JP2981574B2 - リン酸イオン吸着剤 - Google Patents

リン酸イオン吸着剤

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、リン酸イオン吸着剤及
びその製造方法に関する。
【0002】尚、本明細書において、リン酸イオン吸着
率とは、次に示す方法により求めた値を指す。
【0003】 15Nの硫酸100ml中にモリブデン
酸アンモニウム1gを溶解し、続いて、硫酸第一鉄4g
を溶解したものを発色試薬とする。試料2mlに精製水
2ml及び上記発色試薬mlを加えて混合した後、1
5分間放置後の吸光度(波長660nm)を測定する。
これをNaHPO溶液により作成した検量線を用い
て試料中のリン酸イオン濃度を算出し、次式よりリン酸
イオン吸着率を求める。
【0004】 リン酸イオン吸着率(%)=[(Ci−Ce)/Ci]
×100 上記式中、Ciはリン酸イオンの初期濃度(%)を、C
eはリン酸イオンの平衡濃度(%)をそれぞれ示す。
【0005】
【従来技術とその課題】従来より、高燐血症を伴う慢性
腎不全患者に対し、リン酸イオン吸着剤として乾燥水酸
化アルミニウムゲルの投与が行なわれている。しかしな
がら、乾燥水酸化アルミニウムゲルは、体内にアルミニ
ウムイオンを溶出するために、長期投与を行なった場
合、アルミニウム脳症、骨症等の症状が副作用として現
れることが知られており問題となっている。
【0006】その後、上記乾燥水酸化アルミニウムゲル
に代わるリン酸イオン吸着剤として、炭酸カルシウムが
検討されたが、この場合も副作用として高カルシウム血
症を発症し、しかもリン酸イオン吸着力が乾燥水酸化ア
ルミニウムゲルに比して劣るといった事から満足される
までには至っていない。
【0007】このように、未だ有効な高燐血症治療薬と
してのリン酸イオン吸着剤が得られていないのが現状で
ある。
【0008】一方、近年になって、生活排水や工業排水
中に含まれるリン酸イオンが環境上の大きな問題とされ
てきている。上記排水中のリン酸イオンは、湖水、河川
等の水の富栄養化現象を引き起こし、赤潮等の様々な環
境問題の原因となっている。しかしながら、ここでも上
記排水中のリン酸イオンを取り除くための有効な吸着剤
は未だ開発されておらず、リン酸イオンを効率よく吸着
する吸着剤が広く望まれている。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記技術の
現状に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、チタン塩を加水分
解して得られるチタン酸化物が、リン酸イオン吸着剤と
して優れていることを見出した。また本発明者は、アル
カリ土類金属イオン及びオキソ酸イオンの少なくとも一
方を含有させたチタン塩を加水分解して得られるチタン
酸化物が更に優れたリン酸イオン吸着力を有するリン酸
イオン吸着剤となり得ることを見出した。更に本発明者
は、上記チタン酸化物の表面を酸で処理及び(又は)ア
ルカリ土類金属イオンで処理することにより、該チタン
酸化物のリン酸イオン吸着力を一段と向上し得ることを
も見出した。本発明は、これら知見に基づいて完成され
たものである。
【0010】即ち、本発明は、チタン塩、又はアルカリ
土類金属イオン及びオキソ酸イオンの少なくとも一方を
含有させたチタン塩を加水分解して得られるチタン酸化
物を有効成分として含有することを特徴とするリン酸イ
オン吸着剤、並びに上記チタン酸化物を酸処理及び(又
は)アルカリ土類金属イオン処理した生成物を有効成分
として含有することを特徴とするリン酸イオン吸着剤に
係る。
【0011】本発明において使用されるチタン塩として
は、加水分解によりチタン酸化物を生じるものであれば
特に限定されず公知のものを広く使用でき、例えば塩化
チタン、臭化チタン、硫酸チタン、硝酸チタン、チタン
テトラプロポキシド等のチタンアルコラート等を例示で
き、これらの一種もしくは二種以上を用いることができ
る。
【0012】本発明では、上記チタン塩を加水分解して
チタン酸化物を得る。加水分解は、常法により容易に行
うことができ、例えば水溶液中で行えばよい。加水分解
は、常温付近又はこれ以下の比較的低い温度で行なって
もよいが、加熱して酸性下に反応を促進させて行なうの
がより効果的で、水溶液中で行なう場合は、80〜10
0℃程度の温度とするのが好ましい。加熱下に加水分解
を行なう場合は、必要に応じて還流しながら行なっても
よい。また加水分解反応を促進させるために、例えば水
酸化アンモニウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウ
ム、水酸化カリウム等のアルカリ源を適宜添加使用して
行なうのも有効である。
【0013】本発明において、加水分解により得られた
上記チタン酸化物を更に酸で処理することにより、該チ
タン酸化物のリン酸イオン吸着力を一層優れたものとし
得る。上記酸処理は、酸性を示す溶液、例えば塩酸、硫
酸、硝酸等によりpH値6程度以下、より好ましくは
0.2〜4.0程度で行なえばよい。処理温度は、特に
限定されず常温でもよいが、反応速度の点から80℃程
度以上がより好ましい。
【0014】また、本発明では、加水分解により得られ
た上記チタン酸化物をアルカリ土類金属イオンで処理す
ることによってもリン酸イオン吸着力を一段と向上させ
ることができる。
【0015】アルカリ土類金属イオン処理は、アルカリ
性を示す溶液中で行なわれる。アルカリ性を維持するた
めに用いるpH調整剤としては、例えば水酸化ナトリウ
ム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム等のアルカリ
源を例示でき、溶液のpH値は7.5程度以上、より好
ましくは8〜9程度とされる。アルカリ土類金属イオン
源としては、例えば塩化カルシウム、硝酸カルシウム、
酢酸カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウ
ム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化バリウ
ム、硝酸バリウム、酢酸バリウム等のアルカリ土類金属
塩を例示でき、溶液中の該塩濃度は、0.2〜4.0モ
ル/1程度、より好ましくは0.5〜2.0モル/1程
度とされる。処理温度は、特に限定されず常温でもよい
が、より好ましくは、60〜80℃程度である。
【0016】更に、本発明では、上記酸処理とアルカリ
土類金属イオン処理とを併用して行なうことにより、更
にリン酸イオン吸着力に優れたものとし得る。この場
合、酸処理により得られた生成物をアルカリ土類金属イ
オン処理してもよいし、アルカリ土類金属イオン処理に
より得られた生成物を酸処理してもよい。
【0017】また、本発明において、上記チタン塩とし
てアルカリ土類金属イオン及び(又は)オキソ酸イオン
を含有させたチタン塩を使用した場合には、更にリン酸
イオン吸着力に優れたリン酸イオン吸着剤となり得る。
チタン塩にアルカリ土類金属イオン及び(又は)オキソ
酸イオンを含有させる方法としては、例えば上記加水分
解時にアルカリ土類金属イオン源及び(又は)オキソ酸
イオン源を添加して行なうことができ、このようにすれ
ば加水分解と平行して行なうことができ有利である。
【0018】アルカリ土類金属イオン源としては、上記
に例示したのと同じアルカリ土類金属塩を使用できる。
アルカリ土類金属イオンの含有比は、チタニウムイオン
に対してモル比で0.05〜3.0程度、好ましくは
0.1〜1.0程度が適当である。オキソ酸イオン源と
しては、例えば硫酸、硝酸等のオキソ酸、硫酸アンモニ
ウム、硝酸アンモニウム等のオキソ酸塩を例示できる
が、操作面においてオキソ酸塩を用いるのが好ましい。
オキソ酸イオンの含有比は、チタニウムイオンに対して
モル比で0.1〜6.0程度、より好ましくは0.5〜
3.0程度が適当である。
【0019】チタン塩としてアルカリ土類金属イオン及
び(又は)オキソ酸イオンを含有させたチタン塩を使用
する場合にも、加水分解に引き続き、得られたチタン酸
化物を上記と同じく酸処理及び(又は)アルカリ土類金
属イオン処理することでより優れたリン酸イオン吸着剤
を得ることができる。
【0020】かくして得られた本発明のチタン酸化物
は、物理化学的に安定で、リン酸イオン吸着剤として広
い条件下での使用が可能で、粉末状、或いはカプセル
剤、顆粒剤、丸剤、懸濁剤、乳剤、散剤、錠剤、シロッ
プ剤等に製剤化された形状で使用することができる。本
発明のチタン酸化物を医薬品に使用する場合は、特にア
ルカリ土類金属イオン処理したものが好ましく、例えば
高燐血症治療薬として経口投与により使用することがで
きる。
【0021】また、本発明リン酸イオン吸着剤は、単独
でも、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム等の金属化
合物、二酸化珪素等の非金属化合物、各種イオン交換樹
脂、無機イオン交換体、樹脂、活性炭、モンモリロナイ
ト等の粘土化合物等を担体として用いて本発明品を担持
した複合体としてでも、或いはチタン酸化物と同様な特
性を持つジルコニウム酸化物との複合体又は共沈物とし
ても使用できる。
【0022】
【発明の効果】本発明リン酸イオン吸着剤は、リン酸イ
オン吸着率が最大100%で、従来のリン酸イオン吸着
剤に比して著しく優れたリン酸イオン吸着力を有する。
【0023】本発明リン酸イオン吸着剤は、例えば、高
燐血症治療薬、或いは放射性廃棄物中、工業排水中、生
活排水中等に含まれるリン酸イオンを取り除く吸着剤と
して有用である。
【0024】
【実施例】以下に実施例を掲げて本発明をより一層明ら
かにする。
【0025】尚、実施例中「TiO1」〜「TiO8」
なる用語は、それぞれ実施例1〜8で得られたチタン酸
化物を意味する。
【0026】
【実施例1】室温にて撹拌中の水400mlにチタンテ
トライソプロポキシド200gを徐々に滴下した。滴下
終了後、更に30分間撹拌を続け、生成した沈殿物を濾
過して取り出し、水洗し、60℃で乾燥してチタン酸化
物(TiO1)を得た。
【0027】得られたTiO1の10gを1.1Nの硝
酸又は1.2Nの硫酸100ml中に添加しpH0.1
〜1.0で一晩浸漬し、酸処理を行なった。その後、沈
殿物を濾過して取り出し、水洗し、70℃で乾燥してチ
タン酸化物の酸処理物(以下硝酸処理物を(NA)、硫
酸処理物を(SA)と略す)を得た。
【0028】得られたTiO1、TiO1(NA)及び
TiO1(SA)の各0.1gをそれぞれ0.01W/
V%NaHPO水溶液100ml中に添加し、37
℃で1時間撹拌した後の濾液のリン酸イオン濃度を測定
し、リン酸イオン吸着率を計算した。吸着率は、TiO
1が20%、TiO1(NA)が46%、TiO1(S
A)が100%であった。
【0029】
【実施例2】撹拌中の水400mlに四塩化チタン水溶
液(TiClとして65.4%)200g及び硫酸ア
ンモニウム80gを添加し、溶解させた。溶解後、室温
にて15Nの水酸化アンモニウムを徐々に滴下し、反応
液の最終pHを9.5とした。得られた生成沈殿物を濾
過して取り出し、水洗し、80℃で乾燥してチタン酸化
物(TiO2)を得た。
【0030】得られたTiO2を実施例1と同様にして
酸処理し、リン酸イオン吸着率を求めたところ、TiO
2(NA)44%及びTiO2(SA)94%であっ
た。
【0031】
【実施例3】撹拌中の水400mlに四塩化チタン水溶
液(TiClとして65.4%)200g、硫酸アン
モニウム80g及び硫酸マグネシウム7水塩17gを添
加し、溶解させた。溶解後、室温にて15Nの水酸化ア
ンモニウムを徐々に滴下し、反応液の最終pHを9.5
とした。得られた生成沈殿物を濾過して取り出し、水洗
し、80℃で乾燥してチタン酸化物(TiO3)を得
た。
【0032】得られたTiO3を実施例1と同様にして
酸処理し、リン酸イオン吸着率を求めたところ、TiO
3(NA)63%及びTiO3(SA)77%であっ
た。
【0033】
【実施例4】撹拌中の水500mlに四塩化チタン水溶
液(TiClとして65.4%)200g及び塩化マ
グネシウム6水塩70gを添加し、溶解させた。溶解
後、室温にて15Nの水酸化アンモニウムを徐々に滴下
し、反応液の最終pHを9.52とした。続いて生成物
のスラリー中に5Nの硝酸を徐々に滴下し、反応液の最
終pHを1.35とし酸処理を行なった。かくして得ら
れた生成沈殿物を濾過して取り出し、水洗し、80℃で
乾燥してチタン酸化物(TiO4(NA))を得た。
【0034】得られたTiO4(NA)のリン酸イオン
吸着率を実施例1と同様にして求めたところ54%であ
った。
【0035】
【実施例5】撹拌中の水400mlに硫酸アンモニウム
171gを添加し、溶解後、四塩化チタン水溶液(Ti
Clとして65.4%)200gを添加した。pH=
1以下の強酸性下、100℃で3時間加熱加水分解を行
なった。得られた生成沈殿物を濾過して取り出し、水洗
し、60℃で乾燥してチタン酸化物(TiO5)を得
た。
【0036】得られたTiO5のリン酸イオン吸着率を
実施例1と同様にして求めたところ79%であった。ま
た、得られたTiO5を実施例1と同様にして酸処理
し、リン酸イオン吸着率を求めたところ、TiO5(S
A)100%であった。
【0037】
【実施例6】撹拌中の水400mlに硫酸アンモニウム
80g及び硫酸マグネシウム7水塩170gを添加し、
溶解後、四塩化チタン水溶液(TiClとして65.
4%)200gを添加した。pH=1以下の強酸性下、
100℃で3時間加熱加水分解を行なった。得られた生
成沈殿物を濾過して取り出し、水洗し、80℃で乾燥し
てチタン酸化物(TiO6)を得た。
【0038】得られたTiO6のリン酸イオン吸着率を
実施例1と同様にして求めたところ100%であった。
【0039】
【実施例7】撹拌中の水400mlに塩化カルシウム2
水塩101gを添加し、溶解後、四塩化チタン水溶液
(TiClとして65.4%)200gを添加した。
pH=1以下の強酸性下、100℃で3時間加熱加水分
解を行なった。得られた生成沈殿物を濾過して取り出
し、水洗し、80℃で乾燥してチタン酸化物(TiO
7)を得た。
【0040】得られたTiO7のリン酸イオン吸着率を
実施例1と同様にして求めたところ60%であった。
【0041】
【実施例8】撹拌中の水400mlに四塩化チタン水溶
液(TiClとして65.4%)200gを滴下し、
pH=1以下の強酸性下、100℃で3時間加熱加水分
解を行なった。得られた生成沈殿物を濾過して取り出
し、水洗し、60℃で乾燥してチタン酸化物(TiO
8)を得た。
【0042】得られたTiO8のリン酸イオン吸着率を
実施例1と同様にして求めたところ28%であった。
【0043】
【実施例9】塩化カルシウム2水塩10.3gを溶解し
た塩化カルシウム水溶液の各100ml中に実施例1〜
4で得られたチタン酸化物TiO1〜TiO4を各々5
g添加し、懸濁液とした。続いて水酸化アンモニウムで
懸濁液のpHを9とした後、一晩撹拌を続けた。その
後、生成沈殿物を濾過して取り出し、水洗してカルシウ
ムイオン交換チタン酸化物TiO1(Ca)、TiO2
(Ca)、TiO3(Ca)及びTiO4(Ca)を得
た。
【0044】得られたカルシウムイオン交換チタン酸化
物のリン酸イオン吸着率を、塩酸でpHを3とした0.
01W/V%NaHPO水溶液を用いて実施例1と
同様にして求めたところ、TiO1(Ca)71%、T
iO2(Ca)48%、TiO3(Ca)43%及びT
iO4(Ca)25%であった。
【0045】
【比較例1】乾燥水酸化アルミニウムゲル(日本薬局方
適合品)のリン酸イオン吸着率を実施例1と同様にして
求めた。その結果、21%であった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B01J 20/00 - 20/34 A61K 33/42 C02F 1/28

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 チタン塩を加水分解して得られるチタン
    酸化物を酸処理及び(又は)アルカリ土類金属イオン処
    理した生成物を有効成分として含有することを特徴とす
    るリン酸イオン吸着剤。
  2. 【請求項2】 チタン塩を加水分解して得られるチタン
    酸化物をアルカリ土類金属イオン処理又は、アルカリ土
    類金属イオン処理及び酸処理した生成物を有効成分とし
    て含有することを特徴とする請求項1に記載のリン酸イ
    オン吸着剤。
  3. 【請求項3】 チタン塩がアルカリ土類金属イオン及び
    オキソ酸イオンの少なくとも一方を含有する請求項1又
    は2記載の吸着剤。
  4. 【請求項4】 請求項1乃至3のいずれかに記載の吸着
    剤を有効成分として含有することを特徴とする高リン血
    症治療用リン酸吸着剤。
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