JP2999542B2 - 金属―水素アルカリ蓄電池 - Google Patents

金属―水素アルカリ蓄電池

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誠司 亀岡
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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、金属−水素アルカリ蓄電池に関し、特に電
解液の改良に関する。
従来の技術 従来からよく用いられる蓄電池としては、鉛電池及び
ニッケル−カドミウム電池がある。しかし、近年、これ
ら電池より軽量で且つ高容量となる可能性があるという
ことで、特に低圧で負極活物質である水素を可逆的に吸
蔵及び放出することのできる水素吸蔵合金を備えた電極
を負極に用い、水酸化ニッケルなどの金属酸化物を正極
活物質とする電極を正極に用いた金属−水素アルカリ蓄
電池が注目されている。
ところで、上記蓄電池においては、電池の作製当初は
負極を構成する水素吸蔵合金の表面積が小さいというこ
とに起因して、初期活性化特性に劣るという課題を有し
ていた。
そこで、従来は、電池作製当初に、4〜6サイクル充
放電を行うという化成処理が成されていた。この処理を
行えば、水素吸蔵合金にクラックが形成されるので、表
面積が大きくなり、この結果初期活性化特性、初期負荷
率特性等が向上する。
発明が解決しようとする課題 しかしながら、上記化成処理を施した場合であって
も、クラック内部にまで電解液が浸透し難いため、上記
諸特性の飛躍的な向上を図ることができないという課題
を有していた。
本発明はかかる現状に鑑みてなされたものであり、初
期活性化特性、初期負荷率特性及び低温特性を飛躍的に
向上させせることができる金属−水素アルカリ蓄電池を
提供することを目的とする。
課題を解決するための手段 本発明は上記目的を達成するために、水素吸蔵合金を
主体とする負極と、金属酸化物を主体とする正極と、上
記正負極間に配置されると共に電解液が含浸されたセパ
レータとを備えた金属−水素アルカリ蓄電池において、
前記電解液は、アルカリ水溶液と、このアルカリ水溶液
に溶解し且つ蟻酸メチル,エチルアミン,メチルエチル
エーテルからなる表面活性物質群から選択されるものと
から成ることを特徴とする。
更に、上記水素吸蔵合金の表面に、酸化物を付着して
もよい。
作用 上記構成の如く、電解液が、アルカリ水溶液と、この
アルカリ水溶液に溶解し且つアルカリ水溶液よりも表面
張力が小さな蟻酸メチル,エチルアミン,メチルエチル
エーテルといった表面活性物質とから構成されていれ
ば、水素吸蔵合金粉末に形成されたクラック内に浸透性
促進剤が浸透し、これに伴ってアルカリ溶液もクラック
内に浸透することになる。したがって、電解液と水素吸
蔵合金との接触面積が大きくなる。
更に、上記構成の如く、水素吸蔵合金の表面に金属酸
化物を付着させれば、この付着部分における電解液の濡
れ性が向上するので、電解液と水素吸蔵合金との接触面
積を一層大きくすることが可能となる。
本発明の実施例を、第1図及び第2図に基づいて、以
下に説明する。
〔第1実施例(第1参考例を含む)〕 第1図は本発明により作製した水素吸蔵合金電極を用
いた円筒型ニッケル−水素アルカリ蓄電池の断面図であ
り、焼結式ニッケルから成る正極1と、水素吸蔵合金を
含む負極2と、これら正負両極1・2間に介挿されたセ
パレータ3とから成る電極群4は渦巻状に巻回されてい
る。この電極群4は負極端子兼用の外装罐6内に配置さ
れており、この外装罐6と上記負極2とは負極用導電タ
ブ5により接続されている。上記外装罐6の上部開口に
はパッキング7を介して封口体8が装着されており、こ
の封口体8の内部にはコイルスプリング9が設けられて
いる。このコイルスプリング9は電池内部の内圧が異常
上昇したときに矢印A方向に押圧されて内部のガスが大
気中に放出されるように構成されている。また、上記封
口体8と前記正極1とは正極用導電タブ10にて接続され
ている。
ここで、上記構造の円筒型ニッケル−水素アルカリ蓄
電池を、以下のようにして作製した。
先ず、市販のLaとNiとを元素比で1:5の割合となるよ
うに秤量した後、高周波溶解炉内で溶解して溶湯を作成
し、更にこの溶湯を冷却することにより、LaNi5で示さ
れる水素吸蔵合金鋳塊を作成した。次に、この水素吸蔵
合金鋳塊の粒径が50μm以下となるように粉砕した。
この後、上記水素吸蔵合金粉末に、結着剤としてのPT
FE(ポリテトラフルオロエチレン)粉末を5wt%加えて
混練し、ペーストを作成する。更に、このペーストをパ
ンチングメタルから成る集電体の両面に圧着して負極2
を作製した。
次いで、上記負極2と、この負極2よりも十分容量が
大きな焼結式ニッケル正極1とを、不織布からなるセパ
レータ3を介して巻回し、電極群4を作製した。しかる
後、この電極群4を外装罐6内に挿入し、更に30重量%
のKOH水溶液に表面活性物質〔エタノール(3vo%)〕
が含まれた電解液を上記外装罐6内に注液した後、外装
罐6を密閉することにより円筒型ニッケル−水素蓄電池
を作製した。尚、このようにして作製した電池の理論容
量は、1000mAhである。
このようにして作製した電池を、以下(A1)電池と称
する。
表面活性物質として、上記エタノールの代わりに、そ
れぞれ、メタノール(3vo%)、イソブチルアルコー
ル(2vo%)、蟻酸(1vo%)、蟻酸メチル(2vo
%)、エチルアミン(3vo%)、ジメチルエーテル(3
vo%)、アセチルアセトン(3vo%)、ジメチルア
ミン(1vo%)、及びメチルエチルエーテル(3vo
%)を用いる他は、上記(A1)電池と同様にして電池を
作製した。
このようにして作製した電池を、以下(A2)電池〜
(A10)電池と称する。
〔比較例〕
表面活性物質を添加しない他は、上記実施例と同様に
して電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下(X)電池と称
する。
〔実験〕
上記の製造方法による(A1)電池〜(A10)電池、及
び比較例の製造方法による(X)電池の1回目の充放電
における放電容量を測定したので、その結果を下記第1
表に示す。尚、実験条件は、充電電流1.5CmAで1時間充
電し、放電電流1.5Cで放電終止電圧1.0Vまで放電すると
いう条件である。また、第1表において、1回目の充放
電における放電容量(%)は、10回目の充放電における
放電容量に対する割合である。
上記第1表に示すように、実施例及び参考例の(A1
電池〜(A10)電池では1回目の充放電における放電容
量が全て85%以上であるのに対して、比較例の(X)電
池では46%と非常に低くなっていることが認められる。
このように実施例及び参考例の(A1)電池〜(A10
電池が初期放電容量が大きくなるのは、電解液中に表面
活性物質が含まれているので、負極2の水素吸蔵合金の
クラック内に電解液が浸透し易くなり、この結果電解液
と水素吸蔵合金との接触面積が大きくなるということに
起因するものと考えられる。
〔実験II〕
前記参考例の(A1)電池,(A7)電池及び比較例の
(X)電池におけるサイクル初期の充放電容量について
調べたので、その結果を第2図に示す。尚、充放電条件
は、上記実験Iと同様の条件であり、また、充放電容量
は10サイクル目を100%としている。
第2図に示すように、参考例の(A1)電池,(A7)電
池は比較例の(X)電池に比べて、1〜7サイクル目の
充放電容量が大きくっなていることが認められる。
これは、上記実験Iに示す理由と同様の理由によるも
のと考えられる。
〔第2参考例〕 水素吸蔵合金粉末にアルミナ(0.5wt%)を添加して
焼結させ、水素吸蔵合金粉末表面にアルミナを付着させ
るような構造の水素吸蔵合金粉末を用いる他は、上記第
1参考例の(A1)電池と同様にして(B)電池を作製し
た。
〔実験〕
上記参考例(B)電池,(A1)電池、及び比較例の
(X)電池における電池電圧と放電容量との関係を調べ
たので、その結果を第3図に示す。尚、実験条件は、電
池を満充電状態にした後、4CmAの電流で放電するという
条件であり、また、第3図においては、(X)電池の放
電容量を100%として示している。
第3図に示すように、参考例の(B)電池,(A1)電
池は、比較例の(X)電池に比べて、高率放電特性に優
れていることが認められ、特に(B)電池が優れている
ことが認められる。
これは、(B)電池においては、前記の実験Iで示す
ように電解液が水素吸蔵合金のクラックに浸透し易くな
るという作用の他、水素吸蔵合金粉末表面にアルミナが
付着されているので、クラック部ではない通常の表面に
おける濡れ性が向上する。この結果、電解液と水素吸蔵
合金との接触面積が飛躍的に大きくなるという理由によ
るものと考えられる。
〔その他の事項〕
上記第2参考例では、表面活性物質としてエタノール
を用いる例を示したが、アルカリ水溶液に溶解し且つア
ルカリ水溶液よりも表面張力が小さな他のアルコール,
アルデヒド,脂肪酸,エーテル,エステル,アミン等を
用いた場合でも同様の効果を奏することを確認してい
る。
上記第2参考例では、酸化物としてアルミナを用いて
いるが、これに限定するものではなく、シリカ等の酸化
物であってもよい。
低温特性については図示しないが、本発明の電池は比
較例の電池に比べて優れているということを実験で確認
している。尚、この場合の実験条件は、−20℃で充放電
するという条件で行った。
水素吸蔵合金としては前記LaNi5に限定するものでは
なく、その他どのような水素吸蔵合金であっても本発明
は適用可能である。
上記2つの実施例においては円筒型の蓄電池を用いて
いるが、本発明は偏平型の蓄電池にも適応しうることは
勿論である。
発明の効果 以上説明したように本発明によれば、アルカリ溶液が
クラック内に浸透し易くなるので、電解液と水素吸蔵合
金との接触面積が大きくなる。この結果、金属−水素ア
ルカリ蓄電池の初期活性化特性、初期負荷率特性、及び
低温特性等を向上させることができるといった効果を奏
する。
特に、水素吸蔵合金の表面に金属酸化物を付着させる
ような構成を付加すれば、この付着部分における電解液
の濡れ性が向上する。したがって、電解液と水素吸蔵合
金との接触面積が一層大きくなって、上記諸特性を一層
向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一例である円筒型ニッケル−水素アル
カリ蓄電池の断面図、第2図は第1参考例の(A1)電
池,(A7)電池及び比較例の(X)電池におけるサイク
ル初期の充放電容量を示すグラフ、第3図は参考例の
(B)電池,(A1)電池、及び比較例の(X)電池にお
ける電池電圧と放電容量との関係を示すグラフである。 1……正極、2……負極、3……セパレータ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01M 10/24 - 10/30 H01M 4/24

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】水素吸蔵合金を主体とする負極と、金属酸
    化物を主体とする正極と、上記正負極間に配置されると
    共に電解液が含浸されたセパレータとを備えた金属−水
    素アルカリ蓄電池において、 前記電解液は、アルカリ水溶液と、このアルカリ水溶液
    に溶解し且つ蟻酸メチル,エチルアミン,メチルエチル
    エーテルからなる表面活性物質群から選択されるものと
    から成ることを特徴とする金属−水素アルカリ蓄電池。
  2. 【請求項2】前記水素吸蔵合金の表面には、酸化物が付
    着されていることを特徴とする請求項1記載の金属−水
    素アルカリ蓄電池。
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