JP3666884B2 - 医療用器材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、医療用器材に関し、さらに詳しくは、接触する薬剤を変質させない医療用器材に関する。
【0002】
【従来の技術】
医療用器材は繰り返しの使用によるウィルスの二次感染を防止するために、最近では、使い捨てのものに置き換えられつつある。また、例えば、注射薬も、従来は注射の際に滅菌されたアンプル中から注射器で吸引して用いていたが、最近は、予め注射器中に注射薬を吸入してあるプレフィルドシリンジが流通し、注射後の注射器は廃棄されるようになった。
【0003】
医療用の薬品容器においては、内容物の視認が容易になるように、ある程度以上の透明性が必要であり、従来、ガラス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどが用いられている。しかし、ガラスは割れることがあり、重く、さらにアルカリイオンなどが溶出することがあった。また、燃やすのが困難であったり、破片の処理が危険であるなど、使い捨てにするのには、困難な場合もあった。ポリエチレン、ポリプロピレンは耐熱性に劣り、スチーム滅菌ができないほかに、低分子の有機成分が溶出することがあった。さらに、ポリ塩化ビニルは耐熱性に劣り、塩素が溶出し、内容物が変質することがあった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、鋭意研究の結果、熱可塑性ノルボルネン系樹脂からなる医療用成形品が、滅菌でも変形せず、不純物の溶出や薬品成分の吸着がないことを見いだし、本発明を完成させるに到った。
【0005】
【課題を解決するための手段】
かくして本発明によれば、滅菌でも変形せず、不純物の溶出や薬品成分の吸着によって接触する薬品を変質させない、ノルボルネン系単量体の開環重合体水素添加物、ノルボルネン系単量体の付加型重合体、及びノルボルネン系単量体とオレフィンの付加型重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の熱可塑性ノルボルネン系樹脂であって、単一の金属原子を1ppm以上含有せず、かつ該ノルボネン系樹脂と非相溶である配合剤を0.01〜10重量%含有し、該配合剤成分がミクロドメインとなって分散してなる熱可塑性ノルボルネン系樹脂を、薬ビン、プレフィルド・シリンジ、密封された薬袋、点眼用容器、アンプル、バイアル、及び点滴薬容器からなる群より選ばれる医療容器に用いることを特徴とする医療用器材が提供される。
【0006】
(熱可塑性ノルボルネン系樹脂)本発明の熱可塑性ノルボルネン系樹脂は、特開平3−14882号や特開平3−122137号、特開平4−63807号などで公知の樹脂であり、具体的には、ノルボルネン系単量体の開環重合体、その水素添加物、ノルボルネン系単量体の付加型重合体、ノルボルネン系単量体とオレフィンの付加型重合体などが挙げられる。
【0007】
ノルボルネン系単量体も、上記公報や特開平2−227424号、特開平2−276842号などで公知の単量体であって、例えば、ノルボルネン、そのアルキル、アルキリデン、芳香族置換誘導体およびこれら置換または非置換のオレフィンのハロゲン、水酸基、エステル基、アルコキシ基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基等の極性基置換体、例えば、2−ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5,5−ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−シアノ−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−5−メチル−2−ノルボルネン、5−ヘキシル−2−ノルボルネン、5−オクチル−2−ノルボルネン、5−オクタデシル2−ノルボルネン等;ノルボルネンに一つ以上のシクロペンタジエンが付加した単量体、その上記と同様の誘導体や置換体、例えば、1,4:5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−2,3−シクロペンタジエノナフタレン、6−メチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,4:5,10:6,9−トリメタノ−1,2,3,4,4a,5,5a,6,9,9a,10,10a−ドデカヒドロ−2,3−シクロペンタジエノアントラセン等;シクロペンタジエンの多量体である多環構造の単量体、その上記と同様の誘導体や置換体、例えば、ジシクロペンタジエン、2,3−ジヒドロジシクロペンタジエン等;シクロペンタジエンとテトラヒドロインデン等との付加物、その上記と同様の誘導体や置換体、例えば、1,4−メタノ−1,4,4a,4b,5,8,8a,9a−オクタヒドロフルオレン、5,8−メタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロ−2,3−シクロペンタジエノナフタレン等;等が挙げられる。
【0008】
なお、本発明においてはノルボルネン系単量体を重合させる場合には、本発明の効果を実質的に妨げない範囲において重合可能な他のシクロオレフィン類等を併用して、共重合体とすることができる。開環重合の場合の共重合可能なシクロオレフィンの具体例としては、例えば、シクロペンテン、シクロオクテン、5,6−ジヒドロジシクロペンタジエンなどのごとき反応性の二重結合を1個以上有する化合物が例示される。
【0009】
ノルボルネン系単量体の重合は公知の方法でよく、一般には、重合触媒としてTiCl4、WCl6、MoCl5、VCl5、NiCl2、PdCl2などの遷移金属化合物と、Al、Li、Na、Mgなどの典型金属のアルキル化合物などを組み合わせて重合する。また、必要に応じて、公知の方法、例えば、Ni、Pdなどを触媒として、水素添加することにより、熱可塑性ノルボルネン系樹脂水素添加物とすることができる。
【0010】
なお、従来公知の重合方法では、重合体中に重合触媒由来の遷移金属が残留する。医療用器材が、生体や薬品等と接触する際に、残留する遷移金属が溶出するのは好ましくなく、医療用器材中に実質的に残留しないことが好ましい。そのような重合体を得る方法としては、細孔容積0.5cm3/g以上、好ましくは0.7cm3/g以上、好ましくは比表面積250m2/g以上のアルミナなどの吸着剤に、ニッケルなどの水素添加触媒金属を担持させた不均一系触媒を用いて重合体を水素添加したり、このような吸着剤で樹脂溶液を処理して金属原子を吸着させたり、樹脂溶液を酸性水と純水で繰り返し洗浄したりすることなどにより、重合触媒由来の遷移原子を1ppm以下にすることができる。
【0011】
不均一系触媒の製造方法は公知の方法に従えばよく、特公昭50−15474号、特公昭49−32187号、特公昭49−11312号、特公昭51−48479号などに従い、乾燥や焼成の条件によって、担体の吸着能を制御すればよい。例えば、ニッケルを活性アルミナに担持した不均一系触媒の場合、濃度10〜20%の硫酸ニッケルまたは硝酸ニッケル水溶液に水酸化アルミニウム粉末を10〜20%の濃度で懸濁し、水酸化ナトリウムで加水分解することにより、水酸化アルミニウムの表面に水酸化ニッケルを担持させる。この粉末を濾過により回収し、押し出しにより固め、350〜450℃で焼成し、水素と100〜200℃で接触させて表面を還元し、さらに酸素の存在下で80〜120℃に熱することにより金属表面を酸化し、酸化被膜を形成することにより、活性アルミナに担持したニッケル触媒が得られる。なお、ニッケルの表面が酸化ニッケルで覆われているが、水素添加反応の系中では還元により、酸化ニッケルがニッケルとなり、触媒として機能する。
【0012】
押し出しの条件、焼成の温度や圧力等により、活性アルミナの微細な構造が変化するので、細孔容積0.5cm3/g以上、好ましくは0.7cm3/g以上、また好ましくは比表面積250m2/g以上になるように条件を選択する。また、高温で水素添加する場合は、酸化被膜が厚いほど耐熱性を持つので、酸化の温度、時間、酸素濃度などを調節して、好ましい条件を選択すればよい。こうして得られた焼成物を粉砕して不均一系触媒を得ればよい。
【0013】
一般的な重合触媒の遷移金属化合物として、塩化遷移金属を使用した場合、通常、塩素原子も2ppm以上残留する。塩素原子も遷移金属原子と同様に医療用器材中に残留しないようにすることが好ましく、除去することが好ましい。除去する方法は、遷移金属原子と同様の処理で除去でき、残留量を1ppm以下にすることができる。
【0014】
また、本発明で用いる熱可塑性ノルボルネン系樹脂はガラス転移温度が好ましくは105℃以上、より好ましくは120℃以上、特に好ましくは130℃以上のものである。滅菌する方法には、γ線照射による方法など加熱を必要としない方法もあるが、最も簡便な滅菌方法は、加熱を要する方法、特に煮沸による方法とスチーム滅菌である。煮沸による滅菌では、熱可塑性ノルボルネン系樹脂はガラス転移温度が105℃以上であれば問題はないが、スチーム滅菌では、滅菌時の温度設定によって要求される耐熱性が異なる。最も一般的なスチーム滅菌は、オートクレーブを用いた121℃の方法である。このスチーム滅菌で変形しないためには、ガラス転移温度が130℃以上のものが好ましい。一般に、環数の多いモノマーを多く使うほど、熱可塑性ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度は高くなる。例えば、4環体であるエチルテトラシクロドデセンの開環重合体水素添加物は、通常130℃以上になる。しかし、2環体であるノルボルネン開環重合体水素添加物では、通常30℃程度である。一方、ノルボルネンの付加型重合体では、ガラス転移温度は、300℃以上であり、測定出来ない場合もある。あまりガラス転移温度が高いと、射出成形が困難になるなどの弊害もあるので、モノマーやコモノマーを選択して、目的に応じたガラス転移温度の熱可塑性熱可塑性ノルボルネン系樹脂を製造すればよい。
【0015】
本発明で使用する熱可塑性ノルボルネン系樹脂の数平均分子量は、トルエン溶媒によるGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ)法で測定したポリスチレン換算値で、10,000〜200,000、好ましくは20,000〜100,000、より好ましくは25,000〜50,000である。数平均分子量が小さすぎると機械的強度が劣り、大きすぎると成形性が悪くなる。熱可塑性ノルボルネン系樹脂中のトルエンを溶媒とした高速液体クロマトグラフィー分析によるポリスチレン換算分子量が2,000以下の樹脂成分含有量が1重量%以下、好ましくは0.5%以下のものである。低分子量成分が多いと、医療用器材が生体や薬品との接触により溶出する恐れがある。
【0016】
なお、熱可塑性ノルボルネン系樹脂を水素添加する場合、水素添加率は耐熱劣化性、耐光劣化性などの観点から、90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは、99%以上とする。
【0017】
(配合剤)熱可塑性ノルボルネン系樹脂は医療用器材によく用いられるスチーム滅菌処理では、変形など形状的変化は実質的に認められないが、処理条件などによっては、濁りを生じて透明性が低下することがある。これを防止するために、熱可塑性ノルボルネン系樹脂と非相溶性の配合剤を添加して、樹脂組成物として用いることが好ましい。透明性が発現できるまで細かく分散できるものであれば、有機化合物でも無機質充填剤であってもよい。
【0018】
無機質充填剤としては、平均粒径が1μm以下、特に0.5μm以下、さらに0.2μm以下のものが好ましい。また、透明で、非水溶性のものが好ましい。例えば、シリカ、アルミナ、ガラスなどを上記粒径の超微粉末としたものが挙げられる。
【0019】
有機化合物としては、本発明の医療用器材と接触する薬剤中に溶出したりすることにより、薬剤を変質させにくい高分子化合物が好ましく、微細に分散させるために、ガラス転移温度が40℃以下のゴム質重合体が好ましい。なお、ブロック共重合したゴム質重合体などでガラス転移温度が2点以上ある場合があるが、その場合は、最も低いガラス転移温度が40℃以下であればよい。
【0020】
配合剤として用いられる高分子化合物の例としては、乳化重合または溶液重合したスチレン・ブタジエン・ゴム、ハイスチレンゴムなどのランダムまたはブロック・スチレン・ブタジエン系共重合体、これらの水素添加物;イソプレン・ゴム、その水素添加物;クロロプレンゴム、その水素添加物;エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体などの飽和ポリオレフィンゴム;エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、α−オレフィン・ジエン共重合体、ジエン共重合体、イソブチレン・イソプレン共重合体、イソブチレン・ジエン共重合体などのジエン系重合体、これらのハロゲン化物、ジエン系重合体またはそのハロゲン化物の水素添加物;アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、その水素添加物;フッ化ビニリデン・三フッ化エチレン共重合体、フッ化ビニリデン・六フッ化プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン・六フッ化プロピレン・四フッ化エチレン共重合体、プロピレン・四フッ化エチレン共重合体などのフッ素ゴム;ウレタンゴム、シリコーンゴム、ポリエーテル系ゴム、アクリルゴム、クロルスルホン化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、プロピレンオキサイドゴム、エチレンアクリルゴムなどの特殊ゴム;ノルボルネン系単量体とエチレンまたはα−オレフィンの共重合体、ノルボルネン系単量体とエチレンとα−オレフィンの三元共重合体、ノルボルネン系単量体の開環重合体、ノルボルネン系単量体の開環重合体水素添加物などのノルボルネン系ゴム質重合体の内樹脂組成物の主成分である熱可塑性ノルボルネン系樹脂と非相溶のもの;スチレン・ブタジエン・スチレン・ゴム、スチレン・イソプレン・スチレン・ゴム、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン・ゴムなどの芳香族ビニル系モノマー・共役ジエンのランダム共重合体、これらの水素添加物;スチレン・ブタジエン・スチレン・ゴム、スチレン・イソプレン・スチレン・ゴム、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン・ゴムなどの芳香族ビニル系モノマー・共役ジエンの直鎖状または放射状ブロック共重合体、それらの水素添加物などのスチレン系熱可塑性エラストマーをはじめ、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、1,2−ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性エラストマー;などのガラス転移温度が20℃以下のゴム質重合体や、シクロヘキシル基、イソボルニル基、トリシクロ〔4.3.0.12,5〕デカン−3−イル基、トリシクロ〔4.3.0.12,5〕−7−デセン−3−イル基など環状置換基を有するポリ(メタ)アクリレート樹脂;スチレン類とオクチルアクリレート、ヘキシルアクリレートブチルアクリレートなどの(メタ)アクリレート類との共重合体、ポリ(アミノカルボニルテトラメチレンカルボニルアミノメチレンー1,3−シクロヘキシレンメチレン)などのポリアミド樹脂;ポリ〔オキシカルボニル(1,3−フェニレン)カルボニルオキシメチレン(トリシクロ〔4.3.0.12,5〕−3,8−ジイル)メチレン〕などのポリエステル樹脂;ポリブチレンオキサイド、ポリ〔オキシ(2−メチル−2−ヒドロキシトリメチレン)オキシ(1,4−フェニレン)イソプロピリデン(1,4−フェニレン)〕などのポリエーテル樹脂;ポリ〔オキシカルボニルオキシ(2−メチル−1,4−シクロヘキシレン〕イソプロピリデン(3−メチル−1,4−シクロヘキシレン)〕などのポリカーボネート樹脂;ポリウレタン樹脂;などの高分子化合物などが挙げられる。
【0021】
これらの中でも、芳香族ビニル系モノマーと共役ジエン系モノマーの共重合体、その水素添加物、及び本発明の熱可塑性ノルボルネン系樹脂と非相溶のノルボルネン系ゴム質重合体が、熱可塑性ノルボルネン系樹脂との分散性が良く、好ましい。芳香族ビニル系モノマーと共役ジエン系モノマーの共重合体はブロック共重合体でもランダム共重合体でも良い。耐候性の点から芳香環以外の部分を水添しているものがより好ましい。具体的には、スチレン・ブタジエンブロック共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体、スチレン・イソプレン・ブロック共重合体、スチレン・イソプレン・スチレン・ブロック共重合体、およびこれらの水素添加物、スチレン・ブタジエン・ランダム共重合体などが挙げられる。
【0022】
また、本発明の樹脂を薬品容器に成形した場合などには、内容物の量や状態が確認できる程度の透明性が必要である。そのためには、配合剤は、それを添加する熱可塑性ノルボルネン系樹脂との屈折率の差が小さいことが好ましい。屈折率の差が大きいものを混合すると、多量に添加した場合に内容物の量などが見えなくなるほど不透明となりやすい。また、少なすぎるとスチーム滅菌処理での濁り防止が不十分になる。
【0023】
熱可塑性ノルボルネン系樹脂は、配合剤を添加すると、一般に透明性は低下するが、樹脂、配合剤、配合割合によって透明性は異なり、1mmの厚さに成形すると波長領域450〜700nmの範囲で光線透過率で通常40%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上である。配合剤がミクロドメンを形成して分散している場合は、0.3μm以下、特に0.2μm以下のミクロドメインを形成していれば、可視光の波長よりも配合剤の直径が小さく、光が散乱しにくいため、透明性に優れる。
【0024】
また、配合剤と熱可塑性ノルボルネン系樹脂の屈折率の差は小さいほど、透明性に優れ、配合量が5重量%〜0.5重量%では、好ましくは0.2以下、より好ましくは0.1以下、特に好ましくは0.05以下に、特により好ましくは0.02以下、配合量が0.5重量%未満では、0.3以下、より好ましくは0.2以下、特に好ましくは0.1以下、特により好ましくは0.05以下にする。
【0025】
熱可塑性ノルボルネン系樹脂の種類が異なれば屈折率も異なるが、例えば、ゴム質重合体はモノマーの比率を変化させたり、主鎖の不飽和結合の数を水素添加などにより変化させることにより、連続的に屈折率を変えることが可能である。用いる熱可塑性ノルボルネン系樹脂の屈折率に応じて、適当な屈折率を有するゴム質重合体を選択することが好ましい。
【0026】
(配合)本発明においては熱可塑性ノルボルネン系樹脂90〜99.99重量%、好ましくは95〜99.98重量%、より好ましくは99〜99.95重量%、特に好ましくは99.5〜99.9重量%に配合剤10〜0.01重量%、好ましくは5〜0.02重量%、より好ましくは1〜0.05重量%、特に好ましくは0.5〜0.1重量%添加して、熱可塑性ノルボルネン系樹脂中で分散させる。添加量が多すぎれば、樹脂の透明性、ガラス転移温度、耐熱性が低下する。添加量が少なすぎれば、配合剤を配合する効果が得られない。
【0027】
添加する方法は配合剤が熱可塑性ノルボルネン系樹脂中で十分に分散する方法であれば、特に限定されない。例えば、ゴム質重合体を配合剤とする場合には、ミキサー、二軸混練機などで樹脂温を溶融状態で混練する方法、適当な溶剤に溶解して分散させて凝固法、キャスト法、または直接乾燥法により溶剤を除去する方法などがある。
【0028】
混練する場合には、樹脂温度がTg+50℃〜Tg+150℃の温度で、十分にシェアをかける。樹脂温度が低すぎると粘度が高くなり混練が困難であり、高すぎると樹脂やゴム質重合体が劣化し、粘度や融点の差により両者がうまく混練できない。
【0029】
配合剤の種類、量を調節すると、樹脂を薬品容器に成型した場合などに、内容物の量などが確認できる程度に透明となる。透明性を向上させるには、配合剤がミクロドメインとなって熱可塑性ノルボルネン系樹脂中に分散することが好ましい。有機化合物の場合は、配合量が多いとミクロドメインとならない場合があるが、例えば、ゴム質重合体であれば、0.8〜0.01重量%添加することによりミクロドメインとすることができる。また、配合量が少ない場合、あるいは配合剤を加えない場合は、オートクレーブなどによるスチーム滅菌により、樹脂が白濁し、透明性が失われる可能性がある。
【0030】
例えば、ラボプラストミル(東洋精機製)を用いる場合、二軸異方向ミキサーモードで回転数20〜30rpmで、フィード・レートを調節して滞留時間を1〜10分程度にして混練すれば、通常、熱可塑性ノルボルネン系樹脂中にゴム質重合体を直径0.3μm以下のミクロドメインを形成して分散させることができる。通常、二軸混練機においては、L/Dを25以上、好ましくは30以上にし、滞留時間を1〜10分程度にする。滞留時間が長いほど、ミクロドメインを形成しやすいが、樹脂やゴム質重合体が劣化しやすいので、用いる樹脂、ゴム質重合体、混練に用いる装置の組み合せによって、予備的に混練して、その組み合せにあった回転数、滞留時間等を決めなければならない。
【0031】
なお、ミクロドメインはゴム質重合体を配合剤とする場合には、ほぼ球形となり、粒子間での粒径のばらつきは小さい。通常、直径0.3μm以下、好ましくは0.2μm以下である。この粒径であれば、後述のようにゴム質重合体を添加による熱可塑性ノルボルネン系樹脂組成物の透明性の低下は小さく、問題とならない。他の配合剤の場合も、ミクロドメインはほぼ球形となることが好ましく、粒子間での粒径のばらつきがないことが好ましく、直径0.3μm以下、特に0.2μm以下となることが好ましい。なお、ミクロドメインが球形とならない場合でも、そのミクロドメインを閉じ込めることのできる最小の球の直径が0.3μm以下、特に0.2μm以下となることが好ましい。
【0032】
(添加剤)本発明で用いる熱可塑性ノルボルネン系樹脂には、所望により、各種添加剤を添加してもよい。樹脂に用いられる添加剤は樹脂と相溶性のあるものであり、フェノール系やリン系などの酸化防止剤、耐電防止剤、紫外線吸収剤、滑剤などがある。溶液流延法でシートを成形する場合には、表面粗さを小さくするため、レベリング剤の添加も好ましい。レベリング剤は、例えば、フッ素系ノニオン界面活性剤、特殊アクリル樹脂系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤など塗料用レベリング剤を用いることができ、それらの中でも溶媒との相溶性の良いものが好ましい。しかし、これらは樹脂から溶出する恐れがあり、添加剤は分子量が大きいものが好ましく、添加量は少ないことが好ましい。
【0033】
例えば、酸化防止剤は比較的分子量が小さく、溶出しやすいが、分子量600以上、好ましくは700以上の酸化防止剤であれば溶出を防ぐことができ、3000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下の添加するのであれば、酸化防止剤はほとんど溶出しない。
【0034】
分子量600以上の酸化防止剤としては、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−〔β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、1−〔2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル〕−4−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが挙げられる。
【0035】
また、スチーム滅菌での濁りの発生防止のために、熱可塑性ノルボルネン系樹脂に多価アルコールの部分エーテル化物および/または部分エステル化物を5〜0.01重量%、好ましくは2〜0.05重量%、特に好ましく1.0〜0.1重量%添加してもよい。添加することによって、配合剤を添加したのと同様に、スチーム滅菌での濁りの発生を防止できる。
【0036】
多価アルコールのアルコール性水酸基の一部をエステル化した部分エステル化物としては、例えば特開昭63−275654号で公知のグリセリンモノステアレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノベヘネート、ジグリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリンジラウレート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールモノラウレート、ペンタエリスリトールモノベヘレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールジラウレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ジペンタエリスリトールジステアレートなどが挙げられる。
【0037】
多価アルコールのアルコール性水酸基の一部をエーテル化した部分エーテル化物としては、例えば、3−(オクチルオキシ)−1,2−プロパンジオール、3−(デシルオキシ)−1,2−プロパンジオール、3−(ラウリルオキシ)−1,2−プロパンジオール、3−(4−ノニイルフェニルオキシ)−1,2−プロパンジオール、1,6−ジヒドロキシ−2,2−ジ(ヒドロキシメチル)−7−(4−ノニルフェニルオキシ)−4−オキソヘプタン、p−ノニルフェノールとホルムアルデヒドの縮合体とグリシドールの反応により得られるエーテル化合物、p−オクチルフェノールとホルムアルデヒドの縮合体とグリシドールの反応により得られるエーテル化合物、p−オクチルフェノールとジシクロペンタジエンの縮合体とグリシドールの反応により得られるエーテル化合物などが挙げられる。これらの中でも、分子量500〜2000、特に800〜1500のものが好ましい。分子量が小さい添加剤を用いる場合、添加量が多い場合は、溶出しやすく、分子量の大きいものを少量添加することが好ましい。添加量が少ないと、スチーム滅菌による濁りの発生防止の効果が小さい。
【0038】
(成型)本発明の熱可塑性ノルボルネン系樹脂の成形方法は特に限定されない。目的に応じて、射出成形法、ブロー成形法、インジェクションブロー成形法、回転成形法、真空成形法、押出成形法、カレンダー成形法、溶液流延法などが可能である。
【0039】
本発明の配合剤を配合した場合の熱可塑性ノルボルネン系樹脂の成形品の耐熱性、耐薬品性、誘電特性、剛性は、添加しない熱可塑性ノルボルネン系ポリマーの成型品と実質的に同じである。
【0040】
また、本発明の熱可塑性ノルボルネン系樹脂は薬品の吸着が少ない。特に、アルコール類、アミン類、エステル類、アミド類、エーテル類、カルボン酸類、アミノ酸類などの極性基を有する化合物の吸着が少なく、さらに、本発明の熱可塑性ノルボルネン系樹脂は有機物などが染み出すことがないので、接触する薬品が変質したりすることがない。
【0041】
(医療用器材)本発明の医療用器材としては、例えば、注射用の液体薬品容器、アンプル、プレフィルドシリンジ、輸液用バッグ、固形薬品容器、点眼薬容器、点滴薬容器などの液体または粉体、固体の薬品容器;食品容器;血液検査用のサンプリング用試験管、採血管、検体容器などのサンプル容器;メスや鉗子、ガーゼ、コンタクトレンズなどの医療材料などの滅菌容器;注射器などの医療器具;ビーカー、シャーレ、フラスコなどの実験器具;医療検査用プラスチックレンズなどの光学部品;医療用輸液チューブ、配管、継ぎ手、バルブなどの配管材料;義歯床、人工心臓、人造歯根などの人工臓器やその部品;などが例示される。特に、長期に渡り、薬品、特に液体薬品を保存する薬ビン、プレフィルド・シリンジ、密封された薬袋、点眼用容器、アンプル、バイアル、点滴薬容器などにおいては、従来の樹脂製のものに比較して、透明性、物理的性質などのほかに、樹脂から溶出する不純物等がなく、また、薬品を吸着しないので、薬品の変質が少ないという好ましい性質を有する。
【0042】
【実施例】
以下に、参考例、実施例、及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
【0043】
参考例1
窒素置換下に、エチルテトラシクロドデセン20重量部に、シクロヘキサン200重量部、1−ヘキセン2.0重量部、トリエチルアルミニウム15重量%トルエン溶液15重量部およびトリエチルアミン5.0重量部を加え、20℃に保ち、攪拌しながら、エチルテトラシクロドデセン80重量部および四塩化チタン20重量%トルエン溶液9.0重量部を60分に渡り、連続的に加えた。その後、1時間反応させた後、エチルアルコール5.0重量部および水2.0重量部を加えて反応を停止させた。反応溶液を40℃に加温して触媒を加水分解した後、硫酸カルシウム3重量部およびシクロヘキサン60重量部を加え、過剰の水を除去した。析出した金属を含む沈澱物を濾過して除去し、エチルテトラシクロドデセン開環重合体を含む透明なポリマー溶液371重量部を得た。
【0044】
参考例2
参考例1を繰り返して得たポリマー溶液750重量部に、Ni−ケイソウ土触媒(日揮化学製、N113)15重量部を添加し、耐圧反応器に入れ、水素を導入して、圧力50kg/cm2、温度200℃で3時間水素添加反応を行った。反応終了後、シクロヘキサン700重量部を加えて希釈し、濾過により触媒を除去し、エチルテトラシクロドデセン開環重合体水素添加物溶液1350重量部を得た。
【0045】
この溶液550重量部をイソプロイルアルコール1500重量部中へ攪拌しながら注ぎ、開環重合体水素添加物を凝固させた。凝固した開環重合体水素添加物を濾過して回収し、イソプロピルアルコール300重量部で2回洗浄した後、回転式減圧乾燥器中で5torr、120℃で48時間乾燥し、エチルテトラシクロドデセン開環重合体水素添加物52重量部を得た。
【0046】
この開環重合体水素添加物は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィによるポリスチレン換算値で数平均分子量28,000、重量平均分子量58,000、水素添加率99.8%以上、指差走査熱量分析によるガラス転移温度142℃、分子量2,000以下の樹脂成分含有量が0.1%であった。
【0047】
この開環重合体水素添加物10重量%シクロヘキサン溶液を原子吸光分析により分析した結果、開環重合体水素添加物中のチタン原子量は4ppm、ニッケル原子量は1.8ppm、アルミニウム原子量は2.21ppmであった。また、この開環重合体水素添加物100mgをドーマン燃焼装置で燃焼させ、5mlの純水に吸収させ、イオンクロマトグラフィで分析した結果、塩素原子量は2.7ppmであった。
【0048】
参考例3
参考例2で得た開環重合体水素添加物97重量%シクロヘキサン溶液800重量部を、活性アルミナ(水澤化学製、ネオビードD)4.5重量部を充填した内径10cm、長さ100cmのカラムに滞留時間100秒になるように通過させ、24時間循環させた。イソプロピルアルコール2500重量部中へ攪拌しながら注ぎ、開環重合体水素添加物を凝固させた。凝固した開環重合体水素添加物を濾過して回収し、イソプロピルアルコール430重量部で2回洗浄した後、回転式減圧乾燥器中で5torr、120℃で48時間乾燥し、エチルテトラシクロドデセン開環重合体水素添加物78重量部を得た。
【0049】
この開環重合体水素添加物は分子量、ガラス転移温度などは参考例2のものと差が認められなかったが、チタン原子量は1ppm(検出限界)以下、ニッケル原子量は0.1ppm(検出限界)以下、アルミニウム原子量は0.21ppm、塩素原子量は0.37ppmであった。
【0050】
参考例4
参考例3で得たエチルテトラシクロドデセンの開環重合体水素添加物99.8重量部にゴム質重合体(旭化成社製タフテックH1052、ガラス転移温度0℃以下)0.2重量部、老化防止剤チバガイギー社製イルガノックス1010)0.05重量部を添加し、2軸混練機(東芝機械社製TEM−35B、スクリュー径37mm、L/D=32、スクリュー回転数250rpm、樹脂温度265℃、フィードレート10kg/時間)で混練し、押し出し、ペレットとした。
【0051】
実施例1
参考例4で得たペレットを用いて、射出成型(型締め圧350トン、樹脂温280℃、金型温度100℃)し、直径200mm、高さ130mm、平均厚み3mmの円筒状の透明な容器と100mm×50mm×2.0mmの試験片10枚程度を作成した。
【0052】
試験片の全光線透過率を測定したところ90.2%で透明性は良好で有った、また、濁度を測定したところ0.1%であった。成形した容器の中に、LB培地(バクトトリプトン1重量%、イーストエクストラクト0.5重量%、NaCl1重量%、グルコース0.1重量%の水溶液をpH7.5に調整)300ml、寒天6g、試験片の一枚を入れ、アルミ箔でキャップして、121℃、30分のスチーム滅菌を行った。
【0053】
処理後、37℃に3日間保温したが、菌類の増殖は認められなかった。
【0054】
処理後の透明容器の外観は良好であり、目視で白濁、割れ、熱による変形は確認されなかった。容器から取り出した試験片から寒天により固化したLB培地を除去した後に測定した濁度は0.27%、また、全光線透過率は89.7%であった。
【0055】
また、試験片をpH9の炭酸ナトリウム水溶液、pH4の塩酸、エタノールに48時間浸漬した後、外観を観察したが変化はなく、濁度、全光線透過率にも変化はなかった。
【0056】
硬質ガラスフラスコに蒸留水200gを入れ、硬質ガラス製の蓋をして、120℃で1時間スチーム滅菌し、室温になるまで冷却した後、24時間静置して、蒸留水を回収した。
【0057】
さらに、試験片を蒸留水中で20分間超音波洗浄した後、40℃で10時間乾燥した。この試験片を10mm幅に切り、20gを硬質ガラスフラスコに入れ、蒸留水200gを加えた。硬質ガラス製の蓋をして、120℃で1時間スチーム滅菌し、室温になるまで冷却した後、24時間静置して、蒸留水を回収した。
【0058】
この2種類の蒸留水の原子吸光法やイオンクロマトグラフィ、燃焼−非分散型赤外線ガス分析法などによる分析結果の差から、試験片からの溶出量を求めた結果、チタン原子溶出量は0.1ppm(検出限界)以下、ニッケル原子溶出量は0.01ppm(検出限界)以下、アルミニウム原子溶出量は0.01ppm(検出限界)以下、塩素原子溶出量0.02ppm(検出限界)以下、全有機炭素量2ppm(検出限界)以下であった。
【0059】
上記試験片を日本薬局方第12改正「輸液用プラスチック試験法」に従い溶出物試験を行った。泡立ちは3分以内消失し、pH差は−0.03、紫外線吸収は0.007、過マンガン酸カリウム還元性物質0.15mlであり、医療用途として適した特性を有していることが分かった。
【0060】
比較例1
ポリスチレン(出光スチロールHT53、ガラス転移温度100℃)を、樹脂温度220℃、金型温度40℃で実施例1と同様に射出成形した。
【0061】
実施例1と同様にスチーム滅菌したところ、大きく変形し、使用できなかった。また、スチーム滅菌後は白濁し、不透明であり、板状でないため、全光線透過率は測定できなかった。
【0062】
実施例2
ゴム質重合体に代えてノニルフェノールとホルムアルデヒドの縮合体(ノニルフェノール成分の平均縮合数5.0)とグリシドールの反応により得られるグリセリンエーテル化合物(ノニルフェノール由来の繰り返し単位1単位当りグリシドールが平均1.2分子の割合で結合していて、平均分子量1,590)0.3重量部を添加する以外は実施例1と同様にしてペレットを作製し、射出成形した。
【0063】
成形した試験片の全光線透過率は88.0%で透明性は良好であった。また、濁度を測定したところ、0.90%であった。実施例1と同様に滅菌したが、菌類の増殖は認められず、また、処理後の容器の外観は良好であり、目視で白濁、割れ、変形は確認されず、また、試験片の全光線透過率は87.5%、濁度は1.1%であった。
【0064】
チタン原子溶出量は0.1ppm(検出限界)以下、ニッケル原子溶出量は0.01ppm(検出限界)以下、アルミニウム原子溶出量は0.01ppm(検出限界)以下、塩素原子溶出量0.02ppm(検出限界)以下、全有機炭素量2ppm(検出限界)以下であった。
【0065】
実施例3
参考例4で得た樹脂を射出成型(型締め圧350トン、樹脂温280℃、金型温度100℃)し、外径18mm、内径14mm、長さ110mmの内容量10ml用の注射器シリンダーを作成した。注射器シリンダーを蒸留水中で20分間超音波洗浄した後、40℃で10時間乾燥した。高圧蒸気滅菌装置を使用し、120℃で20分間蒸気滅菌した。注射器シリンダーの形状は変化が認められなかった。さらに、実施例2と同様に各種水溶液を入れ、30日間静置し、分析した結果、ビタミンB2濃度は約800ppm、塩酸メタンフェタミン濃度は約300ppm、トラネキサム酸濃度は約990ppmであった。
【0066】
実施例4
参考例4で得たペレットを樹脂温度280℃、金型温度120℃で射出ブロー成形して、外径25mm、高さ60mmの内容量20ml用のボトルを作製した。
【0067】
蒸留水中で20分間超音波洗浄した後、十分に乾燥し、120℃で30分間スチーム滅菌した後、濃度800ppmのビタミンB2水溶液20mlを入れ、テフロン栓[登録商標テフロン(ポリテトラフロロエチレン性栓)]で密封した。常温、暗所で30日間静置した後、水溶液を高速液体クロマトグラフィで分析したところ、ビタミンB2の濃度は800ppmであり、変化はほとんど認められなかった。
【0068】
【発明の効果】
これらの結果から、本発明の薬品用容器は、耐熱性・耐湿性・透明性に優れ、薬品の吸着が少なく、有機物等の染み出しが少なく、接触した薬品を変質させない。

Claims (9)

  1. ノルボルネン系単量体の開環重合体水素添加物、ノルボルネン系単量体の付加型重合体、及びノルボルネン系単量体とオレフィンの付加型重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の熱可塑性ノルボルネン系樹脂90〜99 . 99重量%及び該ノルボルネン系樹脂と非相溶である配合剤10〜0 . 01重量%からなり、単一の金属原子を1ppm以上含有せず、かつ、該配合剤成分がミクロドメインとなって分散してなる熱可塑性ノルボルネン系樹脂組成物を、薬ビン、プレフィルド・シリンジ、密封された薬袋、点眼用容器、アンプル、バイアル、及び点滴薬容器からなる群より選ばれる医療容器に用いることを特徴とする医療用器材。
  2. 配合剤が有機化合物または無機質充填剤である請求項1記載の医療用器材。
  3. 熱可塑性ノルボルネン系樹脂が、ガラス転移温度が105℃以上のものである請求項1記載の医療用器材。
  4. 熱可塑性ノルボルネン系樹脂が、トルエンを溶媒としたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー分析によるポリスチレン換算の数平均分子量が10 , 000〜200 , 000であり、2 , 000以下の樹脂成分含有量が1重量%以下のものである請求項1、2又は3記載の医療用器材。
  5. 配合剤がゴム質重合体である請求項1、2、3又は4記載の医療用器材。
  6. ミクロドメインが直径0 . 3μm以下である請求項1、2、3、4又は5記載の医療用器材。
  7. 熱可塑性ノルボルネン系樹脂が、樹脂中に塩素原子の濃度を1ppm以上含有しないものである請求項1、2、3、4、5又は6記載の医療用器材。
  8. 熱可塑性ノルボルネン系樹脂組成物が、分子量600以上の酸化防止剤を3 , 000ppm以下含有するものである請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の医療用器材。
  9. 熱可塑性ノルボルネン系樹脂組成物が、多価アルコールの部分エーテル化物および/または部分エステル化物を0 . 01〜5重量%含有するものである請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の医療用器材。
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