布の測定に際して距離分解能
について整理し、M系列信号処理の作用効果について述
べる。
【0027】ラマン散乱光のパルス幅は、入射光のパル
ス幅そのままに跳ね返ってくるが、そのピークパワーは
極めて微弱である。図5の(a)図に示すように、幅が
τの場合、ファイバ中の光速をcとして、信号幅に相当
する光路長τcより短い距離内にある温度の異なる二点
間は区別し難く、距離分解能に限界を生ずる。例えば、
一般に用いられている光ファイバ温度分布計のように、
τが10nsec であれば、τcは2m であり、光ファイ
バ長で1m が限界となる。
【0028】したがって、距離分解能を高めるために
は、図5の(b)図に示すように、パルス幅をτ’(<
τ)と小さくしてやればよい。しかし、微弱なラマン散
乱光の幅を狭めることによって今度は測定感度が不足す
る事態になる。感度不足を補うために、測定回数を増や
すことになるが、これはかなり大変なことである。1m
間隔でDm にわたって測温する場合、入射光1パルスに
ついて、入射後10nsec 毎にD個のラマン散乱光強度
を検出し採取する。この操作を莫大な回数繰り返し、各
地点の検出値を平均してラマン散乱光強度の一測定値が
得られる。今、距離分解能を高めるために例えばパルス
幅を10分の1の1nsec にすると、ラマン散乱光の微
弱化はS/Nを低下させるので、同等のS/Nを得るた
めには平均回数を100倍にしなければならない。更に
10cm間隔で測温しようとするとそのまた100倍の回
数平均を繰り返さないと、所期の感度が得られない。そ
れにも増して、nsec オーダーの信号を直接検出、採取
することは非常に困難である。これを実行しようとする
と、サンプリング装置などにより低速信号に変換する必
要があり、装置構成が複雑になり、同時に計測時間も当
然長くなる。
【0029】これらの問題に対処しこれを解決するの
が、M系列信号処理の適用である。本発明で用いるM系
列信号処理は、二つの擬似ランダム信号を用いる擬似ラ
ンダム信号処理で、ランダム化した信号で入射光を変調
し、この信号と僅かに周波数が異なるもう一つの信号を
用いて、二つの信号の位相のずれを利用する。これによ
って、擬似ランダム信号の相関処理を行いS/Nを高
め、距離分解能の向上を可能にする。以下に、M系列信
号処理について説明する。
【0030】一つのクロックで周波数fの信号を発生
し、もう一つのクロックで僅かに異なる周波数f+Δf
の信号を発生する。この二つのクロック信号に基づい
て、M系列信号発生器で、区間信号を挟んで正、負のラ
ンダム化した符号信号を作る。説明の簡明化のため、符
号信号の幅はクロック周期の半分、即ち符号信号と区間
信号の幅を等しくする。M系列信号発生器では、この符
号信号を複数段のシフトレジスタを用いて作るが、ラン
ダム化される信号の数は有限で、段数によって決まる。
n段では、(2n −1)個の正、負符号がランダムに出
現する信号が得られるが、これを符号周期として、これ
を繰り返し発信することによって擬似ランダム信号を連
続して得る。二つの信号で、パルスはランダムに現われ
るがその順序は同じであり、周波数のみが僅かに異な
る。周波数fをΔfだけずらしたこれらの信号を図示す
ると、各々図7の(a)図と(b)図で表される。
【0031】両者の信号の位相のずれはスタート時点で
は殆ど無いが(い)、パルス毎に、パルス幅の差〔(1
/f)−(1/f+Δf)〕秒づつずれて、パルス幅と
区間信号幅が等しい場合は1/2Δf秒後にクロック周
期の半分だけずれる(ろ)。その後、更にずれが大きく
なり1/Δf秒後に1クロック周期分だけずれる(図示
せず)が、この1周期分のずれを、符号周期をLとし
て、L回繰り返すとL/Δf秒後には1符号周期分だけ
ずれて両信号の位相のずれはスタート時点に戻りずれは
殆ど無くなる(は)。
【0032】この両信号の積を求めると、正パルス同士
が対応する状態と負パルス同士が対応する(い)或いは
(は)の状態では正信号を与えるが、その他の状態では
零又は負信号を与える。この状態を表したのが(c)図
で、スタート時点では正信号が連続して現れ(い)、位
相がずれるにしたがって正信号は小さくなり、半波長ず
れた時点では零信号が連続して現れる(ろ)。その後
は、正又は負の信号がランダムに現れ、更に時間を経る
と1符号周期分だけずれて再び位相が一致すると正信号
が連続して現れる(は)。
【0033】この求めた積をローパスフィルタにより帯
域制限即ち積分すると、正又は負の信号がランダムに現
れる状態では積分値は零になるので、(d)図に示すよ
うに、位相が一致するスタート時点に正のピークが現
れ、続いて半波長ずれるまで減衰し、半波長ずれた状態
とその後の状態では零が続き、その後位相が一致しだす
とL/Δf秒点にピークを持つ山が現れる。この山の裾
幅は1/Δf秒である。この山はL/Δf秒点毎に現
れ、ここにM系列信号の自己相関関数に対応した繰り返
しパルス信号が得られ、乗算器及び積分器により信号の
相関処理が実現できる。
【0034】ここで、一方のM系列信号にノイズ信号が
重畳した場合、ノイズ信号とM系列信号との間には相関
がないため、両者の乗算結果はランダムな信号となりそ
の積分結果は零となる。つまり、乗算と積分による相関
処理により信号中のノイズ成分を除去し、高感度な信号
検出を行うことが可能となる。
【0035】又、得られる信号の時間軸は、実際の時間
と較べると1/f秒のクロック周期が1/Δf秒に拡大
され、拡大率がf/Δfの拡大された標準時間軸となっ
ている。
【0036】今、一方の擬似ランダム信号(周波数f)
でレーザ光を変調して、光ファイバセンサに入射する
と、同じ周波数fで同じパルス幅のラマン散乱光が散乱
位置に応じた時間だけずれて、返ってくる。この信号と
他方の擬似ランダム信号(周波数f+Δf)について、
上記のように、相関処理を行い帯域制限処理を施すと、
拡大された標準時間軸上に、散乱位置に応じた時間のず
れがf/Δf倍に拡大された位置に表示される。図5
(b)図の近接した二つの信号について、図6に示す。
二つの信号間の時間差は(τ−τ’)もf/Δf倍に拡
大される。そして、表示される信号の強度は、前述の繰
り返し数f/Δfの検出値がノイズが除かれて集積され
たもので、平均処理を行った測定値に相当する。
【0037】このように、M系列信号処理を適用する
と、ラマン散乱光信号のずれ時間は、上記の拡大された
標準時間軸で捉えることができる。先の例のように、1
0cm間隔で温度を知りたい場合は1nsec のf/Δf倍
の間隔で測定値を採取すればよく、又f/Δf個の検出
値を平均する操作を必要としない。但し、1nsec のf
/Δf倍の間隔で採取した測定値を平均することによっ
て、更に精度の向上が期待できることは一般の測定と同
じである。
【0038】上の説明では、簡便化のためパルス幅と区
間信号幅を等しいと仮定したが、パルス幅を小さくして
も原理は同じである。距離分解能を高めるためにパルス
幅を小さくする手法として、周波数が同じ二つの信号の
一方を遅延回路を用いて位相をずらし、両者の積を求め
る方法が考えられる。図8に示すように、(a)図の信
号と(b)図の信号を掛け合わせると、両信号の重なる
部分のみからなる信号(c)図が得られる。
【0039】このように、M系列信号処理を適用する
と、距離分解能を高めるためにパルス幅を小さくしても
S/Nを低下させることなく、処理の結果得られる検知
信号の周期(時間軸)は、もとの擬似ランダム信号の信
号(時間軸)を拡大したものとなり、簡易な装置構成で
信号の検出、採取、平均等の信号処理が容易に実現可能
となる。
【0040】
【実施例】
実施例1.図1に示すように、溶銑樋のキャスタブル層
3にセンサ10を埋め込み、温度分布を測定した。敷設
は、樋の長手方向に往復させるように行い、内壁全体が
監視できるようにした。又、曲部では曲率半径が180
mm以下にならないように敷設した。別に、鉄皮5と断熱
レンガ層4との間に、同様にセンサを敷設して測定結果
を比較した。
【0041】センサは、20μm のポリイミド樹脂で被
覆したコア径0.2mmの光ファイバを芯線とし、内径
1.6mm、肉厚0.2mmのハステロイC−22製の内管
と内径6.0mm、肉厚1.0mmのSUS304製の外管
で保護した。
【0042】内管には窒素ガスを充満後毎分5乃至10
mL流し、管内を不活性ガス雰囲気とした。不活性ガスの
流量は多過ぎて管内の温度分布を損なわないように注意
した。
【0043】温度測定の入射光としては、パルス幅10
nsec 、繰り返し周期10μsec の波長800nmのレー
ザ光を用いた。ラマン散乱光強度は10nsec 毎に検出
採取を50万回繰り返し、平均を求めて、温度値に換算
した。
【0044】得られた温度分布の一例を図10に示す。
この発明の実施例を実線で示し、比較例を破線で示し
た。発明の実施例では、ファイバの長さ方向の中央部に
高温帯があること、更にこの高温帯の中央部に局部的高
温箇所があることが検知されている。比較例では、中央
部に高温帯は検知されたが、高温帯の中央部の局部的高
温箇所は検知されなかった。
【0045】実施例2.図2に示すように、出銑大樋の
キャスタブル層3にセンサ10を樋の深さ方向に埋め込
み、温度分布を測定した。センサは、内管にインコネル
625製を用いた他は実施例1.と同じ構成である。
【0046】温度測定には、波長800nmのレーザ光を
用いたが、M系列信号処理を適用した。測定系を図9に
示す。
【0047】クロック信号発生器21で周波数220.
000MHz のクロック信号を又クロック信号発生器2
2で周波数220.005MHz のクロック信号を送
り、M系列信号発生器23、24で各々の周波数のM系
列信号を発生させた。符号のランダム化は7段のシフト
レジスタを用いて行った。したがって、M系列信号の符
号周期は127である。
【0048】M系列信号発生器23からの信号を半導体
レーザー25に送りレーザー光を変調し、これを光方向
結合器26を通して、光ファイバセンサ10に入射し
た。
【0049】光ファイバセンサ10で散乱されたラマン
散乱光(ストークス光波長823nm、アンチストークス
光波長779nm)はセンサ10から出て光方向結合器2
6に入るが、ここから光分岐路27に入って二つに分配
され、各々光学フィルタ28、29に向かう。光学フィ
ルタには、誘電型フィルタとガラスフィルタを組み合わ
せ、ストークス光及びアンチストークス光の波長に合わ
せ透過波長幅を6nmに狭めたバンドパスフィルタを用い
た。
【0050】フィルタを透過したストークス光とアンチ
ストークス光は各々受光器30、31で受光され電気信
号に変換される。受光器にはアバランシェフォトダイオ
ードを用いた。
【0051】32、33、34は乗算積分器で、二つの
入力信号の積を求める。乗算器32では、M系列信号発
生器24から入力される周波数220.005MHz の
擬似ランダム信号と受光器30からの信号が、又乗算器
33では、同じく擬似ランダム信号と受光器31からの
信号が乗算される。乗算の結果はローパスフィルタ3
5、36により帯域制限処理(積分)を施され、信号処
理装置38に送られる。
【0052】一方、乗算積分器34では、M系列信号発
生器23から入力される周波数220.000MHz の
擬似ランダム信号とM系列信号発生器24から入力され
る周波数220.005MHz の擬似ランダム信号とを
乗算する。この結果がローパスフィルタ36で帯域を制
限されて標準時間信号となり、信号処理装置38に送ら
れる。
【0053】信号処理装置38では、標準時間信号を基
準とし、光ファイバセンサ各点でのストークス光強度と
アンチストークス光強度の比を求め、これを(1)式に
したがって温度に換算し温度分布を求める。
【0054】なお、M系列信号発生器には遅延回路を組
み込みパルス幅を狭めた。このM系列信号発生器を図1
2に示す。
【0055】
【数1】
【0056】クロック信号40の一部は、遅延回路41
を通過し、他の一部はこれを通らないので、両者に位相
に一定のずれが生ずる。整形回路42で波形を整えたこ
の位相がずれた両クロック信号をアンド回路43で乗算
して、図8(c)に示すような幅の狭いクロック信号を
得る。一方、シフトレジスタ44を7段使用して、クロ
ック信号に同期させて、クロック周期の1/2幅を持つ
正負ランダムなパルスを得て、これも整形する。幅の狭
いクロック信号とランダムなパルスをアンド回路43で
乗算してパルス幅を狭める。
【0057】このM系列信号発生器で、パルス幅をクロ
ック周期の1/4に狭めた。測定値の採取は44μsec
毎に行い、光ファイバ長手方向に10cm間隔の測温を行
った。得られた温度分布の一例を図11に示す。光ファ
イバの入射端から40cm付近に局部的に高温の箇所が明
瞭に検出されている。隣接するセンサにはこの局部的高
温は見られず、この高温はセンサ埋設位置の図示された
深さに発生した差し込みによるものである。
【0058】なお、この実施例では、距離分解能が高い
ので、1〜2m の直管型のセンサを用いることができ、
光ファイバだけを差し替えることが容易であった。
【0059】
【発明の効果】以上述べてきたように、この発明によれ
ば、出銑大樋等の温度分布を測定する際に、不活性ガス
と耐熱管及び外管で保護した光ファイバセンサを鉄皮の
内壁の断熱層より内側に敷設するので、局所的な損耗を
検出することができる。加えて、M系列信号処理を適用
することによって、散乱光の幅が狭く微弱な信号を低ノ
イズで処理できるので、温度分布の距離分解能を高める
ことが可能である。このため、差し込みと称されるよう
な僅かな初期の局所的損耗もその位置が正確に検出さ
れ、損耗の検出が早期にできるようになった。出銑大樋
等の効率的な保守管理を可能にしたこの発明の効果は大
きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】センサの敷設位置を示す溶銑樋の斜視図であ
る。
【図2】センサの敷設位置を示す溶銑樋の斜視図であ
る。
【図3】光ファイバの保護構造を示す高温に耐えるセン
サの斜視図である。
【図4】局所的差し込みに原因する温度分布を示す耐火
物内張りの等温線図である。
【図5】距離分解能を説明するためのパルス幅と近接す
る散乱点との関係を示す図である。
【図6】ラマン散乱光の信号が拡大された時間軸に現れ
る様子を示す図である。
【図7】M系列信号の適用によるずれと時間の関係を説
明するためのパルス信号の位相を示す図である。
【図8】パルス幅短縮の原理を説明するための波形図で
ある。
【図9】実施例に用いた温度測定系の系統図である。
【図10】実施例で測定された溶銑樋耐火物層の温度分
布を示す図である。
【図11】実施例で測定された出銑大樋耐火物層の温度
分布を示す図である。
【図12】実施例に用いた遅延回路を含んだM系列信号
発生器の回路図である。
【符号の説明】
1 差し込み 2 等温線 3 キャスタブル層 4 断熱層 5 鉄皮 10 光ファイバセンサ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 実開 昭57−37438(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21B 7/14 302 G01M 11/00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリイミド樹脂で被覆された石英ガラス
    ファイバが高ニッケル耐熱合金の内管に挿入され、さら
    にその内管の外側が高ニッケル耐熱合金又はステンレス
    鋼の外管で保護され、且つ内管内に不活性ガスが流通さ
    れているセンサを、樋の鉄皮内側に設けられた耐火物内
    張りの断熱層より内側に敷設し、光ファイバ温度分布測
    定法により前記耐火物内張りの温度分布を計測し、計測
    結果から樋内面の耐火物の損耗状況を推定することを特
    徴とする出銑樋の耐火物損耗検出方法。
  2. 【請求項2】 温度分布の測定にM系列信号処理を適用
    する請求項1記載の出銑樋の耐火物損耗検出方法。
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