JP2982601B2 - 薄鋼板の高速酸洗装置及び高速酸洗方法 - Google Patents

薄鋼板の高速酸洗装置及び高速酸洗方法

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JP2982601B2 JP5351029A JP35102993A JP2982601B2 JP 2982601 B2 JP2982601 B2 JP 2982601B2 JP 5351029 A JP5351029 A JP 5351029A JP 35102993 A JP35102993 A JP 35102993A JP 2982601 B2 JP2982601 B2 JP 2982601B2
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  • Cleaning And De-Greasing Of Metallic Materials By Chemical Methods (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、薄鋼板の高速酸洗装
置及び高速酸洗方法に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、図3に示すように、従来の浸漬
式塩酸酸洗設備では、熱間圧延された鋼板1は、常温ま
で冷却された後に、入側設備のペイオフリール2から送
り出され、溶接機3、ルーパ4、ブライドルロール5並
びにスケールブレーカ6を経由して5〜6槽(全長約1
00m)で構成された塩酸槽7,8内を浸漬走行され、
最終的にテンションリール9によって巻き取られる。浸
漬走行工程で表層部のスケールは塩酸との化学反応によ
り除去され、鋼板1は後工程へ供給される。酸洗槽7,
8内の塩酸条件としては、高濃度かつ高温度であればあ
るほど脱スケール性が向上することが知られているが、
装置あるいはコスト等の実用上の制約からこれらを無制
限に高くすることはできず、一般的に塩酸濃度が4.0
〜15.0重量%、温度が80〜90℃程度とされてい
る。
【0003】近年では、生産性向上を狙って酸洗処理時
間を短縮する技術開発が盛んに行われており、例えば酸
洗槽入側にスケールブレーカーを設置して表層のスケー
ルに割れを生じさせることで、酸液の浸透を促す酸洗方
法(特開昭56−160825号公報)や槽内に噴流を
発生させるか(特開昭62−196387号公報)、ま
たは遮蔽板を設置する(特開平4−59982号公報)
等の乱流プロモーター設置による鋼板近傍の酸液の新陳
代謝を促進させる高速酸洗方法が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
浸漬式塩酸酸洗設備は、酸洗槽部分だけでも長大な設置
スペースと膨大な建設費用を必要とする。また、操業・
品質面においては、長大な酸洗槽中での酸液の温度及び
濃度を十分に制御することができず、良好な鋼板表面性
状を安定的に確保することができないという問題点があ
る。
【0005】また、高速酸洗方法として実施されている
スケールブレーキング法では、鋼板の溶接部近傍では板
破断の危険がある為に充分な効果を発揮できず、長手方
向の表面仕上りにむらが発生するとともに、酸洗時間短
縮効果が少なく、ライン長は従来レベルのものである。
また、噴流方式においては、ライン長の短縮効果は見込
めるものの、耐酸ポンプ及び配管等の増設によるコスト
増によって相殺される上に、ポンプ動力費の増大により
ランニングコストも上昇するという問題点がある。
【0006】この発明は、上記のような問題点を解決す
るためになされたもので、設置スペースの短縮及び設備
の建設費の低廉化が可能であるとともに、酸洗仕上りの
良好な薄鋼板を安定的に製造できる酸洗設備を得ること
を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明に係る薄鋼板の高
速酸洗装置は、鋼板を加熱する鋼板加熱部と、鋼板が浸
漬される酸洗槽部とを備え、鋼板を酸液に浸漬して連続
的に脱スケール処理する薄鋼板の高速酸洗装置であっ
て、前記鋼板加熱部は、前記酸洗槽部入側のブライドル
ロールと酸洗槽との間に設けられた鋼板加熱装置と、加
熱された鋼板の温度を測定するための温度計と、を有
し、前記酸洗槽部は、酸洗槽内に酸液温度制御用の熱交
換器と、鋼板浸漬時間制御用のシンクロールと、を有す
ることを特徴とする。
【0008】さらに、鋼種、鋼板温度、シンクロール位
置、酸液条件が検出データ又は初期設定データとして入
力され、これらの入力データに基づき鋼板加熱温度およ
び鋼板浸漬時間を求める演算部と、求めた鋼板加熱温度
に基づき鋼板加熱部の加熱動作を制御して鋼板浸漬時に
酸液の核沸騰状態が得られる温度域まで鋼板を加熱する
とともに、求めた鋼板浸漬時間に基づきシンクロール動
作を制御して鋼板の浸漬深さを調節する制御部と、を有
することが望ましい。
【0009】また、本発明に係る薄鋼板の高速酸洗方法
は、鋼板を加熱する鋼板加熱部と、鋼板が浸漬される酸
洗槽部とを備え、鋼板を酸液に浸漬して連続的に脱スケ
ール処理する薄鋼板の高速酸洗方法であって、前記鋼板
加熱部において鋼板浸漬時に酸液が核沸騰状態になる温
度域として酸液の沸点以上で300℃まで鋼板を加熱
し、加熱直後に鋼板を酸洗温度制御用の熱交換器により
温度制御された酸液に浸漬し、これにより鋼板と酸液と
の温度差が250℃未満となる核沸騰状態を出現させ、
鋼板の脱スケール性を制御するとともに鋼板の局部座屈
変形を防止することを特徴とする。さらに、本発明に係
る薄鋼板の高速酸洗方法は、鋼板を加熱する鋼板加熱部
と、鋼板が浸漬される酸洗槽部とを備え、鋼板を酸液に
浸漬して連続的に脱スケール処理する薄鋼板の高速酸洗
方法であって、前記鋼板加熱部において鋼板浸漬時に酸
液が核沸騰状態になる温度域として酸液の沸点以上で3
00℃まで鋼板を加熱し、加熱直後に鋼板を酸液に浸漬
する際に、シンクロール動作を制御して鋼板の浸漬深さ
を調整することにより鋼板の浸漬時間を制御し、これに
より鋼板と酸液との温度差が250℃未満となる核沸騰
状態を出現させ、鋼板の脱スケール性を制御するととも
に鋼板の局部座屈変形を防止することを特徴とする。
【0010】酸液がインヒビター(酸洗抑制剤)を含む
塩酸溶液である場合は、鋼板を100〜300℃に加熱
することが望ましく、150〜300℃に加熱すること
が更に好ましい。このような温度域に加熱した直後に鋼
板を酸液に浸漬すると、核沸騰状態が得られ、スケール
に多数の微細クラックが生じて鋼板の表面性状が良好に
なる。とくに、鋼板を200〜250℃に加熱したとき
に理想的な鋼板の表面性状が得られる。
【0011】
【作用】高温の物体を液中に浸漬すると、両者の温度差
に応じて3段階の沸騰現象が現れる。先ず第1段階の比
較的低温の領域では核沸騰状態が出現する。核沸騰状態
では物体表面のところどころから気泡が部分的に発生す
るので、物体表面のかなりの部分が液に直接接触してい
る。次に、これより高い第2段階の温度域では遷移沸騰
状態に移行する。遷移沸騰状態では物体表面の大部分か
ら連続的に気泡が発生するとともに部分的には蒸気膜に
よって覆われるようになる。さらに、高温の第3段階の
温度域では膜沸騰状態に移行する。膜沸騰状態では物体
の全表面が蒸気膜で覆われてしまう。
【0012】本発明に係る薄鋼板の高速酸洗装置及び高
速酸洗方法においては、鋼板加熱部において鋼板浸漬時
に酸液が核沸騰状態になる温度域まで鋼板を予備加熱
し、加熱直後に鋼板を酸液に浸漬するので、鋼板近傍に
急激な熱移動と物質移動とを伴う核沸騰状態が出現す
る。この核沸騰状態において鋼板表面に接触する酸液が
すばやく更新されるので、急速加熱と相俟って脱スケー
ル反応が促進される。この場合に、熱交換器により酸洗
槽部の酸液を適温に制御しているので、浸漬時に望まし
い核沸騰状態が得られ、鋼板の脱スケール性を制御する
とともに鋼板の局部座屈変形をも防止することができ
る。また、シンクロール動作を制御して鋼板の浸漬深さ
を調整することにより鋼板の浸漬時間を制御し、核沸騰
状態の酸液中に鋼板は十分な時間浸漬されるので、脱ス
ケール性が向上するとともに鋼板の局部座屈変形が有効
に防止される。
【0013】さらに、鋼板の予備加熱温度を制御するだ
けでなく、鋼板の浸漬深さをも制御するので、酸洗槽内
の酸液の温度不均一に対してもきめ細かく対処すること
ができ、鋼板の部分的な過熱状態が回避され、鋼板の幅
方向両端部の波うちや中央部の膨出などのような変形
(板形状のくずれ)が実質的に生じなくなる。酸液(塩
酸溶液)に浸漬する場合に、鋼板加熱温度が100〜3
00℃の範囲であることがとくに好ましいのは次の理由
による。
【0014】第1に、酸液の沸点以上でなければ、沸騰
現象は得られないからである。第2に、鋼板加熱温度が
300℃以下のときは、沸騰現象が核沸騰域にあるた
め、表層スケールへの微細なクラック発生を誘発し、か
つ酸液の新陳代謝も促進される。鋼板加熱温度が300
℃を越えると、遷移沸騰域から膜沸騰域へと移行し、微
細なクラック発生を妨げるとともに、新陳代謝促進も鈍
化するからである。
【0015】
【実施例】以下、添付の図面を参照しながら本発明の実
施例について説明する。圧延工場で熱間圧延された薄鋼
板1は、コイル状に巻き取られて常温まで冷却された後
に、浸漬式塩酸酸洗設備に搬送される。図1には浸漬式
塩酸酸洗ラインの一部のみを示すが、この浸漬式塩酸酸
洗ラインでは上流側のペイオフリール(図示せず)から
下流側のテンションリール(図示せず)に至るまで連続
送給される間に、薄鋼板1が酸洗槽16に浸漬されるよ
うになっている。パスライン下側には多数の搬送ロール
(図示せず)が並び、鋼板1が高速で搬送されるように
なっている。酸洗槽16とペイオフリールとの間にはブ
ライドルロール12、誘導加熱装置13、温度計15が
この順に設けられている。
【0016】鋼板加熱部を構成する加熱装置としては、
設備長の短く温度制御性に優れている誘導加熱装置が望
ましい。例えばコイル長さは板幅と同等か又はその数倍
とすることが好ましい。このような誘導加熱装置13の
インダクションコイルは、パスライン上の鋼板1を取り
囲むように設けられ、交流電源に接続されている。コイ
ル電源は制御部40に接続され、コイルへの給電量が制
御されるようになっている。コイルの誘導加熱によって
鋼板1は瞬時に100〜400℃に加熱されるようにな
っている。なお、誘導加熱装置13では均一加熱性に関
してエッジ部過加熱(目標温度±10℃)となるが、一
般的にコイル状に巻かれた薄鋼板の場合はエッジ部のス
ケール厚みが中央部より厚いので、望ましい結果をもた
らす。また、誘導加熱装置13は、出側に設けた鋼板温
度計(図示せず)から得られる温度情報をフィードバッ
ク制御することにより、均一加熱及びライン減速に合わ
せた入/出力制御を行う。加熱装置13と酸洗槽16の
距離Lが長い場合(L≧0.5m)は、鋼板1の腰折れ
(薄鋼板の製品欠陥となる座屈)防止用に小径の搬送ロ
ール(図示せず)を密に設置しなければならない。
【0017】放射式の温度計15が、酸洗槽16の入側
直前で、かつパスラインの上方に設けられ、通過中の鋼
板1の温度が非接触で連続的に検出されるようになって
いる。温度計15は演算部30の入力側に接続されてい
る。演算部30の入力側にはこの他に位置センサ(図示
せず)、濃度センサ(図示せず)、液温センサ(図示せ
ず)が接続され、シンクロール位置検出信号および塩酸
条件データ信号などが入力されるようになっている。一
方、演算部30の出力側は制御部40の入力側に接続さ
れ、各種データ信号が制御部40に入力されるようにな
っている。
【0018】温度計15の直ぐ下流側には酸洗槽16及
び水洗槽20がこの順に並んで設けられている。酸洗槽
16の中には、液温80〜90℃に調整された濃度8重
量%の塩酸溶液が収容されている。この塩酸溶液は酸洗
抑制剤としてインヒビターを含んでいる。塩酸溶液中に
はシンクロール17と固定ロール18とが浸漬されてい
る。シンクロール17は昇降シリンダ(図示せず)によ
って支持され、塩酸溶液に浸漬されたり、これから引上
げられたりされるようになっている。また、熱交換器1
9が酸洗槽16の底部に設けられ、熱交換器19の内部
通路を通流する水と酸洗槽16内の塩酸溶液とが熱交換
されるようになっている。熱交換された温水は水洗槽2
0に送られるようになっている。なお、液温測定用温度
計(図示せず)が酸洗槽16の適所に設けられ、塩酸溶
液の温度が検出されるようになっている。
【0019】制御部40の出力側は、加熱装置13のコ
イル電源の他に、シンクロール17の昇降シリンダ(図
示せず)の駆動電源および液温測定用温度計(図示せ
ず)にそれぞれ接続されている。次に、上記の浸漬式塩
酸酸洗ラインにおいて鋼板を連続的に酸洗処理する場合
について説明する。
【0020】熱間圧延工程にて製造され、常温まで冷却
された鋼板1は、図示されていない入側設備を経由し、
ブライドルロール12に至る。鋼板1は、誘導加熱装置
13により100〜300℃の範囲の所定の温度に加熱
された後に、腰折れ防止用の小径搬送ロール上を通過
し、酸洗槽16に至る。酸洗槽16(20〜30m)内
には、上下可動式のシンクロール17を設置するととも
に、酸液温度コントロール用の熱交換器19を設置し
て、鋼種及びラインスピード毎の酸洗仕上りを均一かつ
安定的にする制御機能を備えている。熱交換器19にて
回収された温水は、次の水洗槽20へと導かれる。
【0021】加熱鋼板1を酸液中に浸漬させると、鋼板
1に接触した酸液が核沸騰する。核沸騰状態においては
鋼板1の表面から気泡が無数に発生するが、鋼板1の全
面が蒸気膜で覆われることは無い。このため、酸液と鋼
板との間で脱スケール反応が十分に促進される。
【0022】上記した酸洗処理時間の短縮と設備のコン
パクト化についての課題は、浸漬式塩酸酸洗設備におい
て、入側部のブライドルロールと酸洗槽との間に鋼板加
熱装置、鋼板温度計及び小径搬送ロールより構成する鋼
板加熱部を設けて、鋼板を酸液の沸点以上で100〜3
00℃の温度範囲内に加熱後、酸液中に浸漬する酸洗方
法(以降、高温装入酸洗法と称す)を実施することによ
り解決される。
【0023】次に、表1を参照しながら鋼板温度を種々
変えたときのクラック発生状況および脱スケールにつき
調べた結果を、実施例1〜5と比較例1,2、従来方
法、並びにスケールブレーキング法のそれぞれと比べて
説明する。実施例1〜5は鋼板加熱温度をそれぞれ10
0℃,150℃,200℃,250℃,300℃に設定
した場合に対応する。比較例1および2は鋼板加熱温度
をそれぞれ350℃と400℃に設定した場合に対応す
る。従来方法は鋼板温度をそれぞれ30℃(加熱せず)
及び80℃(低温加熱)に設定した場合に対応する。ス
ケールブレーキング法は鋼板温度を30℃(加熱せず)
に設定した場合に対応する。なお、スケールブレーキン
グ法は特開昭56−160825号公報、特開昭62−
196387号公報、特開平4−59982号公報にそ
れぞれ記載された方法に準拠している。
【0024】スケールにおけるクラック発生状況と酸洗
処理時間短縮の効果について上記の場合をそれぞれ調べ
た。表中にて二重丸は微細クラックが多数生じた結果
を、一重丸はクラック数が多い結果を、三角はクラック
数が少ない結果を、バツは少数の大きなクラックのみが
生じた結果をそれぞれ示す。表から明らかなように、鋼
板加熱温度を150〜300℃の範囲とした場合に良好
な結果を得ることができ、200〜250℃の温度範囲
では最良の結果を得ることができた。
【0025】酸洗処理時間短縮の効果については鋼板温
度を30℃とする従来方法を基準100%として各方法
の結果を調べた。実施例1では50%、実施例2では3
3%、実施例3では20%、実施例4では18%、実施
例5では20%、比較例1では40%、比較例2では4
2%、従来方法(80℃低温加熱)では85%、スケー
ルブレーキング法では90%という結果を得た。
【0026】ちなみに、特開平4−297589号公報
には誘導加熱により鋼板温度を酸液温度(80℃)にま
で加熱して酸洗する方法が記載されている。しかし、こ
のような誘導加熱装置にて鋼板を80℃前後に加熱し酸
洗する方法では、前述の高速酸洗技術よりも酸洗時間短
縮効果が85%(基準となる総所要時間の15%が短縮
される)と少ない。
【0027】得られた結果について以下に若干の考察を
加える。鋼板加熱部において、100〜300℃の範囲
で加熱された鋼板は、酸液中(液温度80〜90℃)に
浸漬され、急激に冷却されることとなり、表層部に生成
しているスケールは、熱衝撃により割れを生じるととも
に、母材との熱膨張差により剥離する。前述したスケー
ルブレーカー設置による方法と同じ役割や作用を果たす
ものであるが、鋼板の加熱温度が150〜300℃の範
囲では、実施例2〜5のほうが微細なクラックが発生す
るとともに、溶接点近傍での脱スケール性低下によるラ
インスピード減速及び操業性悪化等の制約はなく、ま
た、長手方向の表面仕上りのむらという問題がない。
【0028】従来より、脱スケール性向上のためには酸
液の高濃度化および高温度化が効果的であることが知ら
れているが、装置上、あるいはコスト上の制約により実
行化されてはいない。しかし、高温装入酸洗法では鋼板
温度を酸液の沸点以上に加熱し酸液中へ浸漬することに
より、鋼板近傍においてのみ高濃度化および高温度化し
て、脱スケール化学反応の理想状態に達し、従来の技術
では得られなかった酸洗条件及び効果を得ることができ
る。
【0029】次に、図2を参照しながら脱スケール性と
鋼板加熱温度との関係について説明する。図2は横軸に
鋼板加熱温度をとり、縦軸に脱スケール性をとって両者
の関係について調べた結果を示すグラフ図である。温度
80℃で濃度8重量%の塩酸溶液に同一の浸漬時間で鋼
板を浸漬して調べた。脱スケール性はA,B,C,D,
Eの5段階で評価した。図から明らかなように、脱スケ
ール性の評価は100〜300℃の温度域で良好であ
り、とくに150〜300℃の温度域ではAまたはBの
評価が得られた。
【0030】得られた結果について以下に若干の考察を
加える。浸漬式酸洗反応の支配要因として、鋼板近傍の
酸液の新陳代謝の鈍化があり、従来技術においては噴流
・遮蔽板等の乱流プロモーターを備えることにより、酸
液を拡散させて問題解決にあたっている。高温装入酸洗
法では、以上の作用をも兼備している。加熱した鋼板を
酸液中に浸漬することにより、鋼板近傍は急激な熱移動
と物質移動を伴う沸騰現象(核沸騰域)となり、酸液の
新陳代謝が促進される。効果としては、物質移動が熱移
動(熱伝達率)にて置き換え可能であるとすると、乱流
プロモーター付加によるものの約10倍程度はあるもの
と推定される。
【0031】上記の実施例の方法によれば従来方法より
も大幅な酸洗時間の短縮効果を得るとともに、設備のコ
ンパクト化を達成することができた。また、鋼板加熱部
にて鋼板加熱温度(鋼種別)、酸洗槽部にてラインスピ
ード、浸漬時間、塩酸条件(温度、濃度)を制御可能と
したことにより、均一かつ良好な薄鋼板を安定的に製造
することができる。
【0032】次に、表2を参照して本発明の実施例を比
較例と比べながら効果について説明する。表2は、鋼板
加熱温度を種々変えて板形状のくずれ及び蛇行について
評価した。なお、総合評価は板形状のくずれ及び蛇行の
各評価を勘案して決定したものである。表中にて丸は良
好な結果を示し、三角は実用上とくに問題ない結果を示
し、バツは実用上に問題がある結果を示す。
【0033】鋼板加熱温度が100〜300℃の温度域
では良好な結果が得られたが、300℃以上の温度域に
なる350℃及び400℃では板形状のくずれ(温度差
などに起因する局部座屈変形などによる板形状の乱れ)
が大きく、実用に供することができない。このように鋼
板加熱温度(300℃以上)と酸液温度(80〜90
℃)との温度差が250℃以上になると、急激な温度変
化による板形状のくずれを生じて、通板性が悪化するこ
とが判明した。
【0034】以上を実施し採用することにより、酸洗処
理時間の短縮及び設備のコンパクト化が可能となり、酸
洗仕上りが良好で表面性状に優れた鋼板を製造すること
ができる。なお、この発明の技術は、金属材料全般にわ
たる脱スケール方法に応用することが可能である。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【発明の効果】この発明によれば、鋼板加熱部としての
誘導加熱装置を酸洗槽の前段に設置し、酸洗槽へ装入さ
れる直前の鋼板を鋼板浸漬時に酸液が核沸騰状態になる
温度域まで予備加熱して、脱スケール処理を行うように
したので、大幅な酸洗処理時間の短縮及び酸洗槽の数の
減少が可能になるとともに、大幅な設備費の低廉化効果
を得ることができる。
【0038】また本発明によれば、鋼板加熱部にて鋼板
加熱温度(鋼種別)、酸洗槽部でのラインスピード、浸
漬時間(シンクロール浸漬深さ)、塩酸条件(温度、濃
度)を制御可能としたことにより酸液中に浸漬された鋼
板表面を核沸騰状態とすることができ、均一かつ良好な
薄鋼板を安定的に製造することができる。
【0039】さらに本発明によれば、酸液槽内には高温
装入酸洗法実施による液温度上昇を防止するための熱交
換器を設けているので、浸漬時に望ましい核沸騰状態が
得られ、鋼板の脱スケール性を制御するとともに鋼板の
局部座屈変形をも防止することができる。また、熱交換
器から回収した熱水は出側のリンス水へと利用すること
により省エネルギーを図ることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る薄鋼板の高速酸洗装置が
用いられた酸洗ラインの一部を示す模式図。
【図2】鋼板加熱温度と脱スケール性との相関関係につ
いて調べた結果を示すグラフ図。
【図3】従来の酸洗装置を示す模式図である。
【符号の説明】
1…鋼板、12…ブライドルロール、13…誘導加熱装
置、15…温度計、16…酸洗槽、17…シンクロー
ル、18…固定ロール、20…リンス槽、30…演算
部、40…制御部。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−341587(JP,A) 特開 昭62−211394(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C23G 3/02

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼板を加熱する鋼板加熱部と、鋼板が浸
    漬される酸洗槽部とを備え、鋼板を酸液に浸漬して連続
    的に脱スケール処理する薄鋼板の高速酸洗装置であっ
    て、 前記鋼板加熱部は、前記酸洗槽部入側のブライドルロー
    ルと酸洗槽との間に設けられた鋼板加熱装置と、加熱さ
    れた鋼板の温度を測定するための温度計と、を有し、 前記酸洗槽部は、酸洗槽内に酸液温度制御用の熱交換器
    と、鋼板浸漬時間制御用のシンクロールと、を有するこ
    とを特徴とする薄鋼板の高速酸洗装置。
  2. 【請求項2】 さらに、鋼種、鋼板温度、シンクロール
    位置、酸液条件が検出データ又は初期設定データとして
    入力され、これらの入力データに基づき鋼板加熱温度お
    よび鋼板浸漬温度を求める演算部と、 求めた鋼板加熱温度に基づき鋼板加熱部の加熱動作を制
    御して鋼板浸漬時に酸液の核沸騰状態が得られる温度域
    まで鋼板を加熱するとともに、求めた鋼板浸漬時間に基
    づきシンクロール動作を制御して鋼板の浸漬深さを調節
    する制御部と、を有することを特徴とする請求項1記載
    の薄鋼板の高速酸洗装置。
  3. 【請求項3】 鋼板を加熱する鋼板加熱部と、鋼板が浸
    漬される酸洗槽部とを備え、鋼板を酸液に浸漬して連続
    的に脱スケール処理する薄鋼板の高速酸洗方法であっ
    て、前記鋼板加熱部において鋼板浸漬時に酸液が核沸騰
    状態になる温度域として酸液の沸点以上で300℃まで
    鋼板を加熱し、加熱直後に鋼板を酸洗温度制御用の熱交
    換器により温度制御された酸液に浸漬し、これにより鋼
    板と酸液との温度差が250℃未満となる核沸騰状態を
    出現させ、鋼板の脱スケール性を制御するとともに鋼板
    の局部座屈変形を防止することを特徴とする薄鋼板の高
    速酸洗方法。
  4. 【請求項4】 鋼板を加熱する鋼板加熱部と、鋼板が浸
    漬される酸洗槽部とを備え、鋼板を酸液に浸漬して連続
    的に脱スケール処理する薄鋼板の高速酸洗方法であっ
    て、前記鋼板加熱部において鋼板浸漬時に酸液が核沸騰
    状態になる温度域として酸液の沸点以上で300℃まで
    鋼板を加熱し、加熱直後に鋼板を酸液に浸漬する際に、
    シンクロール動作を制御して鋼板の浸漬深さを調整する
    ことによ り鋼板の浸漬時間を制御し、これにより鋼板と
    酸液との温度差が250℃未満となる核沸騰状態を出現
    させ、鋼板の脱スケール性を制御するとともに鋼板の局
    部座屈変形を防止することを特徴とする薄鋼板の高速酸
    洗方法。
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