JP2984546B2 - 車輪情報推定装置 - Google Patents

車輪情報推定装置

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JP2984546B2 JP6143641A JP14364194A JP2984546B2 JP 2984546 B2 JP2984546 B2 JP 2984546B2 JP 6143641 A JP6143641 A JP 6143641A JP 14364194 A JP14364194 A JP 14364194A JP 2984546 B2 JP2984546 B2 JP 2984546B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、車輪の運動状態量に基
づいて車輪に関する情報を推定する車輪情報推定装置に
関するものであり、特に、推定精度の向上に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】上記車輪情報推定装置は一般に、(a) 車
輪の運動状態量に基づいて車輪に関する車輪情報を推定
する推定手段と、(b) 車輪の運動状態量を検出して推定
手段に供給する検出装置とを含むように構成される。
【0003】この車輪情報推定装置の一従来例が特開平
5−133831号公報に記載されている。これは、検
出装置が車輪の回転速度である車輪速度を車輪運動状態
量として検出し、推定手段が、検出装置から供給された
車輪運動状態量の複数の周波数成分のうち設定周波数範
囲内において強度が実質的に最大となるものの周波数に
基づいて車輪のタイヤ空気圧を車輪情報として推定する
周波数方式タイヤ空気圧推定部を含む形式の車輪情報推
定装置である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本出願人は先に、上記
形式とは別の形式の車輪情報推定装置として次のような
ものを開発した。これは、推定手段が、 少なくと
も、車輪情報の基礎値である車輪情報基礎値と検出装置
から供給された車輪運動状態量とから、車輪に対する外
乱を推定する外乱オブザーバと、 推定された外乱に
基づき、車輪情報の実際値である車輪情報実際値の、車
輪情報基礎値からの変化量を推定する車輪情報変化量推
定部とを含む車輪情報推定装置である。
【0005】そして、本出願人はこの形式の車輪情報推
定装置についてさらに研究を続けた結果、次のような事
実を見い出した。すなわち、外乱オブザーバを構成する
際には車輪の力学モデルを用いることが必要であるが、
車輪に関する多数の振動モードを表現し得る力学モデル
を用いることは外乱オブザーバの構成が複雑になるばか
りでなく、その推定の精度を向上させることが困難とな
る。一方、車輪運動状態量の周波数特性と外乱オブザー
バが特定の車輪情報を推定する際の推定精度との間に一
定の関係があり、車輪運動状態量の周波数特性を適正化
すれば、外乱オブザーバが用いる力学モデルを複雑にす
ることなく推定精度の向上を容易に図り得るという事実
を見い出したのである。
【0006】本出願人はまた、この周波数特性適正化と
いう技術は外乱オブザーバを用いる車輪情報推定装置に
のみ有効であるわけではなく、前述の、車輪運動状態量
の複数の周波数成分のうち設定周波数範囲内において強
度が実質的に最大となるものの周波数に基づいて車輪の
タイヤ空気圧を車輪情報として推定する形式の車輪情報
推定装置にも有効であることに気が付いた。この形式の
車輪情報推定装置においては当然のことながら、設定周
波数範囲という概念が存在するが、例えば、検出装置と
推定手段との間にフィルタを接続し、車輪運動状態量の
複数の周波数成分のうち周波数が設定周波数範囲内にあ
るものが特に強調されて推定手段に供給されるようにす
れば、推定手段にかかる負担が軽減され、ひいては推定
精度が向上するからである。
【0007】それらの知見に基づき、請求項1の発明
は、車輪運動状態量の周波数特性を適正化し、推定手段
には車輪運動状態量が周波数が設定周波数範囲内にある
成分が相対的に強調された状態で供給されるようにする
ことにより、車輪情報の推定精度を向上させるととも
に、推定手段に供給される車輪運動状態量の複数の周波
数成分のうち相対的に強調されることを予定されている
ものの設定周波数範囲を可変とし、設定周波数範囲を車
輪運動状態量の実際の周波数特性の変化に適応させるこ
とにより、推定精度を一層向上させることを課題として
なされたものである。
【0008】請求項2の発明は、請求項1の発明の一実
施態様を提供することを課題としてなされたものであ
る。
【0009】請求項3の発明は、推定手段による推定値
の変動が少なくなるように設定周波数範囲を変更するこ
とにより、設定周波数範囲の適応性を向上させることを
課題としてなされたものである。
【0010】請求項4の発明は、サスペンションにより
実現される車輪中心の車体に対する運動軌跡と車輪運動
状態量の周波数特性との間に一定の関係があることに着
目し、その運動軌跡を適正化することによって車輪運動
状態量の周波数特性を適正化することを課題としてなさ
れたものである。
【0011】請求項5の発明は、推定手段が外乱オブザ
ーバを用いる形式の車輪情報推定装置において車輪運動
状態量の周波数特性を適正化することにより、車輪情報
の推定精度を向上させることを課題としてなされたもの
である。
【0012】請求項6の発明は、推定手段が車輪運動状
態量の共振周波数と車輪情報との間に成立する一定の関
係を利用する形式の車輪情報推定装置において車輪運動
状態量の周波数特性を適正化することにより、車輪情報
の推定精度を向上させることを課題としてなされたもの
である。
【0013】請求項7の発明は、推定手段が車輪の回転
速度の複数の周波数成分のうち設定周波数範囲内におけ
るものの強度に基づいて車輪の接地性を車輪情報として
推定する形式の車輪情報推定装置を提供するとともに、
車輪運動状態量の周波数特性を適正化することによって
車輪情報の推定精度を向上させることを課題としてなさ
れたものである。
【0014】請求項8の発明は、推定手段による暫定的
な複数個の推定値から最終的な1個の推定値を決定する
形式の車輪情報推定装置を提供するとともに、暫定的な
推定値から最終的な推定値を決定する際に用いる規則を
推定値の変動傾向に応じて変更することによって推定精
度を向上させることを課題としてなされたものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】それぞれの課題を解決す
るために、請求項1の発明は、(a) 車輪の運動状態量に
基づいて車輪に関する車輪情報を推定する推定手段と
(b) 前記車輪の運動状態量を検出して前記推定手段に供
給する検出装置とを含む車輪情報推定装置において、車
輪の運動状態量の複数の周波数成分のうち周波数が設定
周波数範囲内にある周波数成分の強度の、周波数が設定
周波数範囲外にある周波数成分の強度に対する比を増加
させることにより、推定手段に供給される車輪運動状態
量の周波数特性を適正化する周波数特性適正化手段であ
って、前記推定手段による推定値またはそれに関連する
値に基づいて前記設定周波数範囲を変更する設定周波数
範囲変更部を含むものを設けたことを特徴とする。
【0016】なお、ここにおける「車輪運動状態量」に
は例えば、車輪の角速度,角加速度,上下速度,上下加
速度,前後速度,前後加速度等を選ぶことができる。ま
た、「車輪情報」には例えば、タイヤの空気圧,タイヤ
半径,タイヤの慣性モーメント,接地性,コーナリング
パワー等を選ぶことができる。
【0017】請求項2の発明は、その請求項1の発明に
おいて、前記車輪の運動状態量を、その車輪の角速度,
角加速度,上下速度,上下加速度,前後速度および前後
加速度の少なくとも一つを含むものとし、かつ、前記車
輪情報を、前記車輪のタイヤの空気圧,タイヤの半径,
タイヤの慣性モーメント,車輪の接地性およびタイヤの
コーナリングパワーの少なくとも一つを含むものとした
ことを特徴とする。
【0018】請求項3の発明は、(a) 車輪の運動状態量
に基づいて車輪に関する車輪情報を推定する推定手段
と、(b) 前記車輪の運動状態量を検出して前記推定手段
に供給する検出装置とを含む車輪情報推定装置におい
て、前記車輪の運動状態量の複数の周波数成分のうち周
波数が設定周波数範囲内にある周波数成分の強度の、周
波数が設定周波数範囲外にある周波数成分の強度に対す
る比を増加させることにより、前記推定手段に供給され
る車輪運動状態量の周波数特性を適正化する周波数特性
適正化手段であって、前記推定手段による推定値の変動
量が基準値以下となるように前記設定周波数範囲を変更
する設定周波数範囲変更部を含むものを設けたことを特
徴とする。
【0019】請求項4の発明は、(a) 車輪の運動状態量
に基づいて車輪に関する車輪情報を推定する推定手段
と、(b) 前記車輪の運動状態量を検出して前記推定手段
に供給する検出装置とを含む車輪情報推定装置におい
て、前記車輪の運動状態量の複数の周波数成分のうち周
波数が設定周波数範囲内にある周波数成分の強度の、周
波数が設定周波数範囲外にある周波数成分の強度に対す
る比を増加させることにより、前記推定手段に供給され
る車輪運動状態量の周波数特性を適正化する周波数特性
適正化手段であって、サスペンションにより実現される
前記車輪の車体に対する相対運動を車両横方向から見た
場合の車輪の中心の軌跡を適正化することによって前記
比を増加させるサスペンション適正化手段を含むもの
設けたことを特徴とする。
【0020】請求項5の発明は、(a) 車輪の運動状態量
に基づいて車輪に関する車輪情報を推定する推定手段
と、(b) 前記車輪の運動状態量を検出して前記推定手段
に供給する検出装置とを含む車輪情報推定装置におい
て、前記推定手段を、 少なくとも、車輪情報の基礎
値である車輪情報基礎値と前記検出装置から供給された
車輪運動状態量とから、車輪に対する外乱を推定する外
乱オブザーバと、 推定された外乱に基づき、車輪情
報の実際値である車輪情報実際値の、車輪情報基礎値か
らの変化量を推定する車輪情報変化量推定部とを含むも
のとし、かつ、当該車輪情報推定装置に、前記車輪の運
動状態量の複数の周波数成分のうち周波数が設定周波数
範囲内にある周波数成分の強度の、周波数が設定周波数
範囲外にある周波数成分の強度に対する比を増加させる
ことにより、前記推定手段に供給される車輪運動状態量
の周波数特性を適正化する周波数特性適正化手段を設け
ことを特徴とする。
【0021】請求項6の発明は、それら請求項1ないし
5の各発明において、前記推定手段を、前記検出装置か
ら供給された車輪運動状態量の複数の周波数成分のうち
設定周波数範囲内において強度が実質的に最大となるも
のの周波数に基づいて車輪情報を推定する周波数方式推
定部を含むものとしたことを特徴とする。
【0022】請求項7の発明は、それら請求項1ないし
6の各発明において、前記検出装置を、前記車輪の回転
速度である車輪速度を運動状態量として検出して前記推
定手段に供給する車輪速度検出部を含むものとし、推定
手段を、その車輪速度検出部から供給された車輪速度の
複数の周波数成分のうち設定周波数範囲内におけるもの
の強度に基づいて車輪の接地性を車輪情報として推定す
る車輪接地性推定部を含むものとすることを特徴とす
る。
【0023】請求項8の発明は、(a) 車輪の運動状態量
に基づいて車輪に関する車輪情報を推定する推定手段
と、(b) 前記車輪の運動状態量を検出して前記推定手段
に供給する検出装置とを含む車輪情報推定装置におい
て、前記推定手段を、前記車輪情報それ自体またはそれ
に関連する値を暫定的な推定値として複数個推定した後
にそれら複数の暫定的な推定値を用いて車輪情報の今回
の最終的な推定値を推定するとともに、今回の推定値
の、前回以前における推定値に対する変動量が大きい場
合において小さい場合におけるより、今回の最終的な推
定値を推定し直す際と次回の最終的な推定値を推定する
際との少なくとも一方において用いるべき前記暫定的な
推定値の数を増加させるものとし、かつ、当該車輪情報
推定装置に、前記車輪の運動状態量の複数の周波数成分
のうち周波数が設定周波数範囲内にある周波数成分の強
度の、周波数が設定周波数範囲外にある周波数成分の強
度に対する比を増加させることにより、前記推定手段に
供給される車輪運動状態量の周波数特性を適正化する周
波数特性適正化手段を設けたことを特徴とする。
【0024】なお、ここに「今回の推定値の、前回以前
における推定値に対する変動量」は例えば、今回の最終
値の、前回以前における最終値に対する変動量とした
り、今回の暫定値の、前回以前における暫定値に対する
変動量とすることができる。
【0025】
【作用】請求項1の発明に係る車輪情報推定装置におい
ては、周波数特性適正化手段が、車輪運動状態量の複数
の周波数成分のうち周波数が設定周波数範囲内にある周
波数成分の強度の、周波数が設定周波数範囲外にある周
波数成分の強度に対する比を増加させるから、推定手段
には車輪運動状態量がその周波数特性が適正化された状
態で供給される。したがって、その設定周波数範囲を推
定手段が車輪情報を精度よく推定するに適した周波数範
囲に予め設定すれば、車輪情報の推定精度を容易に向上
させ得る。
【0026】車輪運動状態量の実際の周波数特性は常に
一定ではなく、例えば車体速度等に起因して変化する。
そのため、そのような特性の存在にもかかわらず設定周
波数範囲を固定したのでは、周波数特性を十分に適正化
することができない。一方、周波数特性が十分に適正化
されない場合には推定手段による推定値が変動する傾向
が生ずる。これらの知見に基づき、請求項の発明に係
る車輪情報推定装置においては、設定周波数範囲変更部
が、車輪運動状態量の周波数特性の変化を反映する推定
手段による推定値またはそれに関連する値に基づいて設
定周波数範囲を変更し、これにより、設定周波数範囲が
車輪運動状態量の実際の周波数特性の変化に適応するよ
うに変更される。
【0027】また、請求項3の発明に係る車輪情報推定
装置においては、設定周波数範囲変更部が、前記推定手
段による推定値の変動量が基準値以下となるように設定
周波数範囲を変更する。推定値の変動量が減少するよう
に設定周波数範囲をフィードバック方式で変更するので
あり、これにより、設定周波数範囲が常に車輪運動状態
量の実際の周波数特性に適応させられることになる。
【0028】サスペンションにより実現される車輪の車
体に対する相対運動を車両横方向から見た場合の車輪中
心の運動軌跡と車輪運動状態量の周波数特性との間には
一定の関係が成立する。例えば、車輪の回転速度である
車輪速度が車輪運動状態量として選ばれている場合にお
いて、車輪中心の運動軌跡が上下方向成分のみならず前
後方向成分をも有するときは、路面の凹凸に基づく車輪
振動によって車輪の外周面に前後振動が発生して車輪速
度が変化させられ、車輪振動の影響が車輪速度に特定の
周波数範囲に現れる。したがって、車輪中心の運動軌跡
が前後方向成分を極力多く有するように、すなわち、例
えば、車輪中心の運動軌跡を円周で近似した場合のその
円周の中心(例えば、瞬間中心)が極力車輪中心に近づ
くようにサスペンションのジオメトリー等を設計すれ
ば、車輪振動の影響が車輪速度に特定の周波数範囲にお
いて相対的に強調されて現れることになる。逆に、車輪
中心の運動軌跡が前後方向成分を極力有しないように、
すなわち、例えば、上記近似した円周の中心が極力車輪
中心から遠ざかるようにサスペンションのジオメトリー
等を設計すれば、車輪振動の影響が車輪速度に特定の周
波数範囲において相対的に弱化して現れることになる。
【0029】「周波数特性適正化手段」としては例えば
デジタルフィルタ,アナログフィルタ等が一般的であ
り、周波数特性適正化手段をそれらフィルタとして実施
する場合にはそれらフィルタが検出装置と推定手段との
間に設けられることになる。しかし、上記のように、車
輪中心の運動軌跡と車輪運動状態量の周波数特性との間
に一定の関係が成立するから、この関係を利用すれば、
サスペンション自体に対して特別の対策を講ずることに
より、上記の如きフィルタなしでも周波数特性の適正化
が可能となる。それらの知見に基づき、請求項4の発明
に係る車輪情報推定装置においては、周波数特性適正化
手段としてのサスペンション適正化手段が、車輪中心の
運動軌跡を適正化することによって車輪運動状態量の周
波数特性を適正化する。
【0030】例えば、車輪情報の中には、車輪振動に起
因して車輪速度に現れる周波数成分を相対的に強調する
ことが車輪情報の推定精度向上に有効となる種類のもの
があり、推定手段がこの種の車輪情報を推定する場合に
は、車輪振動の影響が車輪速度にその周波数範囲におい
て特に強く現れるように、すなわち、車輪中心の運動軌
跡が前後方向成分を極力多く有するようにサスペンショ
ンのジオメトリー等を設計すればよく、このことが「サ
スペンション適正化手段」の一例となる。
【0031】さらに、車輪情報の中には、車輪振動に起
因して車輪速度に現れる周波数成分を相対的に弱化させ
ることが車輪情報の推定精度向上に有効となる種類のも
のも存在し、推定手段がこの種の車輪情報を推定する場
合には、車輪振動の影響が車輪速度にその周波数範囲に
おいてほとんど現れないように、すなわち、車輪中心の
運動軌跡が前後方向成分を極力有しないようにサスペン
ションのジオメトリー等を設計すればよく、このことが
「サスペンション適正化手段」の別の例となる。なお、
車輪中心の運動軌跡が前後方向成分を極力有しないよう
にするための具体的な手法として例えば、アッパアーム
とロアアームとの双方によって車輪が車体に相対変位可
能に連結される車両において、それらアッパアームとロ
アアームとを車両横方向から見た場合のそれぞれの向き
が極力平行になるようにそれらアッパアームとロアアー
ムを配置する手法がある。
【0032】請求項5の発明に係る車輪情報推定装置に
おいては、外乱オブザーバが、少なくとも、車輪情報基
礎値と検出装置から供給された車輪運動状態量とから、
車輪に対する外乱を推定し、車輪情報変化量推定部が、
推定された外乱に基づき、車輪情報実際値の車輪情報基
礎値からの変化量を推定する。ここにおいて、外乱オブ
ザーバには周波数特性適正化手段により周波数特性が適
正化された車輪運動状態量が供給されるから、外乱オブ
ザーバは外乱を常に精度よく推定し得、ひいては、推定
手段が車輪情報を常に精度よく推定し得ることとなる。
【0033】請求項6の発明に係る車輪情報推定装置に
おいては、推定手段としての周波数方式推定部が、検出
装置から供給された車輪運動状態量の複数の周波数成分
のうち設定周波数範囲内において強度が実質的に最大と
なるものの周波数に基づいてタイヤ空気圧等の如き車輪
情報を推定する。ここにおいて、推定手段には周波数特
性適正化手段により周波数特性が適正化された車輪運動
状態量が供給されるから、推定手段は推定に必要な周波
数を常に精度よく取得し得、ひいては、車輪情報を常に
精度よく推定し得ることとなる。
【0034】請求項7の発明に係る車輪情報推定装置に
おいては、検出装置としての車輪速度検出部が、車輪の
回転速度である車輪速度を運動状態量として検出して推
定手段に供給し、推定手段としての車輪接地性推定部
が、その車輪速度検出部から供給された車輪速度の複数
の周波数成分のうち設定周波数範囲内におけるものの強
度に基づいて車輪の接地性を車輪情報として推定する。
車輪の接地性、すなわち、車輪の路面に対する追従性と
車輪速度の設定周波数範囲内における成分の強度との間
には例えば、接地性が悪いほど特定周波数成分の強度が
増加するという一定の関係が成立するから、この関係を
利用することにより、車輪速度から車輪の接地性を推定
するのである。また、ここにおいても、推定手段には周
波数特性適正化手段により周波数特性が適正化された車
輪速度が供給されるから、推定手段は推定に必要な周波
数成分の強度を常に精度よく取得し得、ひいては、車輪
の接地性を常に精度よく推定し得ることとなる。
【0035】以上説明した請求項1〜7の各発明は、推
定手段により1個の推定値が得られたならばそれを直ち
にそのまま最終値として出力する態様で実施可能である
が、上記のように車輪運動状態量の周波数特性の適正化
が行われても、推定値相互間にやや大きなばらつきが発
生し、十分に高い精度が実現されないおそれもある。こ
のような事情に鑑みて請求項8の発明がなされたのであ
り、本発明に係る車輪情報推定装置においては、推定手
段が、車輪情報それ自体またはそれに関連する値を暫定
値として複数個推定した後にそれら複数の暫定値を用い
て車輪情報の今回の最終値を推定するとともに、今回の
推定値(暫定値または最終値)の、前回以前における推
定値(暫定値または最終値)に対する変動量が大きい場
合において小さい場合におけるより、今回の最終値を推
定し直す際と次回の最終値を推定する際との少なくとも
一方において用いるべき暫定値の数を増加させる。車輪
情報の複数個の暫定値から1個の最終値が取得されるた
め、最終値が個々の暫定値の変動の影響を受け難くなる
とともに、1個の最終値の取得に用いられる暫定値の数
が推定誤差に応じて適正に変化させられ、常に十分に高
い推定精度が確保されることになる。
【0036】なお、この請求項8の発明は例えば、今回
推定値の変動量に基づいて1個の最終値の取得に用いら
れる暫定値の数を一方的に決定する態様としたり、今回
推定値の変動量が基準値を超えた場合には基準値以下と
なるまで暫定値の数を一定量ずつ、または変動量と基準
値との差に応じて増加する量で増加し続ける態様とする
ことができる。
【0037】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、請求項
1の発明によれば、推定手段には車輪運動状態量がそれ
の周波数特性が適正化された状態で供給されるから、推
定のために用いられる車輪の力学モデルの簡易化を図り
つつ十分な推定精度を確保し得る効果が得られる。
【0038】また、請求項の発明によれば、車輪運動
状態量の周波数特性を考慮して設定周波数範囲が変更さ
れるから、周波数特性の変化に対する設定周波数範囲の
適応性が向上し、これによっても推定精度が向上する効
果が得られる。
【0039】また、請求項3の発明によれば、設定周波
数範囲の変更がフィードバック方式で行われるから、設
定周波数範囲の適応性が一層向上する効果が得られる。
【0040】また、請求項4の発明によれば、車輪中心
の運動軌跡の適正化によって車輪運動状態量の周波数特
性の適正化が実現されるから、フィルタ等の余分な装置
や余分なプログラムを設けることが不可欠ではなくなる
効果が得られる。
【0041】また、請求項5の発明によれば、外乱オブ
ザーバを用いて車輪情報を推定する形式の車輪情報推定
装置において周波数特性の適正化によって推定精度が向
上する効果が得られる。
【0042】また、請求項6の発明によれば、車輪運動
状態量の周波数特性と車輪情報との間に成立する一定の
関係を利用して車輪情報を推定する形式の車輪情報推定
装置において周波数特性の適正化によって推定精度が向
上する効果が得られる。
【0043】また、請求項7の発明によれば、車輪の回
転速度に基づいて車輪の接地性を推定可能となるととも
に、周波数特性の適正化によって推定精度が向上する効
果が得られる。
【0044】また、請求項8の発明によれば、車輪情報
の推定値の複数の暫定値を総合的に勘案して1個の最終
値が取得されるとともに、1個の最終値の取得に用いら
れる暫定値の数が推定誤差に応じて適正に変化させられ
るため、常に十分に高い推定精度が確保される効果が得
られる。
【0045】
【実施例】以下、各請求項の発明を図示のいくつかの実
施例に基づいて具体的に説明する。図2において10は
ロータ、12は電磁ピックアップである。ロータ10は
図3に示す車輪14と共に回転するものであり、外周に
多数の歯16を備えている。電磁ピックアップ12はそ
れらの歯16の通過に応じて周期的に変化する電圧を発
生する。この電圧は波形整形器18によって矩形波に整
形され、コンピュータ20のI/Oポート22に供給さ
れる。車輪14は4個あり、それらに設けられている各
電磁ピックアップ12が全て波形整形器18を経てコン
ピュータ20に接続されるが、図2には代表的に1組の
みが図示されている。
【0046】車輪14は図3に示すように、ホイール2
4の外周にタイヤ26が取り付けられたタイヤ付ホイー
ルであるが、図4に示すように、相対回転可能なリム側
部28とベルト側部30とがねじりばね32によって連
結されたものと考えることができる。上記ロータ10は
ホイール24と一体的に回転するように取り付けられる
ため、電磁ピックアップ12は厳密にはリム側部28の
角速度を検出することになる。
【0047】コンピュータ20は図2に示すように処理
装置としてのCPU40,第一記憶装置としてのROM
42および第二記憶装置としてのRAM44を備えてお
り、ROM42に図5および図6のフローチャートで表
される制御プログラムが格納されることによって、図1
に示すリム側部回転速度演算・補正部45を構成してい
る。このコンピュータ20は別のコンピュータ47と接
続されている。このコンピュータ47は図2に示すよう
に、処理装置としてのCPU48,第一記憶装置として
のROM49,第二記憶装置としてのRAM50および
入出力装置としてのI/Oポート51を備えており、R
OM49に図10のフローチャートで表されるタイヤ空
気圧異常警告ルーチンを始めとする種々の制御プログラ
ムが格納されることによって、図1に示す外乱オブザー
バ52,パラメータ同定部53(相関演算部56,正規
化部58)および異常判定部62を構成している。
【0048】コンピュータ20と47とは前処理フィル
タ64を経て接続されている。すなわち、図1に示すよ
うに、リム側回転速度演算・補正部45と外乱オブザー
バ52とが前処理フィルタ64を経て接続され、リム側
回転速度演算・補正部45からの回転速度信号が直ちに
外乱オブザーバ52に供給されるのではなく前処理フィ
ルタ64を経て供給されるようになっているのである。
前処理フィルタ64はDSP(デジタルシグナルプロセ
ッサ)を主体として構成されているが、その他、例え
ば、ディスクリート回路を主体として構成することも可
能である。前処理フィルタ64の特性については後に詳
述する。
【0049】コンピュータ47のI/Oポート51には
図2に示すように、異常判定部62の判定結果を運転者
に知らせる表示装置66が接続されている。表示装置6
6は本実施例においては液晶ディスプレイであるが、点
灯あるいは点滅するランプ等別の表示装置を用いること
も可能であり、音声で運転者に知らせる音声報知装置な
どを含めて種々の形態の報知装置を採用することが可能
である。コンピュータ47のI/Oポート51にはさら
に、ホイール24(リム側部28)に加えられる駆動・
制動トルクを、ホイール24の軸に取り付けられた歪み
ゲージ等により検出する駆動・制動トルク検出装置68
が接続されている。
【0050】リム側部回転速度演算・補正部45は上記
4個の車輪14に対応する各電磁ピックアップ12およ
び波形整形器18から供給される信号に基づいて各車輪
14の回転速度を算出するとともに、ドップラ式車速検
出装置等の実車速検出装置70(図2参照)により検出
された実車速、すなわち車体の移動速度に基づいて、各
車輪14の回転速度を補正する。各車輪14およびロー
タ10には製造,組立誤差が存在し、これら誤差等に起
因して周期的な回転速度誤差が発生するため、この各車
輪14に固有の固有回転速度誤差を除いた回転速度を求
めるのである。
【0051】なお、車輪14の回転速度は周速度で演算
されるが、そのためにはタイヤ26の実質的な半径(タ
イヤが荷重で変形した状態における路面から車輪14の
中心までの距離)が必要であり、これはタイヤ26の空
気圧によって変わる。よって、当初は空気圧が正規であ
る場合の正規の半径が使用されるが、後に説明する処理
によってタイヤ26の空気圧変化が判明した場合は、予
めROM42に格納されているタイヤ径テーブルからそ
の空気圧変化に対応したタイヤ半径が読み出されて使用
される。なお、回転速度を角速度で演算する場合には、
タイヤ径テーブルは不要である。
【0052】リム側部回転速度演算・補正部45の機能
は図5に示す固有回転速度変化取得ルーチンと図6に示
す回転速度演算・補正ルーチンとの実行により果たされ
る。固有回転速度変化取得ルーチンはロータ10および
車輪14の組立後少なくとも1回実行されるようにすれ
ばよい。車両の組立工場や整備工場で実行されてもよ
く、使用者による使用中に実行されてもよい。後者の場
合には、例えば、一定距離走行する毎、一定時間毎ある
いは予め定めれた条件が満たされる毎に実行されるよう
にすればよい。いずれにしても、加速も制動も行われて
おらず、かつ、予め定められた範囲の速度で走行してい
る時期に行われるようにすることが望ましい。
【0053】固有回転速度変化取得ルーチンにおいて
は、ステップS1(以下、単にS1で表す。他のステッ
プについても同様)において初期設定が行われ、S2に
おいて実車速Vが実車速検出装置70から読み込まれ
る。続いて、S3でロータ10の個々の歯16に基づく
車輪14の回転速度vn が演算される。波形整形器18
からの矩形波の各立上がり間または各立下がり間の時間
間隔、もしくは立上がりと立下がりとの各中点間の時間
間隔は、車輪14の回転速度と反比例するため、これら
のいずれかの時間間隔から車輪14の回転速度(厳密に
はベルト側部30がリム側部28の角速度ωR と同じ角
速度で回転していると仮定した場合のベルト側部30の
周速度)が演算されるのである。なお、ここでは理解を
容易にするために、回転速度vn はロータ10の1個の
歯16が電磁ピックアップ12を通過する毎に演算され
るものとするが、歯16が通過する時間間隔と演算に要
する時間との関係等で、複数個の歯16が通過する毎に
回転速度vn が演算されるようにしてもよい。
【0054】回転速度vn が演算されたならば、S4に
おいて実車速Vとの差、すなわち速度偏差(V−vn
が演算されるとともに、速度偏差の累積値が演算され、
その速度偏差累積値が順次RAM44の速度偏差累積値
メモリの別々の番地(整数nに対応して予め定められて
いる番地)の内容に加算されることにより更新される。
これらの番地は車輪14の1回転で得られる速度偏差累
積値の数だけ準備される。ここでは歯16が1個通過す
る毎に1個の速度偏差累積値が演算されるものとしてい
るため、番地の数は歯16の数と同じである。
【0055】なお、ここに「累積値」は、ロータ10の
同一回転中における、第一番目の歯16(基準位置にお
ける歯)から第n番目の歯16までの速度偏差の合計値
を意味し、 Σ(V−vn )=(V−v1 )+(V−v2 )+・・・
+(V−vn ) で表される。
【0056】S5で整数nが1増加させられつつS3お
よびS4が繰り返し実行され、車輪14が1回転してS
6の判定がNOになったとき、S7で整数nが1にリセ
ットされるとともに整数iが1増加させられ、S8で整
数iが基準値Nより小さいか否かの判定が行われる。S
8の判定がYESの場合にはS2で新しい実車速Vが読
み込まれ、再び1回転分の速度偏差累積値が演算,記憶
される。これによって得られる各速度偏差累積値はそれ
ぞれ速度偏差累積値メモリの各nに対応する番地の内容
に加算される。車輪14が1回転する毎に各番地の速度
偏差累積値が更新されるのであり、これによって、速度
偏差累積値メモリの各番地には車輪14の回転回数に対
応する数の速度偏差累積値の和が記憶されることとな
る。なお、本実施例では、実車速Vは車輪14が1回転
する間には変化しないとみなして車輪14が1回転する
毎に新しい実車速Vが読み込まれるようにされている
が、S6の判定がYESとなる毎にS2〜S5が実行さ
れるようにして、毎回実車速Vが読み込まれるようにし
てもよい。
【0057】車輪14の予定回転回数N分の速度偏差累
積値の演算,更新が終了したならば、S8の判定がNO
となり、S9で各番地の速度偏差累積値の和が基準値N
で割られて速度偏差累積値の平均値Δvn が求められ
る。この平均速度偏差累積値Δvn は、固有回転速度変
化取得ルーチンの開始後にS3およびS4が始めて実行
されるときの車輪14の回転位置を基準とする各回転位
置の回転速度誤差の累積値である。固有回転速度変化取
得ルーチンが車両走行中度々、あるいは継続的に実行さ
れる場合には、どこが基準位置とされても後述の回転速
度演算・補正ルーチンにおいて回転速度の補正を行い得
るため差し支えないが、車輪14等の組立後1回のみ実
行される場合,キースイッチがONにされた後1回のみ
実行される場合等には、ロータ10の特定の位置に基準
マークを設け、これを検出する検出器を位置固定に設け
て、基準マークの位置を速度偏差累積値の基準位置とす
ることが必要である。基準マークを設ける場合には、速
度偏差累積値の演算自体を基準マークの位置から行って
もよく、任意の位置から行い、後に基準マークの位置を
基準とする速度偏差累積値に換算してもよい。
【0058】上記基準値Nは路面の影響をキャンセルす
るに十分な大きさに設定されるべきものであり、本実施
例においては図7に示すように実車速Vが大きいほど大
きい値に設定される。S9では平均速度偏差累積値Δv
n がさらに実車速Vで割られて速度偏差累積値率Δvn
/Vが求められ、RAM44の速度偏差累積値率メモリ
に記憶される。速度偏差累積値率Δvn /Vはロータ1
0,車輪14等の製造,組立誤差に起因する各車輪14
に固有の回転速度誤差を表す値であり、図6の回転速度
演算・補正ルーチンにおいて車輪14の回転速度の補正
に使用される。
【0059】回転速度演算・補正ルーチンは車両の走行
中継続的に実行される。ここでは予め定められた一定の
サンプリング時間内における波形整形器18からの矩形
波の立上がりの時間間隔の平均から車輪16の回転速度
が演算されるものとする。まず、S11において、予め
定められたサンプリング時間内における矩形波の最初と
最後の立上がりの時期とサンプリング時間内における立
上がりの回数とが検出されるとともに、最初と最後との
立上がりがそれぞれロータ10のどの歯16に対応した
ものであるかのデータが読み込まれる。すなわち、立上
がりが生じる毎に割り込みルーチンにより、コンピュー
タ20に内蔵のタイマから立上がりの時期が読み込まれ
るとともに、サンプリング時間内における立上がりの数
がカウントされる。また、立上がりの数を常時カウント
し、ロータ10の基準位置においてリセットされる別の
カウンタも設けられており、このカウンタのカウント値
も読み込まれる。このカウンタのカウント値が各立上が
りがロータ10のどの歯16の通過により生じたもので
あるかを示すのである。
【0060】続いて、S12において、サンプリング時
間内における車輪14の平均回転速度が演算される。サ
ンプリング時間内における全ての立上がり間の平均時間
間隔が演算され、それから回転速度vが演算されるので
ある。その後、S13で回転速度vの補正が行われる。
S11において読み込まれた最初と最後との立上がりが
ロータ10のどの歯16に対応したものであるかのデー
タに基づいて、速度偏差累積値率メモリから、それら最
初と最後との立上がりに対応する歯16の速度偏差累積
値率Δvn1/V,Δvn2/Vが読み出され、次式 v=(1+(Δvn1−Δvn2)/2V)v・・・(1) により回転速度vが補正されるのであり、両速度偏差累
積値率Δvn1/V,Δv n2/Vの差の1/2に回転速度
vを掛けた量だけ回転速度vが補正されることとなる。
【0061】この補正後の回転速度vは前処理フィルタ
64を経た後、図1に示す外乱オブザーバ52において
使用される。ただし、外乱オブザーバ52においては、
回転速度として角速度が使用されるため、図6のS13
では補正後の回転速度vからタイヤ半径Rを考慮してリ
ム側部28の角速度ωR が演算され、RAM44の角速
度メモリに格納される。
【0062】外乱オブザーバ52は、車輪14の図4に
示すモデルに基づいて構成されている。以下、この外乱
オブザーバ52の構成について説明する。車輪14を、
相対回転可能な慣性モーメントJR のリム側部28と慣
性モーメントJB のベルト側部30とがばね定数Kのね
じりばね32により接続されたものとしてモデル化すれ
ば、(2) 〜(4) の状態方程式が成立し、これによって線
形システムが構成される。 JR ωR ′=−KθRB+T1 ・・・(2) JB ωB ′= KθRB−Td ・・・(3) θRB′=ωR −ωB ・・・(4) ただし、 ωR :リム側部28の角速度 ωR ′:リム側部28の角加速度 ωB :ベルト側部30の角速度 ωB ′:ベルト側部30の角加速度 θRB :リム側部28とベルト側部30とのねじり角 T1 :駆動・制動トルク検出装置68により検出され
る駆動・制動トルク Td :路面からの外乱トルク
【0063】なお、実際にはリム側部28とベルト側部
30との間にはダンパが存在するが、その影響は比較的
小さいため、本実施例においてはその存在が無視されて
いる。
【0064】上記状態方程式をベクトルおよび行列を用
いて表せば(5) 式となる。
【0065】
【数1】
【0066】ここで、タイヤ26の空気圧が変化し、ね
じりばね32のばね定数がKからK+ΔKに変化したと
きの車輪14の運動は(6) 式で表される。
【0067】
【数2】
【0068】すなわち、ばね定数KがΔKだけ変化する
ことは正常なタイヤ26に(6) 式の右辺の最終項で表さ
れる外乱が加えられるのと等価である。この外乱にはば
ね定数Kの変化量ΔKの情報が含まれており、かつ、ば
ね定数Kはタイヤ26の空気圧に応じて変化するので、
この外乱を推定することによってタイヤの空気圧の変化
量を推定することができる。この外乱の推定に外乱オブ
ザーバの手法を用いるのであり、いま路面からのトルク
d をも外乱として扱うことにすれば、推定すべき外乱
wは(7) 式で表される。
【0069】
【数3】
【0070】しかし、理論上、外乱[w]の中の一つの
要素しか推定することができないため、第2要素である
2 を推定することとする。外乱w2 を(8) 式で定義す
れば、車輪14の状態方程式は(9) 式のようになるた
め、この(9) 式に基づいて外乱オブザーバを構成する。 w2 =(−1/JB )Td +(ΔK/JB )θRB・・・(8)
【0071】
【数4】
【0072】外乱オブザーバは外乱をシステムの状態変
数の一つとして推定するものである。そこで、(8) 式の
外乱w2 をシステムの状態に含めるために、推定すべき
外乱のダイナミクスを(10)式で近似する。 w2 ′=0・・・(10) これは図8に示すように連続して変化する外乱を階段状
に近似(零次近似)することを意味し、外乱オブザーバ
52の外乱推定速度を推定すべき外乱の変化に比べて十
分速くすれば、この近似は十分に許容される。(10)式よ
り、外乱w2 をシステムの状態に含めると(11)式の拡張
系が構成される。
【0073】
【数5】
【0074】(11)式において[ωB θRB2T
検出することができない状態となる。したがって、この
システムに基づいて外乱オブザーバ52を構成すれば、
外乱w2 と元々測定できない状態変数ωB ,θRBとを推
定することができる。記述を簡単にするために、(11)式
のベクトルおよび行列を分解して次のように表すことと
する。
【0075】
【数6】
【0076】このとき、状態[z]=[ωB θRB
2T を推定する最小次元オブザーバの構成は(12)式で
表される。 [zp ′]=[A21][xa ]+[A22][zp ]+[B2 ][u]+[G]{ [xa ′]−([A11][xa ]+[A12][zp ]+[B1 ][u])}=( [A21]−[G][A11])[xa ]+([A22]−[G][A12])[zp ] +[G][xa ′]+([B2 ]−[G][B1 ])[u]・・・(12) ただし、 [zp ] :[z]の推定値 [zp ′]:推定値[zp ]の変化率 [G] :外乱オブザーバ52の推定速度を決めるゲ
イン この方程式をブロック線図で表わすと図9のようにな
る。なお、図において[I]は単位行列、sはラプラス
演算子である。また、真値[z]と推定値[zp ]との
誤差[e]を[e]=[z]−[zp]とおき、誤差
[e]の変化率を[e′]とすると、(13)式の関係を得
る。 [e′]=([A22]−[G][A12])[e]・・・(13) これは外乱オブザーバ52の推定特性を表しており、行
列([A22]−[G][A12])の固有値がすなわち外
乱オブザーバ52の極となる。したがって、この固有値
がs平面の左半面において原点から離れるほど外乱オブ
ザーバ52の推定速度が速くなる。オブザーバゲイン
[G]は希望の推定速度になるように決定すればよい。
【0077】以上のように構成された外乱オブザーバ5
2においては、リム側部回転速度演算・補正部45にお
いて演算,補正された車輪14の回転速度vからタイヤ
半径Rを考慮して演算された角速度ωR を入力として、
ねじりばね32のばね定数KがΔK変化した場合の(8)
式で表される外乱w2 が推定され、外乱推定値w2pが取
得されるが、その外乱と共に、検出が不可能であるベル
ト側部30の角速度ω B ,リム側部−ベルト側部間のね
じり角θRBも推定され、それぞれ推定値ωBp,θRBp
取得される。
【0078】上記外乱w2pとねじり角θRBp を用いて相
関演算部56において相関演算が行われ、正規化部58
で正規化が行われて、ねじりばね32のばね定数Kの変
化が求められる。
【0079】ねじりばね32のばね定数Kの変化の取得
を図11のフローチャートに基づいて説明する。S21
の初期設定において、整数iが1にリセットされ、前記
(8) 式で表される外乱w2 の推定値w2pとねじり角推定
値θRBp との相互相関C(w2p,θRBp)とねじり角推
定値θRBp の自己相関C(θRBp ,θRBp )とが0にリ
セットされる。RAM50の相互相関メモリおよび自己
相関メモリの内容が0にされるのである。
【0080】続いて、S22で現時点の外乱推定値w
2p(i) およびねじり角推定値θRBp(i)が読み込まれ、S
23で外乱推定値w2p(i) とねじり角推定値θRBp(i)
の積が演算され、相互相関C(w2p,θRBp )に加算さ
れる。ただし、最初にS23が実行される際には相互相
関C(w2p,θRBp )が0であるため、相互相関メモリ
に外乱推定値w2p(i) とねじり角推定値θRBp(i)との積
が格納されるのみである。同様にS24でねじり角推定
値θRBp(i)の二乗が演算され、自己相関メモリの自己相
関C(θRBp ,θRBp )に加算される。
【0081】S25において整数iが予め定められた基
準値M以上になったか否かが判定されるが、当初は判定
がNOであるため、S26で整数iが1増加させられ、
再びS22〜S24が実行される。この実行がM回繰り
返されたときS25の判定がYESとなり、相互相関C
(w2p,θRBp )の1回の演算と自己相関C(θRBp
θRBp )の1回の演算とがともに終了する。
【0082】なお、基準値Mを固定値として各請求項の
発明は実施可能であるが、本実施例においては、タイヤ
空気圧の推定精度向上のために可変値とされている。こ
れについては後に詳述する。
【0083】相関演算部56において以上のようにして
相互相関C(w2p,θRBp )と自己相関C(θRBp ,θ
RBp )とが求められた後、正規化部58において(14)式
によりLK 値が求められ、RAM50のLK 値メモリに
格納される。 Lk =C(w2p,θRBp )/C(θRBp ,θRBp )・・・(14) このLK 値は前記(8) 式に基づき、(15)式で表される。 Lk =(−1/JB )C0 +ΔK/JB ・・・(15) ただし、C0 はC(Tdp,θRBp )/C(θRBp ,θ
RBp )で表される値であり、ばね定数Kの変化とは無関
係であるので、タイヤ空気圧が正常の状態で予め求めて
おくことによって補償することができる。また、C(T
dp,θRBp )は外乱トルクTd の推定値とねじり角θRB
の推定値との相互相関を表している。
【0084】異常判定部62においては、以上のように
して取得され、LK 値メモリに格納されているLK =C
(w2p,θRBp )/C(θRBp ,θRBp )が、ROM4
9に格納されている負の基準値LK0と比較される。LK
値が基準値LK0より小さい場合にはタイヤ26の空気圧
が異常に低いと判定されて、表示装置66により運転者
に知らされる。また、LK 値とタイヤ26の空気圧Pの
変化量ΔPとの関係がタイヤ空気圧テーブルとして予め
ROM49に格納されており、それに従ってL K 値に対
応する空気圧変化量ΔPが取得されるようにもなってい
る。
【0085】すなわち、それら相関演算部56,正規化
部58および異常判定部62が請求項5の発明における
「車輪情報変化量推定部」の一例を構成しているのであ
る。
【0086】以上、図1に示す外乱オブザーバ52,相
関演算部56,正規化部58および異常判定部62の各
々の機能を個別的に説明したが、以下、それら構成要素
全体の作動を図10のフローチャートに基づいて説明す
る。
【0087】まず、S31において、前記基準値Mの値
が初期化される。ROM49に予め格納されている値に
設定されるのである。次に、S32において、前記整数
iが1にリセットされ、さらに、S33において、前記
(8) 式で表される外乱w2 の推定値w2pとねじり角推定
値θRBp との相互相関C(w2p,θRBp )とねじり角推
定値θRBp の自己相関C(θRBp ,θRBp )とが0にリ
セットされる。RAM50の相互相関メモリおよび自己
相関メモリの内容が0にされるのである。すなわち、そ
れらS32およびS33は図11のS21に対応するの
である。
【0088】その後、S34において、コンピュータ2
0から前処理フィルタ64を経て回転速度vが読み込ま
れる。ここで、前処理フィルタ64の特性について説明
する。リム側部回転速度演算・補正部45から前処理フ
ィルタ64に供給される回転速度信号、すなわち前処理
フィルタ64による処理前の回転速度信号は一般に、図
12にグラフで表される如き周波数特性を有している。
一方、外乱オブザーバ52が図4に示される如き簡易な
タイヤモデルを用いて外乱w2 およびねじれ角θRBを十
分に精度よく推定するためには、外乱オブザーバ52に
供給されるべき回転速度信号の周波数がすべて実質的に
設定周波数範囲内に存在し、その範囲外には存在しない
ようにすることが必要である。したがって、本実施例に
おいては、リム側部回転速度演算・補正部45と外乱オ
ブザーバ52との間に前処理フィルタ64が設けられて
いる。
【0089】この前処理フィルタ64は、図14にグラ
フで表される如き、設定周波数範囲内においてゲイン
(信号の「強度」を記述する単位の一例である)が0と
なり、その範囲外においてゲインが負となるフィルタ特
性を有するものとされている。したがって、外乱オブザ
ーバ52には、リム側部回転速度演算・補正部45から
供給される回転速度信号から設定周波数範囲を有する信
号のみが抽出されて外乱オブザーバ52に供給される。
例えば、前処理フィルタ64に入力される回転速度信号
であって図12にグラフで表されている周波数特性を有
するものについては、例えば3個の周波数範囲Rf1
Rf2 およびRf3 のうち、推定に適した周波数範囲で
あるRf2 内に周波数を有する信号のみが抽出され、前
処理フィルタ64から出力される回転速度信号の周波数
特性は図13にグラフで表されるものとなる。
【0090】前処理フィルタ64から回転速度vが読み
込まれたならば、図10のS35において、外乱オブザ
ーバ52により外乱w2 とねじれ角θRBとがそれぞれ推
定される。続いて、S36において、相互相関C
(w2p,θRBp )と自己相関C(θ RBp ,θRBp )とが
それぞれ演算される。すなわち、本ステップは図11の
S22〜S24に対応しているのである。その後、S3
7において、整数iが基準値M以上であるか否かが判定
される。今回は整数iが1であるから、判定がNOとな
り、S38において、整数iが1増加させられた後、S
34に戻る。
【0091】S34〜S36の実行が繰り返されること
によって整数iが基準値M以上となれば、S37の判定
がYESとなり、S39において、相互相関C(w2p
θRB p )を自己相関C(θRBp ,θRBp )で割り算する
正規化によって相関比LK が演算される。続いて、S4
0において、相関比LK のばらつき度δが算出される。
【0092】相関比LK は本来であれば、緩やかに変化
するかまたは一定に保たれるものであるが、基準値Mの
初期値、すなわち、相互相関C(w2p,θRBp )と自己
相関C(θRBp ,θRBp )とをそれぞれ演算するのに用
いた回転速度vの数が現在の走行状況等との関係におい
て不足する場合には、ばらつき度δが増加する傾向があ
る。そして、この傾向は基準値Mを増加させることによ
って解消可能である。そこで、本実施例においては、今
回のばらつき度δに応じて次回の相関比LK を求めるた
めの基準値Mが決定される。具体的には、図15にグラ
フで表される如き、ばらつき度δと基準値Mとの関係で
あってばらつき度δが増加するにつれて基準値Mが初期
値(すなわち、標準値)から増加するがばらつき度δが
最大値δ MAX を超えた後には固定されるものが予めRO
M49に格納されていて、その関係に従って次回の基準
値Mが決定される。さらに、本実施例においては、ばら
つき度δが最大値δMAX を超えた場合には、タイヤ空気
圧の異常判定が禁止され、最大値δMAX を超えない場合
においてのみ、異常判定が許可されるようになってい
る。ばらつき度δが最大値δMAX を超える場合には、相
関比LK の信頼性が低く、そのような値に基づいて異常
判定を行うと誤判定が生ずるおそれがあるからである。
ばらつき度δは例えば、前回の相関比LK との差として
算出することができる。すなわち、ばらつき度δが請求
項8の発明における「変動量」の一例なるのである。
【0093】そのため、S40において、相関比LK
ばらつき度δが算出されるのであり、その後、S41に
おいて、ばらつき度δに応じて次回の基準値Mが決定さ
れ、続いて、S42において、ばらつき度δが最大値δ
MAX を超えたか否かが判定される。今回は超えないと仮
定すれば判定がNOとなり、S43において、相関比L
K が負の基準値LK0より小さいか否かが判定される。今
回は小さくはないと仮定すれば判定がNOとなり、S4
4において、タイヤ26の空気圧Pが正常であると判定
され、S46において、表示装置66に対して空気圧異
常表示をさせない(または停止させる)指令が出され、
その後、S32に戻る。これに対し、今回は基準値LK0
より小さいと仮定すればS43の判定がYESとなり、
S45において、空気圧Pが異常に低いと判定され、S
46において、表示装置66に対して空気圧異常表示を
させる指令が出される。これにより、空気圧Pが異常に
低い事実が運転者に知らされることになる。その後、S
32に戻る。
【0094】以上、ばらつき度δが最大値δMAX を超え
ない場合について説明したが、超えた場合には、S42
の判定がYESとなり、S43〜S46がスキップさ
れ、空気圧Pの異常判定が行われることなくS32に戻
る。
【0095】以上の説明から明らかなように、本実施例
においては、ロータ10,電磁ピックアップ12および
波形整形器18と、リム側部回転速度演算・補正部45
の回転速度を演算する部分とによって請求項の発明に
おける「検出装置」の一例が構成され、また、外乱オブ
ザーバ52とパラメータ同定部53とによって請求項
および8の各発明における「推定手段」の一例が構成さ
れ、また、前処理フィルタ64によって請求項の発明
における「周波数特性適正化手段」の一例が構成されて
いるのである。
【0096】次に、別の実施例に基づいて各請求項の発
明を具体的に説明する。ただし、本実施例は先の実施例
と共通する部分が多いため、共通する部分については同
一の符号を使用することによって説明を省略し、異なる
部分についてのみ詳細に説明する。
【0097】本実施例においては、図17に示すよう
に、コンピュータ20と47とが前処理フィルタ80と
FFT(高速フーリエ変換)分析器82とを経て互いに
接続されている。コンピュータ20は先の実施例におけ
ると同様に、図16に示すリム側部回転速度演算・補正
部45を構成するが、コンピュータ47のROM49に
図18のタイヤ空気圧異常警告ルーチンを始めとする種
々の制御プログラムが格納されることによって、図16
に示す共振点検出部84,空気圧演算部86および異常
判定部88を構成している。
【0098】コンピュータ47は、タイヤ26の空気圧
Pが低下するほど回転速度信号のうち特定の周波数範囲
における共振周波数が減少するという事実に着目し、共
振周波数から空気圧Pを推定するものである。
【0099】このようにコンピュータ47は回転速度信
号の周波数特性に基づいて空気圧推定を行うものである
ため、コンピュータ47と20との間にFFT分析器8
2が接続され、回転速度信号の周波数特性がコンピュー
タ47に供給されるようになっている。また、リム側部
回転速度演算・補正部45からの回転速度信号を直接F
FT分析器82に供給して周波数特性を分析させること
は可能であるが、このようにすると特定の周波数範囲以
外の成分もFFT分析器82に供給されて分析精度が低
下するおそれがある。そこで、本実施例においては、コ
ンピュータ20とFFT分析器82との間に前処理フィ
ルタ80が接続され、コンピュータ20から出力された
回転速度信号のうち設定周波数範囲内の成分のみが前処
理フィルタ80で抽出されてFFT分析器82に供給さ
れるようになっている。
【0100】コンピュータ47は図18のタイヤ空気圧
異常警告ルーチンを次のように実行する。まず、S51
において、FFT分析器82から回転速度信号の周波数
特性が読み込まれる。次に、S52において、読み込ま
れた周波数特性に基づき、設定周波数範囲内における共
振周波数f0 が検出される。すなわち、コンピュータ4
7のうちこのS52を実行する部分が図16に示す共振
点検出部84を構成するのである。続いて、S53にお
いて、検出された共振周波数f0 が基準値fTHより小さ
いか否かが判定される。この判定は後述のS56の判
定、すなわち、空気圧Pが基準値P0 より小さいか否か
の判定に近似するものであるが、内容が近似する判定ス
テップが2種類設けられている理由については後述す
る。
【0101】今回は共振周波数f0 の検出値(後述の最
終的な検出値と区別するために、暫定的な検出値とい
う)が基準値fTH以上であると仮定すれば判定がNOと
なり、S54において、共振周波数f0 がそのまま最終
的な検出値とされる。その後、S55において、共振周
波数f0 の最終的な検出値に応じて空気圧Pが決定され
る。共振周波数f0 と空気圧Pとの関係が予めROM4
9に格納されており、この関係に従って今回の共振周波
数f0 に対応する空気圧Pが決定されるのである。続い
て、S56において、決定された空気圧Pが基準値P0
より低いか否かが判定される。今回は共振周波数f0
最終的な検出値が暫定的な検出値に等しく、かつ、暫定
的な検出値が基準値fTH以上であると仮定されており、
このことは空気圧Pが基準値P0 以上であることを意味
するから、このS56の今回の判定はNOとなり、S5
7において、今回は空気圧Pが正常であると判定され、
S59において、その旨が表示装置66によって運転者
に知らされる。その後、S51に戻る。
【0102】これに対し、今回は共振周波数f0 の暫定
的な検出値が基準値fTHより小さいと仮定すればS53
の判定がYESとなり、S60〜S63の実行に移行す
る。
【0103】それらS60〜S63の実行目的を説明す
る。共振周波数f0 の暫定的な検出値が基準値fTHより
小さい場合には、空気圧Pが異常に低くなっている可能
性がある。しかし、共振周波数f0 の暫定的な検出値に
突発的な変動が生じる場合があるため、共振周波数f0
の暫定的な検出値が一度でも基準値fTHより小さくなれ
ば直ちに空気圧Pが異常に低いと判定してその旨を運転
者に警告したのでは、本来行うべきでない誤った警告が
行われてしまい、タイヤ空気圧異常警告装置の信頼性が
低下する。そこで、本実施例においては、共振周波数f
0 の暫定的な検出値が基準値fTHより小さくなっても直
ちに空気圧Pが異常に低いとは判定せず、共振周波数f
0 の今回検出値を含む最新の基準値N個の検出値(RA
M50に格納されている)の平均値が共振周波数f0
最終的な検出値とされ、その値に基づいて空気圧Pの異
常低下の有無が最終的に判定される。
【0104】ここに基準値Nは固定値とすることは可能
であるが、本実施例においては、可変値とされている。
共振周波数f0 の暫定的な検出値のばらつき度δに応じ
て変化する可変値とされているのであり、具体的には、
図19にグラフで表される如く、ばらつき度δが最大値
δMAX に達するまではばらつき度δが大きいほど増加す
るが最大値δMAX に達した後には固定される可変値とさ
れている。すなわち、ばらつき度δが請求項8の発明に
おける「変動量」の一例なのである。
【0105】以上の説明から明らかなように、S53
は、共振周波数f0 の暫定的な検出値を判定対象とし、
空気圧Pの異常低下の有無を暫定的に判定するためのス
テップであり、これに対し、S56は、空気圧P、すな
わち、共振周波数f0 の最終的な検出値を判定対象と
し、空気圧Pの異常低下の有無を最終的に判定するため
のステップなのであり、両ステップの内容は形式的には
近似するが本質的には異なるのである。
【0106】さらに、本実施例においては、ばらつき度
δが最大値δMAX を超えている間は、共振周波数f0
暫定的な検出値の取得は行われるが、最終的な検出値の
取得は禁止され、ひいては空気圧異常判定も禁止され
る。ばらつき度δが最大値δMA X を超えることは共振周
波数f0 の暫定的な検出値が急変することを意味する
が、空気圧Pの変化に伴う共振周波数f0 は本来急変し
ないのが一般的であるため、ばらつき度δが最大値δ
MAX を超える場合には共振周波数f0 の最終的な検出値
の取得も空気圧異常判定も禁止するのである。
【0107】それらS60〜S63の実行内容を具体的
に説明する。まず、S60において、共振周波数f0
暫定的な検出値につき、ばらつき度δが演算される。具
体的には、暫定的な検出値の今回値の前回値からの変化
量がばらつき度δとして演算される。次に、S61にお
いて、演算されたばらつき度δが最大値δMAX を超えた
か否かが判定される。今回は超えていないと仮定すれば
判定がNOとなり、S62において、演算されたばらつ
き度δに応じて基準値Nが決定される。図19のグラフ
で表される如き、ばらつき度δと基準値Nとの関係がR
OM49にテーブル等として予め格納されており、その
関係に従って今回のばらつき度δに対応する基準値Nが
決定されるのである。その後、S63において、RAM
50に既に格納されいてる複数の共振周波数f0 の暫定
的な検出値のうち最新のN個の値が読み込まれ、それら
の和を基準値Nで割り算することによって平均値が求め
られ、これが今回の最終的な検出値とされる。その後、
S55以下のステップに移行する。これに対し、今回は
ばらつき度δが最大値δMA X を超えたと仮定すればS6
1の判定がYESとなり、直ちにS51に戻る。したが
って、今回は空気圧Pの推定が禁止されることになる。
【0108】以上の説明から明らかなように、本実施例
においては、ロータ10,電磁ピックアップ12,波形
整形器18と、リム側部回転速度演算・補正部45の回
転速度を演算する部分とによって請求項の発明におけ
る「検出装置」の一例が構成され、また、FFT分析器
82と共振点検出部84と空気圧演算部86とによって
請求項および8の各発明における「推定手段」の一例
である「周波数方式推定部」が構成され、また、前処理
フィルタ80によって請求項の発明における「周波数
特性適正化手段」の一例が構成されているのである。
【0109】次に、さらに別の実施例に基づいて各請求
項の発明を具体的に説明する。ただし、本実施例は図1
6に示す実施例と共通する部分が多く、異なるのはタイ
ヤ空気圧異常警告ルーチンを実行する部分のみであるた
め、この部分についてのみ詳細に説明し、他の部分につ
いては同一の符号を使用することによって説明を省略す
る。
【0110】タイヤ空気圧異常警告ルーチンは図20に
フローチャートで表されている。以下、本ルーチンの内
容を説明するが、まず、先の実施例における図18のル
ーチンと異なる部分のみ概略的に説明する。
【0111】本実施例においては、先の実施例とは異な
り、常に最新のM個の共振周波数f 0 の暫定的な検出値
の平均値が最終的な検出値として求められ、しかも、そ
のMは固定値とされている。ただし、本実施例において
は、このようにMを固定値とする代わりに、次のような
対策を講じることにより、共振周波数f0 の検出値の突
発的な変動に起因する誤警告が回避されるようになって
いる。
【0112】すなわち、共振周波数f0 の最終的な検出
値が基準値fTH以上である場合には直ちに空気圧Pが正
常であると判定されるが、基準値fTHより小さい場合に
は直ちには空気圧Pが異常に低いと判定されず、基準値
THより小さいと始めて判定されたときから、そのとき
の検出値の直前の検出値からの変化量Δf0 に応じた数
であるN個の最終的な検出値が取得されるまで、各回の
最終的な検出値が基準値fTHより小さいと判定し続けら
れた場合にはじめて、空気圧Pが異常に低いと判定され
るのである。最終的な検出値が基準値fTHより小さくな
ったときには、まず、そのときの検出値の変化量Δf0
が突発的な変動に起因するものであると仮定され、それ
が消滅すると予想される期間は空気圧Pが正常であると
判定し続けられ、その期間中継続して検出値が基準値f
THより小さい場合に先の変化量Δf0 が真に空気圧Pの
変化に起因するものであると判定され、これにより、突
発的な変動に起因する誤警告が回避されるのである。ま
た、ここに基準値Nは具体的には、図21にグラフで表
される如く、変化量Δf0 が大きい場合において小さい
場合におけるより、長くなるように変化させられる。
【0113】さらに、本実施例においては、前記実施例
におけると同様に、キースイッチのON操作に伴ってそ
の当初に前記固有回転速度変化取得ルーチンが実行され
るが、そのルーチンの実行終了までに一定の時間を要
し、その間、共振周波数f0 の検出精度が保証されず、
ひいては空気圧異常判定の精度も保証されない。そのた
め、固有回転速度変化取得中には共振周波数f0 の検出
は行われるが空気圧異常判定は禁止されるようになって
いる。また、固有回転速度変化が取得された後であって
も、最初のM個の暫定的な検出値が取得されるまでは初
回の最終値を取得することができないから空気圧異常判
定を行うこともできない。しかし、運転者はタイヤ空気
圧異常警告装置が現在そのような状態にあることを把握
することができない。そこで、本実施例においては、タ
イヤ空気圧異常警告装置が現在固有回転速度変化の取得
中、すなわち、固有回転速度変化の「学習中」であるこ
とと、現在最初のN個の暫定値の取得中であること、す
なわち、共振周波数f0 の初回の最終値の「計測中」に
あることとがそれぞれ前記表示装置66を介して運転者
に知らされるようになっている。
【0114】次に、このタイヤ空気圧異常警告ルーチン
の内容を図20に基づいて具体的に説明する。まず、S
71において、前記コンピュータ20から学習中フラグ
が読み込まれる。学習中フラグはON状態で固有回転速
度変化の取得中であることを示し、OFF状態でその取
得中ではないことを示すフラグである。次に、S72に
おいて、FFT分析器82から周波数特性の分析結果が
読み込まれる。続いて、S73において、読み込まれた
周波数特性に基づき、設定周波数範囲における共振周波
数f0 の今回の暫定値が検出される。検出された暫定値
はRAM50に格納される。その後、S74において、
現時点までにM個の暫定値が検出されたか否かが判定さ
れる。今回は未だその検出が終了してはいないと仮定す
れば判定がNOとなり、S75において計測中フラグが
ON状態にされる。計測中フラグはRAM50に設けら
れており、ON状態でM個の暫定値の計測中であること
を示し、OFF状態でその計測が終了したことを示すフ
ラグである。
【0115】その後、S76において、学習中フラグが
ON状態にあるか否かが判定される。今回はON状態に
あると仮定すれば判定がYESとなり、S77におい
て、現在「学習中」にあることが表示装置66により運
転者に知らされる。以上で本ルーチンの一回の実行が終
了する。これに対し、今回は学習中フラグがOFF状態
にあると仮定すればS76の判定がNOとなり、S78
において、計測中フラグがON状態にあるか否かが判定
される。今回はON状態にあると仮定されているから判
定がYESとなり、S79において、現在「計測中」に
あることが表示装置66により運転者に知らされる。
【0116】S71〜S73の実行が繰り返されること
により最初のM個の共振周波数f0の暫定値が検出され
るに至れば、S74の判定がYESとなり、S80にお
いて、共振周波数f0 の初回の最終値が演算される。最
初のM個の暫定値の平均値が初回の最終値とされるので
ある。その後、S81において、その最終値が基準値f
THより小さいか否かが判定される。今回は小さくはない
と仮定すれば判定がNOとなり、S82において、異常
フラグがOFF状態とされる。異常フラグは、OFF状
態で空気圧Pが正常であることを示し、ON状態で空気
圧Pが異常に低いことを示すフラグであり、RAM50
に設けられている。その後、S83において、任意の時
期からの最終値の取得数を表す整数nが0に初期化され
る。続いて、S84において計測中フラグがOFF状態
とされる。今回は最終値が取得されたからである。その
後、S76以下のステップに移行する。
【0117】現在学習中フラグがOFF状態にあると仮
定されているから、S76の判定はNOとなる。また、
計測中フラグはOFF状態にあるから、S78の判定も
NOとなる。また、S79において、異常フラグがON
状態にあるか否かが判定されれば、今回はOFF状態に
あるため、判定がNOとなり、S86において現在空気
圧が「正常」であることが表示装置66により運転者に
知らされる。以上で本ルーチンの一回の実行が終了す
る。
【0118】以上、共振周波数f0 の最終的な検出値が
基準値fTH以上である場合について説明したが、以下、
基準値fTHより小さい場合について説明する。この場合
にはS81の判定がYESとなり、S88において、整
数nが0であるか否かが判定される。今回は0であるか
ら判定がYESとなり、S89において、共振周波数f
0 の今回値の前回値からの変化量Δf0 が演算され、さ
らに、その演算された変化量Δf0 に基づき、前記のよ
うにして前記基準値Nが決定される。その後、S90に
おいて、整数nが基準値Nより大きいか否かが判定され
る。今回は基準値Nより大きくはないと仮定すれば判定
がNOとなり、S82において、異常フラグがOFF状
態とされ、S83において、整数nが1増加させられ
る。その後、S84以下のステップに移行し、S85に
おいて異常フラグがON状態にあるか否かが判定されれ
ば、今回はOFF状態にあるから、判定がNOとなり、
S86において現在空気圧が「正常」であることが表示
装置66により運転者に知らされる。
【0119】その後、本ルーチンの実行が繰り返される
ことにより、整数nが基準値Nより大きくなったと仮定
すれば、S90の判定がYESとなり、S92において
異常フラグがON状態とされ、S92において、次回に
備えて整数nが0に初期化され、その後、S84以下の
ステップに移行する。その後、今回はS85の判定がY
ESとなり、S93において現在空気圧が「異常」であ
ることが表示される。
【0120】なお、本実施例においては、例えば車輪1
4が十分に停止状態に近い場合や、車両が砂利道等の悪
路を走行している場合など、電磁ピックアップ12が回
転速度vを十分には高い精度で検出することが困難であ
る走行状況であるか否かを問わず共振周波数f0 が検出
されるようになっているが、そのような検出困難走行状
況下において共振周波数f0 の検出、ひいては空気圧異
常判定が禁止されるようにすることもできる。この態様
においては、検出困難走行状況下においては、タイヤ空
気圧異常警告装置が空気圧異常判定を行うことができな
いため、たとえ空気圧が異常であってもその旨が運転者
に警告されない。そのため、タイヤ空気圧異常警告装置
が計測中であり、かつタイヤ空気圧異常判定が禁止中で
ある旨の「準備中」を表示し、タイヤ空気圧異常警告装
置が現在空気圧異常判定を行わない状態にあることを運
転者に認識させないと、運転者は空気圧が正常であると
認識してしまうことになる。そこで、このような事態を
回避するためには、検出困難走行状況下においてもタイ
ヤ空気圧異常警告装置が「準備中」にあることを表示す
ることが望ましい。
【0121】以上の説明から明らかなように、本実施例
においては、ロータ10,電磁ピックアップ12および
波形整形器18と、リム側部回転速度演算・補正部45
の回転速度を演算する部分とによって請求項の発明に
おける「検出装置」の一例が構成され、また、FFT分
析器82と共振点検出部84と空気圧演算部86とによ
って請求項6の発明における「推定手段」の一例である
「周波数方式推定部」が構成され、また、前処理フィル
タ80によって請求項の発明における「周波数特性適
正化手段」の一例が構成されているのである。
【0122】次に、さらに別の実施例に基づいて各請求
項の発明を具体的に説明する。本実施例も図22に示す
ように、図2に示す実施例と同様に、電磁ピックアップ
12,波形整形器18,コンピュータ20,実車速検出
装置70(図示省略),前処理フィルタ64,コンピュ
ータ47,駆動・制動トルク検出装置68(図示省略)
および表示装置66を備えているが、前処理フィルタ6
4のフィルタ特性、すなわち、回転速度信号から抽出す
べき成分の周波数範囲であるフィルタ範囲が可変とさ
れ、かつ、同図に示すように、コンピュータ47にさら
にフィルタ範囲調整部90も設けられている。
【0123】図23には、リム側部回転速度演算・補正
部45から出力される回転速度信号の周波数特性が、タ
イヤ26の空気圧Pが正規値である空気圧正常時とその
正規値から低下した空気圧低下時とについてそれぞれグ
ラフで概念的に表されている。それら回転速度信号のう
ち外乱オブザーバ52による空気圧推定に適した周波数
成分は各グラフの3個の山のうちの中央の山で表される
周波数成分である。この周波数成分が属する適正周波数
範囲は空気圧Pによって変化し、空気圧Pが低いほど周
波数が減少する側にずれるのであり、この様子が同図に
表されているのである。そのため、空気圧Pの変化とは
無関係にフィルタ範囲の設定を固定する場合には、フィ
ルタ範囲が広くならざるを得ず、その結果、本来必要で
ない周波数成分も前処理フィルタ64によって抽出され
てしまい、外乱オブザーバ52の推定精度を低下させ、
ひいてはタイヤ空気圧異常判定の信頼性をも低下させる
おそれがある。そこで、本実施例においては、フィルタ
範囲が変化可能なものとされるとともに空気圧Pの変化
に精度よく追従するようにされ、これにより、フィルタ
範囲の幅を極力狭くすることが可能となっている。そし
て、本実施例においては、具体的には、外乱オブザーバ
52によって推定されるばね定数Kの変化量ΔKに応じ
てフィルタ範囲の設定が変更されるようになっている。
【0124】以上説明したフィルタ範囲の設定変更を含
むタイヤ空気圧異常判定・警告を実行するための制御プ
ログラムがコンピュータ47のROM49に格納されて
いる。以下、本ルーチンを図24のフローチャートに基
づいて具体的に説明する。
【0125】初回の実行時にはまず、S101におい
て、前処理フィルタ64から回転速度vが読み込まれ
る。前処理フィルタ64のフィルタ範囲は当初、タイヤ
26の空気圧Pが正規値である空気圧正常時に適した範
囲に暫定的に設定されているため、今回読み込まれた回
転速度vはその暫定的なフィルタ範囲の下に取得された
ものとなっている。
【0126】次に、S102において、読み込まれた回
転速度vに基づき、外乱オブザーバ52によって外乱w
2 およびねじれ角θRBが推定される。続いて、S103
において、それら推定値に基づき、ばね定数Kの変化量
ΔKが同定される。このパラメータ同定は例えば、前記
の相関演算・正規化により行うことも、最小二乗法によ
り行うこともできる。
【0127】その後、S104において、本ルーチンの
今回の実行がコンピュータ47の電源投入後の初回であ
るか否かが判定される。今回は初回であるから、判定が
YESとなり、S105において、フィルタ範囲の設定
変更が行われる。変化量ΔKの推定値に基づき、フィル
タ範囲が回転速度信号の周波数特性に合致するように調
整されるのであり、例えば変化量ΔKとフィルタ範囲と
の間の予め定められている関係であってROM49にテ
ーブル等として予め格納されているものに従って決定さ
れる。すなわち、コンピュータ47のうちそれらS10
4およびS105を実行する部分がフィルタ範囲調整部
90を構成しているのである。また、このフィルタ範囲
調整部90が請求項の発明における「設定周波数範囲
変更部」の一例を構成している。その後、S101に戻
り、再び回転速度vの読込みが行われる。
【0128】本ルーチンの2回目の実行が開始され、そ
の後、S104が実行されれば、判定がNOとなり、S
106において、変化量ΔPの推定値に基づき、空気圧
Pの推定値が基準値P0 より低いか否かが判定される。
今回は基準値P0 より低くはないと仮定すれば判定がN
Oとなり、S107において、タイヤ空気圧が正常であ
ると判定され、その後、S108において、その旨が表
示装置66によって運転者に知らされる。これに対し、
今回は基準値P0 より低いと仮定すればS106の判定
がYESとなり、S109において、今回はタイヤ空気
圧が異常に低いと判定され、その後、S108におい
て、その旨が表示装置66によって運転者に知らされ
る。いずれの場合にもその後、S101に戻る。
【0129】以上の説明から明らかなように、本ルーチ
ンの初回の実行時には、S107〜S109における空
気圧Pの異常判定が禁止され、2回目以後の実行時には
じめて許可れるようになっているが、これは、初回の実
行時には、外乱オブザーバ52に供給される回転速度v
が暫定的なフィルタ範囲の下に取得されたものであり、
変化量ΔKの推定値の信頼性が十分には高くない可能性
もあり、そのような値に基づいて空気圧の異常判定を行
ったのでは常に正しく判定結果が得られるとは限らない
からである。
【0130】本ルーチンにおいては、初回の実行時に必
ず、フィルタ範囲の設定変更が行われる一方、空気圧の
異常判定が禁止されるようになっているが、初回の実行
時といえども空気圧Pの推定精度が高い場合もあり、こ
のような場合には空気圧の異常判定を禁止する必要がな
い。したがって、初回の実行時に空気圧Pの推定精度が
十分に高いか否かを判定し、高い場合には初回の実行時
といえどもフィルタ範囲の設定変更を行わずに空気圧P
の異常判定を行うように先の実施例を改良することがで
き、その一例を実現するルーチンが図25にフローチャ
ートで表されている。
【0131】本ルーチンにおいては、S111〜S11
4が図24のルーチンと同様に実行される。本ルーチン
の今回の実行が初回であれば、S114の判定がYES
となり、S115において、今回の変化量ΔK(正規値
Kからの外れ量)の絶対値が基準値ΔK0 以下であるか
否かが判定される。変化量ΔKの絶対値が基準値ΔK 0
以下である場合には、予め設定されているフィルタ範囲
における外乱オブザーバ52による推定精度が十分に高
いのが一般的であるからである。今回の変化量ΔKの絶
対値が基準値ΔK0 以下である場合にはS115の判定
がYESとなり、S117以下のステップにおいて空気
圧Pの異常判定が行われる。初回の実行時でも空気圧P
の異常判定が行われるのである。今回は、変化量ΔKの
絶対値が基準値ΔK0 以下であるため、タイヤ空気圧P
の基準圧からの変化量が小さく、S117の判定がNO
となり、S118においてタイヤ空気圧が正常であると
判定され、その後、S119においてその旨が表示され
る。これに対し、今回の変化量ΔKの絶対値が基準値Δ
0 以下ではないと仮定すれば、S115の判定がNO
となり、図24のルーチンと同様に、S116において
初回の実行時にフィルタ範囲の設定変更が行われる一
方、空気圧Pの異常判定が禁止される。
【0132】すなわち、コンピュータ47のうちそれら
S114〜S116を実行する部分がフィルタ範囲調整
部90の別の例を構成しているのである。また、このフ
ィルタ範囲調整部90が請求項の発明における「設定
周波数範囲変更部」の別の例を構成している。
【0133】以上説明した2個のルーチンにおいてはい
ずれも、各ルーチンの2回目以後の各回の実行時にはフ
ィルタ範囲の設定変更が行われるようにはなっていない
が、行われるようにすることができる。これを実現する
ルーチンの一例が図26にフローチャートで表されてい
る。
【0134】本ルーチンにおいては、S121〜S12
4が図24および図25のルーチンと同様に実行され
る。本ルーチンの今回の実行が初回であれば、S124
の判定がYESとなり、S125において、図24のル
ーチンと同様に、初回の実行時にフィルタ範囲の設定変
更が行われる一方、空気圧Pの異常判定が禁止される。
【0135】本ルーチンの実行が2回目以後である場合
には、S124の判定がNOとなり、S126におい
て、変化量ΔKの今回推定値の前回推定値からの偏差Δ
ΔKが演算され、これの絶対値が正の基準値ΔΔK0
下であるか否かが判定される。今回推定値の安定性の有
無が判定されるのである。今回は基準値ΔΔK0 以下で
あると仮定すれば判定がYESとなり、今回は推定値が
十分に安定しており、このことは現在のフィルタ範囲が
回転速度信号の周波数特性に十分に合致していることを
意味すると考えられるから、直ちにS128〜S130
において空気圧の異常判定が行われる。
【0136】これに対し、今回は偏差ΔΔKの絶対値が
基準値ΔΔK0 以下ではないと仮定すればS126の判
定がNOとなり、S127においてフィルタ範囲の設定
変更が行われる。具体的には、例えば、偏差ΔΔKの符
号が負であって、空気圧Pの低下を表す場合には、フィ
ルタ範囲全体が周波数が減少する向きに一定量Δfだけ
シフトするように調整され、逆に、偏差ΔΔKの符号が
正であって、空気圧Pの増加を表す場合には、フィルタ
範囲全体が周波数が増加する向きに一定量Δfだけシフ
トするように調整される。したがって、S126,S1
27,S121〜S124の実行が何回も繰り返される
結果、偏差ΔΔKの絶対値が基準値ΔΔK0 以下となっ
てS126の判定がYESとなったときには、現在のフ
ィルタ範囲が回転速度信号の周波数特性に十分に合致し
ていることになる。
【0137】すなわち、コンピュータ47のうちそれら
S126およびS127を実行する部分がフィルタ範囲
調整部90のさらに別の例を構成しているのである。ま
た、このフィルタ範囲調整部90が請求項3の発明にお
ける「設定周波数範囲変更部」の一例を構成している。
【0138】次に、さらに別の実施例に基づいて各請求
項の発明を具体的に説明する。リム側部回転速度演算・
補正部45から出力される回転速度信号の周波数特性は
前記のように、図12のグラフの如く、複数の山を有す
る曲線のグラフで表される。それら山のうち周波数が最
も低い山の周波数領域には慣性モーメントJの変化量Δ
Jに関する情報が含まれており、周波数が2番目に低い
山の周波数領域にはばね定数Kの変化量ΔKに関する情
報が含まれている。そのため、外乱オブザーバ52を用
いて慣性モーメントJの変化量ΔJを推定する場合に
は、それら山のうち周波数が最も低い山で表される周波
数成分の強度が大きいほど外乱オブザーバ52による変
化量ΔJの推定精度が向上し、また、外乱オブザーバ5
2を用いてばね定数Kの変化量ΔKを推定する場合に
は、それら山のうち周波数が2番目に低い山で表される
周波数成分の強度が大きいほど外乱オブザーバ52によ
る変化量ΔKの推定精度が向上する。
【0139】ところで、車輪14はサスペンションによ
って車体に相対変位可能に連結されているが、このサス
ペンションによって実現される車輪14の車体に対する
相対運動を車両横方向から見た場合の車輪中心の運動軌
跡は、真に上下方向に延びる直線を描くのではなく、円
弧状の曲線を描くのが一般的である。
【0140】例えば、車両のリヤサスペンションが図2
7に示すように、車体のフレーム100と車輪14を回
転可能に支持するキャリア102とがA形のアッパアー
ム104と一対のロアアーム106とによって相対変位
可能に連結されたダブルウィッシュボーン式である場合
には、車輪中心の運動軌跡は例えば図28の(b) に示す
如きものとなる。なお、図27において、符号108は
ショックアブソーバ、110はコイルスプリング、11
2は車体に取り付けられるアッパサポート、114はス
タビライザバー、116はストラットロッドをそれぞれ
示している。
【0141】キャリア102とアッパアーム104との
連結点の路面に対する運動軌跡とキャリア102とロア
アーム106との連結点の路面に対する運動軌跡とがと
もに同一円周上にあると仮定した場合のその円周の中心
である瞬間中心Oが車輪14から車両前方向に離れた位
置に存在し、その結果、車輪14の車体に対する振動が
上下方向成分のみならず前後方向成分をも含むものとな
る。そのため、車輪14と路面との間に両者の接地点に
おいて前後方向相対運動が生じ、一方、車輪14の上下
方向振動は回転速度信号にほとんど影響を与えないが前
後方向振動は回転速度信号に強い影響を与えるから、前
後方向振動が回転速度信号にばね下共振点における振動
として現れることになる。また、回転速度信号のうち、
図12のグラフの複数の山のうち最も周波数の低い山で
表される周波数成分であってその強度が慣性モーメント
Jの推定精度に影響を及ぼすものの周波数範囲が、ばね
下共振点とほぼ一致している。以上要するに、車輪中心
の運動軌跡と回転速度信号の周波数特性、特に、ばね下
共振点付近における周波数特性との間に一定の関係が存
在するのであり、この関係を利用して運動軌跡を適正化
すれば、前記の如き前処理フィルタなしでも回転速度v
の周波数特性の適正化が可能となる。
【0142】それらの知見に基づき、出願人は、ジオメ
トリーが異なる3種類のサスペンションを設計した。図
28の(b) に示すように、瞬間中心Oの車輪中心からの
隔たりが一般的なものであるサスペンションと、同図の
(a) に示すように、瞬間中心Oがその一般的な位置より
車両前方に離れ、実質的に無限遠方に位置するサスペン
ションと、同図の(c) に示すように、瞬間中心Oがその
一般的な位置より車輪14に接近するサスペンションと
をそれぞれ設計したのである。
【0143】同図の(a) に示すジオメトリーは例えば図
29に示すアッパアーム104とロアアーム106との
相対位置関係によって実現され、この場合の車輪中心の
運動軌跡は図31において実線で示すとなる。また、
図28の(b) に示すジオメトリーは例えば図30に示す
アッパアーム104とロアアーム106との相対位置関
係によって実現され、この場合の車輪中心の運動軌跡は
図31において一点鎖線で示すとなる。また、図28
の(c) に示すジオメトリーによって実現される車輪中心
の運動軌跡は図31において破線で示すとなる。
【0144】そして、出願人はそれら各サスペンション
を各車両に搭載し、各車両毎に回転速度信号の周波数特
性を取得し、図32にグラフで表される如き結果を得
た。グラフから明らかなように、回転速度信号のうち、
ばね下共振点にほぼ対応する周波数成分のパワースペク
トル(強度)は、瞬間中心Oが車輪中心に接近して運動
軌跡の曲率半径が小さくなり、車輪振動における前後方
向成分が増加するほど増加する。前記のように、ばね下
共振点におけるパワースペクトルは慣性モーメントJの
推定精度に影響を及ぼすから、瞬間中心Oを車輪中心に
極力接近させれば、慣性モーメントJの推定精度が向上
することになる。また、回転速度信号のうち、ばね下共
振点にほぼ対応する周波数成分のパワースペクトル(強
度)は、瞬間中心Oが車輪中心から遠ざかって運動軌跡
の曲率半径が大きなり、車輪運動における前後方向成分
が少なくなるほど減少し、このことはその周波数成分に
隣接する周波数成分のパワースペクトルが相対的に増加
することを意味する。前記のように、図12のグラフの
複数の山のうち2番目に周波数が低い山で表される周波
数成分のパワースペクトルはばね定数Kの推定精度に影
響を及ぼすから、瞬間中心Oを車輪中心から極力隔離さ
せれば、ばね定数Kの推定精度すなわち空気圧の推定精
度が向上することになる。
【0145】さらに、出願人は、それら3種類のサスペ
ンションのうち、図29に表される準直線運動軌跡ジオ
メトリーを有するサスペンションを備えた車両と、図3
0に表される一般的曲線運動軌跡ジオメトリーを有する
サスペンションを備えた車両とに着目し、それらのいず
れにも図33に示す車輪情報推定装置を設けるが、準直
線運動軌跡ジオメトリーを有するサスペンションを備え
た車両においては外乱オブザーバ52に車輪14のばね
定数変化量ΔKを車輪情報として推定させ、一方、一般
的曲線運動軌跡ジオメトリーを有するサスペンションを
備えた車両においては外乱オブザーバ52に車輪14の
慣性モーメント変化量ΔJを車輪情報として推定させる
こととした。
【0146】それら2種類の外乱オブザーバ52のうち
ばね定数変化量ΔKを推定するものの構成については前
記の実施例に詳細に記載されているため、説明を省略
し、以下、車輪14の慣性モーメント変化量ΔJを推定
する外乱オブザーバ52の構成についてのみ説明する。
なお、車輪14の慣性モーメントにはリム側部28の慣
性モーメントJR とベルト側部30の慣性モーメントJ
B とが存在するが、それぞれについて変化量ΔJB ,Δ
R を推定する構成について説明する。
【0147】まず、ベルト側部30の慣性モーメントJ
B の変化量ΔJB を推定するための外乱オブザーバ52
の構成について詳細に説明する。
【0148】ベルト側部30の慣性モーメントJB がJ
B +ΔJB に変化した場合には車輪14の運動は(16)式
で表される。
【0149】
【数7】
【0150】推定すべき外乱は(16)式の右辺の最終項の
第2要素であるので、外乱w2 を(17)式で定義すれば、
(18)式で表される状態方程式から前記(11)式で表される
拡張系を得、外乱オブザーバ52の、ベルト側部30の
慣性モーメントJB が変化した場合の外乱を推定する部
分を構成することができる。 w2 =(−1/JB )Td −(ΔJB /JB )ωB ′・・・(17)
【0151】
【数8】
【0152】ベルト側部30の慣性モーメントJB の変
化は、図34のフローチャートで表される慣性モーメン
トJB 変化取得用相関演算ルーチンの実行により、取得
される。(17)式で表される外乱w2 の推定値w2pとベル
ト側部30の角加速度推定値ω Bp′とから相互相関(w
2p,ωBp′),自己相関C(ωBp′,ωBp′)が取得さ
れ、正規化部58で(19)式によりLJB値が演算され、R
AM50のLJB値メモリに格納される。 LJB=C(w2p,ωBp′)/C(ωBp′,ωBp′)・・・(19) このLJB値は前記(17)式に基づき、(20)式で表される。 LJB=(−1/JB )C1 −ΔJB /JB ・・・(20) ただし、C1 はC(Tdp,ωBp′)/C(ωBp′,
ωBp′)を意味する。
【0153】LJB値と変化量ΔJB との関係が予めRO
M49に格納されており、今回演算されたLJB値に対応
する変化量ΔJB がその関係に従って取得されることに
なる。
【0154】次に、リム側部28の慣性モーメントJR
の変化量ΔJR を推定するための外乱オブザーバ52の
構成について詳細に説明する。
【0155】なお、通常はリム側部28の慣性モーメン
トJR が変化することはないが、ホイール24が交換さ
れることがあり、そのためにリム側部28の慣性モーメ
ントJR が変わったにもかかわらず、慣性モーメントJ
R をそれまで通りの値にして外乱の推定を行えば大きな
誤差が生じるおそれがあるために、本実施例においては
慣性モーメントJR の変化に起因する外乱も推定される
ようにされているのである。
【0156】リム側部28の慣性モーメントJR がJR
+ΔJR に変化した場合の車輪14の運動は(21)式で表
される。
【0157】
【数9】
【0158】推定すべき外乱は(21)式の右辺の最終項の
第1要素であるので、外乱w1 を次の(22)式で定義すれ
ば、(23)式で表される状態方程式から(24)式で表される
拡張系を得、外乱オブザーバ52の、リム側部28の慣
性モーメントJR が変化した場合の外乱を推定する部分
を構成することができる。 w1 =−(ΔJR /JR )ωR ′・・・(22)
【0159】
【数10】
【0160】
【数11】
【0161】リム側部28の慣性モーメントJR の変化
は、図35のフローチャートで表される慣性モーメント
R 変化取得用相関演算ルーチンの実行により、取得さ
れる。(22)式で表される外乱w1 の推定値w1pとリム側
部28の角加速度ωR ′とから相互相関C(w1p
ωR ′),自己相関C(ωR ′,ωR ′)が取得され、
正規化部58で(25)式によりLJR値が演算され、RAM
50のLJR値メモリに格納される。 LJR=C(w1p,ωR ′)/C(ωR ′,ωR ′)・・・(25) このLJR値は前記(22)式に基づき、(26)式で表される。 LJR=−ΔJR /JR ・・・(26)
【0162】LJR値と変化量ΔJR との関係が予めRO
M49に格納されており、今回演算されたLJR値に対応
する変化量ΔJR がその関係に従って取得されることに
なる。
【0163】外乱オブザーバ52がベルト側部30の慣
性モーメントJB を推定するコンピュータ47において
は、異常判定部62が、推定された変化量ΔJB が正の
基準値ΔJB0より大きいか否かを判定し、判定がYES
であれば、タイヤ26が異物をかみ込んだか、またはタ
イヤ26にチェーンが装着されていることを表示装置6
6により運転者に知らせる。また、推定された変化量Δ
B が負の基準値ΔJ B1より小さいか否かを判定し、判
定がYESであれば、タイヤ26が摩耗していることを
表示装置66により運転者に知らせる。これに対し、外
乱オブザーバ52がリム側部28の慣性モーメントJR
を推定するコンピュータ47においては、異常判定部6
2が、推定された変化量ΔJR の絶対値が正の基準値Δ
R0より大きいか否かを判定され、判定がYESであれ
ば、車輪14のホイールが正規のものとは異なるものに
交換されたことを表示装置66により運転者に知らせ
る。
【0164】以上の説明から明らかなように、本実施例
においては、サスペンションにおいてアッパアーム10
4とロアアーム106とを車両横方向から見た場合に互
いにほぼ平行となるように配置して瞬間中心Oが一般的
な位置より車輪14から離れる位置に位置するようにす
ることが、外乱オブザーバ52が車輪14のばね定数
K、ひいてはタイヤ空気圧Pを推定する場合の、請求項
4の発明における「サスペンション適正化手段」の一例
であり、アッパアーム104とロアアーム106とを車
両横方向から見た場合に互いに鋭角的となるように配置
して瞬間中心Oが一般的な位置より車輪14に近い位置
に位置するようにすることが、外乱オブザーバ52が車
輪14の慣性モーメントJを推定する場合の、請求項4
の発明における「サスペンション適正化手段」の一例な
のである。
【0165】次に、さらに別の実施例に基づいて各請求
項の発明を具体的に説明する。本実施例は図36に示す
ように、図2に示す実施例と同様に、電磁ピックアップ
12,波形整形器18,コンピュータ20,実車速検出
装置70(図示省略),前処理フィルタ64,コンピュ
ータ47および表示装置66を備えているが、図35に
示すコンピュータ47における外乱オブザーバ52,パ
ラメータ同定部53および異常判定部62の各機能が異
なる。したがって、以下、その異なる部分についてのみ
詳細に説明する。
【0166】まず、外乱オブザーバ52の構成について
説明する。本実施例で用いられるタイヤモデルは、図3
7に示すように、慣性モーメントJを有する単純な回転
体であり、しかも、このタイヤモデルはサスペンション
モデルと共にタイヤ−サスペンションモデルを構成す
る。ただし、 Td :路面からの外乱トルク T1 :車輪14に作用する駆動・制動トルク ω :車輪14の角速度(=リム側部28の角速度
ωR ) KS :サスペンションの等価的なばね定数 DS :サスペンションの等価的な減衰係数 なお、このタイヤ−サスペンションモデルは、サスペン
ションにより実現される車輪14の車体に対する運動を
車両横方向から見た場合の軌跡が上下方向成分のみなら
ず前後方向成分をも含むのが普通であるという事実か
ら、サスペンションによる車輪14の振動と車輪14自
体の回転運動とが組み合わされることによって構成され
ている。
【0167】このモデルの運動方程式は(27)式となる。
【0168】
【数12】
【0169】ただし、 ω′:車輪14の角加速度 ここで、車輪14およびサスペンションの各運動のうち
振動にのみ着目すれば、駆動・制動トルクT1 は相対的
には固定値とみなすことができるから、上記(27)式は(2
8)式となる。
【0170】
【数13】
【0171】この(28)式の両辺をそれぞれ時間tで微分
すれば、(29)式が得られる。
【0172】
【数14】
【0173】ただし、 ω″ :角加速度ω′の微分値 Td ′:外乱トルクの微分値
【0174】また、この(29)式の状態方程式は(30)式と
なる。
【0175】
【数15】
【0176】ここで、ばね定数KS はサスペンションの
剛性に依存するのでほとんど変化しないと考えることが
できる。したがって、空気圧Pの変動に起因して慣性モ
ーメントJが変化し、また、その慣性モーメントJの変
化に起因する角速度ωの変化速度に起因して減衰係数D
S が変化すると仮定する。
【0177】そして、慣性モーメントJがJ+ΔJに、
減衰係数DS がDS +ΔDS にそれぞれ変化したとき、
上記(30)式は(31)式となる。
【0178】
【数16】
【0179】すなわち、慣性モーメントJがΔJだけ、
減衰係数DS がΔDS だけそれぞれ変化することは正常
な車輪14に(31)式の最終項で表される外乱wが加えら
れるのと等価である。そこで、外乱オブザーバ52は、
前処理フィルタ64からの出力信号に基づく角速度ω
(前処理フィルタ64に入力される角速度ωのうち変動
成分のみ)から外乱wと角加速度ω′とをそれぞれ推定
する。外乱オブザーバ52の推定遅れは非常に小さくす
ることができるので、今その推定遅れを無視すると、外
乱wの推定値は(32)式で表される。
【0180】
【数17】
【0181】パラメータ同定部53はこの式に基づき、
外乱wの推定値および角加速度ω′の推定値と角速度ω
の検出値とをそれぞれ用いて慣性モーメントJの変化量
ΔJを求める。以下、その手法について説明する。上記
(32)式は(33)式に書き換えることができる。
【0182】
【数18】
【0183】この式に基づき、未知のパラメータである
列ベクトルΘを最小二乗法の原理に基づいて推定する。
一方、列ベクトルΘは(33)式での定義に従い、(34)式で
表される。
【0184】
【数19】
【0185】したがって、慣性モーメントJの変化量Δ
Jは(35)式で表される。
【0186】
【数20】
【0187】なお、慣性モーメントJの変化率は(36)式
で表される。
【0188】
【数21】
【0189】異常判定部62はパラメータ同定部53か
ら供給される慣性モーメント変化量ΔJに基づき、車輪
14の異常を判定する。異常判定部62は、車輪14が
異常であると判定した場合には、先の実施例に準じ、そ
の旨を表示装置66を介して運転者に知らせる。
【0190】リム側部回転速度演算・補正部45から出
力される回転速度信号は、一般に、図38に示す如き周
波数特性を有している。一方、外乱オブザーバ52が慣
性モーメントJの変化量ΔJを精度よく推定するのに適
した周波数範囲は、グラフにおいて例えばf1 とf2
の間の範囲とされる。これに対し、本実施例において
は、前処理フィルタ64が、そのような回転速度信号か
ら設定周波数範囲における成分のみ抽出する特性とさ
れ、その結果、外乱オブザーバ52に供給される回転速
度信号は例えば図39にグラフで表される如き周波数特
性を有するものとされる。したがって、本実施例におい
ては、外乱オブザーバ52において採用される車輪14
のモデルが前記のように単純にすることができ、このよ
うにしても十分な推定精度が確保されることになる。
【0191】次に、さらに別の実施例に基づいて各請求
項の発明を具体的に説明する。車輪14の振動と車輪1
4の接地性とは相互に強く関連し、接地性が良好である
ほど振動が少ない。一方、車輪14の振動には前記のよ
うに、上下方向成分のみならず前後方向成分をも含んで
いるのが一般的であるため、車輪14の振動の影響は車
輪14の回転速度信号に現れることになる。具体的に
は、回転速度信号のうちばね下共振周波数範囲における
周波数成分のパワースペクトルがばね下振動が強いほど
大きくなるという関係か成立するのである。接地性が悪
い走行状況下における回転速度信号の周波数特性の一例
を図41に、接地性が良い走行状況下における回転速度
信号の周波数特性の一例を図42にそれぞれグラフで表
す。
【0192】本実施例は、それらの知見に基づき、回転
速度vに基づいて車輪14の接地性を車輪情報として推
定する車輪情報推定装置であり、図40に示すように、
図17に示す実施例と同様に、電磁ピックアップ12,
波形整形器18,コンピュータ20,実車速検出装置7
0(図示省略)および前処理フィルタ92を備えてお
り、さらに、FFT分析器94および前記コンピュータ
47に代わるコンピュータ95を備えている。コンピュ
ータ95はそれのROM49に図43のフローチャート
で表されているタイヤ接地性判定ルーチンを始めとする
各種制御プログラムが格納されることによって図40に
示す平均化処理部96とタイヤ接地性判定部98とを構
成している。コンピュータ95には、推定された接地性
を利用する装置の一例としてサスペンション制御装置1
00が接続されている。サスペンション制御装置100
はアクチュエータ102を介してサスペンション104
の特性を制御するものであり、例えば、サスペンション
104の特性としてショックアブソーバの減衰特性を制
御する場合にはアクチュエータ102としてショックア
ブソーバ内における流通抵抗を変化させるモータ等とさ
れる。以下、図40における各構成要素のうち代表的な
ものを説明する。
【0193】前処理フィルタ92は、リム側部回転速度
演算・補正部45から供給される回転速度信号から周波
数がばね下共振周波数範囲に属する周波数成分のみを抽
出し、FFT分析器94に供給する。FFT分析器94
は、前処理フィルタ92から供給された回転速度信号に
基づき、それの周波数特性を演算してコンピュータ95
に供給する。
【0194】平均化処理部96は、FFT分析器94か
ら連続的に供給される複数の周波数分析結果に対して平
均化処理を行うことにより、分析精度を向上させるもの
である。接地性判定部98は、平均化処理部96から供
給された最終的な周波数分析結果に基づき、ばね下共振
周波数範囲におけるゲイン(請求項7の発明における
「強度」を記述する単位の一例である)の最大値Gv
検出し、その最大ゲインGv が基準値Gv0以上である場
合には車輪14の接地性が悪いと判定し、基準値Gv0
り小さい場合には車輪14の接地性が良いと判定する。
その判定結果はサスペンション制御装置100によって
監視されており、サスペンション制御装置100は、接
地性が悪いと判定された場合において良いと判定された
場合におけるより、アクチュエータ102を介してサス
ペンション104の減衰特性をよりハードにすることに
より、接地性の悪化による車両の走行安定性の低下を抑
制して常に良好な走行安定性を確保する。
【0195】平均化処理部96および接地性判定部98
の機能は図43のタイヤ接地性判定ルーチンの実行によ
って果たされる。以下、本ルーチンの内容を説明する。
【0196】まず、S201において、RAM50の周
波数特性メモリの内容がクリアされる。周波数特性メモ
リは、FFT分析器94から供給される周波数特性の分
析結果が格納されるべきものである。次に、S202に
おいて、その周波数特性メモリに現在格納されている周
波数特性の数を表す整数nが1にセットされる。続い
て、S203において、FFT分析器94から今回の回
転速度vの周波数特性が読み込まれ、周波数特性メモリ
に格納される。さらに、S204において、整数nが1
増加させられ、S205において、整数nが基準値N以
上となったか否かが判定される。S206で平均化処理
が行われるべき周波数特性が全て取得されたか否かが判
定されるのである。今回は整数nが基準値Nより小さい
と仮定すれば判定がNOとなり、S202に戻る。
【0197】その後、S202〜S204の実行が繰り
返されるうちに整数nが基準値N以上となればS205
の判定がYESとなり、S206において平均化処理が
行われる。周波数特性メモリに既に格納されている設定
個数の周波数特性に基づいて各周波数についてのゲイン
V が演算されるのである。続いて、S207におい
て、演算されたゲインGV が基準値GV0以上であるか否
かが判定される。今回は基準値GV0以上であると仮定す
れば判定がYESとなり、S208において、OFF状
態で車輪14の接地性が良いことを示し、ON状態で悪
いことを示す接地不良フラグがON状態とされる。一
方、今回は基準値GV0より小さいと仮定すればS207
の判定がYESとなり、S209において、接地不良フ
ラグがOFF状態とされる。いずれの場合にもその後、
S201に戻る。
【0198】なお、本実施例においては、FFT分析器
94がコンピュータ95とは別に設けられていたが、コ
ンピュータ95により構成することも可能である。
【0199】以上の説明から明らかなように、本実施例
においては、リム側部回転速度演算・補正部45から供
給される回転速度vに基づいて直ちにFFT分析が行わ
れるのではなく、前処理フィルタ92により、その回転
速度vのうち必要な成分、すなわち、ばね下共振周波数
範囲における成分のみが抽出されてFFT分析器94に
供給されるようになっているため、FFT分析器94の
負担が軽減されるとともに分析精度が向上するという効
果が得られる。
【0200】また、本実施例においては、FFT分析器
94およびコンピュータ95が請求項7の発明における
「推定手段」の一例である「車輪接地性推定部」の一例
を構成し、前処理フィルタ64が請求項7の発明におけ
「周波数特性適正化手段」の一例を構成しているので
ある。
【0201】その他、いちいち例示することはしない
が、種々の改良,変形を加えた態様で各請求項の発明を
実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】各請求項の発明の一実施例である車輪情報推定
装置の機能ブロック図である。
【図2】上記車輪情報推定装置の構成ブロック図であ
る。
【図3】上記車輪情報推定装置により外乱を検出される
車輪の一部を示す断面図である。
【図4】上記車輪の力学モデルを示す図である。
【図5】上記車輪情報推定装置の一構成要素であるコン
ピュータ20のROMに格納されている制御プログラム
を示すフローチャートである。
【図6】上記コンピュータ20のROMに格納されてい
る別の制御プログラムを示すフローチャートである。
【図7】上記車輪情報推定装置における速度偏差累積値
の検出回数Nと実車速Vとの関係を示すグラフである。
【図8】上記車輪情報推定装置における外乱のダイナミ
クスの近似を説明するためのグラフである。
【図9】上記車輪情報推定装置における外乱オブザーバ
の構成を示すブロック線図である。
【図10】上記車輪情報推定装置の一構成要素であるコ
ンピュータ47のROMに格納されている制御プログラ
ムを示すフローチャートである。
【図11】上記コンピュータ47のROMに格納されて
いる別の制御プログラムを示すフローチャートである。
【図12】上記車輪情報推定装置の一構成要素である前
処理フィルタに入力される回転速度信号の周波数特性の
一例を示すグラフである。
【図13】上記前処理フィルタから出力される回転速度
信号の周波数特性の一例を示すグラフである。
【図14】上記前処理フィルタの特性の一例を示すグラ
フである。
【図15】図10の制御プログラムにおけるばらつき度
δと基準値Mとの関係の一例を示すグラフである。
【図16】各請求項の発明の別の実施例である車輪情報
推定装置の機能ブロック図である。
【図17】上記車輪情報推定装置の構成ブロック図であ
る。
【図18】上記車輪情報推定装置の一構成要素であるコ
ンピュータ47のROMに格納されている制御プログラ
ムを示すフローチャートである。
【図19】図18の制御プログラムにおけるばらつき度
δと基準値Nとの関係の一例を示すグラフである。
【図20】各請求項の発明のさらに別の実施例である車
輪情報推定装置の一構成要素であるコンピュータ47の
ROMに格納されている制御プログラムを示すフローチ
ャートである。
【図21】図20の制御プログラムにおける共振周波数
変化量Δf0 と基準値Nとの関係の一例を示すグラフで
ある。
【図22】各請求項の発明のさらに別の実施例である車
輪情報推定装置の機能ブロック図である。
【図23】上記車輪情報推定装置の一構成要素である前
処理フィルタの機能を説明するためのグラフである。
【図24】上記車輪情報推定装置の一構成要素であるコ
ンピュータ47のROMに格納されている制御プログラ
ムを示すフローチャートである。
【図25】別の制御プログラムを示すフローチャートで
ある。
【図26】さらに別の制御プログラムを示すフローチャ
ートである。
【図27】車両のリヤサスペンションの構成の一例を示
す斜視図である。
【図28】上記リヤサスペンションのジオメトリーと瞬
間中心Oとの関係を説明するための図である。
【図29】準直線運動軌跡を実現するサスペンションに
おけるアッパアームとロアアームとを示す斜視図であ
る。
【図30】一般的曲線運動軌跡を実現するサスペンショ
ンにおけるアッパアームとロアアームとを示す斜視図で
ある。
【図31】図28における3種類の運動軌跡相互の関係
を示す図である。
【図32】上記各運動軌跡と回転速度信号の周波数特性
との関係を説明するためのグラフである。
【図33】各請求項の発明のさらに別の実施例である車
輪情報推定装置の機能ブロック図である。
【図34】上記車輪情報推定装置の一構成要素であるコ
ンピュータ47のROMに格納されている制御プログラ
ムを示すフローチャートである。
【図35】別の制御プログラムを示すフローチャートで
ある。
【図36】各請求項の発明のさらに別の実施例である車
輪情報推定装置の機能ブロック図である。
【図37】図36における外乱オブザーバが用いるタイ
ヤとサスペンションのモデルを示す図である。
【図38】図36における前処理フィルタに入力される
回転速度信号の周波数特性の一例を示すグラフである。
【図39】上記前処理フィルタから出力される回転速度
信号の周波数特性の一例を示すグラフである。
【図40】各請求項の発明のさらに別の実施例である車
輪情報推定装置の機能ブロック図である。
【図41】タイヤの接地性が良好でない場合に取得され
る回転速度信号の周波数特性の一例を示すグラフであ
る。
【図42】タイヤの接地性が良好である場合に取得され
る回転速度信号の周波数特性の一例を示すグラフであ
る。
【図43】上記車輪情報推定装置の一構成要素であるコ
ンピュータ95のROMに格納されている制御プログラ
ムを示すフローチャートである。
【符号の説明】
10 ロータ 12 電磁ピックアップ 14 車輪(タイヤ付ホイール) 20,47,95 コンピュータ 24 ホイール 26 タイヤ 28 リム側部 30 ベルト側部 32 ねじりばね 52 外乱オブザーバ 53 パラメータ同定部 64,80,92 前処理フィルタ 82,94 FFT分析器
フロントページの続き (72)発明者 河井 弘之 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (72)発明者 小島 弘義 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (72)発明者 梅野 孝治 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41 番地の1株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 浅野 勝宏 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41 番地の1株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 内藤 俊治 愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 日本 電装株式会社内 (72)発明者 小野木 伸好 愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 日本 電装株式会社内 (56)参考文献 特開 平6−122304(JP,A) 特開 平8−2222(JP,A) 特開 平7−329526(JP,A) 特開 平6−344734(JP,A) 特開 平5−330322(JP,A) 特開 平5−133831(JP,A) 特開 昭50−113933(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G01L 17/00 B60C 23/00 B60C 23/06

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】車輪の運動状態量に基づいて車輪に関する
    車輪情報を推定する推定手段と、 前記車輪の運動状態量を検出して前記推定手段に供給す
    る検出装置とを含む車輪情報推定装置において、 前記車輪の運動状態量の複数の周波数成分のうち周波数
    が設定周波数範囲内にある周波数成分の強度の、周波数
    が設定周波数範囲外にある周波数成分の強度に対する比
    を増加させることにより、前記推定手段に供給される車
    輪運動状態量の周波数特性を適正化する周波数特性適正
    化手段であって、前記推定手段による推定値またはそれ
    に関連する値に基づいて前記設定周波数範囲を変更する
    設定周波数範囲変更部を含むものを設けたことを特徴と
    する車輪情報推定装置。
  2. 【請求項2】請求項1に記載の車輪情報推定装置であっ
    て、前記車輪の運動状態量が、その車輪の角速度,角加
    速度,上下速度,上下加速度,前後速度および前後加速
    度の少なくとも一つを含み、かつ、前記車輪情報が、前
    記車輪のタイヤの空気圧,タイヤの半径,タイヤの慣性
    モーメント,車輪の接地性およびタイヤのコーナリング
    パワーの少なくとも一つを含むものである車輪情報推定
    装置。
  3. 【請求項3】車輪の運動状態量に基づいて車輪に関する
    車輪情報を推定する推定手段と、 前記車輪の運動状態量を検出して前記推定手段に供給す
    る検出装置と を含む車輪情報推定装置において、 前記車輪の運動状態量の複数の周波数成分のうち周波数
    が設定周波数範囲内にある周波数成分の強度の、周波数
    が設定周波数範囲外にある周波数成分の強度に対する比
    を増加させることにより、前記推定手段に供給される車
    輪運動状態量の周波数特性を適正化する周波数特性適正
    化手段であって、 前記推定手段による推定値の変動量が
    基準値以下となるように前記設定周波数範囲を変更する
    設定周波数範囲変更部を含むものを設けたことを特徴と
    する車輪情報推定装置。
  4. 【請求項4】車輪の運動状態量に基づいて車輪に関する
    車輪情報を推定する推定手段と、 前記車輪の運動状態量を検出して前記推定手段に供給す
    る検出装置と を含む車輪情報推定装置において、 前記車輪の運動状態量の複数の周波数成分のうち周波数
    が設定周波数範囲内にある周波数成分の強度の、周波数
    が設定周波数範囲外にある周波数成分の強度に対する比
    を増加させることにより、前記推定手段に供給される車
    輪運動状態量の周波数特性を適正化する周波数特性適正
    化手段であって、 サスペンションにより実現される前記
    車輪の車体に対する相対運動を車両横方向から見た場合
    の車輪の中心の軌跡を適正化することによって前記比を
    増加させるサスペンション適正化手段を含むものを設け
    たことを特徴とする車輪情報推定装置。
  5. 【請求項5】車輪の運動状態量に基づいて車輪に関する
    車輪情報を推定する推定手段と、 前記車輪の運動状態量を検出して前記推定手段に供給す
    る検出装置と を含む車輪情報推定装置において、 前記推定手段、少なくとも、前記車輪情報の基礎値で
    ある車輪情報基礎値と前記検出装置から供給された車輪
    運動状態量とから、前記車輪に対する外乱を推定する外
    乱オブザーバと、推定された外乱に基づき、前記車輪情
    報の実際値である車輪情報実際値の、前記車輪情報基礎
    値からの変化量を推定する車輪情報変化量推定部とを含
    むものとし、かつ、当該車輪情報推定装置に、前記車輪
    の運動状態量の複数の周波数成分のうち周波数が設定周
    波数範囲内にある周波数成分の強度の、周波数が設定周
    波数範囲外にある周波数成分の強度に対する比を増加さ
    せることにより、前記推定手段に供給される車輪運動状
    態量の周波数特性を適正化する周波数特性適正化手段を
    設けたことを特徴とする車輪情報推定装置。
  6. 【請求項6】請求項1ないし5のいずれかに記載の車輪
    情報推定装置であって、前記推定手段が、前記検出装置
    から供給された車輪運動状態量の複数の周波数成分のう
    ち前記設定周波数範囲内において強度が実質的に最大と
    なるものの周波数に基づいて前記車輪情報を推定する周
    波数方式推定部を含むものである車輪情報推定装置。
  7. 【請求項7】請求項1ないし6のいずれかに記載の車輪
    情報推定装置であって、前記検出装置が、前記車輪の回
    転速度である車輪速度を前記運動状態量として検出して
    前記推定手段に供給する車輪速度検出部を含むものであ
    り、前記推定手段が、その車輪速度検出部から供給され
    た車輪速度の複数の周波数成分のうち前記設定周波数範
    囲内におけるものの強度に基づいて車輪の接地性を前記
    車輪情報として推定する車輪接地性推定部を含むもので
    ある車輪情報推定装置。
  8. 【請求項8】車輪の運動状態量に基づいて車輪に関する
    車輪情報を推定する推定手段と、 前記車輪の運動状態量を検出して前記推定手段に供給す
    る検出装置と を含む車輪情報推定装置において、 前記推定手段を、前記車輪情報それ自体またはそれに関
    連する値を暫定的な推定値として複数個推定した後にそ
    れら複数の暫定的な推定値を用いて車輪情報の今回の最
    終的な推定値を推定するとともに、今回の推定値の、前
    回以前における推定値に対する変動量が大きい場合にお
    いて小さい場合におけるより、今回の最終的な推定値を
    推定し直す際と次回の最終的な推定値を推定する際との
    少なくとも一方において用いるべき前記暫定的な推定値
    の数を増加させるものとし、かつ、当該車輪情報推定装
    置に、前記車輪の運動状態量の複数の周波数成分のうち
    周波数が設定周波数範囲内にある周波数成分の強度の、
    周波数が設定周波数範囲外にある周波数成分の強度に対
    する比を増加させることにより、前記推定手段に供給さ
    れる車輪運動状態量の周波数特性を適正化する周波数特
    性適正化手段を設けたことを特徴とする車輪情報推定装
    置。
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