JP2999745B2 - 多孔質ロールとその製造方法及び保管方法 - Google Patents

多孔質ロールとその製造方法及び保管方法

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JP2999745B2
JP2999745B2 JP345398A JP345398A JP2999745B2 JP 2999745 B2 JP2999745 B2 JP 2999745B2 JP 345398 A JP345398 A JP 345398A JP 345398 A JP345398 A JP 345398A JP 2999745 B2 JP2999745 B2 JP 2999745B2
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周起 合田
正男 井出
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鐘紡株式会社
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  • Rolls And Other Rotary Bodies (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えばシリコンウ
ェーハ、磁気ディスク基板、液晶用ガラス基板、プリン
ト配線基板等のエレクトロニクス部品の製造工程のう
ち、洗浄工程で用いられる洗浄用又は吸水用の多孔質ロ
ールに関する。
【0002】
【従来の技術】近年のエレクトロニクス工業では、各種
部品の精密度が飛躍的に進み、それに伴って製造環境の
清浄性に関する要求も高まっている。特に部品表面の化
学的汚染や付着粒子は、製品の歩留まりや動作の信頼性
に大きな影響を与えるため、製造工程における洗浄工程
の重要性は非常に大きく、様々な洗浄方法が開発、実施
されている。
【0003】例えば、シリコンウェーハ、磁気ディスク
基板、液晶用ガラス基板、プリント配線基板等の部品の
平坦な表面を洗浄する方法としては、多孔質ロールによ
るスクラブ洗浄が知られている。多孔質ロールは、回転
軸と、回転軸の外周に固着された多孔質体から成る略円
筒状のロール本体とから構成されている。スクラブ洗浄
とは、ロール本体を被洗浄物に接触させて、その接触部
分に水その他の洗浄液を供給しながら回転軸を介してロ
ール本体を回転させることにより、摩擦洗浄するもので
ある。
【0004】この多孔質ロールは、洗浄工程終了後に被
洗浄物表面に付着した水分を除去する工程においても使
用され得る。この脱水工程では、ロール本体を対象物に
押しあてて変形させた状態で回転させる。これにより、
対象物表面上の水分は、ロール本体の復元時にロール本
体側に吸い上げられて、対象物表面上から除去される。
【0005】係る洗浄又は吸水の用途に用いられる多孔
質体の素材としては、様々なものが考案されており、そ
の一つに、親水性を有するボリビニルアセタール系多孔
質素材(以下、PVAt系多孔質素材と称する)があ
る。このPVAt系多孔質素材は、吸水性及び保水性に
優れ、さらに湿潤時に好ましい柔軟性と適度な反発弾性
を示し、耐磨耗性にも優れているため、前記洗浄や吸水
の用途に好ましく用いられている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ここで、前記多孔質ロ
ールのロール本体は、洗浄用途においては高速回転で使
用され、また、吸水用途においては所定量凹み変形する
ように対象物に押圧された状態で使用される。このた
め、ロール本体が回転軸に対して位置ずれを起こすのを
防止すべく、ロール本体と回転軸とは、接着剤によって
接着されているのが一般的であった。
【0007】ところが、ロール本体と回転軸とを接着剤
によって接着した場合、前記洗浄工程や脱水工程におい
て、接着剤の含有成分が水中へ溶出して被洗浄物や吸水
対象物が化学的汚染を受けてしまう可能性がある。係る
化学的汚染を抑制するためには、使用する接着剤の量を
できる限り少量に抑えつつ、確実な接着状態を確保する
必要があり、その製造作業が困難且つ煩雑であった。
【0008】これに対し、特公昭59−26807号公
報には、接着剤を使用せずに、回転軸の表面に略円筒状
の胴部を直接固着する技術が開示されている。この胴部
は、熱可塑性ポリエステル・ポリエーテル型エラストマ
ーによって円筒状に成形されたもので、回転軸の直径よ
りも小さい直径の挿通孔を有している。そして、回転軸
を挿通する際には、胴部を加熱して可塑化させ、挿通孔
を拡張させることにより、回転軸の挿通を可能にしてい
る。すなわち、胴部の弾性が、製造時の加熱状態と使用
時の室温状態とで相違することを利用して、胴部を回転
軸に圧接固着させている。
【0009】しかしながら、係る従来技術は、胴部に熱
可塑性樹脂を使用すること前提としているため、熱可塑
性樹脂ではないPVAt系多孔質素材への適用は本質的
に不可能である。
【0010】また、PVAt系多孔質素材は、湿潤状態
において軟化するため、この性質を利用すればロール本
体の内径より大きな外径の回転軸を押圧挿入し、ロール
本体を、自身の弾性力によって回転軸に圧接保持させる
ことも可能である。
【0011】ところが、多孔質ロールは、前述のように
洗浄及び吸水用途の何れにおいても湿潤状態で使用され
るため、回転軸を挿入する製造時と洗浄や吸水等の使用
時とでは、ロール本体の弾性に差が生じない。従って、
ロール本体の内径部に回転軸を単に挿入しただけでは、
回転軸に対するロール本体の定着力は極めて小さくな
り、実用性に欠ける。
【0012】このように、これまでは、接着剤を用いる
ことなく、PVAt系多孔質素材からなるロール本体を
回転軸に強固に定着させる方法はなかった。
【0013】本発明は上記の実情に鑑みてなされたもの
であって、接着剤を用いることなく、PVAt系多孔質
素材からなるロール本体を回転軸に強固に定着させるこ
とが可能な洗浄度の高い多孔質ロールの提供を目的とす
るものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成すべく本
発明の第1の態様は、湿潤状態で弾性を有するポリビニ
ルアセタール系多孔質素材で形成された略円筒状のロー
ル本体と、前記ロール本体の内径部に挿入される回転軸
とを備えた多孔質ロールであって、湿潤状態の前記ロー
ル本体は、40g/cm2 以上100g/cm2 以下の
30%圧縮応力を有し、前記回転軸の外径よりも小さな
内径を有し、自身の弾性力によって前記回転軸に圧接保
持され、前記回転軸の外周面には、前記ロール本体の内
径部との接触抵抗を増大させて、該回転軸に対する該ロ
ール本体の回転方向への移動を阻止するための溝部が、
前記外周面を残存させた状態で凹設され、前記ロール本
体の内径部の周面は、前記回転軸の残存する外周面に面
接触する部分と前記溝部内に食い込む部分とを有するこ
とを特徴とするものである。
【0015】本発明の第2の態様は、湿潤状態で弾性を
有するポリビニルアセタール系多孔質素材で形成された
略円筒状のロール本体と、前記ロール本体の内径部に挿
入される回転軸とを備えた多孔質ロールであって、湿潤
状態の前記ロール本体は、40g/cm2 以上100g
/cm2 以下の30%圧縮応力を有し、前記回転軸の外
径よりも小さな内径を有し、自身の弾性力によって前記
回転軸に圧接保持され、前記回転軸の外周面には、前記
ロール本体の内径部との接触抵抗を増大させて、該回転
軸に対する該ロール本体の回転方向への移動を阻止する
ための半円弧状の突部が凸設され、前記突起の外面は、
鋭利な部分を有さない湾曲面で形成されていることを特
徴とするものである。
【0016】本発明の第3の態様は、上記第1の態様の
多孔質ロールであって、前記溝部は、前記回転軸の軸方
向に沿って延設されていることを特徴とするものであ
る。
【0017】本発明の第4の態様は、上記第2の態様の
多孔質ロールであって、前記突部は、前記回転軸の外周
面上に略等密度に複数設けられていることを特徴とする
ものである。
【0018】本発明の第5の態様は、湿潤状態で弾性を
有するポリビニルアセタール系多孔質素材で形成された
略円筒状のロール本体と、前記ロール本体の内径部に挿
入される回転軸とを備え、湿潤状態の前記ロール本体
は、前記回転軸の外径よりも小さな内径を有して自身の
弾性力によって前記回転軸に圧接保持され、前記回転軸
の外周面は、前記ロール本体の内径部との接触抵抗を増
大させて該回転軸に対する該ロール本体の回転方向への
移動を阻止する移動規制部を有する多孔質ロールの製造
方法であって、湿潤状態の前記ロール本体の内径部に薄
板状の樹脂シートを挿入し、該樹脂シートによって該ロ
ール本体の内径部の周面上を覆う第1の工程と、前記樹
脂シートに摺接させながら、該樹脂シートの間に前記回
転軸を挿入する第2の工程と、前記樹脂シートをロール
本体の内径部から抜き取る第3の工程とを備えたことを
特徴とするものである。
【0019】本発明の第6の態様は、上記第1〜第4の
いずれかの態様の多孔質ロールの製造方法であって、前
記ロール本体の内径部と前記回転軸の外周面との間に界
面活性剤が供給された状態で、前記回転軸を前記ロール
本体の内径部に挿入することを特徴とするものである。
【0020】本発明の第7の態様は、上記第1〜第4の
いずれかの態様の多孔質ロールの保管方法であって、前
記多孔質ロールを、酸素遮断性を有する包材によって、
酸素吸収剤と共に密封したことを特徴とするものであ
る。
【0021】本発明の第8の態様は、上記第1〜第4の
いずれかの態様の多孔質ロールであって、前記回転軸の
外径は、前記ロール本体の内径の1.0倍を超えて1.
5倍未満の範囲内に設定されていることを特徴とするも
のである。
【0022】第1〜第4の態様の多孔質ロールでは、湿
潤状態のロール本体の内径部に回転軸が押圧挿入される
ことにより、ロール本体は、自身の弾性力によって回転
軸に圧接保持される。また、多孔質ロールの回転方向に
おけるロール本体の内径部と回転軸の外周面との接触抵
抗(静摩擦係数)は、溝部又は突部によって増大し、ロ
ール本体が回転軸に強固に定着するので、回転軸に対す
るロール本体の回転方向への移動が阻止される。
【0023】従って、接着剤を用いることなく、ロール
本体と回転軸との接触圧力と、移動規制部により増大さ
れた摩擦力とによって、PVAt系多孔質素材からなる
ロール本体を回転軸に強固に定着させることができる。
これにより、洗浄工程や脱水工程において、接着剤の含
有成分が水中へ溶出して被洗浄物や吸水対象物を化学的
に汚染することがなくなり、洗浄度の高い多孔質ロール
を得ることができる。
【0024】特に、第3の態様の多孔質ロールでは、溝
部が回転軸の軸方向(挿入方向)に沿って形成されてい
るため、溝部によって、回転軸が所望の挿入方向へ案内
されると共に、該挿入方向におけるロール本体の内径部
と回転軸の外周面との接触抵抗が低減される。従って、
回転軸の挿入作業を容易に行うことができ、作業性が向
上する。
【0025】また、第4の態様の多孔質ロールでは、突
部は回転軸の外周面に略等密度に複数設けられているた
め、軸方向におけるロール本体の内径部と回転軸の外周
面との接触抵抗(静摩擦係数)も増大するので、ロール
本体の軸方向への移動も確実に抑制され、ロール本体の
定着力がさらに増大する。
【0026】第5又は第6の態様の製造方法では、回転
軸の外周面の挿入方向(軸方向)における接触抵抗(動
摩擦係数)が低減するので、回転軸の挿入作業性が向上
する。
【0027】第7の態様の保管方法では、製造された多
孔質ロールは、ロール本体を湿潤状態としたまま、酸素
遮断性を有するフィルム状の包材によって、酸素吸収剤
と共に密封され、ユーザーへ出荷される。このように酸
素遮断性を有する包材と酸素吸収剤を用いるのは、使用
前の多孔質ロールを酸素中で保管した場合、湿潤状態の
ロール本体の表面に黴が発生する恐れがあるためであ
る。すなわち、上記保管方法によれば、ロール本体を無
酸素状態で保管するので、黴の発生を未然に防止するこ
とができる。また、黴の発生を防止する方法としては、
防黴剤をロール本体の表面に添加する方法もあるが、係
る方法では、防黴剤が洗浄工程や脱水工程において水中
へ溶出すると、化学的汚染を招いてしまうため、使用前
にロール本体から防黴剤を完全に洗浄除去する必要があ
る。ところが、現実的には防黴剤を完全に除去すること
は難しく、微少量残存した防黴剤が化学的汚染の一因と
なってしまう可能性があった。これに対し、上記方法に
よれば、防黴剤を用いることなく黴の発生を防止するこ
とができるので、洗浄工程や脱水工程における化学的汚
染の発生をさらに確実に防止することができる。この場
合、多孔質ロールを、酸素検知剤と共に密封することに
より、包材内が無酸素状態に維持されているか否かを、
目視によって容易に確認することができる。
【0028】第8の態様の多孔質ロールでは、回転軸に
対するロール本体の定着力の増強と、ロール本体への回
転軸の挿通作業性の低下抑制とを、両立して図ることが
できる。
【0029】
【発明の実施の形態】以下、本発明の第1の実施の形態
を、図面に基づいて説明する。
【0030】図1は本実施の形態に係る多孔質ロールの
ロール本体と回転軸とを分離した状態を示す斜視図、図
2は図1のロール本体に回転軸を組付けた状態を示す斜
視図、図3は図1の回転軸の拡大斜視図、図4は多孔質
ロールの製造方法の一例を示す斜視図であり、(a)は
プラスチックシートの挿入前の状態を、(b)はプラス
チックシートの挿入後の状態を、(c)は回転軸の挿入
後の状態をそれぞれ示している。また、図4は多孔質ロ
ールの保管状態を示す模式図である。
【0031】図1及び図2に示すように、多孔質ロール
1は、ロール本体3と回転軸5とによって構成されてい
る。
【0032】ロール本体3は、略円筒状であり、含水状
態で弾性を有するポリビニールアセタール系多孔質素材
(PVAt系多孔質素材)から成る。
【0033】略円筒状のPVAt系多孔質素材を得る方
法としては、例えば、平均重合度300〜2000、ケ
ン化度80%以上のポリビニルアルコールを一種又はそ
れ以上混合して水溶液とし、それに架橋剤としてアルデ
ヒド類、触媒として鉱酸類、及び気孔形成材として澱粉
等を加え、これらの混合液を略円筒状の内部形状を有す
る型内に注入し、50〜80℃で反応させた後、型から
取り出す方法を挙げることができるが、必ずしもこの方
法に限定されるものではない。また、反応完了後、型か
ら取り出されたPVAt系多孔質素材は、水中に溶存、
浮遊する粒子、イオン、有機物等の夾雑物を除去した純
水にて洗浄されて、使用される。
【0034】係るPVAt系多孔質素材は、乾燥状態で
硬化し、湿潤状態で軟化する。また、吸水性及び保水性
に優れ、湿潤時に好ましい柔軟性と適度な反発弾性を示
し、耐磨耗性にも優れている。
【0035】回転軸5は、円柱状又は円筒状(本実施の
形態では円筒状)であり、金属やプラスチックなどの硬
質な材料によって形成されている。回転軸5の外周面に
は、移動規制部としての溝部7が複数本(本実施の形態
では12本)並設されている。各溝部7は、回転軸5の
外周面に凹設され、回転軸5の軸方向に沿って延びてい
る(図3参照)。
【0036】また、湿潤状態におけるロール本体3の内
径r1 は、回転軸5の外径R2 よりも小さく形成されて
いる。
【0037】多孔質ロール1は、湿潤状態のロール本体
3の内径部3aに回転軸5を押圧挿入することによって
得られる。ロール本体3の内径部3aは、挿入された回
転軸5によって拡げられた状態となり、ロール本体3
は、自身の弾性力によって回転軸5に圧接保持される。
【0038】このように回転軸5が装着されたロール本
体3の内径部3aは、回転軸5の外周面に軸方向に沿っ
て形成された溝部7に食い込んだ状態となるため、多孔
質ロール1の回転方向におけるロール本体3の内径部3
aと回転軸5の外周面との接触抵抗(静摩擦係数)が増
大し、ロール本体3が回転軸5に強固に定着される。こ
れにより、回転軸5に対するロール本体3の回転方向へ
の移動が阻止される。
【0039】また、溝部7は回転軸5の軸方向に沿って
形成されており、この方向は、回転軸5のロール本体3
の内径部3aへの挿入方向と一致している。これによ
り、溝部7によって、回転軸5が所望の挿入方向へ案内
されると共に、ロール本体3の内径部3aと回転軸5の
外周面との接触抵抗が低減される。従って、回転軸5の
挿入作業を容易に行うことができ、作業性が向上する。
【0040】ここで、湿潤状態のロール本体3の内径部
3aへ回転軸5を挿入する他の方法について、図4
(a)〜(c)に基づいて説明する。該他の方法は、ロ
ール本体3の内径部3aに厚さ0.07mmの薄板状の
塩ビ製プラスチックフィルム(樹脂シート)9を挿入し
(図4(a))、このプラスチックフィルム9によって
ロール本体3の内径部3aの周面上を覆い(図4
(b))、プラスチックフィルム9に摺接させながらそ
の内側に回転軸5を挿入した後(図4(c))、プラス
チックフィルム9を内径部3aから抜き取るものであ
る。
【0041】また、回転軸5を挿入するさらに他の方法
としては、ロール本体3の内径部3aと回転軸5の外周
面との間に界面活性剤を供給した状態で、回転軸5を内
径部3aに挿入するものである。係る界面活性剤として
は、例えば高級アルコール硫酸エステル塩が用いられ
る。この場合、界面活性剤の供給は、内径部3aと回転
軸との摺接部分のみに行っても良く、またロール本体3
全体に行っても良い。
【0042】これら2つの方法は、ともに、回転軸5の
外周面の挿入方向(軸方向)における接触抵抗(動摩擦
係数)を低減することにより、回転軸5の挿入作業性を
向上させるものである。
【0043】なお、前記PVAt系多孔質素材として
は、適正含水状態における30%圧縮応力が40g/c
2以上で100g/cm2 以下のものが好ましい。適
正含水状態とは、PVAt系多孔質素材が適正な弾力を
発揮し得る含水状態をいい、含水率(乾燥状態に対する
含水状態の重量%)が、およそ100%〜1000%の
範囲で得られる。また、30%圧縮応力とは、適正含水
状態のPVAt系多孔質素材を、両端面間の距離(長手
方向の高さ)が30mmとなるように切断し、端面全体
に荷重がかかるようにデジタル式荷重測定器にセット
し、長手方向に30%(9mm)押し潰した時の荷重を
計測し、該荷重を端面の面積で割った値として得られ
る。
【0044】適正含水状態における30%圧縮応力の好
ましい範囲の上限を100g/cm2 としたのは、この
値が100g/cm2 より大きいPVAt系多孔質素材
は、弾性率が高すぎて、製造時に回転軸5の挿通が困難
になったり、吸水用としての使用時に対象物へ押し付け
て変形させる際に過大な力を必要とする等の問題が生じ
る可能性が高いためである。反対に、適正含水状態にお
ける30%圧縮応力の好ましい範囲の下限を40g/c
2 としたのは、この値が40g/cm2 より小さいP
VAt系多孔質素材は、湿潤時の弾性率が低すぎるた
め、回転軸5に対して十分な接触圧力を有さず、回転軸
5に対するロール本体3の定着力が不十分となる可能性
が高いためである。但し、後述するロール本体3の内径
1 と回転軸5の外径R2 との比率(R2 /r1 )によ
っては、上記好ましい範囲(40g/cm2 以上100
g/cm2 以下)から外れた範囲であっても、適用が可
能となる。例えば、30%圧縮応力が110g/cm2
程度であっても、前記比率(R2 /r1 )が小さい場合
は、使用可能となる。また、30%圧縮応力が30g/
cm2 程度であっても、前記比率(R2 /r1 )が大き
く、且つ洗浄用としての使用条件が、回転軸5の回転速
度が低速で被洗浄物へのロール本体3の接圧が小さい場
合は、使用可能となる。
【0045】また、PVAt系多孔質素材としては、気
孔率が80%以上95%以下、平均気孔径が60μm以
上250μm以下のものが好適である。
【0046】気孔率が80%より小さいと、湿潤時の柔
軟性が不十分となり、また、気孔率が95%より大きい
と、実用的強度に乏しく、何れも洗浄用及び吸水用途に
は適さないためである。また、平均気孔径が60μmよ
りも小さいと、湿潤時の柔軟性が不足して十分な洗浄効
果及び吸水効果が得られず、250μmを超えると、目
が粗すぎて精密洗浄及び吸水用途には不適当なためであ
る。
【0047】なお、ここでいう気孔率とは、乾燥機で十
分に乾燥された直方体のPVAt系多孔質素材を乾式自
動密時計にて測定し、直方体の見掛け体積と真体積とか
ら、次式(1)にて算出される値である。
【0048】 気孔率(%)=(見掛け体積−真体積)/見掛け体積×100 …(1) また、平均気孔径は、PORUS MATERIAL
S,INC社製水銀ポロシメータを用いた、水銀圧入法
細孔測定によって求められる値である。
【0049】さらに、ロール本体3の内径r1 と回転軸
5の外径R2 との比率(R2 /r1)は、その値が大き
くければ大きいほどロール本体3の内径部3aと回転軸
5の外周面との接触圧力は大きくなり、回転軸5に対す
るロール本体3の定着力は強くなるが、同時に回転軸5
の挿通は困難になり、作業性が低下する。従って、定着
力が十分に増強され、且つ作業性の低下が小さく抑えら
れる範囲が前記比率(R2 /r1 )の適正な範囲とされ
る。係る範囲は、PVAt系多孔素材の前記特性や、回
転軸5の表面性状にもよるため、一概に決められない
が、1.5以上となると、作業性の低下を他の要素で補
うことが困難となる。従って、前記比率(R2 /r1
は、1を超えて1.5未満の範囲であることが好まし
い。
【0050】そして、上述のように製造された多孔質ロ
ール1は、図5に示すように、湿潤状態のまま、酸素遮
断性を有するフィルム状の包材11によって、酸素吸収
剤13及び酸素検知剤15と共に密封され、ユーザーへ
出荷される。酸素遮断性を有する包材11としては、例
えば塩化ビニリデンフィルムを含む積層シートが用いら
れる。
【0051】次に、ロール本体3の適正含水状態におけ
る30%圧縮応力と、回転軸5の外周面形状と、回転軸
5の外径R2 とを変更して複数のサンプルを作成し、ロ
ール本体3に対する回転軸5の挿入性と、回転軸5に対
するロール本体3の定着性とを試験した結果について、
以下の表1に基づき説明する。
【0052】
【表1】 表1に示すように、装着性及び定着性の試験は、サンプ
ルA〜Lの12タイプの多孔質ロール1について行っ
た。このうち、本実施の形態に関するものは、サンプル
A〜Kの11タイプであるため、ここでは主にサンプル
A〜サンプルKについて説明し、サンプルLについての
詳しい説明は後述する。
【0053】全サンプルA〜Lに共通する条件は、ロー
ル本体3の適正含水状態における形状と回転軸5の長さ
である。具体的には、ロール本体3の形状は、外径が約
76mm、内径r1 が約26mm、長さが約500mm
の略円筒形状であり、回転軸5の長さは520mmであ
る。
【0054】サンプルA〜Gは、適正含水状態における
30%圧縮応力が相違するロール本体3に対して、外周
面形状及び外径R2 が同一の回転軸5をそれぞれ装着し
たものである。サンプルA〜Gで用いた回転軸5は、外
径R2 が32mmであり、外周面に幅2mm、深さ2m
mの溝部7が軸方向に沿って12本並設されている。従
って、サンプルA〜Gでは、ロール本体3の内径r1
回転軸5の外径R2 との比率(R2 /r1 )は、全て3
2mm/26mm=1.23となる。また、各サンプル
のロール本体3の30%圧縮応力は、サンプルAが20
g/cm2、サンプルBが30g/cm2、サンプルCが
40g/cm2、サンプルDが70g/cm2、サンプル
Eが100g/cm2、サンプルFが110g/cm2
サンプルGが120g/cm2である。
【0055】サンプルH〜Jは、適正含水状態における
30%圧縮応力が同じ70g/cm2 であるロール本体
3に対して、外周面形状は同じであるが外径R2 が相違
する回転軸5をそれぞれ装着したものである。各サンプ
ルの回転軸5の外径R2 及びロール本体3の内径r1
回転軸5の外径R2 との比率(R2 /r1 )は、サンプ
ルHが22mm及び0.84、サンプルIが38mm及
び1.46、サンプルJが48mm及び1.84であ
る。なお、サンプルH〜Jの回転軸5の外周面には、サ
ンプルA〜Gと同様の溝部7が形成されている。
【0056】サンプルKは、適正含水状態における30
%圧縮応力が70g/cm2 であるロール本体3に対し
て、外径R2 が32mmで外周面に周方向に沿った複数
の溝部が形成された回転軸5を装着したものである。
【0057】各サンプルに対する定着性試験は、回転軸
5を回転速度100rpmで回転させた状態で、水を供
給しながら、ロール本体3を接圧10g/cm2 で被洗
浄物を想定したアルミ板に押し付けることにより行っ
た。係る定着性の評価は、試験中にロール本体3が回転
軸5に対して位置ずれを起こしたか否か、及び両者間に
隙間が生じたか否かを、目視によって判定し、位置ずれ
及び隙間が確認されなかったものについて適正と評価し
た。
【0058】また、各サンプルに対する挿入性試験は、
ロール本体3の内径部3aへの回転軸5の挿入を円滑に
行うことができ、且つ回転軸5に装着されたロール本体
3が軸方向に偏肉しないものについて適正と評価した。
なお、回転軸5の挿入方法としては、ロール本体3の内
径部3aに塩化ビニル製プラスチックフィルム9を挿入
してから回転軸5を挿入する方法を採用した。
【0059】各サンプルに対する試験の結果、サンプル
C,D,E,及びIが、挿入性及び定着性が良好であり
適正との評価を得た。
【0060】これに対し、サンプルA及びBでは、ロー
ル本体3の湿潤状態での柔軟性が大きいため定着性が弱
く、回転軸5のみが空回りする傾向にあった。但し、サ
ンプルBについては、ロール本体3の内径r1 と回転軸
5の外径R2 との比率(R2/r1 )が1.23よりも
大きく、且つ洗浄用としての使用条件が、回転軸5の回
転速度が試験条件の100rpmよりも低速で被洗浄物
へのロール本体3の接圧が試験条件の10g/cm2
りも小さい場合は、回転軸5のみが空回りしない程度の
定着性を得ることができ、前記比率(R2 /r1 )及び
使用条件次第では、使用可能との結果を得た。
【0061】サンプルF及びGでは、ロール本体3の湿
潤状態での柔軟性が小さく不十分であったため、回転軸
5の挿入が非常に困難で、且つ回転軸5が装着されたロ
ール本体3が軸方向に偏肉を生じ、ロール本体3の表面
が軸方向に沿って波打ち状態となった。但し、サンプル
Fについては、ロール本体3の内径r1 と回転軸5の外
径R2 との比率(R2 /r1 )が1.23よりも小さく
1.0に近い場合には、ロール本体3の軸方向への偏肉
を抑えつつ回転軸5を挿入することができ、前記比率
(R2 /r1 )次第では、使用可能との結果を得た。
【0062】サンプルHでは、定着性が低く、ロール本
体3が空回りしがちであった。サンプルJでは、ロール
本体3の内径分3aに回転軸5を挿入することができな
かった。サンプルKでは、溝部がロール本体3と回転軸
5との接触抵抗の増大に寄与しないため、ロール本体3
と回転軸5との定着性は低く、使用時にロール本体3が
空回りする傾向にあった。
【0063】このように、サンプルA,G,H,J,及
びKは、挿入性又は定着性が悪く、不適正との評価を得
た。また、サンプルB,Fは、本試験条件のうち一部の
条件を変更することにより、使用可能との評価を得た。
【0064】すなわち、サンプルA〜Gの結果により、
PVAt系多孔質素材としては、適正含水状態における
30%圧縮応力が40g/cm2以上で100g/cm
2 以下のものが好適であることが確認された。
【0065】また、サンプルH〜Jの結果により、ロー
ル本体3の内径r1 と回転軸5の外径R2 との比率(R
2 /r1 )は、1を超えて1.5未満の範囲が好適であ
ることが確認された。
【0066】さらに、サンプルD及びKの結果により、
回転軸5の溝部7の形成方向が軸方向に沿っていること
が好適であることが確認された。
【0067】以上説明したように、本実施の形態に係る
多孔質ロール1では、湿潤状態のロール本体3の内径部
3aに回転軸5が押圧挿入されることにより、ロール本
体3が、自身の弾性力によって回転軸5に圧接保持され
る。また、多孔質ロール1の回転方向におけるロール本
体3の内径部3aと回転軸5の外周面との接触抵抗(静
摩擦係数)は、溝部7によって増大し、ロール本体3が
回転軸5に強固に定着するので、回転軸5に対するロー
ル本体3の回転方向への移動が阻止される。
【0068】従って、接着剤を用いることなく、ロール
本体3と回転軸5との接触圧力と、溝部7により増大さ
れた摩擦力とによって、PVAt系多孔質素材からなる
ロール本体3を回転軸5に強固に定着させることができ
る。これにより、洗浄工程や脱水工程において、接着剤
の含有成分が水中へ溶出して被洗浄物や吸水対象物を化
学的に汚染することがなくなり、洗浄度の高い多孔質ロ
ール1を得ることができる。
【0069】また、溝部7が回転軸5の軸方向(挿入方
向)に沿って形成されているため、溝7部によって、回
転軸5が所望の挿入方向へ案内されると共に、該挿入方
向におけるロール本体3の内径部3aと回転軸5の外周
面との接触抵抗が低減される。従って、回転軸5の挿入
作業を容易に行うことができ、作業性が向上する。
【0070】さらに、回転軸5の挿入作業に際して、プ
ラスチックフィルム9を用いたり、界面活性剤を用いる
ことにより、回転軸5の外周面の挿入方向(軸方向)に
おける接触抵抗(動摩擦係数)が低減するので、回転軸
5の挿入作業性が一段と向上する。
【0071】また、製造された多孔質ロール1は、ロー
ル本体3を湿潤状態としたまま、酸素遮断性を有するフ
ィルム状の包材11によって、酸素吸収剤13及び酸素
検知剤15と共に密封され、ユーザーへ出荷される。こ
のように酸素遮断性を有する包材11と酸素吸収剤13
を用いるのは、使用前の多孔質ロール1を酸素中で保管
した場合、湿潤状態のロール本体3の表面に黴が発生す
る恐れがあるためである。すなわち、本実施の形態で
は、ロール本体3を無酸素状態で保管しているので、黴
の発生を未然に防止することができる。また、黴の発生
を防止する方法としては、防黴剤をロール本体3の表面
に添加する方法もあるが、係る方法では、防黴剤が洗浄
工程や脱水工程において水中へ溶出すると、化学的汚染
を招いてしまうため、使用前にロール本体3から防黴剤
を完全に洗浄除去する必要がある。ところが、現実的に
は防黴剤を完全に除去することは難しく、微少量残存し
た防黴剤が化学的汚染の一因となる可能性があった。こ
れに対し、本実施の形態によれば、防黴剤を用いること
なく黴の発生を防止することができるので、洗浄工程や
脱水工程における化学的汚染の発生をさらに確実に防止
することができ、一段と高度な洗浄精度を得ることがで
きる。
【0072】さらに、本実施の形態では、多孔質ロール
1を密封した包材11の内部に、酸素吸収剤13に加え
て酸素検知剤15も封入したので、包材11内が無酸素
状態に維持されているか否かを、目視によって容易に確
認することができる。
【0073】次に、本発明の第2の実施の形態について
説明する。
【0074】図6は本実施の形態に係る多孔質ロールの
回転軸の要部拡大斜視図である。
【0075】本実施の形態は、回転軸の外周面に、軸方
向に沿った溝部に代えて回転軸の外周面に略等密度に複
数設けられ突部を用いたものであり、回転軸の外周面形
状を除く前記第1の実施の形態と同様の構成部分には同
一の符号を付してその詳しい説明は省略する。
【0076】図6に示すように、多孔質ロール21は、
ロール本体3と回転軸23とによって構成されている。
【0077】ロール本体3は、略円筒状であり、含水状
態で弾性を有するポリビニールアセタール系多孔質素材
(PVAt系多孔質素材)から成る。
【0078】回転軸23は、円柱状又は円筒状(本実施
の形態では円筒状)であり、金属やプラスチックなどの
硬質な材料によって形成されている。回転軸23の外周
面には、移動規制部としての半円弧状の突部25が格子
状に複数凸設されている。この突部23は、ロール本体
3の内径部3aと接する部分のほぼ全域に渡って設けら
れている。なお、図中では、一部領域の突部25のみを
図示し、他を省略している。また、格子を形成する縦平
行線及び横平行線は、回転軸23の軸方向に対して共に
斜め方向に延びているが、これら平行線の方向は特に限
定されるものではない。
【0079】湿潤状態におけるロール本体3の内径r1
は、回転軸23の外径R3 よりも小さく形成され、ロー
ル本体3の内径r1 と回転軸23の外径R3 との比率
(R3/r1 )は、1以上1.5未満の範囲が好適であ
る。
【0080】多孔質ロール21は、湿潤状態のロール本
体3の内径部3aに回転軸23を押圧挿入することによ
って得られる。ロール本体3の内径部3aは、挿入され
た回転軸23によって拡げられた状態となり、ロール本
体3は、自身の弾性力によって回転軸5に圧接保持され
る。
【0081】このように装着された回転軸23の外周面
の突部25は、ロール本体3の内径部aに食い込んだ状
態となるため、多孔質ロール21の回転方向におけるロ
ール本体3の内径部3aと回転軸23の外周面との接触
抵抗(静摩擦係数)が増大し、ロール本体3が回転軸2
3に強固に定着される。これにより、回転軸23に対す
るロール本体3の回転方向への移動が阻止される。
【0082】また、突部25は格子状であるため、軸方
向におけるロール本体3の内径部3aと回転軸23の外
周面との接触抵抗(静摩擦係数)も増大し、ロール本体
3の軸方向への移動も確実に抑制される。
【0083】湿潤状態のロール本体3の内径部3aへ回
転軸23を挿入する他の方法として、第1の実施の形態
と同様に、プラスチックフィルムを用いる方法や、界面
活性剤を用いる方法を用いることもできる。
【0084】また、PVAt系多孔質素材としては、適
正含水状態における30%圧縮応力が40g/cm2
上で100g/cm2 以下、気孔率が80%以上95%
以下、平均気孔径が60μm以上250μm以下のもの
が好適である。
【0085】そして、多孔質ロール21は、第1の実施
の形態と同様に、湿潤状態のまま、酸素遮断性を有する
フィルム状の包材11によって、酸素吸収剤13及び酸
素検知剤15と共に密封され、ユーザーへ出荷される
(図5参照)。
【0086】格子状の突部25が形成された回転軸23
を用いた場合の挿入性及び定着性の試験は、前記表1の
サンプルLに示されている。このサンプルLは、回転軸
23の外周面形状が、底面半径が2mmで高さが2mm
の半球状の突部25が格子状に複数配設されている点を
除き、前記第1の実施の形態におけるサンプルDと同様
の構成である。
【0087】サンプルLに対する試験の結果、挿入性が
良好で、且つ定着性が非常に良好であり、適正との評価
を得た。
【0088】本実施の形態によれば、前記第1の実施の
形態と同様に、洗浄度の高い多孔質ロール21をえるこ
とができる。
【0089】さらに、本実施の形態では、突部25が格
子状に配設されているため、軸方向におけるロール本体
3の内径部3aと回転軸23の外周面との接触抵抗(静
摩擦係数)も増大する。従って、ロール本体3の軸方向
への移動も確実に抑制され、ロール本体3の定着力をさ
らに増大させることができる。
【0090】なお、第1の実施の形態における溝部7
や、第2の実施の形態における突部25の形状や数など
については、特に上記実施の形態に限定されるものでは
なく、実状に合ったものを用いれば良い。
【0091】
【発明の効果】以上説明したように、第1〜第4の態様
の多孔質ロールによれば、接着剤を用いることなく、P
VAt系多孔質素材からなるロール本体を回転軸に強固
に定着させることができるので、洗浄工程や脱水工程に
おいて、接着剤の含有成分が水中へ溶出して被洗浄物や
吸水対象物を化学的に汚染することがなくなり、清浄度
が高くエレクトロニクス工業等の精密部品の製造工程に
好適な多孔質ロールを得ることができる。
【0092】特に、第3の態様の多孔質ロールによれ
ば、溝部によって、回転軸が所望の挿入方向へ案内され
ると共に、該挿入方向におけるロール本体の内径部と回
転軸の外周面との接触抵抗が低減されるので、回転軸の
挿入作業を容易に行うことができ、作業性が向上する。
【0093】また、第4の態様の多孔質ロールによれ
ば、突部は回転軸の外周面に略等密度に複数設けられて
いるため、軸方向におけるロール本体の内径部と回転軸
の外周面との接触抵抗(静摩擦係数)も増大するので、
ロール本体の軸方向への移動も確実に抑制され、ロール
本体の定着力がさらに増大する。
【0094】第5又は第6の態様の製造方法によれば、
回転軸の外周面の挿入方向(軸方向)における接触抵抗
(動摩擦係数)が低減するので、回転軸の挿入作業性が
向上する。
【0095】第7の態様の保管方法によれば、製造され
た多孔質ロールは、ロール本体を湿潤状態としたまま、
酸素遮断性を有するフィルム状の包材によって、酸素吸
収剤と共に密封されるので、防黴剤を用いることなく黴
の発生を防止することができ、洗浄工程や脱水工程にお
ける化学的汚染の発生をさらに確実に防止することがで
きる。また、多孔質ロールを酸素検知剤と共に密封すれ
ば、包材内が無酸素状態に維持されているか否かを、目
視によって容易に確認することができる。
【0096】第8の態様の多孔質ロールによれば、回転
軸に対するロール本体の定着力の増強と、ロール本体へ
の回転軸の挿通作業性の低下抑制とを、両立して図るこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る多孔質ロール
のロール本体と回転軸とを分離した状態を示す斜視図で
ある。
【図2】図1のロール本体に回転軸を組付けた状態を示
す斜視図である。
【図3】図1の回転軸の拡大斜視図である。
【図4】多孔質ロールの製造方法の一例を示す斜視図で
あり、(a)はプラスチックシートの挿入前の状態を、
(b)はプラスチックシートの挿入後の状態を、(c)
は回転軸の挿入後の状態をそれぞれ示している。
【図5】多孔質ロールの保管状態を示す模式図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る多孔質ロール
の回転軸の要部拡大斜視図である。
【符号の説明】
1 多孔質ロール 3 ロール本体 3a ロール本体の内径部 5 回転軸 9 溝部(移動規制部) 11 包材 13 酸素吸収剤 15 酸素検知剤 21 多孔質ロール 23 回転軸 25 突部(移動規制部)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭56−59015(JP,A) 特開 昭63−47126(JP,A) 特開 平9−314680(JP,A) 実開 平5−92533(JP,U) 実開 平5−49753(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F16C 13/00 - 13/06

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 湿潤状態で弾性を有するポリビニルアセ
    タール系多孔質素材で形成された略円筒状のロール本体
    と、前記ロール本体の内径部に挿入される回転軸とを備
    えた多孔質ロールであって、 湿潤状態の前記ロール本体は、40g/cm2 以上10
    0g/cm2 以下の30%圧縮応力を有し、前記回転軸
    の外径よりも小さな内径を有し、自身の弾性力によって
    前記回転軸に圧接保持され、 前記回転軸の外周面には、前記ロール本体の内径部との
    接触抵抗を増大させて、該回転軸に対する該ロール本体
    の回転方向への移動を阻止するための溝部が、前記外周
    面を残存させた状態で凹設され、 前記ロール本体の内径部の周面は、前記回転軸の残存す
    る外周面に面接触する部分と前記溝部内に食い込む部分
    とを有することを特徴とする多孔質ロール。
  2. 【請求項2】 湿潤状態で弾性を有するポリビニルアセ
    タール系多孔質素材で形成された略円筒状のロール本体
    と、前記ロール本体の内径部に挿入される回転軸とを備
    えた多孔質ロールであって、 湿潤状態の前記ロール本体は、40g/cm2 以上10
    0g/cm2 以下の30%圧縮応力を有し、前記回転軸
    の外径よりも小さな内径を有し、自身の弾性力によって
    前記回転軸に圧接保持され、 前記回転軸の外周面には、前記ロール本体の内径部との
    接触抵抗を増大させて、該回転軸に対する該ロール本体
    の回転方向への移動を阻止するための半円弧状の突部が
    凸設され、 前記突起の外面は、鋭利な部分を有さない湾曲面で形成
    されていることを特徴とする多孔質ロール。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載の多孔質ロールであっ
    て、 前記溝部は、前記回転軸の軸方向に沿って延設されてい
    ることを特徴とする多孔質ロール。
  4. 【請求項4】 請求項2に記載の多孔質ロールであっ
    て、 前記突部は、前記回転軸の外周面上に略等密度に複数設
    けられていることを特徴とする多孔質ロール。
  5. 【請求項5】 湿潤状態で弾性を有するポリビニルアセ
    タール系多孔質素材で形成された略円筒状のロール本体
    と、前記ロール本体の内径部に挿入される回転軸とを備
    え、湿潤状態の前記ロール本体は、前記回転軸の外径よ
    りも小さな内径を有して自身の弾性力によって前記回転
    軸に圧接保持され、前記回転軸の外周面は、前記ロール
    本体の内径部との接触抵抗を増大させて該回転軸に対す
    る該ロール本体の回転方向への移動を阻止する移動規制
    部を有する多孔質ロールの製造方法であって、 湿潤状態の前記ロール本体の内径部に薄板状の樹脂シー
    トを挿入し、該樹脂シートによって該ロール本体の内径
    部の周面上を覆う第1の工程と、 前記樹脂シートに摺接させながら、該樹脂シートの間に
    前記回転軸を挿入する第2の工程と、 前記樹脂シートをロール本体の内径部から抜き取る第3
    の工程とを備えたことを特徴とする多孔質ロールの製造
    方法。
  6. 【請求項6】 請求項1〜請求項4のいずれかに記載の
    多孔質ロールの製造方法であって、 前記ロール本体の内径部と前記回転軸の外周面との間に
    界面活性剤が供給された状態で、前記回転軸を前記ロー
    ル本体の内径部に挿入することを特徴とする多孔質ロー
    ルの製造方法。
  7. 【請求項7】 請求項1〜請求項4のいずれかに記載の
    多孔質ロールの保管方法であって、 前記多孔質ロールを、酸素遮断性を有する包材によっ
    て、酸素吸収剤と共に密封したことを特徴とする多孔質
    ロールの保管方法。
  8. 【請求項8】 請求項1〜請求項4のいずれかに記載の
    多孔質ロールであって、 前記回転軸の外径は、前記ロール本体の内径の1.0倍
    を超えて1.5倍未満の範囲内に設定されていることを
    特徴とする多孔質ロール。
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