JP3000661B2 - 傾斜機能型誘電体セラミックス - Google Patents

傾斜機能型誘電体セラミックス

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JP3000661B2
JP3000661B2 JP2311097A JP31109790A JP3000661B2 JP 3000661 B2 JP3000661 B2 JP 3000661B2 JP 2311097 A JP2311097 A JP 2311097A JP 31109790 A JP31109790 A JP 31109790A JP 3000661 B2 JP3000661 B2 JP 3000661B2
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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、誘電体セラミックスを用いて構成された傾
斜機能材料に関し、特に、誘電体セラミック層を母相と
し、気孔を分散相とした傾斜機能型誘電体セラミックス
に関する。
〔従来の技術〕
従来より、混晶系を用いた誘電体複合材料が公知であ
る。例えば、CaTiO3−MgTiO3混晶系からなる誘電体複合
材料では、CaTiO3(誘電率ε=170)とMgTiO3(誘電
率ε=17)との混合比を変えることにより、全体とし
ての誘電率εを変化させることができ、それによって
誘電率ε=17〜170の範囲の値を示す材料を得ること
が可能とされている。
上記のように、混晶系誘電体複合材料では、個々の誘
電体材料では得られない範囲の誘電率を示す誘電体材料
を得ることができる。
〔発明が解決しようとする課題〕 他方、用途によっては、誘電体セラミックス内の部分
によって誘電率が異なる。誘電率に関して傾斜機能型の
誘電体セラミックスが求められている。上記のような混
晶系を用いた誘電体複合材料を用いれば、成分である各
誘電体セラミックスの混合比を部分的に変化させること
により、誘電率に関して傾斜機能型の誘電体セラミック
スを得ることができる。
しかしながら、上記混晶系を用いた誘電体複合材料を
利用して、誘電率が部分的に異なる傾斜機能型の誘電体
セラミックスを構成した場合には、実際には、誘電率だ
けでなく、他の誘電特性も変化してしまうという問題が
あった。
例えば、CaTiO3−MgTiO3系では、CaTiO3及びMgTiO3
誘電率の温度変化率は、それぞれ、η=800ppm/℃及
びη=−45ppm/℃であるが、混合比を変化させた場
合、誘電率だけでなく上記誘電率の温度変化率もη
−45〜+800ppm/℃の範囲で変化してしまう。
誘電体を電子部品あるいは電気部品に用いる場合、特
殊な用途を除いては、誘電率の温度変化率はゼロに近い
のが望ましい。しかるに、上記CaTiO3−MgTiO3系では、
CaTiO3/MgTiO3=6/94(モル%)付近において誘電率の
温度変化率ηがゼロとなるが、この混合比から離れる
に従って、誘電率の温度変化率ηはゼロから遠ざかる
ことになる。
従って、CaTiO3−MgTiO3系誘電体複合材料では、混合
比を変えることにより誘電率を変化させることができた
としても、上記特定の混合比付近でしか使用できないこ
とになる。すなわち、混晶系を用いた誘電体複合材料を
利用して誘電率が部分的に異なる傾斜機能型の誘電体セ
ラミックスを得ようとした場合、誘電率の温度変化率η
はゼロに近い値としたまま、誘電率を変化させること
はできなかった。よって、混晶系を利用した誘電体複合
材料により、電子部品または電気部品において広汎な用
途に用い得る傾斜機能型の誘電体セラミックスを得るこ
とは現実には不可能であった。
本発明の目的は、誘電率の温度変化率を変化させるこ
となく、誘電率が部分的に変化されている傾斜機能型誘
電体セラミックスを提供することにある。
〔課題を解決するための手段〕
本発明は、誘電率をε、誘電率のうち温度に影響さ
れる成分をε10、温度により変化する成分をαTとした
ときに(但し、αは温度により変化する係数を、Tは温
度を示す)ε=ε10+αTである誘電体材料に気孔を
分散させてなる誘電体セラミックスであって、該誘電体
セラミックス内において、気孔率が誘電体セラミックス
内の位置に応じて連続的にあるいは段階状に変化してお
り、全体としての誘電率εがε=ε10 (1-p)+(1−
P)・αT/ε10 P(但し、P×102が気孔の体積百分率を
示す)であることを特徴とする、傾斜機能型誘電体セラ
ミックスである。
すなわち、本発明の傾斜機能型誘電体セラミックス
は、誘電体セラミックスを母相とし、気孔を分散相とし
て構成されており、分散相である気孔の密度が、母相で
ある誘電体セラミックス内の位置に応じて変化している
ことを特徴とするものである。
〔作用〕
誘電率が誘電体セラミックス内の位置の関数として変
化している。すなわち誘電率が傾斜している傾斜機能型
誘電体セラミックスを得ようとした場合、上述したとお
り、混晶系の誘電体複合材料では、他の誘電特性が変化
するため、実際の電子部品または電気部品に利用するこ
とが困難であった。これは、従来の誘電体複合材料で
は、母相及び分散相のいずれもが誘電体セラミックスで
あるため、分散相の分布密度に応じて、他の誘電特性も
変化してしまうことによる。
これに対して、本発明では、母相である誘電体セラミ
ックスに対し、分散相として気孔が利用されており、誘
電率の温度変化率をゼロに近い値としたまま、誘電率を
誘電体内で部分的に変化させることが可能とされてい
る。この理由を、以下において説明する。
気孔内に存在する物質である空気は、誘電率ε≒1
であり、誘電率の温度変化率が数ppm/℃程度と非常に小
さく、Q値が数千〜数万と非常に高いという特性を有す
る。
母相である誘電体セラミックスの誘電率をεとし、
気孔内の物質すなわち空気の誘電率をεとする。
まず、誘電体セラミックスの誘電率εは、下記の式
(1)で表されるように、温度に影響されない成分ε10
及び温度により変化する成分αTからなる。なお、Tは
温度を、αは温度によって変化する係数を示す。
ε=ε10+αT …(1) 他方、複合誘電体中に体積分率(P)の割合で気孔が
混合されている場合、その複合誘電体全体の誘電率ε
は、 logε=(1−P)logε+Plogε …(2) で表される。式(2)において、ε=1であるため、 ε=ε1 (1-P) =(ε10+αT)(1-P) =ε10 (1-P)(1+αT/ε10(1-P) …(3) となる。
式(3)から明らかなように、全体の誘電率εは、誘
電体セラミックスの誘電率εと気孔の体積分率P×10
2のみで決定される。
さらに、用いる誘電体セラミックスの誘電率εの温
度変化率が非常に小さい場合には、ε10>>αTである
ため、全体の誘電率εは、 εε10 (1-P){1+(1−P)αT/ε10} =ε10 (1-P)+(1−P)・αT/▲εP 10▼ …(4) となる。ε10>>αTであるため、式(4)の最終辺の
第2項は無視できるほど小さくなる。従って、全体とし
ての誘電率εは、誘電体セラミックスの誘電率εの温
度によって影響されない成分ε10と、気孔の体積分率P
×102とからのみほぼ決定されることになる。
すなわち、式(4)から明らかなように、気孔は誘電
体の体積を減らし見掛け上の誘電率を減らすように作用
するだけであり、かつ使用する誘電体セラミックスの誘
電率εの温度変化が非常に小さい場合には、誘電率の
温度変化率が非常に小さい誘電体セラミックスの得られ
ることがわかる。
よって、本発明によれば、誘電率の温度変化率を変化
させることなく、誘電率のみが変化する傾斜機能型誘電
体セラミックスを得ることができる。
〔実施例の説明〕
実施例1 誘電率ε=37、及び誘電率の温度変化率η=0
(ppm/℃)の特性を有する平均粒径1μmの誘電体セラ
ミックス、(Zr0.3Sn0.2)TiO4の粉末と、平均粒径3μ
mのカーボン粉末とを用意した。
上記誘電体粉末及びカーボン粉末を、下記の第1表に
示すように、それぞれ、含有量を0.4重量%ずつ変化さ
せて、試料番号1〜51の組成の混合粉末を作製した。得
られた51種類の組成の混合粉末を用い、厚み100μmの
セラミックグリーンシートを作製した。
次に、試料番号1〜51の組成のセラミックグリーンシ
ートを第2図に示すように、2枚ずつ試料番号順に積層
した。第2図において、1a,1bは、試料番号1のセラミ
ックグリーンシートを、2a,2bは試料番号2のセラミッ
クグリーンシートを、50a,50b及び51a,51bは、それぞ
れ、試料番号50及び51のセラミックグリーンシートであ
る。
得られた積層体60(第2図の下方に示す積層体)で
は、厚み方向すなわちx方向において、第3図に示すよ
うにカーボン含有率が段階状に変化されている。
次に、積層体60を、第4図に破線Aで示すように切断
し、薄板状の試料61を得た。得られた薄板状の試料61
を、空気中、300℃の温度で1時間加熱し、有機成分を
燃焼させた後、窒素雰囲気中、1350℃の温度で3時間焼
成した。得られた焼結体を、空気中、1200℃の温度で5
時間アニーリングし、第1図(a)に示す実施例の誘電
体セラミックス62とした。
上記のようにして得た実施例の誘電体セラミックスの
顕微鏡写真を画像処理することにより得られた誘電体セ
ラミックスの気孔率の変化を第5図に模式的に示す。第
5図において、ドットBは気孔を示す。第5図から明ら
かなように、気孔Bは、x方向において、その分散率が
変化していることがわかる。
次に、上述のようにして得た誘電体セラミックス62の
両主面に、第6図に示すように電極63a〜電極67bを形成
した。そして、電極63a−63b間、電極64a−64b間、電極
65a−65b間、電極66a−66b間、電極67a−67b間の誘電特
性を測定した。結果を、下記の第2表に示す。
第2表から明らかなように、本実施例の誘電体セラミ
ックス62では、第6図のx方向に、誘電率εが変化して
いることがわかる。また、誘電体セラミックスの各部分
において、誘電率εが温度変化に伴って変化していない
ことがわかる。
実施例2 実施例1で用いた誘電体粉末、すなわち(Zr0.3S
n0.2)TiO4粉末に代えて、6CaTiO3−94MgTiO3粉末を用
いたことを除いては、実施例1とまったく同様にして傾
斜機能型誘電体セラミックスを作製し、試料内の位置の
違いによる誘電特性の違いを実施例1と同様に測定し
た。結果を、下記の第3表に示す。
なお、用いた誘電体粉末6CaTiO3−94MgTiO3粉末の平
均粒径は1.5μmであり、その誘電率εは20であり、誘
電率の温度変化率ηは0である。
実施例3 使用する誘電体粉末を、Ba(Zn1/3Ta2/3)O3に変更し
たことを除いては、実施例1とまったく同様にして傾斜
機能型誘電体セラミックスを作製し、実施例1と同様に
して誘電体セラミックス内の各部分における誘電特性を
測定した。なお、Ba(Zn1/3Ta2/3)O3の誘電率εは31、
誘電率の温度変化率ηは0である。
他の構造例 第1図(a)に示した誘電体セラミックス62では、矩
形の誘電体セラミックスの一の辺に沿って気孔率が変化
されており、それによって該一の辺に沿った方向(x方
向)に沿って誘電率が変化されていた。本発明は、この
ような矩形の誘電体セラミックスにおいて、一の辺に沿
った方向において誘電率が変化されているものに限定さ
れない。
例えば、第7図(a)及び(b)に示すように、円板
状の誘電体セラミックス71において、中心から周囲に向
かって気孔率が連続的に高められ、それによって中心か
ら外周に至るに連れてεが低下するように誘電体セラミ
ックスを構成することもできる。
同様に、第8図(a)及び(b)に示すように、円筒
状の誘電体セラミックス72において、底面から上面に向
かって、すなわち高さ方向に気孔率を変化させて、それ
によって高さ方向の誘電率が連続的に変化されている傾
斜機能型誘電体セラミックスを構成してもよい。
また、気孔率は、ある方向において段階状に変化させ
てもよく、連続的に変化させてもよい。
さらに、第1図(b)に一点鎖線Qで示すように、気
孔率をある方向において、一旦増大するように変化さ
せ、しかる後減少するように変化させてもよい。
他の製造方法の例 実施例1では、気孔を形成するために、カーボン粉末
を用いたが、カーボン粉末に代えて、パラフィンやセル
ロース固形物のように、誘電体セラミックスの焼成温度
で飛散し得る他、の材料を用いてもよい。
また、誘電体セラミックス粉末とカーボン粉末とを混
合してなるスラリーをスプレードライヤー法により乾燥
し、この乾燥状態を変化させて、乾燥粉末を堆積体その
ものの組成を積層方向に連続的に変化させることによっ
て、気孔率を変化させてもよい。
さらに、誘電体粉末やカーボン粉末等の材料粉末の充
填比を積層方向に変化させて、気孔率,を変化させても
よい。
〔発明の効果〕
本発明によれば、誘電体セラミックス内において気孔
率がその位置に応じて連続的にまたは段階状に変化され
ているため、誘電率の温度変化率を変化させることな
く、誘電率が誘電体セラミックス内の位置に応じて、連
続的にまたは段階状に変化している傾斜機能型の誘電体
セラミックスを提供することが可能となる。
よって、本発明の傾斜機能型誘電体セラミックスを用
いることにより、従来は実現することが困難であった特
性を示す種々の電子部品または電気部品を構成すること
が可能となる。
【図面の簡単な説明】
第1図(a)及び(b)は実施例1で得られた傾斜機能
型誘電体セラミックスを示す斜視図及び該誘電体セラミ
ックス内における位置と気孔率の関係を示す図、第2図
は実施例1においてセラミックグリーンシートを積層し
て積層体を得る工程を示す斜視図、第3図は実施例1の
積層体におけるカーボン含有量と位置との関係を示す
図、第4図は実施例1において積層体を切断して薄板状
試料を得る工程を示す斜視図、第5図は実施例1で得ら
れた焼結体内の気孔の分布を模式的に示す図、第6図は
実施例で得た誘電体セラミックスの誘電特性を測定する
ために形成された電極を説明するための斜視図、第7図
(a)及び(b)は本発明が適用される誘電体セラミッ
クスの他の構造例を示す斜視図及び位置と気孔率及び誘
電率との関係を示す図、第8図(a)及び(b)は本発
明に適用されるさらに他の形状の傾斜機能型誘電体セラ
ミックスを示す斜視図及び位置と気孔率及び誘電率との
関係を示す図である。 図において、1a,1b,2a,2b,50a,50b,51a,51bはセラミッ
クグリーンシート、60は積層体、61は薄板状試料、62は
傾斜機能型誘電体セラミックス、Bは気孔を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C04B 38/00 C04B 38/06

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】誘電率をε、誘電率のうち温度に影響さ
    れる成分をε10、温度により変化する成分をαTとした
    ときに(但し、αは温度により変化する係数を、Tは温
    度を示す)ε=ε10+αTである誘電体材料に気孔を
    分散させてなる誘電体セラミックスであって、該誘電体
    セラミックス内において、気孔率が誘電体セラミックス
    内の位置に応じて連続的にあるいは段階状に変化してお
    り、全体としての誘電率εがε=ε10 (1-p)+(1−
    P)・αT/ε10 P(但し、P×102が気孔の体積百分率を
    示す)であることを特徴とする、傾斜機能型誘電体セラ
    ミックス。
JP2311097A 1990-11-15 1990-11-15 傾斜機能型誘電体セラミックス Expired - Lifetime JP3000661B2 (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US8402846B2 (en) 2006-01-20 2013-03-26 Mizuho Medy Co., Ltd. Sample trituration vessel, tool and method using the same

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US8402846B2 (en) 2006-01-20 2013-03-26 Mizuho Medy Co., Ltd. Sample trituration vessel, tool and method using the same

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