JP3004831B2 - 医療用具品 - Google Patents

医療用具品

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JP3004831B2
JP3004831B2 JP5-15521A JP1552193A JP3004831B2 JP 3004831 B2 JP3004831 B2 JP 3004831B2 JP 1552193 A JP1552193 A JP 1552193A JP 3004831 B2 JP3004831 B2 JP 3004831B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は医療用具品に関し、特に
薬液を人体に投与する際に使用する医療用具品、例えば
注射器、移注器(導入器)、採血または輸血用等の操作
器具、機械部品等に関するものである。
【0002】
【従来の技術】医療用具品に関しては、薬事法に器具、
機械の種類、性能、品質、規格値等が定められている。
今日のごとく医療技術が日進月歩する時代には、このよ
うな規格値や規格項目よりも優れた性質を持つ器具、機
械が存在するようになっている。医療用具品に用いられ
る柔軟なる弾性体材料としては、天然ゴム(NR)を主
体にしていたが、現状ではより衛生的である点と性能の
上からイソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)
及びハロゲン化ブチルゴム(BIIR,CIIR)、ニ
トリルゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴム(SB
R)、ブタジエンゴム(BR)等について、それぞれの
適性を認めた上で使用が拡大している。また合成樹脂に
関しては、第8改正日本薬局方より、ポリエチレン(P
E)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(P
P)が認定され、医療用具にも検討されて、多くの器
具、機械部品に適用されるようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、PVCは透
明、柔軟な衛生用品となっているように見えるが、詳細
に検討すると、例えばジオクチルフタレート(DOP)
やジオクチルアジペート(DOA)、トリクレジルホス
フェート(TCP)などの可塑剤、例えばステアリン酸
亜鉛、ステアリン酸カルシウム、錫系化合物などの安定
剤が薬液中に溶出する問題がある。またPVCの原料モ
ノマーの残留や、使用後の用具は廃棄物として焼却する
がこの際に毒性ガスの発生があり、環境保護上問題であ
り、今後の使用には多く疑義が持たれている。一方、血
液保存素材などの医療器具の研究も多々なされている
(特公平2−42507、特開平2−212536各号
公報など)。PEはエチレンオキシド又はホルムアルデ
ヒドのガス滅菌法が認められ、衛生上にも優れているた
め、使用範囲が広まっている。特に超高分子量ポリエチ
レンは軟化点(130℃)と比較的優れているが、加硫
ゴム、PP、ナイロン、PVCなどと接着した積層製品
が認められつつある。しかし、PEには、軟化点が低い
ということが大きな欠点となっている。PPは高い軟化
点を有する点が大いなる特質であるが、透明製品を得ら
れないので、PPを変性することにより透明品に改質し
て医療器具剤への適用を試みた報告(特開平3−163
144、同3−28246各号公報)がある。塩化ビニ
リデンは製品型成形が極めて困難なる故に、PVCなど
を混入して製品化している。フッ素樹脂は衛生性、耐熱
性、耐酸性、耐アルカリ性等に優れた特性を有するが、
接着性が悪く加工操作に困難なる故に、汎用医療器具部
品とはなっていない。その他ナイロン、ポリカーボネー
ト、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレト、エチレ
ン酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、アクリル樹脂、
熱可塑性エラストマーなどは各々特性を有する樹脂であ
るが、医療器具用素材としての観点からは問題点が多
く、PE、PPなどに代わり得る性質は認められていな
い。本発明は上記したような現状に鑑みなされたもので
あり、薬液を極めて衛生的に人体に投与できる新規な素
材を用いた医療用具品を提供することを目的としてい
る。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は上記した課題を
解決する手段として、環状オレフィン系化合物又は架橋
多環式炭化水素系化合物を重合体成分とする樹脂を含有
する材料からなる医療用具品を提供する。本発明におけ
る前記環状オレフィン系化合物としては、単環式オレフ
ィン系化合物類又はこれらのアルキル誘導体、アクリレ
ート誘導体が特に好ましい。また、本発明における前記
架橋多環式炭化水素系化合物としては、環内又はその置
換基に不飽和結合を1以上有してなるものが特に好まし
い。本発明において、前記環状オレフィン系化合物又は
架橋多環式炭化水素系化合物を重合体成分とする樹脂
〔以下、本発明の環状樹脂とも称する〕が、低級オレフ
ィン類、芳香族類又は低級オレフィン類もしくは芳香族
のビニルモノマーを共重合体成分として含有するもので
あってもよく、またオレフィン系樹脂及び/又は合成ゴ
ム類との混合物であってもよい。更に、本発明の環状樹
脂は、臭素価が5以下、軟化点が90℃以上のいずれか
の特性値を有するものであることが特に好ましい。本発
明の医療用具品の特に好ましい実施態様として、注射
筒、移注器(導入器)、輸液セット用部品、採血用器
具、輸血用器具、血液セット用部品、透析型人工腎臓装
置、カテーテル、管、血液バック、二種類の薬を充填し
た注射器兼容器等を挙げることができ、さらに注射器を
本発明の環状樹脂で成形して前記器具と一体に構成した
製品等を挙げることができる。また、本発明の医療用具
品において本発明の環状樹脂と他の樹脂類とを積層する
ことも特に好ましい実施態様として挙げられる。
【0005】
【作用】近年、コールタール,ナフサ分解等により得ら
れるC5 ,C9 留分の各モノマーの分離,精製技術及
び、各モノマーの重合触媒等に関する新技術によって、
特徴ある樹脂体が開発されつつあり、中でも、環状オレ
フィン系モノマー、特に架橋多環式炭化水素系モノマー
の重合体に関して目ざましい進歩が見られる。本発明者
らは、このような環状オレフィン系化合物や架橋多環式
炭化水素系化合物を重合体成分とする樹脂が、耐アルカ
リ、耐酸、耐水、耐薬品性において優れた特性を有し、
高融点で耐熱、耐酸化性であり、透明性を有する非結晶
体であること、さらに衛生的には日本薬局方の試験に適
合し、しかも成形も容易であるので、医療用具品材料に
用いて非常に優れた樹脂であることを見いだし、本発明
に到った。
【0006】本発明の医療用具品材料とする環状樹脂の
重合体成分とする化合物を更に詳細に説明する。まず、
環状オレフィン系化合物類としては例えば、シクロペン
タジエン(CPDと略記する)、
【化1】 シクロペンテン、
【化2】 シクロオクテン、
【化3】 メチル−シクロヘキセン、
【化4】 5−ジメチル−シクロヘキセン
【化5】 等の単環オレフィン系化合物及びこれらに例えばメチル
基,エチル基等の低級アルキル基が1〜3個置換してな
る低級アルキル誘導体、アクリレート誘導体等を挙げる
ことができる。
【0007】架橋多環式炭化水素系化合物類としては、
二環式以上の架橋環式炭化水素化合物であって、特には
架橋多環式オレフィン系化合物とその誘導体、あるいは
架橋多環式飽和炭化水素化合物でその置換基に不飽和二
重結合を有するものが特に好ましい。即ち、架橋多環式
シクロアルケン系化合物類及びその低級アルキル誘導
体、アリイル誘導体、アラルキル誘導体、架橋多環式シ
クロアルカン系化合物のビニル誘導体、アリルオキシカ
ルボキシ誘導体、(メタ)アクリルオキシ誘導体等が挙
げられる。
【0008】更に具体的には、次のような化合物を挙げ
ることができる。ビシクロ〔2,2,1〕−2−ヘプト
エン、
【化6】 ビシクロ〔2,2,1〕2,5−ヘプトジエン(2,5
−ノルボルナジエンとも称する)、
【化7】 エチル−ビシクロ〔2,2,1〕−2−ヘプトエン、
【化8】 エチリデン−ビシクロ〔2,2,1〕−2−ヘプトエン
(5−エチリデン−2−ノルボルネンとも称する)、
【化9】 フェニル−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、
【化10】 ジシクロ〔4,3,0〕−3,8−ノナジエン
【化11】 トリシクロ〔4,3,0,12,5 〕−3−デセン、
【化12】 トリシクロ〔4,3,0,12,5 〕−3,8−デセテン
(3,8ジヒドロ−ジシクロペンタジエンとも称す
る)、
【化13】 トリシクロ〔4,4,0,12,5 〕−3−ウンデセン、
【化14】 テトラシクロ〔4,4,0,12,5 ,17,10〕−3−ド
デセン、
【化15】 ジメチル−テトラシクロ〔4,4,0,12,5
7,10〕−3−ドデセン、
【化16】 エチリデン−テトラシクロ〔4,4,0,12,5 ,1
7,10〕−3−ドデセン、
【化17】 メチルオキシカルボニルテトラシクロ〔4,4,0,1
2,5 ,17,10〕−3−ドデセン、
【化18】 エチリデン−9−エチルテトラシクロ〔4,4,0,1
2,5 ,17,10〕−3−ドデセン、
【化19】 ペンタシクロ〔4,7,0,12,5 ,0,08,13,1
9,12〕−3−ペンタデセン、
【化20】 ペンタシクロ〔6,5,1,13,6 , O2,7 ,09,13
−4−ペンタデカン、
【化21】 ヘキサシクロ〔6,6,1,13,6 ,110,13
2,7 ,09,14〕−4−ヘプタデセン、
【化22】 ジメチル−ヘキサシクロ〔6,6,1,13,6 , 1
10,13 , 02,7 ,09,14〕−4−ヘプタデセン、
【化23】 ビス(アリルオキシカルボキシ)トリシクロ〔4,3,
0,12,5 〕−デカン、
【化24】 ビス(メタクリルオキシ)トリシクロ〔4,3,0,1
2,5 〕−デカン、
【化25】 ビス(アクリルオキシ)トリシクロ〔4,3,0,1
2,5 〕−デカン
【化26】
【0009】本発明の環状樹脂においては、上記した環
状オレフィン系化合物及び架橋多環式炭化水素系化合物
から選ばれる1種以上を重合体成分とするが、これらの
重合体成分と共重合可能な低級オレフィン類、芳香族類
又は低級オレフィン類もしくは芳香族のビニルモノマー
を共重合体成分として含有することができる。このよう
な他の重合体成分の具体例としては、例えばエチレン、
プロピレン、イソプレン、ブタジエン、メチルペンテ
ン、ノルボルネン、ブテン、ビニルトルエン等を挙げる
ことができる。このような他の共重合体成分は2種以上
併用してもよい。
【0010】本発明の環状樹脂を重合するには、公知技
術によればよく、例えば特公昭47−11818、同5
8−43412、同61−1442、同62−1976
1、特開昭50−75700、同55−129434、
同58−127728、同60−168708、同61
−115916、同61−271308、同63−22
118、同63−243103、特開平2−18097
6各号公報等に記載の公知技術を挙げることができる。
【0011】より具体的には大別して下記の3つの方法
を利用できる。 (1)シクロペンタジエン類と対応するオレフィン類又
は環式オレフィン類とを付加環化反応(ディールスアル
ダー反応)することにより、架橋環式炭化水素モノマー
を得、該モノマーを溶媒中でアルミニウム、タングステ
ン、バナジウム、硼素系化合物を触媒にして重合して、
樹脂状物とし、該樹脂を精製して架橋環式炭化水素樹脂
を得る方法。 (2)本発明の環状樹脂の重合体成分とするモノマー、
例えば低級アルキルシクロアルケン化合物、シクロアル
カジエン系化合物、架橋多環式アルカジエン化合物、架
橋多環式アルケン化合物等を、溶媒中で、触媒としてバ
ナジウム,アルミニウム,タングステン,ホウ素化合物
などを使用して重合反応を行い、高分子量樹脂状物とす
る。次に、該樹脂状物をニッケル,白金触媒等で水素添
加して本発明の環状樹脂とする方法。 (3)架橋多環式化合物のアクリロイル誘導体を光及び
/又は有機過酸化物で重合して架橋環式樹脂を得、精製
して本発明の環状樹脂にする方法。 以上の三種の重合反応においては、更にオレフィン系化
合物,芳香族化合物等のモノマーを添加して共重合体と
することもできる。
【0012】前記したいずれの重合方法によるとも、本
発明の環状樹脂体中に、重合成分としたモノマー、低分
子量オリゴマー、金属触媒等が存在することは、臭気の
発生及び衛生的性質の低下の点で好ましくない。従っ
て、本発明に用いる環状樹脂体としては、その軟化点が
90℃以上(JIS K 2207,2531 環球
式)を満足する樹脂であることが好ましい。更に、該環
状樹脂体は臭素価(JIS K 2543)5以下であ
ることが、好ましい。環状樹脂体が臭素価5を越える
と、衛生的な医療用具製品に着色、変色が起こる。この
着色、変色に対する一つの対策として、老化防止剤を添
加する。
【0013】本発明の環状樹脂体に添加する老化防止剤
としては、2−6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノ
ール(BHT)、オクタデシル−3−(4′−ヒドロキ
シ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネ
ート(商品名:イルガノックス1076、チバガイギー
社製)、テトラキス〔メチレン(3,5−ジ−t−ブチ
ル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン
(商品名:イルガノックス1010、チバガイギー社
製)、トコフェノール、4,4′−チオビス(6−t−
ブチル−3−メチルフェノール)(商品名:アンテージ
RC、川口化学製)、ビス(2,2,6,6,−テトラ
メチルピペリジル)セバケート(商品名:サノールLS
−770、三共(株)製)、1,3,8−トリアザ−
7,7,9,9−テトラメチル−n−オクチル−スピロ
〔4,5〕デカン−2,4−ジオン(商品名:サノール
LS−772、三共(株)製)等、ジステアリル−チオ
ジプロピオネート(商品名:アンチゲンTPS、住友化
学(株)製)、ペンタエリスリトールテトラキス(β−
ラウリル−チオ−プロピオネート〕(商品名:スミライ
ザーTPD:住友化学(株)製)、1,3,5−トリメ
チル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−
4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(商品名:アイオノ
ックス330、ICI社製)、トリス(2,4−ジ−t
−ブチルフェニル)ホスファイト(商品名:イルガノッ
クス168、チバガイギー社製)等がある。これらの老
化防止剤は環状樹脂の熱、光、酸素によるゲル化を防止
する。老化防止剤の添加量は環状樹脂100重量部に対
し0.1 〜1重量部であり、数種類を併用することもで
きる。
【0014】本発明の環状樹脂中の環状オレフィンモノ
マーの含有量は30重量%以上が好ましい。また、該環
状樹脂の分子量は5000〜100000000であ
り、低分子量樹脂体は高粘稠体であるが、高分子樹脂に
なると粉末樹脂になる。樹脂の加工、即ち樹脂製品の成
形については、加工操作上困難が生じる場合には、加工
助剤を用いることが好ましい。該加工助剤としては、高
級脂肪酸又は高級脂肪酸エステル、シリコン油、フッ素
油などの1種以上を、環状樹脂100重量部に対し0〜
10重量%添加することができる。
【0015】本発明の環状樹脂の性質は以下のとおりで
ある。 比重 :0.98〜1.3 (AST
M D792) 引張強度 :200〜1000kg/cm2 (AST
M D638) 引張伸び :3〜300% (AST
M D638) 曲げ弾性率:1〜50×104 kg/cm2 (AST
M D790) 軟化点 :90以上 (AST
M D1525) 透明性 :90〜100% (AST
M D1003) 吸水率(%):0.01〜0.1% (AST
MD D570) 臭素価 :0〜5 (JIS
K2543) 第12改正日本薬局方 48輸液用ゴム栓試験法 : 適合 49輸液用プラスチック容器試験法: 適合 本発明の環状樹脂は上記のごとく、軟化点、物理的性質
(引張強度など)、強靱性が高く、酸やアルカリなどに
対しても不活性で、水分の吸湿、透湿、酸素、空気に対
して難透過性で、耐寒性及び耐熱性を有し、非結晶性で
透明性を有する超高分子樹脂体である。
【0016】本発明の環状樹脂又は環状樹脂組成物は、
さらにオレフィン系樹脂の一種以上と混合した組成物と
してもよい。該オレフィン系樹脂としては、例えば各種
ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ナイ
ロン(アモルファスナイロンを含む)、PET、PB
T、エチレンプロピレン共重合体、エチレン−アクリル
酸共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、ポリブテ
ン、メチル−ブテン共重合体、エチレン−ブテン共重合
体、メチル−ペンテン共重合体、並びにオレフィン系化
合物のグラフト又はブロック重合体が挙げられる。
【0017】本発明においては、上記環状樹脂又は環状
樹脂組成物と合成ゴム類との混合物、アロイ化物とする
こともある。合成ゴム類としては、イソプレンゴム、ブ
タジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−
プロピレン−ジエンターポリマー共重合体、ブタジエン
−イソプレン共重合体、イソプレン−イソブチレンゴム
などが挙げられる。このように、樹脂類、ゴム類と混合
する場合、本発明の環状樹脂を全量中の30重量%以上
にすることが好ましい。環状樹脂の含有量が30重量%
未満では、本発明の特徴とする衛生性(例えば耐アルカ
リ栓など)が十分には示されず、汎用樹脂製医療用具類
との差がなくなるからである。
【0018】本発明の医療用具品は、本発明の環状樹脂
又は環状樹脂組成物をそのまま成形するか、またこれら
を他の樹脂と積層する。このような他の樹脂としては、
例えばエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂(EV
OH)、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−
酢酸ビニル共重合体及びそのケン化物(EVA)、ナイ
ロン(アモルファスナイロンを含む)、エチレン−ビニ
ル共重合樹脂、PE、PP、PET、ポリメチルペンテ
ン、PVDC、アクリル樹脂、アクリル変性樹脂、エチ
レン−プロピレン共重合樹脂、エチレン−ブテン共重合
体、及びオレフィン系グラフト又はブロック共重合体等
が挙げられる。
【0019】以上記載した本発明の医療用具品には、本
発明の環状樹脂と前記積層樹脂に極性基を持つ樹脂類が
存在するため、両者を積層溶着することにより、容器内
容物の品質保証を向上する。この際、接着剤又は両樹脂
の混合物からなる積層体層を用いることにより良好な接
着が実現すると同時に環状樹脂の衛生性をより一層向上
する一策となる。
【0020】また本発明においては、医療用具品の内容
物が光(紫外線)や酸化により変質することを防止する
目的で、積層する樹脂に、紫外線吸収剤、紫外線遮光剤
等を配合することができる。紫外線吸収剤、遮光剤とし
ては、例えばp−t−ブチルフェニルサリシレート、
2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ
−4−メトキシベンゾフェノン、2(2′−ヒドロキシ
−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2
(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチル
フェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2(2′
−ヒドロキシ−3′,5′−ジt−ブチルフェニル)−
5−クロルベンゾトリアゾール、ビス(2,2,6,
6,−ジメチル−4−4ピペリジン)セバケート(商品
名 サノールLS770、チバガイギー社製)、ポリマ
ータイプのヒンダートアミン(商品名 サノールLS9
44、チバガイギー社製)、微粒子酸化チタン又は亜鉛
華などが挙げられ、これらの1種以上を合計量で0.0
1〜2重量%配合することが好ましい。
【0021】以上に説明した環状樹脂又は環状樹脂組成
物を用いて製造する本発明の医療用具品としては、非常
に多種のものが可能である。特に高度の品質保証を要求
される医療用具品にも好適である。以下に品質基準の例
を示す。 1)注射器(図1参照)、注射器兼容器(図2参照)、
針無注射器: 品質基準は厚生省告示第42、74、412、413、
442、443各号及びJIS T3101号 2)輸液セット及び輸血セット(図3参照): 品質基準は厚生省告示第42、74、301各号 3)採血用器具及び輸血用器具: 品質基準は厚生省告示第42、74、113、300、
449各号 4)血液セット: 品質基準は厚生省告示第42、66、74、134、2
71、448各号 5)透析型人工腎臓装置: 品質基準は厚生省薬務局長通知第494号 6)移注器(導入器)カテーテル、管: 品質基準は自主規定(カテーテルに関しては日本医療器
材協会案がある)このような医療器具及び機械部品を本
発明の環状樹脂、環状樹脂組成物等で成形するか、積層
することにより、要求される品質基準を満足する衛生性
の高度な医療用具品が得られる。
【0022】本発明の医療用具品の成形、積層方法は、
公知のオレフィン系樹脂成形技術を適用し得る。例えば
本発明の環状樹脂、環状樹脂組成物をスクリューで加熱
し、製品型金型中に押出し、冷却後金型より取り出す、
等の技術である。また、インジェクションブロー方式に
て加熱した本発明の環状樹脂を加熱してブローすること
により、注射器、容器、管等の医療器具製品型に成形す
ることもできる。
【0023】
【実施例】以下に本発明に係る環状樹脂の合成方法、該
樹脂又は樹脂組成物を用いた本発明の医療用具品の製造
を具体的に説明するが、本発明はこれらの具体例に限定
されるものではない。環状樹脂の合成例1(DCP樹脂重合体) 10リットルの撹拌機付き反応器に精製、脱水したトル
エン3.6リットル、精製したトリシクロ〔4,3,
0,12,5 〕−3,8−デセン(DCP)1.2kgを
入れ、窒素雰囲気下にトリエチルアルミニウム72g、
トリエチルアミン236g及び四塩化チタン62gを温
度5℃以下で加え、25℃に昇温して24時間撹拌、重
合を行なう。その後、メタノール500mlにて反応停
止し、メタノールにて樹脂を析出せしめ、アセトン−イ
ソプロピルアルコール(1:1)にて洗浄し、真空低温
乾燥した。重合体800gを得た。5リットルの攪拌機
オートクレーブに上記で得た重合体を10重量%シクロ
ヘキサン溶液として入れ、パラジウムカーボン25gを
水素雰囲気下に加え、水素置換を行ない、120℃に昇
温し水素圧70気圧にて水素を補充して12時間水素添
加を行う。水素添加後、触媒を遠心分離し、多量のアセ
トン−イソプロピルアルコール(1:1)混合溶媒にて
沈殿させる。得られた樹脂100重量部に老化防止剤と
してBHT 0.4重量部、アンチゲンTPS 0.1
重量部を加え、樹脂〔以下樹脂(a)と呼ぶ〕560g
を得た。この樹脂(a)は軟化点152℃以上、臭素価
0.2であった。
【0024】環状樹脂の合成例2:DCP−エチレン共
重合体 10リットルの反応容器に攪拌機、滴下ロートを付け、
精製、脱水したトルエン5リットルを入れ、次に精製、
脱水したDCP350gを入れ、温度を3℃以下に保
ち、触媒としてエチレンアルミニウムセスキクロリド1
05gとジクロロエトキシオキソバナジウム110g
を、乾燥したエチレンと窒素ガス(1:2)の混合ガス
を通じながら滴下、温度20℃、攪拌下に上記混合ガス
を2時間通じて重合を行なう。次にメタノール30ml
で共重合を停止し、メタノール中にて共重合体を析出
し、アセトンで洗浄し、真空低温乾燥を行い、共重合体
312gを得た。次に5リットルの攪拌機付きオートク
レーブに上記で得た共重合体を10重量%シクロヘキサ
ン溶液として加え、パラジウムカーボン25gを入れ、
反応器内を水素ガス置換後、攪拌しつつ120℃に昇温
した。次に同温度で水素圧70気圧に昇圧し、同圧に水
素を補充しながら10時間水素添加を行なう。次に遠心
分離で触媒を除去し、多量のアセトン−イソプロピルア
ルコール(1:1)混合溶媒中に沈殿させ、濾過し、共
重合体100重量部に対し老化防止剤BHTを0.6重
量部加え、真空乾燥し、樹脂〔以下樹脂(b)と呼ぶ〕
300gを得た。該樹脂(b)の軟化点は146℃、臭
素価0.1であった。
【0025】環状樹脂の合成例3:架橋多環式炭化水素
と単環オレフィンの共重合体 10リットルの攪拌機付き反応容器に精製、脱水したト
ルエン4,5リットルと精製、脱水したヘキサシクロ
〔6,6,1,13,6 ,110,13 ,02,7 ,0914
−4−ヘプタデセンとシクロペンテンの混合(1:1)
モノマー300gに、エチルアルミニウムセスキクロリ
ド90g、ジクロロエトキシオキソバナジウム15gを
窒素雰囲気下に温度5℃以下に滴下し、温度10℃に昇
温して24時間攪拌、重合反応を行う。次にメタノール
150mlにて重合を停止し、更にメタノールにて共重
合体を析出し、洗浄、濾別する。共重合体樹脂を合成例
2と同様な操作で水素添加を行い、得られた共重合体1
00重量部にイルガノックス1076(商品名)0.3
重量部を添加、均一に混合し、真空乾燥し、樹脂〔以下
樹脂(c)と呼ぶ〕160gを得た。該樹脂(c)の軟
化点136〜156℃、臭素値0.2であった。
【0026】環状樹脂の合成例4 10リットルの攪拌機付反応器に精製、脱水したシクロ
ヘキサン5リットルと精製、脱水したジメチル−テトラ
シクロ〔4,4,0,12,5 ,17,10〕−3−ドデセン
300gを仕込み、次にジクロロエトキシオキソバナジ
ウム20g、エチルアルミニウムセスキクロライド11
0gを窒化雰囲気下に温度5℃以下にて滴下し、窒素ガ
ス:水素ガス=150:1の混合ガスを温度10℃にて
15時間通して重合を行う。次にイソプロピルアルコー
ルを1リットル添加して重合を停止し、更にイソプロピ
ルアルコールにて重合体を析出し、洗浄する。この重合
体100重量部にイルガノックス168(商品名)0.
1重量部、アイオノックス330(商品名)0.2重量
部を添加し、真空乾燥を行う。得られた樹脂の軟化点1
41〜150℃、収量182gであった。この樹脂を樹
脂(d)という。
【0027】環状樹脂の合成例5 5リットルの攪拌機付反応器に、精製したビス(メタク
リルオキシ)トリシクロ〔4,3,0,12,5 〕−デカ
ン500gとシクロヘキサン500gをフラスコに入
れ、窒素流通下に過酸化ベンゾイル30gを添加し、均
一に混合し、徐々に昇温し、120℃にて7時間重合反
応を行なう。溶媒を除去し、t−ブチルパーオキシベン
ゾエート30gと4,4′−チオビス(6−t−ブチル
−3−メチルフェノール)3gを均一に添加し、金型温
度170℃にて10分間加熱し、樹脂粉末とし、温水に
て充分洗浄する。得られた樹脂〔以下樹脂(e)と呼
ぶ〕の軟化点は120℃以上、臭素価4.3であった。
【0028】環状樹脂の合成例6:架橋多環式化合物 メチルオキシカルボニルテトラシクロ〔4,4,0,1
2,5 ,17,10〕−3−ドデセン250gと1,2−ジク
ロロエタン1000ml、1−ヘキセン1.9gに、触
媒として六塩化タングステンの濃度0.05mol/リ
ットルのクロロベンゼン溶液46ml、パラアルデヒド
の濃度0.1mol/リットルの1,2−ジクロロエタ
ン溶液35ml、トリイソブチルアルミニウムの濃度
0.5mol/リットルのトルエン溶液19mlを、窒
素ガス雰囲気下に攪拌機付反応器2リットルに加えて、
60℃で10時間重合反応を行なう。重合物にメタノー
ル50mlを加えて重合を停止し、溶媒を蒸発し、アセ
トン−メタノール(1:1)混合溶液にて洗浄した後
に、真空乾燥する。次にテトラヒドロフラン4500m
lに重合物を溶解し、パラジウム5重量%のパラジウム
−アルミナ触媒23gを加え、水素ガス圧力100kg
/cm2 で温度170℃で5時間水素添加反応を行っ
た。以下、環状樹脂の合成例1の水素添加物後処理と同
様に処理して重合樹脂を得る。該樹脂100重量部にB
HT0.5重量部を添加し樹脂(f)とする。樹脂
(f)の軟化点132℃以上、臭素値0.05であっ
た。
【0029】環状樹脂の合成例7 10リットルの攪拌機付三口反応容器に、精製、脱水し
たトルエン5リットルを仕込み、窒素ガス雰囲気下に精
製したテトラシクロ〔4,4,0,12,5 ,1 7,10〕−
3−ドデセン152g、メチルシクロヘキセン19gを
入れ、次にエチルアルミニウムセスキクロリド18g、
バナジウムオキシトリクロリド11gを温度5℃以下で
混合する。次にガス吹込管より乾燥したエチレン:窒素
ガス=1:2の混合ガスを流しつつ昇温して10℃に
し、同混合ガス15リットルを1時間費やして流して重
合反応を行なう。次にメタノール50mlを加えて反応
を停止し、更に多量のメタノールで樹脂を析出し、アセ
トン・イソプロピルアルコール(1:1)混合溶媒で洗
浄して重合体100重量部にイルガノックス1070
(商品名)0.3重量部を加えた。得られた樹脂(g)
は臭素価0.5、軟化点124℃以上であった。
【0030】環状樹脂の合成例8 10リットルの攪拌機付反応器に、精製、脱水したトル
エン7リットルを仕込み、窒素ガス雰囲気下にテトラシ
クロ〔4,4,0,12,5 ,17,10〕−3−ドデセン9
30gと、ビシクロ〔2,2,1〕−2−ヘプトエン7
0g、1−ヘキサン5g、塩化タングステン6g、テト
ラフェニルスズ7gを添加し、温度50℃で3時間重合
を行う。重合後にメタノールを加えて樹脂を析出し、ア
セトンとメタノールの(1:1)混合液で樹脂を洗浄
し、後に真空乾燥を行う。樹脂量980g。得られた樹
脂を合成例1と同様な方法で水素添加を行なった。得ら
れた樹脂は、軟化点155〜160℃、樹脂量930g
に対してBHTを0.5重量%添加して使用した〔以
下、樹脂(h)と称する〕。
【0031】環状樹脂の合成例9 攪拌機付反応器にテトラシクロ〔4,4,0,12,5
7,10〕−3−ドデセン600g、ジシクロペンタジエ
ン140g、ペンタシクロペンタデカジエン180g、
1−ヘキセン760g、トルエン2700gを精製、乾
燥し、混合する。反応器を窒素雰囲気下にして、トリエ
チルアルミニウム18g、トリエチルアミン36g及び
四塩化チタン5.5gを精製、乾燥したトルエン溶液に
して、温度25℃に攪拌下に反応器に添加する。同温度
にて5時間攪拌して重合を行う。反応器にアセトン・イ
ソプロピルアルコール(1:1)を添加して重合を停止
し、樹脂を析出し、濾過、真空乾燥する。次に樹脂をシ
クロヘキサン6000mlに溶解し、水素ガス雰囲気下
にパラジウム−カーボン60gを加えて水素圧力60k
g/cm2 、温度155℃で5時間水素添加を行う。樹
脂を濾過し、アセトン・イソプロピルアルコール(1:
1)で樹脂を析出し、洗浄、BHT0.2重量%を添加
し、真空乾燥を行う。得られた樹脂〔以下、樹脂(i)
と称する〕量360g、軟化点186℃であった。
【0032】実施例1〜7及び比較例1 以上で得た本発明の環状樹脂(a)〜(g)を用い、表
−1に示す配合及び成形条件で、図2に示す形状の注射
器を成形した(実施例1〜7)。また、比較のためにP
P〔商品名 ポリプロ6200E、三菱化成(株)製〕
を用いて表−1の条件で、同様に注射器を成形した(比
較例1)。
【0033】
【表1】
【0034】該注射器の注射筒内に薬液又は注射用蒸留
水を入れた、容器兼注射器であるので、第12改正日本
薬局方の「49輸液用プラスチック容器試験法」に準拠
して衛生試験を行った。試験結果を表−2に示す。
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】表−2に示す如く、本発明品はJP12の
試験に適合し、異常が認められてない。比較例1の製品
は不透明であり、注射器用容器としては不適当である。
また、市販樹脂PVC、PEを用いると、JP12の試
験条件である温度120℃で60分間の高圧蒸気殺菌処
理で成形品が変形又は粘着してしまい不適格品となる。
本発明の環状樹脂成形品は透明であり、高圧蒸気殺菌処
理でも変形を認めなかった。
【0038】実施例8〜13(輸液セット及び輸血セッ
トの製造及び衛生試験) 輸液セットは例えば抗生物質、制癌剤などの医薬品、例
えばブドウ糖、アミノ酸、ビタミン剤、電解質などの栄
養剤、水分、高カロリー輸液などを、ガラス、プラスチ
ックボトル、プラスチックバック等の薬液容器から点滴
して静脈に投与する一連の器具をいう。図3は標準的な
輸液セットの一例、また図4〜図6はその各部品の例を
示すものであり、人体の静脈流に入れるための輸液針1
8、薬液を混注する場合に用いるY字管又はト字管であ
るタコ管17、流量調節器(流量コントロールクランプ
ともいう)15、連結管12,16、点滴管(点滴筒と
もいう)14、導入針(薬液注出針、瓶針、容器針、輸
液針ともいう)11からなる。輸液針18には静脈針と
翼状針があり、主に冷間圧延ステンレス鋼材からなる。
導入針は樹脂製のステンレス製がある。 また、輸血セ
ットは、輸血針18,導入針11、連結管12、点滴管
14にさらに濾過器(濾過網)13を有してなる一連の
セットをいい、輸液セットと類似しているので、医療器
具の規格としては同等に取り扱われている。
【0039】本発明の環状樹脂を用いて、図3に示す輸
液セットを成形した。各部品の金型成形には公知技術を
適用し、材料樹脂をスクリューにて加熱溶融したものを
金型内で押出し成形し、冷却して各器具部品を成形し
た。材料樹脂としてPE(商品名ウルトゼックス403
0、三井石油化学工業(株)製)40重量部を用いた。
その他の配合組成、成形条件を表−3に示す。表−3に
おいて、は液状イソプレン(クラレ(株)製)、は
特開平3−69363号公報によるもの、を意味する。
【0040】
【表4】
【0041】次に各成形部品を組み立て、熱融着して輸
液セットとした。得られた本発明の輸液セットの性能及
び衛生試験を、厚生省告示第301号、同第42号に準
拠して行った。その結果を表−4に示す。
【0042】
【表5】
【0043】表−4の試験において1),2)は以下の
ように行った。 1)ニトログリセリンの吸着:ニトログリセリンの注射
液(エーザイ(株)製、ニトログリセリン/整理食塩水
=5mg/10ml)について、実施例8〜13の各輸
液セットにより1〜1.5ml/分の速度で流したとき
のニトログリセリン濃度変化を調べる。定量法は高速液
体クロマトグラフィー法を使用した。「病院薬学」vol.
12−317(1986)、医薬ジャーナルvol.21−
113(1985)に記載の方法に準拠した。 2)インシュリンの吸着 インシュリン〔インシュリン40、40IU/ml,清
水製薬(株)製〕を、実施例8〜13のの各輸液セット
により1〜1.5ml/分の速度で流したときのインシ
ュリン濃度変化を測定し、輸液セットによるインシュリ
ン吸着量を調べた。定量法は高速液体クロマトグラフィ
ー法を使用した。「病院薬学」vol.11−432(19
85)に記載の方法に準拠した。
【0044】表−4に示す如く、本発明による輸液セッ
トはいずれも該基準に適合する。次に、近年問題視され
ている薬液の器具による吸着の測定は、高級な薬液が正
確な量で人体に投与されていることを検査する項目であ
り、本発明の環状樹脂成形品はニトログリセリン、イン
シュリンの吸着がないか、又は極めて少ないことが表−
4の結果からわかる。公知材料であるPPの場合、イン
シュリン7〜8重量%、ニトログリセリン0.3〜0.
8重量%の吸着があり、PVCはインシュリン7〜10
重量%、ニトログリセリン13〜15重量%の吸着があ
るとの報告があり、この対策として吸着防止剤例えば界
面活性剤やアミノ酸の配合が検討されているが、本発明
ではこのような配合剤は不要である。
【0045】本発明品は透明な樹脂製品であるため、点
滴管、連結管など内部を流通する薬液の異物、結晶物の
発見にも適する。また各器具の接着も容易且つ強固にで
きる。合成樹脂の耐薬品性を試験する方法としては、各
器具部品を0.5重量%炭酸ソーダ溶液を10倍量に浸
漬し、温度121℃で30分間蒸気加熱を行い、その液
を波長430nm、650nmの可視部の透過率を測定
した。その結果は90%以上であり、耐薬品性において
も優れている。
【0046】本発明による医療用具品の具体例を説明す
る。図3の導入針はステンレス鋼製品を示す。図4、図
5、図6は本発明の成形品を示すが、図5の製品では導
入針と点滴筒とを連結している。図6は導入針が太く、
長いもので、これは長時間プラスチックバック又はボト
ルより薬の投与中でも導入針の抜け出るのを防止できる
と共に、導入針の基部に螺旋形をつけ、プラスチック排
出口との嵌合を良好ならしめた例である。
【0047】実施例14 移注器(導入器、両頭針、トランスファニードルともい
う、図7,図8参照)を本発明樹脂にて成形した。この
器具の用途はガラスボトルとガラスバイアル、ガラスバ
イアルとプラスチックバック、プラスチックボトルとガ
ラスバイアル、プラスチックバックとプラスチックボト
ルの容器に入っている輸液あるいは溶解液(例えば精製
水)を空気に触れることなく移動して溶解し、前記各実
施例の輸液器具にて人体に薬液を投与する器具である。
また、更に高カロリー輸液に調製する際には、基礎液
(精製水、生理食塩水などの電解液)にブドウ糖、高濃
度アミノ酸、各種ビタミン剤などを溶解し容器内液を極
めて衛生的に移動する器具である。図7にガラス容器
(バイアル,ボトル等)内の粉末薬を注射用蒸留水に溶
解する移注器(例えば薬液通路と空気通路を持つ両頭
針)の使用状態を示す。図8の例では、連結管に本発明
の環状樹脂(b)で成形した2個の導入針11を連結
し、中間に流量調節器15を設けた液体移動連結器具を
示す。
【0048】実施例15(血液バック) 本発明に従い作製した、採血した血液を貯蔵する容器即
ち血液バックを図9に示す。採血針31、連結管12、
親血液バック32、1個以上の子血液バック33を連結
体としてある。血液を人体から採血針31にて採血し、
貯蔵するためにCPD(Citrate-Phosphate-Dextrose)
液かACD(Acid-Citrate-Dextrose)液を添加して親血
液バック32、子血液バック33に収納する。本発明の
環状樹脂(d)並びに、本発明の環状樹脂(f)とエチ
レン−酢酸ビニル共重合体のケン化物との3:1混合樹
脂からなる厚さ0.2±0.03mmのフィルムを用
い、高周波熱圧着機により血液バックの周縁部を熱溶着
してシール部34とし血液収納部35を製造する。該熱
溶着の際、連結管12、排出口36をつける。血液バッ
クに関しては厚生省告示第448号に、塩化ビニル樹脂
を基準にした試験項目があり、そのうちの気密試験に準
拠し、ゲージ圧0.04±0.03kg/cm2 にて6
分間放置しても空気漏れが認められず、耐圧試験、耐熱
試験項目において高圧蒸気内温度121℃、内圧1.1
±0.1kg/cm 2 で20分間での加熱蒸気殺菌を行
っても異常を認められなかった。なお、JP12の「4
9輸液用プラスチック容器試験法」に準拠した試験を行
ったところ、該試験基準価以内の値を示し合格であっ
た。
【0049】実施例16(2種類の薬品を一容器に充填
した注射器兼容器) 本発明に従い本発明に係る環状樹脂を用いて作製した、
2種類の薬品を充填した注射器兼容器(以下容器と略
す)の機構を図10に示す。注射筒1の筒先37に高濃
度薬・粉末薬38を入れ、次に注射筒1のほぼ中央先端
部にバイパス溝42を位置させる。図11に示す該バイ
パス溝42のA−A′断面図のように、注射筒の壁の厚
さは同じであり、筒の外周を凸状、即ち内壁を大きくし
た溝42を設けてある。次に注射筒1のほぼ中央部に第
1密封栓39を位置させ、該第1密封栓39の厚さはバ
イパス溝42の長さより短くし、図に破線で示すように
溝内部に浸るように設計する。注射筒1の開口部に第2
密封栓40を位置させ、第2密封栓40には押子棒2の
先端が挿入できるような溝を設け、第2密封栓40と上
記第1密封栓39の間に蒸留水又は希い薬液41を充填
する。筒1の開口部は指かけフランジ6を、入口にはキ
ャップ10をつけて閉じる。注射筒1の先端37では筒
先を細く延長して注射針の形状49にし、その外部にゴ
ム栓のキャップ10を付けて密封した容器とした。本実
施例の容器薬を使用する際は、注射筒内の第2密封栓に
押子棒の先端を連結し、押子棒を注射筒内に押し入れる
時に蒸留水と第1密封栓に連なり、第1密封栓がバイパ
ス溝内に位置すると、蒸留水はバイパス溝内を流れて粉
末薬38と混合し、粉末薬を溶解して、投与できる濃度
の薬となる。この薄められた薬液は図3に示すタコ管1
7により投与される場合が多い。注射筒の製造は、注射
筒形の金型内にアモルファスナイロン(商品名ノバミッ
ト×21、三菱化成工業(株)製)を最初に、次に本発
明に係る環状樹脂(f)と、各々の樹脂を温度230〜
300℃に加熱、溶融状態にし、射出して成形、冷却す
ることによった。また、該第1密封栓、第2密封栓のゴ
ム素材には、BR(商品名BR01、日本合成ゴム
(株)製)100重量部に超高分子量ポリエチレン粉末
(商品名ハイゼックスミリオン240、三井石油化学
(株)製)を20重量部配合し、有機過酸化物で架橋
し、製品のカタサを48±5にした。該ゴム栓の表面に
環状の突起を有する形状にした。本実施例による注射器
兼容器はJP12の「49輸液用プラスチック容器試験
法」に準拠した試験を行ったところ、該試験基準価内の
値を示し合格であった。なお、本発明の医療用具品は上
記で説明した具体的な実施例に限定されるところはな
い。
【0050】
【発明の効果】本発明の効果は以下のとおりである。 1)本発明は、特定の環状樹脂を用いて医療用具品を成
形したものであり、医薬品、栄養剤等の薬液を、高品位
に保持し且つ正確にで衛生的に投与できる医療用具品で
ある。 2)本発明に使用する環状樹脂は不活性であり、表面か
らの微粒子の剥離や、薬の吸着がない。 3)本発明に使用する環状樹脂は熱、酸素、空気、湿
度、光等の外的因子による影響が少ない。 4)本発明の医療用具品は第12改正日本薬局方、厚生
省告示に規定される医療用具品の試験基準に合格する。 5)医療用具品の成形が容易である。即ち、本発明は以
上の特徴を有する衛生的な医療用具品であるため、非常
に有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一具体例であり、環状樹脂で成形し
た注射器の断面図である。
【図2】 本発明の一具体例であり、環状樹脂で成形し
た注射器兼注射薬容器の断面図である。
【図3】 本発明の一具体例であり、環状樹脂で成形し
た輸液セットの断面図である。
【図4】 本発明の一具体例であり、環状樹脂で成形し
た導入針の断面図である。
【図5】 本発明の一具体例であり、環状樹脂で成形し
た導入針、点滴管を付けた状態を示す断面図である。
【図6】 本発明の一具体例であり、環状樹脂で成形し
た導入針と容器栓との嵌合状態を示す断面図である。
【図7】 本発明の一具体例であり、環状樹脂で成形し
た両頭針混合器を使用して粉末薬剤の中に液体を移動す
る状態を説明する断面図である。
【図8】 本発明の一具体例であり、環状樹脂で成形し
た液体移動連結器具の断面図である。
【図9】 本発明の一具体例であり、環状樹脂で成形し
た血液バックの縦断図である。
【図10】 本発明の一具体例であり、環状樹脂で成形
した2種類の薬品を一容器に充填した注射器兼容器の断
面図である。
【図11】 図10の注射筒バイパス溝のA−A′面断
面図である。
【符号の説明】
1 注射筒、2 押子棒、 3 滑栓、 4 注射筒
先、 5 注射針、 6フランジ、 7 滑栓の表面に
積層された本発明の被覆樹脂、 8 薬液、9 螺旋型
の係合部、 10 注射針キャップ、 11 導入針、
12 連結管、 13 濾過網、 14 点滴筒(点
滴管)、 15 流量調節器(クランプ、流量コントロ
ーラー)、 16 ゴム管、 17 タコ管、 18
輸液針(静脈針、翼状針)、 19 ガラス瓶、ガラス
ボトル、バイアル、プラスチックボトル、プラスチック
バック、 20 空気導入管(エアー針)、 21 ゴ
ム栓、 22 栓、 23 液口、 24 隔離板、2
5 容器内空気通路、26 液体通路、 27 基板、
28 バイアル口保持具(瓶口ホルダー)、29 液
体入れバイアル、 30 粉末薬バイアル、 31 採
血針、 32親血液バック、 33 子血液バック、
34 シール部、 35 血液収納部、 36 血液排
出口、 37 先端、 38 粉末薬又は濃縮薬、 3
9第1密封栓、 40 第2密封栓、 41 蒸留水又
は希い薬液、 42 注射筒のバイパス溝、 43 注
射筒の針部。

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 環状オレフィン系化合物又は架橋多環式
    炭化水素系化合物を重合体成分とする樹脂を含有する材
    料からなる医療用具品
  2. 【請求項2】 前記環状オレフィン系化合物が単環式オ
    レフィン系化合物類及びこれらのアルキル誘導体、アク
    リレート誘導体から選ばれる1種以上であることを特徴
    とする請求項1記載の医療用具品。
  3. 【請求項3】 前記架橋多環式炭化水素系化合物が環内
    又は置換基に不飽和結合を1以上有してなることを特徴
    とする請求項1記載の医療用具品。
  4. 【請求項4】 前記環状オレフィン系化合物又は架橋多
    環式炭化水素系化合物を重合体成分とする樹脂が、低級
    オレフィン類、芳香族類又は低級オレフィン類もしくは
    芳香族のビニルモノマーを共重合体成分として含有する
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記
    載の医療用具品。
  5. 【請求項5】 前記環状オレフィン系化合物又は架橋多
    環式炭化水素系化合物を重合体成分とする樹脂がオレフ
    ィン系樹脂及び/又は合成ゴム類との混合物であること
    を特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の
    医療用具品。
  6. 【請求項6】 前記環状オレフィン系化合物又は架橋多
    環式炭化水素系化合物を重合体成分とする樹脂が臭素価
    5以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項5の
    いずれかに記載の医療用具品。
  7. 【請求項7】 前記環状オレフィン系化合物又は架橋多
    環式炭化水素系化合物を重合体成分とする樹脂が軟化点
    90℃以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項
    6のいずれかに記載の医療用具品。
  8. 【請求項8】 前記医療用具品が注射筒、移注器(導入
    器)、輸液セット用部品、採血用器具、輸血用器具、血
    液セット用部品、透析型人工腎臓装置、カテーテル、
    管、血液バック、二種類の薬を充填した注射器兼容器の
    いずれかである請求項1乃至請求項7のいずれかに記載
    の医療用具品。
  9. 【請求項9】 前記医療用具品が針と一体に構成された
    ものであることを特徴とする請求項8記載の医療用具
    品。
  10. 【請求項10】 前記医療用具品が表面に1層以上の積
    層を有してなるものであり、該積層の少なくとも1層が
    前記環状オレフィン系化合物又は架橋多環式炭化水素系
    化合物を重合体成分とする樹脂を含有する材料からなる
    ものであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか
    に記載の医療用具品。
JP5-15521A 1992-02-12 1993-02-02 医療用具品 Expired - Lifetime JP3004831B2 (ja)

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