JP2987423B2 - 緻密焼結体の製造法 - Google Patents

緻密焼結体の製造法

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JP2987423B2
JP2987423B2 JP8283369A JP28336996A JP2987423B2 JP 2987423 B2 JP2987423 B2 JP 2987423B2 JP 8283369 A JP8283369 A JP 8283369A JP 28336996 A JP28336996 A JP 28336996A JP 2987423 B2 JP2987423 B2 JP 2987423B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電気陽性の弱い金属
と電気陽性の強い金属とを含む酸化物の緻密焼結体を製
造する方法に関し、特に、電気陽性が弱い金属の易焼結
性酸化物粉体を硫酸イオンのフロック安定化効果と有機
溶媒の凝集防止作用を利用した擬似アルコキシド法で製
造した後、構成組成の電気陽性の強い金属の酸化物を硫
酸イオンが存在しない状態で混合して、硫酸イオンの影
響が実質的に無視できる焼結用原料粉体を製造し、焼結
中のガスの発生を抑制した緻密焼結体の製造方法に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、酸化物系ファインセラミック
用原料粉体は、金属イオンを含む水溶液に沈澱生成剤を
加えて水酸化物などの化合物を生成し濾過して、仮焼し
て製造することがよく知られている。また、高機能性や
高性能が要求される高級セラミックスの製造のように特
殊な目的には、アルコ−ルなどの有機物と金属との化合
物である金属アルコキシドを生成した後に、該化合物に
蒸留水を加えて加水分解により凝集が殆ど無視できる水
酸化物を製造するアルコキシド法や気相反応で直接的に
必要とする組成を有する酸化物を合成する気相合成法な
どの製造方法も開発された。従来の方法では、これまで
蓄積された多くの知見を活用して、焼結用粉体の製造が
可能であること、また比較的安価に原料粉体が製造でき
る長所があった。しかしながら、得られた焼結用粉体は
一般に硬い凝集体を形成して、焼結性が悪いという欠点
があった。一方、アルコキシド法は易焼結性粉体を製造
するのに優れた方法である。しかしながら、この方法で
は、有機物と金属の化合物を合成する必要がある。金属
は有機溶剤よりも水に対してよく反応するので、その合
成には水分を完全に取り除いた特殊な装置を必要とし、
それだけ、製造が難しいと同時に製造コストが高くなる
欠点があった。さらに、気相合成法では、粒子が個々に
分離した粉体を合成できるという長所はあるが、気相組
成の厳密な制御が必要であった。また、気相の密度は液
体のそれに比べて1/1000以下と非常に小さいの
で、気相合成法で合成できる試料の量は少なく、それだ
け製造コストが高くなる欠点があった。近年、水溶液反
応で生成した沈澱を有機溶剤に分散の後に乾燥して沈澱
粒子の凝集を抑制した粉体の擬似アルコキシド法(特開
昭58−223619号公報や特願平3−100541
号)が開発された。特開昭58−223619号記載の
発明は、硝酸イットリウム水溶液から水酸化イットリウ
ムを晶出させ、さらに有機溶剤に分散して乾燥、仮焼し
て一次粒子が個々に分離した凝集がない酸化イットリウ
ム粉体の製造法に関するものである。一方、特願平3−
100541号では、水酸化イットリウムのかわりに炭
酸イットリウムを晶出させて、前者の特許公報とほぼ同
じ有機溶剤処理方法で、同様な特性の超微細酸化イット
リウム粉体を製造している。後者の方法で、焼結性のよ
いイットリア粉体となる微細な炭酸イットリウム沈澱を
製造するには、沈澱生成剤である炭酸アンモニウムの量
が制限され、約1/3のイットリウムイオンが濾液に残
り、収率が悪いという欠点があった。また、この方法は
イットリアなどの限られた種類以外の原料粉体の製造で
は活用できないという欠点があった。また、最近、本発
明者は、イットリウムとは電気的性質がかなり異なるア
ルミニウムを主成分とする水酸化物沈澱に応用できる擬
似アルコシキド法を開発し、特許出願した(特願平7−
293710号、以下、特願1という)。しかしなが
ら、特願昭58−223619号ばかりでなく、特願1
でも非晶質あるいは超微細な一次粒子が十分に分離しな
いという欠点があった。硫酸イオンで沈澱のフロックを
安定化したのちに有機溶剤に分散し、乾燥すると超微細
粒子の沈澱の一次粒子までも個々に分離できる現象を発
見し、この現象を利用した凝集のない超微細粒子粉体の
製造法及び該粉体を利用した易焼結性粉体の製造方法に
関する特許出願をした(特願平8−24687号、以
下、特願2という)。しかしながら、特願2の方法で
は、ジルコニアの部分安定化あるいは安定化に用いられ
るイットリウムやカルシウム、マグネシウム、あるいは
イットリウムアルミニウム−ガーネットの主成分である
イットリウムなどのように電気陽性が強い金属を含む酸
化物のセラミックスを製造する場合、電気陽性が強い金
属を含む化学物質を硫酸イオンで処理を行うと、硫酸イ
オンが電気陽性の強い金属と強く結合して、仮焼温度で
は分解除去できずに、仮焼温度よりもはるかに高い焼結
温度で焼結する際、ガス化して焼結体を膨張させ密度を
低下させるという欠点があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明者は、
上記の如き従来技術の問題点を改良すべく鋭意研究を重
ねた結果、硫酸イオンとの結合力が弱い酸化物を予め擬
似アルコキシド法で調製したのち、硫酸イオンとの結合
力が強い酸化物となる化学物質を硫酸イオンが実質上存
在しない状態で混合し、これを仮焼、焼結することによ
って、硫酸イオンによる緻密化の阻害を避けて緻密な焼
結体を得ることができるとの知見を得、本発明を完成し
たもので、本発明の目的は電気陽性の弱い金属と電気陽
性の強い金属とを含む酸化物の緻密焼結体を製造する方
法を提供する。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、一種ま
たは2種以上の電気陽性が弱い金属イオンを含む水溶液
に、塩基剤を加えて水酸化物の沈澱を生成せしめる際、
沈澱生成前もしくは沈澱生成後に硫酸イオンを作用せし
めて該沈澱のフロックを安定化し、得られたフロック状
沈澱を乾燥させることなく有機溶剤に分散し、しかる
後、有機溶剤を除去乾燥し、生成した粉体を硫酸イオン
が実質上ガスとして脱離する温度から、当該酸化物の融
点の1/2以下の温度で仮焼して焼結時に硫酸イオンの
影響が無視できる程度に除去し仮焼粉体とし、これに平
均粒径が0.5μm以下の微細な電気陽性が強い一種ま
たは2種以上の金属酸化物を所定量混合したのち、成形
して焼成することを特徴とする緻密焼結体の製造法であ
る。
【0005】そして、上記の方法において、請求項1の
方法によって電気陽性が弱い一種または2種以上の金属
酸化物の仮焼体を製造した後、これに平均粒径が1μm
以下の微細な電気陽性が強い一種または2種以上の金属
の塩を混合し、該金属塩の熱分解温度から当該金属酸化
物の融点と電気陽性が弱い金属の酸化物の融点の低い方
の融点の1/2の温度範囲で仮焼し、成形し焼結するこ
とを特徴とする緻密焼結体の製造法も、より好ましい態
様として提供する。
【0006】先に述べたように、金属水酸化物の沈澱を
生成したのち、該沈澱を乾燥させることなく有機溶剤に
分散して乾燥し、一次粒子が個々に分離した易焼結性酸
化物粉体の製造方法は従来より擬似アルコキシド法とし
て良く知られており、この擬似アルコキシド法の好まし
い態様の一つとして硫酸イオンの安定なフロック形成効
果を利用した方法がある。しかし、この方法では、硫酸
イオンと強く結合する電気陽性の強い金属を含むセラミ
ックスの緻密焼結体を得ることができないという欠点が
あった。本発明においては、予め特願2の方法で硫酸イ
オンとの結合が比較的弱い電気陽性の弱い金属の酸化物
を製造したのち、硫酸イオンとの結合が強い電気陽性の
強い金属の酸化物またはその金属の塩を混合し仮焼し
て、硫酸イオンを含まない焼結用原料粉体を調製し、こ
れを焼結して緻密焼結体を製造するのである。このよう
に、本発明の方法は電気陽性の弱い金属と電気陽性の強
い金属が共存する酸化物セラミックを製造する際に好ま
しい効果を発揮する。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明について詳細に述べる。先
ず、本発明に適する物質を示す。本発明における電気陽
性が弱い金属とは、電気陰性度が1.4以上の金属であ
り、具体的に例示するとAl、Zr、Ti、Si、N
b、Ta、W、Feなどの遷移金属、Ce、Sn、S
b、Bi、などが挙げられる。これらの金属の水酸化物
はpHが低いところで非晶質または極めて微細な結晶子
として沈澱するため、単に沈澱物を濾過して乾燥すると
硬い塊となり、乳鉢等でその塊をほぐしたのち仮焼して
も、強固な二次粒子の形成を避けることはできない。そ
のため、硫酸イオンを併用した擬似アルコキシド法で一
次粒子が個々に分かれた粉体を製造することが好まし
い。これらの金属は電気陽性が弱いので、電気陰性が強
い硫酸イオンとの結合力は比較的弱い。従って、仮焼に
より硫酸イオンを熱分解ガス化して容易に取り除くこと
ができるので、硫酸イオンを併用した擬似アルコキシド
法は、上で例示した金属類の酸化物セラミックス用易焼
結性粉体の製造に適している。これらの金属イオンを含
む水溶液としては、飽和溶液を上限とするが、沈澱した
水酸化物換算で水1リットルに対して、0.05〜0.
5モル濃度程度が好ましい。
【0008】他方、本発明における電気陽性が強い金属
とは電気陰性度が1.3以下の金属であり、Mg、C
a、Sr、Ba、Y、Laなどが例示される。これらの
金属は硫酸イオンと強く結合するので、通常の仮焼温度
では硫酸イオンを完全に除去することは難しい。このた
め、仮焼後の粉体に残留した硫酸イオンは焼結温度のよ
うに高い温度で熱分解しガス化し試料から脱離する。そ
の結果、該ガスが焼結により出現した密閉気孔の体積を
膨張させるので、焼結体自身も膨張する。すなわち、電
気陽性が強い金属の酸化物セラミックス用原料粉体を硫
酸イオンを併用した擬似アルコキシド法で製造する場
合、硫酸イオンの量を制限する必要がある。このため、
硫酸イオンの効果を併用した擬似アルコキシド法では、
一般に電気陽性の強い酸化物セラミックスばかりでな
く、電気陽性の強い金属と電気陽性の弱い金属が共存す
る酸化物セラミックスでも、その緻密焼結体を製造でき
ない。本発明は、易焼結性粉体を合成する際に、金属の
電気的性質に起因する問題点を避けるために、電気陽性
の弱い金属の酸化物粉末を硫酸イオンを併用した擬似ア
ルコキシド法で製造して、電気陽性の強い金属の化合物
はその他の方法で製造して、それらを硫酸イオンが存在
しない条件で混合することを特徴としている。
【0009】後者の金属群の水酸化物はpHが高いとこ
ろで沈澱するため、沈澱の一次粒子は比較的大きく一次
粒子間の凝集力は弱い。その結果、適切な条件で生成し
た水酸化物の沈澱を仮焼して得られる酸化物の凝集粒子
は脆弱で、焼結性は比較的良い。また、電気陽性の強い
金属の炭酸塩や塩基性炭酸塩など他の塩を仮焼しても凝
集粒子は脆弱で焼結性の良い粉体を得ることができる。
本発明において使用する電気陽性の強い金属の化合物
は、擬似アルコキシド法で製造した電気陽性の弱い金属
の酸化物と均一に混合でき、かつ焼結性を阻害しないと
いう条件から、平均粒径が酸化物の場合は0.5μm以
下、その他の化合物の場合は1μm以下のものが必要が
ある。これらの条件を満足する化合物であれば市販の易
焼結性酸化物粉体でも、また易焼結性粉体となる化合物
でも特に制限はない。
【0010】本発明におけるフロックとは、水溶液反応
で生成した沈澱の一次粒子同志が結合してできる嵩高い
凝集粒子のことをいう。硫酸イオンが存在すると一次粒
子同志の結合が強くなりフロックは安定になる。このた
め、硫酸イオンでフロックを安定化した沈澱は、それを
ろ過しても一次粒子の再配列は殆ど進行しないので、堆
積した沈澱中を液体が容易に通過できる。その結果、ろ
過性が良い。廃液処理などに際して、明礬で浮遊沈澱物
を凝集させてろ過性を改善するのは、上記の原理を利用
している。本発明における硫酸イオンは、該イオンの上
記のフロックの安定化作用によりろ過性を向上させると
同時に、有機溶剤の作用と共同して沈澱を乾燥する際に
進行する一次粒子の再配列を抑制する作用効果を発揮さ
せるために用いる。該効果を発現する硫酸イオンの好ま
しい量は特願2の明細書記載の通りで、沈澱中の金金属
イオンの0.05〜4倍量、より好ましくは0.3〜3
倍量の範囲である。該作用効果は、電気陽性の弱い金属
の水酸化物ばかりでなく電気陽性の強い金属の水酸化物
でも発揮する。しかしながら、硫酸イオンは後者の水酸
化物と強く結合して、焼結を阻害するので、本発明で
は、該抑制効果は電気陽性の弱い金属の水酸化物のみに
応用する。高分子凝集剤を硫酸イオンと併用すると、沈
澱のフロックが一層安定化し、個々に分散した一次粒子
を得るのに好ましい。
【0011】本発明における塩基剤とは沈澱生成剤とし
て作用するものであり、その使用目的を満たすものであ
れば、その種類は特に限定されないが、本発明において
使用する塩基剤を例示すると、アンモニア、尿素、炭酸
アンモニウム、炭酸水素アンモニウムなどが挙げられ
る。これらの沈澱生成剤の濃度は、飽和溶液を上限とす
る任意の濃度でよいが、好ましくは水1リットルに0.
05〜3モル程度である。上記の生成剤を金属イオンと
反応させるとき、水溶液として金属イオンを含む水溶液
に加えてもよいし、水に溶解することなく直接金属イオ
ンを含む水溶液に加えてもよい。
【0012】本発明においては電気陽性が弱い金属イオ
ン溶液に塩基剤を加え、沈澱を生成させ、該沈澱を有機
溶剤へ分散させ、次いで溶剤を除去して乾燥させる。そ
の際本発明で使用する有機溶剤として、例えばメチルア
ルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブ
チルアルコール、ヘキサアルコール、オクタアルコー
ル、酢酸イソアミール、ポリエチレングリコールなどの
親水性、ないしは極性有機溶剤から選ばれるものが例示
されるが、有機溶剤の使用目的を満たすものであるなら
ば、その種類は特に限定されない。それらは、一種また
は二種以上を使用できる。また、これらの有機溶剤への
分散は、沈澱を乾燥させる前に行う必要がある。該分散
後の有機溶剤の除去方法には特に制限はないが、沈澱に
含まれた水分を効率的に除去させるために、有機溶剤を
軽く沸騰させながら蒸発させることが好ましい。
【0013】本発明における有機溶剤の効果は、有機溶
剤の量が沈澱の容積に対して0.1倍以上で認められ
る。有機溶剤の量が増加するほど該効果は改善される。
しかしながら、20倍量を上回っても、特に顕著な効果
の向上は認められなかった。
【0014】本発明においては上述の方法によって生成
した粉体を、次に仮焼する。本発明では、硫酸イオンを
実質上完全に取り除く必要がある。電気陽性が弱い金属
の硫酸塩でもその金属の水酸化物より熱分解温度は高い
ので、本発明で行う仮焼は、水酸化物の熱分解温度より
も高い実質上硫酸塩を完全に取り除くことのできる温度
以上で行う必要がある。一般に、固体化合物の融点の1
/2をタンマン温度と言う。これは、この温度以上にな
ると原子の動きが急激に活発になるためである。そのた
め、微細粒子を該温度以上で仮焼すると、粒成長により
粒子が非常に大きくなり、焼結性が急激に低下するので
好ましくない。以上の理由で、仮焼温度は実質上硫酸イ
オンが脱離する温度から沈澱した水酸化物を仮焼して得
た酸化物の融点の1/2以下の範囲の温度で行う必要が
ある。
【0015】このようにして得られた電気陽性の弱い金
属の仮焼粉体に平均粒径が0.5μm以下の微細な電気
陽性の強い金属酸化物を混合する。電気陽性の強い金属
については先に述べたように電気陰性度が1.3以下の
金属であり、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Laなどが
例示される。その際使用する電気陽性の強い金属酸化物
の平均粒径としては、焼結性を阻害しないという条件か
ら0.5μm以下とする。また、電気陽性の弱い金属の
仮焼粉体と電気陽性の強い金属酸化物との混合割合とし
ては、目的とする焼結体材料の組成比に比例させる必要
がある。
【0016】本発明においては、電気陽性の弱い金属の
仮焼粉体と電気陽性の強い金属の塩とを混合し仮焼して
も良い。この金属の塩としては金属の炭酸塩、塩基性炭
酸塩等の仮焼によって得られる凝集粒子が脆弱で焼結性
の良好な粉体を呈するものであれば良く、その粉体の平
均粒径は1μm以下であれば良い。
【0017】
【実施例及び比較例】
実施例1 66gのオキシ硝酸ジルコニウムを1000mlの蒸留
水に溶解し、2等分する。それぞれ第1試料、第2試料
とする。両試料ともジルコニウムイオンに対して0.8
倍量の硫酸イオンに相当する硫安を加える。第2試料に
は2.7gの硝酸イットリウムを加える。それぞれの試
料をヒーター付きのマグネチックスターラーを用いて約
90℃に加熱しながら撹拌して、pHが8になるまで1
規定のアンモニア水を加えて沈澱を晶出させる。撹拌し
ながら90℃に3時間ばかり保ったのち濾過する。該沈
澱をアンモニアでpHを8にした水溶液に分散させてか
ら濾過する。これを3回繰り返し沈澱から不要の硝酸イ
オンや硫酸イオンを取り除く。最終的に濾過した沈澱を
それぞれ200mlのブチルアルコールに分散し、ヒー
ター付きのマグネチックスターラーで撹拌しながら有機
溶剤を軽く沸騰させる。この沸騰を10分ばかり続けた
のち窒素ガスを導入して有機溶剤の蒸発を促進させて乾
燥する。乾燥した沈澱をアルミナ乳鉢でほぐす。ほぐし
た第2試料は、酸素気流中、種々の温度で2時間仮焼す
る。第1試料の4gと市販の微細なイットリア粉体の
0.08gをそれぞれエチルアルコールに入れ、超音波
分散器を用いて10分ばかり分散する。ヒーター付きの
マグネチックスターラーで水酸化ジルコニウム粉末が分
散している液を撹拌しながら、イットリア粉体が分散し
た液を滴下し混合する。両試料を混合しながら加熱し、
エチルアルコールを蒸発させる。乾燥した試料をアルミ
ナ乳鉢で軽くほぐしたのち、第2試料と同じ条件で仮焼
する。仮焼した粉体を用いて200MPaの圧で錠剤を
作る。真空焼結炉を用いて、該錠剤を10℃/minの
昇温速度で1500℃まで加熱し、その時の焼結による
収縮曲線を測定した。900℃で仮焼した粉体の焼結現
象を図1に示す。同図で、pureは第1試料にイット
リア粉体を加えなかった純粋なジルコニア粉体の試料の
ことをさす。安定化剤を含まないので、焼結後の冷却中
に正方晶から単斜晶への相転移による膨張が起こった。
Zr(Y)は第2試料の焼結曲線である。ジルコニウム
イオンとイットリウムイオンおよび硫酸イオンを共存さ
せた水溶液から得たこの試料は1350℃以上になると
膨張が起こる。これに対して、Zr+Yは第1試料のジ
ルコニアとイットリアの粉体を混合した試料の焼結によ
る収縮曲線を示す。この曲線から焼結は1400℃でほ
ぼ終了し、膨張は認められない。Zr(Y)とZr+Y
の両試料ともイットリアで正方相が安定化されていて、
焼結後の冷却中に相転移は発生しない。そのため、それ
らの冷却曲線は横軸にほぼ水平であったので、図1では
省略した。
【0018】表1に各温度で仮焼したのちに残った硫黄
の重量%を示す。この表に記載のイットリアは硝酸イッ
トリウム水溶液にイットリウムイオンに対して0.4倍
量の硫酸イオンに相当する硫安を加えて1規定のアンモ
ニア水で沈澱し、ジルコニア粉体を調製したのと同じ条
件で濾過、洗浄、仮焼などを行った粉体である。
【0019】この表から、イットリアは仮焼温度が12
00℃でも硫黄を多量に含んでいることが分かる。これ
に対して、純粋なジルコニアの場合、900℃以上で仮
焼すると大部分の硫黄は除去できる。イットリア添加ジ
ルコニアの場合、硫黄を十分に除去するには、1100
℃以上の高温で仮焼する必要があった。そのような高温
で仮焼すると粉体の焼結性はしだいに低下した。表1か
ら、イットリウムイオンと硫黄イオンが共存する水溶液
から沈澱を生成すると、沈澱に含まれた硫黄分が、かな
り高い温度で仮焼しても、仮焼後の粉体に残ることが分
かる。この残留した硫黄分が焼結温度で脱離して焼結体
を膨張させる。
【0020】
【表1】
【0021】実施例2 蒸留水1000mlにアンモニウム明礬68gを溶解
し、4等分し、それぞれ第1水溶液、第2水溶液、第3
水溶液、第4水溶液とする。第1水溶液には1.8mg
の6水和の硝酸マグネシウムを溶解した水溶液を加え
る。全ての水溶液をそれぞれヒーター付きのマグネチッ
クスターラーで撹拌しながら85℃まで加熱し、1規定
のアンモニア水を徐々に加える。pHが7になったら4
時間保持する。それぞれの水溶液が室温になったのち、
濾過と蒸留水への分散を3回繰り返して沈澱を洗浄す
る。第1水溶液および第2水溶液からの沈澱は沈澱の容
積に対して5倍量のイソブチルアルコールに分散する。
イソブチルアルコールを軽く沸騰させながら蒸発させて
沈澱を乾燥させる。第3水溶液からの沈澱は有機溶剤処
理を施すことなく室温で乾燥させる。第4水溶液からの
沈澱はさらに蒸留水に分散し、千倍に薄めたポリアクリ
ルアミド系の有機高分子凝集剤を添加して沈澱をより安
定なフロック状にしたのち、第1水溶液や第2水溶液か
ら得た沈澱を有機溶剤処理したのと同じ条件で処理す
る。乾燥した粉体はそれぞれ軽くアルミナ乳鉢でほぐし
たのち、1250℃で2時間、酸素気流中で仮焼する。
第1水溶液から調製したアルミナ粉体以外は30mlの
エチルアルコールに分散し、1.8mgの6水和の硝酸
マグネシウムが溶解した10mlのエチルアルコールを
加えて乾燥させる。乾燥後、酸素気流中、900℃、2
時間仮焼して、200ppmマグネシア添加のアルミナ
粉体を製造する。各粉体はそれぞれ内径が12mmの金
型を用いて錠剤を作製し、200MPaの圧で静水圧プ
レスする。真空雰囲気、1700℃で2時間焼成した。
第1、第2、第3、第4水溶液から得た粉体の焼結体の
相対密度は、それぞれ93%、99%、75%、99%
であった。第2水溶液と第4水溶液から製造した粉体の
焼結密度の差は誤差範囲であったが、後者の方が見掛け
の透光性は良好であった。
【0022】比較例1 硝酸アルミニウム12gを200mlの蒸留水に溶解し
たのち、実施例2の方法で85℃に加熱して1規定のア
ンモニア水を加えてpHを7にしたのち撹拌しながら4
時間保持する。沈澱を洗浄するため、濾過したのち、蒸
留水に分散、再び濾過する。この操作を3回繰り返す。
濾過と洗浄を繰り返すたびにロートから流れ落ちる濾液
の量が急激に減少して濾過する時間が非常に長くなっ
た。最終的に濾過した沈澱の有機溶剤への分散、仮焼、
マグネシアの添加、成形、焼成等のその後の実験は実施
例2の第2水溶液から得た沈澱に対して行ったのと同じ
条件で行った。硫酸イオンで安定なフロック状の沈澱を
生成しなかったために、濾過に要する時間が長くなった
と同時に焼結体の相対密度は95%で、焼結体内にかな
りの気孔が残った。
【0023】
【発明の効果】以上述べたように、本発明は電気陽性の
弱い金属と電気陽性の強い金属の酸化物セラミックを製
造するに際して、電気陽性の弱い金属イオンについて硫
酸イオンのフロック安定化効果を利用した擬似アルコキ
シド法により製造し、これを仮焼した金属酸化物と電気
陽性の強い金属の酸化物を混合し、あるいは前者の金属
酸化物と電気陽性の強い金属の塩を混合し仮焼してこれ
を成形、焼成することによって緻密な焼結体を得ること
ができたのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1試料(Zr+Y)および第2試料(Zr
(Y))、無添加ジルコニア(pure)の等速昇温焼
結による緻密化曲線を示す。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一種または2種以上の電気陽性が弱い金
    属イオンを含む水溶液に、塩基剤を加えて水酸化物の沈
    澱を生成せしめる際、沈澱生成前もしくは沈澱生成後に
    硫酸イオンを作用せしめて得られる沈澱のフロックを安
    定化し、該フロック状沈澱を乾燥させることなく有機溶
    剤に分散し、しかる後、有機溶剤を除去乾燥し、生成し
    た粉体を硫酸イオンが実質上ガスとして脱離する温度か
    ら、当該酸化物の融点の1/2以下の温度で仮焼して焼
    結時に硫酸イオンの影響が無視できる程度に除去し仮焼
    粉体とし、これに平均粒径が0.5μm以下の微細な電
    気陽性が強い一種または2種以上の金属酸化物を所定量
    混合したのち、成形して焼成することを特徴とする緻密
    焼結体の製造法。
  2. 【請求項2】 請求項1の方法によって電気陽性が弱い
    一種または2種以上の金属酸化物の仮焼体を製造した
    後、これに平均粒径が1μm以下の微細な電気陽性が強
    い一種または2種以上の金属の塩を混合し、該金属塩の
    熱分解温度から当該金属酸化物の融点と電気陽性が弱い
    金属の酸化物の融点の低い方の融点の1/2の温度範囲
    で仮焼し、成形し焼結することを特徴とする緻密焼結体
    の製造法。
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