JP3004318B2 - 放射線照射による変色が改良されたプロピレン系樹脂注射器用成形品 - Google Patents

放射線照射による変色が改良されたプロピレン系樹脂注射器用成形品

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行雄 石田
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、放射線照射による変色の問題が有効に解決
されたプロピレン系樹脂注射器用成形品に関する。
(従来技術) プロピレン系樹脂は、剛性、衝撃強度、透明性等の特
性に優れており、注射器、輸液輸血セット、採血器具等
医療器具の用途に広く使用されている。
これらの医療器具成形品は、放射線照射による滅菌処
理に付されて使用に供されるものであるが、プロピレン
系樹脂は放射線照射によって強度が低下するという問題
がある。したがって、この強度低下を防止するために、
原料の合成樹脂に酸化防止剤を多量に配合したものを使
用して前記医療器具成形品を製造することが行われてい
る。
(発明が解決しようとする課題) しかしながら、酸化防止剤をプロピレン系樹脂に配合
すると、その配合量に応じて、放射線照射後に変色(黄
変)の度合が大きくなるという問題があった。
この際、着色剤を添加することなどによって黄変現象
を目立たなくすることはできるが、通常、透明ないし半
透明であることが求められる注射器用成形品において
は、着色剤を添加することはできず、この黄変現象が商
品価値を著しく低下させることになる。
従って本発明は、放射線照射による変色の問題が有効
に解決されたプロピレン系樹脂注射器用成形品を提供す
ることを目的とする。
(課題を達成するための手段) 本発明のプロピレン系樹脂注射器用成形品は、プロピ
レン系樹脂に脂肪酸アミド系化合物が添加された樹脂組
成物から成形され、放射線照射処理が行なわれて成るも
のである。
すなわち、本発明は、プロピレン系樹脂成形品の黄変
防止剤として脂肪酸アミド系化合物を用いることによ
り、放射線照射による変色の問題を有効に解決すること
に成功したものである。
すなわち、本発明によれば、プロピレン系樹脂に脂肪
酸アミド系化合物が添加された樹脂組成物から成形さ
れ、放射線処理が行われたことを特徴とする変色が改良
された注射器用成形品が提供される。
また、本発明によれば、プロピレン系樹脂が、プロピ
レンの単独重合体および/またはプロピレンと5重量%
以下のエチレン、ブテン−1、4−メチルペンテン−1
からなる群より選ばれた少なくとも1種のα−オレフィ
ンとの共重合体である上記注射器用成形品が提供され
る。
また、本発明によれば、放射線として、γ線またはX
線を用い、放射線量5メガラッド以下、温度90℃以下の
条件下で放射線処理が行われた上記注射器用成形品が提
供される。
また、本発明によれば、注射器用成形品が、注射器外
筒体、注射針ハブおよび注射針プロテクターからなる群
より選ばれたものである上記注射器用成形品が提供され
る。
また、本発明によれば、エチレン含量3.5ないし5.0重
量%、MFR10ないし40g/10分のプロピレン共重合体を用
いた注射器外筒体が提供される。
また、本発明によれば、エチレン含量0ないし4.0重
量%、MFR10ないし30g/10分のプロピレン系重合体を用
いた注射針ハブが提供される。
また、本発明によれば、エチレン含量0ないし4.0重
量%、MFR10ないし30g/10分のプロピレン系重合体を用
いた注射針プロテクターが提供される。
(発明の好適態様) プロピレン系樹脂 本発明において使用するプロピレン系樹脂としては、
プロピレンの単独重合体ばかりでなく、プロピレンと、
5重量%以下のエチレン、ブテン−1,4−メチルペンテ
ン−1等のプロピレン以外のα−オレフィンとの共重合
体等を挙げることができ、共重合体はランダム共重合
体、ブロック共重合体の何れでもよい。これらは単独で
も又はブレンド物の形でも使用することができる。特に
医療用器具を製造する場合には、他部品との嵌合性(液
洩れ)、生産性等の面から、例えばエチレン含有量が5
重量%以下の共重合体又はブレンド物を使用することが
望ましい。
またプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)
は、成形品の種類にもよるが、一般的には5ないし50g/
10minの範囲にあることが好適である。本発明におい
て、特に注射器外筒体としては、エチレン含有量が3.5
ないし5.0重量%、MFRが10ないし40g/10minのものが好
適であり、また注射針ハブ及びプロテクターとしては、
エチレン含有量が0ないし4.0重量%、MFRが10ないし30
g/10minのものが好適である。
脂肪酸アミド系化合物 本発明において、変色改良剤として用いる脂肪酸アミ
ド系化合物としては、炭素原子数が18ないし38の飽和あ
るいは不飽和脂肪酸のアミド化合物、例えばオレイン酸
アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド等を挙げ
ることができ、特にオレイン酸アミドが最も好適であ
る。
これらの脂肪酸アミド系化合物は1種単独でも2種以
上の組み合わせでも使用することができ、一般的にプロ
ピレン系樹脂100重量部当たり0.01ないし0.3重量部、特
に0.03ないし0.20重量部の割合で使用することが望まし
い。
その他の添加剤 本発明の成形品においては、放射線照射による滅菌処
理が行なわれるため、プロピレン系樹脂の強度低下を防
止するために、上記の脂肪酸アミド系化合物以外にも、
酸化防止剤を使用することが望ましい。このような酸化
防止剤としては、それ自体公知のものを用いることがで
き、例えばトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホ
スファイト等が好適に使用される。一般的に、酸化防止
剤は、プロピレン系樹脂100重量部当たり0.05ないし0.5
0重量部の割合で使用することが望ましい。本発明によ
れば、このような酸化防止剤を使用した場合において
も、放射線照射による変色の問題が有効に解消されるの
である。
また本発明においては、本発明の目的を損なわない範
囲において、上記のような添加剤以外にも光安定剤、帯
電防止剤、核剤、中和剤、分散剤、顔料等のそれ自体公
知の各種添加剤を使用することができる。
成形品の製造 本発明の注射器用成形品は、一般に、プロピレン系樹
脂に上述した各添加剤を配合し、ロール、バンバリーミ
キサー、押出機等の混練機で溶融混練してペレット化し
又はペレット化することなく、射出成形することによっ
て成形される。
射出成形品は、例えば適当なフィルムで包装された形
で放射線照射による滅菌処理に付されて製品とされる。
放射線としてはγ線又はX線が適当であり、好適にはコ
バルト60によるγ線が用いられる。照射線量としては、
5メガラッド以下、特に1乃至4メガラッドが好まし
い。また放射線照射は、真空中、窒素等の不活性ガス
中、あるいは空気中の何れで行なうこともでき、90℃以
下、特に常温以下の温度で行なうことが望ましい。
(実施例) 以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
実施例1、2 比較例1、2 エチレン含量1.5重量%、MFR10g/10minのプロピレン
−エチレンランダム共重合体粉末100重量部に、第1表
に示す添加剤を配合し、ミキサーを用いて混合した後
に、60mm径押出機でペレット化し、これを射出成形機に
より120×130×1mm厚のシートに成形した。
このシートに、コバルト60源を用いて2.5メガラッド
の放射線を直接照射した。
放射線が照射されたこのシートを、60℃のギヤオーブ
ンに入れて10日間放置し、変色(黄変)の促進を行なっ
た。変色の度合を目視観察するとともに、放射線照射前
のシートを基準にして色差を測定した。結果を第1表に
示す。
尚、目視観察の判定基準は以下の通りである。
◎:ほとんど変色しない。
○:わずかに変色している。
×:はっきり変色している。
上記表中、各添加剤の配合量は、重量部で示した。
また各添加剤としては、以下のものを用いた。
酸化防止剤;トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)
ホスファイト、 チバガイギー社製 商品名 イルガフォス168 塩酸吸収剤;ステアリン酸カルシウム、 三共有機合成社製商品 核剤;1,3,2,4−ジ−(p−メチルベンジリデン)−ソル
ビトール、 新日本理科社 商品名 ゲルオールMD 変色改良剤;オレイルアミド ライオンアクゾー社製商品 (発明の効果) 本発明によれば、プロピレン系樹脂成形品の放射線照
射による変色の問題が有効に解決され、特に放射線照射
による滅菌処理が行われる注射器外筒状体、注射針ハブ
および注射針プロテクターなどとしての用途に対して適
性を有するプロピレン系樹脂注射器用成形品が提供され
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08J 3/00 - 3/28 C08J 7/00 - 7/18 C08L 23/10 A61M 5/18

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】プロピレン系樹脂に脂肪酸アミド系化合物
    が添加された樹脂組成物から成形され、放射線処理が行
    われたことを特徴とする変色が改良された注射器用成形
    品。
  2. 【請求項2】プロピレン系樹脂が、プロピレンの単独重
    合体および/またはプロピレンと5重量%以下のエチレ
    ン、ブテン−1、4−メチルペンテン−1からなる群よ
    り選ばれた少なくとも1種のα−オレフィンとの共重合
    体である請求項1記載の注射器用成形品。
  3. 【請求項3】放射線として、γ線またはX線を用い、放
    射線量5メガラッド以下、温度90℃以下の条件下で放射
    線処理が行われた請求項1記載の注射器用成形品。
  4. 【請求項4】注射器用成形品が、注射器外筒体、注射針
    ハブおよび注射針プロテクターからなる群より選ばれた
    ものである請求項1ないし3のいずれか1記載の注射器
    用成形品。
  5. 【請求項5】エチレン含量3.5ないし5.0重量%、MFR10
    ないし40g/10分のプロピレン共重合体を用いた請求項4
    記載の注射器外筒体。
  6. 【請求項6】エチレン含量0ないし4.0重量%、MFR10な
    いし30g/10分のプロピレン共重合体を用いた請求項4記
    載の注射針ハブ。
  7. 【請求項7】エチレン含量0ないし4.0重量%、MFR10な
    いし30g/10分のプロピレン共重合体を用いた請求項4記
    載の注射針プロテクター。
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